JP3980881B2 - 船舶用内燃機関の油圧スイッチの故障検知装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は船舶用内燃機関の油圧スイッチの故障検知装置に関し、より具体的には、潤滑油の油圧が第1の所定油圧以下であるときに出力(オン信号)を生じる第1の油圧スイッチ(低圧側)、および第1の所定油圧よりも高い第2の所定油圧以下であるときに出力(オン信号)を生じる第2の油圧スイッチ(高圧側)の故障検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、船舶用内燃機関の油圧回路あるいはオイルパンの適宜位置に、内燃機関を通常運転しても焼き付き等の故障に至らない程度の油圧を作動点としてオン/オフ信号を出力する油圧スイッチを油圧検出手段として1個あるいは2個設け、その油圧スイッチが出力する信号に基づいて操船者に対して警告を発すると共に、内燃機関が焼き付きなどの故障しない回転数となるよう、燃料噴射量や点火を制御している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、油圧スイッチが故障した場合に、正常な油圧であるのに油圧異常と誤検出したり、あるいは実際は油圧異常であるにも関わらず油圧異常が検出されないといった不具合があった。
【0004】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、油圧スイッチの故障を検知する、特に、潤滑油の油圧が第1の所定油圧以下であるときに出力を生じる第1の油圧スイッチ(低圧側)、および第1の所定油圧よりも高い第2の所定油圧以下であるときに出力を生じる第2の油圧スイッチ(高圧側)の故障を検知することができるようにした、船舶用内燃機関の油圧スイッチの故障検知装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、この発明は請求項1項にあっては、船舶に搭載される内燃機関の潤滑油の油圧が所定油圧以下であるとき出力を生じる油圧スイッチの故障を検知する故障検知装置において、前記内燃機関の温度に関連するパラメータに応じて故障検知を実行すべき時間を設定する故障検知実行時間設定手段、前記内燃機関が始動された後、前記設定された故障検知実行時間の経過を計測する時間計測手段、前記油圧スイッチが前記出力を生じるか否か判断する油圧スイッチ出力判断手段、および前記故障検知実行時間の経過が計測された後に前記油圧スイッチが前記出力を生じたとき、前記油圧スイッチが故障したと判断する故障判断手段、を備える如く構成した。
【0006】
船舶に搭載される内燃機関の潤滑油の油圧が所定油圧以下であるとき出力を生じる油圧スイッチの故障を検知する故障検知装置において、内燃機関の温度に関連するパラメータに応じて故障検知を実行すべき時間を設定する故障検知実行時間設定手段、内燃機関が始動された後、設定された故障検知実行時間の経過を計測する時間計測手段、油圧スイッチが出力を生じるか否か判断する油圧スイッチ出力判断手段、および故障検知実行時間の経過が計測された後に油圧スイッチが出力を生じたとき、油圧スイッチが故障したと判断する故障判断手段、を備える如く構成したので、正確に油圧スイッチの故障を検知することができる。具体的には、油圧特性は潤滑油温度の変化に応じて変化することから、故障検知を内燃機関の始動から所定時間経過した後、即ち、潤滑油温度がある所定の温度まで上昇したときに行うことで、誤検知を防止することができる。また、故障の検知に際し、新たな部品的構成を追加することがないため、コストアップを招くことがない。
【0010】
請求項2項にあっては、さらに、前記内燃機関の機関回転数を検出する機関回転数検出手段、を備えると共に、前記故障判断手段は、前記故障検知実行時間の経過が計測された後で前記検出された機関回転数が所定の回転数以上のときに前記油圧スイッチが前記出力を生じたとき、前記油圧スイッチが故障したと判断する如く構成した。
【0011】
さらに、内燃機関の機関回転数を検出する機関回転数検出手段、を備えると共に、故障判断手段は、故障検知実行時間の経過が計測された後で検出された機関回転数が所定の回転数以上のときに前記油圧スイッチが前記出力を生じたとき、前記油圧スイッチが故障したと判断する如く構成したので、より一層正確に油圧スイッチの故障を検知することができる。
【0012】
具体的には、油圧は機関回転数の変化に応じても変化することから、故障検知を機関回転数が所定の回転数以上のときに行うことで、誤検知を防止することができる。
【0015】
請求項3項にあっては、前記故障判断手段によって前記油圧スイッチが故障したと判断されたとき、警告ブザーおよび警告灯の少なくともいずれかを作動させる如く構成した。
【0016】
故障判断手段によって油圧スイッチが故障したと判断されたとき、警告ブザーおよび警告灯の少なくともいずれかを作動させる如く構成したので、油圧スイッチの故障を操縦者に確実に警告することができ、よって油圧スイッチの故障に起因する油圧異常の誤検出を回避して内燃機関の焼き付きなどの故障を防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明の一つの実施の形態に係る船舶用内燃機関の油圧スイッチの故障検知装置を説明する。
【0018】
図1はその故障検知装置が搭載される推進機関を全体的に示す概略図であり、図2は図1の部分説明側面図である。
【0019】
図1および図2において符合10は前記した機関、プロペラシャフト、プロペラなどが一体化された推進機関(以下「船外機」という)を示す。船外機10は、図1に示す船舶(小型船)12の船尾にクランプユニット14(図2に示す)を介して装着される。
【0020】
図2に示す如く、船外機10は内燃機関(以下「エンジン」という)16を備える。エンジン16は火花点火式のV型6気筒ガソリンエンジンからなる。エンジン16は水面上に位置し、エンジンカバー20で覆われて船外機10の内部に配置される。エンジンカバー20で被覆されたエンジン16の付近には、マイクロコンピュータからなる電子制御ユニット(以下「ECU」という)22が配置される。
【0021】
図1に示す如く、船舶12の操縦席付近にはステアリングホイール24が配置される。操縦者によって入力されたステアリングホイール24の回転は、図示しないステアリング機構を介して船尾に取り付けられたラダー(図示せず)に伝えられ、進行方向を決定する。
【0022】
また、操縦席の右側にはスロットルレバー26が配置されると共に、その付近にはスロットルレバー位置センサ30が配置され、操縦者によって操作されるスロットルレバー26の位置に応じた信号を出力する。
【0023】
さらに、スロットルレバー26に隣接してシフトレバー32が配置されると共に、その付近にはニュートラルスイッチ34が配置され、操縦者によって操作(シフト)されたシフトレバー32がニュートラル位置にあるときオン信号を、前進(あるいは後進)位置にあるときオフ信号を出力する。
【0024】
