JP3968146B2 - 船舶推進装置用の油圧クラッチ制御方法及び装置 - Google Patents
船舶推進装置用の油圧クラッチ制御方法及び装置 Download PDFInfo
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、船舶推進装置用の油圧クラッチ制御装置に関するものである。特に本発明は、船舶推進装置におけるエンジンの回転と推進プロペラの回転との位相ずれによる歯打ち音を低減または消去する油圧クラッチ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、船舶推進装置においては図14に示すように、船舶Aに搭載したエンジンBに連結された入力軸と推進プロペラCに連結された出力軸との間に油圧クラッチD1を備えた舶用減速逆転機すなわち変速機Dが設けられ、油圧クラッチD1は操船状態に応じて油圧を制御することにより分離状態、すべり状態及び直結状態にされ、船舶Aを随意に前進、後退或いは停止させることができるように構成されている。
このような船舶推進装置における変速機Dにおいては、停船時や例えば漁船の場合のトローリング時のような低速低負荷時にはエンジンBのトルクが変動し易く、変速歯車列がバックラッシュの発生により相互に衝撃的にぶつかり合い、歯打ち音を発生させ、不快なガラ音や船体振動を引き起こすことが知られている。
【0003】
従来このような不快なガラ音の発生を低減したり消去するために、変速機の油圧クラッチの油圧を抜いてクラッチ板を滑らす手法が採られてきた。
そのような従来手法の一例として特開平4−50517 号公報に開示されたものを挙げることができ、この公報に開示された発明では、添付図面の図15及び図16に示すように、油圧クラッチD1及び変速ギアD2を内蔵した前後切替式の舶用減速逆転機Dは、エンジンBとプロペラCを駆動するプロペラ軸Eとの間に設けられ、舶用減速逆転機Dの入力側にはエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出器Fが設けられ、舶用減速逆転機Dの出力側であるプロペラ軸Eに設けた鉄製歯車に近接してプロペラ回転数検出器Gが設けられている。また油圧クラッチの作動油圧の制御系には、前後進切換弁H、減圧調整弁I、及び減圧及び増圧を行う圧力調整手段Jが設けられ、前後進切換弁Hは切換手段Kにより手動で切換られるようにされ、減圧調整弁I及び圧力調整手段Jは油圧供給手段Lに接続されている。エンジン回転数検出器Fからのエンジン回転数信号及びプロペラ回転数検出器Gからのプロペラ回転数信号は回転変動検出手段Mへ供給され、回転変動検出手段Mは回転変動信号を発生し、この回転変動信号はNs設定器Nからの信号と共に制御装置Oへ供給される。制御装置Oにおいては、エンジン回転数検出器Fで検出したエンジン回転数がガラ音発生領域にあるか否かを判別し、エンジン回転数がガラ音発生領域にある場合には、プロペラ回転数検出器Gにおいてサンプルタイムの間に検出したプロペラ回転数の最大値と最小値との差すなわち回転変動を求めるか、またはサンプルタイムの間に検出したエンジン回転数の最大値と最小値及び平均回転数に基き、回転変動率[(最大値−最小値)/平均回転数]を求め、こうして求めたプロペラ回転数の回転変動かまたはエンジン回転数の回転変動率に従って圧力調整手段Jを制御するように構成されている。すなわちエンジンと推進プロペラとの間の動力伝達経路の回転数を常時検出し、検出した回転数に基き回転変動を求め、求めた回転変動が所定値を越える時には油圧クラッチの作動油圧を下げてクラッチ板の滑りを増大させ、一方所定値以下である時には油圧クラッチの作動油圧を上げてクラッチ板の滑りを減少させるように構成され、そして油圧クラッチの作動油の調整は、船舶の前進及び後退とも同じプロペラ回転変動の目標値(目標α値)を設定して行われる。すなわちこのような従来の制御方法では、エンジン回転数を運転状態の指標として、推進プロペラの回転変動の目標α値マップを用い、クラッチ油圧の制御を行ってきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで船体の形状や推進プロペラの性能や船舶の進行方向や減筒運転(PSD)等によりエンジンに対する負荷状態が大きく変わり、例えば後進時には船体の抵抗の関係等からエンジンに対する負荷が大きくなり、その結果、トルクの変動が大きくなることにより、エンジン回転の変動幅は大きくなる。そのため前進時と後進時とで同じ目標値に基づいて油圧制御すると、後進時には油圧が比較的多く抜かれることになり、前進時に比べて油圧クラッチの滑りが大きくなり、これにより後進時の応答性が低下したり、逆のガラ音が残ったり、操船感が不快となる。
このように、同一エンジン回転数でもエンジンに対する負荷状態の変動により適正なα値は異なるので、従来のα値制御方法では、負荷の変動に広く対応したクラッチ制御は行えない。具体的には、前進と後退とでは回転変動の発生の状態が異なっており、上記の公開公報に開示されたものように前進及び後進が共に同じ目標α値の推進プロペラ回転変動では、後退側ではクラッチの滑らせ過ぎによって舶用減速逆転機の応答性が悪化したり、逆のガラ音が残ったり、また後退時の応答性が悪い等の問題があった。同一エンジン回転数でも適正なα値は異なるので、従来のα値制御方法では、負荷の変動に広く対応したクラッチ制御は行えない。
また、従来のα値の検出は、エンジン回転の変動周期とは無関係に推進プロペラ回転の極一部の期間の回転数の変動を検出することにより行われていたため、検出されたα値のばらつき自体が大きいという問題があった。
さらにまた従来の方法では油圧クラッチのシフト位置が明確でないため、前進後退切替の過度時にクラッチの油圧制御を最適に行えないという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、従来技術に伴う問題点を解決してエンジンに対する負荷状態の変動にも十分に追従してガラ音を消去することができる船舶推進装置用の油圧クラッチ制御方法及び装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、 本発明に係る船舶推進装置用の油圧クラッチ制御方法は、船舶に搭載したエンジンに連結された入力軸と推進プロペラに連結された出力軸との間に、油圧クラッチを備えた変速機を設け、油圧クラッチの作動油圧を制御することにより油圧クラッチを分離状態、直結状態及びすべり状態のいずれかに切換えると共に油圧クラッチがすべり状態にある時の滑り程度を制御しギヤ歯打ち音を消去する船舶推進装置用の油圧クラッチ制御方法において、船舶の操船状態及び/又はエンジンの運転状態からエンジンの負荷状態を検出し、エンジンの負荷状態に対応する推進プロペラの回転変動幅の目標値のマップを備え、前記検出したエンジンの負荷状態と前記マップとに基づいて推進プロペラの回転変動幅の目標値を求め、推進プロペラの実際の回転変動が前記目標値の範囲内に収まるように油圧クラッチを滑らすよう油圧クラッチの作動油圧操作量を決定することを特徴とする。
【0007】
前記エンジンの負荷状態に対応する推進プロペラの回転変動幅の目標値のマップは、前記エンジンの負荷状態毎に設けてもよく、また、ある一つのエンジンの負荷状態に対して設けてもよい。後者の場合には、その他の前記負荷状態における推進プロペラの回転変動幅の目標値は、前記マップから得られる目標値にある係数をかけることにより決定され得る。
