JP3967790B2 - メルカプトポリブテニル誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なメルカプトポリブテニル誘導体およびその新規な中間体の製造法に関するものである。特にゴムへの分散性が改善されたゴム加硫用助剤に適する新規なメルカプトポリブテニル誘導体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、アルケン類からチオアルケニル誘導体を合成する合成方法は、大別すると下記の3種に分けられ、それぞれ反応機構が相違することにより、得られる物質の構造が相違する。
(1)アルケン類へ硫化水素をイオン的に付加(Markownikow 則)
(2)アルケン類へ硫化水素を遊離基的に付加(逆 Markownikow 則)
(3)アルケン類へチオカルボン酸を付加後、脱アセチル化(逆Markownikow則)
【0003】
例えば、(1)の経路に関し、S. O. Jones, J. Am. Chem. Soc., 60 (1938) p. 2452 の文献が挙げられ、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−オクテン、シクロヘキセン等の不飽和炭化水素類に対して、180℃の反応温度で、硫化水素を作用させると、Markownikow 則に従った生成物が収率7〜23%の範囲で得られることが報告されている。
その外、例えば、米国特許第4,347,384号公報においては、出発原料として重合度6〜10のポリブテン(商品名:L−14およびL−50)をを用い、それにトリフルオロメチルスルホン酸を触媒として、1〜10気圧の加圧下で、反応温度−10〜70℃の範囲において硫化水素を付加させると、中間体として一旦ポリブテニルチオールが得られる。同報によれば、更にこのポリブテニルチオールに、メチレンブルーアセトン溶液中で酸素共存下にスチレンを作用させ、目的物質としてのβ−ポリブテニルスルホキシ−α−ヒドロキシエチルベンゼンを得ている。そして得られたβ−ポリブテニルスルホキシ−α−ヒドロキシエチルベンゼンは、易分解性を有する潤滑油成分の非イオン界面活性剤としてきわめて有用であるとされている。
【0004】
(2)の経路については、N. A. Level, J. Org. Chem., 34 (1969) p. 3112 の文献が挙げられ、1−クロロシクロヘキセンへの硫化水素の付加を光によって誘発することにより、主生成物として逆 Markownikow 則による cis−2−クロロシクロヘキサンチオールが得られることが報告されている。
【0005】
(3)の経路としては、F. G. Bordwell, J. Org. Chem., 30 (1965) p. 3764の文献が挙げられ、各種のオレフィン類に、触媒として光照射あるいは過酸化物を作用させた系内においてチオ酢酸を付加させると、遊離基的にアセチルチオ基が付加し、その後、希水酸化カリウムアルコール溶液によって脱アセチル化反応を行うことによりチオール化生成物を得る方法を報告している。
【0006】
しかしながら、ポリブテン重合体からメルカプトポリブテニル誘導体への合成はほとんど試みられていない。わずかに上記(1)の方法における米国特許第4,347,384号公報記載の方法が見られるのみである。
更に詳しく上記米国特許公報記載の方法を説明すると、▲1▼出発原料であるポリブテンが従来のポリブテンであって、内部オレフィン、特に二重結合がβ―位よりも更に内部に位置する内部オレフィンを多く含み、▲2▼酸触媒による硫化水素のイオン的付加反応を用いていることから、同公報記載のポリブテニルチオールにおける硫化水素の結合は Markownikow 則に従う付加形式によるものである。
しかしながら、このような構造のポリブテニルチオールには、ゴム加硫の助剤として特に改善を示す点や特徴的な点、例えば未加硫物におけるブルーミング現象を有効に抑制したり、その他加硫において有益な効果を発揮する等の特徴は見られない。
更にまた、ポリイソブチレンについては、従来、種々の触媒を使用してその構造、とりわけ二重結合の結合形式を変える試みが行われている。例えば米国特許第4,152,499号公報には、特にマレイン酸との反応性の大きい二重結合構造を有するポリイソブチレンの合成が提案されている。しかし、上記公報に記載されている構造のポリイソブチレンについては、チオール化物の合成やその利用については未だ開示されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、未加硫物におけるブルーミング現象を有効に抑制し、その他加硫において有益な効果を発揮する化合物を効率的に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の工程(I)および(II)からなることを特徴とするメルカプトポリブテニル誘導体の製造方法に関するものである。
工程(I):炭化水素主鎖の繰り返し構成単位の数の80%以上が下記式(1)で表され、一方の末端基が下記式(2)または(3)で表される構造からなるイソブチレン重合体に、
【化5】
(ただし、nは5以上、かつ200以下の整数を表す。)
【化6】
0.001〜100モル%の分子状酸素の共存下で、反応温度0〜100℃の範囲でチオカルボン酸を付加させることにより、炭化水素主鎖の繰り返し構成単位の80%以上が式(1)で表され、一方の末端基が下記式(4)または(5)で表される構造を有するアシルチオ誘導体を製造する工程、
