JP3972194B2 - 電気泳動用試薬、電気泳動用組成物及び核酸の分離方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気泳動用試薬、電気泳動用組成物及び核酸の分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気泳動法は、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸などの生体分子の分離分析を、泳動漕、泳動用板、バッファー槽及びパワーサプライなどからなる簡便な装置により、容易に行うことができるため、今日広く使用されている。また、蛍光検出を基本にした自動装置を利用することもできる。更に、本法のひとつの重要な適用として、核酸フラグメントの分離が挙げられ、核酸フラグメントの分離を主な目的とした多数の電気泳動用装置が、商品として入手可能である。
【0003】
電気泳動法には、多孔性ゲル媒体を用いるゲル電気泳動法と溶液中にて泳動をおこなうフリーフロー電気泳動法があるが、利用状況はゲル電気泳動法が大勢を占める。
【0004】
ゲル電気泳動法による分子の分離は、異なる分子の電荷密度の差異および多孔性ゲル媒体のふるい効果に基づく。ふるいの程度は、ゲルの孔サイズが移動分子のサイズにどの程度適合しているかに依存する。電気泳動用ゲルは、ゲルの孔を形成する架橋ポリマー分子のネットワークからなる。ゲルの分離の性能は、とりわけ、ネットワークの孔がいかに大きく、いかに均質に分散しているかに依存する。該孔の大きさおよび分散は、ゲルの乾燥固体含量、架橋剤の含量および架橋の開始の方法に依存する。
【0005】
ゲル電気泳動法には、異なるタイプのゲル物質、例えば、デキストラン、アガロースおよびポリアクリルアミド等が使用されている。
【0006】
特に、ポリアクリルアミドゲルは、次のような良好な品質を有していることから、広く使用されている。即ち、ポリアクリルアミドは、広範囲の孔サイズを有し、再現可能な方法で製造できる。また、ポリアクリルアミドゲルは、化学的に不活性であり、広範囲のpHおよび温度で安定であり、透明である。
【0007】
ポリアクリルアミドに基づくゲルは、アクリルアミドのようなモノオレフィニックモノマーと、メチレンビスアクリルアミドのような2官能性モノマーとの重合及び架橋により製造する。重合及び架橋は、化学的に、例えば、過硫酸ナトリウムまたは過硫酸アンモニウムおよびテトラメチルエチレンジアミンにより、または光化学的に開始できる。
【0008】
このように、電気泳動法による生体分子、特に核酸の分離は、利便性が高いという長所をいかして広く普及している方法ではあるが、その分離能力には限界がある。すなわち、分子の電荷密度の差異およびゲルのふるい効果だけでは、構造的性質の差異の検出が困難な場合がある。
【0009】
例えば、電気泳動法により、1塩基または2塩基以上の遺伝子変異を検出するためには、同じ塩基数であるが塩基配列の異なる核酸フラグメントを、塩基配列の変異による遺伝子の一次構造や二次構造の違いを泳動距離の差として検出する必要がある。このような場合、従来は、通常、目的遺伝子に対し適当な化学修飾(例えば、GCクランプ)をおこなったり、精密な温度調整や濃度勾配を持たせた変性剤(例えば、尿素、尿素とホルムアミドの併用)入り電気泳動ゲルが必要であるなどの問題点がある。
【0010】
上記問題点が解消され、電気泳動法における核酸の分離能力の改善が為されることにより、種々の基礎研究分野、例えば、遺伝子解析、遺伝子診断等への応用、その関連産業分野への応用が可能となる。
【0011】
このような背景から、簡便な電気泳動法を基盤とし、生体分子の分離能力を改善した方法の開発が望まれていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電気泳動法において、核酸等の生体分子の分離能力を向上せしめることができる電気泳動用試薬及び電気泳動用組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、簡便な方法で、核酸フラグメントの1塩基または2塩基以上の変異の検出を可能とする核酸の分離方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記従来技術の問題点を解消し、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、電気泳動用試薬として、ポリアミン錯体を用いることによって、電気泳動法において、核酸などの生体分子の分離能力を向上せしめることができること、これにより核酸フラグメントの1塩基または2塩基以上の変異の検出が可能となること等を見出した。本発明は、かかる新知見に基づいて、完成されたものである。
