JP3979098B2 - 電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents
電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やプリンターの分野において用いられる電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体は有機光導電物質を含有する有機感光体が最も広く用いられている。有機感光体は可視光から赤外光まで各種露光光源に対応した材料を開発しやすいこと、環境汚染のない材料を選択できること、製造コストが安いことなどが他の感光体に対して有利な点であるが、機械的強度が弱く、多数枚の複写やプリント時に感光体表面の劣化や傷が発生することである。
【0003】
また、電子写真プロセスに目を向けると潜像画像形成方式は、ハロゲンランプを光源とするアナログ画像形成とLEDやレーザーを光源とするデジタル方式の画像形成に大別される。最近はパソコンのプリンターとして、また通常の複写機においても画像処理の容易さや複合機への展開の容易さからデジタル方式の潜像画像形成方式が急激に主流となりつつある。
【0004】
デジタル方式の画像形成では、コピーのみならず、オリジナル画像を作成する使用法が多くなり、デジタル方式の電子写真画像形成はより高画質が要求される傾向にある。
【0005】
上記高画質化技術の1つがトナーの小粒径化であるが、トナーを小粒径化すると、トナーの感光体への付着力が大きくなり、トナーの感光体から記録紙への転写性の低下や、クリーニング性が低下するという問題が発生しやすい。転写性が低下すると単に画像濃度が低下するだけでなく、文字画像等の一部に空白部分が発生する「中抜け」と称される画像欠陥が発生しやすい。又、クリーニング性が低下すると感光体上の残留トナーが十分に除去されず、いわゆる「トナーのすり抜け」が発生し、これがトナーフィルミングになり、「白抜け」等の画像欠陥を発生しやすい。又、感光体とクリーニングブレードの摩擦抵抗が大きくなると「ブレード鳴き」と呼ばれる異常音が発生し、同時に「ブレード捲れ(ブレードが反転する現象)」を引き起こしやすい。
【0006】
前記のような課題を解決するためのアプローチとして、感光体の表面に微粒子を含有させて、表面を低表面エネルギー状態し、感光体表面のトナーの付着力を低減し、転写性を改良したり、ブレードとの摩擦力を低減させるなどの技術が検討されてきた。例えば特開平5−181291号公報では感光層にアルキルシルセスキオキサン樹脂微粒子を含有させることが報告されている。しかし、アルキルシルセスキオキサン樹脂微粒子は吸湿性があり、高湿環境下では感光体の表面の濡れ性、即ち表面エネルギーが大きくなり、感光層の表面層とブレードとの摩擦力が増加し、ブレード鳴きが発生すると共に、解像度が低下するといった問題が発生する。一方、特開昭63−56658号公報では感光層にフッ素樹脂粉体を含有させた感光層が報告されている。しかしながらフッ素樹脂粉体では十分な表面強度が得られず、感光体表面の傷に起因したスジ故障は発生し易いという問題があった。
【0007】
これらの問題に対して検討を行った結果、粒子の濡れ性を改善するには粒子表面にフッ素原子含有基の導入が有効であるが、ブレード鳴きを抑制し、感光体表面強度を改善するには微粒子自体の濡れ性の改善に加えて、微粒子を感光層に均一に分散することが重要であることを見出された。フッ素原子含有基が導入された微粒子は微粒子自体の濡れ性は低下するが、感光層の濡れ性を改善するには微粒子自体の濡れ性改善と均一分散性の改善が必要であることが明らかとなった。しかしながら、これまで公開された微粒子分散技術では、尚十分な分散性が達せされていない。
【0008】
一方、感光層のバインダーにシロキサン部分構造を持つ共重合ポリカーボネートを用い、感光体表面の表面エネルギーの低下させる技術が特開平5−88398号、特開平11−65136号等に記載されている。しかしながらこれらのシロキサン部分構造を持つ共重合ポリカーボネートは高湿下で、表面エネルギーが高くなる傾向にあり、クリーニング性の低下やブレード鳴きを発生させ、解像度も低下する傾向にあり、これまでの課題を十分に解決し得ていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、画像品質を向上させ且つ環境依存性を低減できる高耐久の電子写真感光体(以下、単に感光体とも云う)を提供すること、更に、トナーのクリーニング性能やブレードの鳴きを解決した優れた電子写真感光体を提供すること、更に高湿環境でも鮮明な画像を得ることが出来る電子写真感光体を提供すること、該電子写真感光体の製造方法、該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は以下のような構成を取ることにより達成される。
【0011】
1.導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、
該電子写真感光体の表面層がシロキサン部分構造を持つポリカーボネートと重合性官能基を有する化合物又は該化合物から形成された重合体とを含有することを特徴とする電子写真感光体であって、
前記重合性官能基を有する化合物が下記一般式(2)で表されるビニルモノマーであり、
【化B】
(一般式(2)中、R 5 〜R 7 は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、Xは酸素原子、COO、CONH、R f はフッ素原子を含む炭素数5〜20のアルキル基を示す)
