JP3977041B2 - フライホイール蓄電装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フライホイール(以下、回転体という)を高速で回転させることにより電力を回転エネルギーの形で蓄え、必要に応じて回転エネルギーを電力に変換するフライホイール蓄電装置に関し、特に、走行と停止の繰り返し頻度の高い移動体(例えば、バス、乗用車、路面電車、鉄道等)に好適なフライホイール蓄電装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のフライホイール蓄電装置の一例として、真空容器の内部に炭素繊維からなる回転体を磁気浮上式軸受によって回転自在に支持するように構成したもの、常圧容器の内部に鉄鋼材料からなる回転体をピボット軸受によって回転自在に支持するように構成したもの(特開平7−322533号公報)等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記前者は、容器内を真空にしているために、回転体の高速回転時における風損を十分に低減させることができ、高いエネルギー密度を確保できるものである。
【0004】
しかしながら、容器内を真空にすると、以下のような問題が発生する。
▲1▼容器内において空気による熱の移動がなくなるため、電動機や軸受など内部発生する熱を放熱させることが困難になる。
▲2▼軸受の潤滑油が蒸発してしまうため、油を使った軸受を構成することができない。このため、軸受に磁気浮上方式のものを使わざるを得ないが、磁気浮上方式の軸受には以下のような問題がある。
a.装置が複雑で高価である。
b.非接触で使用するために寿命は長いが不安定になりやすく、一度不安定になると再復帰できないため、支持が破綻する。
したがって、ゴーストップ頻度の高い移動体には搭載することはできない。
c.超伝導方式による磁気軸受は軸受そのものが高価であり、冷却のための手段が別途必要になることから、装置が大規模となり、サイズ的にもゴーストップ頻度の高い移動体には搭載することができない。
d.磁気軸受を維持するために別途電力が必要になるため、その分の損失が余計に発生する。
▲3▼高速回転するには鉄鋼材料では強度的にもたないため、炭素繊維などの高強度材料を回転体に用いているが、素材が高価であり、異種材料の嵌め合い、組み立てが難しいため、回転体が高価になる。
▲4▼空気がなくなることで絶縁特性が悪化し、十分な絶縁が得られないために電動機を機能させることが難しい。
以上のことから、実用化には程遠いものである。
【0005】
前記後者は、安価に製作することができるが、以下のような問題がある。
▲1▼常圧空気の中で回転体を回転させるために、風損が極めて大きい。このため、損失の大きい装置になってしまう。
▲2▼ピボット軸受だけで回転体を支持しているため、ゴーストップ頻度の高い移動体のように、傾斜や振動が常に発生する環境では支持が不安定となり、使用することが困難になる。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みなされたものであって、長寿命で、安全で、低損失で、安価で、揺動荷重に対して破綻することがなく、コンパクトで、ゴーストップ頻度の高い移動体に容易に搭載することできる、フライホイール蓄電装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
これまで、減圧環境で動作する油潤滑式軸受を用いた縦型フライホイール蓄電装置は真剣に検討されたことがなかった。それは、
1.上側に配置される軸受の潤滑オイルの処理(シール)が問題になること。
2.減圧すると潤滑油が蒸発しやすくなること。
が原因であった。
本発明では、問題1については、小径の振り切りリングと、オイル傘によって回転体との接触を回避し、問題2については、気圧を真空でなく0.05気圧ないし0.33気圧、望ましくは0.2気圧前後とすることで、風損を抑えつつ、オイルの蒸発を防ぎ、ポンプや電動機などの電気機器を正常に動作できるようにした。さらに、オイルタンクを内臓することで、ジンバル支持したときにそれがダンパーの役割をするという、新しい効果を得ることができる。
【0008】