【0015】
本発明は、下記に示す、電気泳動用試薬、電気泳動用組成物及び核酸の分離方法に係るものである。
【0016】
1.ポリアミン錯体を含有する電気泳動用試薬。
【0017】
2.ポリアミン錯体が、環状ポリアミン錯体である上記項1に記載の電気泳動用試薬。
【0018】
3.ポリアミン錯体が、ポリアミン亜鉛錯体である上記項1に記載の電気泳動用試薬。
【0019】
4.環状ポリアミン錯体が、環状テトラアミン亜鉛錯体である上記項2に記載の電気泳動用試薬。
【0020】
5.環状テトラアミン亜鉛錯体が、下記構造式(1)で表される硝酸塩である上記項4に記載の電気泳動用試薬。
【0021】
【化2】
【0022】
6.電気泳動用ゲルに含ませた形態である上記項1〜5のいずれかに記載の電気泳動用試薬。
【0023】
7.電気泳動用バッファーに含ませた形態である上記項1〜5のいずれかに記載の電気泳動用試薬。
【0024】
8.電気泳動用サンプルに含ませた形態である上記項1〜5のいずれかに記載の電気泳動用試薬。
【0025】
9.上記項1〜5のいずれかに記載の電気泳動用試薬及び電気泳動用ゲルを含有することを特徴とする電気泳動用ゲル組成物。
【0026】
10.上記項1〜5のいずれかに記載の電気泳動用試薬及び電気泳動用バッファーを含有することを特徴とする電気泳動用バッファー組成物。
【0027】
11.上記項9に記載の電気泳動用ゲル組成物を使用して電気泳動することを特徴とする核酸の分離方法。
【0028】
12.同一塩基数の複数の核酸混合物をサンプルとする上記項11に記載の核酸の分離方法。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明のポリアミン錯体を含有する電気泳動用試薬は、電気泳動法において、分離用試薬として添加することにより、サンプル中の核酸などの生体分子の分離能力を顕著に向上せしめることができる。
【0030】
本発明のポリアミン錯体を含有する電気泳動用試薬は、ポリアミン錯体のみからなっていてもよいし、電気泳動用ゲルに含ませた形態、電気泳動用バッファーに含ませた形態、電気泳動用サンプルに含ませた形態等の形態であってもよい。
【0031】
本発明で用いられるポリアミン錯体としては、生体分子に対して何らかの結合能を有するものであればよく、特に制限されない。生体分子に対する結合能としては、例えば、核酸塩基との結合能、核酸のリン酸基との結合能、タンパク質のカルボン酸基やシスティン基との結合能、リン酸化タンパク質のリン酸基との結合能等が挙げられる。また、生体分子との結合は、可逆的結合であることが好ましい。
【0032】
ポリアミン錯体を形成するポリアミンとしては、例えば、スペルミン、スペルミジン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン等の鎖状ポリアミン;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン、1,5,9−トリアザシクロドデカン等の環状ポリアミン等が挙げられ、錯体としては、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、マグネシウム等の金属の錯体が挙げられる。
【0033】
上記ポリアミン錯体としては、環状ポリアミン錯体、ポリアミン亜鉛錯体等であるのが好ましい。
【0034】
また、上記環状ポリアミン錯体としては、具体的には、例えば、環状トリアミン錯体、環状テトラアミン錯体、環状ペンタアミン錯体等が挙げられる。環状ポリアミン錯体としては、環状テトラアミン錯体が好ましく、環状テトラアミン亜鉛錯体がより好ましい。更には、前記構造式(1)で表される環状テトラアミン亜鉛錯体硝酸塩が特に好ましい。