更に、前記表面層を形成するに際し、前記重合性官能基を有する化合物は、前記シロキサン部分構造を持つポリカーボネートを溶媒に溶解させた溶液中に重合開始剤と共に分散或いは溶解させ、これらの混合液中で該重合性官能基を有する化合物の重合を進行させて、該シロキサン部分構造を持つポリカーボネートとは相分離状態にある重合体を形成し、この結果得られた混合溶液を表面層の塗布母液として用いることを特徴とする電子写真感光体。
【0012】
2.前記導電性支持体上に中間層、電荷発生層、電荷輸送層及び表面層を有することを特徴とする前記1に記載の電子写真感光体。
【0013】
3.前記表面層が電荷輸送物質を含有することを特徴とする前記1又は2に記載の電子写真感光体。
【0014】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【0015】
5.前記4に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【0016】
6.少なくとも前記1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体と帯電器、像露光器、現像器、転写器、クリーニング器の少なくとも1つを一体として有しており、画像形成装置に出し入れ可能に構成されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
上記シロキサン部分構造を持つポリカーボネートは表面層のバインダー成分として機能し、重合性官能基を有する化合物又は該化合物から形成された重合体は表面層の添加剤としての機能を有し、主としてシロキサン部分構造を持つポリカーボネートの高湿条件下での吸湿性を改善する機能を有する。
【0021】
本発明の重合性官能基を有する化合物とは、ラジカル重合、縮合重合、付加重合等の何れかの重合系で用いられる単量体化合物を意味し、例えばラジカル重合の場合はビニル系化合物等のモノマー、縮合重合の場合は多価アルコール化合物、ジカルボン酸化合物等、付加重合の場合はエポキシ化合物等を意味する。
【0023】
前記一般式(2)で示される重合性官能基を有する化合物又は該化合物から形成された重合体はバインダー成分のシロキサン部分構造を持つポリカーボネートと共に感光体の表面層を形成させると、シロキサン部分構造を持つポリカーボネートの高温高湿条件下での撥水性を改善し、低温低湿条件は勿論高温高湿条件下でも感光体表面層の表面張力、表面エネルギーを低減させ、表面に撥水性を持たせることができ、画像欠陥を発生させることなく、且つトナーの転写性、クリーニング性、耐摩耗特性に優れた表面層を形成することができる。
【0025】
前記一般式(2)のビニルモノマーの具体例としては下記のような炭素数の5以上の長鎖アルキル基を含むビニル系モノマーが挙げられる。
【0026】
化合物No.2−1 1H,1H,11H−アイコサフルオロデシルアクリレート
化合物No.2−2 1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリレート
化合物No.2−3 1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート
化合物No.2−4 1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート
化合物No.2−5 1H,1H,11H−アイコサフルオロデシルメタアクリレート
化合物No.2−6 1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルメタアクリレート
化合物No.2−7 1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタアクリレート
化合物No.2−8 1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート
化合物No.2−9 3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタアクリレート
化合物No.2−10 2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタアクリレート
化合物No.2−11 N−(1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル)アクリルアミド
化合物No.2−12 N−(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)アクリルアミド
化合物No.2−13 N−(1H,1H,11H−アイコサフルオロデシル)メタアクリルアミド
化合物No.2−14 N−(1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル)メタアクリルアミド
化合物No.2−15 N−(1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル)メタアクリルアミド
化合物No.2−16 N−(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)メタアクリルアミド
化合物No.2−17 1H,1H,11H−アイコサフルオロデシルビニルエーテル
化合物No.2−18 1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルビニルエーテル
化合物No.2−19 1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルビニルエーテル
化合物No.2−20 1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルビニルエーテル
化合物No.2−21 3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)ビニルエーテル
