JP3974083B2 - 連立一次方程式求解装置及び求解方法 - Google Patents

連立一次方程式求解装置及び求解方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は連立一次方程式求解装置及び求解方法に係り、特に事前にオーダリングを施す連立一次方程式求解装置及び求解方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
疎行列を係数行列に持つ連立一次方程式の解法としては、係数行列の非零要素のみを計算対象とし、前処理にオーダリングを実施して解を求める手法がある。オーダリングとは、入力疎行列の節点情報をもとに、適当な置換を作用させることで連立一次方程式を解くのに性質の良い非零構造の行列に変換する方法である。 オーダリングの主な手法としては、Minimum Degree法(MD法)系統の手法(例えば、非特許文献1参照)、及び再帰的な領域分割に基づくNested Dissection法(ND法)系統の手法(例えば、非特許文献2参照)が知られている。
【0003】
【非特許文献1】
T.A.Davis,P.Amestoy and I.S.Duff:”An Approximate Minimum Degree Ordering Algorithm”,Computer and Information Sciences Dept.,University of Florida,Technical Report,TR-94-039,December,1994
【0004】
【非特許文献2】
G.Karypis and V.Kumar: “A Fast and High Quality Multilevel Scheme for Partitioning Irregular Graphs”,Technical Report TR-95-035,Department of Computer Science,University of Minnesota,1995(update on 1998)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術では、数万回、数十万回と多数回に渡り連立一次方程式を解く必要がある場合、計算の対象となる入力係数行列の非零構造がすべて同じであれば、オーダリングを最初の一回のみ実行すればよい。しかし、入力係数行列の非零構造が少しでも異なる場合には、再度オーダリングしなければならない。このとき、非零構造が一致している部分も、再度のオーダリングの対象となる。このためオーダリングの対象が増大し処理時間が増大する。
【0006】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたもので、多数回に渡って連立一次方程式を解く場合における一連の処理時間を短縮する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために次のような手段を採用した。
【0008】
疎行列を入力係数行列とする複数の連立一次方程式の解を連続して求める連立一次方程式求解装置であって、前回使用した入力係数行列と今回使用する入力係数行列との差分を取得し、取得した差分を解析して部分的にオーダリングを施すべき部分オーダリング領域を決定する差分解析部と、入力係数行列の非零要素全体にオーダリングを施すオーダリング部と、前記部分オーダリング領域に対してのみオーダリングを施す部分オーダリング部と、部分オーダリング領域に対しては部分オーダリングの結果をもとに、それ以外の領域に対しては以前のオーダリング結果を流用して連立一次方程式の解を求める連立一次方程式求解部を備えた。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる連立一次方程式求解装置を説明する図である。本実施形態においては、オーダリングに前記ND法を採用する。ND法は、有限要素法で使うメッシュをセパレータと呼ばれる節点集合により2つの部分領域AとBに分割し、Aに属する点、Bに属する点、セパレータに属する点の順に番号を付け直し、さらに、この処理を各部分領域に対して、再帰的に繰り返すことにより、行列を再帰的縁付きブロック対角行列に変形する手法である。ここで、節点番号は、対称行列の場合、列番号に対応する。また、本実施形態では、ND法が領域を再帰的に分割していく様子から、ND法による領域分割をネストといい、ある領域分割が何回目に生成したものかをネストレベルで表す。さらにネストレベルkの領域分割と同等の表現として、深さkのネストという表現を使用する。
【0010】
図1において、連立一次方程式求解装置102は初期化部103、差分情報抽出部105、差分解析部106、オーダリング部108、テーブル処理部109、部分オーダリング部111、及び連立一次方程式求解部112を有している。