上記したスロットルレバー位置センサ30およびニュートラルスイッチ34の出力は、信号線30a,34aを介してECU22に送られる。
【0025】
エンジン16の出力は、クランクシャフトおよびドライブシャフト(共に図示せず)を介して船外機10の水面下位置に配置されたクラッチ36に接続される。クラッチ36は、プロペラシャフト(図示せず)を介してプロペラ40に接続される。
【0026】
クラッチ36は公知のギヤ機構からなり、図示は省略するが、エンジン16が回転するときにドライブシャフトと一体に回転するドライブギヤと、ドライブギヤと噛合してプロペラシャフト上で相反する方向に空転する前進ギヤと後進ギヤ、およびその間をプロペラシャフトと一体に回転するドッグ(スライドクラッチ)を備える。
【0027】
ECU22は、信号線34aを通じて送られたニュートラルスイッチ34の出力に応じ、図示しない駆動回路を通じてアクチュエータ(電動モータ)42を意図されたシフト位置を実現するように駆動する。アクチュエータ42の駆動は、シフトロッド44を介してドッグに伝えられる。
【0028】
シフトレバー32がニュートラル位置に操作されると、エンジン16とプロペラシャフトとの回転は絶たれると共に、前進あるいは後進位置に操作(シフト)されると、ドッグは前進ギヤあるいは後進ギヤに噛合させられ、エンジン16の回転はプロペラシャフトを介してプロペラ40に伝達され、プロペラ40を前進方向あるいはそれと反対の後進方向に回転させて船舶12を前進あるいは後進させる。
【0029】
次いで図3を参照してエンジン16について説明する。
【0030】
図3に示すように、エンジン16は吸気管46を備え、エアクリーナ(図示せず)を介して吸入された空気は、スロットルバルブ50を介して流量を調整されつつ、正面視V字状を呈する左右バンクごとに設けられたインテークマニホルド52を流れ、インテークバルブ54に達する。インテークバルブ54の付近にはインジェクタ56(図3で図示省略)が配置され、ガソリン燃料を噴射する。
【0031】
インジェクタ56は、左右バンクごとに設けられた2本の燃料供給管58を介してガソリン燃料を貯蔵する燃料タンク(図示せず)に接続される。2本の燃料供給管58の中途にはそれぞれ燃料ポンプ60a,60bが介挿され、リレー回路62を介して電動モータ(図示せず)で駆動されてガソリン燃料をインジェクタ56に圧送する。尚、符合64は、蒸発燃料分離装置を示す。
【0032】
流入空気は噴射されたガソリン燃料と混合して混合気を形成し、各気筒燃焼室(図示せず)に流入し、点火プラグ66(図3で図示省略)で点火されて燃焼し、ピストン(図示せず)を下方に駆動する。よって生じたエンジン出力は、前記したクランクシャフトを介して取り出される。
【0033】
他方、燃焼後の排気ガスはエキゾーストバルブ68を通って左右バンクごとにエキゾーストマニホルド70を流れ、エンジン外に放出される。
【0034】
図示の如く、吸気管46はスロットルバルブ50の配置位置の上流で分岐すると共に、スロットルバルブ50の下流位置で吸気管46に再び接続される、二次空気供給用の分岐路(通路)72を形成する。分岐路72は二次空気制御バルブ(以下「EACV」という)74を備える。
【0035】
EACV74は前記したECU22に接続される。ECU22は後述するように通電指令値を演算してEACV74に供給し、EACV74を駆動して分岐路72の開度を調整する。このように、分岐路(通路)72とEACV74からなり、二次空気制御バルブの開度に応じた二次空気を供給する二次空気供給装置80が設けられる。
【0036】
さらに、スロットルバルブ50は、アクチュエータ(パルスモータ)82に接続される。アクチュエータ82はECU22に接続される。ECU22は前記したスロットルレバー位置センサ30の出力に応じて通電指令値を演算し、図示しない駆動回路を介してアクチュエータ82に供給し、スロットル開度THを調節する。
【0037】
より具体的には、アクチュエータ82は、スロットルバルブ50を収容するスロットルボディ50aに、その回転シャフト(図示せず)がスロットルバルブシャフトと同軸となるように、直接取り付けられる。即ち、アクチュエータ82をスロットルボディ50aに、リンク機構などを介することなく、直接取り付けるように構成し、機構を簡略化すると共に、取り付けスペースを省略するようにした。
【0038】
このように、この実施の形態においては、プッシュプルケーブルを除去し、アクチュエータ82をスロットルボディ50aに直接取り付けてスロットルバルブ50を駆動するようにした。
【0039】
エンジン16においてインテークバルブ54およびエキゾーストバルブ68の付近には可変バルブタイミング機構84が設けられる。可変バルブタイミング機構84は、エンジン回転数および負荷が比較的高いときバルブタイミングおよびリフト量を比較的大きい値(HiV/T)に切り替えると共に、エンジン回転数および負荷が比較的低いとき、バルブタイミングおよびリフト量を比較的小さい値(LoV/T)に切り替える。
【0040】
さらに、エンジン16の排気系と吸気系とはEGR通路86で接続されると共に、その中途にはEGR制御バルブ90が介挿され、所定の運転状態において排気ガスの一部を吸気系に還流させる。
【0041】
アクチュエータ82にはスロットル開度センサ92が接続され、スロットルバルブシャフトの回転に応じてスロットル開度THに比例した信号を出力する。また、スロットルバルブ50の下流には絶対圧センサ94が配置され、吸気管内絶対圧PBA(エンジン負荷)に応じた信号を出力する。また、エンジン16の付近には大気圧センサ96が配置され、大気圧PAに応じた信号を出力する。
【0042】
さらに、スロットルバルブ50の下流には吸気温センサ100が配置され、吸入空気温度TAに比例した信号を出力する。また、左右バンクのエキゾーストマニホルド70には3個のオーバーヒートセンサ102が配置され、エンジン温度に比例した信号を出力すると共に、その付近のシリンダブロック104の適宜位置には水温センサ106が配置され、エンジン冷却水温TWに比例した信号を出力する。また、エキゾーストマニホルド70にはO2 センサ110が配置され、排気ガス中の酸素濃度に応じた信号を出力する。
【0043】
また、エンジン16のVバンク付近の油圧回路(図示せず)には第1の油圧スイッチ(前記した第1の油圧検出手段)112、および第2の油圧スイッチ(前記した第2の油圧検出手段)114が配置され、油圧POに応じてオン/オフ信号をそれぞれ出力し、ECU22に送出する。
【0044】
次いで図4を参照してセンサおよびECU22の入出力の説明を続ける。尚、図3ではセンサおよびその信号線などの図示を一部省略した。
【0045】
搭載バッテリ116に接続された2個の燃料ポンプ60a,60bのモータ通電回路の途中には検出抵抗118a,118bが介挿され、その両端電圧は信号線120a,120bを介してECU22に入力される。ECU22は電圧降下を検知して通電電流を検出し、燃料ポンプ60a,60bの異常を判断する。
【0046】