【化7】
(式(4)および式(5)におけるRは、炭素数1から6の分岐または直鎖アルキル基を表す。)
工程(II):工程(I)で得られたアシルチオ誘導体に、反応温度0〜200℃の範囲において、ナトリウムアルコキシドを含むアルコール溶液中でエステル交換を行うことにより、炭化水素主鎖の繰り返し構成単位の80%以上が式(1)で表され、一方の末端基が下記式(6)または(7)で表される構造を有するメルカプトポリブテニル誘導体を製造する工程。
【化8】
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、更に本発明を詳細に説明する。
本発明のメルカプトポリブテニル誘導体は、次の通り特定構造のポリイソブチレンからアシルチオ誘導体を経て合成することができる。
【0010】
アシルチオ誘導体を合成するには、出発原料として次の特定構造のポリイソブチレンを用いる。
(1)炭化水素主鎖の繰り返し構成単位の数の80%以上が前記式(1)で表され、
(2)他の一方の末端基が下記式(2)または(3)で表される。
また、このポリイソブチレンは分子1個当たり1個の炭素−炭素二重結合を有するので、式(2)または(3)で表される末端基の有する二重結合以外には二重結合は有しない。なお、一方の末端基は tert−ブチル基であることが好ましい。
【0011】
【化9】
【0012】
上記特定構造のポリイソブチレンは、イソブチレンを単独で重合し、またはイソブチレンとブテン−1、ブテン−2またはこれらの混合物などのオレフィンとを適宜に共重合することにより製造することができる。共重合による場合には、イソブチレンは15モル%以上とすることが好ましい。イソブチレンの量がこれより少ないと、粘着性やゴムとの相溶性等が低下することがあるため好ましくない。
また重合に際しては、米国特許第4,152,499号公報記載の三フッ化ホウ素と水またはアルコールとの錯体触媒、米国特許第5,408,018号公報記載の第二級アルコールと三フッ化ホウ素との錯体触媒、または米国特許第5,068,490号公報記載の第三級炭素を有するエーテルと三フッ化ホウ素との錯体触媒などを用いることにより、上記特定構造のポリイソブチレンを製造することができる。
【0013】
次に上記特定構造のポリイソブチレンを原料とし、これにチオカルボン酸を付加する。ポリイソブチレン1モルに対して、チオカルボン酸を0.5〜1.5モルの範囲で供給し、好ましくは等モルで反応を行う。
【0014】
また、付加させるチオカルボン酸のアルキル基の炭素数は1〜6の範囲であり、アルキル基は直鎖型または分岐型のどちらでもよい。上記チオカルボン酸の具体例としては、チオ酢酸等が挙げられる。式(4)および式(5)の中のRは、上記チオカルボン酸の有するアルキル基と合致する。これらのチオカルボン酸類は、単独でまたは混合して付加反応に供することができる。
【0015】
具体的なチオカルボン酸の付加反応は、例えば0.001〜100%の酸素共存下において、反応温度0〜100℃の範囲で行うことにより、逆 Markownikow則に従う反応機構でラジカル反応として選択的付加反応が進行する。すなわち、前記式(2)の末端基の二重結合にチオカルボン酸が付加すれば、末端基は前記式(4)に変換され、また前記式(3)の末端基の二重結合にチオカルボン酸が付加すれば末端基は前記式(5)に変換される。
反応時間は特に制限はなく、通常1〜60分間の範囲内で反応は完結する。付加反応に際しては、必要により反応に不活性な溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、イソオクタン等の脂肪族炭化水素溶媒などを用いることができる。好ましくは反応基質自体を溶媒として付加反応を行う。
チオ酢酸を用いる場合の本発明の付加反応は、式(2)の末端基を有するポリイソブチレンについて以下のように進行する。
【0016】
【化10】
【0017】
なお、チオカルボン酸の付加反応を開始させるためには、酸素分子を共存させることが好ましい。光照射や過酸化物の添加によっても付加反応は進行するが、光照射は設備などが高価であり製造コストを増大させる。また過酸化物の添加は製品中へ過酸化物の分解物が混入するなどの問題を生ずるため好ましくない。このような問題のない分子状酸素を用いる本発明の方法はより有用な方法である。
分子状酸素を共存させる場合の反応機構は完全に明らかではないが、酸素分子がポリイソブチレンとチオカルボン酸の間に介在して、触媒的な作用を及ぼしていると推察される。ただし、酸素を系内に共存させると爆発の可能性もあるので、酸素濃度を約5%以下とすることにより、更に安全に付加反応を行うことができる。
【0018】
このようにして製造されるアセチルチオ誘導体は、常温常圧下において安定に存在し得る物質である。従って、製造されたアセチルチオ誘導体は適宜に溶媒を除去した後、常法の分離手段、例えばシリカゲルクロマトグラフィーにより容易に単離回収することができる。
【0019】
次いで、上記のようにして得られたアセチルチオ誘導体を、塩基性溶液によって脱アシル(例えば、脱アセチル化)することにより本発明のメルカプトポリブテニル誘導体が得られる。
具体的な脱アセチル化方法は、アセチルチオ誘導体を必要により適当な炭化水素溶剤で希釈した後、常圧下において、反応温度0〜200℃の範囲で、ナトリウムアルコキシドを含有するアルコールと反応させる。これにより各末端基のアセチルチオ基がエステル交換されて、高収率でメルカプト基を有するメルカプトポリブテニル誘導体に変換する。反応時間は特に限定されないが、通常は1〜 60分間である。
