JP3967394B2 - ワークの組立方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧シリンダ等の複数のアクチュエータからなるロボットでワークを組み立てるワークの組立方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
油圧シリンダ等のアクチュエータは、そのサイズに比べて大きな出力を取り出すことができるので、建設等の重量物を扱う場面で広く用いられている。これらの機械では、パワーショベル等の土木機器に見られるような開ループ型の制御や、流量制御弁を用いた速度制御に用いられるものがほとんどで、アクチュエータの発生する力を高精度で制御することはなされていない。
【0003】
近年、クローズドループ制御を用いて高精度で位置決め制御と速度制御が行える電気・油圧サーボアクチュエータ(ディジタルサーボシリンダ)が開発され、位置制御に用いられるようになってきている。
【0004】
この電気・油圧サーボアクチュエータは、図9に示すように、油圧シリンダ10のポート11,12に油圧制御弁13が接続され、その油圧制御弁13のソレノイド14に、図示していないサーボドライバから前進及び後進のパルス信号15を入力することで、油圧ポンプ16からの圧油を、前進側シリンダ室17Fや後進側シリンダ室17Bに供給してロッド18をパルス信号15に応じて進退させるものである。
【0005】
アクチュエータ10のロッド18の位置は、アブソリュート式測長センサ19とディジタル測長センサ20とで検出され、このセンサ19,20の検出信号を基にしてアクチュエータ10の位置制御と速度制御を高精度で行えるようになっており、また前進側シリンダ室17Fや後進側シリンダ室17Bの圧力は、それぞれ圧力センサ21F,21Bで検出され、その検出値を基に、アクチェータ10が設定された押圧(引張)力を発揮できるようになっている。
【0006】
この電気・油圧サーボアクチュエータは、種々の環境に使用され、例えば、射出成形機やアルミダイキャスト成形機、薄膜成形装置、シールド掘進機のセグメント組立装置等で位置決めと力制御に使用されている。また、使用する環境に応じて、単独(シリアルリンク機構)で、或いは複数本同時に駆動(パラレルリンク機構)するように作動される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来アクチュエータによる位置制御系と力制御系とは別々に構成され、環境条件に応じてどちらか一方を切り換えて使用していた。
【0008】
すなわち、位置制御においては、変位センサにより目標位置との変位を制御系にフィードバックして速度指令を出力して目標位置になるように、アクチュエータに圧油を供給する流量弁を制御し、力制御においては、力センサで、環境に作用している力を検出し、その検出値を基にして設定した力が得られるようにアクチュエータを制御するように構成したものであり、制御系が相違するため、それぞれ別個に制御する必要がある。従って、制御を切り換えるには、先ず、位置制御でアクチュエータを目標位置の近くまで作動(微調位置決め作業)した後に、位置制御を停止して、力制御に切り換えアクチュエータで設定の力で押圧(押付作業)するように制御している。
【0009】
しかしながら、位置制御系と力制御系を切り換える際には、外部環境に応じた切り換え位置の情報が必要であり、そのためのセンシングや制御が別途必要となる。また、これらの情報で切り換えるようにしても外部環境の位置情報が常に得られる保障はなく、例えば速度制御中にワークが外部環境に当たって、それ以上移動できない状況でも位置制御を続けるなどの不具合を生じ、このため、ワークを破損するなどの問題がある。
【0010】
そこで、本発明者らは、先に位置制御と力制御を切り換えるにおいて、外部環境の位置情報がなくても負荷に応じて切り換えることができるアクチュエータの作動方法及び装置を提案(特願平6−285684号)した。
【0011】
この先願の発明の基本的な制御アルゴリズムを図8により説明する。
【0012】
図8(a)、図8(b)において、制御系は、フィードバック制御により仮想的なダンパを構成して位置制御と力制御とが行えるように構成され、10は、指令速度(xd ’)を与えられたアクチュエータ、30は外力を速度に変換するアドミッタンスがB(=1/d)である仮想ダンパとし、アクチュエータ10の速度を下式のように遅れなく制御できたとする。
【0013】
r' =x d' +Bf
この場合、 図8(a)では、非拘束状態で位置制御がなされ、f=0であるため、xr'=xd'となり、図8(b)ではワークWが、外部環境25に当たり拘束状態となって力制御がなされ、xr'=0であるため、f=xd'/Bの力制御がなされる。