【0035】
また、上記構造式(1)以外の環状ポリアミン錯体の具体例としては、次の化合物等を例示することができる。
【0036】
【化3】
【0037】
前記構造式(1)の環状テトラアミン亜鉛錯体は、一般的な化学合成技術を利用して合成することが可能である。例えば、市販の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(サイクレン)と硝酸亜鉛六水塩を原料として、次のようにして合成することができる。即ち、硝酸亜鉛六水塩(Zn(NO3)2・6H2O)とサイクレンをエタノール等の溶媒に加え溶解する。その溶液をマグネティックスターラーなどで撹拌しながら加温処理する。これを濾紙等で濾過した溶液をロータリーエバポレーターなどを用いてゆっくり濃縮する。この濃縮により、無色プリズム結晶が析出するので、室温で1〜数時間放置した後、グラスフィルターなどを用いてその結晶を濾取し、減圧加熱乾燥すると、構造式(1)の環状テトラアミン亜鉛錯体であるサイクレン亜鉛錯体の硝酸塩が高収率で得られる。構造式(1)の環状テトラアミン亜鉛錯体は、分解点250℃以上を示す。
【0038】
前記構造式(1)の環状テトラアミン亜鉛錯体は、中性乃至弱アルカリ性条件下において、遺伝子の塩基のひとつであるチミンと結合するという性質を有している。この環状テトラアミン亜鉛錯体が一本鎖遺伝子のチミン部分に結合すると、その部分はプラス電荷を持つ亜鉛錯体がぶら下がった構造をとると予想される。このプラス電荷付与と立体障害により一本鎖遺伝子の電気泳動距離は短くなると考えられる。また、この環状テトラアミン亜鉛錯体が二本鎖遺伝子のチミン部分に結合した場合、その結合部分は遺伝子の二重らせん構造がほぐれて膨らんだ二次構造(二本鎖遺伝子のバルブ構造)となると予想される。プラス電荷を持つ亜鉛錯体の結合とバルブ構造は、電気泳動距離を短くする結果をもたらすと考えられる。
【0039】
したがって、例えば、核酸フラグメントの1塩基または2塩基以上の変異の検出をする場合には、変異体遺伝子とオリジナル遺伝子のそれぞれの電気泳動距離を比較するだけで、チミンの数が変化した遺伝子変異の検出(例えば、AT→GC、GC→AT)が可能となる。さらに、二本鎖の塩基の配列が互いの鎖で置き換わった場合(例えば、AT→TA、GC→CG)、バルブ形成にあまり差があらわれないので、変異体遺伝子とオリジナル遺伝子を混合した状態で加熱(一本鎖への解離)と冷却(アニーリング)を行う。それにより、ミスマッチ(AG、TG、AC、TC)部分をもつ二本鎖遺伝子を形成させる。ミスマッチ部分をもつ二本鎖遺伝子は、錯体によるバルブ構造形成が容易に起き大きなバルブを形成するため、オリジナル遺伝子より泳動距離は短くなる。このような化学原理に基づいて、最適な電気泳動条件を確立することによって、核酸フラグメントの1塩基または2塩基以上の変異の検出を好適に行うことができる。
【0040】
本発明のポリアミン錯体を含有する電気泳動用試薬は、ポリアミン錯体のみからなっていてもよいし、電気泳動用ゲルに含ませた形態、電気泳動用バッファーに含ませた形態、電気泳動用サンプルに含ませた形態等であってもよい。
【0041】
また、電気泳動用ゲルに含ませた形態の場合、上記ポリアミン錯体である電気泳動用試薬及び電気泳動用ゲルを含有する電気泳動用ゲル組成物であってもよい。電気泳動用ゲル組成物におけるゲル物質としては、例えば、ポリアクリルアミド、デキストラン、アガロース等を挙げることができる。
【0042】
また、電気泳動用バッファーに含ませた形態の場合、上記ポリアミン錯体である電気泳動用試薬及び電気泳動用バッファーを含有する電気泳動用バッファー組成物であってもよい。電気泳動用バッファー組成物におけるバッファーとしては、例えば、トリス−塩酸バッファー、トリス−ホウ酸バッファー、トリス−酢酸バッファー、トリス−リン酸バッファー等を挙げることができる。
【0043】
上記の各電気泳動用試薬又は各電気泳動用組成物において、ポリアミン錯体の使用濃度は特に限定されないが、通常、1〜100mM程度、特に2〜10mM程度の範囲とすることが好ましい。
【0044】