上記の脱アセチル化反応は、いわゆるエステル交換反応であり、ナトリウムアルコキシドがエステル交換の塩基触媒として作用する。その触媒機構としては、エステル化合物のアルコール部位にアルコキシドが導入されることによって反応が完結し、遊離したナトリウムに対してアルコールが反応し、新たなナトリウムアルコキシドが再生して反応が進行すると考えられる。
【0020】
なお、本発明の第1の工程で製造されるアシルチオ誘導体はアルコールに難溶である。そのため、希水酸化カリウムアルコール溶液を用いる脱アセチル化反応(前記 F. G. Bordwell, J. Org. Chem., 30 (1965) p. 3764 の文献)を本発明に適用すると、水酸化カリウムの塩基作用が働かないため、脱アセチル化反応はほとんど進行しない。また、アセチルチオ誘導体の良溶媒であるへキサン等の炭化水素類やクロロホルム等を用いると、これらの溶媒には水酸化カリウムが均一に溶解しないため、脱アセチル化が困難となる。
しかし、本発明の方法を採用することにより、このような困難は解消される。
【0021】
本発明における脱アセチル化反応は、アセチルチオ誘導体に難溶で、かつアセチルチオ誘導体から脱離したエステル化合物には易溶なアルコールの存在下で行う。共存させたアルコールは、反応生成物を水洗することにより容易に除去されるので、生成したエステル化合物も水洗の際にアルコールとともに容易に除去される。
【0022】
また、ナトリウムアルコキシドを含むアルコールとしては、上記限定に従う限り特に制限はなく、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどいずれのアルコールも使用することができる。しかしながら、アセチルチオ誘導体を溶解し難い点および経済性を考慮すると、メタノールを使用することが好適である。アルコールは、反応原料のチオアルキル誘導体に対して等モル以上用いる。しかしあまり多量のアルコールを用いることは不経済であるため、通常は100倍モル以下とする。
【0023】
ナトリウムアルコキシドも特に限定はないが、好ましくはナトリウムアルコキシドを溶解し得るアルコールから誘導されるアルコキシドが好ましい。従って、好ましくはナトリウムメトキシドを用いる。ナトリウムアルコキシドは、触媒的に作用するためその使用量は少なく、例えば使用するアセチルチオ誘導体に対して0.01〜50モル%の量で十分である。
【0024】
また高分子量のアセチルチオ誘導体を扱う場合には、反応中の界面での接触効率が液粘度に左右されることや、副生したエステル化合物の除去等の問題から、アセチルチオ誘導体を適宜に反応に不活性な溶媒により希釈することが好ましい。希釈には、へキサン等の安価で適当な低沸点を有する炭化水素溶剤を使用することができる。
【0025】
脱アセチル化反応後は、適宜にナトリウムアルコキシドを水洗および中和する。この水洗により余剰のアルコールを除去することが好ましい。その後溶媒抽出、乾燥等の適宜の分離回収手段により、目的物としてのメルカプトポリブテニル誘導体を得ることができる。
【0026】
本発明の方法により製造されるアシルチオ誘導体やメルカプトポリブテニル誘導体は、単体硫黄を初めとする各種の加硫剤、例えばチウラム化合物、多硫化ゴム、酸化亜鉛、キノンジオキシム、変性アルキルフェノール樹脂、有機過酸化物等の存在により加硫性を示す。この場合に、加硫剤は本発明のアシルチオ誘導体やメルカプトポリブテニル誘導体100重量部当たり、1〜100重量部が用いられる。
【0027】
また、硫黄硬化性ゴム100重量部に対して、本発明におけるアシルチオ誘導体、メルカプトポリブテニル誘導体またはそれらの混合物1〜100重量部、好ましくは1〜12重量部および好ましくは加硫剤を加えることにより新規な加硫性ゴム組成物とすることもできる。この場合、加硫剤は0.1〜20重量部を用いることができる。
【0028】
上記硫黄硬化性ゴムとは、硫黄を加硫剤として用い硬化することが可能なゴムであり、例えばジエン類、好ましくはブタジエン、イソプレン等の炭素原子数4〜8個の1,3−鎖状共役ジエンからなるゴム状物質が例示される。具体的な例としては、天然ゴム、ポリブタジエン−1,3、ポリイソプレン、ポリ−2,3−ジメチルブタジエン−1,3、ポリ−2−クロロブタジエン−1,3等が挙げられる。その他の有用なゴムとしては、1,3−ジエン類の重合物、あるいはこれらのジエンと、その共重合可能のモノマー、例えばイソブチレン、スチレン、アクリロニトリル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、4−ビニルピリジン等の少なくとも1種のコポリマーまたはターポリマー等のゴムが挙げられる。
【0029】
更に、硬化可能の二重結合すなわち有効不飽和結合を有するゴム状のポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタンおよびポリエステルアミドウレタンなども使用することができる。上記のゴム類から再生した再生ゴムもまた使用することができる。
上記ゴム類の2種類以上の混合物も、本発明において硫黄硬化性ゴムとして使用することができる。好ましいゴム類としては、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−共役ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などが単独でまたは混合物として用いられる。