また、クランクシャフトの付近にはTDCセンサ122,124およびクランク角センサ126が配置され、シリンダ判別信号、各ピストン上死点付近の角度信号および30度ごとのクランク角度信号を出力し、ECU22に送出する。ECU22は、クランク角センサ出力からエンジン回転数NEを算出する。
【0047】
さらに、EGR制御バルブ90の付近にはリフトセンサ132が配置され、EGR制御バルブ90のリフト量(バルブ開度)に応じた信号を出力してECU22に送出する。
【0048】
さらに、ACジェネレータ(図示せず)のF端子(ACGF)136の出力はECU22に入力されると共に、可変バルブタイミング機構84の油圧回路(図示せず)には3個の油圧スイッチ138が配置され、検出油圧に応じた信号を出力してECU22に送出する。
【0049】
ECU22は前記したようにマイクロコンピュータからなり、バックアップ用のEEPROM22aを備える。ECU22は上記した入力に従って後述する動作を行うと共に、PGM(ECU)異常時、オーバーヒート時、油圧異常時、第1および第2の油圧スイッチ112,114の少なくともいずれかの故障時、およびACGジェネレータ異常時、PGMランプ148、オーバーヒートランプ150、油圧ランプ152、油圧スイッチ故障ランプ154、およびACGランプ156を点灯すると共に、ブザー158を鳴動させて警告する。
【0050】
尚、図4において、この発明の要旨に直接関係しない残余の部位の説明は省略する。
【0051】
次いで、この実施の形態に係る船舶用内燃機関の油圧スイッチの故障検知装置について説明する。
【0052】
ここで、理解の便宜のため、先ずこの実施の形態に係る故障検知装置が故障検知の対象とする油圧検出手段を用いた、油圧異常警告装置の特徴について図5を参照して説明する。
【0053】
一般に、潤滑油の油圧POは、機関回転数NE、潤滑油温度TOによって図5のように変化する。同図において、直線TOLは潤滑油が低温度時における油圧特性を示し、直線TOHは潤滑油が高温度時における油圧特性を示す。同図からわかるように、機関回転数NEの低下に応じて油圧POが低下する。
【0054】
このため、油圧検出手段として油圧スイッチを1個のみ設け、単一の油圧スイッチのみで油圧異常、より詳しくは油圧不足の状態にあるか否かを検出しようとすると、油圧特性と油圧スイッチの作動油圧(POxで示す)との接点における回転数(NExで示す)以下の回転数域(図で斜線で示す)においては、本来正常な油圧であるにも関わらず油圧不足と判断してしまうため、低回転(NEx以下)時における油圧異常の検出を実行できなかった。
【0055】
特に、潤滑油の入れ忘れや、漏れなどによって著しい減少が生じている場合は、早急に異常を警告できることが望ましいが、前述した理由から、一定の回転数を超えるまでは油圧異常を検出できず、内燃機関の焼き付きなどの故障防止の大きな弊害となっていた。
【0056】
一方、低回転時における油圧異常を正確に検出するために、油圧スイッチの作動油圧を低く設定すると、高回転時の油圧異常を的確に検出できなかった。
【0057】
また、同図の2種の直線から理解できるように、油圧特性は潤滑油温度の変化に応じて変化する。具体的には、潤滑油温度が高い場合は、潤滑油温度が低い場合に比し、同じ機関回転数NEに対して低い油圧特性を示す。これは、潤滑油温度が高くなるとその粘性が低下するためである。
【0058】
このため、潤滑油温度の変化に起因する油圧特性の変化を十分考慮せずに油圧スイッチの作動油圧を設定すると、潤滑油温度の上昇に伴って油圧が低下した場合に油圧不足と誤検知するおそれがあった。
【0059】
以上の理由から、この実施の形態に係る故障検知装置が故障検知の対象とする油圧検出手段を用いた油圧異常警告装置にあっては、油圧検出手段として油圧スイッチを2つ設け、それぞれの作動点たる油圧を低圧側とそれよりも高い高圧側とに設定すると共に、機関回転数NEや潤滑油温度TOを考慮することで、低回転時から高回転時までにわたる正確な油圧異常の検出を可能とするように構成している。
【0060】
次いで、上記した油圧異常警告装置の動作について説明する。
【0061】
図6はその動作のうち、油圧異常検出動作を示すフロー・チャートである。尚、図示のプログラムは、例えば100msecごとにループされる。
【0062】
以下説明すると、S10においてエンジン16が始動モード(あるいはエンジンストール中)であるか否か判断する。これは検出したエンジン回転数NEが完爆回転数(例えば500rpm)に達したか否か判定することで判断し、肯定されるときはS12に進み、油圧異常検出動作キャンセルタイマtmOPS(ダウンカウンタ)に所定値#TMOPSをセットしてS14に進む。
【0063】
また、S10で否定されるときはS14に進み、前記した油圧異常検出動作キャンセルタイマtmOPSの値が零になったか否か判断する。尚、油圧異常検出動作キャンセルタイマtmOPSは、エンジン16の始動後、所定時間は油圧異常検出および後述の油圧アラートを実行しないようにするためのダウンカウンタである。
【0064】
S14で否定されるときはS16に進み、図7に示すテーブルデータよりエンジン冷却水温TWに応じたタイマ値TMOPCAを検索して油圧異常確定ディレイタイマtmOPCA(ダウンカウンタ。後述)にセットする。尚、同図に示すように、タイマ値TMOPCAはエンジン冷却水温TWの上昇に応じて増加するように予め設定される。この理由については後述する。
【0065】
続いてS18に進み、ブザー鳴動許可フラグF.OPSBUZのビットを0にリセットしてプログラムを終了する。尚、ブザー鳴動許可フラグF.OPSBUZのビットが1にセットされているときはブザーの鳴動を許可(実行)することを意味し、0にリセットされているときはブザーを鳴動しないことを意味する。
【0066】
他方、S14で肯定されるときはS20に進み、前記した第1の油圧スイッチ112がオン信号を出力しているか否かを判断する。
【0067】
ここで、図8を参照して第1および第2の油圧スイッチ112、114について説明する。第1の油圧スイッチ112は、エンジン16の潤滑油の油圧が同図に示す第1の所定油圧(作動油圧)PO1を超えているときにオフ信号を出力すると共に、第1の所定油圧PO1以下のときにオン信号を出力する。また、第2の油圧スイッチ114は、同様に第2の所定油圧(作動油圧)PO2を超えているときにオフ信号を出力すると共に、第2の所定油圧PO2以下のときにオン信号を出力する。
【0068】
尚、前述したように、潤滑油温度の上昇に伴って油圧が低下した場合に油圧不足と誤検知するおそれがある。従って、第1および第2の油圧スイッチ112、114の作動油圧(前記した第1および第2の所定油圧PO1、PO2)を、エンジン16が十分暖機された後の潤滑油温度、より具体的には、最高潤滑油温度TOmaxにおける油圧特性に対して設定する。これにより、潤滑油温度の上昇に伴う油圧低下を油圧不足と誤検知することがない。
【0069】