本発明の上記の電気泳動用試薬及び電気泳動用組成物は、一般的なゲル電気泳動法において、好ましく用いられる。特に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において、より好ましく用いられる。
【0045】
上記ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において、電気泳動用ポリアクリルアミドゲルの濃度としては、5〜20%(W/V)、特に6〜15%(W/V)の範囲とすることが好ましい。
【0046】
また、電気泳動装置としては、泳動漕、泳動用ガラス板、バッファー槽、スペーサー、コーム、クリップ、パワーサプライ、ペリスタポンプ等よりなる一般的なものが使用でき、市販のどのような機種でも良い。
【0047】
本発明の核酸の分離方法は、上記電気泳動用ゲル組成物を使用して電気泳動する分離方法である。この場合の電気泳動法としては、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法であるのが、特に好ましい。
【0048】
本発明の核酸の分離方法においては、同一塩基数の複数の核酸混合物をサンプルとする場合にも、混合物中の各核酸を分離することができる。
【0049】
即ち、複数の核酸を含む混合物をサンプルとし、同一の塩基数であってもその塩基配列のチミン含量が異なる核酸の電場における移動度を有意に変動せしめ得るポリアミン錯体、例えば前記構造式(1)の環状テトラアミン亜鉛錯体を含有するゲル中にて電気泳動することにより、混合物中の各核酸を好適に分離することができる。
【0050】
本発明の電気泳動用試薬及び電気泳動用組成物を用いたゲル電気泳動法や、本発明の核酸の分離方法は、室温、好ましくは15〜35℃程度において、汎用型の電気泳動装置と安全で安価な電気泳動用試薬を用いて、容易に行うことができる。
【0051】
上記ゲル電気泳動法及び核酸の分離方法において、サンプル(検体)としては、解析対象となるものであれば特に制限はないが、DNAやRNAなどの核酸、ペプチド、タンパク質、それらの混合物、又は細菌、始原菌、酵母、カビ、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞、植物組織、動物組織、血液、血清、血漿、髄液、尿などの生体試料から調製されたサンプル、ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)の産物、核酸を酵素処理した反応溶液などが好ましく使用される。PCRの産物としては、例えば、細胞よりゲノムDNAを調製し、これを鋳型としたPCRにより増幅したDNA等が好ましく使用される。
【0052】
また、サンプルを電気泳動法に供する前に、前処理をおこなってもよい。このような前処理としては、例えば核酸とタンパク質が共存する試料において、タンパク質を有機溶媒処理にて予め除去するなどの処理が挙げられる。
【0053】
【実施例】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより一層具体的に説明する。但し、本発明は、各例により、限定されるものではない。
【0054】
実施例及び比較例において使用した電気泳動器具及び試薬は、次の通りである。
【0055】
(1)電気泳動システム
泳動装置(泳動層、泳動用ガラス板、スペーサー、コーム、クリップを含む)は、ATTO社の汎用型電気泳動システム「AE-6500」を使用した。パワーサプライはファルマシアバイオテク社の「ESP3500」を、ペリスタポンプはIWAKI社の「PST-050」を、それぞれ使用した。
【0056】
(2)ゲル調整用試薬と泳動用試薬
30%(w/v)アクリルアミド溶液:アクリルアミド29g、N,N'-メチレンビスアクリルアミド1gを蒸留水に溶解して100mLとしたもの、
10%(w/v)過硫酸アンモニウム溶液(用時調製)、及び
N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)。
【0057】
泳動用バッファー:トリスヒドロキシアミノメタン(Tris)10.8g、ホウ酸(Borate)5.5gを水50mLに溶解して、20倍濃縮液を得た。これを用時希釈して総容量を1リットルとして用いた(濃度:90mM Tris−90mM Borate)。