【0030】
なお、ゴム加硫において公知の他の配合成分、例えば強化剤、フィラー(カーボンブラック、シリカ等)、加硫促進剤、加硫遅延剤、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、樹脂、染料、着色顔料等も適宜の量で、本発明の方法による組成物と共に用いることができる。
【0031】
本発明の方法により製造されるメルカプトポリブテニル誘導体等を含む加硫性組成物は、加硫製品を製造するために、各配合成分を適当な混合装置、例えばミル、バンバリーミキサー等で混合することができる。
また得られる未加硫物は約120〜180℃、好ましくは約130〜160℃の温度で加熱することにより、加硫することができる。すなわち、メルカプトポリブテニル誘導体等を含有するゴムストックが加熱されると、メルカプトポリブテニル誘導体等の中の硫黄原子あるいは必要に応じて添加した単体硫黄原子が、硫黄硬化性ゴムと反応して容易に三次元的に架橋結合を形成することにより加硫ゴム性能が発揮される。
【0032】
更に、メルカプトポリブテニル誘導体等を用いることにより、従来技術的課題であった未加硫ゴムの粘性を向上させることが可能である。これはポリブテニル分子鎖がゴム成分に均一に相溶するため、ポリブテニル分子鎖の特徴である粘接着性が効果的に発揮されるためと考えられる。この粘接着性の効果は、メルカプトポリブテニル誘導体等の重合度に依存しており、重合度が高くなればポリブテニル分子鎖の弾力性は上昇するが、それに伴って粘接着性は低下する傾向がある。そこで、粘接着効果を十分発揮させるためには、前記式(1)に示す繰り返し構成単位の数nは、0以上、好ましくは5以上、更に好ましくは16以上でかつ200以下の整数とする。また、イソブチレン重合体の分子量としては、500〜15,000が適当である。
【0033】
本発明の方法により製造されるメルカプトポリブテニル誘導体等は、各種の加硫製品、例えばタイヤトレッド、タイヤ側壁、カーカス用ストック、V−ベルト、グローブ、靴製品、印刷機用ローラー、着色ゴム物品等を製造する際に各種の助剤として好適に用いられる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
<製造例1>
〔高反応性ポリブテン(Mn=1,096)の製造〕
三フッ化ホウ素エタノール錯体触媒により純イソブチレンを重合させることによって、Mn=1,096、平均重合度20のポリイソブチレンを得た。
その化学組成は、式(A)の構造式のポリイソブチレン約88モル%および式(B)の構造式のポリイソブチレン約12モル%からなるものであった。
【0035】
【化11】
【0036】
<比較製造例>
〔従来法ポリブテンの製造〕
塩化アルミニウム触媒によりイソブチレンと少量のブテン−1およびブテン−2とを含むC4留分を重合させた。この重合においては主としてイソブチレンが重合するが、一部停止反応の位置の移動や異性化反応の生起、n−ブテンの共重合等により多くの結合形式のもの生成した。
ここで分析により得られたポリブテンの化学構造は、前記式(A)の構造のポリイソブチレンが約4モル%であり、前記式(B)の構造のポリイソブチレンは検出できなった。また二重結合に着目すると、下記式(C)で表される二重結合の形式の重合体が約64モル%および下記式(D)で表される二重結合の形式の重合体が約20モル%であり、両者で大部分を占めており、残り12モル%は構造不明であった。
数平均分子量は455であった。すなわち8量体を主体とするものである。
【0037】
【化12】
(ただし、Rはポリマー残基であり、R1、R2およびR3はアルキル基である。)
【0038】
<製造例2>
〔高反応性ポリブテン(Mn=10,085)の製造〕
前記製造例1と同様にして三フッ化ホウ素エタノール錯体触媒により純イソブチレンを重合させることによりポリイソブチレンを得た。ただし、重合温度をわずかに低くしたので、平均重合度180、Mn=10,085のポリイソブチレンが得られた。
その化学組成は、前記式(A)の構造式のポリイソブチレンが約84モル%、式(B)の構造式のポリイソブチレンが約16モル%であった。
【0039】
<実施例1>
〔ジイソブチレンへのチオ酢酸の付加反応〕
合成装置として、可変式の攪拌機、反応温度指示計、反応滴下口、還流器およびガス注入口を備えた内容積1リットルの4つ口フラスコを恒温調節が可能な熱媒浴内に設置した。そのフラスコ内に、下記のオレフィン構造比率からなるジイソブチレン(特級試薬、東京化成工業(株)製)336.6g(3.0mol)を仕込み、液温度を70℃に維持した。次いで、ジイソブチレンを攪拌し、酸素1%と窒素99%の混合ガスをガス注入口から吹き込みながら、反応系内にチオ酢酸(特級試薬、東京化成工業(株)製)228.4g(3.0mol)を徐々に30分間で滴下し、70℃の反応温度で1時間攪拌を継続した。
(ジイソブチレンのオレフィン構造比率)
式(A)(n=0): 約75%
式(B)(n=0): 約23%
内部オレフィン(炭素数8):約2%
その後、反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、約2%のジイソブチレンが残存しており、残りの反応液は約90%の式(E)(n=0)および式(F)(n=0)で表されるアセチルチオ誘導体の混合物と約8%の不明物質とに転化していた。
【0040】
【化13】
【0041】