【0011】
初期化部103は、入力情報101を入力とし、入力情報101に含まれる初期化フラグが零ならば比較要素位置情報104を初期化し、初期化フラグが零でないならば比較要素位置情報104の初期化を行うことなく入力情報101を差分情報抽出部105へ出力する。
【0012】
差分情報抽出部105は、初期化部103から出力された入力情報101を入力とし、比較要素位置情報104が初期化状態ならば、入力情報101を差分解析部106へ出力する。比較要素位置情報104が初期化状態ではなく、かつ、比較要素位置情報104と入力情報101の非零要素位置情報201との差分情報がないときは、テーブル情報110から取得した置換ベクトル602と入力情報101を連立一次方程式求解部112へ出力する。比較要素位置情報104が初期化状態ではなく、かつ、比較要素位置情報104と非零要素位置情報201との差分情報があるときは、入力情報101と比較要素位置情報104と差分情報を差分解析部106へ出力する。
【0013】
差分解析部106は、内部に部分オーダリング領域解析部107を有し、入力情報101または、入力情報101、比較要素位置情報104および差分情報を入力として、差分情報がない場合は入力情報101をオーダリング部108へ出力し、差分情報がある場合は入力情報101とテーブル情報110から取得した置換ベクトル602と部分オーダリング領域解析部107により出力された列範囲情報でテーブル情報110の列範囲情報607を更新し、列範囲情報607を部分オーダリング部111へ出力する。
【0014】
オーダリング部108は、入力情報101を入力し、置換ベクトルを生成する。さらに、図2に示す入力情報101の非零要素位置情報201と生成した置換ベクトルをテーブル処理部109へ出力し、置換ベクトル602と入力情報101を連立一次方程式求解部112へ出力する。
【0015】
テーブル処理部109は、オーダリング部108、または部分オーダリング部111から出力された置換ベクトルと非零要素位置情報201を入力とし、テーブル情報110を更新する。
【0016】
部分オーダリング部111は、差分解析部106から出力された入力情報101、置換ベクトル602、列範囲情報607を入力として、部分オーダリング処理し、置換ベクトルを生成する。さらに、非零要素位置情報201と生成した置換ベクトルをテーブル処理部109へ出力し、置換ベクトル602と入力情報101を連立一次方程式求解部112へ出力する。
【0017】
連立一次方程式求解部112は、置換ベクトル602と入力情報101を入力として、出力情報113を出力する。
【0018】
図2は、連立一次方程式求解装置102の入出力方法を説明する図である。連立一次方程式求解装置102の入力情報101としては、非零要素位置情報201、係数行列202、右辺ベクトル203及び初期化フラグ204を備える。出力情報113は解ベクトルである。
【0019】
図3は、差分情報抽出部105の処理を説明する図である。まず、差分情報抽出部105は、比較要素位置情報104を取得し(ステップ301)、比較要素位置情報104が初期化状態にあるかチェックする(ステップ302)。
【0020】
比較要素位置情報104が初期化状態である場合には、比較要素位置情報104を非零要素位置情報201に更新し(ステップ309)、入力情報101を差分解析部106へ出力し、処理を終了する(ステップ310)。
【0021】
比較要素位置情報104が初期化状態でない場合には、比較要素位置情報104と非零要素位置情報201との差分情報を求める(ステップ303)。次に、ステップ303で求めた差分情報の有無を判別し(ステップ304)、差分情報がない場合には、テーブル情報110から置換ベクトル602を取得し(ステップ305)、入力情報101と置換ベクトル602を連立一次方程式求解部112へ出力し(ステップ306)、処理を終了する。
【0022】
ステップ304で差分情報がある場合には、比較要素位置情報104を非零要素位置情報201に更新し(ステップ307)、比較要素位置情報104と入力情報101と差分情報を差分解析部106へ出力し(ステップ308)、処理を終了する。
【0023】
図4は、差分解析部106の処理を説明する図である。まず、差分解析部106は入力データの中に差分情報があるかないかを判別する(ステップ401)。入力データの中に差分情報がない場合は、テーブル情報110のすべての情報を初期化し(ステップ402)、入力情報101をオーダリング部108へ出力した(ステップ403)後、処理を終了する。
【0024】