【0058】
色素溶液:60%(w/v)グリセロール、0.2×泳動用バッファー、0.02%(w/v)ブロモフェノールブルー、0.02%(w/v)キシレンシアノールFF。
【0059】
エチジウムブロマイド染色液:10μg/mLになるように水に溶解する。
【0060】
製造例1 サイクレン亜鉛錯体硝酸塩の合成
硝酸亜鉛六水塩(Zn(NO3)2・6H2O)0.10mmol(29.7g)とサイクレン0.10mmol(17.2g)を250mLのエタノールに加え溶解した。その溶液をマグネティックスターラーで撹拌しながら70℃で30分間加温した。これを濾紙で濾過した溶液をロータリーエバポレーターを用いて約50mLまでゆっくり濃縮した。その濃縮により、無色プリズム結晶が析出した。室温で1時間放置した後,グラスフィルターでその結晶を濾取し、50℃、5mmHgで減圧加熱乾燥することにより、構造式(1)の環状テトラアミン亜鉛錯体であるサイクレン亜鉛錯体の硝酸塩が、収率92%(収量33.2g)で得られた。この化合物の分析結果は、下記の通りである。
【0061】
元素分析をした結果、理論値はC8H20N6O6Zn:C,26.57;H,5.57;N,23.24であり、実測値はC,26.61;H,5.60;N,23.28であった。
【0062】
1H−NMR(500MHz、D2O)の結果は、δ=2.80(8H,m),2.94(8H,m)であった。
【0063】
13C−NMR(125MHz、D2O)の結果は、δ=46.6であった。
【0064】
赤外線分析の主要吸収体の測定結果は、IR(cm-1):3177, 2918, 1482, 1444, 1384(NO3 -), 1279, 1092, 1010, 993, 806であった。
【0065】
実施例及び比較例において行った電気泳動法は、次の通りである。
【0066】
製造例1で得たサイクレン亜鉛錯体(硝酸塩)1.96gを9.75mLの蒸留水に溶解し、0.25mLの10M NaOHを加えてpH7.9とし、500mMサイクレン亜鉛錯体溶液を調製した。陰極用泳動バッファーとしては、前記泳動用バッファー(90mM Tris−90mM Borate)を用いた。陽極用泳動バッファーとしては、前記泳動用バッファー(90mM Tris−90mM Borate)に1/100容量の500mMサイクレン亜鉛錯体溶液を加えて得た5mMサイクレン亜鉛錯体溶液を、用いた。
【0067】
ガラス板をエタノールでよくみがき、メーカーの製品プロトコールに従ってセット後、ゲル溶液を流し込み、すぐにコームを挿し、ゲル溶液が固化したらクリップを外し、コームを抜いた。泳動バッファーとゲルの下端の間に空気が入らないように注意しながら、陽極バッファーを注いだ泳動槽にゲルをセットした。ゲル板を固定し、陰極バッファーを注いだ後、試料溝を注射針を用いて陰極バッファーでよく洗浄し、ただちに試料を色素溶液3μLに溶解した試料液を添加した。200V定電圧で90分から120分(分離したいDNAの長さによって調節する)通電した。サイクレン亜鉛錯体を含む陽極バッファーは局所的なpHの変動を起こすことがあるので、陽極槽内のバッファーはペリスタポンプで循回した。泳動終了後はエチジウムブロマイド染色液に約15分浸した後、UV照射下で写真撮影した。使用したサイクレン亜鉛錯体(5mM)のゲル溶液の組成を、表1に示した。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例1
上記表1のサイクレン亜鉛錯体入りの8%(w/v)又は10%(w/v)ポリアクリルアミドゲルを用い、前記陽極用泳動バッファー及び陰極用泳動バッファーを用いて、200V定電圧で90分間又は120分間電気泳動をおこなった。
【0070】
試料は、次の様に調製したものを用いた。まず、ターゲットDNAはラットの電位依存性骨格筋ナトリウムチャネルa-サブユニット遺伝子(DDBJデータベースに登録;accession No.M26643)の野生型、およびヌクレオチド1162〜1782の621bpの間に部位特異的変異処理をほどこした14種類の変異遺伝子を用いた。各DNAの541〜621の塩基配列を図1に示す。図1において、No.1の塩基配列は、野生型の塩基配列を、No.2〜15の塩基配列は、変異型の塩基配列を、それぞれ示す。また、図1中、長方形の枠で囲んだ部分が変異部分である。