得られたアセチルチオ化物の混合物を還流比の調節可能な精密蒸留装置によって分別すると、式(E)(n=0)および式(F)(n=0)で示される構造のものが80:20の成分比で得られた。
次いで、単離された式(E)(n=0)および式(F)(n=0)で表されるアセチルチオ誘導体について、質量分析(GC−MS)装置、赤外分光(IR)装置、1次元および2次元の核磁気共鳴(NMR)装置により、確実な構造決定を行った。
なお、得られた生成物は透明な液体であり、これについて微量硫黄分析装置を用いて硫黄分を測定したところ、17.0重量%であった。
また、GPCによる分子量は、アセチルチオ基の付加に対応して増加していた。
【0042】
式(E)(n=0)に示すアセチルチオ誘導体の分析結果は次の通りである。
(1)GC−MS[M/Z]測定
相対強度:188(M+、0.5)、145(2)、131(30)、113(25)、57(93)、43(100)
(2)IR測定
波数(cm-1):2966、1710、1135
(3)1H−NMR[CDCl3、500MHz]測定
化学シフト(ppm)(分裂パターン、プロトン数、結合定数):0.89〜 1.31(br、15H)、2.32(s、3H)、2.71(dd、1H、J=15.3、7.6)、2.93(dd、1H、J=9.5、5.5)
(4)13C−NMR[CDCl3、125MHz]測定
化学シフト(ppm)(炭素番号、炭素級数(注)):22.1(5、s)、 29.8(8、s)、29.9(1、s)、30.6(4、t)、30.9(2、q)、38.1(6、d)、50.1(3、d)、195.5(7、q)
(注):炭素級数はDEPT測定(NMR分析の一つ)によって決定し、表示は以下の通りである。
s:1級、d:2級、t:3級およびq:4級の各炭素を示す。
【0043】
式(F)(n=0)に示すアセチルチオ誘導体の分析結果は次の通りである。
(1)GC―MS[M/Z]測定
相対強度:188(M+、5)、145(10)、131(20)、89 (67)、57(68)、43(100)
(2)IR測定
波数(cm-1):2970、1708、1137
(3)1H―NMR[CDCl3、500MHz]測定
化学シフト(ppm)(分裂パターン、プロトン数、結合定数):0.89〜 1.31(br、16H)、2.36(s、3H)、3.44(d、1H、J= 2.1)
(4)13C―NMR[CDCl3、125MHz]測定
化学シフト(ppm)(炭素級数(注)):19.4(s)、23.3(s)、 28.2(s)、28.6(t)、35.7(q)、60.9(t)、208.0(q)
(注):炭素級数はDEPT測定によって決定し、表示は以下の通りである。
s:1級、d:2級、t:3級およびq:4級の各炭素を示す。
【0044】
<比較例1>
〔ジイソブチレンへのチオ酢酸の付加反応(系内酸素なし)〕
合成装置は実施例1と同一のものを用いた。
フラスコ内に、実施例1と同じジイソブチレンを同一量仕込み、液温度を70℃に維持した。本比較例では、ジイソブチレンを攪拌し、純窒素ガスのみをガス注入口から吹き込みながら、系内に実施例1の場合と同一の量のチオ酢酸を徐々に30分間で滴下し、70℃の反応温度で1時間攪拌を継続した。
その後、反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、約1%が前記式(E)(n=0)および式(D)(n=0)のアセチルチオ誘導体の混合物に転化したのみであり、約99%のジイソブチレンが未反応のまま残存していた。
【0045】
<実施例2>
〔アセチルチオ誘導体の脱アセチル化反応〕
合成装置は、実施例1と同様の設備を装着した内容積1リットルの4つ口セパラブルフラスコを用いた。
上記フラスコ内に、実施例1において合成したアセチルチオ誘導体の混合物〔式(E)(n=0)および式(F)(n=0)の構造の混合比が80:20〕188.3g(1.0mol)を仕込み、液温度を50℃に維持した。次いで、ナトリウムメトキシドを2%含有するメタノール(いずれも特級試薬、キシダ化学(株)製)溶液188.3gを徐々に滴下し、50℃の反応温度で煮沸還流した。
その後、希塩酸で余剰のナトリウムメトキシドを中和し、反応液の水洗を3回以上繰り返して、有機相を分液ロートで分別した。反応生成物を含有する有機相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、式(E)(n=0)および式(F)(n=0)で表されるアセチルチオ誘導体の混合物が下記式(G)(n=0)および式(H)(n=0)で表されるチオール化物の混合物に定量的に転化していることが判明した。
【0046】
【化14】
【0047】
得られたチオール化物の混合物を、還流比の調節が可能な精密蒸留装置によって分別すると、式(G)(n=0)および式(H)(n=0)で示される構造のものが80:20の成分比で得られ、全収率が98%であった。
次いで、単離された式(G)(n=0)および式(H)(n=0)のチオール化物について、構造確認のため、実施例1と同様の分析を行った。その結果、式(E)(n=0)および式(F)(n=0)のアセチルチオ誘導体において、IRおよびNMRの結果によりカルボニル基の消失が、NMRの結果によりアセチルチオ基に含まれるメチル基に特有ピークの消失が、またIRおよびNMRの結果により新たなメルカプト基の出現が、更に2次元NMRの結果によりイソブチレン骨格の保持が確認され、式(G)および(H)で示されるチオール化物の構造を確認することができた。
なお、得られた生成物は透明な液体であり、これについて微量硫黄分析装置を用いて硫黄分を測定したところ、21.9重量%であった。
