JP3967225B2 - 複線区間における列車検知システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地上に設置された通信手段間の通信の遮断により列車の存在を検知する列車検知システムに関し、特に、2つの線路が存在する複線区間において列車が存在する線路を識別して列車を検知できるようにした複線区間における列車検知システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、線路を走行する列車の位置を検知して列車運行の安全性を確保するシステムとして、無線通信手段を利用した列車検知システムが開発されている。
この列車検知システムは、列車走行の検知区間の線路近傍に設置された質問器と、この質問器と相互に通信可能なように線路を挟んで質問器に対向して設置された地上応答器と、列車に搭載されて質問器と通信可能な車上応答器と、地上応答器及び車上応答器からの信号の受信に基づく質問器からの送信情報を取り込んで列車の存在を検知する列車検知装置とを備えて構成されている。
【0003】
このような従来の列車検知システムでは、質問器から質問信号を地上応答器に常時送信し、地上応答器が質問信号を受信して設置位置情報等を含む応答信号を質問器に返信する。列車が存在しない時には、質問器と地上応答器間で前記質問信号と応答信号の通信が行われる。一方、列車が質問器と地上応答器間の通信領域を通過すると、列車の車体により質問器と地上応答器間の通信が遮断されると共に、車上応答器と質問器間で通信が行われる。これにより、質問器は、地上応答器からの応答信号無し情報と車上応答器からの列車情報の受信情報を発生し、列車検知装置は、この応答信号無し情報と列車情報の2つの情報が入力されたことを条件に列車有りと判定する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の遮断型の列車検知システムの構成では、2つの線路が存在する複線区間においては、列車の存在は検知できるが、検知した列車がどちらの線路を走行する列車かは検知できない。
本発明は、このような問題点に対処し、2つの線路が存在する複線区間において列車が存在する線路を識別して列車の検知が可能な列車検知システムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明の複線区間における列車検知システムは、2つの線路が存在する複線区間の一方の線路近傍に設置される第1通信手段と、前記2つの線路を挟んで前記第1通信手段と通信可能なように当該第1通信手段と対向して配置され、前記第1通信手段との通信遮断の有無情報を出力する第2通信手段と、列車に搭載され、前記第1及び第2通信手段のうち当該列車に近い方の通信手段と通信可能な第3通信手段と、該第3通信手段からの信号の受信に基づいて前記第1及び第2通信手段のうちのいずれか一方から列車検知情報が入力し、且つ、前記第2通信手段から前記第1通信手段との通信遮断有り情報が入力したときに在線線路を特定して列車を検知する列車検知装置とを備えて構成した。
【0006】
かかる構成では、複線区間の2つの線路を挟んで対向配置された第1通信手段と第2通信手段が通信している状態では、第2通信手段から通信遮断無し情報が列車検知装置に入力し、列車検知装置は列車不在と判断する。一方、列車が接近し、第1通信手段及び第2通信手段のいずれか一方が、列車に搭載された第3通信手段からの信号を受信すると、受信した通信手段から列車検知情報が出力されて列車検知装置に入力する。そして、この列車が第1通信手段と第2通信手段の通信領域を横切って通信が遮断されると、第2通信手段から通信遮断有り情報が出力されて列車検知装置に入力する。列車検知装置は、列車検知情報と通信遮断有り情報の2つの情報が入力した時に列車有りと判断し、且つ、列車検知情報が第1通信手段と第2通信手段のどちらの情報であるかにより列車の存在する線路を特定する。
【0007】
