JP3965100B2 - 簡易アイゼン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、雪の低山、雪渓又は滑りやすい泥道を歩行する際に登山靴に取り付けて使用するのに適当な簡易アイゼンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アイゼンは、云うまでもなく、雪山の氷雪上を安全に歩行するために登山靴に取り付けて使用するものであるが、厳しい冬山登山ばかりでなく、雪の低山、夏の雪渓、或いは滑りやすい泥道でもその滑落防止のために有効である。そしてこのような軽登山で使用する簡易アイゼンには非常に多くのそれが提供されているが、いずれも、その着脱が厄介であったり、携帯に不便であったり、或いは靴の種類によっては装着が不可であったり、若しくは歩行中に前後若しくは左右にずれたりし易い等の問題のいずれかを抱えており、満足のいくものが提供されているとは言い難かった。
【0003】
そこで本発明者はこれらの問題点を解決すべく新たな簡易アイゼン(特許文献1)を提案した。
これは、「相互にフレキシブルなジョイント部材で結合され、それぞれに複数のスパイクを備えたフロントプレート及びヒールプレートと、これらを登山靴に装着するためのバンド手段とを備えたアイゼンに於いて、
前記スパイクを、フロントプレート及びヒールプレートの双方の下方に突き出す複数の突起であって、各々の上部から、該フロントプレート及び該ヒールプレートの上方に立ち上がる横ズレ防止ピンを一体に備えた突起に構成し、
前記バンド手段を、
前記ヒールプレートの両側から各々立ち上げた後部立ち上げ鎖に支持される後部抱持バンドであって、靴の後部を抱持状態に支持する後部抱持バンドと、
前記フロントプレートの両側からそれぞれ二本ずつ立ち上げた前部立ち上げ鎖の内、一側の二つの前部立ち上げ鎖に結合し、他側の二つの前部立ち上げ鎖に着脱自在に結合する靴の前上部抱持バンドであって、その前部立ち上げ鎖と結合した側から後方に延長結合片を延長し、同じ側で前記後部抱持バンドから延長した延長結合片に結合した前上部抱持バンドと、
両側の各二つの前部立ち上げ鎖の内、前部側の前部立ち上げ鎖の上部間に配する靴前部抱え用の前部抱え鎖と、
前記前上部抱持バンドからその前記延長結合片と対称に延長した着脱延長片であって、前記後部抱持バンドからその前記延長結合片と対称に延長した着脱延長片に着脱自在に結合する着脱延長片とで構成し、
かつ前記バンド手段を構成する後部抱持バンド、前上部抱持バンド、該後部抱持バンド及び該前上部抱持バンドの各延長結合片並びに各着脱延長片を弾性材で構成した簡易アイゼン」である。
【0004】
このような簡易アイゼンは、先に述べたそれ以前のアイゼンと比べれば、その着脱も簡単であり、携帯にも不都合がなく、かつ靴の種類を問わず装着可能であり、更に歩行中に前後若しくは左右にずれたりするような問題もなく優れたものであるということができる。
【0005】
しかしその後の更なる検討により、雪が部分的に消えたガレ場、或いは木の枝等が錯綜した灌木帯その他のエリアをこれを外さずに歩いた場合に、バンド手段として使用する弾性材を、その構成上、板状ゴム材を打ち抜いたような部材で構成せざるを得ない関係上、それが損傷する虞を否定し得ないことが明らかになった。またこの簡易アイゼンは、それ以前のアイゼンと比べれば、非常に装着の容易なものではあるが、その装着に際し、登山靴でそのヒールプレート及びフロントプレートを踏んだ状態で、結合用の複数のバンド部材を外側から内側に回してそれらの各先端のフックを内側の部材のリングに掛けるように操作すべきものであるため、各バンド部材の弾力により外側又は内側に引張られがちとなり内外バランス良く装着するのがやや面倒で、使い勝手の点で若干改善の余地がないわけでもないことが分かった。
【0006】
【特許文献1】