上記の課題を解決するために、上記背景に基づいて本発明は以下の手段を採用している。すなわち、請求項1に係る発明は、内部が減圧室とオイル室の2室に区画されるケーシングと、前記減圧室内に回転自在に設けられる回転体と、該回転体を回転自在に支持する油潤滑式の軸受ユニットと、前記オイル室内に設けられるとともに、前記オイル室内のオイルを前記軸受ユニットに供給するオイルポンプと、前記減圧室内に設けられるとともに、前記減圧室内に設けられるステーターと前記回転体と兼用のローターとからなる発電機とを備え、前記ステーターは、前記減圧室内に固定される金属製の支持軸と、該支持軸の周囲に設けられる鉄心と巻線とからなり、前記ローターは、前記回転体と、前記回転体に設けられる永久磁石とからなり、前記減圧室及びオイル室内がほぼ0.05気圧から0.33気圧に減圧されており、前記減圧室の上端部にオイル傘を設けて、該オイル傘と前記ケーシングとの間で前記軸受ユニットからのオイルを導く上部排出路を形成し、前記回転体に振り切りリングを設けて、該振り切りリングの外周端部を前記上部排出路の入口部内に位置させたことを特徴とする。この発明に係るフライホイール蓄電装置によれば、減圧室及びオイル室内は所定気圧に減圧保持されることになる。また、油潤滑式の軸受ユニットは、オイルポンプから供給されるオイルによって潤滑されることになる。さらに、回転体は、荷重軽減装置によって自重の所定パーセントが支持されることになる。また、風損が大幅に低減され、オイルの蒸発がほとんどなく、電動機の絶縁も十分に確保されることになる。
【0009】
また、この発明によれば、軸受ユニットから排出されるオイルは、振り切りリングによって振り切られて上部排出路内に導かれ、回転体との接触が防止されることになる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のフライホイール蓄電装置であって、前記オイル傘に前記回転体を覆うオイルカバーを設け、該オイルカバーと前記ケーシングとの間で、前記上部排出路と前記オイル室とを連通する側部排出路を形成したことを特徴とする。この発明に係るフライホイール蓄電装置によれば、軸受ユニットから上部排出路内に導かれたオイルは、上部排出路から側部排出路内に導かれ、回転体との接触が防止されることになる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のフライホイール蓄電装置であって、前記ケーシングの外周部に放熱フィンを設けたことを特徴とする。この発明に係るフライホイール蓄電装置によれば、ケーシングの放熱面積が増加し、ケーシング内部の熱がより効果的に外部に放熱されることになる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のフライホイール蓄電装置であって、前記オイル室の底面に対応する前記ケーシングの部分に放熱フィンを設けたことを特徴とする。この発明に係るフライホイール蓄電装置によれば、オイル室の熱がより効果的に外部に放熱されることになる。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れかに記載のフライホイール蓄電装置であって、前記ステーターの支持軸に、スパイラル状、又は上下折り返し状のオイル通路を設け、このオイル通路内にオイルを循環させるように構成したことを特徴とする。この発明に係るフライホイール蓄電装置によれば、ステーターの支持軸の熱がオイル通路内を流れるオイルによって奪われ、ステーターの支持軸の熱がより効果的に放熱されることになる。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れかに記載のフライホイール蓄電装置であって、前記ステーターの巻線に対向する前記回転体の部分に逃げを形成し、又は導電性の良い金属を貼り付けたことを特徴とする。この発明に係るフライホイール蓄電装置によれば、巻線から発生する磁束によって誘導加熱が大幅に低減され、余計な損失が発生することがなくなる。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れかに記載のフライホイール蓄電装置であって、前記オイル室に、前記軸受ユニットからのオイルをオイル室内に導くドレイン口と、前記オイルポンプの吸込口とを遠ざける仕切りを設けたことを特徴とする。この発明に係るフライホイール蓄電装置によれば、軸受ユニットから排出される熱いオイルが直ぐに吸込口に導入されるのが防止され、十分に冷えたオイルが吸込口に導かれることになる。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項1〜7の何れかに記載のフライホイール蓄電装置であって、ジンバル機構で装置全体を支持したことを特徴とする。この発明に係るフライホイール蓄電装置によれば、移動体の傾きによって発生するジャイロモーメントの影響を受けなくなり、軸受ユニットにかかる負荷荷重を軽減できる。