【0014】
上記(1)式による位置・力制御は、多数のアクチュエータからなる多関節ロボットにおいても、目標位置と目標速度をベクトルで求め、このベクトル座標系を、各アクチュエータごとに運動ベクトルに分解して、各アクチュエータのシリンダ長さで定義することで、位置・力制御が可能となる。
【0015】
しかしながら、先願の発明において、ワークを単純に目標位置まで移動して位置・力制御するには支障はないが、現実にロボットで、多数のワークを、嵌め合せ等の作業で組立てる場合には、単に目標位置に直線的に移動するだけでは作業ができず、上述した基本のアルゴリズムの他に、組立のための組立作業アルゴリズムがない限り実現することが困難である。
【0016】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、位置・力制御を行うにおいてワークを簡単に組み立てるワークの組立方法及びその装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、油圧で作動し、測長センサからなる変位センサと圧力センサが設けられた複数のアクチュエータで、多関節ロボットを構成し、そのロボットでワークを、所定の組み付け位置に移動して既設ワークに組み付けるワークの組立方法において、多関節ロボットの原点に対するワークの重心位置を、ロボット基準座標系と、組み付けるワークのワーク座標系と、組み付けの際のワークの作業に適したロール・ピッチ・ヨーの仮想回転軸をもつ作業座標系で、それぞれ設定すると共に、これらの座標系を多関節ロボットの各アクチュエータの関節座標系で求め、組み付けるワークにローリング・ピッチングを補正する一対のガイドバーを設けると共にその組み付けるワークを、そのワーク座標の原点が粗位置決め目標位置まで、移動するよう各アクチュエータを、ロボット基準座標系を基に位置制御したのち、作業座標系に切り換え、その作業座標系をもとに、かつ上記ガイドバーの既設ワークからの反力により、ローリングピッチングを調整するアクチュエータに加わる外力をもとにして、ワークをローリングとピッチングの前記仮想回転軸を中心にローリングとピッチング方向を補正すべく移動させて、それぞれローリングとピッチングの組付目標位置に、位置・力制御させて合わせた後、既設ワークと組み付けるワークの反力により、ヨーイングを調整するアクチュエータに加わる外力をもとにして、ヨーイングの前記仮想回転軸を中心に、ヨーイング方向を補正すべく移動させて位置・力制御しながらヨーイングの組付目標位置に合わせて、ワークを最終組付目標位置に組み付けるワークの組立方法である。
【0018】
請求項2の発明は、ワークが、シールド掘進機でトンネルを構築するセグメントが、その円周方向と軸方向の組み付け面にテーパー面を有するセグメントからなり、既設セグメントにセグメントを組み付ける際、既設セグメントに組み付ける粗位置決め目標位置までセグメントを移動したのち、既設セグメントに対する一対のガイドバーの反力により、ローリング・ピッチングを調整するアクチュエータに加わる外力をもとにして、組み付けるセグメントのロールとピッチ位置を、位置・力制御で合わせたのち、既設セグメントと組み付けるセグメントのテーパ面からの反力により、ヨーイングを調整するアクチュエータに加わる外力をもとにして、組み付けるセグメントのヨーイング位置を、位置・力制御で合わせて、セグメントを最終組付目標位置に組み付ける請求項1記載のワークの組立方法である。
【0019】
請求項3の発明は、油圧で作動し、測長センサからなる変位センサと圧力センサが設けられた複数のアクチュエータで、多関節ロボットを構成し、そのロボットでワークを、所定の組み付け位置に移動して既設ワークに組み付けるワークの組立装置において、多関節ロボットの原点に対するワークの重心位置を、ロボット基準座標系と、組み付けるワークのワーク座標系と、組み付けの際のワークの作業に適したロール・ピッチ・ヨーの仮想回転軸をもつ作業座標系で、それぞれ設定すると共に、これらの座標系を多関節ロボットの各アクチュエータの関節座標系で求め、組み付けるワークにローリング・ピッチングを補正する一対のガイドバーを設けると共にその組み付けるワークを、そのワーク座標の原点が粗位置決め目標位置まで、移動するよう各アクチュエータを、ロボット基準座標系を基に位置制御したのち、作業座標系に切り換え、その作業座標系をもとに、かつ上記ガイドバーの既設ワークからの反力により、ローリングピッチングを調整するアクチュエータに加わる外力をもとにして、ワークをローリングとピッチングの前記仮想回転軸を中心にローリングとピッチング方向を補正すべく移動させて、それぞれローリングとピッチングの組付目標位置に、位置・力制御させて合わせた後、既設ワークと組み付けるワークの反力により、ヨーイングを調整するアクチュエータに加わる外力をもとにして、ヨーイングの前記仮想回転軸を中心に、ヨーイング方向を補正すべく移動させて、位置・力制御しながらヨーイングの組付目標位置に合わせて、ワークを最終組付目標位置に組み付けるための制御手段を備えたワークの組立装置である。