具体的には、請求項2のように、前記第1通信手段は、前記第2通信手段に向けて自身の識別情報を含む通信信号を送信し、近接する線路を含む領域に質問信号を送信すると共に応答信号を受信して列車検知情報を出力する第1送受信器であり、前記第2通信手段は、前記通信信号の受信の有無に基づいて通信遮断の有無情報を出力し、近接する線路を含む領域に質問信号を送信すると共に応答信号を受信して列車検知情報を出力する第2送受信器であり、前記第3通信手段は、前記第1送受信器又は第2送受信器からの質問信号を受信した時に列車情報を含む前記応答信号を返信する車上応答器とするとよい。
【0008】
かかる構成では、第1送受信器は、第2送受信器に対して自身の識別情報を含む通信信号を送信すると共に近接する線路を含む領域に質問信号を送信する。また、第2送受信器は、第1送受信器からの通信信号を受信すると共に近接する線路を含む領域に質問信号を送信する。第2送受信器は、第1送受信器からの通信信号が受信されている時は、通信遮断無し情報を出力し列車検知装置に入力する。この状態で、列車が接近し、第1送受信器及び第2送受信器のいずれか一方の質問信号送信領域に進入すると、列車に搭載された車上応答器が質問信号を受信して列車情報を含む応答信号を返信する。この応答信号を受信した送受信器側は、列車検知情報を出力し列車検知装置に入力する。そして、この列車が第1送受信器と第2送受信器の通信領域を横切って通信が遮断されると、第2送受信器から通信遮断有り情報が出力されて列車検知装置に入力する。列車検知装置は、列車検知情報と通信遮断有り情報の2つの情報が入力した時に列車有りと判断し、且つ、列車検知情報が第1送受信器と第2送受信器のどちらの情報であるかにより列車の存在する線路を特定する。
【0009】
請求項3のように、前記第1及び第2送受信器は、それぞれの前記質問信号の通信領域が列車の進行してくる方向に偏るよう前記質問信号を送信する構成とするとよい。
かかる構成では、同一列車の応答信号を第1通信手段と第2通信手段でそれぞれ受信した場合でも、受信した時刻にずれが生じるようになるので、どちらの線路を走行する列車かを識別できるようになる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る列車検知システムの一実施形態を示すシステム構成図である。
図1において、本実施形態の列車検知システムは、複線区間の2つの線路1、2を挟んで互いに対向して設置された第1通信手段である第1送受信器3及び第2通信手段である第2送受信器4と、これら第1及び第2送受信器3、4から出力される情報に基づいて線路1、2を走行する列車の存在及び列車の存在する線路を検知する列車検知装置5と、列車に搭載される第3通信手段としての車上応答器6とを備えている。尚、線路1、2を走行する列車7、8は、図中の矢印X、Yで示すように互いに反対方向に進行するものとする。
【0011】
線路1の近傍に設置される前記第1送受信器3は、第2送受信器4に対して自身の識別情報(例えば自身の設置位置情報等)を含んだ指向性の強い図の斜線で示す通信領域Sの変調波信号を常時送信する。また、線路1を走行する列車7に対して図の点線で囲まれた通信領域S1の質問信号(搬送波)を送信する。そして、列車7に搭載された車上応答器6からの応答信号(変調波)を受信すると、応答信号に含まれた列車情報を含んだ列車検知情報を列車検知装置5に出力する。
【0012】
線路2の近傍に設置される前記第2送受信器4は、第1送受信器3の変調波信号を受信すると共に、線路2を走行する列車8に対して図の点線で囲まれた通信領域S2の質問信号(搬送波)を送信する。列車7、8が変調波信号の通信領域Sに存在せず変調波信号が遮断されないときは受信される識別情報を通信遮断なしを示す情報として列車検知装置5に出力し、列車7、8が変調波信号の通信領域Sに存在し列車7、8の車体で変調波信号が遮断されたときは通信遮断有り情報を列車検知装置5に出力する。また、列車8に搭載した車上応答器6からの応答信号(変調波)を受信すると、応答信号に含まれた列車情報を含んだ列車検知情報を列車検知装置5に出力する。
【0013】
