JP3975725B2 - 表面改質剤及び表面改質方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、プレートの表面を改質する表面改質剤及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、インクを吐出する穴を有する基材に表面改質剤が塗布されたインクジェットヘッドの表面改質剤及びその表面改質方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、インクジェットヘッドにおいて、インクを吐出する穴を有するプレートの表面に撥水性を付与することにより表面改質を行い、インク吐出の安定性を得ることは、広く知られている。
このインクジェットヘッドのインクを吐出する穴を有する基材の表面改質剤として、例えば、特開平11−322896号公報(以下、従来例1という)には、1分子中に炭素数6乃至12のパーフロロアルキル基を1個以上及び脂環式エポキシ基を2個以上有する含フッ素エポキシ樹脂と、カチオン重合触媒を少なくとも含有する含フッ素エポキシ樹脂組成物が開示されている。
【0003】
また、基材の表面改質方法として、特開平7−125219号公報(以下、従来例2という)には、ノズル開口面にSiO2層を蒸着により設ける工程と、そのSiO2層上に、R1(フロロアルキル基、フロロシクロアルキル基よりなる群より選ばれる反応基)、R2(アミノ基,メトキシ基,エトキシ基からなる群より選ばれる官能基又はハロゲン原子)のそれぞれ少なくとも1つ以上が、Si原子に結合してなるシラン化合物を分解及び/又は溶解した溶液をコーティングする工程と、ノズル内に付着した余分なシラン化合物を除去する工程とが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来例1の場合、開示されている構造の分子内にエステル結合が存在するが、インクのPHが8乃至10とアルカリ性であるので、エステル結合の加水分解が生じ、分子構造が変化して撥水性がなくなるという問題があった。
【0005】
一方、従来例2の場合、下地としてSiO2層を蒸着するので、SiO2の材料費、及びSiO2層を形成する工程が追加され、コストアップになるという問題があった。
この発明は、上述した問題を鑑みてなされたもので、加水分解せずに良好な撥水性を有し、且つ、基材に対して優れた接着力を有する表面改質剤及びその製造方法を提供することを目的としている。
また、この発明は、インクを吐出する穴を有する基材に上記表面改質剤が塗布されたインクジェットヘッド及びその表面改質方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、基材の表面に撥水性を与える撥水成分を含み、上記基材の表面に塗布され、その表面を改質する表面改質剤に係り、上記基材の表面に接着するための接着成分をさらに含んでなり、撥水成分及び接着成分を含む表面改質剤が以下に詳述するものであることを特徴としている。
【0014】
本発明の表面改質剤は、上記撥水成分としての一般式(1)で表されるケイ素を含む単量体と、上記接着成分としての一般式(2)で表されるアミノ基を有する単量体と、から誘導されるブロック共重合体であることを特徴としている。
【0015】
【化1】
【0016】
(上式において、置換基のQ,R,Xは、炭素数が1乃至3のメチル基,エチル基,又はプロピル基からなり、それら置換基は、同一であっても異なっていても良い。)
【0017】
【化2】
【0018】
(上式において、メチレン基の長さkは、1乃至3であり、置換基のY,Zは、炭素数が1乃至3のメチル基,エチル基,又はプロピル基からなり、それら置換基は、同一であっても異なっていても良い。)
【0020】
また、請求項2記載の発明は、上記ブロック共重合体が、上記撥水成分の重量分率(W)が0.25乃至0.75であることを特徴としている。
【0021】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の表面改質剤に係り、上記ブロック共重合体は、アルカリ金属又はアルキル土類金属を対カチオンとするカルボアニオンあるいはラジカルアニオンをアニオン重合開始剤として重合させるリビングアニオン重合により形成されていることを特徴としている。