【0017】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8の何れかに記載のフライホイール蓄電装置であって、前記オイル室にオリフィスを設けたことを特徴とする。この発明に係るフライホイール蓄電装置によれば、装置の傾斜によりオイルが移動するときに抵抗が生じ、オイルタンクのオイルがダンパーとして機能することになる。
【0018】
請求項10に係る発明、請求項1〜9の何れかに記載のフライホイール蓄電装置であって、ヘリウムガスボンベと圧力調整機構を備え、前記ケーシング内部をヘリウムガスに置き換えたことを特徴とする。この発明に係るフライホイール蓄電装置によれば、所定気圧に減圧した場合と同様の性能が得られることになる。また、絶縁や放熱に関する特性がさらに改善されることになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1には、本発明によるフライホイール蓄電装置の第1の実施の形態が示されていて、このフライホイール蓄電装置1は、ケーシング2と、ケーシング2内に回転自在に設けられる回転体18とを備えている。
【0020】
ケーシング2は、筒状の上側壁3と、上側壁3の上端開口部を閉塞する円板状の上鏡板4と、上側壁3の下端開口部を閉塞するアルミ製の円板状の下鏡板6と、下鏡板6で上端開口部が閉塞される筒状の下側壁9と、下側壁9の下端開口部を閉塞する円板状の底板10とから構成されている。
【0021】
上鏡板4と上側壁3と下鏡板6とによって囲まれる部分には密閉された減圧室11が形成され、この減圧室11内に回転体18が回転自在に設けられるようになっている。下側壁9と下鏡板6と底板10とによって囲まれる部分には密閉されたオイル室12が形成され、このオイル室12内に油潤滑式軸受である上軸受ユニット25及び下軸受ユニット30を潤滑するためのオイル13が充填されるようになっている。
【0022】
減圧室11とオイル室12との間は下鏡板6に設けられている連通孔7を介して相互に連通し、この連通孔7を介して上軸受ユニット25から排出されるオイル13がオイル室12内に戻されるようになっている。減圧室11及びオイル室12は減圧ポンプ等から構成される減圧装置(図示せず)に接続され、この減圧装置の作動により0.2気圧前後に減圧保持されるようになっている。オイル室12内にはオイルポンプ14が設けられ、このオイルポンプ14によりオイル室12内のオイル13が上軸受ユニット25及び下軸受ユニット30に供給されるようになっている。
【0023】
回転体18は、一般の鉄鋼材料で形成されるものであって、本体部19と、本体部19の中心部に一体に設けられる回転軸22とから構成されている。回転体18は、回転軸22の上端部を上鏡板4の中央部に設けられる上軸受ユニット25によって軸支され、回転軸22の下端部を下鏡板6の中央部に設けられる後述する下軸受ユニット30によって軸支されることで、減圧室11内において回転自在となるものである。
【0024】
本体部19は、上端が閉塞された筒状をなすものであって、その軸線上に回転軸22が一体に設けられるようになっている。本体部19の側板の内周面は大径部20と小径部21の2段に形成され、小径部21に電動機35のローター42を構成する筒状の永久磁石43が取り付けられるようになっている。
【0025】
回転軸22は、本体部19の上板の上面中央部に一体に設けられる上軸23と、上板の下面中央部に一体に設けられるとともに、先端部が側板の下端よりも下方に突出する下軸24とから構成されるようになっている。回転軸22の上軸23の上端部は後述する上軸受ユニット25によって回転自在に軸支され、下軸24の下端部は後述する下軸受ユニット30によって回転自在に軸支されるようになっている。