【0071】
これらの遺伝子断片は、promega社のpGEM-T-Easyベクターに挿入した。各断片を挿入したpGEM-T-EasyベクターDNA(50ng)、プライマーオリゴヌクレオチド1(配列番号:1)とプライマーオリゴヌクレオチド2(配列番号:2)(各0.6μM)、dNTP混合物(各65μM)、2.5単位の耐熱性DNAポリメラーゼ(Thermoprime plus;Advanced biotechnologies, UK)とその専用バッファーを加えて全量を50μlとした。ミネラルオイルを重層し、「サーマルサイクラー」(MJ research Inc., model PTC-150)にセットし、[95℃3分、60℃1分、72℃1分]を1サイクル、[95℃1分、60℃1分、72℃1分]を29サイクル、及び72℃3分のプログラムでPCRを行った。
【0072】
増幅したDNAはエタノール沈澱によって精製した。制限酵素Msp I(New England Biolab社)で、621bpのPCR断片を完全消化処理し、目的の変異を含むDNA断片の大きさを151bpとした。この際、262bp及び208bpのDNA断片も生成した。反応後はエタノール沈澱によって精製し、色素溶液に溶解した。
【0073】
各試料DNA20ngをサンプルスロットに入れ、電気泳動を行った。
【0074】
電気泳動の結果を図2に示す。図2の(a)は10%(w/v)ポリアクリルアミドゲルを用いて、200V定電圧で120分間電気泳動を行った場合の結果を、(b)は8%(w/v)ポリアクリルアミドゲルを用いて、200V定電圧で90分間電気泳動を行った場合の結果を、それぞれ示す。
【0075】
図2より、No.1の151塩基対の塩基配列のDNAフラグメントと、No.2〜15の1〜7箇所の変異を有する同一サイズ(151塩基対)のDNAフラグメントとが、電気泳動により分離可能であることが分かる。
【0076】
比較例1
表1の10%(w/v)ポリアクリルアミドゲルにおいて、サイクレン亜鉛錯体を入れない以外は、同じ組成の10%(w/v)ポリアクリルアミドゲルを用い、陽極用泳動バッファー及び陰極用泳動バッファーとして泳動用バッファー(90mM Tris−90mM Borate)を用いて、200V定電圧で40分間電気泳動をおこなった。試料は、実施例1と同じものを用いた。
【0077】
結果を図3に示す。図3より、No.1の151塩基対の塩基配列のDNAフラグメントと、No.2〜15の1〜7箇所の変異を有する同一サイズ(151塩基対)のDNAフラグメントとを、既存の電気泳動法により分離することが不可能であることが分かる。
【0078】
実施例2
上記表1のサイクレン亜鉛錯体入りの12%(w/v)ポリアクリルアミドゲルを用い、前記陽極用泳動バッファー及び陰極用泳動バッファーを用いて、200V定電圧で110分間電気泳動をおこなった。
【0079】
試料は、次の様に調製したものを用いた。まず、ターゲットDNAはラットの電位依存性骨格筋ナトリウムチャネルa-サブユニット遺伝子(DDBJデータベースに登録;accession No.M26643)の野生型、およびヌクレオチド1162〜1782の621bpの間に部位特異的変異処理をほどこした14種類の変異遺伝子を用いた。各DNAの塩基配列を図1に示す。図1において、No.1の塩基配列は、野生型の塩基配列を、No.2〜15の塩基配列は、変異型の塩基配列を、それぞれ示す。また、図1中、長方形の枠で囲んだ部分が変異部分である。
【0080】
これらの遺伝子断片は、promega社のpGEM-T-Easyベクターに挿入した。各断片を挿入したpGEM-T-EasyベクターDNA(50ng)、プライマーオリゴヌクレオチド1(配列番号:1)とプライマーオリゴヌクレオチド2(配列番号:2)(各0.6μM)、dNTP混合物(各65μM)、2.5単位の耐熱性DNAポリメラーゼ(Thermoprime plus;Advanced biotechnologies, UK)とその専用バッファーを加えて全量を50μlとした。ミネラルオイルを重層し、「サーマルサイクラー」(MJ research Inc., model PTC-150)にセットし、[95℃3分、60℃1分、72℃1分]を1サイクル、[95℃1分、60℃1分、72℃1分]を29サイクル、及び72℃3分のプログラムでPCRを行った。
