JP3966454B2 - 視角依存多色性組成物、筆記具用インキ組成物及び筆記具 - Google Patents
視角依存多色性組成物、筆記具用インキ組成物及び筆記具 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所望の色変化の視角依存多色性を有するインキ、樹脂形成物、絵の具、塗料、化粧品、スタンプに関する視角依存多色性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
装飾的な効果として組成物中に含まれる着色剤としては白色、赤色、黄色等の色調を有する顔料及び染料が広く使われているが、例えばインキ組成物においては前記着色剤以外に視覚的効果のために金色、銀色等の金属色や、真珠光沢のある筆跡を得るために金属顔料やパール顔料を用いたインキ組成物が提供されている。かかるインキ組成物としては、例えば、特開平7−118592号、特開平8−151547号にアルミニウム顔料を用いた水性インキ組成物、パール顔料を用いた水性インキ組成物が開示されている。
【0003】
さらに、インキ組成物としては、かかる顔料以外に金属粉顔料やパール顔料と異なる効果が得られるとして、見る角度によって違う色に見えるような効果(視角依存多色性)を持つ筆跡乃至塗膜を得るために視角依存多色性粒子を含有するインキ組成物が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、視角依存多色性を持つ筆跡乃至塗膜を得ることができる視角依存多色性組成物は、インキ組成物中に含有される視角依存多色性粒子の有する視角依存による変色性が固定され、例えば赤色から黄色(ゴールド)の色変化をする視角依存多色性粒子を用いた場合には、青色又は緑色の着色剤を加えた場合、白地での色相の変化はあっても黒地での色相を変化させることはできなかった。他の視角依存多色性粒子についても黒地での色相を変化させることはできなかった。また、白紙上でも、染料や有機顔料を用いると紙面上でこれらの着色剤が滲み出すため、均一な筆跡を得ることが難しい。そのために、通常の着色剤を加えても、視角依存による色の変化が視角依存多色性粒子の色変化に固定され、所望の色変化をする筆跡乃至塗膜を与える組成物が得られていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、鋭意検討の結果、組成物中に視角依存多色性粒子とパール顔料とを含有する組成物である視角依存多色性組成物を用いることにより、視角依存多色性粒子が単独で呈する色変化とは異なる色変化を示す筆跡乃至塗膜を得ることができることを見出し本発明に至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、視角依存多色性粒子及びパール顔料を含む視角依存多色性組成物である。組成物中に視角依存多色性粒子とパール顔料とを含むことにより、視角依存多色性粒子が呈する本来の色変化とは異なる色変化を生じ、筆跡乃至塗膜に視角による所望の色相変化を実現することができる。本発明の視角依存多色性組成物は、視覚的効果を有することから、特に筆記具用またはスタンプ用のインキ組成物として好適である。
【0007】
(視角依存多色性粒子)
本発明の視角依存多色性粒子は、見る角度によって違う色に見えるような効果を示すもので、視角依存多色性粒子や二色性顔料など、見る角度に依存して色調(干渉色)が変化する顔料粒子の総称として定義されるものである。前記視角依存多色性粒子は、かかる粒子であれば特に限定されるものではない。例えば、鉱物、金属、金属化合物、金属酸化物等の積層顔料や、液晶ポリマー、液晶ポリマーの堆積層などが含まれる。これらの視角依存多色性積層粒子は、光の干渉によって生じる干渉色によって視角依存多色性効果を発揮するものであり、いわゆる虹彩色顔料も含まれる。
【0008】
本発明の視角依存多色性粒子は、積層構造を有し、光学的反射層をもつ粒子が好適に用いられる。前記複層構造は基板層及び被覆層を有し、被覆層は単層でも複層でも良く、光学的反射層は粒子の内層或いは外層を問わない。また、光学的反射層は粒子の基板層或いは被覆層を問わない。また、光学的反射層は光学的反射体として上記粒子とは独立した物質として構成される場合も含まれる。また、例えば、光学的反射層は反射率が0.3以上、或いは0.4以上、或いは好ましくは0.5以上である粒子が好適に用いられる。
【0009】
また、本発明の視角依存多色性粒子の好適な基板層と被膜層の組み合わせとしては、基板層として酸化ケイ素、被膜層として酸化鉄、又は酸化チタンで構成された粒子として、例えば商品名「Color Stream Autumn Mystery」、「Color Stream T20−01 W2」、「Color Stream F20−00 W2」(MERCK社製)がある。
【0010】
視角依存多色性粒子の好適な基板層と被膜層の組み合わせとしては、前記基板層をアルミニウム膜で構成し、前記被膜層に関しては、基板層側をフッ化マグネシウム膜、反基板層側のクロム膜で構成することが好ましい。一例を挙げれば、「Roger W. Phillips et al. USP 5,653792(1997),Flex Products, INC.」に開示されたフッ化マグネシウム、クロム被覆のアルミニウムを用いることができる。例えばFlex Products, INC.社製の商品名「CHROMAFLAIR」を例示することができる。