【0008】
【本発明の実施の形態】
以下添付図面に示した一実施例を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1、図2及び図3には、本発明を実施している船舶推進装置における舶用減速逆転機1の要部の構成を概略的に示している。図中符号1は一般にマリンギヤと称される舶用減速逆転機を示しており、このマリンギヤ1は、前進用油圧クラッチ2と後進用油圧クラッチ3とを備え、前記前進用油圧クラッチ2は前進用ピニオン4及び逆転軸駆動ギヤ5と共に、エンジンの出力軸(図示せず)に連結された駆動軸6に取り付けられ、また、後進用油圧クラッチ3は後進用ピニオン9及び被動ギヤ10と共に、逆転軸11に取付けられている。前記駆動軸6及び逆転軸11には、各々後述するオイルタンクから油圧制御回路を介して供給されるクラッチ作動圧油及び潤滑油が通る作動圧油通路7及び潤滑油通路8が軸線方向に形成されている(図2参照、但し、逆転軸11は図示せず)。
また駆動軸6の垂直真下には推力軸12が配置され、この推力軸12には、前記前進用ピニオン6及び後進用ピニオン9が噛み合う幅広の被動ギヤ13が設けられており、その後端部は推進プロペラ14を備えたプロペラ軸14aに連結されている。上記逆転軸11は推進軸12を中心として駆動軸4と同じ円周上に位置決めされている。
また図3に示すように、マリンギヤ1には、クラッチ作動圧油の油圧を制御する油圧制御電磁弁15、クラッチ作動圧油の供給を前進用油圧クラッチ側、後進用油圧クラッチ側、又はオイルタンク側に切り換える回転式の前後進切換え弁16、前記前後進用切換え弁16のシフト位置を検出するシフトスイッチ17、クラッチ作動圧油の油圧変化量を検出する油圧センサ18、及び前記プロペラ軸14の回転数を検出するプロペラ回転数センサ20が取り付けられている。尚、図3中、符号19は不図示のエンジンに設けられたエンジン回転数センサの出力コードである。
前記油圧制御電磁弁15、前後進切換え弁16、及び油圧センサ18は油圧制御回路中に設けられ、また、シフトスイッチ17は前後進用切換え弁16の同軸上に設けられている。これらの要素の構成や作用については後で詳述する。
上記したように構成されたマリンギヤ1は、前進運転時にはエンジンの駆動力を駆動軸6の前進用油圧クラッチ2、前進用ピニオン4及び推進軸12の被動ギヤ13を介して推力軸12に伝達して推進プロペラを前進駆動し、また、後進運転時には、エンジンの駆動力を、駆動軸6の逆転軸駆動ギヤ5、逆転軸11の被動ギヤ13、後進用クラッチ3、後進用ピニオン9及び推進軸12の被動ギヤを介して推力軸12に伝達して推進プロペラを後進駆動する。
【0009】
前記前後進切換え弁16は図4に詳細に示され、手動レバー16aにより前進位置(前進用油圧クラッチ側)、後進位置(後進用油圧クラッチ側)及び中立位置(オイルタンク側)に択一的に切換えられる。またシフトスイッチ17は、前後進切換え弁16と同軸上に配置され、三つの電気的接点により前後進切換え弁16が前進位置、後進位置又は中立位置の何れの位置にあるかを検出する。
【0010】
図5はマリンギヤ1の油圧制御回路を示す。
この油圧制御回路は、マリンギヤ1のハウジングの底部に形成されたオイル溜め21内の油をマリンギヤ1に供給するための回路であり、オイル溜め21からの油は油圧供給手段であるオイルポンプ22で加圧されて主油圧回路23に送られ、クラッチ圧リリーフ弁24によって所望の圧力に維持される。
【0011】
主油圧回路23は四つの分岐油圧回路25,26,27,28に分岐されている。分岐油圧回路(潤滑油供給回路)25はオイルクーラー29を介して前進用クラッチ2及び後進用クラッチ3へのびており、この潤滑油供給回路25の途中には潤滑圧リリーフ弁30が設けられている。従って潤滑油供給回路25を通って送られる圧油はオイルクーラー29で冷却され、潤滑圧リリーフ弁30によって所定の圧力まで落とされた後、マリンギヤ1における前記前後進用クラッチ2,3に供給され、各クラッチ2,3における駆動軸6及び逆転軸11に設けられた潤滑油通路8を介して各クラッチ2,3のクラッチ板及びギヤの回転部へ送られそれらの潤滑を行う。
【0012】
分岐油圧回路(作動圧油供給回路)27にはセルフラップ弁から成る減圧調整弁31が設けられ、この減圧調整弁31を介して作動圧油供給回路27は前後進切換え弁16に接続されている。
減圧調整弁31は図6に示すように、小径シリンダ31aと、中径シリンダ31bと、大径シリンダ31cとを備えている。小径シリンダ31a及び中径シリンダ31bの内部には、小径ピストンと中径ピストンとを連結した弁体31dが摺動可能に設けられ、大径シリンダ31c内には前記中径ピストンより径の大きい調整用ピストンすなわちパイロットピストン31eが摺動可能に設けられている。また、前記弁体31dとパイロットピストン31eとの間にはばね31fが挿置されている。
前記小径シリンダ31aには作動圧油供給回路27と連通する作動圧油供給ポート31gが、中径シリンダ31bには作動圧油供給回路27からの作動油を前後進切換弁16の後述する第1開口16aへ供給する作動油吐出ポート31h及び前記作動圧油供給回路27からの作動油をオイル溜め21に戻すドレインポート31iが各々形成されており、前記作動圧油供給ポート31gは弁体31dの小径ピストンにより、また、作動油吐出ポート31h及びドレインポート31iは弁体31dの中径ピストンにより各々開閉される。また、前記大径シリンダ31cには分岐油圧回路(プライマリ圧油供給回路)28と連通するプライマリ油供給ポート31jが形成されている。
【0013】
プライマリ圧油供給回路28には絞り32、オイルフィルタ33、パイロット圧リリーフ弁34、及び油圧制御電磁弁15が設けられている。油圧制御電磁弁15は、増圧弁15aと減圧弁15bとから成り、前記プライマリ圧油供給回路28は、前記増圧弁15aの下流が二股に分岐しており、一方がプライマリ油供給ポート31iを介して減圧調整弁31の大径シリンダ31cへ連通され、他方が減圧弁15bを介してオイル溜め21に連通されている。従って、このプライマリ圧油供給回路28を通過するプライマリ圧油は、オイルフィルタ33によって濾過され、パイロット圧リリーフ弁34によって、その油圧が5k程度まで減圧された後、油圧制御電磁弁15の調整に応じて減圧調整弁31の大径シリンダ31cの内部に入り所望の圧力でパイロットピストン31eを押圧するか、或いはオイル溜め21へ戻される。
【0014】
前後進切換え弁16には、前記減圧調整弁31の作動圧油吐出ポート31hに連通する第1開口16a、オイル溜め21に連通する第2開口16b 、分岐油圧回路(作動油戻し回路)26に連通する第3開口16c、前進用油圧クラッチ2の多板クラッチを押圧するピストン2aの前進用作動圧油供給回路35に連通する第4開口16d及び後進用油圧クラッチ3の多板クラッチを押圧するピストン3aの後進用作動圧油供給回路36に連通する第5開口16eが設けられている。