【0022】
また、請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の表面改質剤に係り、上記ブロック共重合体は、リビングラジカル重合により形成されていることを特徴としている。
【0023】
また、請求項5記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の表面改質剤に係り、上記一般式(2)で表されるアミノ基を有する単量体におけるアミノ基は、4級化されていることを特徴としている。
【0024】
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の表面改質剤に係り、上記4級化は、ジハロゲン化物を用いて行われることを特徴としている。
【0025】
また、請求項7記載の発明は、請求項6記載の表面改質剤に係り、上記ジハロゲン化物は、ジヨードブタン,ジヨードプロパン,ジヨードペンタン,ジブロモプロパン,ジブロモブタン,又はジブロモペンタンであることを特徴としている。
【0026】
また、請求項8記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の表面改質剤が、インクが吐出する穴を有するプレートの表面に塗布されていることお特徴とするインクジェットヘッドである。
【0027】
請求項9記載の発明は、基材の表面に撥水性を与える撥水成分を含む表面改質剤を上記基材の表面に塗布し、その表面を改質する表面改質方法に係り、上記表面改質剤が撥水成分及び接着成分を含む表面改質剤が以下に詳述するものであることを特徴としている。
【0035】
即ち、請求項9記載の発明において前記表面改質剤は、上記撥水成分としての一般式(1)で表されるケイ素を含む単量体と、上記接着成分としての一般式(2)で表されるアミノ基を有する単量体と、から誘導されるブロック共重合体であることを特徴としている。
【0036】
【化15】
【0037】
(上式において、置換基のQ,R,Xは、炭素数が1乃至3のメチル基,エチル基,又はプロピル基からなり、それら置換基は、同一であっても異なっていても良い。)
【0038】
【化16】
【0039】
(上式において、メチレン基の長さkは、1乃至3であり、置換基のY,Zは、炭素数が1乃至3のメチル基,エチル基,又はプロピル基からなり、それら置換基は、同一であっても異なっていても良い。)
【0041】
前記請求項10記載の発明は、請求項9記載の表面改質方法に係り、上記ブロック共重合体は、上記撥水成分の重量分率(W)が0.25乃至0.75であることを特徴としている。
【0042】
また、請求項11記載の発明は、請求項9又は請求項10記載の表面改質方法に係り、上記ブロック共重合体を、アルカリ金属又はアルキル土類金属を対カチオンとするカルボアニオンあるいはラジカルアニオンをアニオン重合開始剤として重合させるリビングアニオン重合により形成することを特徴としている。
【0043】
また、請求項12記載の発明は、請求項9又は請求項10記載の表面改質方法に係り、上記ブロック共重合体を、リビングラジカル重合により形成することを特徴としている。
【0044】
また、請求項13記載の発明は、請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の表面改質方法に係り、上記一般式(2)で表されるアミノ基を有する単量体におけるアミノ基を4級化することを特徴としている。
【0045】
また、請求項14記載の発明は、請求項13記載の表面改質方法に係り、上記4級化は、ジハロゲン化物を用いて行うことを特徴としている。
【0046】
また、請求項15記載の発明は、請求項14記載の表面改質方法に係り、上記ジハロゲン化物は、ジヨードブタン,ジヨードプロパン,ジヨードペンタン,ジブロモプロパン,ジブロモブタン,又はジブロモペンタンであることを特徴としている。
【0047】
また、請求項16記載の発明は、請求項9から請求項15のいずれか1項に記載の表面改質方法を用いて、インクが吐出する穴を有するプレートの表面に上記表面改質剤を塗布することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。説明は実施例を用いて具体的に説明する。