化合物No.2−22 2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)ビニルエーテル
化合物No.2−23 N−(1H,1H,11H−アイコサフルオロデシル)メタアクリルアミド
化合物No.2−24 N−(1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル)アクリルアミド
次に、本発明のシロキサン部分構造を持つポリカーボネートとはカーボネート構造(−OCOO−)の繰り返し単位を有する化学構造中にシロキサン基(−SiO−)を有するポリカーボネート及びシロキサン基を有する繰り返し単位とシロキサン基を持たない繰り返し単位の共重合ポリカーボネートを云う。
【0027】
このシロキサン部分構造を有するポリカーボネートとしては、特開平5−88398号、特開平11−65136号等に記載のポリカーボネートを用いることが出来る。
【0028】
即ち、上記シロキサン部分構造を有するポリカーボネートとは、例えば下記一般式(3)、一般式(4)で示されるようにポリジアルキルシロキサン部分構造を有するカーボネート構造の繰り返し単位を有することが好ましい。
【0029】
【化3】
【0030】
(一般式(3)中、R8は炭素数2〜6のアルキレン基又はアルキリデン基、R9及びR10は炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基、nは1〜200の整数を示す。)
【0031】
【化4】
【0032】
(一般式(4)中、Rは夫々同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、Bは(CH2)xで、xは2〜6の整数、nは0〜200、mは1〜50の範囲内とする)又、本発明のシロキサン部分構造を有するポリカーボネートは上記ポリジアルキルシロキサン部分構造を有するカーボネート構造の繰り返し単位と下記一般式(5)で表されるシロキサン部分構造を持たないカーボネート構造の繰り返し単位の共重合体であることが好ましい。
【0033】
【化5】
【0034】
(一般式(5)中、Aは単結合、炭素数1〜10の直鎖、分岐鎖あるいは環状のアルキリデン基、アリール置換アルキリデン基、アリーレンジアルキリデン基、又は−O−,−S−,−CO−,−SO−および−SO2−を示し、R11、R12、R13及びR14は水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基、アルケニル基を示す。)
以下、シロキサン部分構造を有するポリカーボネートの具体例を例示する。
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
【化9】
【0039】
上記シロキサン部分構造を有するポリカーボネートの分子量は粘度平均分子量で、5,000〜200,000の範囲が好ましい。
【0040】
上記シロキサン部分構造を有するポリカーボネートは表面層を形成する主要バインダー樹脂として用いられ、表面層の全樹脂中に占める割合が50質量%以上であることが好ましい。
【0041】
上記シロキサン部分構造を有するポリカーボネート以外にも、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂等を併用して用いることもできる。
【0042】
本発明は、本発明の表面層を形成するに際し、前記重合性官能基を有する化合物は、前記シロキサン部分構造を持つポリカーボネートを溶媒に溶解させた溶液中に重合開始剤等と共に分散或いは溶解させ、これらの混合液中で重合性官能基を有する化合物の重合を進行させて、シロキサン部分構造を持つポリカーボネートとは相分離状態にある重合体を形成し、この結果得られた混合溶液を表面層の塗布母液として用いることを特徴とする。
【0043】
上記塗布母液の作製に用いられるシロキサン部分構造を持つポリカーボネートの濃度は溶媒質量100質量部に対し0.1〜200質量部が好ましい。0.1質量部未満だと重合性官能基を有する化合物又は該化合物から形成された重合体の分散が安定せず、又200質量部より多いとシロキサン部分構造を持つポリカーボネートが溶媒中で凝集しやすく、均一な重合体の生成を妨げやすい。
【0044】
上記塗布母液の作製に用いられる溶媒としては前記シロキサン部分構造を持つポリカーボネート、重合性官能基を有する化合物を溶解、或いは分散できる溶媒が用いられる。これらの溶媒は一般に有機溶媒が用いられるが、必要により、有機溶媒同士の混合溶媒、或いは水と有機溶媒の混合溶媒を用いることも可能である。
【0045】
上記有機溶媒としては、メチクロ、エチクロ、クロロホルム、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アルコール類、エステル類、ヘキサン、ヘプタン、リグロイン、ケロシン、テトラリン、ケトン類、エーテル類、ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなどが好ましく使われる。
【0046】
上記塗布母液の作製に用いられる重合開始剤としては以下のような化合物が用いられる。即ち、AIBN(Azobis−(2,4−dimethylvaleronitrile))、ADVN−(Azobisisobutyronitrile)、ACPA(Azobis−(4−cyanopentanoicacid))、AMBN(Azobis−(2−methylbutyronitrile))、BPO(Benzoyl peroxide)などが好ましく用いられる。
【0047】
上記塗布母液の作製には分散安定助剤(重合性官能基を有する化合物を安定に分散させるための助剤)を用いることもできる。分散安定助剤としては、例えばノニオン系界面活性剤等が用いられる。