登録実用新案第3089356号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の従来技術の問題点を解決し、靴の種類を問わずに簡単に、かつ左右のバランス良く装着でき、更に靴の踵側上部は堅くしっかりと係止可能であるとともに、靴の前甲部は必要以上に締付けないように配慮し、加えて安全な歩行を確保するため歩行中は靴に確実に固定されるものである一方で、使用部材の内、特に弾性材について損傷の危険性を低くした、携帯にも便利な簡易アイゼンを提供することを解決の課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の1は、相互にフレキシブルなジョイント部材で結合され、かつ各々に複数のスパイクを備えたフロントプレート及びヒールプレートと、これらを登山靴に装着するためのバンド手段とを備えたアイゼンに於いて、
前記スパイクを、フロントプレート及びヒールプレートの双方の下方に突き出す複数の突起であって、各々の上部から、該フロントプレート及び該ヒールプレートの上方に立ち上がる横ズレ防止ピンを一体に備えた突起に構成し、
前記バンド手段を、
両端を各々前記ヒールプレートの左右側部から立ち上げ、中間部で、装着する登山靴の踵上部を抱えるとともに、該中間部とその両側の立ち上げ部分との各境界を被吊上部に構成した踵上部抱持鎖と、
両端を各々前記フロントプレートの左右前側部から立ち上げ、中間部で、装着する登山靴の爪先部分を抱えるとともに、該中間部とその両側の立ち上げ部分との各境界を被吊上部に構成した爪先部抱持鎖と、
各々前記フロントプレートの左右後側部から立ち上げ、各上端を被吊上部に構成した左右1対の側部抱持鎖と、
左右両側の前側部と後側部に各一対の吊上補助孔を開口し、装着する登山靴の前甲部に配置して使用される吊上補助片と、
保護被覆を備えた弾性バンド紐であって、その長さ方向中間部を前記吊上補助片の前部中央上に位置させ、その両側への延長部分の途中を各々該吊上補助片の対応する前側部の一対の吊上補助孔の前部側のそれに挿入して垂下させるとともに各々前記爪先部抱持鎖の対応する被吊上部に貫通係止させた上で各々後部側のそれに挿入して該吊上補助片上に引き出し、更にそれぞれを該吊上補助片の対応する後側部の一対の吊上補助孔の前部側のそれに挿入して垂下させるとともに各々対応する側の前記側部抱持鎖の上端の被吊上部に貫通係止させた上で各々後部側のそれに挿入して該吊上補助片上に引き出し、かつ各々を後方に延長させて前記ヒールプレートの踵上部抱持鎖の両側に位置する被吊上部にその直前に固設した抜け止め用の中間係止球の後方を貫通させ、更にその延長部の各端部付近に端部係止球を固設した弾性バンド紐と、
前記弾性バンド紐の端部相互を着脱自在に連結する連結手段と、
で構成した簡易アイゼンである。
【0009】
従って本発明の簡易アイゼンによれば、携帯が容易であり、かつ必要な場合の着脱が容易なものであるが、バンド手段の弾力性を必要とする構成要素として保護被覆を備えた弾性バンド紐を採用したため、装着状態も確実に保持できるものである。即ち、前記バンド手段の弾力性を必要とする構成要素として保護被覆を備えた弾性バンド紐を採用し、その保護被覆による保護を確保したため、及びそれが紐であって、外部の様々なものに接触する面積が狭いため、該弾性バンド紐が損傷を受ける可能性が低いものとなっているからである。
【0010】
更に、該弾性バンド紐は軽量で嵩張らない一本のフレキシブルな部材なので予備品としての携帯にも都合が良く、仮に損傷した場合でも容易に交換可能であるため実質的な安全性の向上が図れる。
【0011】
また本発明の簡易アイゼンによれば、そのヒールプレートを靴の踵部の下に、フロントプレートを爪先部の下に、それぞれ位置させ、吊上補助片を靴の甲の前部に載せ、その吊上補助片及びその各一対の吊上補助孔から垂下した弾性バンド紐の貫通係止部とその被吊上部で係止する吊下対象の前記爪先部抱持鎖等に囲まれた空隙の中に後方から靴の爪先部を挿入し、更に踵上部抱持鎖を靴の踵上部に後方から掛け、加えて弾性バンド紐の両側が左右均等に引かれて締められるため、その装着はバランス良く良好に行われうるものである。