【0020】
上記の構成によれば、ワークの組み付け状態に着目し、ワークを組み付ける際の作業座標系をロボットの各アクチュエータの関節座標で定義しておくことで、組み付けの際に、ワークをローリング・ピッチング・ヨーイング方向に簡単に力制御でき、組み付け位置の厳密な位置情報がなくても組み付けが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0022】
先ず本発明を説明する前に、先願の発明における位置・力制御を行うための装置の概略構成と制御ブロック図を、図10,図11で簡単に説明する。
【0023】
図10、図11において、アクチュエータ10の構成は図9で説明した通りである。
【0024】
このアクチュエータ10には、アブソリュート式測長センサとディジタル測長センサからなる変位センサ29が設けられると共に圧力センサ21が設けられる。
【0025】
変位センサ29は、アクチュエータ10のロッド18の進退位置を検出し、これを位置信号35として速度指令生成部40に送ると共に速度サーボ部41にフィードバック信号として送る。また圧力センサ21の検出圧力は速度指令生成部40に入力される。
【0026】
速度指令生成部40は、変位センサ29からの位置信号35を基に軌道生成部42で目標速度(xr ’)を生成し、同時に、圧力センサ21の検出圧力(−f)、または、外部環境25から反力Fとして伝わる外力(−f)を基にアドミッタンス設定部43で、その外力fをアドミッタンスBで速度信号(Bf)に変換すると共に、これらを加算器44にて、アクチュエータ速度(xd ’)を、xr ’= d ’−Bfとなるようにして速度サーボ部41に出力する。
【0027】
この設定部43でのアドミッタンスBは、そのアクチュエータの最大押し付け力の逆数と最大速度の乗算値を基に設定され、圧力センサ21の検出圧に応じて速度信号(Bf)を作り出すようになっている。
【0028】
速度指令生成部40で生成されたアクチュエータ速度(xd ’)は、速度サーボ部41に入力されると、先ず、速度サーボ部41は、アクチュエータ速度(xd ’)に基づいて、フィードフォワード速度信号vr を作り、これを加算器45を介して速度指令値46をサーボアンプ47に出力し、サーボアンプ47が制御電流48を作ってこれをアクチュエータ10に出力するようになっている。
【0029】
またアクチュエータ速度(xd ’)は、積分器49で、位置信号xr にされて比較器50に入力され、そこで変位センサ29からフィードバックされた位置(x)信号35と比較されて位置補償制御部51に入力され、その位置補償制御部51にて速度信号にされ、加算器45にてフィードフォワード速度信号vr と加算されてアクチュエータ10を作動する速度指令46が作られる。
【0030】
以上において、速度指令生成部40では、アクチュエータ速度(xd ’)が、
xd ’=xr ’+Bf
となるように制御する。
【0031】
このようにアクチュエータ速度xd ’を作りだしこれを速度サーボ部41及びサーボアンプ47を介してアクチュエータ10を制御することで位置制御と力制御の双方を自動的に切り換えて制御することができる。
【0032】
この図10,図11のアクチュエータ10は、1軸の場合であるが、複数のアクチュエータ10で多関節ロボットを構成する場合でも、目標方向と目標速度を、ヤコビアンを用いて各アクチュエータの運動ベクトルに分解すれば各アクチュエータごとに位置・力制御が行える。
【0033】
さて、本発明のワーク組立方法及びその装置を説明する。
【0034】
今、多関節ロボット60として、シールド掘進機のセグメント組立装置のロボットを例に図4〜図7により説明する。
【0035】
シールド掘進機は、シールドフレーム前面のカッタで地山を掘進し、その後方で、セグメント組立装置で、セグメントを円周方向に組み立ててトンネルを構築していくもので、そのセグメントとして最近、円弧状のセグメントからハニカム状のセグメントなど円周方向と軸方向の組み付け面にテーパ面を有するセグメントを組立ててトンネルを構築することがなされている。
【0036】