また、GPCによる分子量は、アセチルチオ基のエステル交換に対応して減少していた。
【0048】
式(G)(n=0)に示すメルカプトポリブテニル誘導体の分析結果は次の通りである。
(1)IR測定
波数(cm-1):2966、2600、1480
(2)1H―NMR[CDCl3、500MHz]測定
化学シフト(ppm)(分裂パターン、プロトン数、結合定数):0.89〜 1.38(br、15H)、1.66(br、1H)、2.45(br、2H)
(3)13C―NMR[CDCl3、125MHz]測定
化学シフト(ppm)(炭素番号、炭素級数(注)):21.43(s)、29.96(s)、30.90(g)、32.68(t)、33.68(d)、49.55(d)
(注):炭素級数はDEPT測定によって決定し、表示は以下の通りである。
s:1級、d:2級、t:3級およびq:4級の各炭素を示す。
【0049】
式(H)(n=0)に示すメルカプトポリブテニル誘導体の分析結果は次の通りである。
(1)IR測定
波数(cm-1):2970、2557、1480
(2)1H―NMR[CDCl3、500MHz]測定
化学シフト(ppm)(分裂パターン、プロトン数、結合定数):0.89〜 1.31(br、16H)、2.24(br、1H)、2.62(dd、1H、J=8.7、1.8)
(3)13C―NMR[CDCl3、125MHz]測定
化学シフト(ppm)(炭素級数(注)):17.41(s)、24.49(t)、28.38(s)、35.84(s)、58.96(t)
(注):炭素級数はDEPT測定によって決定し、表示は以下の通りである。
s:1級、d:2級、t:3級およびq:4級の各炭素を示す。
【0050】
<比較例2>
〔アセチルチオ誘導体の脱アセチル化反応〕
合成装置は、実施例1と同様の設備を装着した内容積1リットルの4つ口セパラブルフラスコを用いた。
上記フラスコ内に、実施例1において合成したアセチルチオ誘導体の混合物〔式(E)(n=0)および式(F)(n=0)の構造の混合比が80:20〕188.3g(1.0mol)を仕込み、液温度を50℃に維持した。本比較例では、20%水酸化カリウム含有−メタノール溶液188.3gを徐々に滴下し、50℃の反応温度で煮沸還流した。
その後、希塩酸で余剰の水酸化カリウムを中和し、反応液の水洗を3回以上繰り返して、有機相を分液ロートで分別した。
反応生成物を含有する有機相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、脱アセチル化反応は全く進行しておらず、原料のアセチルチオ誘導体のみが未反応のまま検出された。
【0051】
<実施例3>
〔高反応性ポリブテン(Mn=1,096)へのチオ酢酸の付加反応〕
合成装置および実験手法は、実施例1と同様である。
フラスコ内に、以下の化学構造比率を有する製造例1で得られた高反応性ポリブテン(平均重合度約20、Mn=1,096)548g(0.5mol)を仕込み、液温度を70℃に維持した。 次いで、高反応性ポリブテンを攪拌し、純酸素1%と純窒素99%の混合ガスをガス注入口から吹き込みながら、その系内にチオ酢酸(特級試薬、東京化成工業(株)製)38.1g(0.5mol)を徐々に30分間で滴下し、70℃の反応温度で1時間攪拌を継続した。
(高反応性ポリブテンの化学構造比率)
式(A):約88%
式(B):約12%
その後、反応生成物を薄層クロマトグラフィーで定量分析したところ、約12%の高反応性ポリブテンが残存しており、残りの反応物は式(E)および(F)で表されるアセチルチオ誘導体の混合物約86%と、不明物質約2%とに転化していた。
上記のアセチルチオ誘導体混合物を分別すると、式(E)および(F)で示される構造のものが94:6の成分比で得られた。
次いで、単離された式(E)および(F)で表されるアセチルチオ誘導体についてを赤外分光(IR)装置、1次元および2次元の核磁気共鳴(NMR)装置によりその構造決定を行った。
【0052】
式(E)に示すアセチルチオ誘導体の分析結果は次の通りである。
(1)IR測定
波数(cm-1):2966、1710、1480
(2)1H−NMR[CDCl3、500MHz]測定
化学シフト(ppm)(分裂パターン、結合定数):0.89〜1.31(br)、2.32(s)、2.71(dd、J=15.3、7.6)、2.93(dd、J=9.5、5.5)
(3)13C−NMR[CDCl3、125MHz]測定
化学シフト(ppm)(特定官能基、炭素級数(注1)):22.3(s)、29.0(s)、29.2(s)、30.4(−CH3、s)、30.7(−CH 3 (注2)、s)、32.3(t)、35.7(d)、37.7(−C−、q)、38.0(−C−、q)、52.1(3、d)、58.6(−CH2−、d)、59.3(−CH 2 −、d)、195.0(−CO、q)
(注1):炭素級数はDEPT測定によって決定し、表示は以下の通りである。
s:1級、d:2級、t:3級およびq:4級の各炭素を示す。
(注2):下線はイソブチレン重合体骨格中の結合基を示す。
【0053】
上記で得られた式(E)で表されるアセチルチオ誘導体について測定された赤外吸収、1H−NMRおよび13C−NMRの各スペクトルを、図1、図2および図3にそれぞれ示す。
なお、得られた生成物は透明な粘稠液体であり、これについて微量硫黄分析装置を用いて硫黄分を測定したところ、2.7重量%であった。
また、GPCによる分子量は、アセチルチオ基の付加に対応して増加していた。