【0011】
また、視角依存性多色性粒子には、好適には光学的鏡面反射層をもつフレーク状の平滑な視角依存多色性粒子を用いることができる。例えば、光学的鏡面反射面をもつ基板層と、光を干渉させる被膜層とからなる平滑なフレーク状の積層粒子で構成されており、前記基板層は鏡面反射の金属膜で構成され、前記被膜層は屈折率が異なる種以上の金属乃至金属化合物膜で構成されている粒子である。この粒子の場合、粒子表面に入射した光は、被膜層の表面において一部が反射し、一部が被膜層の内部において屈折、反射、透過し、この屈折、透過した一部の波長の光がその後基板層で反射した後再び被膜層で屈折、透過し、この光が前記被膜層の表面及び内部で反射した光と合成された特定波長の光として干渉しあったとき、当該粒子内から粒子外に射出する特定波長の干渉光として、視角に応じた干渉色を与えるものである。前記金属塗膜の基板層としては特に限定されないが、光の反射率が0.5以上である金属単体又は合金が好ましい。具体的には、銀(反射率:0,94)、アルミニウム(反射率:0.83)、金(反射率:0.80)、ニッケル(反射率:0.63)等が例示される。
【0012】
また、基板層としては金属膜に限定されず、酸化鉄Fe2O3を用いることもできる。また、被膜層も特に限定されず、硬屈折率の半透明の金属又は金属化合物(金属酸化物を含む)と低屈折率の透明の金属又は金属酸化物(金属酸化物を含む)を交互に積層したものを用いることができる。
【0013】
また前記基板層を酸化鉄Fe2O3とし、その周辺を酸化ケイ素SiO2と酸化鉄Fe2O3の2層の金属膜で被覆したものを好適に使用できる。一例を挙げれば、基板層としてアルミまたはMIO(マイカ状酸化鉄)、被覆層として酸化ケイ素、酸化鉄の順に積層した顔料粒子として、例えば、BASF株式会社製の商品名「Variocrom Magic Red L4420」、「Variocrom Magic Purple L5520」、または、「Variocrom Magic Gold L1400」を例示することができる。また、被覆層としてアルミ−マンガン、基板層として雲母状酸化鉄(III)からなる粒子を用いることができる。例えば、BASF株式会社製の商品名「Paliocrom Copper L3000」及び「Paliocrom Copper L3001」を例示することができる。
【0014】
上述のように、前記視角依存多色性粒子は、粒子中に基板層と被膜層を含み、前記基板層または前記被膜層が少なくとも珪素化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、及びチタン酸化物のうちのいずれかの化合物を含む視角依存多色性粒子であることが好ましい。
【0015】
また、視角依存多色性粒子として、コレステリック液晶ポリマーも好適に使用することができる。本発明でいうところの「コレステリック液晶ポリマー」とは、螺旋構造を持つコレステリック液晶ポリマーの粒子として定義される光輝材であり、薄片状の粒子である。例えば、一方向に光学的に配向して並んだ液晶ポリマー粒子の層を、前記ポリマー粒子の配向方向が階層的に螺旋状になるように、複数層重ね合わせて光学的反射層とした薄片状の粒子を用いることができる。その結果、このコレステリック液晶ポリマー粒子は、この光学的に配向したポリマー粒子の螺旋状の重なり具合によって、見る角度に応じて、広いスペクトル領域でこの粒子表面に入射する光のうちの一部の波長領域のスペクトル成分のみを反射し、これ以外の領域の波長をすべて透過するという特性をもつ。反射したスペクトル成分の領域は、ポリマー粒子の配向が一回転(1周期)した際の光学的反射層のピッチ幅、および、材料の屈折率により決まる。反射されるスペクトル領域は、左螺旋および右螺旋に偏光した光線成分に分割され、その際、螺旋の回転方向に応じて、一方は反射され、他方は透過するため、このコレステリック液晶ポリマーは全体的なスペクトル領域にわたり、透過性を持つ。この液晶ポリマーを用いることにより、本発明の目的である視角依存多色性をもつ筆跡乃至塗膜を得ることができる。また、コレステリック液晶ポリマー粒子は、従来のアルミニウム顔料やパール顔料や、前記の視角依存多色性粒子等と比較して、低比重のため、分散性に優れる。さらに低粘度においてもコレステリック液晶ポリマー粒子の沈降性が少ない。また、このコレステリック液晶ポリマー粒子は、透明性が高いため、2種以上のコレステリック液晶ポリマー粒子の混合により、新しい色彩効果が色の濁りなく得られる。更に下地の色、他の着色剤とのブレンドにより色調を変えることが可能である。本発明において使用されるコレステリック液晶ポリマー粒子としては、例えば、独ワッカケミー社(Wacker−ChemieGmbH社)製「ヘリコーン(HELICONE) 450」、「同516」、「同575」、「同624」、「同HC」を例示することができる。
【0016】
本発明で用いる視角依存多色性粒子は、上記に例示した各種粒子をそれぞれ単独で用いることができるが、2種以上の粒子を組み合わせて用いることも出来る。
【0017】
