JP3974373B2 - 風力発電装置及び風力発電方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は風車により駆動される同期発電機の出力変動を抑制する風力発電装置及びその発電方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の風力発電システムを説明する。風車は同期発電機に接続され、風のエネルギーによって風車が回転し、風車が同期発電機を駆動することで同期発電機が発電する。同期発電機の出力する交流電力は順変換器により直流電力に変換され、更に逆変換器により商用周波数の交流電力に変換されて電力系統に供給される。風力発電システムの一例として、特開平2000−345952号公報に記載されている。
【0003】
一方、風力発電システムは風速の変動例えば風車のブレードがタワーの近くを横切る時に、そのブレードが風の力を受けにくくなることから生じる所謂タワーブロック効果等がある。風速変動に起因する出力変動は電力系統の周波数や電圧を変動させ、電力系統に悪影響を与えることになるため、風力発電システムを導入する場合にはこうした出力変動を抑制することが必須となる。
【0004】
そこで、近年の風車では風車のブレードの角度を風速に応じて変化させることで、風車への機械的入力を調節するピッチ制御を行うことにより、風速変動に起因する出力変動を抑制する方法が採られる。また、更に順変換器による同期発電機の出力制御も合わせて行われる。逆変換器においては直流電圧を一定に制御することが行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では変動周期の短い変動については、十分な変動抑制効果を得ることが困難となる。それは、逆変換器において直流電圧を一定に制御することを行っているために、順変換器の出力がそのまま系統側へ出力されることになるためである。即ち、風車のピッチ制御や順変換器の出力制御では応答することのできない短い周期変動がそのまま系統側へ出力されることになり、電力系統への電力の品質が低下する恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、風車のピッチ制御や順変換器の出力制御では応答することのできない短い周期の変動を抑制することにより、電力系統に品質を向上した電力を供給することが出来る風力発電装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の風力発電装置は、同期発電機の出力が増加する時には、直流コンデンサ間の端子電圧を高くし直流電力を畜電手段に充電すると共に、同期発電機の出力が減少する時には、直流コンデンサ間の端子電圧を低くし直流コンデンサから直流電力を逆変換器に放電する指令を逆変換器に出す制御部を設けることにより、周期変動を抑制することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に掛かる一実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施例の全体構成を示す。図1において、同期発電機2の回転子は風車1の軸に接続されており、風車1が風のエネルギーにより回転すると、同期発電機2は風車1の回転速度に応じ回転子が固定子内で回転し、固定子から可変周波数の交流電力を出力する。同期発電機2の固定子には順変換器3が接続されており、同期発電機2の発生する可変周波数の交流電力は順変換器3により直流電力に変換される。順変換器3は蓄電手段である直流コンデンサ4を介し、逆変換器5に接続されており、逆変換器5は順変換器3から送られる直流電力を固定周波数の交流電力に変換する。逆変換器5は系統連系用変圧器6を介して電力系統に接続されており、固定周波数の交流電力を電力系統に供給する。
【0009】
逆変換器5と系統連系用変圧器6の間には電流検出センサ8が設置されており、電流検出センサ8は逆変換器5から系統側へ流れる電流を検出する。検出された電流値は3相/2相変換器9によって有効分と無効分の2軸成分に変換される。
【0010】
また、順変換器3と逆変換器5の間の直流部分には直流電圧検出センサ7が設置されており、直流電圧検出センサ7は直流コンデンサ4に掛かる電圧を検出する。
【0011】