図4(a)において、61はエレクタリングで、ラック・ピニオン62により旋回微調整アクチュエータ63で、ロボット原点O0 を中心に回転され、そのエレクタリング61に、支持部材64が、一対の径方向アクチュエータ65l,rで、ロボット原点O0 に対して径方向に移動され、その支持部材64に図4(b)に示すように一対のヨーイング調整用アクチュエータ66l,rを介して摺動フレーム67が、ヨーイング自在に支持され、その摺動フレーム67に3本のローリング・ピッチング調整用アクチュエータ68で、セグメント70が支持される。
【0037】
また摺動フレーム67には坑口側に既設セグメントの内周面と接してセグメント70のピッチング・ローリングを補正するためのガイドバー69が設けられている。
【0038】
このセグメント組立装置のロボットで、既設セグメントにセグメントを組み付ける手順を図6により説明する。
【0039】
先ず、図6(a)に示すように既設セグメント70sの組み付け位置に位置するようにセグメント70が径方向外方に移動される。この際、セグメント70は、ピッチング方向の姿勢が既設セグメント70sの内周面と一致しない場合、ガイドバー69の前後の接触子71f,bのいずれかが、図6(b)、(c)に示すように当たり、仮想原点Oβを通る軸中心にピッチし、これら接触子71f,bが図6(d )に示すように均等に当たるようにピッチング方向の姿勢が調整される。
【0040】
また、ローリング方向についても、図6(e)に示すようにセグメント70が径方向外方に移動される際に、図(f)に示すようにガイドバー69の接触子71l,rのいずれかが当たり、仮想原点Oγを通る軸中心にロールし、これら接触子71l,rが図6(g)に示すように均等に当たるようにローリング方向の姿勢が調整される。
【0041】
このように、ピッチング方向とローリング方向の姿勢が調整されたセグメント70は、図7(a)〜(c)に示すように既設セグメント70sの所定位置に組み付けるべく仮想原点Oαを通る軸中心にヨーし、ヨーイング方向を調整しながら所定の位置に組み付けられることとなる。
【0042】
本発明においての組み付けの基本アルゴリズムは、ワークであるセグメント70を、所定の組み付け位置に組み付ける際、図5(a),(b)に示すように、先ずセグメント70を組み付け目標位置(rd0,θd0,zd0)に位置制御で移動し、次に最終組付目標位置(rdc,θdc,zdc)まで、上述した仮想原点O(α,β,γ)を中心に、ピッチング・ローリング・ヨーイング方向を補正すべく位置・力制御しながら移動してセグメント70を最終組付目標位置に組み付けることにある。この際、セグメント70と共に移動する一対のガイドバー69が、既設セグメント70sに当たり、その反力をもとに、仮想原点O(α,β)を中心にピッチング・ローリング方向を補正すべく移動させて、ピッチング・ローリングの組付目標位置(r dc ,θ dc )に位置合わせを行ったのち、既設セグメント70sとセグメント70の反力をもとに、仮想原点O(γ)を中心にヨーイング方向を補正すべく位置・力制御しながら移動してヨーイングの組付目標位置(z dc )に合わせてセグメント70を最終組付目標位置に(r dc ,θ dc ,z dc )に組み付ける。
【0043】
このセグメントを組み付けるための組み付けアルゴリズムを説明する。
【0044】
今、上述したセグメント組立ロボットのモデル化し簡便に表すと図2に示したようになり、各アクチュエータ63,65,66,68の各関節座標系で表せる。
【0045】
ここで、図2に示す記号と、以下で説明するアルゴリズムで使用する記号を以下に纏めて示す。計算で用いる単位系は、SI単位系を使用する。
【0046】
(1) 座標系に関する記号
ξ :セグメント位置座標ベクトル[m](3×1)
セグメント座標原点のロボット基準座標系で表した位置ベクトル
T :セグメント座標姿勢行列(3×3)
セグメント座標原点のロボット基準座標系で表した回転行列
w :セグメント位置姿勢座標[m/rad](7×1)
w=(x,r,θ,α,β,γ,h)T (h;把持部長さ)
セグメント座標系を作業座標系で表した位置/姿勢ベクトル
Twi:作業座標姿勢行列(3×3)[i;0〜3]
作業座標回転(0;θ回転、1;ヨー、2;ピッチ、3;ロール)
による姿勢を表す回転行列
ξ0 :セグメント位置座標ベクトル[m](3×1)
作業座標回転0での把持位置ベクトル
ξ1 :回転補正位置[m](3×1) [i;1〜3]
作業座標回転(1;ヨー、2;ピッチ、3;ロール)での把持位置
補正用ベクトル
ηi :関節i座標原点位置ベクトル[m](3×1) [i;1〜7]
関節i座標原点を関節i−l座標系で表した位置ベクトル