【0048】
塗布母液の作製方法の例
後述する合成例で具体的に示すが、溶媒(有機溶媒)中に、シロキサン部分構造を持つポリカーボネート、重合性官能基を有する化合物、重合開始剤、必要なら分散安定助剤を均一に溶解或いは分散し、又、必要によりその他の物質の存在下、(或いは必要に応じて、途中で添加しても良い)加熱などにより重合を行い、生成した重合体がシロキサン部分構造を持つポリカーボネートとは相分離状態で生成した塗布母液を得ることができる。この塗布母液作製に用いられるそれぞれの成分(溶媒、シロキサン部分構造を持つポリカーボネート、重合性官能基を有する化合物等)はそれぞれ単一のものを用いてもよいが、2種以上のものを併用して、重合性官能基を有する化合物からの重合体の大きさを制御したり、共重合体を生成させることも出来る。又、重合開始剤を2種併用して、生成する重合体の重合度分布を調整することもできる。
【0049】
上記塗布母液の作製に用いられる成分の量は以下のような質量比で用いられるのが好ましい。
【0050】
材料成分の好ましい質量比
シロキサン部分構造を持つポリカーボネート:有機溶媒100質量部に対し0.1質量部〜200質量部
重合性官能基を有する化合物:シロキサン部分構造を持つポリカーボネート100質量部に対し1質量部〜200質量部
重合開始剤:重合性官能基を有する化合物100質量部に対し0.01質量部〜50質量部
分散安定助剤:重合性官能基を有する化合物100質量部に対し0.001質量部〜10質量部
上記のような質量比で用いることにより、重合を安定に進行させることが出来る。又、上記において、重合性官能基を有する化合物、重合開始剤等は段階的或いは連続して重合系(塗布母液作製過程)に添加する方法も適宜用いることができる。
【0051】
又、本発明では上記により得られた塗布母液をそのまま塗布液として用い、該塗布液を塗布、乾燥して電子写真感光体の表面層を形成してもよいし、又、上記塗布母液に電荷輸送物質、酸化防止剤、塗布助剤等の添加剤を加えて調製し、表面層用塗布液を作製して、塗布乾燥し、電子写真感光体の表面層を形成してもよい。
【0052】
次に、本発明の電子写真感光体の構成について記載する。
本発明の電子写真感光体は有機感光体が好ましい。本発明の表面層は、有機感光体の表面層を形成する電荷輸送層、或いは保護層等に適用することが好ましい。以下、本発明の表面層を用いた有機感光体を中心に説明する。
【0053】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能のいずれか一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0054】
有機感光体の層構成は、特に限定はないが、電荷発生層、電荷輸送層、或いは電荷発生・電荷輸送層(電荷発生と電荷輸送の機能を同一層に有する層)等の感光層とその上に必要により、保護層を塗設した構成をとるのが好ましい。
【0055】
導電性支持体
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0056】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真円度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0057】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0058】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/L、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/L、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0059】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0060】
本発明においては導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0061】
又本発明に好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0062】
又、本発明に好ましく用いられる中間層としては疎水化表面処理を行った酸化チタン微粒子(平均粒径が0.01〜1μm)をポリアミド樹脂等のバインダーに分散させた中間層が挙げられる。該中間層の膜厚は、1〜15μmが好ましい。
【0063】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0064】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0065】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる立体、電位構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θが12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0066】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0067】
電荷輸送層
電荷輸送層が有機感光体の表面層となる場合は、電荷輸送層に本発明の表面層を適用することが好ましい。
【0068】
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。該バインダー樹脂として、本発明のシロキサン部分構造を持つポリカーボネートと重合性官能基を有する化合物から得られた重合体溶液を塗布液成分として用い、その他の物質として、酸化防止剤等の添加剤を必要により含有させてることが好ましい。