【0026】
上軸受ユニット25は、上鏡板4の中央部に取り付けられるものであって、上鏡板4の中央部の軸受取付け用孔5内に嵌合されるベース26と、ベース26の軸挿入用孔27内の入口部に装着されるころ軸受28と、ベース26の軸挿入用孔27内の奥部に装着される動圧式スラスト軸受である緊急タッチアップ用軸受29とから構成され、ころ軸受28の内周側で回転軸22の上軸23を回転自在に軸支するようになっている。緊急タッチアップ軸受29と回転軸22の上軸23の上端との間には所定の間隙が形成され、この間隙によって緊急タッチアップ軸受29は通常は不作動の状態にあり、緊急タッチアップ軸受29による損失が発生するのを防止している。
【0027】
下軸受ユニット30は、下鏡板6の中央部に取り付けられるものであって、下鏡板6の中央部の軸受取付け用孔8内に嵌合されるベース31と、ベース31の軸挿入用孔33内の入口部に装着されるアンギュラ玉軸受34とから構成され、アンギュラ玉軸受34の内周側で回転軸22の下軸24を回転自在に軸支するようになっている。
【0028】
この実施の形態においては、上軸受ユニット25にころ軸受28を用い、下軸受ユニット30にアンギュラ玉軸受34を用いているが、それ以外の玉軸受、針状軸受等の機械式軸受、動圧式ラジアル軸受、動圧式スラスト軸受、動圧式ピボット軸受等を用いても良いし、それらを組み合わせたものを用いてスラスト荷重及びラジアル荷重を支持するようにしても良い。なお、上軸受ユニット25では必ずしもスラスト荷重を支持する必要はないものである。
【0029】
下鏡板6の上面中央部にはアルミ製の筒状の支持軸37が一体に立設され、この支持軸37の中心部を回転体18の回転軸22の下軸24が回転自在に挿通するようになっている。支持軸37の周囲には鉄心38が取り付けられるとともに、鉄心38には巻線39が取り付けられるようになっている。巻線39の上側コイル出部分40とこれに対向する回転体18との間には、回転体18の本体部19の側板の大径部20により所定の距離の逃げ41が形成されるようになっている。
【0030】
支持軸37と鉄心38と巻線39とによってステーター36が構成され、前述した永久磁石43と回転体18とによってローター42が構成され、ステーター36とローター42とによって電動機35が構成されるものである。
【0031】
減圧室11の上端部には上鏡板4の下面と所定の間隔をおいて対向するように円板状のオイル傘44が設けられ、このオイル傘44の上面と上鏡板4の下面との間で上軸受ユニット25から排出されるオイル13の上部排出路45が形成されるようになっている。
【0032】
上部排出路45に対応する回転体18の回転軸22の上軸23の部分にはリング状の振切りリング46が一体に取り付けられ、この振切りリング46の外周端部は上部排出路45の入口部内に位置するようになっている。したがって、振切りリング46が回転体18と一体に回転したときに、振切りリング46の遠心力によって上軸受ユニット25から排出されるオイル13が振り切られ、上部排出路45内に導かれるものである。上部排出路45内に導かれたオイル13は、オイル傘44の外周端面が上側壁3の内周面に近接していることにより、外周端面と上側壁3の内周面との間の微小隙間から上側壁3の内周面を伝わって落下し、下鏡板6の連通孔7に導かれ、連通孔7からオイル室12内に戻されるものである。なお、下軸受ユニット30から排出されるオイル13は、下軸受ユニット30のベース31に設けられている排出孔32を介してオイル室12内に戻されるものである。
【0033】
回転体18の上面外周縁部に対向するオイル傘44の下面側の部分には永久磁石式の荷重軽減装置47が設けられるようになっている。荷重軽減装置47は、荷重軽減装置47及びオイル傘44を貫通するボルトによってオイル傘44と一体に上鏡板4側に固定されるようになっている。荷重軽減装置47により回転体18の自重の50〜80%が支持されるようになっている。
【0034】
回転体18の回転軸22の上軸23の上方には回転検出装置48が設けられ、この回転検出装置48により回転体22の回転角度が検出されるようになっている。
【0035】