ただし、ここで定義した座標系では以下が成立する。
【0047】
η1 =η4 =η6 =O(0ベクトル)
Ai :関節i座標姿勢行列(3×3) [i;1〜7]
関節i座標姿勢を関節i−l座標系で表した回転行列
ただし、ここで定義した座標系では以下が成立する。
【0048】
A2=A3=A7=I(単位行列)
η8 :セグメント位置ベクトル[m](3×1)
セグメント座標原点を関節7座標系で表した位置ベクトル
(2)ロボット機構変数に関する記号
l :アクチュエータ変位[m](8成分)
ll :旋回軸長さ、 l2r:伸縮右長さ、 l2l:伸縮左長さ
l3r:摺動右長さ、 l3l:摺動左長さ
l5r:微長右長さ、 l5l:微長左長さ、 l5m:微長中長さ
q :関節変数ベクトル(7×1)
fk :アクチュエータ変位−関節変数関係式ベクトル[i;1〜4]
q1 =fk1(l1)
q2 =fk2(ψ1)=(l2r +l2l)/2,
ψ1=(l2r,l2l)T
φ2 =fk3(ψ2),φ2 =(q3 ,q4)T ,
ψ2=(l3r,l3l)T
φ3 =fk4(ψ3),φ3 =(q5,q6,q7)T,
ψ3=(l5r, 5 ,l5m)T
(3)ロボット機構定数2関する記号(スカラ量)
L01 :ヨー軸オフセット量[m]
L02 :ピッチ軸オフセット量[m]
r0 :旋回微調整軸半径[m]
La :摺動左軸オフセット[m]
Lb :微調軸yオフセット[m]
Lc :微調軸z軸オフセット[m]
Ld :微調軸摺動右軸オフセット[m]
Le :セグメントオフセット[m]
Θ2 :摺動ステージy回転オフセット角[rad]
Ω2 :摺動ステージx回転オフセット角[rad]
Θ3 :ヨーイング軸オフセット角[rad]
Θ4 :摺動軸オフセット角[rad]
さて、図1において、ロボットの原点O0 に対するロボット基準座標系を(X0 ,Y0 ,Z0 )、またロボットの原点O0 に対する位置をr,θの円筒座標とx方向の座標系をとし、セグメント70の重心位置を原点Osとし、その座標系を(Xs,Ys,Zs)とすると、仮想原点O(αβγ)は、セグメント原点Osに対してXs方向でL01オフセットし、Ys方向にL02オフセットしている。
【0049】
この仮想原点O( αβγ) におけるピッチβはL02オフセットしたYβ軸廻りに、ロールγはXγ(=Xs)軸廻りに、ヨーαは、Xs方向にL01オフセットしたZα軸廻りに回転することになる。
【0050】
そこで、基準座標系からみたセグメント座標系の位置ξ,姿勢Tを、仮想原点(αβγ)における各軸廻り、すなわちロール・ピッチ・ヨーの仮想回転軸をもつ作業座標系の位置ベクトル成分で表現する。
【0051】
A.作業座標系と基準座標系の関係式導出
(1) 各回転のみを行った場合の姿勢と位置補正量
a.ヨーイングTw1は、Zα軸廻りの回転行列として数1で表現される。
【0052】
【数1】
Figure 0003967394
【0053】
ヨーイング軸Zαは、セグメント原点とL1 だけオフセットしているので、位置ξ1 は、数2の量だけずれる。
【0054】
【数2】
Figure 0003967394
【0055】
b.ピッチングTw2はYβ軸廻りの回転行列として、数3で又、位置ξ2 は、セグメント原点とL2 だけオフセットしているので数4で表せる。
【0056】
【数3】
Figure 0003967394
【0057】
【数4】
Figure 0003967394
【0058】
c.ローリングTw3は、Xα(=Xs)軸廻りの回転行列として数5で表され、位置ξ3 は、オフセットが0であるため数6で表される。
【0059】
【数5】
Figure 0003967394
【0060】
【数6】
Figure 0003967394
【0061】
(2) r,θ,xによる位置Tw0と姿勢ξ0 は、数7,数8で表される。
【0062】
【数7】
Figure 0003967394
【0063】
【数8】
Figure 0003967394
【0064】
回転順序を、ヨー,ピッチ,ロールの順で定義すると、T,ξは、下式で求められる。
【0065】
T=Tw0・Tw1・Tw2・Tw3 …(1)
ξ=ξ0 +Tw0ξ1 +Tw0Tw1ξ2 +Tw0Tw1Tw3ξ3 …(2)
B.関節変数と基準座標系の関係式導出
次に、基準座標系からみた、セグメント座標系の位置ξ,姿勢Tを各アクチュエータの関節変数qi を用いて表現する。
【0066】
(1) 姿勢T
各関節ごとに固定した座標系間の回転行列を定義しているので、その積で、下式のように求めることができる。
【0067】
T=A1 ・A2 ・…・A7 …(3)