【0081】
増幅したDNAはエタノール沈澱によって精製した。制限酵素Alu I(New England Biolab 社)で、 621bpのPCR断片を完全消化処理し,目的の変異を含むDNA断片の大きさを99bpとした。この際、177bp、158bp、63bp及び61bpのDNA断片も生成した。反応後はエタノール沈澱によって精製し、色素溶液に溶解した。
【0082】
各試料DNA20ngをサンプルスロットに入れ、電気泳動を行った。
【0083】
電気泳動の結果を図4に示す。図4より、No.1の99塩基対の塩基配列のDNAフラグメントと、No.2〜15の1〜7箇所の変異を有する同一サイズ(99塩基対)のDNAフラグメントとが、電気泳動により分離可能であることが分かる。
【0084】
比較例2
表1の12%(w/v)ポリアクリルアミドゲルにおいて、サイクレン亜鉛錯体を入れない以外は、同じ組成の12%(w/v)ポリアクリルアミドゲルを用い、陽極用泳動バッファー及び陰極用泳動バッファーとして泳動用バッファー(90mM Tris−90mM Borate)を用いて、200V定電圧で80分間電気泳動をおこなった。試料は、実施例2と同じものを用いた。
【0085】
結果を図5に示す。図5の(a)は、図1のNo.1の野生型の塩基配列及びNo.2〜15の変異型塩基配列についての結果を、(b)はNo.1の配列とNo.2〜15の配列との混合物についての結果を、それぞれ示す。
【0086】
図5より、1〜7箇所の変異を有する同一サイズ(99塩基対)のDNAは、既存の電気泳動法により分離することが不可能であることが分かる。
【0087】
【発明の効果】
本発明の環状テトラアミン亜鉛錯体、電気泳動用試薬及び電気泳動用組成物によれば、タンパク質、ペプチド、核酸などの生体分子の分離、分析を、簡便かつ低コストで行うことが可能となる。
【0088】
また、本発明の核酸の分離方法によれば、核酸、特に核酸フラグメントの1塩基または2塩基以上の変異の検出が、簡便かつ低コストで、可能となる高い分離能力を有する電気泳動法に基づく、分離方法が可能となる。
【0089】
さらに、本発明を用いることにより、高い分離能力を有する電気泳動法の基礎研究分野及び産業分野への応用が可能となる。また、本発明は手法が簡潔であるため、各種自動分析装置への適用も容易であり、多数の検体処理にも適している。
【0090】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ラットの電位依存性骨格筋ナトリウムチャネルa-サブユニット遺伝子の野生型、及びこれに部位特異的変異処理をほどこした14種類の変異遺伝子の各DNAの塩基配列の一部を示すものである。
【図2】図2は、実施例1における電気泳動の結果を示すものである。
【図3】図3は、比較例1における電気泳動の結果を示すものである。
【図4】図4は、実施例2における電気泳動の結果を示すものである。
【図5】図5は、比較例2における電気泳動の結果を示すものである。
Claims (8)
- 電気泳動用ゲルに含ませた形態である請求項1に記載の電気泳動用試薬。
- 電気泳動用バッファーに含ませた形態である請求項1に記載の電気泳動用試薬。
- 電気泳動用サンプルに含ませた形態である請求項1に記載の電気泳動用試薬。
- 請求項1に記載の電気泳動用試薬及び電気泳動用ゲルを含有することを特徴とする核酸の電気泳動用ゲル組成物。
- 請求項1に記載の電気泳動用試薬及び電気泳動用バッファーを含有することを特徴とする核酸の電気泳動用バッファー組成物。
- 請求項5に記載の電気泳動用ゲル組成物を使用して電気泳動することを特徴とする核酸の分離方法。
- 同一塩基数の複数の核酸混合物をサンプルとする請求項7に記載の核酸の分離方法。
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