本発明で用いられる視角依存多色性粒子のメジアン径は、本発明の視角依存多色性組成物をインキ組成物として用いる場合には、1.0〜100μmが好適である。フレーク状の顔料のメジアン径が1.0μm未満の場合は、粒子が小さすぎるため発色に劣り、また、200μmを超えると、粒子が狭い管を通過する必要のあるボールペンなどの筆記具又は塗布具に用いるインキとして使用する場合、ペン先から出にくいため好ましくない。またさらに良好な発色性を実現し、狭い管を通過する必要のあるボールペンなどの筆記具又は塗布具に好適に用いるインキとするためには、上記粒子の最大径を1.0〜200μm、最適には10〜100μmとすることが好ましい。
【0018】
なお、本発明の視角依存多色性組成物をスタンプインキとして使用する場合は、視角依存多色性粒子の平均粒子径を500.0μm以下とすることが好ましい。視角依存多色性粒子の平均粒子径が500.0μmを超える場合は、粒子がスポンジの狭い孔を通過する必要があるスタンプインキとして使用する場合、スポンジから出難いため好ましくない。スタンプインキとして更に好適な視角依存多色性粒子の平均粒子径は1.0〜110.0μmである。
【0019】
本発明の視角依存多色性組成物で用いる視角依存多色性粒子は、本発明の視角依存多色性組成物をインキ組成物として用いる場合には、インキ組成物全量中で0.5〜40重量%含まれていることが好ましい。上記視角依存多色性粒子がインキ組成物全量中で0.5重量%未満である場合には、白色下地上での発色性、ならびに、視角依存多色性が十分でない。また、上記視角依存多色性粒子がインキ組成全量物中40重量%を超えると、固形分が多くなり、インキの流動性が低下し、筆記性が低下する。視角依存多色性粒子の最適配合量はインキ組成物全量中1.0〜20.0重量%である。
【0020】
本発明で使用する視角依存多色性粒子は、フレーク状(板状)の形態を成していることが好ましい。フレーク状の粒子とすることにより、筆記面乃至塗布面が被覆されやすいほか、視角依存多色性の干渉色が強く現れ、しかも視角依存多色性の干渉色を筆記面乃至塗布面に均一に与えることができる。
【0021】
(パール顔料)
本発明のパール顔料は、パール調の光沢をもつものであれば特に限定されるものではなく、マイカ(雲母)を二酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物で被覆したマイカ顔料であっても雲母形状酸化鉄(MIO)を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した顔料であっても良い。パール顔料としては、例えば、商品名「Iriodin 7205」、「Iriodin 7215」、「Iriodin 7217」、「Iriodin 7219」、「Iriodin 7225」、「Iriodin 7235」、「Iriodin205」、「Iriodin215」、「Iriodin217」、「Iriodin219」、「Iriodin225」、「Iriodin235」(以上、メルク社製)などを用いることができる。パール顔料は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
本発明に用いるパール顔料は、本発明の視角依存多色性組成物をインキ組成物として用いる場合には、インキ組成物全量中0.5〜40重量%含まれていることが好ましい。上記パール顔料がインキ組成物全量中0.5重量%未満である場合には、筆跡乃至塗膜の視角依存多色性組成物に用いた視角依存多色性粒子の本来の色相変化となり、所望の色相変化を得ることが難しい。また、上記パール顔料がインキ組成全量物中40重量%超えると、固形分が多くなり、流動性が低下し、筆記性が低下する。前記パール顔料の最適配合量はインキ組成物全量中1.0〜20.0重量%である。
【0023】
本発明に用いるパール顔料の粒子径は、特に制限されないが、本発明の視角依存多色性組成物をインキ組成物として用いる場合には、平均粒子径1〜100μmであることが望ましい。前記パール顔料の平均粒子径が1μm未満である場合には所望の色変化を得るために多量にパール顔料を配合することが必要となる。また、前記パール顔料の平均粒子径が100μmより大きい場合には、ペン先で詰まりやすくなる。
【0024】
本発明の視角依存多色性組成物は、少なくとも視角依存多色性粒子とパール顔料とを含むものであるが、パール顔料を含むことにより視角依存多色性組成物の色相変化が視角依存多色性粒子の色変化に固定されず、パール顔料の種類により多様な色変化を実現することができる。例えば、赤色から黄色の色変化をする視角依存多色性粒子(商品名「Color Stream Autumn Mystery」、メルク社製)を含む視角依存多色性組成物中に、青色系パール顔料(商品名「Iriodin7225」、メルク社製)を配合した場合には、青紫色から銀色の色相変化とすることができる。また、同様に赤色から黄色の色変化をする視角依存多色性粒子(商品名「Color Stream AutumnMystery」、メルク社製)を含む視角依存多色性組成物中に、紫色系パール顔料(商品名「Iriodin7219」、メルク社製)を配合した場合には桃色から銀色の色相変化、緑色系パール顔料(商品名「Iriodin7235」、メルク社製)を配合した場合には茶色から緑色の色相変化、黄色系パール顔料(商品名「Iriodin7205」、メルク社製)を配合した場合にはゴールド色から橙色の色相変化、赤色系パール顔料(商品名「Iriodin7215」、メルク社製)を配合した場合にはゴールド色から赤色の色相変化、橙色系パール顔料(商品名「Iriodin7217」、メルク社製)を配合した場合にはゴールド色から赤色の色相変化とすることができ、パール顔料を適宜選択することにより、視角依存多色性組成物について視角に依存する所望の色変化を得ることができる。なお、本発明の光輝性組成物において、(1)視角依存多色性粒子と(2)パール顔料との比は、特に限定されるものではないが、