さらには、第1の所定油圧PO1を最高潤滑油温度かつ最低回転数NEmin(アイドリング回転数付近。例えば500rpm)時の油圧(例えば0.15kg/cm2 )とする。即ち、エンジン16の通常運転時に発生し得る最も低い油圧に設定することで、潤滑油の入れ忘れ、あるいは漏れなどによる潤滑油の著しい減少を早急に検出することができる。
【0070】
また、第2の所定油圧PO2を最高潤滑油温度かつ全負荷(高回転、高負荷)時の油圧、具体的には、最高潤滑油温度TOmaxにおける油圧特性において高回転(この実施の形態においては2500rpm)時の油圧(この実施の形態においては1.2kg/cm2 )とした。これにより、高負荷、高回転時における油圧不足を検出することができ、よってエンジンの焼き付きを効果的に防止することができる。
【0071】
図6フロー・チャートの説明に戻ると、S20で肯定されるとき、即ち、潤滑油の油圧POが第1の所定油圧PO1以下であるときは油圧異常と判断してS22に進み、ブザー解除タイマtmOPSBUA(ダウンカウンタ。後述)に所定の値をセットし、次いでS24に進み、ブザー鳴動許可フラグF.OPSBUZのビットを1にセットし、ブザー158を鳴動してプログラムを終了する。
【0072】
また、S20で否定されるときはS26に進み、第2の油圧スイッチ114がオン信号を出力しているか否か、即ち、潤滑油の油圧POが第2の所定油圧PO2以下か否か判断する。S26で肯定されるときはS28に進み、吸気管内絶対圧PBAの変化量DPBCYLが所定値#DPBOPSBを超えているか否か判断する。尚、吸気管内絶対圧の変化量DPBCYLは、検出された絶対圧PBAの前回値と今回値との差分をとることにより求められる。
【0073】
S28で肯定されるとき、換言すればエンジン16が過渡運転状態にあると判断されるときはS30に進み、前記した油圧異常確定ディレイタイマtmOPCAの値が零であるか否か判断する。他方、S28で否定されるとき、換言すればエンジン16が定常運転時(クルーズ時)にあると判断されるときはS32に進み、検出したエンジン回転数NEが、エンジン冷却水温TWに応じて決定される所定回転数NEOPSB以下か否か判断する。
【0074】
尚、所定回転数NEOPSBは、図9に示すようにエンジン冷却水温TWの上昇に応じて増加するように予め設定される。エンジン回転数NEが上昇すると、潤滑油の温度TOも上昇する。このとき、エンジン冷却水温TWも同時に上昇することから、エンジン回転数NEと潤滑油の温度TOとの関係を、エンジン回転数NEとエンジン冷却水温TWとの関係に置き換えることができる。また、前述の図5に示したように、エンジン回転数NEと潤滑油の油圧POの間には一定の比例関係が存在するため、エンジン冷却水温TWに応じて予め設定された所定回転数NEOPSBと検出したエンジン回転数NEを比較することにより、第2の所定油圧PO2の設定回転数(2500rpm)以下の回転数域においても油圧不足にあるか否かを正確に判断することができる。
【0075】
S32の判断について図8を再度参照しつつ詳説すると、例えば、潤滑油温度TOが前記した最高潤滑油温度TOmaxのときに、油圧POが第2の油圧PO2よりも低い油圧POAであり(S26で肯定)、かつ、検出されたエンジン回転数NEが所定回転数NEOPSB(ここでは2500rpmとする)よりも高いエンジン回転数NEAであるとき(同図にAで示す)は、S32において否定されて油圧不足と判断し、S22以降に進んでブザー158を鳴動する。
【0076】
一方、潤滑油温度TOが最高潤滑油温度TOmaxのときに、油圧POが第2の所定油圧PO2よりも低く、かつ、エンジン回転数NEが所定回転数NEOPSBよりも低いとき(同図にA’およびBで示す)はS32で肯定されてS30に進み、前記した如く油圧異常確定ディレイタイマtmOPCAの値が零であるか否か判断し、そこで肯定されない限り、以降の処理をスキップする。
【0077】
このように、油圧異常確定ディレイタイマtmOPCAとは、所定期間(前記したタイマ値TMOPCA)第2の油圧スイッチ114により油圧異常が検出され続けたときにのみその出力(油圧異常)を確定するように設定される。これにより、図10タイム・チャートに示すように油圧POが不安定な過渡期などにおいて、油圧POが微小期間のみ第2の所定油圧PO2以下になったときの一過性の事象を油圧異常と判断することがなく、それに続くブザー158の鳴動、および後述の油圧アラートの実行を防止することができる。尚、S30で肯定されるときは油圧異常と確定したことから、S22以降に進む。
【0078】
ここで、油圧POが第2の油圧PO2よりも低い油圧POAであるが実際には油圧不足の状態にないとき、即ち、エンジン回転数NEの低下によって油圧が不足しているとき(図8にA’で示す)、および実際に油圧不足にあるとき(同図にBで示す)におけるS30での処理を説明する。
【0079】
油圧POは、エンジン回転数NEの変動に対して遅れて追従する。より具体的に説明すると、例えば、エンジン回転数NEが低下すると油圧POが一時的に低下するが、エンジン回転数NEが低下したことにより油温TOも低下するため、結果的に油圧POは上昇する。このため、本来油圧不足の状態にないときは、所定期間(タイマ値TMOPCA)内に油圧が復帰し、前記したS26で否定されるので、S30に進むことがなく、よって油圧異常と確定されることはない。また、本来油圧不足の状態にあるときは、油圧が復帰することがないので、S30において所定時間後に油圧異常と確定される。
【0080】
このように、吸気管内絶対圧PBAおよびエンジン回転数NEに応じ、明らかに油圧異常と判断できるときは即座に第2の油圧スイッチ114の出力を確定すると共に、油圧POが復帰する可能性がある状況では、所定期間(タイマ値TMOPCA)その出力が継続した後に確定するように構成した。即ち、第2の油圧スイッチ114の出力に基づく油圧異常か否かの判断を吸気管内絶対圧PBAおよびエンジン回転数NEに応じて確定し(S28,S32)、さらには、状況(運転状態)によってはその出力が所定時間継続した後に確定する(S30)ように構成した。これにより、より一層正確な油圧異常の検出および警告が可能となり、よって内燃機関の焼き付き等の故障を確実に防止することができる。
【0081】
また、タイマ値TMOPCAは、前述したようにエンジン冷却水温TWの上昇に応じて増加するように設定される。これは、エンジン冷却水温TW(換言すれば油温TO)が上昇すればするほど油圧POが低下し、よってエンジン冷却水温TWが高いときほど、油圧POが第2の所定油圧PO2まで復帰するのに時間を要するためであり、このように設定することで、油圧異常の誤検知をより一層確実に防止することができる。
【0082】
図6フロー・チャートの説明に戻ると、S26で否定されるとき、換言すれば、油圧異常が生じていないと判断されるときはS34に進み、前記したS16と同様、タイマ値TMOPCAを検索してタイマtmOPCAにセットし、次いでS36に進む。
【0083】