【0069】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCTMは高移動度で、且つ組み合わされるCGMとのイオン化ポテンシャル差が0.5(eV)以下の特性を有するものであり、好ましくは0.25(eV)以下である。
【0070】
CGM、CTMのイオン化ポテンシャルは表面分析装置AC−1(理研計器社製)で測定される。
【0071】
電荷輸送層が表面層とならない場合は、電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂とうが挙げられる。又、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。特にポリカーボネートが電子写真特性(帯電性、感度等)を良好に保つ上で好ましい。
【0072】
表面層(保護層)
前記した塗布母液をそのまま表面層用塗布液として用い、該塗布液を塗布、乾燥して電子写真感光体の表面層を形成してもよいし、又上記塗布母液に電荷輸送物質、酸化防止剤、塗布助剤等の添加剤を加えて調製し、表面層用塗布液を作製して、塗布乾燥し、電子写真感光体の表面層を形成してもよい。電子写真特性(帯電性、感度等)を良好に維持する為には、表面層にも電荷輸送層、酸化防止剤等を存在させる方がより好ましい。
【0073】
又、表面層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。代表的には下記の化合物群が挙げられる。
【0074】
【化10】
【0075】
【化11】
【0076】
【化12】
【0077】
【化13】
【0078】
中間層、感光層、保護層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0079】
次に本発明の電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお本発明の樹脂層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0080】
次に、本発明の画像形成装置について説明する。
図1は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面図である。
【0081】
図1に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布し、その上に本発明の樹脂層を塗設した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段)で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0082】
感光体への一様帯電の後、像露光手段としての像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザーダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0083】
ここで本発明の反転現像プロセスとは帯電器52により、感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により、顕像化する画像形成方法である。一方未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
【0084】
その静電潜像は次いで現像手段としての現像器54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される有機電子写真感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
【0085】
現像剤は、例えば前述のフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、スチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。感光体の電位測定は電位センサー547を図1のように現像位置上部に設けて行う。
【0086】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0087】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写電極(転写手段:転写器)58が作動し、給紙された記録紙Pにトナーと反対極性の帯電を与えてトナーを転写する。
【0088】
次いで記録紙Pは分離電極(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後、一次作動を中止し、次なるトナー像の形成に備える。図1では転写電極58にコロトロンの転写帯電極を用いている。転写電極の設定条件としては、感光体のプロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、転写電流としては+100〜+400μA、転写電圧としては+500〜+2000Vを設定値とすることができる。
【0089】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器(クリーニング手段)62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0090】
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0091】
本発明の有機電子写真感光体は電子写真複写機、レーザープリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【0092】