【0054】
式(F)に示すアセチルチオ誘導体の分析結果は次の通りである。
(1)IR測定
波数(cm-1):2970、1708、1475
(2)1H−NMR[CDCl3、500MHz]測定
化学シフト(ppm)(分裂パターン、プロトン数、結合定数):0.89〜 1.31(br)、2.36(s)、3.44(d、J=2.1)
(3)13C−NMR[CDCl3、125MHz]測定
化学シフト(ppm)(炭素級数(注1)):19.4(s)、23.3(s)、28.2(s)、28.6(t)、30.4(−CH3、s)、30.7(−CH 3 (注2)、s)、 35.7(q)、37.7(−C−、q)、38.0(−C−、q)、58.6(−CH2−、d)、59.3(−CH 2 −、d)、60.9(t)、208.0(q)
(注1):炭素級数はDEPT測定によって決定し、表示は以下の通りである。
s:1級、d:2級、t:3級およびq:4級の各炭素を示す。
(注2):下線はイソブチレン重合体骨格中の結合基を示す。
【0055】
<比較例3>
〔従来ポリブテンへのチオ酢酸の付加反応〕
合成装置および実験手法は、実施例3と同様である。
フラスコ内に、比較製造例で得た下記の化学構造比率を有するでポリブテン(平均重合度約20)548g(0.5mol)を仕込み、液温度を70℃に維持した。次いで、実施例3と同様に、ポリブテンを攪拌し、純酸素1%と純窒素99%の混合ガスをガス注入口から吹き込みながら、その系内にチオ酢酸38.1g(0.5mol)を徐々に30分間で滴下し、70℃の反応温度で1時間攪拌を継続した。
(ポリブテンの化学構造比率)
式(A) : 約4%
式(B) : 0%
式(C)の内部3置換オレフィン:約64%
式(D)の内部4置換オレフィン:約20%
構造不明 :約12%
その後、反応生成物を薄層クロマトグラフィーで定量分析したところ、約96%のポリブテンが残存しており、約4%分のみがアセチルチオ誘導体の混合物に転化していることが判明した。
【0056】
<実施例4>
〔アセチルチオ誘導体の脱アセチル化反応〕
合成装置および実験手法は、実施例2と同様である。
フラスコ内に、実施例3において合成した式(E)および(F)で表されるアセチルチオ誘導体の混合物〔式(E):式(F)の混合比が94:6〕586g(0.5mol)と、液粘度を低下させるための同量のn−へキサンとを仕込み、実施例2と同様に2%ナトリウムメトキシド含有−メタノール溶液で脱アセチル化反応を行った。その後、同様に中和および洗浄処理を行い、有機相を分液ロートで分別した。
反応生成物を含有する有機相を薄層クロマトグラフィーで定量分析したところ、式(E)および(F)で示されるアセチルチオ誘導体の混合物が、式(G)および(H)で表されるチオール化物の混合物に定量的に転化していることが判明した。
この有機相からn−へキサンを留去した後、上記混合物を分別すると、式(G)および(H)で示される構造のものが94:6の成分比で得られ、全収率が98%であった。
次いで、単離された式(G)および(H)のチオール化物について、実施例2と同様の分析を実施した。その結果、式(E)および(F)のアセチルチオ誘導体において、IRおよびNMRの結果によりカルボニル基の消失が、NMRの結果によりアセチルチオ基に含まれるメチル基に特有のピークの消失が、またIRおよびNMRの結果により新たなメルカプト基の出現が、更に2次元NMRの結果によりイソブチレン骨格の保持が確認され、式(G)よび(H)で示されるチオール化物の構造を確認することができた。
【0057】
式(G)に示すメルカプトポリブテニル誘導体の分析結果は次の通りである。
(1)IR測定
波数(cm-1):2966、2600、1480
(2)1H−NMR[CDCl3、500MHz]測定
化学シフト(ppm)(分裂パターン、プロトン数、結合定数):0.89〜 1.38(br)、1.66(br)、2.45(br)
(3)13C−NMR[CDCl3、125MHz]測定
化学シフト(ppm)(炭素番号、炭素級数(注1)):21.6(s)、29.2(s)、30.7(−CH3、s)、31.1(−CH 3 (注2)、s)、32.4(t)、32.5(q)、33.8(d)、37.7(−C−、q)、38.0(−C−、q)、51.7(d)、 59.3(−CH2−、d)、59.4(−CH 2 −、d)
(注1):炭素級数はDEPT測定によって決定し、表示は以下の通りである。
s:1級、d:2級、t:3級およびq:4級の各炭素を示す。
(注2):下線はイソブチレン重合体骨格中の結合基を示す。
【0058】
上記で得られた一般式(G)で表されるメルカプトポリブテニル誘導体について測定した赤外吸収、1H−NMRおよび13C−NMRの各スペクトル、ならびに13C―NMRにより求めたHMQCスペクトルを、図4から図7にそれぞれ示す。
なお、得られた生成物は透明な粘稠液体であり、これについて微量硫黄分析装置を用いて硫黄分を測定したところ、2.8重量%であった。
また、GPCによる分子量は、アセチルチオ基のエステル交換に対応して減少していた。
【0059】
式(H)に示すメルカプトポリブテニル誘導体の分析結果は次の通りである。
(1)IR測定
波数(cm-1):2970、2557、1480
(2)1H−NMR[CDCl3、500MHz]測定
化学シフト(ppm)(分裂パターン、プロトン数、結合定数):0.89〜 1.31(br)、2.24(br)、2.62(dd、J=8.7、1.8)
(3)13C−NMR[CDCl3、125MHz]測定