S36では、前記したS22でセットしたブザー解除タイマtmOPSBUAの値が零であるか否かを判断する。ブザー解除タイマtmOPSBUAは、所定期間油圧異常が検出されなかったときに、その出力(油圧異常なし)を確定するように構成される。これにより、図10タイム・チャートに示すように、油圧POが微小期間のみ第2の所定油圧PO2を超えたとき(油圧が復帰したとき)や、誤検知によるブザー158の鳴動および後述の油圧アラートの解除を防止することができる。
【0084】
S36で否定されるときはS24に進んでブザー158の鳴動を継続すると共に、S36で肯定されるときはS18に進み、ブザー鳴動許可フラグF.OPSBUZのビットを0にリセットし、ブザー158の鳴動を停止してプログラムを終了する。
【0085】
次いで、図11フロー・チャートおよび図10タイム・チャートを再び参照して油圧アラートの実行制御について説明する。図示のプログラムも例えば100msecごとにループされる。
【0086】
先ず、S100においてブザー鳴動許可フラグF.OPSBUZのビットが1か否か判定し、肯定されてブザー鳴動中、即ち油圧異常と判断されるときはS102に進み、油圧アラート復帰ディレイタイマtmOPSALA(後述)に所定値TMOPSALAをセットしてスタートさせる。
【0087】
次いでS104に進み、後述するステップでセットされる油圧アラート実行ディレイタイマtmOPSALTが零か否か判断する。油圧アラート実行ディレイタイマtmOPSALTは、ブザー鳴動開始後、即ち油圧異常確定後から油圧アラート実行、即ち図10タイム・チャートに示す減速モード開始までの時間をカウントするダウンカウンタである。
【0088】
S104で肯定されるときはS106に進み、油圧アラート実行許可フラグF.OPSALTのビットを1にセットして油圧アラートを実行する。尚、油圧アラート実行許可フラグF.OPSALTは、そのビットが1にセットされているときに油圧アラートを実行し、0にリセットされているときは油圧アラートを実行しない。
【0089】
他方、S104で否定されるときはS108に進み、油圧アラート実行許可フラグF.OPSALTのビットを0にリセットする。
【0090】
また、S100において否定されてブザー158が鳴動中ではない、即ち油圧異常ではないと判断されるときはS110に進み、前記した油圧アラート実行許可フラグF.OPSALTのビットが1か否か判断する。ここで否定されるときはS112に進んで前記した油圧アラート実行ディレイタイマtmOPSALTに所定値TMOPSALTをセットし、さらにS108に進む。
【0091】
他方、S110で肯定されるときはS114に進み、前記した油圧アラート復帰ディレイタイマtmOPSALAが零か否か判断する。油圧アラート復帰ディレイタイマtmOPSALAは、ブザー鳴動停止後、即ち油圧異常が解消したと確定した後から図10タイム・チャートに示す復帰モードへ移行するまでの時間をカウントするダウンカウンタである。
【0092】
S114で肯定されるときはS112に進むと共に、否定されるときはそのままプログラムを終了する。
【0093】
ここで図10タイム・チャートを参照して油圧アラートの動作について説明する。油圧アラート実行許可フラグF.OPSALTのビットが1にセットされると、減速モードに移行し、図示しないフロー・チャートにおいて適宜燃料カットおよび点火カット制御を行い、所定期間tmALTLごとに所定回転数DNEALTLずつエンジン回転数NEを低下させる。
【0094】
焼き付きの恐れがない所定回転域NEALTLまでエンジン回転数NEを低下させると、その後、油圧アラート実行許可フラグF.OPSALTのビットが0にリセットされるまでエンジン回転数NEを所定回転域NEALTLに保持する。
【0095】
油圧アラート実行許可フラグF.OPSALTのビットが0にリセットされると、次いで復帰モードに移行し、操船者要求回転数まで、所定期間tmALTHごとに所定回転数DNEALTHずつエンジン回転数NEを上昇させる。
【0096】
以上を前提として、以下、この実施の形態に係る船舶用内燃機関の油圧スイッチの故障検知装置の動作を説明する。
【0097】
図12は、その動作を示すフロー・チャートである。尚、図示のプログラムは、例えば100msecごとにループされる。
【0098】
以下説明すると、S200においてエンジン16が始動モード(あるいはエンジンストール中)であるか否か判断する。これは、前述したS10と同様に、検出したエンジン回転数NEが完爆回転数(例えば500rpm)に達したか否か判定することで判断する。
【0099】
S200で肯定されるときは、次いでS202に進んでエンジン冷却水温TWあるいは吸入空気温度TAに基づいてタイマ値TMDTCTを検索し、S204で検索したタイマ値TMDTCTを故障検知実行タイマtmDTCTにセットする。ここで、故障検知実行タイマtmDTCTとは、第2の油圧スイッチの故障検知を実行するか否かを判断するためのダウンカウンタであり、続いて述べる如く、この故障検知実行タイマtmDTCTの値が0になるまでは第2の油圧スイッチの故障検知を実行しない。
【0100】
この理由について説明すると、前述したように、潤滑油の油圧特性は潤滑油温度TOの変化に応じて変化することから、潤滑油温度TOがある所定の温度付近にあるときに油圧スイッチの出力チェックを行うことが望ましい。このため、エンジン16の始動から所定時間(タイマ値TMDTCT)経過後、即ち、潤滑油温度TOがある所定の温度まで上昇したと考えられるときに行うことで、第2の油圧スイッチ114の故障の誤検知を防止することができる。
【0101】
これについて図8を再度参照して詳説する。今、油量一定で、かつエンジン回転数NEが2500rpm以下であるとすると、潤滑油温度が低い場合(TOL)、油圧POは第2の所定の油圧PO2を上回っていることから、第2の油圧スイッチ114はオフ信号を出力する。これに対し、潤滑油温度が高い場合(TOmax)、油圧POは第2の所定の油圧PO2を下回っていることから、第2の油圧スイッチ114はオン信号を出力する。このように、潤滑油温度TOによって油圧スイッチの出力が変化することから、油圧スイッチの故障を誤検知する可能性があるが、上記したように潤滑油温度TOがある所定の温度まで上昇したと考えられるときに行うことで、それを防止することができる。
【0102】
また、このような理由から、タイマ値TMDTCTは図13および図14に示す如く、エンジン冷却水温TWあるいは吸入空気温度TAに応じて設定される。具体的には、エンジン冷却水温TWあるいは吸入空気温度TAが上昇するのに応じて小さな値となるように設定される。これは、エンジン冷却水温TWあるいは吸入空気温度TAが低いときは、潤滑油温度TOがある所定の温度付近まで上昇するのにある程度の時間を要すると共に、逆にエンジン冷却水温TWあるいは吸入空気温度TAが高いときは、潤滑油温度TOがある所定の温度付近まで上昇するのにさほど時間を要しないためである。
【0103】
図12フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS206に進み、通過確認フラグF.CONF(後述)のビットを0にリセットする。