入力データの中に差分情報がある場合は、テーブル情報110から置換ベクトル602と列ブロック対応テーブル605を取得し(ステップ404)、すべての差分要素に対して、置換ベクトル602を用いて座標変換し(ステップ405)、部分オーダリング領域解析部107の処理を実施する(ステップ406)。部分オーダリング領域解析部107は、置換ベクトル602による座標変換後の差分情報と、テーブル情報110の列ブロック対応テーブル605を入力とし、置換ベクトル602による座標変換後の列番号に対応した部分オーダリング対象となる列範囲情報を出力する。次に部分オーダリング領域解析部107から出力された列範囲情報と置換ベクトル602と入力情報101を部分オーダリング部111へ出力し(ステップ407)、処理を終了する。
【0025】
図5は、テーブル処理部109を説明する図である。テーブル処理部109は、置換後非零要素位置情報テーブル501、親テーブル作成部502、子テーブル作成部503、及び列ブロック対応テーブル作成部504を備える。
【0026】
図6はテーブル情報110の構成を説明する図である。テーブル情報110は、図6に示すように、置換後非零要素位置情報テーブル601、置換ベクトル602、親テーブル603、子テーブル604、列ブロック対応テーブル605、差分情報606、及び列範囲情報607を備える。
【0027】
これらの図において、テーブル処理部109は、オーダリング部108、または部分オーダリング部111から非零要素位置情報201、置換ベクトル602を入力すると非零要素位置情報201を置換処理した置換後非零要素位置情報を親テーブル作成部502に出力し、置換後非零要素位置情報テーブル601を更新する。
【0028】
ここで、親テーブル作成部502、子テーブル作成部503の処理の前に、消去木の概念について説明する。消去木は、コレスキー分解後の行列の非零構造を用いて定義される根付き木であり、対称行列の各列が節点に対応する。節点間には親子関係が存在し、lij をi行j列の行列要素とするとき、第k列の親は、Min(j;k<j,lkj≠0)で定義する。親が存在しない場合は、−1を指定することで、すべての要素に対して、一意的に親を定義することができる。消去木の詳細は、例えば、G.Karypis,V.kumar:"A High Performance Sparse Cholesky Factorization Algorithm For Scalable Parallel Computers",TR94-41,Department of Computer Science, University of Minnesota,1994に示されている。
【0029】
次に、親テーブル作成部502及び子テーブル作成部503は、上記親子関係を記述する親テーブル603、子テーブル604を作成するものである。親テーブル603は、対象とする節点の親となる節点番号を要素として保持し、子テーブル604は、対象とする節点の子となる節点番号を要素として保持する。
【0030】
親テーブル作成部502は処理を開始すると、置換後非零要素位置情報を入力として、親テーブル603を更新し、親テーブル603の情報を子テーブル作成部503に出力する。
【0031】
子テーブル作成部503は、親テーブル603の情報を入力とし、子テーブル604を更新し、子テーブル604の情報を列ブロック対応テーブル作成部504へ出力する。
【0032】
列ブロック対応テーブル作成部504は、子テーブル604の情報を入力として、親テーブル603の情報を取得し、列ブロック対応テーブル605の情報を更新する。
【0033】
図7は、部分オーダリング領域解析部107の処理を説明する図である。まず、列ブロック対応テーブル(LB)605と同一の構造をもつLBWKテーブルを用意し、LBWKテーブルを初期化する(ステップ701)。次に、未解析の差分要素の有無をチェックする(ステップ702)。図7の例では、置換ベクトル602による座標変換後の差分要素の座標を(i,j)と表している。
【0034】
未解析の差分要素がある場合には、差分要素がセパレータに属しているかを列ブロック対応テーブル(LB)605で判別する(ステップ704)。列ブロック対応テーブル(LB)605からND法によるネストの最深値kを取得し(ステップ705)、LB(i,k)とLB(j,k)が等しいかどうかを調べる(ステップ706)。LB(i,k)とLB(j,k)が等しいことは、差分情報内の該当要素(以下、差分要素)が深さkのネストでブロック対角部分行列の内部に位置していることを意味する。LB(i,k)とLB(j,k)が等しくないことは、差分要素は深さkのネストでは、ブロック対角部分行列内に存在しないことを意味する。
【0035】
ステップ706でLB(i,k)とLB(j,k)の値が等しい場合には、LB(i,k)と同一行で数値の等しいLBWKテーブルの対応位置をすべてインクリメントし(ステップ707)、ステップ702に戻る。
【0036】