【0049】
◇第1実施例
まず、図1を参照して、この発明の第1実施例である表面改質剤の構成について詳細に説明する。
この例の表面改質剤は、少なくとも、プレート3の表面に接着するための接着成分5bと、撥水性を有する撥水成分5aとを含むブロック共重合体5cより構成され、撥水被膜5としてプレート3の表面に接着される。
【0050】
次に、この例の表面改質剤を構成するブロック共重合体について詳細に説明する。
ブロック共重合体5cは、接着成分5bとして、4−ビニルベンジルジメチルアミン(以下、4VAという)を用い、撥水成分5aとして、4−トリメチルシリルスチレン(以下、TMSSという)を用い、4VAと4TMSSとをブロック重合させて形成されている。ブロック共重合体5cは、同一のモノマーがその鎖上で、比較的長く連続して結合されている共重合体であり、ブロックコポリマーとも呼ばれる。この例のブロック共重合体5cは、ポリ4VA−b−ポリ4TMSS−b−ポリ4VAと表され、このブロック共重合体5cを、インクジェットヘッドのインクの吐出する穴4を有するプレート3の表面に塗布することにより、プレート3の表面への接着性とプレート表面の撥水性とを同時に与える。
【0051】
次に、この例の表面改質剤の製造方法について説明する。なお、設計分子量Mkは240,000、設計重合濃度は約4%とする。
1)まず、ナフタレンとカリウムとを、THF(テトラヒドロフラン)中で、室温下で12時間反応させることによりナフタレンカリウムを合成し、得られたナフタレンカリウムの濃度を、標準塩酸を用いた中和滴定により測定することにより決定した。このまず、ナフタレンカリウムを重合開始剤として使用した。
【0052】
2)次に、THFの市販品(ナカライテスク(株)、1級)を水素化カルシウムで、次いで、ナトリウムワイヤーで一昼夜乾燥後、アントラセンナトリウム存在下で蒸留し、ブレークシール付きガラスアンプルへ真空封入した。さらに、そのTHFを、α−メチルスチレンテトラマージナトリウム塩の存在下で蒸留し、THFを精製した。この精製したTHFを重合溶媒として使用した。
【0053】
3)次に、モノマーのTMSS(北興化学(株)製)を、水素化カルシウムの存在下で蒸留し、ガラスアンプル内に真空封入した後、さらにオクチルベンゾフェノンナトリウムの存在下で真空中で蒸留し、精製した。精製したモノマーは、重合直前にTHFでおよそ30乃至50%溶液に希釈し、この希釈したモノマーを重合に用いた。この撥水成分5aは、一般式(1)で表される。
【0054】
【化17】
【0055】
(上式において、置換基のQ,R,Xは、炭素数が1乃至3のメチル基,エチル基,又はプロピル基からなり、それら置換基は、同一であっても異なっていても良い。)
【0056】
4)次に、モノマーの4VA(セイミケミカル(株)製)を、TMSSと同様に真空封入後、オクチルベンゾフェノンナトリウムで蒸留し、精製した。さらに、トリフェニルメチルリチウムを精製剤として蒸留し、精製した。精製したモノマーを、前述したTMSSと同様に、重合直前にTHFでおよそ30乃至50%溶液に希釈し、この希釈したモノマーを重合に用いた。この接着成分5bは、一般式(2)で表される。
【0057】
【化18】
【0058】
(上式において、メチレン基の長さkは、1乃至3であり、置換基のY,Zは、炭素数が1乃至3のメチル基,エチル基,又はプロピル基からなり、それら置換基は、同一であっても異なっていても良い。)
【0059】
5)次に、市販のエタノールを、水素化カルシウムの存在下で蒸留し、重合停止剤として使用した。
【0060】
6)次に、前述した試薬を用いて、以下のようにして、ブロック共重合体5cを合成した。なお、ここで使用した試薬の使用量について説明すると、ナフタレンカリウムは、0.20モル/リットル×6.7ミリリットル、THF(テトラヒドロフラン)は400ミリリットル、4TMSSは約8グラム、4VAは約8グラムである。
【0061】