化学シフト(ppm)(炭素級数(注1)):14.1(s)、17.5(s)、24.6(t)、30.7(−CH3、s)、31.1(−CH 3 (注2)、s)、37.7(−C−、q)、38.0(−C−、q)、58.96(t)、59.3(−CH2−、d)、59.4(−CH 2 −、d)
(注1):炭素級数はDEPT測定によって決定し、表示は以下の通りである。
s:1級、d:2級、t:3級およびq:4級の各炭素を示す。
(注2):下線はイソブチレン重合体骨格中の結合基を示す。
【0060】
<実施例5>
〔高反応性ポリブテン(Mn=3,667)へのチオ酢酸の付加反応〕
合成装置および実験手法は、実施例3と同様である。ただし、原料を下記の化学構造比率で配合した高反応性ポリブテン(平均重合度約65、Mn=3,667)に変え、等モル数のチオ酢酸(特級試薬、東京化成工業(株)製)を加えて付加反応を行った。
(高反応性ポリブテンの化学構造比率)
式(A):約84%
式(B):約16%
その後、反応生成物を薄層クロマトグラフィーで定量分析したところ、約18%の高反応性ポリブテンが残存しており、残りの反応物は約80%の式(E)および(F)で表されるアセチルチオ誘導体の混合物と、約2%の不明物質に転化していた。
このアセチルチオ誘導体混合物を分別すると、式(E)および式(F)に示される構造のものが90:10の成分比で得られた。
次いで、単離されたアセチルチオ化物を実施例3と同様に、赤外分光(IR)法、1次元および2次元の核磁気共鳴(NMR)法により分析を実施したところ、実施例3と同一のデータが得られた。このことから、式(E)および(F)に示される構造を有することが確認された。
なお、得られた生成物は透明な粘稠液体であり、これについて微量硫黄分析装置を用いて硫黄分を測定したところ、0.85重量%であった。
また、GPCによる分子量は、アセチルチオ基の付加に対応して増加していた。
【0061】
<実施例6>
〔アセチルチオ化物の脱アセチル化反応〕
合成装置および実験手法は、実施例4と同様である。
フラスコ内に、実施例5において合成したアセチルチオ誘導体の混合物〔式(E)および式(F)の構造の混合比が90:10〕を仕込み、実施例4と同様に2%ナトリウムメトキシド含有−メタノール溶液で脱アセチル化反応を行い、同様に中和および洗浄処理を行った後、有機相を分液ロートで分別した。
反応生成物を含有する有機相を薄層クロマトグラフィーで定量分析したところ、式(E)および(F)で示されるアセチルチオ誘導体の混合物が、式(G)および(H)で表されるチオール化物の混合物に定量的に転化していることが判明した。
この有機相からn−へキサンを留去した後、混合物を分別すると、式(G)および(H)で示される構造のものが90:10の成分比で得られ、全収率が98%であった。
次いで、単離されたチオール化物について、実施例4と同様の分析を行った。その結果、アセチルチオ化物において、IRおよびNMRの結果によりカルボニル基の消失が、NMRの結果によりアセチルチオ基のメチル基に特有なピークの消失が、またIRおよびNMRの結果により新たなメルカプト基の出現が、更に2次元NMRの結果によりイソブチレン骨格の保持が確認され、式(G)および(H)で示されるチオール化物の構造を確認することができた。
なお、得られた生成物は透明な粘稠液体であり、これについて微量硫黄分析装置を用いて硫黄分を測定したところ、0.86重量%であった。
また、GPCによる分子量は、アセチルチオ基のエステル交換に対応して減少していた。
【0062】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、ゴム加硫においてゴム薬品の分散性を向上する性能に優れたアシルチオ誘導体や、メルカプトポリブテニル誘導体を高収率かつ安価に製造することができる。
また本発明の方法により製造されるアシルチオ誘導体やメルカプトポリブテニル誘導体は、ゴム加硫剤、重合調整剤、着臭剤原料、潤滑油添加剤、飼料添加剤または農薬、医薬品等の広範囲にわたって有用な化合物である。
【図面の簡単な説明】
【図1】式(E):アセチルチオ誘導体の赤外吸収スペクトルの測定結果である。
【図2】式(E):アセチルチオ誘導体の1H−NMRの測定結果である。
【図3】式(E):アセチルチオ誘導体の13C−NMRの測定結果である。
【図4】式(G):メルカプトポリブテニル誘導体の赤外吸収スペクトルの測定結果である。
【図5】式(G):メルカプトポリブテニル誘導体の1H−NMRの測定結果である。
【図6】式(G):メルカプトポリブテニル誘導体の13C−NMRの測定結果である。
【図7】式(G):メルカプトポリブテニル誘導体のHMQC法による測定結果である。
Claims (1)
- 下記の工程(I)および(II)からなることを特徴とするメルカプトポリブテニル誘導体の製造方法、
工程(I):炭化水素主鎖の繰り返し構成単位の数の80%以上が下記式(1)で表され、一方の末端基が下記式(2)または(3)で表される構造からなるイソブチレン重合体に、
工程(II):工程(I)で得られたアシルチオ誘導体に、反応温度0〜200℃の範囲において、ナトリウムアルコキシドを含むアルコール溶液中でエステル交換を行うことにより、炭化水素主鎖の繰り返し構成単位の80%以上が式(1)で表され、一方の末端基が下記式(6)または(7)で表される構造を有するメルカプトポリブテニル誘導体を製造する工程。
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