LB(i,k)とLB(j,k)の値が異なる場合には、kをデクリメントし(ステップ708)、kが零以下かチェックする(ステップ709)。kが零より大きい場合には、ステップ706に戻り、kが零以下である場合には、すべての列番号を部分オーダリングの対象範囲とし、列番号の先頭と最後の番号を出力する(ステップ710)。
【0037】
ステップ702で未解析の差分要素がない場合には、LBWKテーブルで非零数値が連続して入っている列番号の範囲を先頭と終端の数値でテーブル情報110の列範囲情報607を更新し、列範囲情報607を出力する。列範囲情報に複数の要素がある場合には、該当する数値すべてを使用し、列範囲情報607の更新、出力処理する(ステップ703)。
【0038】
図8は、入力情報101に含まれる係数行列202の上三角行列のみを2次元的に表現した例を示す図である。また、図9は、図8の係数行列801に対応した入力情報101の例901を示す図である。
【0039】
ここでは、入力情報901の非零要素位置情報902を列インデックステーブル903、及び対角ポインタテーブル904で示す。列インデックステーブル903は、図8の係数行列801の各要素に対応した列番号を示す。係数行列801の各要素(斜線部)はいずれも非零要素である。列番号の並べ方は、まず1行目の列番号を昇順に配置し、次の位置からは2行目の列番号を昇順に配置し、最終行まで同様に列番号を昇順に配置していく。対角ポインタテーブル904は、列インデックステーブル903の対角要素の位置を示す。
【0040】
また、図12は図8と同様に入力情報101の係数行列202を上三角行列のみ2次元的に表現した例1201を示す図である。以下、図8および図12に示す係数行列を順に入力する例(すなわち図8が前回使用した入力係数行列、図12が今回使用する入力係数行列に相当する)を元に、図3,4を参照して連立一次方程式求解装置102の一連の流れを説明する。
【0041】
まず、図8に示す係数行列801、図9に示す非零要素位置情報902、右辺ベクトル906、及び零を示す初期化フラグ907で構成する入力情報901を連立一次方程式求解装置102に入力する。この場合、初期化フラグ907が零であることから、初期化部103が比較要素位置情報104を初期化し、差分情報抽出部105へ入力情報901を出力する。初期化部103の初期化処理によって、比較要素位置情報104のすべての要素は零になる。
【0042】
差分情報抽出部105に、入力情報901を入力すると、差分情報抽出部105は比較要素位置情報104を取得する(ステップ301)。このとき比較要素位置情報104は、初期化されているので(ステップ302)、比較要素位置情報104を図9の非零要素位置情報902に更新する(ステップ309)。次に入力情報901を差分解析部106へ出力する(ステップ310)。
【0043】
差分解析部106へ入力情報901を入力すると差分情報は無いので(ステップ401)、テーブル情報110の情報をすべて初期化し(ステップ402)、入力情報901をオーダリング部108へ出力する(ステップ403)。
【0044】
オーダリング部108に、入力情報901を入力すると、非零要素位置情報902全体に対してオーダリングを実施し、生成した置換ベクトルと、非零要素位置情報901をテーブル処理部109へ出力する。テーブル処理部109によるテーブル情報110の更新が終了した後、入力情報901と置換ベクトル602を、連立一次方程式求解部112へ出力し、連立一次方程式求解部112へ制御を移す。
【0045】
1回目のオーダリング結果の係数行列の例を図10に、更新したテーブル情報110を図11に示す。なお、オーダリング部108は、テーブル処理部109への出力部分を除き、既存技術であるため、詳述しない。
【0046】
連立一次方程式求解部112は、オーダリング部108から入力された入力情報901と置換ベクトル602を元に、解ベクトルを求め、出力する。連立一次方程式求解部112も同様に既存技術であるため詳述しない。
【0047】
図13は、図8に示す1回目の入力行列と図12に示す2回目の入力行列の非零要素位置情報902、1402の差分を置換前、置換後について示した図である。また、図14は図12に示す2回目の入力行列1201に対応した入力情報の例1401を示す図である。
【0048】
前記1回目のオーダリングに続いて、図12に示す係数行列1201に対応した図14に示す入力情報1401を連立一次方程式求解装置102に入力する。
【0049】
この場合、入力情報1401の初期化フラグ1407が零ではないことから、初期化部103は、比較要素位置情報104に対して何もせず、入力情報1401をそのまま差分情報抽出部105へ出力し、制御を差分情報抽出部105へ移す。
【0050】