まず、ナフタレンカリウムを重合開始剤として用い、THF中,−78℃で、4TMSS→4VAの順にモノマーを逐次添加し、リビングアニオン重合させ、この重合をエタノールで停止することにより、ブロック共重合体5cであるポリ4VA−b−ポリ4TMSS−b−ポリ4VAを合成した。尚、上述した全ての操作は、1×10−3Pa以下で高真空ブレークシール法を用いた。
【0062】
次に、合成したブロック共重合体5cについて、平均分子量と分子量不均一度とを測定したところ、平均分子量Mw=2.2×105、分子量不均一度Mw/Mn=1.16となり、非常に均一なポリマーを得ることができた。尚、分子量測定には、3本のカラム(GMHXL、東ソー製、長さ300mm、内径7.8mm)を用いたG.P.C.(gel permeation chromatography)により測定した。また、1H−NMR(核磁気共鳴;nuclear magnetic resonance)スペクトルは、JEOL EX−400FT−NMRスペクトロメータ(399.65MHz)を用いて測定し、化学シフトは、クロロホルム−d中のクロロホルムを基準とした。
【0063】
次に、以上のようにして合成したブロック共重合体5cをインクジェットヘッドのインクを吐出する面に塗布する際、ブロック共重合体5cの25w/v%トルエン溶液を用い、インクジェットヘッドのインクを吐出する穴4を形成する材質と同様の電鋳プレート(型の上に金属電着して部品を成型されたプレート)の一方の面にその溶液を塗布した後、溶媒を揮散させ、24時間真空乾燥することにより被膜処理をした。この被膜処理をした表面に純粋を滴下し、その接触角を測定したところ、100乃至110度の接触角を得ることができた。
【0064】
また、基材への接着力を強化する手段として、アミノ基に電荷を持たせて接着力を強化した。その際、温度60℃、ジヨードブタン雰囲気中に、0乃至120分間曝すことにより接着成分5bの4級化を行った。4級化後の接着力を、基材に対して90度に曲げて調べたところ、4級化前の接着力(70J/m2)に比べて約2倍の接着力(130J/m2)を得ることができた。
【0065】
◇第2実施例
次に、図2を参照して、この第2の実施例であるインクジェットヘッドについて説明する。この例は、前述した表面改質剤を、インクを吐出する穴を有する電鋳プレートに塗布されたインクジェットヘッドである。
まず、この例のインクジェットヘッドの構成について説明する。
この例のインクジェットヘッドは、同図に示すように、インク液滴を吐出するために圧力を加えられるインク液室2と、インクを供給するインクプール6と、インク液室2とインクプール6とを連通させる供給口7と、インク液室2,インクプール6,供給口7を形成する複数の電鋳プレート3A,3B,3C,3D,3Eと、インク液室2に圧力を加える圧電素子1と、インク液滴を吐出する吐出穴4と、吐出穴4を形成するプレート表面に被膜された撥水被膜5とを備える。
【0066】
次に、この例のインクジェットヘッドの各部の構成について詳細に説明する。複数枚の電鋳プレート3A,3B,3C,3D,3Eの各々は、厚みが20乃至50μmであり、接着剤を介して張り合わせることにより、インク液室2,プール6,供給口7を形成する。接着剤は、例えば、エポキシ系接着剤(商品名:エイブルボンド931−1/日本エイブルスティック(株)製)を用い、転写方法によりプレートに印刷する。
【0067】
プール6は、インクを多数の吐出穴4に共通で、且つ、ある程度のインクを溜めておくプールであり、供給口7は、プール6からインク室2につながる入り口を形成し、供給口7の大きさは、吐出穴4とほぼ同程度のφ10乃至30μmの大きさである。圧電素子1は、インク室2の天井裏に設けられ、インク室2の天井を変位させる。インクの吐出穴4は、インク液室2を挟んで圧電素子1と対向する側に形成されている。
【0068】