オイルポンプ14の吐出口15と上軸受ユニット25との間及び下軸受ユニット30との間は給油管17を介して相互に連結され、この給油管17を介して上軸受ユニット25及び下軸受ユニット30にオイルが供給されるようになっている。
【0036】
そして、外部電源からステーター36の巻線39に電圧が印加されると、ローター42である回転体18が高速で回転し、電気エネルギーが回転エネルギーに変換されて蓄えられる。そして、必要に応じて、回転体18の回転エネルギーが電気エネルギーに変換され、外部の負荷に供給されるものである。
【0037】
上記のように構成したこの実施の形態によるフライホイール蓄電装置1にあっては、上軸受ユニット25と下軸受ユニット30とによって回転体18の上下端部を支持しているので、揺動振動に対して支持が破綻するようなことはなく、ゴーストップ頻度の高い移動体(バス、乗用車、路面電車、鉄道等)で有効に利用することができることになる。
【0038】
また、回転体18の支持に油潤滑式の上軸受ユニット25及び下軸受ユニット30を用いているので、回転体18の材料を高価で組立てが困難な炭素繊維の複合材とする必要はなく、両軸受ユニット25、30の軸受回転数の上限に合わせて一般の鉄鋼材料で構成できるので、非常に安価に構成することができることになる。
【0039】
さらに、上軸受ユニット25から排出されるオイル13は、小径の振り切りリング46によって低い周波数で振り切られて上部排出路45内に導かれ、上部排出路45から上側壁3の内周面を伝わってオイル室12内に戻されることになるので、振り切り損失が生じることなく、回転体18に接触するようなことはない。したがって、上軸受ユニット25から排出されるオイル13が回転体18と接触し、周速の高い回転体18の外縁部で振り切られることにより非常に大きなエネルギー損失し、また、回転体18の高い周速のために振り切られたオイルがミスト又は気化してしまい、風損を上昇させたり、減圧によって外に吸い出されてしまうという問題は全くなくなり、オイル振り切り時に生じるエネルギー損失を大幅に低減させることができることになる。
【0040】
さらに、上軸受ユニット25から排出されるオイル13は、径の小さな振り切りリング46によって振り切られることになるので、振り切り時のミスト粒径が大きくなり、オイルが気化しにくくなるため、気化したオイルによって風損が増加することがない。
【0041】
さらに、荷重軽減装置47によって回転体18の自重の50〜80%が支持されることになるので、下軸受ユニット30の損失が大幅に低減され、オイル12の寿命も大幅に延びることになる。
【0042】
さらに、ケーシング2の内部が0.2気圧前後に減圧されているために、風損は大幅に低減されるとともに、オイル13の蒸発がほとんど生じることがなく、電動機35の絶縁も十分に確保される。
【0043】
さらに、電動機35の上側コイル出部分40に対向する回転体18の部分に大径部20を設け、この大径部20により所定の距離の逃げ41を形成しているので、巻線39から発生する磁束によって誘導加熱が大幅に低減され、余計な損失を発生することがなくなる。なお、逃げ41の代わりに、図2に示すように、銅、アルミ板等の電気抵抗の小さい金属板49を上側コイル出部分40に対向する回転体18の部分に貼り付けても同様の効果が得られるものである。
【0044】
さらに、支持軸37と下鏡板6は熱伝導性の良い素材からなるため、電動機35の鉄心38が発生する熱が良好に伝導されることになり、ケーシング2の表面から十分に放熱されることになる。
【0045】
さらに、オイル13が劣化する時間は、量が多いほど長くなるものであるが、この実施の形態においては、オイル室12に十分な容積のオイル13を確保できるので、メンテナンス期間が大幅に延長され、メンテナンスフリーの状態で長期間(最低8年間)運転を継続することができることになる。
【0046】
さらに、オイルポンプ14等の部品の全てが減圧したケーシング2内に設けられるので、装置全体がコンパクトとなり、減圧しているにも関わらず、オイル13の循環に際して気圧の差異を考慮するがないものである。
【0047】