差分情報抽出部105は、入力情報1401が入力されると、比較要素位置情報104を取得する(ステップ301)。このとき、比較要素位置情報104は、初期化状態にはないので(ステップ302)、入力情報1401の非零要素位置情報1402との差分情報を求める(ステップ303)。差分情報は、図13の差分情報1301に示すように行番号と列番号の対で表した要素の集合として表す。図13の差分情報1301は、(9,11)の一つがあるので(ステップ304)、比較要素位置情報104を図14の非零要素位置情報1402に更新し(ステップ307)、比較要素位置情報104と入力情報1401および差分情報(9,11)を差分解析部106へ出力する(ステップ308)。
【0051】
差分解析部106に比較要素位置情報104と入力情報1401および差分情報(9,11)が入力されると、差分情報(9,11)があることから(ステップ401)、テーブル情報1101から列ブロック対応テーブル1104と置換ベクトル1105の情報を取得する(ステップ404)。次に差分要素(9,11)を図11の置換ベクトル1105で座標変換し(ステップ405)、図13に示す座標変換後の差分要素1302(7,8)と列ブロック対応テーブル1104を部分オーダリング領域解析部107に入力する。
【0052】
続いて、前記部分オーダリング領域解析部107は、列ブロック対応テーブル(LB)1104と同一構造のLBWKテーブルを用意する(ステップ701)。差分要素(7,8)は未解析であり(ステップ702)、8列目に位置するので列ブロック対応テーブル(LB)1104で照合してもセパレータには属しない(ステップ704)。1回目の入力情報901のときのオーダリングによるネストの最深値は2であるから(ステップ705)、列ブロック対応テーブル1104のネストの深さが2を表す行からLBの値を調べていくと、ネストの深さが1の行のとき、LB(7,1)とLB(8,1)が2に等しいことがわかる(ステップ706)。したがって、LB(7,1)と同一行で2となっているLB(6,1)からLB(10,1)に対応したLBWKテーブルの位置をインクリメントする(ステップ707)。次にLBWKテーブルでインクリメントした列の先頭の数値6と終端の数値10で、図16に示すテーブル情報1101の列範囲情報1110を更新し、列範囲情報1110を差分解析部106へ出力する(ステップ703)。
【0053】
図15は、1回目の置換後入力係数行列1001に対して置換した差分情報1302を加え、部分オーダリング領域解析部107により決定した部分オーダリング処理の対象列範囲を示した図である。また、図16は、列範囲情報607の格納例を示す図である。
【0054】
部分オーダリング領域解析部107から出力された列範囲情報(6,10)、置換ベクトル1105、及び入力情報1401を部分オーダリング部111へ出力する(ステップ407)。
【0055】
部分オーダリング部111は、入力された列範囲(6,10)に対してのみ、オーダリングを施す。部分オーダリング実施後、生成した置換ベクトルと非零要素位置情報1402をテーブル処理部109に出力し、テーブル処理部109はテーブル情報110を更新した後、テーブル情報110から取得した置換ベクトル及び入力情報1401を連立一次方程式求解部112へ出力し、制御を連立一次方程式求解部112へ移す。
【0056】
連立一次方程式求解部112では、入力された情報から解ベクトルを求め、解ベクトルを標準出力などへ出力し、一連の処理を終了する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、連立一次方程式求解装置の2回目のオーダリング処理は、図15に示す5行5列の部分オーダリング対象領域1502を対象としたオーダリングで済み、他の非零構造の一致している部分に対しては、1回目のオーダリング結果を流用できる。このため、従来のように11行11列全体の大きさのオーダリングをする必要なくなる。すなわち、行列の形状が局所的に異なる係数行列を多数回に渡って解く場合において、前回入力した入力係数行列と今回入力した入力係数行列の非零構造(行列式中の零でない係数の存在する位置が分布する構造)が異なる部分に対しては、再度、オーダリングを施し、非零構造が一致している部分には、以前のオーダリング結果を流用することでオーダリングの処理量を削減することができ、これにより全体の処理時間を短縮することができる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、多数回に渡って連立一次方程式を解く場合における一連の処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる連立一次方程式求解装置を説明する図である。
【図2】連立一次方程式求解装置102の入出力方法を説明する図である。
【図3】差分情報抽出部105の処理を説明する図である。
【図4】差分解析部106の処理を説明する図である。
【図5】テーブル処理部109を説明する図である。
【図6】テーブル情報110の構成を説明する図である。