(1)/(2)=90/10〜10/90(質量比)
であることが好ましい。前記比が90/10を超えると(視角依存多色性粒子が多すぎると)視角依存多色性粒子の本来の色変化と異なる色変化を得ることが難しく、10/90未満であると(視角依存多色性粒子が少なすぎると)視角依存多色性を組成物または筆跡乃至塗膜に得ることが難しい。
【0025】
(濃色系着色剤)
本発明の視角依存多色性組成物を、インキ組成物等のように被塗物に塗布することにより筆跡乃至塗膜を形成する用途に用いる場合には、白紙等の白色被塗物上に筆跡乃至塗膜を形成した場合でも視角に依存した所望の色相変化を得るために、視角依存多色性インキ組成物中に濃色系着色剤を含むことが好ましい。本発明の視角依存多色性組成物は、濃色系着色剤を含まない場合であっても色変化をするが、白紙上において、筆跡をより見やすくし、色変化をより確認しやすくするために、濃色系着色剤を含むのが好ましい。前記濃色系着色剤は、紙面に浸透しパール顔料を発色させるための下地を作る性質を有するものであれば特に限定されるものではなく、黒色染料、黒色顔料、青色染料、青色顔料、緑染料、緑顔料、紫色染料、紫色顔料、着色アルミフレーク、着色樹脂球等を用いることができるが、黒色染料、黒色顔料等の黒色着色剤を用いることが、本発明の視角依存多色性組成物をインキ組成物とした場合に均一な筆跡を得ることができるので好ましい。黒色染料としては、例えば、商品名「Water Black R500」(オリエント化学社製)、紫色顔料としては商品名「ファストゲン スーパーバイオレット RVS」(大日本インキ化学工業社製)、紫色染料としては商品名「Acid Violet 4BL」(住友化学工業社製)を用いることができ、黒色顔料としては、例えば、商品名「モナーク800」(キャボット社製)、商品名「PRINTEX G」(デグサ社製)を用いることができる。なお、本発明の濃色系着色剤は、JIS Z 8102(1985)の「物体の色名」にて定められている明度4以下の黒色、暗い色、ごく暗い色、暗い灰色、こい色を呈する着色剤が、白色被塗物上に筆跡乃至塗膜を形成した場合でも視角に依存した所望の色相変化を良好に得ることができるので好ましい。
【0026】
また、視角依存多色性粒子の下地を濃色化するためには、濃色系顔料である顔料は視角依存多色性粒子の厚みよりも十分に小さい粒径であることが好ましい。この粒径とは、遠心沈降式光透過型粒度分布計(例えば、堀場製作所製 CAPA―700)で測定して、平均粒子径で0.01〜0.5μmであることが好ましい。前測定機では測定することは不可能であるが、顔料の平均粒子径が0.01μm未満の場合は、理論的には顔料の透明性が増し、視角依存多色性粒子の下地の濃色化用途には、多量の顔料の添加が必要となるような不具合がある。フレーク状である視角依存多色性粒子の最大径が10μmを下回ると、筆跡乃至塗膜としての視角依存多色性粒子の厚みは0.5μm程度となる。よって、平均粒子径が0.5μmを超える顔料粒子は視角依存多色性粒子表面での光の反射を阻害し、または視角依存多色性粒子表面を隠蔽して目的の視角依存多色性の効果が十分観察できなくなる。前述粒度分布計で測定した場合の顔料(光学的吸収剤)の最適な平均粒子径は0.03〜0.3μmである。
【0027】
前記濃色系着色剤の視角依存多色性組成物中の含有量は、視角依存多色性組成物全量中0.01〜20重量%を含むことが好ましく、0.05〜5重量%であることがより好ましい。前記含有量が視角依存多色性組成物全量中0.01重量%未満である場合には、本発明の視角依存多色性組成物を白紙等の白色被塗物上に塗布した際に、パール顔料の発色が白色被塗物の光反射により阻害されて、視角依存多色性組成物による筆跡乃至塗膜の視角に依存する色変化が視角依存多色性粒子の本来の色変化となる。前記含有量が20重量%より多い場合には、前記濃色系着色剤による着色剤濃度が高くなるために、前記濃色系着色剤の発色により視角依存多色性粒子若しくはパール顔料の発色が阻害される。
【0028】
(多糖類)
本発明の視角依存多色性組成物は、水性インキ組成物として用いる場合には、多糖類を含むことができる。前記多糖類は、視角依存多色性粒子及びパール顔料の沈降を防止することができ、粘度調整をすることができるものであれば特に限定されるものではないが、微生物産系多糖類及びその誘導体、水溶性植物系多糖類およびその誘導体、並びに水溶性動物系多糖類およびその誘導体を用いることができる。前記多糖類は、水に溶解して水溶液とし、粘度調整剤として用いることもできる。
【0029】
前記多糖類は、一例を挙げれば、微生物産系多糖類及びその誘導体が用いられる。例えば、プルラン、ザンサンガム、ウェランガム、ラムザンガム、サクシノグルカン、デキストラン等を例示することができる。また、水溶性植物系多糖類およびその誘導体が用いられる。例えば、トラガンシガム、グァ−ガム、タラガム、ロ−カストビ−ンガム、アラビアガム、ペクチン、デンプン、カラギ−ナン、寒天、アルギン酸等を例示することができる。また、水溶性動物系多糖類およびその誘導体が用いられる。例えば、ゼラチン、カゼインを例示することができる。これらの多糖類は、所定の分解処理を行うと多糖の構成単位であるグルコース、マンノースなどの単糖に分解される性質をもつ物質である。