ここで、本実施形態では、第1送受信器3と第2送受信器4は、図に示すようにそれぞれの質問信号の通信領域S1、S2が列車7、8の進行してくる方向に偏るように、且つ、近い方の線路1、2を走行する列車7、8の車上応答器6だけと通信できるように質問信号を送信する構成である。また、第1送受信器3と第2送受信器4は、列車通過時に列車の車体の窓より上方の車体部分で変調信号が遮断されるような高さの位置、言い換えれば、通常の人間の身長より高い位置に設けるようにしている。これにより、保線作業者等が第1及び第2送受信器3、4の前を通過しても変調波信号が遮断されないようにして、列車以外の物体検知による誤動作を防止するようにしている。
【0014】
列車検知装置5は、第1送受信器3や第2送受信器4からの出力情報を入力して、列車検知情報と通信遮断有りの2つの情報が入力するときに列車の在線線路を特定して列車を検知する。
前記車上応答器6は、第1送受信器3や第2送受信器4から送信されるそれぞれの質問信号の通信領域S1、S2(図の点線で示す領域)に進入すると、列車情報(例えば各列車固有に設定される列車ID情報)を含んだ応答信号(変調波)を返信する。
【0015】
本実施形態においては、第1送受信器3と第2送受信器4間の通信及びこれら第1、第2送受信器3、4と車上応答器6間の通信に、搬送波をPN符号により拡散変調して情報を送信するスペクトラム拡散通信方式を用いている。これにより、耐雑音性に優れ秘匿性の高い通信ができ、情報を確実に伝送できるようになる。尚、通信方式は、スペクトラム拡散通信方式に限るものでないことは言うまでもない。
【0016】
次に、本実施形態の列車検知システムの列車検知動作について説明する。
常時、第1送受信器3から第2送受信器4に向けて通信領域Sの変調波信号を送信し、第2送受信器4に識別情報を送信する。また、第1及び第2送受信器3、4は、それぞれの近接する線路1、2に向けて通信領域S1、S2の質問信号を常時送信する。
【0017】
列車が存在しない場合は、第1送受信器3からの変調波信号は遮断されず、第2送受信器4で識別情報が受信され、第2送受信器4から受信した識別情報が列車検知装置5に出力される。また、第1及び第2送受信器3、4に対して車上応答器6からの応答信号はなく、第1及び第2送受信器3、4からの列車検知情報は列車検知装置5に入力しない。列車検知装置5は、第2送受信器4から識別情報が入力しており、第1及び第2送受信器3、4からの列車検知情報が入力しないときに列車不在と判定する。
【0018】
一方、列車が存在する場合、例えば線路1を矢印X方向に走行する列車7が、第1送受信器3の質問信号の通信領域S1に進入すると、車上応答器6で質問信号が受信され列車情報(固有の列車ID情報)を含む応答信号を第1送受信器3に返信する。第1送受信器3は、応答信号を受信すると応答信号に含まれた列車情報を含む列車検知情報を列車検知装置5に出力する。その後、列車7が進行して変調波信号の通信領域Sに進入して変調波が遮断されると、第2送受信器4から通信遮断有り情報が発生し列車検知装置5に入力する。列車検知装置5は、第1送受信器3からの列車検知情報の入力と第2送受信器4からの通信遮断有り情報の入力とにより、列車有りと判定し、且つ、列車検知情報が第1送受信器3からの情報であることにより在線線路が線路1であると判定する。
【0019】
線路2を矢印Y方向に走行する列車8の場合は、列車8が第2送受信器4の質問信号の通信領域S2に進入して、車上応答器6からの列車情報を含む応答信号を第2送受信器4が受信し、応答信号に含まれた列車情報を含む列車検知情報を列車検知装置5に出力する。その後、列車8が進行して変調波信号の通信領域Sに進入して変調波が遮断されると、第2送受信器4は通信遮断有り情報を列車検知装置5に入力する。列車検知装置5は、第2送受信器4からの列車検知情報と通信遮断有り情報とにより、列車有りと判定し、且つ、列車検知情報が第2送受信器4からの情報であることにより在線線路が線路2であると判定する。
【0020】
かかる本実施形態の列車検知システムによれば、2つの線路1、2が存在する複線区間であっても、列車を確実に検知でき、しかも、在線線路を特定して列車を検知できる。