【図7】部分オーダリング領域解析部107の処理を説明する図である。
【図8】入力情報101に含まれる係数行列202の上三角行列のみを2次元的に表現した例を示す図である。
【図9】図8の係数行列に対応した入力情報の例を示す図である。
【図10】1回目のオーダリング結果の係数行列の例を示す図である。
【図11】更新したテーブル情報の例を示す図である。
【図12】入力情報の係数行列を上三角行列のみ2次元的に表現した例を示す図である。
【図13】1回目の入力行列と2回目の入力行列の非零要素位置情報の差分を置換前、置換後について示した図である。
【図14】2回目の入力行列に対応した入力情報の例を示す図である。
【図15】1回目の置換後入力係数行列に対して置換した差分情報を加え、部分オーダリング処理の対象列範囲を示した図である。
【図16】列範囲情報の格納例を示す図である。
【符号の説明】
101 入力情報
102 連立一次方程式求解装置
103 初期化部
104 比較要素位置情報
105 差分情報抽出部
106 差分解析部
107 部分オーダリング領域解析部
108 オーダリング部
109 テーブル処理部
110 テーブル情報
111 部分オーダリング部
112 連立一次方程式求解部
113 出力情報

Claims (5)

  1. 疎行列を入力係数行列とする複数の連立一次方程式の解を連続して求める連立一次方程式求解装置であって、
    前回使用した入力係数行列と今回使用する入力係数行列との差分を取得し、取得した差分を解析して部分的にオーダリングを施すべき部分オーダリング領域を決定する差分解析部と、
    入力係数行列の非零要素全体にオーダリングを施すオーダリング部と、
    前記部分オーダリング領域に対してのみオーダリングを施す部分オーダリング部と、
    部分オーダリング領域に対しては部分オーダリングの結果をもとに、それ以外の領域に対しては以前のオーダリング結果を流用して連立一次方程式の解を求める連立一次方程式求解部を備えたことを特徴とする連立一次方程式求解装置。
  2. 請求項1記載の連立一次方程式求解装置において、
    入力情報は部分オーダリングを実施するか否かを判別するための初期化フラグを備えたことを特徴とする連立一次方程式求解装置。
  3. 前回使用した入力係数行列と今回使用する入力係数行列との差分を取得し、取得した差分を解析して部分的にオーダリングを施すべき部分オーダリング領域を決定する差分解析部と、
    入力係数行列の非零要素全体にオーダリングを施すオーダリング部と、
    前記部分オーダリング領域に対してのみオーダリングを施す部分オーダリング部と、
    部分オーダリング領域に対しては部分オーダリングの結果をもとに、それ以外の領域に対しては以前のオーダリング結果を流用して連立一次方程式の解を求める連立一次方程式求解部を備え、疎行列を入力係数行列とする複数の連立一次方程式の前記入力係数行列を順次入力し、入力した連立一次方程式の解を連続して求める連立一次方程式求解方法であって、
    前記差分解析部により、前回使用した入力係数行列と今回使用する入力係数行列との差分を取得し、取得した差分を解析し部分的にオーダリングを施すべき部分オーダリング領域を決定するステップと、
    決定された部分オーダリング領域に対しては部分オーダリング部により部分オーダリングを行い、また、部分オーダリング領域以外の領域に対しては以前のオーダリング結果を流用するステップと、
    前記部分オーダリングの結果及び以前のオーダリング結果の流用結果をもとに連立一次方程式求解部により連立一次方程式の解を求めるステップとを備えたことを特徴とする連立一次方程式求解方法。
  4. 請求項3記載の連立一次方程式求解方法において、
    入力情報は部分オーダリングを実施するか否かを判別するための初期化フラグを備えたことを特徴とする連立一次方程式求解方法。
  5. コンピュータを、疎行列を入力係数行列とする複数の連立一次方程式の解を連続して求める連立一次方程式求解手段として機能させるためのプログラムであって、
    コンピュータを、前回使用した入力係数行列と今回使用する入力係数行列との差分を取得し、取得した差分を解析し部分的にオーダリングを施すべき部分オーダリング領域を決定する差分解析手段と、
    入力係数行列の非零要素全体にオーダリングを施すオーダリング手段と、
    前記部分オーダリング領域に対してのみオーダリングを施す部分オーダリング手段と、
    部分オーダリング領域に対しては部分オーダリングの結果をもとに、それ以外の領域に対しては以前のオーダリング結果を流用して連立一次方程式の解を求める連立一次方程式求解手段として機能させることを特徴とするプログラム。
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