【0030】
本発明で水を用いる場合には、上述した糖類の中でも特に微生物産系多糖類及びその誘導体が用いられる。特に、ザンサンガム、ウェランガム、ラムザンガム、サクシノグルカン、デキストランから選ばれる微生物産系多糖類及びその誘導体は、視角依存多色性粒子が複数の金属要素を含む積層粒子や、粒子径の大きな前記のコレステリック液晶ポリマーであっても、擬塑性流動特性が優れており、長期にわたって視角依存多色性粒子の沈降防止効果が良好であり、インキとしての保存安定性に優れている。中でも特にフレーク状の平滑な視角依存多色性粒子に対する擬塑性流動特性が優れている。従って、ポールペン等の筆記具に適用した場合、筆記時に上記粒子がチップ先端部から均一に良好に安定して流出し、フレーク状の平滑な視角依存多色性粒子が筆跡乃至塗膜に水平に並びやすく、強い干渉光(干渉色)を筆跡乃至塗膜に現出し易い。なお、上述した多糖類は1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
前記多糖類の視角依存多色性組成物中の含有量は、視角依存多色性組成物全量中0.01〜20重量%含まれていることが好ましく、0.05〜5重量%含まれていることがより好ましい。前記多糖類が視角依存多色性組成物全量中20重量%を超える場合は、インキとしては粘度が高くなるため、筆記性が低下する。前記糖類が視角依存多色性組成物全量中0.01重量%未満の場合は、視角依存多色性粒子及びパール顔料の沈降防止効果が充分でなく、ペン先で詰まりやすくなる。
【0032】
(その他の成分)
本発明の視角依存多色性組成物は、その他の成分として、水溶性有機溶剤等の溶剤、界面活性剤、潤滑剤、防腐剤、防黴剤、濃色系以外の着色剤(有機顔料、染料)、樹脂成分を含むことができる。また、樹脂形成品、塗料、化粧品等の使用用途に適合させるために、前記成分並びにそれ以外の公知の成分を含んでいてもよい。
【0033】
本発明では溶媒を用いることが出来る。溶媒は目的により水を主溶媒とする場合と、有機溶剤を主溶媒とし、実質的に水を含まない場合とを選択できる。水を主たる溶媒として用いる場合は、インキ組成物に遅乾性を付与し、インキを収容したペン先等の乾燥を防止する目的で採用される。水性インキ組成物において、ペン先等の乾燥防止の為には、水の乾燥速度をさらに遅らせる為に水溶性有機溶剤を添加できる。例えば、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル等のグリコ−ル類、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコ−ルモノメチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルモノメチルエ−テル、ジプロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、ジプロピレングリコ−ルモノプロピルエ−テル等のグリコ−ルエ−テル類を例示することができる。これらの有機溶剤は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
有機溶剤を主たる溶媒として用いる場合は、インキを速乾性とする目的と、難揮発性とする目的の両方に適用できる。ゲル化することにより、棒状の固形インキとすることも容易である。有機溶剤の選択は、速乾性、遅乾性などインキに必要とされる特性に応じて、1種または2種以上の有機溶剤を適宜用いることができる。有機溶剤の一例を挙げれば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素や脂肪族炭化水素、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、セロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類等がある。
【0035】
また、本発明においては、その他必要に応じて、界面活性剤としては、適宜、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、ベタイン系、シリコン系、フッ素系の界面活性剤、ポリオキシエチレンアルカリ金属塩、ジカルボン酸アミド、リン酸エステル、N―オレイルサルコシン塩等の潤滑剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールジシクロヘキシルアンモニウムナイトレート等の防錆剤、ベンゾイソチアゾリン系、ペンタクトとフェノール系、クレゾール等の防腐防黴剤等を視角依存多色性組成物中に含むことができる。これらの添加剤は、1種または2種以上を使用できる。
【0036】
本発明においては、視角依存多色性組成物中に濃色系以外の色相(白、赤等)の着色剤(有機顔料、染料)を視角依存多色性粒子及びパール顔料の発色を疎外しない程度に含むことができる。例えば、無機顔料(例えば、酸化チタン等)、有機顔料(例えば、アゾ系顔料、縮合ポリアゾ系顔料等)、樹脂着色体、染料などを用いることができる。着色剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0037】