撥水被膜5は、上述した第1実施例で説明した撥水成分5aとして用いられる4VAと接着成分5bとして用いられる4TMSSとから構成されるポリマーである、ポリ4VA−b−ポリ4TMSS−b−ポリ4VAのブロック共重合体5cであり、インクを吐出する穴4を形成する電鋳プレート3Eの表面に形成されている。このブロック共重合体5cの25w/v%トルエン溶液を用い、インクが吐出する側の電鋳プレート3E表面に数μmの被膜を均一に施す方法として、従来の電鋳プレート3Eの引き上げによる塗布方法から、スプレーガンを用いて、プレート表面に吹き付ける方法を採用した。ブロック共重合体5cの塗布が終了した後、溶媒を揮散させ、24時間真空乾燥することにより、撥水被膜5を作製した。乾燥後、インクを吐出する穴が閉塞している場合は、エキシマレーザにより穴あけを行った。また、電鋳プレート3Eとの接着力を上げるために、60℃,ジヨードブタン雰囲気中に0乃至120分間曝し、接着成分5bを4級化することによりアミノ基に電荷を持たせた。
【0069】
なお、この実施例で使用したインクは、水性染料からなり、その主な物性値は、25℃において、pHが8乃至9.5、表面張力が29乃至30.5(mN/m)、粘度が3乃至3.5(mNs/m2)である。この水性染料からなるインクを前述のヘッド表面に滴下し、その接触角を測定したところ、50度の接触角を得ることができた。又、ゴム材(例えば、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコンゴムのJISAの硬度が40乃至60)からなるブレードで、前述のヘッド面を擦ったところ、10000回でも接触角の低下は見られなかった。従って、加水分解による劣化あるいは基材との接着力低下による不具合は無いものと思われる。
また、この例のインクヘッドを図示しない装置に搭載して、印字を行ったところ、長時間においても吐出の乱れによる印字不良は発生しなかった。
【0070】
◇第3実施例
次に、図3を参照して、この発明の第3実施例であるインクジェットヘッドについて説明する。この例のインクジェットヘッドは、前述した表面改質剤をインクジェットヘッドのインクを吐出する穴を有するポリイミドフィル表面に塗布した例である。
まず、この例のインクジェットヘッドの構成について説明する。
この例のインクジェットヘッドは、同図に示すように、インク液滴を吐出するために圧力を加えられるインク液室2と、インクを供給するインクプール6と、インク液室2とインクプール6とを連通させる供給口7と、インク液室2,インクプール6,供給口7を形成する複数の電鋳プレート3B,3C,3Dと、複数の電鋳プレート3B,3C,3Dの両側に設けられているポリイミドフィルム8A,8Bと、インク液室2に圧力を加える圧電素子1と、インク液滴を吐出するためにポリイミドフィルム8Aに設けられている吐出穴4と、吐出穴4を形成するプレート表面に被膜された撥水被膜5とを備える。
【0071】
次に、この例のインクジェットヘッドの各部の構成について説明する。
複数枚の電鋳プレート3B,3C,3Dは、厚みが20乃至50μmであり、ポリイミドフィルム(商品名:カプトン/東レ・デュポン(株)製)8A、8Bは、厚みが10乃至50μmであり、これら電鋳プレート3B,3C,3D,及びポリイミドフィルム8A,8Bを、接着剤を介して張りあわせた。接着剤は、エポキシ系接着剤(商品名:エイブルボンド931−1/日本エイブルスティック(株)製)を用い、転写方法によりプレートに印刷した。これにより、以下の次の構成要素を形成する。
【0072】
プール6は、インクを多数の吐出穴4に共通で、且つ、ある程度のインクを溜めるインクプールであり、供給口7は、プール6からインク室2につながる入り口を形成し、その大きさは、吐出穴4とほぼ同程度のφ10乃至30μmの大きさである。また、圧電素子1は、インク室2の天井を変位させるために、インク室2の天井裏に設けられている。インクの吐出穴4は、インク液室2を挟んで、圧電素子1と対向する側に形成されている。
【0073】
撥水被膜5は、撥水成分5aとして用いられる4VAと、接着成分5bとして用いられるTMSSとから構成されるポリマーであるポリ4VA−b−ポリ4TMSS−bポリ4VAのブロック共重合体5cであり、インクを吐出する穴4を形成するポリイミドフィルム8Aの表面に形成されている。このブロック共重合体5cの25w/v%トルエン溶液を用い、インクが吐出する側のポリイミドフィルム8A表面に数μmの被膜を均一に施す方法として、従来のポリイミドフィルム(その背面には保持するための図示しないSUS材からなるダミー板が設けられている)の引き上げによる塗布方法から、スプレーガンを用いて、インクが吐出する側の表面に吹き付ける方法を採用した。塗布が終了した後、溶媒を揮散させ、24時間真空乾燥することにより、撥水被膜5を作製した。乾燥後、インクを吐出する穴4を、エキシマレーザにより形成した。さらに、穴加工をしていないポリイミドフィルム8Aとの接着力を上げるために、60℃,ジヨードブタン雰囲気中に0乃至120分間曝し、接着成分5bを4級化することにより、アミノ基に電荷を持たせた。