上記した前後進切換え弁16は、作動圧油供給回路27を前進用作動圧油供給回路35に繋ぎ、後進用作動圧油供給回路36をオイル溜め21へ繋ぎ、前進用油圧クラッチ2に圧油を供給させる第1弁16fと、作動圧油供給回路27を後進用作動圧油供給回路36に繋ぎ、前進用作動圧油供給回路35をオイル溜め21へ繋ぎ、後進用油圧クラッチ3に圧油を供給させる第3弁16hと、前後進用作動圧油供給回路35及び36を両方共オイル溜め21へ繋ぎ、前進及び後進用油圧クラッチ2及び3の両方から圧油を抜く第2弁16gとを備え、手動レバーにより前記第1弁16f、第2弁16g、及び第3弁16fを択一的に切り換えて、前進、中立及び後進の択一的な選択ができるように構成されている。
【0015】
作動圧油供給回路27は、一方では減圧調整弁31を介して前後進切換え弁16の第1開口16aに連通し、他方ではクラッチ圧リリーフ弁24における潤滑オリフィス24aに接続している。この潤滑オリフィス24aにはまた、前後進切換え弁16の第3開口16cに連通している作動油戻し回路26が接続されている。
【0016】
上記したように構成された油圧制御回路におけるプライマリ圧油供給回路28の油圧制御電磁弁15と減圧調整弁31との間には前述した油圧センサ18が設けられている。この油圧センサ18は、減圧調整弁31の調整用ピストン31eに作用する圧力を検出する。この油圧センサ18で検出する油圧は、前進用クラッチ2及び後進用クラッチ3におけるピストン2a及び3aに作動圧油を供給する前後進用作動圧油供給回路35及び36の油圧と比例して変化するので、各油圧クラッチ2及び3のピストン2a及び3aにかけられた油圧情報として後述する制御装置に送られ、制御装置では、必要に応じてこの油圧センサ18から得られる油圧情報を用いて油圧制御電磁弁15の増圧弁15a及び減圧弁15bの操作量を決定する。
尚、プライマリ圧油供給回路28に油圧センサ18を設けて減圧調整弁31の調整用ピストン31eに作用する圧力を検出する代わりに、例えば、作動圧油供給回路35及び36に直接油圧センサ37及び38を設けて各油圧クラッチ2及び3にかかる作動圧油の油圧を直接検出するように構成してもよいが、作動圧油は油圧が高い(例えば、25k)ので、その場合には、油圧センサ18より耐圧性能の高い、比較的高価な油圧センサを用いる必要がある。
また、潤滑油供給回路25にも油圧センサ39が設けられている。この油圧センサ39は各油圧クラッチ2及び3に供給される潤滑油の油圧を検出しており、潤滑油リリーフ弁30が正常に機能しているかを監視する場合に使用される。
【0017】
このように構成された油圧制御回路においては、前記前後進切換弁16を操作することにより作動すべき油圧クラッチ2または3が選択され、後述する制御装置で油圧制御電磁弁15の増圧弁15a及び減圧弁15bを制御することにより、選択された油圧クラッチ2又は3の連結状態(即ち、直結状態及び滑り状態)が適当に調節される。
具体的には、例えば、前後進切換え弁16の第1弁16fを作動位置にセットした状態で、増圧弁15aを作動させて大径シリンダ31c内にプライマリ圧油を供給し大径シリンダ31c内の圧力を上昇させると、パイロットピストン31eが図6における上方へ移動する。それにより弁体31dが上方に移動し、弁体31dの小径ピストンが作動圧油供給ポート31gを開口し、小径シリンダ31aを介して中径シリンダ31b内に作動圧油供給回路27からの作動油を入れる。その後、前記中径シリンダ31b内の圧力上昇に伴い弁体31dにおける小径シリンダと中径シリンダとの面積差により弁体31dが下降し始め、弁体31dが作動圧油供給ポート31gを閉じると共に作動油吐出ポート31hを開き、前後進切換弁16を介して前進用作動圧油供給回路35内に作動圧油を供給し始め、中径シリンダ31b内の圧力と大径シリンダ31c内の圧力とがばね31fを介してバランスすると弁体31dが作動圧油供給ポート31gを完全に閉じて作動油吐出ポート31hを完全に開き、前進用クラッチ2の多板クラッチを押圧する前進用作動圧油供給回路35内の作動圧油の油圧(即ち、作動油圧)を所定の圧力まで増圧させる。
また、減圧弁15bを作動させてプライマリ圧油供給回路28のプライマリ圧油をオイル溜め21にドレインすると、大径シリンダ31c内の圧力が減圧され、パイロットピストン31eが下降し、それに伴い弁体31dも下降してドレインポート31iが開口し、中径シリンダ31bを介して前進用作動圧油供給回路35の作動圧油をオイル溜め21にドレインし、前進用作動圧油供給回路35内の油圧を減圧する。
上記したクラッチの作動油圧の大きさは、制御装置によって油圧電磁制御弁15の各弁15a、15bの開度を適当に調節することにより0油圧から直結油圧の間で適当に調節され、直結油圧の時にはクラッチは完全に繋がり、0油圧に近づく程、クラッチが滑り動力伝達率を下げ、0油圧の時にはクラッチが完全に滑って動力伝達率が0になる。
また、前後進切換え弁16の第3弁16hが作動位置にある場合には、減圧調整弁31の中径シリンダ31bの油圧は後進用油圧クラッチ3のピストン3aに作用し、後進用油圧クラッチ3を繋げる。この時の作動油圧も前進用油圧クラッチ2の場合と同様、制御装置による油圧制御電磁弁15のソレノイドへの通電によって0油圧から直結油圧の間で制御される。
さらに、図5に示すように前後進切換え弁16の第2弁16gを作動位置にすると、減圧調整弁31の中径シリンダ31b内の圧油は作動油戻し圧回路26へ流れ、潤滑油として利用され、作動圧油供給回路35及び36の圧油はオイル溜め21にドレインされ、前進用油圧クラッチ2及び後進用油圧クラッチ3は両方共完全に切り離される。
【0018】
次に、上記したマリンギヤ1における電磁制御弁15を作動させて油圧クラッチ2又は3の作動油圧を制御する制御装置について説明する。
図7は、油圧クラッチ制御装置と入出力信号との関係を示す図である。図7中符号40はCPUを示しており、その入力側にはプロペラ回転センサ20、エンジン回転センサ19、シフトスイッチ17、油圧センサ18、リモコンダイアル41、減筒運転スイッチ42、灯船モードスイッチ43、マップ補正ボリューム44がそれぞれに入力インターフェースを介して接続され、また、その出力側には、油圧制御電磁弁15の増圧弁15a及び減圧弁15bのソレノイド45a及び45bがそれぞれ出力インターフェイスを介して接続されている。
CPU40は、前記した入力情報に基づいて油圧制御回路に設けられた電磁制御弁15の増圧弁15a及び減圧弁15bのソレノイド45a及び45bの駆動時間を決定し、マリンギヤ1における油圧クラッチ2及び3の作動油圧を、クラッチが動力伝達を行わない0油圧からクラッチが完全に繋がる直結油圧の間で制御する。
この制御装置におけるクラッチ作動油圧の制御は、大きく分けて直結運転モードとトローリング運転モードの二つの運転モードに基づいて行われる。
前記トローリング運転モードは、所定の条件の下で操船者のリモコンダイヤル41による指示に従って船体を微速で走航させるために、推進プロペラ14の回転数Npを、操船者の要求する回転数(目標プロペラ回転数Ns)に合わせるように油圧クラッチ2及び3を滑らせた状態で運転するモードであり、このモードでは、クラッチ作動油圧は、基本的に推進プロペラ14の回転数Np及び目標作動油圧Ppに基づいて制御される。このトローリング制御モードは主に漁の時等に使用される。