本発明では、または視角依存多色性粒子、特にフレーク状の視角依存多色性粒子を被塗物質(下地)に定着させる目的、被塗物を保護する塗膜を形成する目的、樹脂形成物を形成する目的で樹脂成分を用いることができる。本発明で用いる樹脂成分は、溶媒に混和する樹脂の成分の中から適宜選択して使用できる。溶媒に水を使用する場合の樹脂成分には、水溶性糊剤が好適に用いられる。一例を挙げれば、アラビアガム、デキストリン誘導体、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸や、アクリル酸系共重合体、その他無水マレイン酸のような水溶性官能基を持つ単量体など、水溶性の天然、あるいは合成樹脂が好適に使用できる。また、上記樹脂のように、水に溶解するのではないが、分散状態で混和できるエマルジョン、ディスパージョン系の糊剤もフレーク状顔料を下地に定着させる目的で好適に使用できる。
【0038】
また、溶剤に有機溶剤を使用する場合の樹脂成分としては,油溶性樹脂が好適に用いられる。一例を挙げれば、脂肪族、脂環族、芳香族の石油系炭化水素樹脂、スチレン系、アクリルエステル系、酢酸ビニル系、テルペン系などのビニル樹脂、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、フェノール系、キシレン系、アクリルエステル系、酢酸ビニル系、テルペン系などのホルマリン縮合樹脂やそのアルキル変性樹脂、その他、ポリアミド樹脂、ケトン樹脂、ロジンまたはその変性樹脂など、合成、半合成、天然の油溶性樹脂が、有機溶剤の種類により適宜選択して使用できる。
【0039】
前記樹脂成分の配合量は、本発明の視角依存多色性組成物をインキ組成物に使用する場合には、インキ組成物全量中1.0〜30.0重量%含まれていることが好ましい。上記樹脂成分がインキ組成物全量中1.0重量%未満の場合は、下地への視角依存多色性粒子の定着性が充分でなく、インキ組成物全量中30.0重量%を超える場合は、インキとしては粘度が上がりすぎ、流動性が低下し、筆記性が低下する。樹脂成分の最適配合量は5.0〜20.0重量%である。また、上述した樹脂成分は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
(粘度範囲)
本発明の視角依存多色性組成物をインキ組成物として使用する場合には、インキ組成物の好適な粘度範囲は500〜15000mPa・sである。なお、粘度はELD型粘度計(3゜R14コーン、回転数:0.5rpm、20℃)による測定値である。
【0041】
(使用形態)
本発明の使用形態としては、特に限定されるものではないが、好ましい使用形態の例としては、美爪料のようなボトル型容器に視角依存多色性組成物を収容し、刷毛等で塗布する形態、金属又は樹脂等のチューブに視角依存多色性組成物を収容し、必要量のみチューブから絞り出して使用する形態、筒状容器内のスポンジ等のインキ吸蔵体に視角依存多色性組成物を含浸させたうえ吸蔵体で直接スタンプし、視角依存多色性組成物を塗布する形態、視角依存多色性組成物をインキ収容管に収容し、インキ収容管の一端にボールペン先等の塗布部品を配してペン先でインキを塗布する形態などが挙げられる。また、本発明の視角依存多色性組成物を液状として所望の粘度に希釈した後に、刷毛またはスプレーにより視角依存多色性組成物を塗布する形態、視角依存多色性組成物を金型内部に注入した後に固化させて樹脂成形物とする形態として使用しても良い。
【0042】
特に好ましい形態としては、いわゆる水性ゲルインキボールペンである。発明者又は出願人は、フレーク状顔料粒子を用いた場合に好適な筆記具、および、ボールペンチップの形態に関する発明も出願している(特願平11−258189号、同265232号、同265233号、特願2000−30124号)。これらの採用は、本発明のインキ組成物をボールペンで筆跡を得る上において最適である。
【0043】
本発明のボールペンに用いられる視角依存多色性組成物の製造方法は、一般的な製造方法で製造することが可能であり、特に限定されるものでない。本発明に使用される濃色系着色剤に顔料を用いる場合には、視角依存多色性組成物を製造する前に濃色系着色剤である顔料を分散し、視角依存多色性組成物の製造に顔料分散体として用いても良い。また、本発明に使用される多糖類を、視角依存性多色性組成物の製造の前に水に溶解して粘度調整剤とし、視角依存性多色性組成物の製造に用いても良い。なお、前記の製造に際しては、従来公知の分散方法、脱泡方法、濾過方法などを採用することができる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明の実施例及び比較例を説明する。
【0045】
(顔料分散体の調整例)
表1に示す組成及び配合で、次の操作により黒色顔料分散体及び緑色顔料分散体を調整した。まず、スチレンアクリル樹脂を水酸化ナトリウム及びイオン交換水とともに公知の撹拌装置を用いて加熱溶解し、エチレングリコールと黒色顔料または緑色顔料とを加えて撹拌した後に、公知のビーズミルにて表1の分散時間で分散することにより、顔料濃度が10重量%である黒色顔料分散体及び緑色顔料分散体を得た。なお、黒色顔料には商品名「モナーク800」(キャボット社製)、緑色顔料としては商品名「ファストゲングリーンB」(大日本インキ化学工業社製)、スチレンアクリル樹脂には商品名「ジョンクリル683」(ジョンソンポリマー社製)を用い、水酸化ナトリウム及びエチレングリコールには試薬を用いた。