【0074】
この実施例で使用したインクは、水性染料からなり、その主な物性値は、25℃において、pHが8乃至9.5、表面張力が29乃至30.5(mN/m)、粘度が3乃至3.5(mNs/m2)である。この水性染料からなるインクを前述のヘッド表面に滴下し、その接触角を測定したところ、50度の接触角を得ることができた。また、ゴム材(エチレンプロピレンゴム,ブチルゴム,シリコンゴムのJISAの硬度が40乃至60)からなるブレードで、前述のヘッド面を擦ったところ、10000回でも接触角の低下は見られなかった。従って、加水分解による劣化あるいは基材との接着力低下による不具合は無いものと思われる。
【0075】
このインクヘッドを図示しない装置に搭載して、印字を行ったところ、長時間において吐出の乱れによる印字不良は発生しなかった。
【0076】
以上、この発明の実施例を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあってもこの発明に含まれる。
例えば、上述の実施例においては、撥水成分5aと接着成分5bとを用いてブロック共重合体5cを合成したが、これに限らず、グラフト共重合体を用いることもできる。
【0077】
また、上述した実施例においては、ブロック共重合体5cをリビングアニオン重合を用いて合成したが、これに限らず、リビングラジカル重合によって合成することもできる。
【0078】
また、上述した実施例においては、ジヨードブタンを用いて接着成分を4級化したが、これに限らず、ジヨードプロパン,ジヨードペンタン等、さらには、ジブロモプロパン,ジブロモブタン,ジブロモペンタン等、一般式(3)あるいは一般式(4)で表されるジハロゲン化物を用いて4級化することもできる。
【0079】
【化19】
【0080】
【化20】
【0081】
また、上述した実施例においては、インクヘッドを構成するのに電鋳プレート3A乃至3Eを用いたが、これに限らず、エッチングでインクが流れる穴を形成したSUS(special use stainless steel)プレートを使用して積層したインクヘッドにおいても、同様の効果が期待できる。
【0082】
また、上述した実施例においては、ブロック共重合体5cの塗布を行う際に、従来の電鋳プレート3Eの引き上げによる塗布方法から、スプレーガンを用いて、プレート表面に吹き付ける方法を採用したが、これに限らず、塗布を行う手段として、スピンコート方法を用いても同様に被膜することができる。
【0083】
また、上述した実施例においては、ブロック共重合体5cの塗布を行った際、インクを吐出する吐出穴4が閉塞している場合は、エキシマレーザにより穴あけを行ったが、これに限らず、吐出穴4を予め高分子材料(例えば、レジスト等)でマスクして行っても構わない。
【0084】
また、上述した実施例においては、インクを水性染料よりなるインクを用いたが、これに限らず、他の物性値を有するインクの場合に適用できることは言うまでもない。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の構成によれば、撥水成分5aと接着成分5bとからなるポリマーは、良好な撥水性と、且つ基材に対して優れた接着力とを有する表面改質剤を提供することが可能になる。
【0086】
また、この発明の構成によれば、上記表面改質剤を用いて信頼性のあるインクジェットヘッドを提供することができ、高精細な印字が可能な記録装置を提供することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施例である表面改質剤の構成を示す概略図である。
【図2】この発明の第2実施例であるインクジェットヘッドの構成を示す断面図である。