また、本実施形態では、第1送受信器3と第2送受信器4からそれぞれ送信する質問信号の通信領域S1、S2が、列車7、8の進行してくる方向にそれぞれ偏るようにしているため、万が一、列車7が両送受信器3、4の質問信号を受信する場合でも、第1送受信器3の質問信号の通信領域S1に進入した後に第2送受信器4の質問信号の通信領域S2に進入することになる。列車8の場合は、逆に通信領域S2に進入した後に通信領域S1に進入することになる。どちらの場合も、第1送受信器3と第2送受信器4とにおける応答信号の受信時刻にずれが生じる。従って、同じ列車が両方の送受信器3、4の質問信号に応答し、第1送受信器3と第2送受信器4とから同一の列車情報を含む列車検知情報が出力されたとしても、列車検知情報が列車検知装置5に入力する時間にずれが生じるので、列車検知装置5では列車検知情報の入力順序に基づいて在線線路を特定して列車を検知できる。
【0021】
尚、本実施形態では、第1及び第2通信手段共に送受信器としたが、列車に搭載する第3通信手段として、応答器に代えて第1及び第2通信手段に対して自身から情報を送信可能な送信機を設ける構成とした場合は、第1通信手段を、変調波信号の送信機能と車上送信機からの送信信号の受信機能を備える送受信器とし、第2通信手段を、第1通信手段からの変調波信号及び車上送信機からの送信信号を受信する受信機能を備える受信器とする構成としてもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、複線区間の2つの線路を挟んで地上に設置した第1及び第2通信手段の各々が、自身に近い方の線路を走行する列車からの情報を受信して受信情報を発生するようにしたので、複線区間において在線線路を特定して確実に列車を検知できる。
【0023】
また、請求項3の発明によれば、万が一、第1通信手段と第2通信手段が同じ列車からの情報を受信した場合でも、第1通信手段と第2通信手段からそれぞれ発生する受信情報に時間のずれが生じるので、このような場合でも在線線路を特定して列車を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る列車検知システムの一実施形態のシステム構成図
【符号の説明】
1、2 線路
3 第1送受信器
4 第2送受信器
5 列車検知装置
6 車上応答器
7、8 列車
S、S1、S2 通信領域
Claims (3)
- 2つの線路が存在する複線区間の一方の線路近傍に設置される第1通信手段と、
前記2つの線路を挟んで前記第1通信手段と通信可能なように当該第1通信手段と対向して配置され、前記第1通信手段との通信遮断の有無情報を出力する第2通信手段と、
列車に搭載され、前記第1及び第2通信手段のうち当該列車に近い方の通信手段と通信可能な第3通信手段と、
該第3通信手段からの信号の受信に基づいて前記第1及び第2通信手段のうちのいずれか一方から列車検知情報が入力し、且つ、前記第2通信手段から前記第1通信手段との通信遮断有り情報が入力したときに在線線路を特定して列車を検知する列車検知装置と、
を備えて構成したことを特徴とする複線区間における列車検知システム。 - 前記第1通信手段は、前記第2通信手段に向けて自身の識別情報を含む通信信号を送信し、近接する線路を含む領域に質問信号を送信すると共に応答信号を受信して列車検知情報を出力する第1送受信器であり、
前記第2通信手段は、前記通信信号の受信の有無に基づいて通信遮断の有無情報を出力し、近接する線路を含む領域に質問信号を送信すると共に応答信号を受信して列車検知情報を出力する第2送受信器であり、
前記第3通信手段は、前記第1送受信器又は第2送受信器からの質問信号を受信した時に列車情報を含む前記応答信号を返信する車上応答器である
請求項1に記載の複線区間における列車検知システム。 - 前記第1及び第2送受信器は、それぞれの前記質問信号の通信領域が列車の進行してくる方向に偏るよう前記質問信号を送信する構成である請求項2に記載の複線区間における列車検知システム。
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