【0046】
【表1】
【0047】
(粘度調整剤の調整例)
多糖類であるサクシノグリカン(商品名「レオザン」、三晶社製)をイオン交換水に多糖類の濃度が1重量%となるように投入し、公知の撹拌装置により1時間撹拌し、サクシノグリカン1重量%水溶液を得て、粘度調整剤とした。
【0048】
(実施例及び比較例)
表2及び表3の配合量の各原料を公知の撹拌装置に投入し、1時間撹拌することにより混合攪拌した後、これを濾過し、その後脱泡し、実施例1〜8及び比較例1〜6の水性インキ組成物を得た。分散方法、脱泡方法、濾過方法等は従来公知の方法を用いた。なお、表2及び表3の配合量は重量%である。
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
なお、表2及び表3の各原料とし、以下のものを用いた。
(視角依存多色性粒子)
A:商品名「Color Stream Autumn myatery」、メルク社製
B:商品名「Variocrom Magic Red」(BASF社)
C:商品名「Helicorn Jade」(ワッカ−ケミー社)
(パール顔料)
A:商品名「Iriodin 7235」、メルク社製
B:商品名「Iriodin 7225」、メルク社製
C:商品名「Iriodin 7219」、メルク社製
(濃色系着色剤)
黒色染料:商品名「Water Black R500」、オリエント化学社製
青色染料:商品名「Water Blue #116」、オリエント化学社製
黒色顔料分散体:上記の調整例の黒色顔料分散体を用いた。
緑色顔料分散体:上記の調整例の緑色顔料分散体を用いた。
(水溶性有機溶剤)
グリセリン:試薬
(多糖類)
粘度調整剤:上記の調整例の粘度調整剤を用いた。
【0052】
(評価)
実施例1〜8及び比較例1〜6の各水性インキ組成物をステンレス製のボールペンチップ(ボール材質:炭化珪素、ボール径:1.0mm)を一端に連設した半透明のポリプロピレン製の中空軸筒より成るインキ収容部に充填し、このインキ収容部を装填した各試験サンプルのボールペンを作成した。各試験サンプルについて、白紙上での角度による色変化、黒紙上での角度による色変化及び筆跡の均一性を評価した。結果は表2に示した。
【0053】
(白紙上での角度による色変化)
各試験サンプルについてケント紙上に筆記して、筆跡の塗り見本をそれぞれ作成し、紙面の角度を変えながら目視で観察し、色変化を評価した。
【0054】
(黒紙上での角度による色変化)
各試験サンプルについて黒画用紙上に筆記して、筆跡の塗り見本をそれぞれ作成し、紙面の角度を変えながら目視で観察し、色変化を評価した。
【0055】
(筆跡の均一性)
各試験サンプルについてケント紙上に筆記して、筆跡の塗り見本をそれぞれ作成し、下記基準により目視で評価した。
均一:均一な筆跡が得られ、鮮明な色変化が観察された。
不均一:下地となる着色剤が滲むため、縁取り状の筆跡となるため鮮明な色変化が観察されなかった。
【0056】
(結果)
実施例1の視角依存多色性インキ組成物の色変化は、白紙上での角度による色変化及び黒紙上での角度による色変化ともに黄緑から桃色への変化であった。これに対し、実施例1に使用した視角依存多色性粒子Aを含み、パール顔料を含まないインキ組成物である比較例1のインキ組成物の色変化は、白紙上での角度による色変化が橙色から黄色への変化であり、黒紙上での角度による色変化が赤色から黄色への変化であった。濃色系着色剤を含まず、視角依存多色性インキ組成物とパール顔料とを含む視角依存多色性インキ組成物は、白紙上での角度による色変化及び黒紙上での角度による色変化ともに、視角依存多色性粒子A本来の色変化と異なる色変化を筆跡において観察した。
【0057】
実施例2、及び実施例3は、視角依存多色性粒子Aとパール顔料Aとを含み、さらに黒色着色剤としてそれぞれ黒色染料または黒色顔料を含む視角依存多色性インキ組成物である。実施例2及び実施例3は、筆跡が、白紙上での角度による色変化及び黒紙上での角度による色変化ともに茶色から緑色への色変化であった。これに対して、パール顔料を含まないインキ組成物である比較例2は、黒紙上での角度による色変化が赤色から黄色であり、白紙上での角度による色変化が赤色から黄色であり、比較例1と比べて視角依存多色性粒子A本来の色変化と同一若しくは近似の色相への変化であった。
【0058】
実施例7及び実施例8は、視角依存多色性粒子Aとパール顔料Aとを含み、濃色系着色剤としてそれぞれ緑色顔料または青色染料を含む視角依存多色性インキ組成物である。実施例7は、筆跡が、白紙上での角度による色変化及び黒紙上での角度による色変化ともに黄緑から茶色への色変化であり、実施例8は、筆跡が、白紙上での角度による色変化及び黒紙上での角度による色変化ともに橙色から緑色への色変化であった。これに対し、パール顔料Aを含まずに視角依存多色性粒子Aと緑色顔料とを含むインキ組成物である比較例5は、筆跡が、白紙上での角度による色変化が緑色から桃色であるが、黒紙上での角度による色変化が赤色から黄色であり、比較例1と比べて視角依存多色性粒子A本来の色変化と黒紙上での色変化が同じだった。また、パール顔料Aを含まずに視角依存多色性粒子Aと緑色染料とを含む比較例6は、白紙上での角度による色変化が桃色から橙色であるが、黒紙上での角度による色変化が赤色から黄色であり、比較例1と比べて視角依存多色性粒子A本来の色変化と黒紙上での色変化が同じであった。つまり、視角依存多色性粒子、パール顔料及び濃色系着色剤を含む視角依存多色性インキ組成物は、パール顔料を含まずに視角依存多色性粒子及び濃色系着色剤を含む視角依存多色性インキ組成物に比べて、白紙上でも黒紙上でも異なる色変化の視角依存多色性の筆跡を得ることができる。