なお、図3に示すように、オイル傘44の外周端部の下面側に筒状のオイルカバー50を一体に設け、このオイルカバー50と上側壁3内周面との間で上部排出路45とオイル室12との間を連通する側部排出路51を形成することにより、上部排出路45からのオイル13を完全に覆うことができるので、側部排出路51内を落下するオイル13が回転体18の回転によって生じる空気の流れによって飛散することがなくなるので、ミストになった若干のオイルも上側壁3との衝突により液化し、より完全にオイルをオイル室12に回収することができるものである。さらに、図4に示すように、オイル室12の内部に、下軸受ユニット30から排出されるオイルのドレイン口32とオイルポンプ14の吸込口16との間を仕切る仕切り板52を設けることにより、下軸受ユニット30からオイル室12内に戻される熱いオイルが直ちに吸込口16に導かれることがなくなるので、十分に冷えたオイルを上軸受ユニット25及び下軸受ユニット30に供給することができるものである。
【0048】
図5には、この発明によるフライホイール蓄電装置の第2の実施の形態が示されていて、このフライホイール蓄電装置1は、ケーシング2の上側壁3の周面、下側壁9の周面、及び底板10の下面に放熱フィン53、54、55を設け、支持軸37の表面側の内部にオイルの通路56(スパイラル状(図6)、上下折り返し状(図7))を設けたものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと同様である。
【0049】
この場合、オイルの通路56は、図示しないオイルポンプに接続されるようになっている。なお、オイル通路56は、上軸受ユニット25及び下軸受ユニット30用のオイルポンプ14に接続しても良い。
【0050】
そして、この実施の形態においても、前記第1の実施の形態と同様の効果を示す他、ケーシング2の上側壁3の放熱フィン53により伝熱面積が拡大されるので、装置内部の熱がより効率的に外部に放熱されることになる。また、支持軸37の表面側の内部に設けたオイルの通路56内をオイルが循環することになるので、電動機35の鉄心38の熱がこのオイルによって奪われることになり、鉄心38の温度を下げることができることになる。さらに、オイル室12の下側壁9の周面及び底板10の下面側にも放熱フィン54、55が設けられているので、オイル室12内のオイルの熱も効率的に放熱されることになる。
【0051】
さらに、この実施の形態においても、図4に示すように、オイル室12の内部に、下軸受ユニット25及び支持軸30から排出されるオイルのドレイン口6aとオイルポンプ14の吸込口16との間を仕切る仕切り板52を設けることにより、下軸受ユニット25及び支持軸37からオイル室12内に戻される熱いオイルが直ちに吸込口16に導かれることがなくなるので、十分に冷えたオイルを上軸受ユニット25、下軸受ユニット30及び支持軸37に供給することができるものである。
【0052】
なお、前記各実施の形態において、装置全体を公知のジンバル支持機構によって支持することにより、移動体の傾きによって発生するジャイロモーメントの影響を受けなくなるので、各軸受にかかる負荷荷重を軽減することができるものである。
【0053】
さらに、図8に示すように、オイル室12の内部を隔壁57によって複数の小室に区画し、隔壁57に隣接する小室間を連通する円形状のオリフィス58を設けても良いものである。この場合には、装置全体の傾斜によりオイルがオリフィス58を介して小室間を移動し、このときの抵抗によりダンパーとして機能を発揮することができるので、ジンバル機構のダンパーを省略することができるものである。オリフィスは、半円形状(図9)、隙間(図10)、四角形状(図11)等としても良い。
【0054】
さらに、前記各実施の形態においては、ケーシング2の内部を0.2気圧前後に減圧したが、ヘリウムガスは0.2気圧とほぼ同等の風損であるので、ヘリウムガスボンベと圧力調整器とを併設し、略1気圧でヘリウムを充填するようにしても、同様の性能が得られるものである。この場合には、絶縁や放熱に関する特性がさらに改善されるものである。また、ケーシング2の内部の圧力は、0.05気圧から0.33気圧の範囲であることが望ましい。その理由は、図12に示すパーシェン特性、すなわち絶縁破壊電圧(KV単位)と圧力(気圧単位)との関係を示す特性において、実施の形態における電圧値(600V)において絶縁破壊を生じない気圧の下限値は0.05気圧であり、電圧値に応じて、絶縁破壊を生じない圧力の下限値が選択されることとなる。また、圧力の上限値は、回転運動に対する風損を許容範囲以下とすべく、回転数に応じて設定されるもので、実施の形態の如く10000rpmとした場合には、0.33気圧が上限となる。