同期発電機2と順変換器3の間には電圧検出センサ16及び電流検出センサ17が設置されており、電圧検出センサ16は同期発電機2の端子電圧検出値を、電流検出センサ17は同期発電機2の固定子に流れる電流の検出値を、それぞれ出力変動抑制ブロック10に入力する。出力変動抑制ブロック10は直流電圧制御器11へ与える直流電圧指令の補正分を出力する。この直流電圧指令の補正分を直流電圧指令のベース分に加えたものが直流電圧制御器11に与える直流電圧指令となる。
【0012】
直流電圧制御器11の入力は直流電圧指令と直流電圧検出器7の出力する直流電圧検出値の偏差値である。但し、直流電圧指令が大きくなり過ぎて、直流コンデンサ4の耐電圧よりも直流電圧が大きくなると直流コンデンサ4が壊れるので、直流電圧指令制限リミッタ15を設けて、直流電圧指令があまり大きくなり過ぎないようにする。直流電圧制御器11は例えば比例積分制御系により構成され、直流電圧検出値と直流電圧指令の偏差値が零になるように逆変換器5への電流指令を決定する。
【0013】
電流制御器12への入力は3相/2相変換器9の出力する2軸成分の電流検出値と直流電圧制御器11の出力する逆変換器5への電流指令である。電流制御器12は例えば比例積分制御系により構成され、電流検出値と電流指令の偏差値が零になるように逆変換器5への出力電圧指令を決定する。電流制御器12の出力する逆変換器5への出力電圧指令は2軸成分の電圧指令であるので、2相/3相変換器13によって3相の電圧指令に変換される。
【0014】
制御部であるパルス発生器14は、2相/3相変換器13の出力する逆変換器5への3相出力電圧指令に基づいて、PWM(Pulse Width Modulation)により逆変換器5へのゲートパルス信号を出力する。逆変換器5はゲートパルス信号を受け、IGBT等のスイッチング素子が高速にスイッチングを行うことで、逆変換器5は指令に応じた電圧を出力することになる。つまり、直流電圧指令値と直流電圧検出値との偏差値に応じて、制御部であるパルス発生器14から逆変換器5に直流コンデンサ4間の端子電圧Vを増減するように逆変換器5を通過する電力を制御する指示をする。
【0015】
以上のような制御系の構成により、直流コンデンサ4間の端子電圧を抑制することができる。
【0016】
次に直流電圧指令補正分について説明する。発電機出力に変動がない場合、この直流電圧指令の補正分は零であり、直流電圧指令のベース分がそのまま直流電圧指令となる。
【0017】
発電機出力が増加した場合、直流電圧指令の補正分を正の方向へ大きくすることで、パルス発生器14より直流コンデンサ4間の端子電圧Vの直流電圧を高くする指示を逆変換器5に出し、直流コンデンサ4に蓄えるエネルギーを大きくする。この結果、順変換器3から直流部分への入力の増加分を直流コンデンサ4に蓄え、逆変換器5は一定の出力を保つことができる。
【0018】
逆に、発電機出力が減少した場合、直流電圧指令の補正分を負の方向へ大きくすることで、パルス発生器14より逆変換器5に直流コンデンサ4間の端子電圧Vを低くする指示を逆変換器5に出し、直流コンデンサ4に蓄えるエネルギーを小さくする。この結果、順変換器3から直流部分への入力の不足分は直流コンデンサ4に蓄えられていたエネルギーから補われるため、逆変換器5は一定の出力を保つことができる。
【0019】
このように、順変換器3と逆変換器5を接続する直流部分の直流電圧制御が可能となり、直流コンデンサ4にエネルギーを蓄えたり、或いは直流コンデンサ4に蓄えたエネルギーを放出したりすることで、同期発電機2の出力が変動した場合にも電力系統側への出力変動を抑制することが可能となり、電力系統に出力変動を抑制した分品質の良い電力を供給することが出来るようになった。
【0020】
図2は出力変動抑制ブロック10を詳細に示した図である。同期発電機2と順変換器3の間には電圧検出センサ16及び電流検出センサ17が設置されており、電圧検出センサ16は同期発電機2の端子電圧を検出し、電流検出センサ17は同期発電機2の固定子に流れる電流を検出する。検出された電圧、電流値は3相/2相変換器18によって有効分と無効分の2軸成分に変換される。
【0021】
有効電力検出器19は3相/2相変換器18の出力する2軸成分の信号に基づいて同期発電機2の出力する有効電力を検出する。変動抽出フィルタ20は有効電力検出器19の出力する有効電力検出値からある特定の周波数領域における変動分を抽出する。この周波数領域は風車1のピッチ制御や順変換器3の出力制御では応答することのできない高い周波数領域が設定される。風車1のピッチ制御は機械的な制御であるために、その応答時定数は数秒オーダであり、順変換器3の出力制御は電気的な制御であるため、ピッチ制御に比べると応答は速いが、通常は制御の安定性を考慮して約100ms程度に設定する。
