JP3970679B2 - コンクリート流出防止装置及びコンクリートの充填方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネル形成時に使用されるコンクリート流出防止装置及びコンクリートの充填方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来から、掘削されたトンネル31の地山面33aをコンクリート36で覆工するためコンクリート36の吹付け作業が行われる。具体的には、地山面33aにコンクリート一次層35を形成するための一次吹きつけ作業と、この一次吹付け作業後、トンネル31内に配設される支保工32とコンクリート一次層35との間の隙間Sを埋めつつ支保工32を定着するための二次吹付け作業とが行われる。
【0003】
この支保工32とコンクリート一次層35との間の隙間Sは、トンネル31の掘削時(機械による掘削時や発破の使用による掘削時)に生じる地山部33の凹凸(余掘り)によるのは勿論、支保工32を配設するに十分な空間を確保すべく、トンネル31は予め支保工32の外径よりも大きめに掘削されている為、必然的に生じるものである。尚、この吹付け作業に使用されるコンクリート36とは、急結剤が添加されているので初期強度が高く吹付け後すぐに硬化する。
【0004】
ところで、従来、この二次吹付け作業を行う場合、支保工32箇所がトンネル31の切羽箇所31aに近いこともあって、図16に図示したようにコンクリート36を一方向より斜めに吹付けている。
【0005】
ところが、このコンクリート36の吹きつけ作業は、離れた位置に配したノズル37から勢い良く吹付けることで行われる為、初期硬度が高いとは言え、撥ね返りが多くて支保工32とコンクリート一次層35との隙間Sの開口部35からのコンクリート36の流出が多く、非常に不経済であり、しかも、粉塵発生量が多くトンネル31内の環境悪化の原因となっている。
【0006】
この問題点に対し、従来においても支保工32とコンクリート一次層35との隙間Sに金網を張るなどしてからコンクリート36を充填する技術も提案されているが、金網が埋設状態となり転用できず不経済であり、現実に行われるケースは少ない。
【0007】
本発明は、上述の問題点を解決する、画期的なコンクリート流出防止装置及びコンクリートの充填方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
トンネル1内に配設される支保工2と地山部3との隙間Sの開口部5に着脱自在に配設され、この開口部5を閉塞することで該隙間Sに充填されるコンクリート6が該開口部5から流出することを防止する閉塞体4であって、この閉塞体4は、適度な柔軟性を有する部材で袋状に形成された複数の分割体4A同士を着脱自在に連結して成り、この各分割体4A同士を通気状態で連結し、この閉塞体4の内部へ流体を充填するか若しくは該流体を除去することで前記開口部5の開口面積に応じて膨縮するように設けられていることを特徴とするコンクリート流出防止装置に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載のコンクリート流出防止装置において、前記支保工2には前記閉塞体4を支持する支持体7が設けられていることを特徴とするコンクリート流出防止装置に係るものである。
【0011】
また、請求項2記載のコンクリート流出防止装置において、前記支持体7は、挟着連結し得る挟着連結部7aにより前記支保工2に設けられていることを特徴とするコンクリート流出防止装置に係るものである。
【0012】
また、請求項2記載のコンクリート流出防止装置において、前記支持体7は、前記支保工2に設けられた連結部材10に連結し得る連結部 19 を具備する筒状部材 17 に棒状部材 18 をスライド移動自在に設けて構成されており、この棒状部材 18 における前記筒状部材 17 からの突出量は調整自在に設けられ、この棒状部材 18 の上端部が前記地山部3に当接するように構成されていることを特徴とするコンクリート流出防止装置に係るものである。
【0013】
また、請求項4記載のコンクリート流出防止装置において、前記連結部材 10 は、前記支保工2同士を連結するための連結体9を連結するためのものであることを特徴とするコンクリート流出防止装置に係るものである。