また、前記直結運転モードはトローリング運転モード以外の時に、基本的に油圧クラッチが直結状態になるように目標油圧に基づいてクラッチ作動油圧を制御するモードであり、エンジン回転が低く、ガラ音が発生するような状況においては、推進プロペラ14の回転変動(α値)を指標として、油圧クラッチ2及び3を滑らせて前記α値を目標α値に合わせるクラッチ作動油圧の制御、即ち、ガラ音防止制御が行われる。ここで、ガラ音とは、低速低負荷時にマリンギヤ1におけるギヤのバックラッシュにより生じる歯打ち音のことをいい、前記したように油圧クラッチ2及び3を滑らせることによりガラ音の発生が防止される。
尚、前記したCPU40の入力側にある灯船モードスイッチ43は、実質的に海上に停船した状態で操業する例えばイカ釣り船において用いられる集魚灯の発電機の駆動源としてその船のエンジンを比較的高い回転数で作動させる際に使用される。 すなわち、この場合、高い回転数で推進プロペラをゆっくり回して、微速走航を行う必要があるため、油圧クラッチの滑りを大きくし、エンジンが高回転状態で、微速走航が行えるようにする。また、灯船モードスイッチ43は、エンジンが高速回転している時にクラッチをつなぐとクラッチを壊してしまう恐れがあるため、スロットル操作のみではクラッチがつながらないようにする機能をもたせている。
また、マップ補正ボリューム44は、前記ガラ音防止制御モードにおいて、予め用意された目標回転変動が、エンジンやマリンギヤの経時変化により、或いは、適用する船により、ガラ音防止に適合しない値になってしまっている場合に、前記目標回転変動を外部から調整することができるように設けられているボリュームである。このボリューム44で調整された値は、制御装置内で目標回転変動幅の補正値として用いられる。尚、従来使用されてきたマップ補正ボリュームでは正側と負側の補正幅は同じであったが、本発明において使用するマップ補正ボリューム44はガラ音を消す方向すなわち負側の調整幅が大きくなるように構成されている。
また、CPU40の出力側には、前記ソレノイド45a及び45bの他に、トローリング制御中であることを表示する表示装置46、ギヤ比を表示するためのギヤ比表示手段47、マップ補正位置表示手段48、及びフェール情報表示手段49が接続されており、さらに、パソコン等の外部装置と接続可能なコネクタ(符号なし)が設けられている。
さらに、CPU40に付属してEEP ROM51が設けられている。このEEP ROM51は電気的に書き変え可能なROMで、この中にはギヤ比、ソレノイドの劣化情報、各センサのフェール情報等とが書き込まれる。
なお、図7において符号52は電源を、符号53は電源回路を各々示している。
【0019】
次に、図8〜図14に基づいてCPU40内でのデータ処理及び各制御モードについて説明していく。
図8は、図7におけるCPU内のデータ処理の流れを示すブロック図である。
図8において54〜59は平均処理部、60は減速比演算部、61〜65はスイッチ読込み処理部、66は実測α値計算部、67は加速度計算部、68は目標回転数設定値計算部、69は補正係数計算部、70はシフト位置検出部、71は油圧計算部、72は電源電圧値計算部、73は基本目標α値決定部、74はモード判定部、75は電圧補正マップ、76はガラ音制御用油圧クラッチ作動油圧計算部(以下、ガラ音油圧計算部と称する。)、77はトローリング制御用油圧クラッチ作動油圧計算部(以下、トローリング油圧計算部と称する。)、78はソレノイド駆動時間計算部、79はソレノイド劣化量検出部であり、また、80はEEP ROMにおける学習値保存部である。
プロペラ回転センサ20で検出したプロペラ回転信号Npは平均処理部54で平均化されて、減速比演算部60、実測α値計算部66、モード判定部74及びトローリング油圧計算部77へ送られる。
実測α値計算部66では、エンジンの少なくとも複数気筒のうちの1気筒分の排気上死点から圧縮上死点までの期間より長い期間でのプロペラ回転数に基づいて実測α値を算出する。ここで排気上死点から圧縮上死点までの期間より長い期間で検出することにより、トルク変動によるプロペラ回転変動(実測α値)を完全に抑えることができる。こうして計算された実測α値信号はガラ音油圧計算76に入力される。
エンジン回転センサ19からのエンジン回転信号は平均処理部55で平均化されて、減速比演算部60、加速度計算部67、基本目標α値決定部73及びモード判定部74へ送られる。減速比演算部60は、平均処理部54からの平均化されたプロペラ回転信号と平均処理部55からの平均化されたエンジン回転信号Neとから減速比すなわちギア比を算出し、その値を目標回転数設定値計算部68及び基本目標α値決定部73に入力する。この場合ギア比は直結運転状態で走航している際のプロペラ回転数とエンジン回転数との比によって算出される。ギヤ比は幾つかあり、基本目標α値決定部73では、各ギア比毎に基本目標α値のマップを持つ。
加速度計算部67は平均処理部55からの平均化されたエンジン回転信号により加速度を計算し、モード判定部74へ入力する。
リモコンダイヤル41は、直結指示とトローリング制御指示とを択一的に選択できるダイヤルを備え、前記トローリング制御指示は、作動油圧を0油圧から直結油圧より小さい所定の油圧まで指示できるようにボリュームが付けられている。
目標プロペラ回転数計算部68は、減速比演算部60から入力された減速比信号と平均処理部56を介してリモコンダイヤル41からの信号とを演算処理して目標プロペラ回転数Nsを算出する。算出された目標プロペラ回転数Nsはモード判定部74及びトローリング油圧計算部77に入力される。
マップ補正ボリューム44からの補正信号は平均処理部57を介して補正係数計算部69へ送られ、補正係数計算部69は補正係数を算出する。補正係数計算部69で算出された補正係数は、基本目標α値決定部73で決定された基本目標α値に乗算され、これにより最終的な目標α値が決定される。
シフトスイッチ17は前述のように前進位置、中立位置及び後進位置をもち、それぞれの位置信号は対応した読込み処理部61,62,63を介してシフト位置検出部70へ送られ、シフト位置が検出される。検出されたシフト位置信号はモード判定部74へ入力される。
【0020】
モード判定部74には、上記の入力信号の他に、減筒運転スイッチ42及び灯船モードスイッチ43からの信号並びに油圧センサ18で検出され平均処理部59で処理された値に基づいて油圧計算部71で算出された油圧信号が入力される。
モード判定部74は、前記した各種入力信号に基づいて、直結運転モード又はトローリング運転モードのどちらの制御モードでソレノイド駆動時間を決定するかを判定する。
具体的には、エンジン回転数Neがトローリング上限回転数Nhより小さく、リモコンダイヤル41がトローリング制御指示位置にある場合には、トローリング運転モードで、また、それ以外の時には直結運転モードでソレノイド駆動時間を決定すると判定する。
【0021】
モード判定部74において直結運転モードが選択された場合、基本的には、作動油圧は直結油圧に維持される。但し、この直結運転モードにおいてエンジン回転数Neが予め設定したガラ音上限回転数(例えば、減筒運転を行っている場合には1000rpm、減筒運転を行っていない場合には800rpm)より下がった場合には、モード判定部74によりガラ音が生じやすいと判断され、エンジン回転数Neが前記ガラ音上限回転数以上になるまで、又は、操船者のスロットル操作により加速されるまで、又はシフトスイッチが中立位置に設定されるまでの間、推進プロペラの回転変動(α値)を目標α値の範囲内に抑えるガラ音防止制御が行われる。