【0059】
実施例4は、視角依存多色性粒子A、パール顔料B及び黒色染料を含む視角依存多色性インキ組成物である。実施例4は、白紙上での角度による色変化及び黒紙上での角度による色変化ともに筆跡が紫色から銀色への色変化であり、実施例2と比べて、パール顔料が異なることにより、異なる色変化の筆跡を得ることができる。
【0060】
実施例5は、視角依存多色性粒子B、パール顔料A及び黒色染料を含む視角依存多色性インキ組成物である。実施例5は、筆跡が、白紙上での角度による色変化が茶色から緑色への色変化であり、黒紙上での角度による色変化が橙色から緑色への色変化である。実施例5の視角依存多色性インキ組成物の黒紙上での角度による色変化は、視角依存多色性粒子Bと黒色染料を含み、パール顔料を含まない比較例7の視角依存多色性インキ組成物の黒紙上での角度による色変化に比べて、視角依存多色性粒子B本来の色変化である赤色から橙色への色変化とは異なり、黄緑色から茶色への色変化を示した。また、実施例5の視角依存多色性インキ組成物は、白紙上においても、角度による色変化が視角依存多色性粒子B本来の色変化と異なる色変化を示した。
【0061】
実施例6は、視角依存多色性粒子C、パール顔料C及び黒色染料を含む視角依存多色性インキ組成物である。実施例6は、筆跡が、白紙上での角度による色変化が茶色から緑色への色変化であり、黒紙上での角度による色変化が橙色から緑色への色変化であり、視角依存多色性粒子及びパール顔料が異なっても、視角依存多色性粒子本来の色変化と異なる色変化の筆跡を得ることができる。また、実施例6の視角依存多色性インキ組成物の黒紙上での角度による色変化は、視角依存多色性粒子Cと黒色染料を含み、パール顔料を含まない比較例8の視角依存多色性インキ組成物の黒紙上での角度による色変化に比べて、視角依存多色性粒子C本来の色変化である黄色から緑色への色変化とは異なり、赤色から緑色への色変化を示した。また、実施例6の視角依存多色性インキ組成物は、白紙上においても、角度による色変化が視角依存多色性粒子C本来の色変化と異なる色変化を示した。
【0062】
また、筆跡の均一性については、実施例1〜6については全て良好であるのに対し、実施例7及び実施例8については筆記の均一性が不均一であり、比較例5及び6では、筆記の均一性が不均一であった。実施例7及び実施例8は筆記の均一性が不均一ではあるものの、白紙上のみならず黒紙上でも視角依存多色性粒子の本来の色変化と異なる色変化を観察することができた。
【0063】
さらに、実施例2乃至8の視角依存多色性インキ組成物は、濃色系着色剤を含んでいるために、濃色系着色剤を含んでいない実施例1の視角依存多色性インキ組成物に比べて、筆跡を視認しやすく、色変化も確認が容易であった。特に、濃色系着色剤として黒色系着色剤を用いた実施例2乃至6の視角依存多色性インキ組成物については、さらに、均一な筆跡が得られている。
【0064】
【本発明の効果】
本発明の視角依存多色性組成物は、視角依存多色性粒子及びパール顔料を含有することにより、視角依存多色性粒子が有する本来の色変化とは異なる色変化を得ることができ、前記視角依存多色性組成物をインキ、樹脂形成物、絵の具、塗料、化粧品、スタンプインキに用いることにより、視角に依存する所望の色変化を有する筆跡、塗膜、形成物等を得ることができる。特にボールペン等の筆記具、スタンプ及び絵の具に好適に用いることができ、また、フェーシャル化粧料、メークアップ化粧料、ヘア化粧料などの化粧料に用いることができ、特にマニキュア、ペディキュア、ネイルポリッシュ、マスカラ、アイライナー、アイシャドー、口紅、頬紅、ファンデーション等にも好適に用いることができる。
Claims (3)
- 少なくとも視角依存多色性粒子及びパール顔料を含み、
視角依存多色性粒子はフレーク状からなり、
一方向に光学的に配向して並んだ液晶ポリマー粒子の層を、前記ポリマー粒子の配向方向が階層的に螺旋状になるように、複数層重ね合わせて光学的反射層とした薄片状の粒子から構成されたコレステリック液晶ポリマーを含む視角依存多色性粒子であり、
上記視覚依存多色性粒子は0.5〜40重量%を含み、
パール顔料はその粒子径は平均粒子径1〜100μmであって、0.5〜40重量%含まれており、
さらに多糖類を0.01〜20重量%、
濃色系着色剤を0.01〜20重量%を含み、
粘度範囲が、E型粘度計(3゜R14コーン、回転数:0.5rpm、20℃)による測定値で500〜15000mPa・sである
筆記具用水性インキ組成物。 - 濃色系着色剤が黒色着色剤である請求項1記載の筆記具用水性インキ組成物。
- 濃色系着色剤が顔料であって、
その平均粒子径が0.01〜0.5μmである請求項1記載の筆記具用水性インキ組成物。
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