このA1 〜A7 の成分は、図2で説明した関節変数q1 〜q7 と機構に関する定数で容易に表現できる。
【0068】
(2) 位置ξ
各関節ごとの座標原点間のベクトルの和で下式で求めることができる。
【0069】
ξ=A1 η1 +A1 A2 η2 +A1 A2 A3 η3 +…
+A1 A2 A3 …A7 (η7 +η8 ) …(4)
η1 〜η8 の成分は、図2で説明したように関節変数qと機構に関する定数で表現できる。
【0070】
C.ヤコビ行列の導出
上記(1),(3) 式と(2),(4) 式は同じ値を示しているので、成分ごとに符号を取ると以下のようにまとめることができる。
【0071】
w=fk (q) … (5)
(5) 式の両辺を偏微分することによりヤコビ行列が求められる。
【0072】
w’=Jq’ … (6)
J = dfk /dq … (7)
qと関節駆動アクチュエータは、機構学的な関係から以下のように求められる。
【0073】
q1 = fk1(l1 ) … (8)
q2 = fk2(ψ1 ) … (9)
φ2 = fk3(ψ2 ) …(10)
φ3 = fk4(ψ3 ) …(11)
(8) 〜(11)式をそれぞれ偏微分すると
q1 ’= Jk1・l1 …(12)
q2 ’= Jk2・ψ1 …(13)
φ2 ’= Jk3・ψ2 …(14)
φ3 ’= Jk4・ψ3 …(15)
また、qは数9なので、数9を偏微分すると数10となる。
【0074】
【数9】
Figure 0003967394
【0075】
【数10】
Figure 0003967394
【0076】
次にアクチュエータ出力と作業座標の問を表すヤコビ行列は、下式で求められる。
【0077】
w’=J・Jq・l’ …(16)
よってヤコビ行列を用いることで、作業座標系での力制御を実現できるようになる。
【0078】
図3は、本発明のワーク(セグメント)と組み立てるための位置/力のハイブリッド制御系のブロック図を示す。
【0079】
この図3の制御系を説明する前に力制御アルゴリズムに関する記号を説明する。
【0080】
p :アクチュエータ発生圧力[Pa](8×2成分)
fl :アクチュエータ発生力ベクトル[N](7×1)
f :セグメント発生力[N/Nm](7×1)
f=(fx ,fr ,mθ,mα,mβ,mγ,fg )T
(ロボット作業座標系ベクトル/fg ;把持力)
vr :アクチュエータ指令速度[m/s](8×1)
wd :力フィードバック速度[(m/s)/(rad/s)](7×1)
wr :力制御目標速度[(m/s)/(rad/s)](7×1)
l’r :アクチュエータ目標速度[m/s](8×1)
vd :アクチュエータ指令速度[m/s](8×1)
J :ヤコビ行列(8×1)
J=dfk /dq
w=fk (q);順運動学関係式ベクトル(7×1)
(w’=Jq’)
-1 :ヤコビ行列逆行列(7×7)
T :ヤコビ行列転置逆行列(7×7)
B :アドミッタンス行列[(m/s)/N/(rad/s)/Nm](7×7; 対角行列)
S :力制御選択行列(7×7; 対角行列)
I :単位行列(7×7)
Ji :関節変数行列
J1 =dfk1/dl1 (スカラ関数)
J2 =dfk2/dψ2 (2×1行列)
J3 =dfk3/dψ2 (2×2行列)
J4 =dfk1/dψ3 (3×3行列)
さて今、理想的な力のセンシングができればダンピング制御を用いた力制御で位置制御も可能であるが、現実にはセンサのノイズの影響があり、厳密な位置決め制御は実現できない。
【0081】
組立作業において、接触のない方向に対しては力制御の必要がないことから、位置制御/力制御を選択できる制御系を構成する。
【0082】
そこで、力制御選択行列Sを以下のように定義し、下式に示す制御アルゴリズムで実現できる。
【0083】
wr ’=S(wd ’+Bf)+(I−S)wd ’ …(17)
S=diag[s1,s2,・・,s7]
si=1:i軸力制御選択
si=0:i軸位置制御選択
I:単位行列
上記(17)式によって得られた力制御目標速度を(16)式で各アクチュエータの指令速度に変換し、サーボ系を構成することによって力制御が実現できる。
【0084】
このようにして構成された制御ブロック図を図3で説明する。
【0085】
図3において、速度指令生成部で生成される目標速度wd'が軌道計画生成部75で生成し、これを位置制御選択行列(I−S)76と加算器77を介して力制御行列(S)78に出力する。ここでIは単位行列、Sは選択行列で、それぞれその要素が1または0の対角行列であり、1は、それに対応する座標でアドミッタンス行列(B)79を基に力制御をすることを意味し、0は、位置制御を行うことを意味している。