このガラ音防止制御では、ソレノイド駆動時間は、基本目標α値決定部73に予め用意されたマップから得られる基本目標α値及びマップ補正ボリュームから得られる補正係数から計算された目標α値と、プロペラ回転センサ20からフィードバックされた実測α値との偏差に基づいてガラ音油圧計算76及びソレノイド駆動時間計算部78により計算される(図9参照)。また、学習値として保存されているソレノイド劣化情報も補正値として加算される。なお、この目標α値と実測α値との偏差に基づくソレノイド駆動時間の演算は通常のPID制御により処理される。
尚、直結運転状態とガラ音防止制御運転状態での油圧差が大きいため、直結運転状態からいきなりガラ音防止制御に入ると、ガラ音が消えるまでの時間が長くかかったり、α値過大となることから油圧減圧動作が過大となり、その結果、ハンチングが発生する等の問題があるため、直結運転状態からガラ音防止制御に入る時は、一度、エンジン回転数に応じて算出される目標プライマリ油圧を目標値とする油圧制御を行う油圧制御モードに移行した後、安定したらガラ音防止制御に移る。
また、モード判定部74においてトローリング運転モードが選択された場合、ソレノイド駆動時間は、リモコンダイヤル41から得られる目標プロペラ回転数Ns、プロペラ回転センサ20からフィードバックされた実測プロペラ回転数Np、及び油圧センサ18からフィードバックされた実測プライマリ油圧Pcに基づいてトローリング油圧計算部77及びソレノイド駆動時間演算部78で演算され、プロペラ回転数Npが目標プロペラ回転数Nsになるように油圧クラッチ2,3の滑りを調節し、推進プロペラ14がリモコンダイヤル41で設定された目標プロペラ回転数Nsで回転され、船体が微速走航できるように制御される。
【0022】(直結運転モードにおけるガラ音制御ついて)
ここで、直結運転モードにおけるガラ音制御について説明する。
この直結運転モード中のガラ音制御で使用される基本目標α値設定部73は、エンジン回転数Neを指標とするギヤ比毎の基本目標α値に関する二次元マップをエンジンに係る負荷状態毎に持っている。ここでは、エンジンにかかる負荷状態は、船体の走航状態(即ち、前進又は後進)と減筒運転とによって分けられている。基本目標α値設定部73は、シフトスイッチ42及び減速比演算部60から得られる走航状態の情報(即ち、前進又は後進)とギヤ比に関する情報に基づいて、それら複数のマップの中から、その時の負荷状態に適合するマップを選択し、エンジン回転数Neに基づいて基本目標α値を決定する。尚、エンジンにかかる負荷状態は、走航状態及び減筒運転以外の情報、例えば、スロットル開度や吸入空気量等のエンジンの運転状態を表す情報に基づいて分けてもよく、この場合は、それに対応するマップが用意される。また、必ずしもエンジンにかかる負荷状態毎に複数のマップを用意する必要はなく、例えば、図10のフローチャートに示すように、前進状態のような一つの負荷状態に相応した一つの二次元マップを備え、他の負荷状態における基本目標α値はマップから得られる基本目標α値に負荷状態毎に設定した係数を掛けることによっても基本目標α値を負荷状態毎に得ることは可能である。
基本目標α値決定部73で決定された基本目標α値は、マップ補正ボリューム44から得られる補正係数により補正され、ガラ音油圧計算76に入力される。
前記ガラ音油圧計算76及びソレノイド駆動時間計算部78では、図9を用いて既に説明したように目標α値と実測α値との偏差に基づいて、実測α値が目標α値より大きい場合には選択されている油圧クラッチ2又は3の作動油圧を下げて前記クラッチを滑らせ、α値、即ちプロペラの回転変動を下げるように、また、実測α値が目標α値より小さい場合は、選択されている油圧クラッチ2又は3の作動油圧を上げて前記クラッチの滑りを小さくし、α値を上げるようにPID制御を用いて増圧弁15a及び減圧弁15bのソレノイド駆動時間を決定して出力する。
このように直結運転モードでは、エンジン回転数Neがガラ音の発生し易いガラ音上限回転数以下になるとガラ音防止制御に移行し、このガラ音防止制御中は、油圧制御回路の油圧制御電磁弁15がα値、即ち、プロペラの回転変動に基づいて制御され、実測α値が目標α値の範囲を越えたら油圧クラッチ2又は3の作動油圧を下げ、また、逆の場合には作動油圧を上げて油圧クラッチ2又は3の滑り量を調節するのでガラ音が生じることがない。
【0023】
ここで、図11A及びBを参照して、ガラ音防止制御中に前後進切換え弁16を操作して進行方向を変える時の切換え時間の短縮及びプロペラ回転のハンチングの防止について説明する。
グラフAは、シフトスイッチ17を持たない制御装置によるガラ音防止制御中に前後進を切り換えた時の時間経過に対するプロペラ回転数の変化を示す図であり、また、グラフBは、シフトスイッチ17により船体の走航方向が確認できる本願発明に係る制御装置によるガラ音防止制御中に前後進を切り換えた時の時間経過に対するプロペラ回転数の変化を示す図である。尚、両者ともグラフの縦軸はプロペラ回転数を、横軸は時間を表している。あるエンジン回転数とギヤ比いおいて、クラッチが完全につながっている状態で航行している時のプロペラ回転数を、仮にNrpmとする。α値によるガラ音防止制御を行うと、そのプロペラ回転数は直結状態よりもわずかに低下する。シフトスイッチがない場合、直結状態でのプロペラ回転数Nの85%(xN)以下に実際のプロペラ回転数がなった時にシフト中立位置と判断し、ガラ音防止制御から直結運転制御へと移行させていた。ここで、艇速や潮の流れが速い状態でシフトを前進又は後進位置から中立位置に切り換えた場合を考える。この時、周りの流れに逆らってプロペラは逆転しなければならないため高いクラッチ油圧を必要とする。しかしシフトが中立位置であることからクラッチ油圧は低下し続ける。この結果プロペラは周りの流れによって回される状態となる。この状態では直結状態でのプロペラ回転数の85%以下に実際のプロペラ回転数がなるまでの時間が長くかかることになり、その結果、切換え弁16が後進側に完全に切り替わっているにも関わらず、プロペラ回転が反転してなく、しかもα値制御を行う範囲に残っていることがある。
上記したような場合、従来の制御装置は、シフトスイッチによる前後進切換え弁16のシフト位置の信号を入力していないため、切換え弁16が後進側に切り替わっているにも関わらず、それを認識することができず、しかも、プロペラ回転数がα値制御範囲内に残っておりプロペラ回転が減速するに従いα値も大きくなるので、さらに油圧を下げる制御を行う。その結果、油圧クラッチの動力伝達率が低下するのでプロペラ回転を反転するまでの時間が長くかかってしまう。また、プロペラが反転し、シフト方向と一致した方向にプロペラが回転し始めた時も、α値が大きくなるので、油圧を下げてしまい、その時の滑り量によって、急増圧動作が行われる。この結果、α値が過大になり同じ動作を繰り返してしまい、プロペラ回転がハンチングしてしまう。
本実施例の制御装置は、シフトスイッチ17を設けて切換え弁16のシフト位置を検出しているので、切換え弁16を前進位置から後進位置へ切り換えた直後に、クラッチ作動油圧を直結以上に増圧し、プロペラ回転数とエンジン回転数との比が所定の値以上になった時、α値制御を再開するよう制御する。この時、α値計算部66が計算した実測α値に一定時間振幅変調をかけ、フィードバック制御に用いる実測α値を実際の値より小さくすることで増圧を行うようにする。
