JP3973059B2 - 回折インキ及び回折インキ印刷方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、回折インキ及び回折インキ印刷方法に関し、特に、回折作用により印刷パターンが虹色に見え鮮やかに浮かび上がる回折インキ及び回折インキ印刷方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、酸化チタン薄膜や塗工膜の積層体から得られる光学干渉膜を粉体化して干渉色により発色させるインキが知られている。また、反射型レリーフ回折格子又は反射型レリーフホログラムを粉体化して接着剤パターン上に振りかけて回折作用により虹色に見えるパターンを得る方法も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の干渉色により発色させるインキの場合、積層膜からなる薄膜粉体であるために、塗工膜の干渉色は細かい色相の制御が効かず、また、反射光は散乱性であり、像を形成することはできなかった。また、薄膜粉体は粒径が大きく、シルク印刷しか選択できず量産性に欠けていた。
【0004】
また、反射型レリーフ回折格子等を粉体化して接着剤パターン上に振りかける方法の場合は、粉体のまま取り扱わなければならず、吸い込んで健康を害する等の問題があった。
【0005】
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、回折作用により印刷パターンが虹色に見え鮮やかに浮かび上がる回折インキ及びそのインキを用いた印刷方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明においては、レリーフ回折格子又はレリーフホログラムに形成したエンボス複製層に強磁性体からなる反射層を直接蒸着し、その蒸着後にエンボス複製層に対して一定の配向方向に強磁界を印加して反射層を磁化させることにより、蒸着反射層を伴ったエンボス複製層の剥離粉砕後も、その薄膜粉体に磁化が残る。したがって、グラビア塗工後の薄膜粉体に磁界を印加すれば、その磁界の方向に薄膜粉体が配向し、元のレリーフパターン面が同じ方向を向くことになり、印刷パターンが回折作用により虹色に見え、鮮やかに浮かび上がることになる。回折光を生じるパターンは、干渉色により発色させるインキのように薄膜の積層方向に形成されているのではなく、表面にエンボス形成されているため、格子あるいは干渉縞を遙に細密に形成して画素の色を制御するこが可能である。また、見る方向により色相が変わるパターンを容易に形成することができる。また、レリーフホログラムを用いることにより像を形成するようにすることもできる。なお、強磁性体からなる反射層の蒸着は、エンボス複製層に追従して行われるため、反射層の表裏の別なく画素形成が可能である。
【0007】
さらに、エンボス複製層は1〜2μm程度の厚さであり、蒸着反射層の厚さも0.1μmを超えないことから、薄膜粉体の粒子は2μm程度の径しか持たないため、グラビア印刷による微細な画素形成が可能である。
【0008】
すなわち、本発明の回折インキは、レリーフ型回折格子又はレリーフ型ホログラムのレリーフパターンが表面にエンボスされてなるエンボス樹脂層と、前記エンボス樹脂層のレリーフパターン面に追従して強磁性体を蒸着することにより形成された反射層であって前記エンボス樹脂層に対して一定の配向方向に強い磁界をかけて磁化された反射層とからなる積層体を破砕することにより形成された微粉体を、溶剤中に分散させてインキ化したことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の回折インキ印刷方法は、上記の回折インキを用いて被印刷体表面に所定パターン状に印刷した後、溶剤が乾燥する前に所定方向に磁界を印加して個々の微粉体を配向させることにより、磁界の方向に従ってレリーフパターン面が再配向されることを特徴とする方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の回折インキ及び回折インキ印刷方法を実施例に基づいて説明する。
〔実施例1〕
図1に断面を示すように、厚さ25μmのPETフィルム1上に、剥離層2として厚さ1μmのメタクリル樹脂を塗工し、その上に溶剤分散したメラミンアクリレート樹脂からなる放射線硬化型樹脂層3を1μm塗工乾燥した上で、レジスト露光によりレリーフ型回折格子のレリーフパターンが形成されたニッケルメッキ版を用いて、放射線硬化型樹脂層3表面に熱圧プレスによりマイクロエンボス加工してレリーフパターン4を複製し、その後紫外線を照射して樹脂層3を硬化させることによりレリーフ型回折格子を作製した。
【0011】
そのレリーフパターン4上に強磁性体として鉄を厚さ200Å蒸着するとにより反射層5を形成して、明るい回折光を与える反射型レリーフ型回折格子とした。反射層5を蒸着した後、この反射型レリーフ型回折格子を対向する永久磁石6と7の間に発生している10kガウスの強力な磁場中を毎分10mの速度で通過させ、反射層5の表裏に異なる磁極が生じるように磁化させた。
【0012】
この積層体を毎分600mの高速でエポキシ樹脂のロールに擦り付け、強風を当てることより、PETフィルム1表面に形成された反射型レリーフ型回折格子を剥離層2から吹き飛ばし、細かい反射型レリーフ型回折格子フィルム片を得た。
【0013】
さらに、このフィルム片を細かい粒子とするためにサイクロン中で毎秒200mの風を吹き付けることにより破砕し、平均粒径2μmの微粒子10(図2)を得た。
【0014】
この微粒子を20%、インキワニス(東レ(株)製、バイロン200)を20%、溶剤メチルエチルケトンを60%として配合し、グラビアインキを作製した。
【0015】