【実施例】
以下実施例をあげて詳細な説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、文中の「部」は質量部を表す。
【0093】
感光体1の作製
下記のようにして感光体1を作製した。
【0094】
直径80mmの円筒形アルミニウム製導電性基体上に、下記の中間層塗布液を浸漬塗布して、乾燥膜厚4.0μmの中間層を形成した。
【0095】
〈中間層塗布液〉
ポリアミド樹脂「CM8000」(東レ社製) 10.0部
酸化チタン「SMT500SAS」(テイカ社製) 30.0部
メタノール 100.0部
上記を循環式湿式分散機(デイスパーマットSLC12EX;VMA GETZMANN社製)を用いて分散した。
【0096】
〈電荷発生層塗布液〉
電荷発生物質 X線回折におけるブラッグ角2θが27.2度で、最大ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料 12.0部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製)24.0部
酢酸t−ブチル 300.0部
上記を混合しサンドグラインダーにて分散し、電荷発生層塗布液を作製し、前記中間層上に該電荷発生層塗布液を浸漬塗布して、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0097】
〈電荷輸送層塗布液〉
[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]−ジ−p−トリルアミン200.0部
ポリカーボネート「ユーピロンZ300」(三菱瓦斯化学社製)300.0部
2,6−ジ−t−ブチル−4−フェニルフェノール 5.0部
1,2−ジクロロエタン 2000.0部
〈表面層塗布液〉
(a)溶液
ポリカーボネート(Po−13:粘度平均分子量4万) 100部
重合性官能基を有する化合物(化合物No.2−1) 30部
α,α’−アゾイソブチロニトリル(AIBN) 1部
1,2−ジクロロエタン 1200部
(b)
[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]−ジ−p−トリルアミン80部
2,6−ジ−t−ブチル−4−フェニルフェノール 4部
上記(a)溶液を窒素気流中にて攪拌しながら加熱還流下6時間反応させ、表面層の塗布母液を作製し、次に該塗布母液を放冷した後、(b)の電荷輸送物質と酸化防止剤をさらに加えて固形分濃度10質量%になるように調製して、表面層塗布液1とした。
【0098】
次に、前記電荷発生層上に、上記の電荷輸送層塗布液、次いで上記の表面層塗布液1を円形スライドホッパーにて連続塗布して、110℃;60分加熱硬化し、乾燥膜厚20μmの電荷輸送層及び乾燥膜厚5.0μmの表面層を形成した。
【0099】
感光体2〜10の作製
感光体1の作製において、(a)溶液のポリカーボネート、重合性官能基を有する化合物、重合開始剤、溶剤の種類、量を表1のように代えた表面層塗布液2〜10を作製し、該表面層塗布液2〜10を表面層塗布液1の代わりに用いた以外は感光体1と同様にして感光体2〜10を作製した。
【0100】
感光体11の作製
感光体1の作製において、表面層を設けないで、電荷輸送層の乾燥膜厚を25μmとした以外は、感光体1と同様にして感光体11を作製した。
【0101】
【表1】
【0102】
上表において、ポリカーボネートの欄のAは例示化合物Po−13(粘度平均分子量:4万)、Bは例示化合物Po−1(粘度平均分子量:5万)を示し、重合開始剤の欄のBPO、AIBMは下記化合物を示す
BPO:Benzoyl peroxide
AIBN:Azobis(2,4−dimethylvaleronitrile)
評価
評価機としてコニカ社製デジタル複写機Konica「Sitios7075」(コロナ帯電、レーザ露光、反転現像、静電転写、爪分離、ブレードクリーニング、クリーニング補助ブラシローラー採用プロセスを有し、プリント速度75枚/min)を用い、該複写機に感光体1〜11を搭載し評価した。クリーニング性及び画像評価は、画素率が7%の文字画像、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4中性紙に複写して行った。複写条件は最も厳しいと思われる高温高湿環境(30℃、80%RH)にて連続20万枚コピーを行いハーフトーン、ベタ白画像、ベタ黒画像を評価した。但し、コピー開始前に、感光体表面にセッティングパウダーをまぶし、感光体とクリーニングブレードをなじませた後20万枚のコピーを行った。評価項目及び評価基準を下記に示す。
【0103】
評価項目及び評価基準
画像濃度(マクベス社製RD−918を使用して測定。紙の反射濃度を「0」とした相対反射濃度で測定した。初期と20万枚コピー後の両方で評価)
◎:初期と20万枚コピー後の両方共1.2以上:良好
○:初期と20万枚コピー後の両方共1.0以上:実用上問題ないレベル
×:初期と20万枚コピー後の少なくとも一方が1.0未満:実用上問題となるレベル
カブリ(ベタ白画像濃度で判定した。初期と20万枚コピー後の両方で評価)マクベス社製「RD−918」を用いて、印字されていないコピー用紙(白紙)の濃度を20カ所、絶対画像濃度で測定し、その平均値を白紙濃度とする。次に、画像形成がなされた評価用紙の白地部分を同様に20カ所、絶対画像濃度で測定し、その平均濃度から前記白紙濃度を引いた値をカブリ濃度として評価した。
【0104】
◎:初期と20万枚コピー後の両方共0.005以下(良好)
○:初期と20万枚コピー後の両方共0.01以下(実用上問題ないレベル)
×:初期と20万枚コピー後の少なくとも一方が0.01より大(明らかに、実用上問題あり)
解像度(文字画像の判別容易性で判定)