上記したようにシフトスイッチ17の検出信号に基づいて、切換え弁16が前進位置から後進位置へ切り替わった直後にクラッチ作動油圧を直結以上に増圧することにより、シフト切換時間が従来のシフトスイッチがない制御装置における切換時間に比べて著しく短縮でき、また、実測α値に一定時間振幅変調をかけてフィードバック制御に用いる実測α値を実際の値より小さくすることによりシフト切換後のプロペラ回転のハンチングも防止することができる。
【0024】(トローリング制御の説明)
モード判定部74においてトローリング運転モードが選択された場合、図12に示すように、トローリング油圧計算部77において、リモコンダイヤル41から得られる目標プロペラ回転数Ns及びプロペラ回転センサ20からフィードバックされた実測プロペラ回転数Npの偏差に基づいて計算された目標作動油圧補正量と、前記目標プロペラ回転数Nsに基づいて予め用意されたマップから得られる基本目標作動油圧との和から目標プライマリ油圧Ppを求める第一のフィードバックループと、さらに、この目標プライマリ油圧Ppと油圧センサ18からフィードバックされる実際のプライマリ油圧Pcとの偏差に基づいて、ソレノイド駆動時間計算部78においてソレノイド駆動時間を演算する第二のフィードバックループとから成る二重フィードバックによりソレノイド駆動時間が求められる。なお、目標作動油圧補正量及びソレノイド駆動時間の演算は通常のPID制御により処理される。
最終的な目標値である推進プロペラ14の回転数Npは制御装置からソレノイド駆動時間を出力してからその影響がでるまでに、油圧制御電磁弁15の応答時間や、圧油がオイルポンプから油圧制御回路を介して油圧クラッチ2又は3に達する時間等が原因で相当の遅れが生じ、従って、このプロペラ回転数Npのフィードバックだけに頼っているとゲインを大きくできずに応答性のよい制御が達成できないが、上記したようにプロペラ回転数Npに加えて、制御装置がソレノイド駆動時間を出力してから影響が出るまでの時間が非常に短いプライマリ油圧を油圧センサ18により検知してフィードバックし、このプライマリ油圧によりソレノイド駆動時間を決定する二重フィードバック制御にすることにより遅れを少なくすることができ、ゲインも大きくできるので応答性が良くなり、また、外乱や劣化等に対する頑強性(ロバスト性:安定性)も向上する。そしてさらに、上記したトローリング制御では、目標プロペラ回転数Nsに基づいて予め用意したマップにより基本目標作動油圧を決定するフィードフォワード制御を追加し、フィードバックしたプロペラ回転数Npは前記基本目標作動油圧を補正するためだけに使用しているので、プロペラ回転数Npをフィードバックすることによる遅れの影響はほとんどなくなり、制御の応答性が極めて向上し、トローリング運転中の操船者のリモコンダイヤル41の操作に応答性よく反応する。
また、油圧クラッチ2,3は、エンジン回転数や目標プロペラ回転数によって、作動油圧の変化に対する動力伝達率が変わる。具体的には、目標プロペラ回転数が同じでもエンジン回転数が高くなるにつれて動力伝達率が高くなり、また、エンジン回転数が同じでも、目標プロペラ回転数が高くなるにつれて動力伝達率が高くなる。例えば、エンジン回転数が500rpmの時と、1000rpmの時とでは、油圧を上げた時のプロペラ回転数の上がり方が異なり、エンジン回転数が500rpmの時には、プロペラ回転数が滑らかに上がりオーバシュートも起こさない作動油圧の上げ方であっても、1000rpmの時には、プロペラ回転数が急激に上がりオーバシュートを起こしてしまう場合がある。
これを防止するために、上記トローリング油圧計算部77には、図12に示すように制御定数補正量計算部77aが設けられている。この計算部77aはエンジン回転数Neを入力し、この入力情報毎に予め用意されたマップ等に基づいてトローリング油圧計算部77における比例定数Kp、積分時間Ti、及び微分時間Tdの補正係数を決定し、前記トローリング油圧計算77における比例定数Kp、積分時間Ti、及び微分時間Tdを変更する。これにより、制御系の内部状態をモデル化する現代制御理論を用いることなく、古典制御理論に基づくPID制御でも十分に安定した出力が得られるようになる。
【0025】
(トローリング復帰要求モードについて)
上記したトローリング運転モードは、漁を行う時に使用される。図13(a)は、漁を行うためのトローリング運転モードの使い方の一例を示している。この図面に示すように、例えば、A地点からB地点に向かって漁をしようとする場合、操船者は港からA地点までは、直結運転モードによって高速で移動し、A地点でリモコンダイヤル41を直結指示からトローリング制御指示に切り換える。
そして、操船者はA地点で、潮の流れ、風の向き、仕掛け(みち糸)の傾きなどをみてリモコンダイヤル41で船速をコントロールし、適当なトローリング速度が得られたら、そのトローリング速度(微速)で漁を行い、B地点まで来たら仕掛けを取り込み漁を一旦やめ、再度A地点まで戻り、A地点から漁を開始する。
B地点からA地点への移動中は漁を行わない場合、通常、B地点からA地点までは高速で移動する。従来のトローリング運転モードを持つ油圧クラッチの制御装置は、リモコンダイヤルを一度直結指示に戻しトローリング運転モードを完全に解除しなければ直結運転モードでの走航はできなかったので、操船者はトローリング運転モードを完全に解除していたが、トローリング運転モードを解除してしまうとA地点まで戻ってきた後に再びリモコンダイヤルを操作して風向き等の条件に適した速度にトローリング速度をコントロールしなければならず煩わしい。
本実施例に係る制御装置は、上記した煩わしい作業を無くすために、トローリング運転モードの状態からトローリング運転モードを完全に解除せずに直結運転モードに移行することができるトローリング復帰要求モードを持っている。
これは、図13(b)のフローチャートに示すように、リモコンダイヤル41の操作により、一度トローリング運転モードに入った後に、操船者がリモコンダイヤル41でトローリング運転モードを解除しない限り、前回のトローリング運転モードの状態に復帰可能な状態でスロットル操作によってトローリング運転モードと直結運転モードとを切換できるようにするもので、操船者がトローリング運転モード中にスロットル操作により加速した場合、又はエンジン回転数をトローリング上限回転数以上まで上げた場合、リモコンダイヤル41の操作に関係なく、トローリング運転モードから直結運転モードに油圧制御を切り換え、判定部74はトローリング運転モードに入るとトローリング復帰要求モードのフラグを立てる。また、モード判定部74は前記トローリング復帰要求モードのフラグが立っている時にエンジン回転数Neがトローリング上限回転数Nhより下がると油圧制御を直結運転モードからトローリング運転モードに切り換え、リモコンダイヤル41の設定値Nsを目標値とした油圧制御を行う。判定部74におけるトローリング復帰要求モードのフラグは、トローリング運転モードに復帰するか又はリモコンダイヤル41が直結指示の位置に戻された時にクリアされる。
これにより操船者はリモコンダイヤル41の設定値(即ち目標プロペラ回転数Ns)をキャンセルすることなく、スロットル操作のみで直結運転モードにて高速で漁終了位置から次の漁開始位置まで移動でき、漁開始位置でスロットル操作により再びエンジン回転数Neをトローリング上限回転数Nhまで下げると、前回設定した設定値Nsで再びトローリング走航をすることができる。