このグラビアインキを用いて、図2に示すように、基板11上に膜厚6μmで文字柄のパターンコート12を施し、永久磁石13と14の間に発生している2.5kガウスの磁場中を毎分20mの速度で通したところ、図2中に模式的に示すように、パターンコート12中の微粒子10の反射層5の位置あるいは向きは何れも例えば図示のように樹脂層3の下側に位置し、パターンコート12表面に平行に配向された。
【0016】
図3は、パターンコート12を表面から見た場合の模式図であり、何れの微粒子10のレリーフ回折格子パターン4も表面を向いているが、各回折格子の向きはパターンコート12の表面の法線を中心とする360°の間でランダムに分布している。したがって、このパターンコート12を何れかの方向から見ると、反射型回折格子と同様、印刷パターンが虹色に見え、背景から鮮やかに浮かび上がって見えた。
【0017】
〔実施例2〕
図1に断面を示すように、厚さ25μmのPETフィルム1上に、剥離層2として厚さ1μmのメタクリル樹脂を塗工し、その上に溶剤分散したメラミンアクリレート樹脂からなる放射線硬化型樹脂層3を1μm塗工乾燥した上で、レジスト露光によりレリーフ型回折格子のレリーフパターンが形成されたニッケルメッキ版を用いて、放射線硬化型樹脂層3表面に熱圧プレスによりマイクロエンボス加工してレリーフパターン4を複製し、その後紫外線を照射して樹脂層3を硬化させることによりレリーフ型回折格子を作製した。
【0018】
そのレリーフパターン4上に強磁性体としてコバルトを厚さ150Å蒸着するとにより反射層5を形成して、明るい回折光を与える反射型レリーフ型回折格子とした。反射層5を蒸着した後、この反射型レリーフ型回折格子を対向する永久磁石6と7の間に発生している10kガウスの強力な磁場中を毎分10mの速度で通過させ、反射層5の表裏に異なる磁極が生じるように磁化させた。
【0019】
この積層体を毎分600mの高速でエポキシ樹脂のロールに擦り付け、強風を当てることより、PETフィルム1表面に形成された反射型レリーフ型回折格子を剥離層2から吹き飛ばし、細かい反射型レリーフ型回折格子フィルム片を得た。
【0020】
さらに、このフィルム片を細かい粒子とするためにサイクロン中で毎秒200mの風を吹き付けることにより破砕し、平均粒径2μmの微粒子10(図2)を得た。
【0021】
この微粒子を20%、インキワニス(東レ(株)製、バイロン200)を20%、溶剤メチルエチルケトンを60%として配合し、グラビアインキを作製した。
【0022】
このグラビアインキを用いて、図2に示すように、基板11上に膜厚6μmで文字柄のパターンコート12を施し、永久磁石13と14の間に発生している2.5kガウスの磁場中を毎分20mの速度で通したところ、図2中に模式的に示すように、パターンコート12中の微粒子10の反射層5の位置あるいは向きは何れも例えば図示のように樹脂層3の下側に位置し、パターンコート12表面に平行に配向された。
【0023】
図3は、パターンコート12を表面から見た場合の模式図であり、何れの微粒子10のレリーフ回折格子パターン4も表面を向いているが、各回折格子の向きはパターンコート12の表面の法線を中心とする360°の間でランダムに分布している。したがって、このパターンコート12を何れかの方向から見ると、反射型回折格子と同様、印刷パターンが虹色に見え、背景から鮮やかに浮かび上がって見えた。
【0024】
なお、レリーフパターン面に追従した強磁性体の反射層を磁化する一定の配向方向を、レリーフパターン面が形成されているエンボス樹脂層に交差する方向とすれば、印刷パターンの個々の微粉体を配向させる際に、図2に示すように、N極とS極とを対向させた磁場に被印刷物を通すだけで、容易に印刷物の平面に平行に微粉体を配向することができ、印刷パターンが虹色に明るく見える。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明においては、レリーフ回折格子又はレリーフホログラムに形成したエンボス複製層に強磁性体からなる反射層を直接蒸着し、その蒸着後にエンボス複製層に対して一定の配向方向に強磁界を印加して反射層を磁化させることにより、蒸着反射層を伴ったエンボス複製層の剥離粉砕後も、その薄膜粉体に磁化が残る。したがって、グラビア塗工後の薄膜粉体に磁界を印加すれば、その磁界の方向に薄膜粉体が配向し、元のレリーフパターン面が同じ方向を向くことになり、印刷パターンが回折作用により虹色に見え、鮮やかに浮かび上がることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回折インキ中に分散される微粒子の作製方法を説明するための図である。
【図2】本発明の回折インキを用いた印刷方法を説明するための図である。
【図3】本発明の回折インキを用いた印刷によるパターンコートを表面から見た場合の模式図である。
【符号の説明】
1…PETフィルム
2…剥離層
3…放射線硬化型樹脂層
4…レリーフパターン
5…反射層
6、7…永久磁石
10…微粒子
11…基板
12…パターンコート
13、14…永久磁石
Claims (2)
- レリーフ型回折格子又はレリーフ型ホログラムのレリーフパターンが表面にエンボスされてなるエンボス樹脂層と、前記エンボス樹脂層のレリーフパターン面に追従して強磁性体を蒸着することにより形成された反射層であって前記エンボス樹脂層に対して一定の配向方向に強い磁界をかけて磁化された反射層とからなる積層体を破砕することにより形成された微粉体を、溶剤中に分散させてインキ化したことを特徴とする回折インキ。
- 請求項1記載の回折インキを用いて被印刷体表面に所定パターン状に印刷した後、溶剤が乾燥する前に所定方向に磁界を印加して個々の微粉体を配向させることにより、磁界の方向に従ってレリーフパターン面が再配向されることを特徴とする回折インキ印刷方法。
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