【0104】
他方、S200で否定されるときはS208に進み、低圧側の第1の油圧スイッチ112がオン信号を出力しているか否か、即ち、第1の所定油圧PO1が検出されていないか否かを判断する。ここで否定されるとき、換言すれば、低圧側の第1の油圧スイッチ112がオフ信号を出力していて第1の所定油圧PO1が検出されているときは、次いでS210に進んで低圧(第1の所定油圧PO1)有りと確定してS212に進み、高圧側の第2の油圧スイッチ114がオン信号を出力しているか否か、即ち、第2の所定油圧PO2が検出されていないか否かを判断する。
【0105】
S212で否定されるとき、換言すれば、高圧側の第2の油圧スイッチ114がオフ信号を出力していて第2の所定油圧PO2が検出されているときは、次いでS214に進んで高圧(第2の所定油圧PO2)有りと確定し、次いでS216に進んで第1および第2の油圧スイッチ112,114共に故障していないと判断すると共に、さらにS218に進み、故障検知カウンタAを0にリセットする。尚、故障検知カウンタAとは、第2の油圧スイッチ114が故障している可能性のあるとき(第2の所定油圧PO2を検出していない、即ち、オン信号が出力され、オフ信号が出力されていないとき)にインクリメントされるアップカウンタである。
【0106】
他方、S212で肯定されるとき、換言すれば、高圧側の第2の油圧スイッチ114がオン信号を出力していて第2の所定油圧PO2が検出されていないときは、次いでS220に進み、前記した故障検知実行タイマtmDTCTが0であるか否か判断する。S220で否定されるときは、前記したように誤検知する可能性があることから以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときは次いでS222に進み、エンジン回転数NEが故障検知実行回転数NEDTCT(所定回転数)以上か否か判断する。
【0107】
これは、上記したように、油圧は機関回転数の変化に応じても変化することを考慮に入れたもので、故障検知を機関回転数が所定の回転数以上のときに行うことで、誤検知を防止することができる。
【0108】
これについて図8を参照して詳説する。今、油量一定で、かつ潤滑油温度TOがTOmaxで一定とすると、エンジン回転数が2500rpm以上の場合、油圧POは第2の所定の油圧PO2を上回っていることから、第2の油圧スイッチ114はオフ信号を出力する。これに対し、エンジン回転数が2500rpm未満の場合、油圧POは第2の所定の油圧PO2を下回っていることから、第2の油圧スイッチ114はオン信号を出力する。このように、エンジン回転数NEによっても油圧スイッチの出力が変化することから、油圧スイッチの故障を誤検知する可能性があるが、上記したようにエンジン回転数NEがある所定の回転数まで上昇したときに行うことで、それを防止することができる。
【0109】
また、故障検知実行回転数NEDTCTは、前記した故障検知実行タイマtmDTCTの値が0になるまでの間に上昇するであろう潤滑油温度(上記の例で言えばTOmax)における油圧特性に従い、第2の油圧スイッチ114がオフ信号を出力する油圧、即ち、第2の所定油圧PO2と成り得る回転数(同様に上記の例で言えば2500rpm)に予め設定される。このため、S212において第2の油圧スイッチ114が第2の所定油圧PO2を検出していないにも関わらず、S220およびS222で肯定されるということは、第2の油圧スイッチ114が故障している可能性があることを示唆する。
【0110】
S222で否定されるときは油圧スイッチの故障を誤検知する可能性があることから以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときは次いでS224に進み、通過確認フラグF.CONF(後述)のビットが1にセットされているか否か判断する。
【0111】
S224で肯定されるときは以降の処理をスキップすると共に、否定されるときはS226に進んで故障検知カウンタAをインクリメントする。尚、この故障検知カウンタAの値は、エンジン16の停止後もバックアップ用のEEPROM22aに記憶される。
【0112】
次いでS228に進み、故障検知カウンタAが2以上か否か判断し、否定されるときはS230に進んで通過確認フラグF.CONFのビットを1にセットする。他方、肯定されるときはS232に進み、第2の油圧スイッチが故障していると判断すると共に、S234に進み、警告装置を作動させる、具体的には、油圧スイッチ故障ランプ154を点灯させると共に、ブザー158を鳴動させる。
【0113】
このため、第1および第2の油圧スイッチ112,114の故障を操縦者に確実に警告することができ、よって油圧スイッチの故障に起因する油圧異常の誤検出を回避して内燃機関16の焼き付きなどの故障を防止することができる。
【0114】
ここで、通過確認フラグF.CONFと故障検知カウンタAの関係について説明する。上記から明らかなように、通過確認フラグF.CONFは、故障検知カウンタAの値が1のときにのみそのビットが1にセットされる。1にセットされたときは、S224において肯定されて故障検知カウンタAのさらなるインクリメントがなされない。一方、次回のエンジン16の始動時にS200で肯定されて始動モードと判断されるときは、S206においてそのビットが0にリセットされる。このため、S200で否定される、即ち、次回始動時で始動モード終了後には故障検知カウンタAのさらなるインクリメントがなされ得る。
【0115】
また、故障検知カウンタAは、前記したように、第2の油圧スイッチ114が故障している可能性があるときにインクリメントされ、その値が2以上になったときに故障と判断される。一方で、第2の油圧スイッチ114に故障の可能性がないときには、S218において0にリセットされる。
【0116】
以上から分かるように、この実施の形態においては、前回始動時と今回始動時とで、少なくとも2回連続して第2の油圧スイッチ114に故障の可能性がある(2回連続して第2の所定油圧PO2を検出していない、即ち、2回連続してオン信号が出力され、オフ信号が出力されていない)ときにのみ、第2の油圧スイッチ114が故障していると判断される。これは、第2の油圧スイッチ114が第2の所定油圧PO2を検出しない理由として、故障の他に、単に油量が少ないことが考えられるためである。
【0117】
しかしながら、油量が少ない場合は、前述した図6フロー・チャートのS24でブザ−158を鳴動させて警告していることから、エンジン16の停止後、通常は潤滑油が規定レベルまで補充されると考えられる。従って、前回始動時と今回始動時とで、少なくとも2回連続して第2の油圧スイッチ114に故障の可能性があると認められれば、故障と判断することができ、単なる油量低下を第2の油圧スイッチ114の故障と誤検知してしまうことを防止することができる。
【0118】