【0012】
続いて弾性バンド紐の両端部のそれぞれを対応する側から足首前方に回し、該両端部を前記連結手段を用いて連結させようとした場合に、弾性バンド紐のそれぞれ足首前方に回した部位相互は構成上弾力的にバランスが取れるため、簡単にその係合操作を行うことができ、全体として装着がバランス良く簡単に行われ得るものとなる。これによって登山靴への装着は完了であり、極めて簡単に装着ができる。
【0013】
なお、前記弾性バンド紐は、前記踵上部抱持鎖の両側の被吊上部では、抜け止め用の中間係止球の後方を貫通させることとしたため、該弾性バンド紐の後方の延長部をいくら強く引いても該中間係止球より前方の部分は該被吊上部を通過して後方に移動することがないので、該中間係止球から前方の部分が締め付けられることはない。従って前記踵上部抱持鎖による登山靴の踵上部の抱持状態をしっかりと強く締め付けた状態にしようとして、該中間係止球から延長後部の先端付近の端部係止球までの長さを短くして足首の前方で両端を前記連結手段を利用して連結したとしても、登山靴の甲側がその影響を受けて強く締め付けられるようなことはない。
【0014】
また本発明の簡易アイゼンは、前記ヒールプレート及び前記フロントプレートの下部にスパイクが突出しており、これによって氷雪上や泥道に於ける滑り止めの効果が十分発揮できるものであるのは云うまでもないが、該ヒールプレート及び該フロントプレートの上面に横ズレ防止ピンを立ち上げているので、歩行中にこれらが前後又は左右にずれるような虞がない。それ故、一層歩行の安全性が確保できる。
【0015】
続いて弾性バンド紐の両端部をそれぞれを対応する側から足首前方に回し、前記連結手段で連結しようとした場合に、弾性バンド紐のそれぞれ足首前方に回した部位相互は構成上弾力的にバランスが取れるため、簡単にその連結操作を行うことができ、全体として装着がバランス良く簡単に行われ得るものとなる。これによって登山靴への装着は完了であり、極めて簡単に装着ができる。
【0016】
本発明の2は、本発明の1の簡易アイゼンに於いて、前記連結手段を、係止孔及び切欠付係止孔を有する紐端留め片であって、該係止孔が、前記弾性バンド紐の一端側をこれに挿入してその端部に固設した端部係止球で抜け止め状態にすることができ、かつ該切欠付係止孔が、該弾性バンド紐の他端側を挿脱自在に挿入してその端部に固設した端部係止球で係止し得るようにしたものである、紐端留め片で構成したものである。
【0017】
従って本発明の2の簡易アイゼンによれば、最後に弾性バンド紐の両端を足首部の前で連結する際は、その一方の端部の紐端留め片を掴んで、他方の端部の端部係止球の手前を該紐端留め片の切欠付係止孔に該切欠から挿入する操作のみで、簡単にそれができることになる。因みに、切欠付係止孔に挿入した端部はその端部係止球が該係止孔の部分に係止することで確かな連結となる。
【0018】
本発明の3は、本発明の1又は2の簡易アイゼンに於いて、前記端部係止球及び前記中間係止球を、それぞれその貫通孔に弾性バンド紐を貫通させ、該弾性バンド紐に形成した結び部を該貫通孔の大径部に嵌入させ、かつ該結び部から延長する部位を該貫通孔の小径部から抜け出るようにして該弾性バンド紐に外装固定したものである。
【0019】
従って本発明の3の簡易アイゼンによれば、前記端部係止球及び中間係止球が前記被吊上部や紐端留め片の係止孔又は切欠付係止孔に確実に係止できるしっかりとしたものに構成できるとともに、その外観も優れたものとなる利点を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ実施例により詳細に説明する。
図1は装着準備状態にある一実施例の簡易アイゼンの概略斜視図、図2は弾性バンド紐に端部係止球又は中間係止球を固設するための構成を示した断面図、図3は端部係止球と組合せて弾性バンド紐の両端部を連結するための紐端留め片の平面図、図4は登山靴に装着した状態の一実施例の簡易アイゼンの概略斜視図である。