また、判定部74では、トローリング復帰要求のフラグが立っている時に、スロットル開度が開いてから一定時間が経過してもプロペラ回転数Npが、その時のエンジン回転数Neに対応する直結運転モードにおけるプロペラ回転数の所定割合以上上がっていない場合には、スロットルの開け方、即ちエンジン回転数の上がり方に、作動油圧の上がり方が追従できていないと判断して、ガラ音油圧計算76又はトローリング油圧計算部77の何れかに0油圧指示を出して、油圧制御用電磁弁15の減圧弁15bを全開にして油圧クラッチ2又は3の作動油圧を0油圧まで落とし、クラッチの動力伝達率を0%にする。これにより、例えば、操船者がトローリング運転モードから、油圧制御が間に合わない程急激にスロットルを開いた場合でも、クラッチが必要以上に滑り、耐摩耗性や焼損に対して悪い影響を与えることはなくなる。なお、この場合、判定部74はトローリング復帰要求モードのフラグをクリアするように設定しても、また、クリアしないように設定してもよいが、クリアしないように設定すれ場合は、操船者がスロットルを閉じてエンジン回転数Neを所定値以下まで下げた場合に、0油圧指示を解除して再びトローリング運転モードを実行できるように設定され得る。
さらに、このトローリング復帰要求モードはトローリング運転モードに入った時のシフト位置と同じシフト位置の時のみ有効とされる。その為、シフト位置が異なる場合には、リモコンダイヤルが(プロペラの)目標回転を設定していても、トローリングモードに入る事はなく、直結運転状態となる。つまり、シフトが前進位置にある時に、トローリング運転状態からスロットルを開くことによる加速を行い、直結運転状態に至った時には、スロットルを開いてエンジン回転数を上げても、シフト位置が前進位置でない限りは、リモコンダイヤルの示すトローリング運転のプロペラ回転数になることはない。
これは、シフト位置を前進、ニュートラル、後進と連続して操作した場合に、後進側でトローリングに入ったりすると、船の進行方向切換のレスポンスが悪くなるので、ここでのレスポンスの悪化を防止するために行われる措置である。
【0026】
(ソレノイド強制駆動制御モードについて)
また、トローリング運転モード中に、例えば、操船者の意志でリモコンダイヤルを0油圧に設定した後、又は上記したトローリング復帰要求モードの判定に引っかかって判定部74から0油圧指示が出され作動油圧が0油圧になった後、0油圧状態から例えばリモコンダイヤル41の操作により、又は判定部74における0油圧指示の解除により油圧クラッチ2,3を繋いで推進プロペラ14を回転させる場合、判定部74はソレノイド強制駆動制御モードに移行する。
油圧クラッチ2,3は、一度0油圧まで下がり、クラッチ板同士が動力伝達率が0%の状態まで離れてしまうと、クラッチ板が静止状態から回転運動を始める時の始動抵抗により、目標プロペラ回転数Nsが得られる圧力まで油圧を上げても油圧クラッチ2,3が直ぐには繋がらない。その結果、プロペラ回転数Npと目標プロペラ回転数Nsとの偏差が小さくならないのでトローリング油圧計算部77は目標パイロット油圧Ppをどんどん上げていき、目標パイロット油圧Ppが前記始動抵抗に抗してクラッチ板を回転させることのできる圧力に達すると油圧クラッチ2,3が繋がり、推進プロペラ14が回転し始める。油圧クラッチ2,3は始動抵抗を越えて、そのクラッチ板が回転し始めると、その後は、抵抗が低減するのでその回転数Npをスムーズに上げていくが、油圧クラッチ2,3の作動油圧が高いので目標プロペラ回転数Nsを越える。プロペラ回転数Npが目標プロペラ回転数Nsを越えると、トローリング油圧計算部77は、今度は目標パイロット油圧Ppを下げ始めるが、直ぐには作動油圧が下がらないので、作動油圧が目標プロペラ回転数Nsに見合う値まで下がるまでの間、プロペラ回転数Npはオーバシュートしてしまう。このような制御だと0油圧からの推進プロペラ14の始動に時間がかかり、かつ、プロペラ回転数Npがオーバーシュートしてしまうという問題が残る。
前記したソレノイド強制駆動制御モードは、この問題を解決するもので、図14のフローチャートにも示すように、油圧クラッチ2,3の作動油圧が一度0油圧まで下げられた後、0より大きい目標プロペラ回転数Nsが設定された場合、判定部74で判定されてこのソレノイド強制駆動モードに入り、ソレノイド駆動時間計算部78で、油圧クラッチ2,3を確実に繋ぐことのできる作動油圧が得られるパイロット油圧を目標値とした制御を一定時間行い、予め決めた一定時間が経過した後、前記パイロット油圧の目標値をトローリング運転モードの範囲内で予め決めた適当な値、好ましくは、トローリング制御範囲の中央油圧まで下げ、その値で制御を行う。この場合、リモコンダイヤル41で指示されている真の目標プロペラ回転数Nsに基づく油圧は無視される。そして、プロペラ回転センサ20が推進プロペラ14の回転を検出したら、例えば、推進プロペラ14の回転数が速くなったら、判定部74によりソレノイド強制駆動制御モードからトローリング運転モードに戻され、通常のトローリング制御を行う。
このように、0油圧から作動油圧を上げて推進プロペラ14を回転させ始める時に、通常のトローリング制御に関係なく一定時間高い目標値を設定して強制的に油圧制御電磁弁15を作動油圧が高なるように作動させることにより、0油圧からの推進プロペラ14の回転の立ち上げ時間が短縮でき、また、一定時間経過後、推進プロペラ14が回転していなくても作動油圧の目標値を強制的に下げて以後は、その下げられた目標値で推進プロペラ14が作動し始めるまで制御を行うことにより、プロペラ回転数Nsのオーバーシュートもなくなる。
【0027】
(油圧制御電磁弁のソレノイド劣化に対する補正について)
また、油圧制御電磁弁におけるソレノイドはある時間経過すると経時変化して劣化するため、ソレノイドの動作状態が変化し、オフ状態からオン状態にする際の動作が遅くなる。そのためソレノイド劣化量検出部79において、ソレノイドをある時間動作させた際の油圧の変化量を油圧センサ18で監視することによりソレノイドの劣化量を検出し、ソレノイド劣化情報は補正時間として学習値保存部80すなわち図7に示すEEP ROM51に取り込まれる。またこの補正時間は、予め知られているソレノイドの劣化値をソレノイドの駆動時間と作動油圧の上昇又は下降の幅で(予測し)、その予測値に満たない場合には1msづづずらして適当なところに設定するようにしてもよい。結果として得られる劣化値は、ソレノイド駆動時間の補正値として、SOL駆動時間計算部78で駆動時間に加算される。
【0028】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明の船舶推進装置用の油圧クラッチ制御方法においては、船舶の操船状態及び/又はエンジンの運転状態からエンジンの負荷状態を検出すると共に、エンジンの負荷状態に対応する推進プロペラの回転変動幅の目標値のマップを設け、前記検出したエンジンの負荷状態と前記マップとに基づいて推進プロペラの回転変動幅の目標値を求め、推進プロペラの実際の回転変動が前記目標値の範囲内に収まるように油圧クラッチを滑らすよう油圧クラッチの作動油圧操作量を決定するので、エンジンの負荷状態が変動してもガラ音の発生する回転数領域では確実に、歯打ち音を消去できるレベルまで油圧クラッチの作動油圧を下げて油圧クラッチを滑らせて歯打ち音を消去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施している船舶推進装置における舶用減速逆転機の要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明を実施している船舶推進装置における舶用減速逆転機の要部の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図3】本発明を実施している船舶推進装置における舶用減速逆転機の要部の構成を概略的に示す横断面図である。