図12フロー・チャートの説明を続けると、S208で肯定されるとき、換言すれば、低圧側の第1の油圧スイッチ112がオン信号を出力していて第1の所定油圧PO1が検出されていないときは、次いでS236に進み、S212と同様に、高圧側の第2の油圧スイッチ114がオン信号を出力しているか否か判断する。
【0119】
S236で肯定されるとき、即ち、第1および第2の油圧スイッチ112,114が共に第1および第2の所定油圧PO1,PO2を検出していないときは、第1および第2の油圧スイッチ112,114の両方が故障している可能性があるとしてS224以降の処理に進む。
【0120】
他方、S236で否定されるとき、即ち、第2の油圧スイッチ114が第2の所定油圧PO2を検出しているにも関わらず、第1の油圧スイッチ112が第1の所定油圧PO1を検出していないときは、S232に進んで第1の油圧スイッチ112が故障していると判断する。
【0121】
尚、第1の油圧スイッチ112の故障検知の実行に関し、潤滑油温度TOやエンジン回転数NEの諸条件がないのは、以下の理由による。即ち、前記したように、第1の油圧スイッチ112が検出すべき第1の所定油圧PO1は、エンジン16の通常運転時(始動モード時以外)に発生し得る最も低い油圧に設定されており、始動モード終了後であれば、運転状態に関わらず、第1の所定油圧PO1が検出されることが前提であるためである。
【0122】
尚、第1の油圧スイッチ112が故障と判断されるとき、即ち第1の油圧スイッチ112がオン信号を出力しているときは、図6フロー・チャートのS20で否定され、S24においてブザー158を鳴動させて油圧低下が警告されており、いわゆるダブルフェール状態となる。
【0123】
図15に、図12フロー・チャートにおける第1および第2の油圧スイッチ112,114の出力と、その故障検知の判断結果についてまとめて整理する。
【0124】
同図におけるパターン1は、図12フロー・チャートのS208で否定されると共に、S212でも否定されるとき、即ち、第1および第2の油圧スイッチ112,114がそれぞれ第1および第2の所定油圧PO1,PO2を検出して共にオフ信号を出力しているときである。このときは、第1および第2の油圧スイッチ112,114共に正常に作動していることから、S216において正常(故障していない)と判断される。
【0125】
また、パターン2は、S208で否定されると共に、S212で肯定されるとき、即ち、第1の油圧スイッチ112は第1の所定油圧PO1を検出してオフ信号を出力しているのに対し、第2の油圧スイッチ114にあっては第2の所定油圧PO2が検出されずオン信号を出力しているときである。この状態がエンジン16を2回始動して連続して確認されれば、上記した理由から、S232において第2の油圧スイッチ114の故障と判断される。尚、これは、S220やS222において、故障検知の実行が認められているときであるのはいうまでもない。
【0126】
また、パターン3は、S208で肯定されると共に、S236で否定されるとき、即ち、第2の油圧スイッチ114は第2の所定油圧PO2を検出してオフ信号を出力しているのに対し、第1の油圧スイッチ112にあっては第1の所定油圧PO1が検出されずオン信号を出力しているときである。このときは、高圧側の第2の油圧スイッチ114が高圧側の第2の所定油圧OP2を検出しているのに関わらず、低圧側の第1の油圧スイッチ112において油圧が検出されていないことから、S232において、第1の油圧スイッチ112の故障と判断される。
【0127】
また、パターン4は、S208で肯定されると共に、S236でも肯定されるとき、即ち、第1および第2の油圧スイッチ112,114が共に第1および第2の所定油圧PO1,PO2を検出することなくオン信号を出力しているときである。この状態がエンジン16を2回始動して連続して確認されれば、第1および第2の油圧スイッチ112,114共に故障と判断する。
【0128】
以上のように、この発明の一つの実施の形態においては、第1および第2の油圧スイッチ112,114が、内燃機関の運転状態に応じた所定の出力値(具体的には、エンジン16の始動から故障検知実行タイマtmDTCT経過後、かつ、故障検知実行回転数NEDTCT以上のときの油圧POに応じた出力値)を出力しているか否かを判断することから、第1および第2の油圧スイッチ112,114の故障を検知することができる。また、故障の検知に際し、新たな部品的構成を追加することがないため、コストアップを招くことがない。
【0129】
また、故障検知を、エンジン16の始動から所定時間(タイマ値TMDTCT)経過後、即ち、潤滑油温度TOがある所定の温度まで上昇したと考えられるときに行うことで、故障の誤検知を防止することができ、よってより正確に第1および第2の油圧スイッチ112,114、特に第2の油圧スイッチ114の故障を検知することができる。
【0130】
また、油圧は機関回転数の変化に応じても変化することを考慮に入れ、故障検知を機関回転数が所定の回転数NEDTCT以上のときに行うことで、誤検知を防止することができ、よってより一層正確に第1および第2の油圧スイッチ112,114、特に第2の油圧スイッチ114の故障を検知することができる。
【0131】
また、第1および第2の油圧スイッチ112,114の少なくともいずれかが故障と判断されるときに、警告装置を作動させる、具体的には、油圧スイッチ故障ランプ154を点灯させると共に、ブザー158を鳴動させるので、第1および第2の油圧スイッチ112,114の故障を操縦者に確実に警告することができ、よって油圧スイッチの故障に起因する油圧異常の誤検出を回避して内燃機関16の焼き付きなどの故障を防止することができる。
【0132】
また、前回始動時と今回始動時とで、少なくとも2回連続して第2の油圧スイッチ114に故障の可能性があると認められるとき(即ち、2回連続してオフ信号を出力しないとき)にのみ故障と判断されることから、単なる油量低下を第2の油圧スイッチ114の故障と誤検知してしまうことを防止することができ、よってより一層正確に第1および第2の油圧スイッチ112,114、特に第2の油圧スイッチ114の故障を検知することができる。
【0133】
以上の如く、この発明の一つの実施の形態にあっては、船舶12に搭載される内燃機関(エンジン16)の潤滑油の油圧POが所定油圧PO2以下であるとき出力(オン信号)を生じる油圧スイッチ(第2の油圧スイッチ114)の故障を検知する故障検知装置において、前記内燃機関の温度に関連するパラメータ(エンジン冷却水温TW,吸入空気温度TA)に応じて故障検知を実行すべき時間(タイマ値TMDTCT)を設定する故障検知実行時間設定手段(ECU22,S202,S204)、前記内燃機関が始動された後、前記設定された故障検知実行時間の経過を計測する時間計測手段(ECU22,S220)、前記油圧スイッチが前記出力を生じるか否か判断する油圧スイッチ出力判断手段(ECU22,S212)、および前記故障検知実行時間の経過が計測された後に前記油圧スイッチが前記出力を生じたとき、前記油圧スイッチが故障したと判断する故障判断手段(ECU22,S212,S220,S232)、を備える如く構成した。