【0022】
一方、風車1のブレードがタワーの近くを横切るときに、同期発電機2の出力には数Hz程度の周期の出力変動が生じる。この変動は風車1のブレードがタワーの近くを横切る時にそのブレードが風の力を受けにくくなることから生じるもので、タワーブロック効果と呼ばれる。
【0023】
この変動は風車1のピッチ制御や順変換器3の出力制御では応答することができない周波数領域であるために、変動抽出フィルタ20の抽出する周波数領域はこの周波数領域が設定される。変動抽出フィルタ20は変動を抑制する特定の周波数成分を検出するものであれば良く、フーリエ変換による特定の周波数成分検出を用いることもできる。
【0024】
ゲイン位相補償21は変動抽出フィルタ20の抽出した出力変動信号のゲイン及び位相を調整し、直流電圧指令の補正分を作成する。ゲイン、位相の調整はゲイン余裕、位相余裕、逆変換器5の動作遅れ時間等を考慮して決定する。ゲイン位相補償21の出力する直流電圧指令の補正分は直流電圧指令ベース分に加算され、逆変換器5への直流電圧指令が作成される。つまり、ゲイン位相補償部21は出力変動分の位相及びゲイン幅を調整して直流電圧指令値補正分を出力する。
【0025】
図3は出力変動を抑制のための出力変動制御ブロックはないが、不感帯22を用いることで等価的に直流電圧指令を変化させて、電力系統側への出力変動を抑制する。通常は直流電圧指令と直流電圧検出値の間に偏差値が生じると、その偏差値が零になるように直流電圧制御器11が動作する。
【0026】
しかし、図3に示すように不感帯22を用いると、直流電圧指令と直流電圧検出値の間に仮に偏差値が生じても、その偏差値がある一定の範囲内であれば、不感帯22の出力は零であり、直流電圧制御器11の入力が零となることから、その出力である電流指令は変化しない。その結果、逆変換器5が系統側へ出力する電力は一定に保たれる。
【0027】
例えば、同期発電機2の出力が増加した場合、順変換器3から直流部分へ流れ込む電力が増加するが、逆変換器5が系統側へ出力する電力は一定に保たれるため、順変換器3から直流部分へ流れ込む電力の増加分が直流コンデンサ4に蓄えられることとなり、直流電圧が上昇する。
【0028】
逆に、同期発電機2の出力が減少した場合、順変換器3から直流部分へ流れ込む電力が減少するが、逆変換器5が系統側へ出力する電力は一定に保たれるため、逆変換器5が系統側へ出力する電力の不足分が直流コンデンサ4に蓄えられたエネルギーから補われることとなり、直流電圧が低下する。
【0029】
以上のように、不感帯22を用いることで直流電圧指令と直流電圧検出値の間の偏差値がある一定の範囲内であれば、直流電圧を変化させることで、逆変換器5から系統側への出力を一定に保つことができる。即ち、同期発電機2の出力が変動した場合にも等価的に直流電圧指令を変化させることで、電力系統側への出力変動を抑制することが可能となる。また不感帯22を用いれば、図1,2に比べて出力変動抑制ブロック10を使用しない分だけ、風力発電装置の構成を簡素化することが出来る。
【0030】
本発明の風力発電方法の実施例として、例えば風のエネルギーによって回転する風車の回転エネルギーを同期発電機により交流電力に変換し、この交流電力を順変換器で直流電力に変換して逆変換器に入力し、逆変換器により直流電力を商用周波数の交流電力に変換して電力系統に供給し、順変換器と逆変換器との間に設けた蓄電手段に直流電力を充電及び放電し、同期発電機の出力する有効電力を出力変動抑制ブロックに入力し、蓄電手段の直流電圧を電圧検出センサにより検出し、出力変動抑制ブロックの出力する直流電圧指令値補正分と直流電圧指令ベース分の和からなる直流電圧指令値と電圧検出センサの直流電圧検出値との偏差値を制御部に入力し、制御部により畜電手段間の端子電圧を増減するように逆変換器を通過する電力を制御し、逆変換器により商用周波数の交流電力に変換して電力系統に一定の電力を供給することにより、風車による同期発電機の出力が変動した場合にも、電力系統側への出力変動を抑制し、品質を向上した電力を供給することが可能となった。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、風車による同期発電機の出力が変動した場合にも電力系統側への出力変動を抑制することが可能となり、電力系統に出力変動を抑制した分品質の良い電力を供給することが出来るようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例として適用した風力発電装置の構成図。