【0021】
<実施例>
この実施例の簡易アイゼンは、図1に示すように、フロントプレート1と、ヒールプレート2と、これらを結合するジョイント鎖(ジョイント部材)3と、上記フロントプレート1及び上記ヒールプレート2に配したスパイク4、4…及び横ズレ防止ピン5、5…と、登山靴Sに装着するためのバンド手段とで構成したものである。
【0022】
前記フロントプレート1は登山靴Sの爪先付近から土踏まず手前付近に配して使用されるもので、金属板材、この実施例では、ステンレススチールの板材を打ち抜いて形成したものである。図1に示すように、その内部の二個所を打ち抜き開口させて軽量化を図っている。前記ヒールプレート2は、登山靴Sの踵部の位置に配して使用されるもので、前記フロントプレート1と同様にステンレススチールの板材を打ち抜いて形成したものである。
【0023】
これらのフロントプレート1及びヒールプレート2は、図1に示すように、相互を互いに近接する側の中央部間で前記ジョイント鎖3により結合している。該ジョイント鎖3の長さは、登山靴Sのサイズに合わせて適切な長さに設定しておくものとする。この長さを調節可能としても良いが、登山靴Sのサイズに合わせて数種用意しておく方が適当である。
【0024】
前記フロントプレート1及びヒールプレート2の両側部にはその下方に突出する複数のスパイク4、4…を連設する。この実施例では、図1に示すように、該フロントプレート1の両側部には各々3本のスパイク4、4、4を垂下突設し、該ヒールプレート2の両側部には各々2本のスパイク4、4を垂下突設する。上記各スパイク4、4…は、各々フロントプレート1及びヒールプレート2の該当部位に開口した固定孔に下方から下向き突起部材を挿入し、上方に突き抜けた部位の外周大径部をカシメて固定しているものである。即ち、こうして下方に突出した突起がスパイク4、4…を構成するものである。またこのスパイク4、4…は、上方に突き抜けた部位の外周拡大部をカシメて固定するものであり、該外周拡大部の中心には小さな突起が形成してあり、これが横ズレ防止ピン5、5…となる。
【0025】
前記バンド手段は、図1に示すように、基本的に、前記ヒールプレート2に位置して装着する登山靴Sの踵上部を抱える踵上部抱持鎖6と、前記フロントプレート1の前部に位置して装着する登山靴Sの爪先部分を抱える爪先部抱持鎖8と、各々前記フロントプレート1の左右後側部から立ち上げた左右1対の側部抱持鎖7、7と、左右両側の前側部と後側部に各一対の吊上補助孔を開口し、装着する登山靴Sの甲部に配置して使用される吊上補助片10と、フロントプレート1から立ち上がった爪先部抱持鎖8及び側部抱持鎖7、7を装着する登山靴Sの足先側を抱持させるべく吊上支持し、ヒールプレート2から立ち上がった踵上部抱持鎖6を吊り上げつつ該登山靴Sの踵上部に抱持させ、かつ該登山靴Sの足首に回して固定する、保護被覆を備えた弾性バンド紐9と、該弾性バンド紐9の両端を結合固定するための紐端留め片12とで構成したものである。
【0026】
前記踵上部抱持鎖6は、図1に示すように、両端を各々前記ヒールプレート2の左右側部から立ち上げる立ち上げ鎖部6a、6bと、これらに連続する中間部であり、装着する登山靴Sの踵上部を抱える踵抱持鎖部6eと、該踵抱持鎖部6eとその両側に連続する立ち上げ鎖部6a、6bとの各境界に配した被吊上環(被吊上部)6c、6dとで構成する。
【0027】
前記爪先部抱持鎖8は、図1及び図4に示すように、両端を各々前記フロントプレート1の左右前側部から立ち上げる立ち上げ鎖部8a、8bと、これらに連続する中間部であり、装着する登山靴Sの爪先部分を抱える爪先抱持鎖部8eと、該爪先抱持鎖部8eとその両側に連続する立ち上げ鎖部8a、8bとの各境界に配した被吊上環(被吊上部)8c、8dとで構成する。
【0028】
前記側部抱持鎖7、7は、図1に示すように、各々前記フロントプレート1の左右後側部から立ち上げた立ち上げ鎖部7c、7cと、それらの各上端に配した被吊上環(被吊上部)7a、7b(被吊上環7bは図面中に表れていない)とで構成する。