【0055】
さらに、前記各実施の形態においては、同期電動機で構成したため回転検出装置48が必要であったが、誘導電動機で構成した場合には回転検出装置48は必ずしも必要としないものである。
【0056】
【発明の効果】
本発明は、請求項1のように構成したことにより、ケーシングの内部が 内部が所定気圧(0.2気圧前後)に減圧保持されることになるので、風損が大幅に低減されるとともに、オイルの蒸発がほとんど発生することがなく、電動機の絶縁も十分に確保されることになる。また、荷重軽減装置によって回転体の自重の所定%(例えば50〜80%)が支持されることになるので、軸受ユニットの損失が大幅に低減され、オイルの寿命を大幅に延ばすことができることになる。さらに、オイルポンプ等の部品が全てケーシング内に設けられているので、装置全体をコンパクトにすることができる。また、減圧しているにも関わらず、オイルの循環に際して気圧の際を考慮する必要がなくなる。さらに、オイル室内に十分な容積のオイルを確保することができるので、メンテナンス期間を大幅に延長することができることになり、メンテナンスフリーの状態で長期間運転することができることになる。
【0057】
また、請求項2又は3のように構成したことにより、軸受ユニットから排出されるオイルは、振り切りリングによって振り切られて上部排出路内に導かれ、上部排出路から側部排出路内に導かれることになり、オイルが回転体に接触することが防止され、回転体に直接かかることがないので、オイル振り切り時に発生するエネルギー損失を大幅に低減することができることになる。さらに、軸受ユニットからのオイルは、径の小さな振り切りリングによって振り切られるため振り切り時のミスト粒径が大きくなり、オイルが気化しにくくなるため、気化したオイルによって風損が増加するようなことはない。また、オイル傘から側壁部を伝わってオイルが落下する際、側壁をも冷却することができる。
【0058】
さらに、請求項4のように構成したことにより、ケーシング内部の熱が効率的に外部に放熱されることになる。さらに、請求項5のように構成したことにより、オイル室内の熱が効率的に外部に放熱されることになる。さらに、請求項6のように構成したことにより、ステーターの巻線の熱がオイル通路内のオイルによって奪われることになるので、巻線の温度を下げることができることになる。
【0059】
さらに、請求項7のように構成したことにより、巻線から発生する磁束によって誘導加熱が大幅に低減され、余計な損失の発生がなくなる。
【0060】
さらに、請求項8のように構成したことにより、軸受ユニットから排出される熱いオイルが直ぐに吸込口に導かれることがなくなり、十分に冷えたオイルを吸入口に導くことができることになる。
【0061】
さらに、請求項9のように構成したことにより、移動体の傾きによって発生するジャイロモーメントの影響を受けることがなくなるので、軸受ユニットにかかる負荷荷重を軽減することができることになる。さらに、請求項10のように構成したことにより、装置の傾斜によりオイルが移動するときに抵抗が発生するように構成できるので、オイル室内のオイルをダンパーとして機能させることができることになる。
【0062】
さらに、請求項11のように構成したことにより、所定の気圧に減圧したものと同等の風損とすることができ、同等の性能が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるフライホイール蓄電装置の第1の実施の形態の全体を示した縦断面図である。
【図2】 第1の実施の形態の変形例を示した部分図である。
【図3】 第1の実施の形態の変形例を示した部分図である。
【図4】 第1の実施の形態の変形例を示した部分図である。
【図5】 本発明によるフライホイール蓄電装置の第2の実施の形態の全体を示した縦断面図である。
【図6】 第2の実施の形態の変形例を示した部分図である。
【図7】 第2の実施の形態の変形例を示した部分図である。
【図8】 第1及び第2の実施の形態の変形例を示した部分図である。
【図9】 図8に示すものの変形例を示した部分図である。
【図10】 図8に示すものの変形例を示した部分図である。