【0086】
位置制御選択行列(I−S)76と力制御行列(S)78の出力は、加算器80にて加算されて力制御目標速度wrとされ、ヤコビ行列逆行列81にてそれぞれアクチュエータごとの運動ベクトルに分解される。
【0087】
制御の開始時には、反力F=0であり、位置行列選択76で生成される座標がヤコビ行列逆行列81より、速度制御補償部82にて各アクチュエータ10の速度信号vr が生成され、加算器83を介してフィードフォワード速度信号としてアクチュエータ10に出力される。一方ヤコビ行列逆行列81にて分解された運動ベクトルは積分器84で、各アクチュエータのシリンダ位置信号85にされて比較器86に入力され、そこで各アクチュエータ10からフィードバックされたシリンダ変位信号(I)87と比較されて位置補償制御部88に入力され、その位置補償制御部88にて速度信号にされ、加算器83にてフィードフォワード速度信号vr と加算されて各アクチュエータ10を作動する速度指令Vdが作られ、その速度指令Vdに基づいてアクチュエータ10からなるセグメントロボットが、目標軌道に沿った速度wr で移動して外部環境25に接触するまで位置制御する。
【0088】
次に外部環境25にワーク24が当たり移動が停止して、速度xr ’が0となると、各アクチュエータ10の圧力センサからシリンダ発生力(Fl)90が、ヤコビ行列転置逆行列91に送られて外力Fに変換され、アドミッタンス行列79により外力Fが速度ベクトル(BF)にされ、力制御選択行列78により力制御に切り換えられ、セグメントに設定の力が加えられることなる。
【0089】
この制御において、上述したようにセグメントを粗位置決め目標位置に移動すると、既設セグメントなどの外部環境25より、位置制御から力制御に切り換える際のピッチング・ローリング・ヨーイング方向の調整は、図6に示すように、位置制御のときのアクチュエータ速度v1rが、力制御のときのセグメント発生力fr でピッチング方向の反力f1rf ,f1rb とローリング方向の反力f1rr ,f1rl が均等になるためのセグメント発生力f1rとなるように力制御すれば良く、また同様にヨーイングに関しても、図7に示したように、速度v2zで位置制御し、セグメント発生力fz で力制御したとき、ヨーイング方向の反力f2z1 ,f2z2 が釣合い、反力f2zo でf2zの発生力となったときに、正しくセグメント70が組み付けられたとして制御を完了する。
【0090】
このように本発明においては、粗位置決め目標位置から、位置・力制御により最終組付目標位置までピッチ・ロール・ヨーを調整しながらセグメントを正確に組み付けることが可能となる。
【0091】
上述の実施の形態においては、組立てるワークとしてシールド掘進機のトンネル構築用のセグメントの例で説明したが、セグメントに限らず種々のワークの組立に適用できる。また、組み付けの際にロール・ピッチ・ヨーを行い、ヨーイングを最後に行う例で説明したが、これらはワークの組み付け方や形状によっていずれの順序で行っても良いし、いずれか1つか2つでも良い。
【0092】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、変位センサと圧力センサが設けられた複数のアクチュエータで、多関節ロボットを構成し、多関節ロボットの原点に対するワークの重心位置を、ロボット基準座標系と、組み付けるワークのワーク座標系と、組み付けの際のワークの作業に適したロール・ピッチ・ヨーの仮想回転軸をもつ作業座標系で、それぞれ設定すると共に、これら座標系を多関節ロボットの各アクチュエータの関節座標で求め、組み付けるワークに一対のガイドバーを設け、ワークを組み付ける際に、ロボット基準座標系とワーク座標系で、粗置決め目標位置まで移動したときに、作業座標系に切り換え、ガイドバーから各アクチュエータに加わる外力をもとに、位置・力制御でワークのロール・ピッチの組付目標位置に調整した後、既設ワークからの反力をもとに、位置・力制御でワークのヨーの組付目標位置を調整することで、組み付け位置の厳密な位置情報がなくても最終組付目標にワークを組み付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において、作業座標系の設定を説明する概略図である。
【図2】本発明におけるロボットの関節座標系を説明する概略図である。
【図3】本発明における位置・力制御の制御ブロック図を示す図である。
【図4】本発明において、ロボットとしてのセグメント組立装置を示す概略図である。
【図5】本発明において、粗位置決めと組み付け目標位置の概念図を示す図である。
【図6】本発明において、ピッチングとローリング補正を説明する概略図である。