【0029】
前記吊上補助片10は、図1及び図4に示すように、合成樹脂製の板材での構成したものであり、左右両側の前側部と後側部に各々前後方向に並べた一対の吊上補助孔10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hを開口したものである。これらの吊上補助孔10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hは、後述するように、前記弾性バンド紐9が挿通されることになる。
【0030】
前記弾性バンド紐9は、その弾性材として、この実施例では多数の糸状の合成ゴム材を断面が円柱状になるように束ね合わせ、その外周を伸縮性に富む布で覆って構成したものであり、容易に入手できるものである。
【0031】
前記弾性バンド紐9は、図1及び図4に示すように、その長さ方向の中間部分を前記吊上補助片10に係合し、該吊上補助片10から後方に延長して延びる部分の両末端直前には端部係止球11a、11bを固設し、各々の途中には中間係止球11c、11dを固設する。一方の端部係止球11aの直前の紐部分には、予めこれを係止孔12aに貫通させることで紐端留め片12が取り付けてある。なお前記弾性バンド紐9の該吊上補助片10から後方に延びる二つの延長部分の内、該吊上補助片10から途中の中間係止球11c、11dまでの間を前後連結部9e、9fと称し、該中間係止球11c、11dから末端までの間を踵側締付部9g、9hと称する。
【0032】
前記弾性バンド紐9は、図1及び図4に示すように、その長さ方向の中間部分を中心として、その両側の部分を前記吊上補助片10の最前部の両側の吊上補助孔10a、10eにそれぞれ上方から挿入し、その一方の吊上補助孔10aに挿入した側は、下方からこれと対になる後方の吊上補助孔10bに挿入することで、その部位に吊上垂下部9aを生じさせ、上方に出た部分は更にその後方の吊上補助孔10cに挿入し、下方に出た部分を今度はこれと対になる吊上補助孔10dに挿入することで、その部位に吊上垂下部9cを生じさせ、該吊上補助孔10dから上方に出た部分は後方に延長する。
【0033】
また前記両側の吊上補助孔10a、10eの内、他方の吊上補助孔10eに挿入した側も同様に、図1及び図4に示すように、下方からこれと対になる後方の吊上補助孔10fに挿入することで、その部位に吊上垂下部9bを生じさせ、上方に出た部分は更にその後方の吊上補助孔10gに挿入し、下方に出た部分を今度はこれと対になる吊上補助孔10hに挿入することで、その部位に吊上垂下部9dを生じさせ、該吊上補助孔10hから上方に出た部分は後方に延長する。
【0034】
図1及び図4に示すように、前記吊上垂下部9a、9c、9b、9dの内、吊上垂下部9a、9bは、これを以上のようにセットする際に、予め、前記フロントプレート1の前両側部から立ち上がった爪先部抱持鎖8の両側の被吊上環8c、8dに貫通係止させ、また吊上垂下部9c、9dは、これを以上のようにセットする際に、予め、該フロントプレート1の後両側部からそれぞれ立ち上げた側部抱持鎖7、7の各々の上端の被吊上環7a、7bに貫通係止させる。
【0035】
前記弾性バンド紐9は、前記し、かつ図1及び図4に示すように、その両方の末端直前には端部係止球11a、11bが固設してあり、途中には中間係止球11c、11dが固設してあるが、これらは、前記吊上補助片10の各吊上補助孔10a〜10hへの挿入及び前記各吊上環7a、7b、8c、8dへの貫通係止の後に固設すべきものであることは云うまでもない。
【0036】
もっとも前記弾性バンド紐9は、該吊上補助片10から後方に延びる前後連結部9e、9fと踵側締付部9g、9hとの境界に位置する中間係止球11c、11dについては、これを固設した後に、それより末端側を前記ヒールプレート2の両側から立ち上げた踵上部抱持鎖6の両側の被吊上環6c、6dを貫通させ、該中間係止球11c、11dが各々に係止するようにする。これらの取付が済んだ後、前記端部係止球11aの直前の紐端留め片12を取り付け、その後に前記端部係止球11a、11bを取り付けるべきことになる。