【0014】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載のコンクリート流出防止装置を使用し、前記支保工2と前記地山部3との隙間Sにコンクリート6を充填することを特徴とするコンクリートの充填方法に係るものである。
【0015】
【発明の作用及び効果】
本発明は、支保工2と地山部3との隙間Sにコンクリート6を充填するに際し、閉塞体4を前記隙間Sの開口部5に配設するとともに、該閉塞体4をこの開口部5の開口面積に応じて膨縮させて該開口部5を閉塞し、この状態で隙間Sにコンクリート6を充填すると、閉塞体4によりコンクリート6が該開口部5から流出するのが防止される。
【0016】
従って、支保工2と地山部3との隙間Sの開口部5から充填されたコンクリート6が流出するのを確実に防止することができ、しかも、単に閉塞体4を膨縮させるだけで例えば地山部3に形成される複雑な凹凸に対しても確実に応じることができて良好な閉塞状態が簡易且つ迅速に得られることになる。
【0017】
また、閉塞体4は支保工2と地山部3との隙間Sの開口部5に着脱自在に設置される為、例えば複数の支保工2夫々の部位におけるコンクリート6の充填作業に転用することができてコスト安である。
【0018】
以上のように、本発明は、従来にない画期的な作用効果を発揮し、極めて商品価値の高いものになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図面は本発明の一実施例を図示したものであり、以下に説明する。
【0020】
符号1はトンネル、2はトンネル1内に所定間隔を介して配設され、断面H字状の鋼材をアーチ状に形成してなるトンネル補強工としての支保工、3はトンネル1の地山部である。
【0021】
本実施例は、トンネル1内に配設される支保工2と地山部3との隙間Sの開口部5に着脱自在に配設され、該開口部5を閉塞する閉塞体4であって、この閉塞体4は、前記開口部5の開口面積(縦巾及び横巾)に応じて膨縮可能に設けられており、この閉塞体4で前記開口部5を閉塞した際、前記支保工2と地山面3との隙間Sに充填されるコンクリート6が前記開口部5から流出するのを防止するように構成されたものである。
【0022】
具体的には、閉塞体4は、図3に図示したように適度な柔軟性を有する部材を細長い袋状(サニーホース、ゴムチューブ、エアーバッグ)に形成したものであり、その一端部には内部に流体としてのエアーを供給し得る流体供給部11(ノズル)が設けられ、他端部には充填された流体を排出し得る開閉部材12a付きの流体排出部12(ノズル)が設けられており、内部にコンプレッサーから圧送されるエアーを供給したり排出したりすることで膨縮可能に構成されている。尚、流体供給部11を構成するノズルにも開閉部材11aが設けられて流体排出部が構成されている。
【0023】
また、閉塞体4は、その表面にセラミックなどでコーティングするとコンクリート6からの剥離が容易に行えることになり、セラミックに限らずこのようなコーティングが閉塞体4の表面に適宜施されることが望ましい。
【0024】
図4は、閉塞体4を互いに着脱自在に連結し得る複数の分割体4Aで構成したタイプのものであり、この分割体4A同士は通気状態で連結され、例えば支保工2と地山部3との隙間Sの長さ(トンネル径の長さ)に応じて使用することができ、必要に応じて分割体4A同士を連結して長さ調節をすることができる。
【0025】
尚、本実施例では、閉塞体4に流体としてのエアーを充填する構成としているが、流体として水(液体)を採用するなど、本実施例の特性を発揮し得るものであれば適宜採用するものである。
【0026】
以上の構成からなる閉塞体4は支持体7を介して支保工2に配設される。
【0027】
この支持体7は、コンクリート6の充填時に閉塞体4にかかる充填圧を受けて閉塞体4が位置ずれしないように支持するものである。尚、閉塞体4が支保工2と地山部3との間に膨張圧接により架設される状況など支持体7が不要な場面もある。
【0028】
具体的には、本実施例では、支持体7として、図5に図示したタイプの支持体7Aと、図9に図示したタイプの支持体7Bとがある。
【0029】