【図4】舶用減速逆転機の油圧制御回路に設けられた前後進切換え弁を概略的に示す断面図である。
【図5】舶用減速逆転機の油圧制御回路を示す概略線図である。
【図6】舶用減速逆転機の油圧制御回路に設けられた減圧調整弁を拡大して示す概略断面図である。
【図7】油圧クラッチ制御装置と入出力信号との関係を示す図である。
【図8】図7における制御装置のデータの処理を示すブロック図である。
【図9】直結運転モードにおけるガラ音防止制御のブロック図。
【図10】図8に示した制御装置とは目標α値の決定の仕方がことなるガラ音制御方法のフローチャートである。
【図11】ガラ音防止制御中の進行方向切換え時間短縮及びハンチング防止の説明図。
【図12】トローリング運転モードにおけるトローリング制御のブロック図である。
【図13】(a)は一般的なトローリング運転モードの使い方の一例を示し、また、(b)はトローリング運転モードにおけるトローリング復帰要求モードのフローチャートである。
【図14】トローリング運転モードにおけるソレノイド強制駆動制御モードのフローチャートである。
【図15】船舶における船舶推進装置の構成を示す概略線図である。
【図16】従来の舶用減速逆転機の油圧制御系を示すブロック線図である。
【図17】従来の舶用変速逆転機の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
1:船舶用減速逆転機(マリンギヤ)
2:前進用クラッチ
2a:ピストン
3:後進用クラッチ
3a:ピストン
4:前進用ピストン
5:逆転軸起動ギヤ
6:駆動軸
7:作動油圧通路
8:潤滑油通路
9:後進用ピストン
10:被動ギヤ
11:逆転軸
12:推力軸
14:推進プロペラ
15:油圧制御電磁弁
15a:贈圧弁
15b:減圧弁
16:前後進切替弁
16a:第1開口
16b:第2開口
16c:第3開口
16d:第4開口
16e:第5開口
16f:第1弁(前進)
16g:第2弁(中立)
16h:第3弁(後進)
17:シフトスイッチ
18:油圧センサ
19:エンジン回転センサ
20:プロペラ回転センサ
21:オイル溜め
22:オイルポンプ
23:主油圧回路
24:クラッチ圧リリーフ弁
25 :潤滑油供給回路
26 :作動油戻し回路
27 :作動圧油供給回路
28 :プライマリ圧油供給回路
29:オイルクーラー
30:潤滑圧リリーフ弁
31:減圧調整弁
31a:小径シリンダ
31b:中径シリンダ
31c:大径シリンダ
31d:弁体
31e:パイロットピストン
31f:ばね
31g:作動圧油供給ポート
31h:作動圧油吐出ポート
31i:ドレインポート
31j:プライマリ油供給ポート
32:絞り
33:オイルフィルタ
34:パイロット圧リリーフ弁
35:前進用作動圧油供給回路
36:後進用作動圧油供給回路
37:油圧センサ(別の実施例)
38:油圧センサ(別の実施例)
39:油圧センサ(潤滑油用)
40:CPU
41:リモコンダイヤル
42:減筒運転スイッチ
43:灯船モードスイッチ
44:マップ補正ボリューム
45a:ソレノイド(増圧弁15a側)
45b:ソレノイド(減圧弁15b側)
46:表示装置
47:ギヤ比表示手段
48:マップ補正位置表示手段
49:フェール情報表示手段
51:EEP ROM
52:電源
53:電源回路
54:平均処理部
55:平均処理部
56:平均処理部
57:平均処理部
58:平均処理部
59:平均処理部
60:減速比演算部
61:スイッチ読込み処理部
62:実測α値計算部
63:加速度計算部
66:実測α値計算部
67:加速度計算部
68:目標回転数設定値計算部
69:補正係数計算部
70:シフト位置検出部
71:油圧計算部
72:電源電圧値計算部
73:基本目標α値決定部
74:モード判定部
75:電圧補正マップ
76:ガラ音制御用クラッチ作動油圧値計算部
77:トローリング制御用クラッチ作動油圧計算部
77a:補正用演算部
78:ソレノイド駆動時間計算部、
79:ソレノイド劣化量検出部
80:EEP ROMの学習値保存部
A:船舶
B:エンジン
C:推進プロペラ
D:変速機
D1:油圧クラッチ
D2:変速ギヤ
E:プロペラ軸
F:エンジン回転数検出器
G:プロペラ回転数検出器
H:前後進切替弁
I:減圧調整弁
J:調圧手段
K:切替手段
L:油圧供給手段
M:回転変動検出手段
N:目標プロペラ回転数Ns設定器
O:制御部
Claims (4)
- 船舶に搭載したエンジンに連結された入力軸と推進プロペラに連結された出力軸との間に、油圧クラッチを備えた変速機を設け、
油圧クラッチの作動油圧を制御することにより油圧クラッチを分離状態、直結状態及びすべり状態のいずれかに切換えると共に
油圧クラッチがすべり状態にある時の滑り程度を制御しギヤ歯打ち音を消去する
船舶推進装置用の油圧クラッチ制御方法において、
船舶の操船状態及び/又はエンジンの運転状態からエンジンの負荷状態を検出し、
エンジンの負荷状態に対応する推進プロペラの回転変動幅の目標値のマップを備え、
前記検出したエンジンの負荷状態と前記マップとに基づいて推進プロペラの回転変動幅の目標値を求め、
推進プロペラの実際の回転変動が前記目標値の範囲内に収まるように油圧クラッチを滑らすよう油圧クラッチの作動油圧操作量を決定する
ことを特徴とする船舶推進装置用の油圧クラッチ制御方法。 - 前記エンジンの負荷状態に対応する推進プロペラの回転変動幅の目標値のマップが、前記エンジンの負荷状態毎に設けられ、
前記検出したエンジンの負荷状態と前記各マップとに基づいて推進プロペラの回転変動幅の目標値を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の油圧クラッチ制御方法。 - 前記エンジンの負荷状態に対応する推進プロペラの回転変動幅の目標値のマップが、ある一つのエンジンの負荷状態に対して設けられ、
その他の前記負荷状態における推進プロペラの回転変動幅の目標値は、前記マップから得られる目標値にある係数をかけることにより決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の油圧クラッチ制御方法。 - 推進プロペラ回転変動幅の目標値の設定を、
エンジンの少なくとも複数気筒のうちの1気筒分の排気上死点から圧縮上死点までの期間より長い期間でのプロペラ回転変動を検出することにより、行う
ことを特徴とする請求項1に記載の船舶推進装置用の油圧クラッチ制御方法。
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1997
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