【図7】本発明において、ヨーイング・旋回位置補正を説明する概略図である。
【図8】先願の発明におけるアクチュエータ位置・力制御を説明する概念図である。
【図9】先願及び本発明に用いるアクチュエータの詳細を示す図である。
【図10】先願の発明におけるシリアルリンクの制御装置を説明する概略図である。
【図11】先願の発明におけるアクチュエータの制御ブロック図を示す図である。
【符号の説明】
10 アクチュエータ
70 セグメント(ワーク)

Claims (3)

  1. 油圧で作動し、測長センサからなる変位センサと圧力センサが設けられた複数のアクチュエータで、多関節ロボットを構成し、そのロボットでワークを、所定の組み付け位置に移動して既設ワークに組み付けるワークの組立方法において、多関節ロボットの原点に対するワークの重心位置を、ロボット基準座標系と、組み付けるワークのワーク座標系と、組み付けの際のワークの作業に適したロール・ピッチ・ヨーの仮想回転軸をもつ作業座標系で、それぞれ設定すると共に、これらの座標系を多関節ロボットの各アクチュエータの関節座標系で求め、組み付けるワークにローリング・ピッチングを補正する一対のガイドバーを設けると共にその組み付けるワークを、そのワーク座標の原点が粗位置決め目標位置まで、移動するよう各アクチュエータを、ロボット基準座標系を基に位置制御したのち、作業座標系に切り換え、その作業座標系をもとに、かつ上記ガイドバーの既設ワークからの反力により、ローリングピッチングを調整するアクチュエータに加わる外力をもとにして、ワークをローリングとピッチングの前記仮想回転軸を中心にローリングとピッチング方向を補正すべく移動させて、それぞれローリングとピッチングの組付目標位置に、位置・力制御させて合わせた後、既設ワークと組み付けるワークの反力により、ヨーイングを調整するアクチュエータに加わる外力をもとにして、ヨーイングの前記仮想回転軸を中心に、ヨーイング方向を補正すべく移動させて位置・力制御しながらヨーイングの組付目標位置に合わせて、ワークを最終組付目標位置に組み付けることを特徴とするワークの組立方法。
  2. ワークが、シールド掘進機でトンネルを構築するセグメントが、その円周方向と軸方向の組み付け面にテーパー面を有するセグメントからなり、既設セグメントにセグメントを組み付ける際、既設セグメントに組み付ける粗位置決め目標位置までセグメントを移動したのち、既設セグメントに対する一対のガイドバーの反力により、ローリング・ピッチングを調整するアクチュエータに加わる外力をもとにして、組み付けるセグメントのロールとピッチ位置を、位置・力制御で合わせたのち、既設セグメントと組み付けるセグメントのテーパ面からの反力により、ヨーイングを調整するアクチュエータに加わる外力をもとにして、組み付けるセグメントのヨーイング位置を、位置・力制御で合わせて、セグメントを最終組付目標位置に組み付ける請求項1記載のワークの組立方法。
  3. 油圧で作動し、測長センサからなる変位センサと圧力センサが設けられた複数のアクチュエータで、多関節ロボットを構成し、そのロボットでワークを、所定の組み付け位置に移動して既設ワークに組み付けるワークの組立装置において、多関節ロボットの原点に対するワークの重心位置を、ロボット基準座標系と、組み付けるワークのワーク座標系と、組み付けの際のワークの作業に適したロール・ピッチ・ヨーの仮想回転軸をもつ作業座標系で、それぞれ設定すると共に、これらの座標系を多関節ロボットの各アクチュエータの関節座標系で求め、組み付けるワークにローリング・ピッチングを補正する一対のガイドバーを設けると共にその組み付けるワークを、そのワーク座標の原点が粗位置決め目標位置まで、移動するよう各アクチュエータを、ロボット基準座標系を基に位置制御したのち、作業座標系に切り換え、その作業座標系をもとに、かつ上記ガイドバーの既設ワークからの反力により、ローリングピッチングを調整するアクチュエータに加わる外力をもとにして、ワークをローリングとピッチングの前記仮想回転軸を中心にローリングとピッチング方向を補正すべく移動させて、それぞれローリングとピッチングの組付目標位置に、位置・力制御させて合わせた後、既設ワークと組み付けるワークの反力により、ヨーイングを調整するアクチュエータに加わる外力をもとにして、ヨーイングの前記仮想回転軸を中心に、ヨーイング方向を補正すべく移動させて、位置・力制御しながらヨーイングの組付目標位置に合わせて、ワークを最終組付目標位置に組み付けるための制御手段を備えたことを特徴とするワークの組立装置。
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