【図11】 図8に示すものの変形例を示した部分図である。
【図12】 ケーシング内部の圧力と絶縁破壊電圧との関係を示す図表である。
【符号の説明】
1…フライホイール蓄電装置
2…ケーシング
11…減圧室
12…オイル室
14…オイルポンプ
18…回転体
25…上軸受ユニット
30…下軸受ユニット
35…発電機
36…ステーター
37…支持軸
38…鉄心
39…巻線
41…逃げ
42…ローター
43…永久磁石
44…オイル傘
45…上部排出路
46…振り切りリング
47…荷重軽減装置
50…オイルカバー
51…側部排出路
52…仕切り板
53、54、55…放熱フィン
58…オリフィス

Claims (10)

  1. 内部が減圧室とオイル室の2室に区画されるケーシングと、
    前記減圧室内に回転自在に設けられる回転体と、
    該回転体を回転自在に支持する油潤滑式の軸受ユニットと、
    前記オイル室内に設けられるとともに、前記オイル室内のオイルを前記軸受ユニットに供給するオイルポンプと、
    前記減圧室内に設けられるとともに、前記減圧室内に設けられるステーターと前記回転体と兼用のローターとからなる発電機と
    を備え、
    前記ステーターは、前記減圧室内に固定される金属製の支持軸と、該支持軸の周囲に設けられる鉄心と巻線とからなり、
    前記ローターは、前記回転体と、前記回転体に設けられる永久磁石とからなり、
    前記減圧室及びオイル室内がほぼ0.05気圧から0.33気圧に減圧されており、
    前記減圧室の上端部にオイル傘を設けて、該オイル傘と前記ケーシングとの間で前記軸受ユニットからのオイルを導く上部排出路を形成し、前記回転体に振り切りリングを設けて、該振り切りリングの外周端部を前記上部排出路の入口部内に位置させたことを特徴とするフライホイール蓄電装置。
  2. 請求項1に記載のフライホイール蓄電装置であって、前記オイル傘に前記回転体を覆うオイルカバーを設け、該オイルカバーと前記ケーシングとの間で、前記上部排出路と前記オイル室とを連通する側部排出路を形成したことを特徴とするフライホイール蓄電装置。
  3. 請求項1又は2に記載のフライホイール蓄電装置であって、前記ケーシングの外周部に放熱フィンを設けたことを特徴とするフライホイール蓄電装置。
  4. 請求項3に記載のフライホイール蓄電装置であって、前記オイル室の底面に対応する前記ケーシングの部分に放熱フィンを設けたことを特徴とするフライホイール蓄電装置。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載のフライホイール蓄電装置であって、前記ステーターの支持軸に、スパイラル状、又は上下折り返し状のオイル通路を設け、このオイル通路内にオイルを循環させるように構成したことを特徴とするフライホイール蓄電装置。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載のフライホイール蓄電装置であって、前記ステーターの巻線に対向する前記回転体の部分に逃げを形成し、又は導電性の良い金属を貼り付けたことを特徴とするフライホイール蓄電装置。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載のフライホイール蓄電装置であって、前記オイル室に、前記軸受ユニットからのオイルをオイル室内に導くドレイン口と、前記オイルポンプの吸込口とを遠ざける仕切り板を設けたことを特徴とするフライホイール蓄電装置。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載のフライホイール蓄電装置であって、ジンバル機構で装置全体を支持したことを特徴とするフライホイール蓄電装置。
  9. 請求項1〜8の何れかに記載のフライホイール蓄電装置であって、前記オイル室にオリフィスを設けたことを特徴とするフライホイール蓄電装置。
  10. 請求項1〜9の何れかに記載のフライホイール蓄電装置であって、ヘリウムガスボンベと圧力調整機構を備え、前記ケーシング内部をヘリウムガスに置き換えたことを特徴とするフライホイール蓄電装置。
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