◎:初期と20万枚コピー後の解像度に差がない
○:ハーフトーン画像で20万枚コピー後の解像度に軽微な低下(実用上問題ないレベル)有り
×:20万枚コピー後の解像度に顕著な低下有り
トナー転写率
下記式により転写率(%)を求めた。但し、転写率を求める際には、クリーニングユニットから回収されたトナーは現像器に戻さず、袋に取った。
【0105】
転写率(%)={1−(回収トナーの質量/消費トナーの質量)}×100
クリーニング性(10万及び20万枚コピー終了後にA3紙に連続10枚複写を行い、ベタ白部でのクリーニング不良の発生の有無で判定)
◎:20万枚までトナーのすり抜け発生なし
○:10万枚までトナーのすり抜け発生なし
×:10万枚未満でトナーのすり抜け発生
ブレード鳴き
◎:20万枚まで発生なし
○:ドラム停止時に軽微なブレード鳴き発生
×:ブレード鳴き発生
膜厚減耗量
減耗量は実写評価開始時と20万枚コピー終了時に測定した感光層の平均膜厚の差分を求め、膜厚減耗量とした。
【0106】
膜厚測定法
感光層の膜厚は均一膜厚部分をランダムに10ケ所測定し、その平均値を感光層の膜厚とする。膜厚測定器は渦電流方式の膜厚測定器EDDY560C(HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用いて行い、実写試験前後の感光層膜厚の差を膜厚減耗量とする。
【0107】
その他評価条件
尚、前記Sitios7075を用いたその他の評価条件は下記の条件に設定した。
【0108】
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器、初期帯電電位を−750V
露光条件
露光部電位を−50Vにする露光量に設定
現像条件
DCバイアス;−550V
現像剤は、フェライトをコアとして絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアとスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンを含有する体積平均粒径5μmの着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーを用いた現像剤を使用
転写条件
転写極;コロナ帯電方式
クリーニング条件
クリーニング部に硬度70°、反発弾性65%、厚さ2(mm)、自由長9mmのクリーニングブレードをカウンター方向に線圧18(N/m)となるように重り荷重方式で当接した。
【0109】
評価結果を表2に示した。
【0110】
【表2】
【0111】
表2から明らかなように、本発明の表面層を有する感光体1〜4、7〜9は良好な画像特性、トナー転写率、クリーニング特性を示している。又、感光体1〜4、7〜9は本発明の表面層を有しない表面層の感光体11に比し、トナーの転写性、クリーニング性、ブレード鳴きが改善されており、画像特性(画像濃度、カブリ、解像度)も良好であることが見出される。
【0112】
【発明の効果】
実施例からも明らかなように、本発明の構成を用いることにより、トナーの転写性、クリーニング性やブレード鳴きが改良され、高画質、高耐久の電子写真感光体を提供することができる。又、該電子写真感光体を用いた良好な電子写真画像を達成できる画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面図。
【符号の説明】
50 感光体ドラム(又は感光体)
51 帯電前露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
541 現像スリーブ
543,544 現像剤攪拌搬送部材
547 電位センサー
57 給紙ローラー
58 転写電極
59 分離電極(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
70 プロセスカートリッジ
Claims (6)
- 導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、
該電子写真感光体の表面層がシロキサン部分構造を持つポリカーボネートと重合性官能基を有する化合物又は該化合物から形成された重合体とを含有することを特徴とする電子写真感光体であって、
前記重合性官能基を有する化合物が下記一般式(2)で表されるビニルモノマーであり、
更に、前記表面層を形成するに際し、前記重合性官能基を有する化合物は、前記シロキサン部分構造を持つポリカーボネートを溶媒に溶解させた溶液中に重合開始剤と共に分散或いは溶解させ、これらの混合液中で該重合性官能基を有する化合物の重合を進行させて、該シロキサン部分構造を持つポリカーボネートとは相分離状態にある重合体を形成し、この結果得られた混合溶液を表面層の塗布母液として用いることを特徴とする電子写真感光体。 - 導電性支持体上に中間層、電荷発生層、電荷輸送層及び表面層を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記表面層が電荷輸送物質を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
- 請求項4に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
- 少なくとも請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体と帯電器、像露光器、現像器、転写器、クリーニング器の少なくとも1つを一体として有しており、画像形成装置に出し入れ可能に構成されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
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