【図3】この発明の第3実施例であるインクジェットヘッドの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 圧電素子
2 インク室
3 プレート
3A,3B,3C,3D,3E,3F 電鋳プレート
4 吐出穴
5 表面撥水剤(撥水被膜)
5a 撥水成分
5b 接着成分
5c ブロック共重合体
6 プール
7 供給口
8A,8B ポリイミドフィルム
Claims (16)
- 基材の表面に撥水性を与える撥水成分と前記基材の表面に接着するための接着成分とを含み、前記基材の表面に塗布され、その表面を改質する表面改質剤であって、前記撥水成分としての下記一般式(1)で表されるケイ素を含む単量体と、前記接着成分としての一般式(2)で表されるアミノ基を有する単量体と、から誘導されるブロック共重合体であることを特徴とする表面改質剤。
- 前記ブロック共重合体は、前記撥水成分の重量分率(W)が0.25乃至0.75であることを特徴とする請求項1記載の表面改質剤。
- 前記ブロック共重合体は、アルカリ金属又はアルキル土類金属を対カチオンとするカルボアニオンあるいはラジカルアニオンをアニオン重合開始剤として重合させるリビングアニオン重合により形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面改質剤。
- 前記ブロック共重合体は、リビングラジカル重合により形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の表面改質剤。
- 前記一般式(2)で表されるアミノ基を有する単量体におけるアミノ基が4級化されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の表面改質剤。
- 前記4級化は、ジハロゲン化物を用いて行われることを特徴とする請求項5記載の表面改質剤。
- 前記ジハロゲン化物は、ジヨードブタン,ジヨードプロパン,ジヨードペンタン,ジブロモプロパン,ジブロモブタン,又はジブロモペンタンであることを特徴とする請求項6記載の表面改質剤。
- 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の表面改質剤が、インクジェットヘッドのインクが吐出する穴を有するプレートの表面に塗布されることを特徴とするインクジェットヘッド。
- 基材の表面に、撥水性を与える撥水成分を含む表面改質剤を前記基材の表面に塗布し、その表面を改質する表面改質方法であって、前記表面改質剤が撥水成分としての下記一般式(1)で表されるケイ素を含む単量体と、接着成分としての一般式(2)で表されるアミノ基を有する単量体と、から誘導されるブロック共重合体であることを特徴とする表面改質方法。
- 前記ブロック共重合体は、前記撥水成分の重量分率(W)が0.25乃至0.75であることを特徴とする請求項9記載の表面改質方法。
- 前記ブロック共重合体を、アルカリ金属又はアルキル土類金属を対カチオンとするカルボアニオンあるいはラジカルアニオンをアニオン重合開始剤として重合させるリビングアニオン重合により形成することを特徴とする請求項9又は請求項10記載の表面改質方法。
- 前記ブロック共重合体を、リビングラジカル重合により形成することを特徴とする請求項9又は請求項10記載の表面改質方法。
- 前記一般式(2)で表されるアミノ基を有する単量体におけるアミノ基を4級化することを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の表面改質方法。
- 前記4級化は、ジハロゲン化物を用いて行うことを特徴とする請求項13記載の表面改質方法。
- 前記ジハロゲン化物は、ジヨードブタン,ジヨードプロパン,ジヨードペンタン,ジブロモプロパン,ジブロモブタン,又はジブロモペンタンであることを特徴とする請求項14記載の表面改質方法。
- 請求項9から請求項15のいずれか1項に記載の表面改質方法を用いて、インクが吐出する穴を有するプレートの表面に前記表面改質剤を塗布することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
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