支持体7Aは、適宜な金属製の部材を形成したものであり、板状部材13の表面下方位置に支保工2に連結する挟持連結部7aを設けて構成され、この挟持連結部7aを介して支保工2に連結した際、板状部材13の上部が支保工2の上片2aの上方に突出状態となり閉塞体4を支持する支持部7bとなる。
【0030】
挟持連結部7aは、支保工2に挟み込み状態で被嵌し得る上下一対の挟持板14,15と、この挟持板14,15間に設けられる楔部材16とで構成されている。
【0031】
この楔部材16は、図示したように適宜な金属製の部材を所定形状(中央にくびれを有する縦長円形状)に形成したものであり、板状部材13の表面下方位置にして前記挟持板14,15の間に回動自在に枢着されている。
【0032】
以上の構成から、支持体7Aは、上下の挟持板14,15で支保工2の上片2a及び下片2bを挟持状態とし、この状態で楔部材16をハンマーで殴打するなどして打ち込むことで上片2a内面及び下片2b内面に該楔部材16の外面が圧接することになり、よって、支持体7Aは支保工2に挟み込み状態で固定されることになり(図6参照)、この状態で、支持体7Aの支持部7bで閉塞体4を支持することができる(図7参照)。尚、楔部材16を設けた位置にバネ等の弾性体を設けて挟着連結部7aとしても良い。
【0033】
支持体7Bは、図8に図示したように支保工2同士を連結する連結体9を連結する管状の連結部材10を利用して支保工2に連結される。尚、連結部材10としては支持体7Bを連結するための専用のものでも良い。
【0034】
具体的には、図9に図示したように所定長の筒状部材17に棒状部材18をスライド移動自在に設けて構成され、支保工2に連結した際、棒状部材18を適宜上下方向にスライド移動させて筒状部材17の上端部からの突出量の調整をすることで、その上端部を地山部3に当接させることができる。
【0035】
また、支持体7Bに係る筒状部材17には、連結棒19が水平方向に突設されており、この連結棒19は、支保工2同士を連結する前記連結部材10に嵌挿連結し得るものである。
【0036】
以上の構成から、支持体7Bは、連結棒19を連結部材10に嵌挿することで支保工2に固定することができ(図10参照)、この際、棒状部材18は支保工2の上片2aの上方に突出状態となって閉塞体4を支持することができることになる(図11参照)。
【0037】
以上の構成からなる本実施例に係るコンクリート流出防止装置を使用した施工方法について説明する。尚、本実施例では、予め地山面3aに一次吹付け作業によるコンクリート一次層20が施工され、このコンクリート一次層20の内側に形成する二次吹付け作業によるコンクリート二次層21の施工時に本実施例に係るコンクリート流出防止装置を使用している。
【0038】
まず、図1,12に図示したように支保工2の連結部材10が設けられている間の中央位置(図8中の位置S)に支持体7Aを連結し、更に、連結部材10には支持体7Bを連結し(図8中の支保工2は切羽1aに最も近接した位置に配された支保工2である。)、これらの支持体7A,7Bに支持させるようにして縮み状態の閉塞体4を配設し、閉塞体4内にトンネル掘削機22に取り付けられるコンプレッサー23から圧送されるエアーを充填することで膨らませて支保工2と地山部3との隙間Sの開口部5を閉塞する(コンクリート6の充填作業を部分的に行う場合には、図13に図示したように閉塞体4の長さ調整をして施工する。)。尚、必ずしも閉塞体4により開口部5を完全に密閉する必要は無く、コンクリート6の流出を防止できれば多少の隙間が生じることに支障はない(吹付け作業に使用されるコンクリート6には急結剤が添加されており、吹付け後、直ちに硬化することから部分的な隙間は許容できるからである。)。
【0039】
この状態で、支保工2と地山部3との隙間Sにコンクリート6をコンクリート吹付け機25から延設されるノズル24から吹付けて充填すると閉塞体4により当該隙間Sの開口部5からコンクリート6が流出されるのが確実に防止されることになる(図2,14参照)。
【0040】
続いて、コンクリート6の充填作業が終了した後、閉塞体4内からエアーを抜き、支保工2から全ての支持体7A,7Bを取り外して次の支保工2と地山部3との隙間Sへのコンクリート6の充填作業に転用する(図15参照)。