【0135】
さらに、前記内燃機関の機関回転数(エンジン回転数NE)を検出する機関回転数検出手段(ECU22、クランク角センサ126)、を備えると共に、前記故障判断手段は、前記故障検知実行時間の経過が計測された後で前記検出された機関回転数が所定の回転数NEDTCT以上のときに前記油圧スイッチが前記出力を生じたとき、前記油圧スイッチが故障したと判断する(ECU22,S212,S220,S222,S232)如く構成した。
【0137】
また、前記故障判断手段によって前記油圧スイッチが故障したと判断されたとき、警告ブザー(ブザー158)および警告灯(油圧スイッチ故障ランプ154)の少なくともいずれかを作動させる(ECU22,S234)如く構成した。
【0138】
尚、上記において、オン・オフ信号を出力する油圧スイッチを例にとって説明したが、油圧に応じた出力を生じる油圧センサにもこの発明は同様に妥当する。
【0139】
また、第1の所定油圧PO1を、通常運転時に発生し得る最低油圧に設定したがそれに限られるものではなく、第2の所定油圧PO2以下の油圧であれば適宜な値に設定してよい。この場合の第1の油圧スイッチ112の故障検知に際しては、第2の油圧スイッチ114の故障検知と同様に、潤滑油温度TO(換言すれば、タイマ値TMDTCT)およびエンジン回転数NEといった故障検知を実行するか否かを判断する諸条件を適宜設定することは言うまでもない。
【0140】
また、この発明の実施の形態を船外機を例にとって説明したが、それに限られるものではなく、この発明は船内機関にも妥当する。
【0141】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、内燃機関の温度に関連するパラメータに応じて故障検知を実行すべき時間を設定する故障検知実行時間設定手段、内燃機関が始動された後、設定された故障検知実行時間の経過を計測する時間計測手段、油圧スイッチが出力を生じるか否か判断する油圧スイッチ出力判断手段、および故障検知実行時間の経過が計測された後に油圧スイッチが出力を生じたとき、油圧スイッチが故障したと判断する故障判断手段、を備える如く構成したので、正確に油圧検出手段の故障を検知することができる。具体的には、油圧特性は潤滑油温度の変化に応じて変化することから、故障検知を内燃機関の始動から所定時間経過した後、即ち、潤滑油温度がある所定の温度まで上昇したときに行うことで、誤検知を防止することができる。また、故障の検知に際し、新たな部品的構成を追加することがないため、コストアップを招くことがない。
【0144】
請求項2項にあっては、さらに、内燃機関の機関回転数を検出する機関回転数検出手段、を備えると共に、故障判断手段は、故障検知実行時間の経過が計測された後で検出された機関回転数が所定の回転数以上のときに油圧スイッチが出力を生じたとき、油圧スイッチが故障したと判断する如く構成したので、より一層正確に油圧スイッチの故障を検知することができる。
【0145】
具体的には、油圧は機関回転数の変化に応じても変化することから、故障検知を機関回転数が所定の回転数以上のときに行うことで、誤検知を防止することができる。
【0147】
請求項3項にあっては、故障判断手段によって油圧スイッチが故障したと判断されたとき、警告ブザーおよび警告灯の少なくともいずれかを作動させる如く構成したので、油圧スイッチの故障を操縦者に確実に警告することができ、よって油圧スイッチの故障に起因する油圧異常の誤検出を回避して内燃機関の焼き付きなどの故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一つの実施の形態に係る船舶用内燃機関の油圧スイッチの故障検知装置が搭載される推進機関を全体的に示す説明図である。
【図2】 図1の部分説明側面図である。
【図3】 図1に示すエンジンを詳細に示す概略図である。
【図4】 図1に示す電子制御ユニット(ECU)の入出力を詳細に示すブロック図である。
【図5】 潤滑油の油圧POとエンジン回転数NEおよび潤滑油温度TOの関係を示すグラフである。
【図6】 図1に示す船舶用内燃機関の油圧検出手段の故障検知装置が故障検知の対象とする油圧検出手段を用いた油圧異常警告装置の動作の中の油圧異常検出動作を示すフロー・チャートである。
【図7】 図6フロー・チャートで触れるタイマ値TMOPCAとエンジン冷却水温TWとの関係を示すグラフである。
【図8】 潤滑油の油圧POとエンジン回転数NEおよび潤滑油温度TOの関係を示すグラフである。
【図9】 図6フロー・チャートで触れる所定回転数NEOPSBとエンジン冷却水温TWとの関係を示すグラフである。
【図10】 図6フロー・チャートの処理などを説明するタイム・チャートである。
【図11】 図1に示す船舶用内燃機関の油圧スイッチの故障検知装置が故障検知の対象とする油圧検出手段を用いた油圧異常警告装置の動作の中の油圧アラート動作を示すフロー・チャートである。
【図12】 図1に示す船舶用内燃機関の油圧スイッチの故障検知装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図13】 図12フロー・チャートで触れるタイマ値TMDTCTとエンジン冷却水温TWとの関係を示すグラフである。
【図14】 図12フロー・チャートで触れるタイマ値TMDTCTと吸入吸気温度TAとの関係を示すグラフである。
【図15】 図12フロー・チャートにおける第1および第2の油圧検出手段の出力とそれらの故障の判断の関係をまとめた表である。
Claims (3)
- 船舶に搭載される内燃機関の潤滑油の油圧が所定油圧以下であるとき出力を生じる油圧スイッチの故障を検知する故障検知装置において、
a.前記内燃機関の温度に関連するパラメータに応じて故障検知を実行すべき時間を設定する故障検知実行時間設定手段、
b.前記内燃機関が始動された後、前記設定された故障検知実行時間の経過を計測する時間計測手段、
c.前記油圧スイッチが前記出力を生じるか否か判断する油圧スイッチ出力判断手段、
および
d.前記故障検知実行時間の経過が計測された後に前記油圧スイッチが前記出力を生じたとき、前記油圧スイッチが故障したと判断する故障判断手段、
を備えることを特徴とする船舶用内燃機関の油圧スイッチの故障検知装置。 - さらに、
e.前記内燃機関の機関回転数を検出する機関回転数検出手段、
を備えると共に、前記故障判断手段は、前記故障検知実行時間の経過が計測された後で前記検出された機関回転数が所定の回転数以上のときに前記油圧スイッチが前記出力を生じたとき、前記油圧スイッチが故障したと判断することを特徴とする請求項1項記載の船舶用内燃機関の油圧スイッチの故障検知装置。 - 前記故障判断手段によって前記油圧スイッチが故障したと判断されたとき、警告ブザーおよび警告灯の少なくともいずれかを作動させることを特徴とする請求項1項または2項記載の船舶用内燃機関の油圧スイッチの故障検知装置。
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