【図2】本発明の他の実施例である出力変動抑制ブロックの詳細を示した風力発電装置の構成図。
【図3】本発明の他の実施例である不感帯を用いた風力発電装置の構成図。
【符号の説明】
1…風車、2…同期発電機、3…順変換器、4…直流コンデンサ、5…逆変換器、6…系統連系用変圧器、7…電圧検出センサ、8…電流検出センサ、9…3相/2相変換器、10…出力変動抑制ブロック、11…直流電圧制御器、12…電流制御器、13…2相/3相変換器、14…パルス発生器、15…直流電圧指令制限リミッタ、16…電圧検出センサ、17…電流検出センサ、18…3相/2相変換器、19…有効電力検出器、20…変動抽出フィルタ、21…ゲイン位相補償、22…不感帯。

Claims (5)

  1. 風のエネルギーによって回転する風車と、風車の回転エネルギーを交流電力に変換する同期発電機と、前記交流電力を直流電力に変換する順変換器と、前記直流電力を商用周波数の交流電力に変換して電力系統に供給する逆変換器とを備えた風力発電装置において、
    前記同期発電機の出力変動を抑制する前記順変換器と前記逆変換器との間に設けた前記直流電力を充電及び放電するコンデンサと、
    前記同期発電機の出力する有効電力に含まれるタワーブロック効果に起因する出力変動分を抽出する変動抽出フィルタを有し、
    該出力変動分を抑制するために直流電圧指令値補正分を出力する出力変動抑制ブロックと、
    前記コンデンサの直流電圧を直流電圧検出値として出力する電圧検出センサとを備え、
    前記直流電圧指令値補正分と直流電圧指令ベース分の和からなる直流電圧指令値と前記直流電圧検出値との偏差値に応じて、前記コンデンサ間の端子電圧を増減するように前記逆変換器を通過する電力を制御する指示を前記逆変換器に出す制御部を設けることを特徴とする風力発電装置。
  2. 前記同期発電機の出力が増加する時には、前記畜電手段間の端子電圧を高くし直流電力を前記畜電手段に充電すると共に、前記同期発電機の出力が減少する時には、前記畜電手段間の端子電圧を低くし前記畜電手段から直流電力を逆変換器に放電する指令を前記逆変換器に出す制御部を設けることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
  3. 前記出力変動抑制ブロックは前記同期発電機から有効電力を検出する有効電力検出器と、前記出力変動分を抽出する変動抽出フィルタと、前記出力変動分の位相及びゲインを調整して直流電圧指令値補正分を出力するゲイン位相補償部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の風力発電装置。
  4. 前記直流電圧指令値が前記蓄電手段を破損しない直流電圧値に制限する直流電圧指令リミッタを設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の風力発電装置。
  5. 風のエネルギーによって回転する風車の回転エネルギーを同期発電機により交流電力に変換し、前記交流電力を順変換器で直流電力に変換し、前記直流電力を逆変換器により商用周波数の交流電力に変換して電力系統に供給する風力発電方法において、
    前記同期発電機の出力変動を抑制する前記順変換器と前記逆変換器との間に設けたコンデンサに前記直流電力を充電及び放電し、前記同期発電機の出力する有効電力を出力変動抑制ブロックに入力し、前記出力変動抑制ブロックは前記同期発電機の出力する有効電力に含まれるタワーブロック効果に起因する出力変動分を抑制するために直流電圧指令値補正分を出力し、前記コンデンサの直流電圧を電圧検出センサにより検出し、前記出力変動抑制ブロックの出力する直流電圧指令値補正分と直流電圧指令ベース分の和からなる直流電圧指令値と前記電圧検出センサの直流電圧検出値との偏差値を制御部に入力し、前記制御部により前記コンデンサ間の端子電圧を増減するように前記逆変換器を通過する電力を制御することを特徴とする風力発電方法。
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