【0041】
よって、本実施例によれば、支保工2と地山部3との隙間Sの開口部5から充填されたコンクリート6が流出するのを確実に防止することができるから、従来のようなコンクリート6を無駄にすることが無く経済的であり、しかも、単に閉塞体4を膨縮させるだけで例えば地山部3に形成される複雑な凹凸に対しても確実に応じることができて良好な閉塞状態が簡易且つ迅速に得られることになり非常に作業性が良く、そして更に、吹付けに伴うコンクリート6の撥ね返りがなく、粉塵発生量を飛躍的に抑えることができてトンネル環境を良好に保つことができることになる。
【0042】
また、本実施例は、閉塞体4は支保工2と地山部3との隙間Sの開口部5に着脱自在に設置される為、例えば複数の支保工2夫々の部位におけるコンクリート6の充填作業に転用することができてコスト安である。
【0043】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、例えばコンクリート6の吹付け作業だけでなくポンプによる充填作業に適用するなど、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例に係る閉塞体へのエアー充填作業の説明図である。
【図2】 本実施例に係るコンクリートの吹付け作業の説明図である。
【図3】 本実施例に係る要部の説明図である。
【図4】 本実施例に係る要部の説明図である。
【図5】 本実施例に係る要部の説明図である。
【図6】 本実施例に係る要部の概略動作説明図である。
【図7】 本実施例の使用状態説明図である。
【図8】 支保工の連結構造説明図である。
【図9】 本実施例に係る要部の説明図である。
【図10】 本実施例に係る要部の概略動作説明図である。
【図11】 本実施例の使用状態説明図である。
【図12】 本実施例の使用状態説明図である。
【図13】 本実施例の使用状態説明図である。
【図14】 本実施例の使用状態説明図である。
【図15】 本実施例に係るコンクリート流出防止装置を使用したコンクリート充填作業後の説明図である。
【図16】 従来から行われているコンクリート充填作業の説明図である。
【符号の説明】
S 隙間
1 トンネル
2 支保工
3 地山部
4 閉塞体
4A 分割体
5 開口部
6 コンクリート
7 支持体
7a 挟着連結部
10 連結部材
17 筒状部材
18 棒状部材
19 連結部
Claims (6)
- トンネル内に配設される支保工と地山部との隙間の開口部に着脱自在に配設され、この開口部を閉塞することで該隙間に充填されるコンクリートが該開口部から流出することを防止する閉塞体であって、この閉塞体は、適度な柔軟性を有する部材で袋状に形成された複数の分割体同士を着脱自在に連結して成り、この各分割体同士を通気状態で連結し、この閉塞体の内部へ流体を充填するか若しくは該流体を除去することで前記開口部の開口面積に応じて膨縮するように設けられていることを特徴とするコンクリート流出防止装置。
- 請求項1記載のコンクリート流出防止装置において、前記支保工には前記閉塞体を支持する支持体が設けられていることを特徴とするコンクリート流出防止装置。
- 請求項2記載のコンクリート流出防止装置において、前記支持体は、挟着連結し得る挟着連結部により前記支保工に設けられていることを特徴とするコンクリート流出防止装置。
- 請求項2記載のコンクリート流出防止装置において、前記支持体は、前記支保工に設けられた連結部材に連結し得る連結部を具備する筒状部材に棒状部材をスライド移動自在に設けて構成されており、この棒状部材における前記筒状部材からの突出量は調整自在に設けられ、この棒状部材の上端部が前記地山部に当接するように構成されていることを特徴とするコンクリート流出防止装置。
- 請求項4記載のコンクリート流出防止装置において、前記連結部材は、前記支保工同士を連結するための連結体を連結するためのものであることを特徴とするコンクリート流出防止装置。
- 請求項1〜5いずれか1項に記載のコンクリート流出防止装置を使用し、前記支保工と前記地山部との隙間Sにコンクリートを充填することを特徴とするコンクリートの充填方法。
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