【0037】
前記中間係止球11c、11d及び前記端部係止球11a、11bは、図2に、二点鎖線で表示する弾性バンド紐9と併せて、その断面を示すように、中央を貫通する貫通孔が大径部と小径部とからなり、その径がその両端側で異なり(図2中では大径部側の径Φ1>小径部側の径Φ2)、弾性バンド紐9の該当する部位に結び部9iを形成しておき、これを大径部側に挿入して該中間係止球11c、11d及び該端部係止球11a、11bが結び部9iを形成した側に移動できないようにしたものである。即ち、中間係止球11c、11dは各々前後連結部9e、9f側に結び部9iを形成してその方向に移動不可能であるように取り付け、端部係止球11a、11bは踵側締付部9g、9hの末端側に結び部9iを形成してその方向に移動不可能であるように取り付けたものである。
【0038】
前記紐端留め片12は、図3に示すように、平面から見て長方形の合成樹脂製板材に係止孔12a及び切欠付係止孔12bを形成してなるものである。
【0039】
従ってこの実施例の簡易アイゼンによれば、その登山靴Sへの装着が簡単にでき、かつ装着して氷雪上や泥道を歩く際に滑り止めとして有効に機能すると共に、これが歩行中に前後又は左右にずれることもなく、しかも装着用の弾性バンド手段を損傷する危険もないので、滑落等を防止しながらより安全な歩行を確保することができる。更にはその取り外しも簡単であり、携帯及び保管にも便利である。
【0040】
まずこの実施例の簡易アイゼンの登山靴Sへの装着は次のように行う。
装着に先立って、フロントプレート1とヒールプレート2とを結合するジョイント鎖3の長さを調節しておく。これは、必要以上に長い部分をカットすることにより行うことができる。また装着する登山靴Sの甲側を無用に強くない適切な締付力で保持できるように前後連結部9e、9fの長さを調節しておく。これは該前後連結部9e、9fと踵側締付部9g、9hとの境界を移動させることで行う。この境界の移動は、結び部をどちらかに移動した部分に形成して中間係止球11c、11dをどちらかに移動した部位に係止させることにより行う。
【0041】
更に登山靴Sの踵上部を踵上部抱持鎖6の踵抱持鎖部6eによって十分な締付力をもって締め付けうる長さに踵側締付部9g、9hを調節しておく。これは踵側締付部9g、9hの端部側に於ける端部係止球11a、11bの取り付け位置を調節することにより行う。これはまた端部側の結び部の形成位置を調整することによって行うことができる。なお踵側締付部9g、9hの端部係止球11a、11bより端部側に無用に延びる部分は必要に応じてカットする。
【0042】
このように調節した後、図1に示すように、フロントプレート1及びヒールプレート2を、前者を前に後者を後に位置させながら、その横ズレ防止ピン5、5…の立ち上がった面を上向きにして配し、この上に、図4に示すように、登山靴Sを載せる。図中にはこれを履いている登山者の足は描かれていないが、これは作図の都合上であって、実際には登山靴Sは登山者が履いた状態でこの簡易アイゼンの装着を行う。
【0043】
上記状態のフロントプレート1の上には、登山靴Sの爪先付近から土踏まずの手前付近までを載せ、ヒールプレート2には踵部付近を載せる。図4に示すように、この状態で、踵上部抱持鎖6を登山靴Sの踵部上部側に回し、立ち上げ鎖部6a、6bの上端と踵抱持鎖部6eとの境界の被吊上環6c、6dに貫通してある弾性バンド紐9の前後連結部9e、9fを該登山靴Sの前方の吊上補助片10との間に延長状態としておく。
【0044】
他方、図4に示すように、前記吊上補助片10を持ち上げて、該吊上補助片10から垂下する弾性バンド紐9の吊上垂下部9a、9b、9c、9d及びこれらに被吊上環7a、7b、8c、8dを介して吊り上げられている爪先部抱持鎖8の立ち上げ鎖部8a、8b、爪先抱持鎖部8e並びに側部抱持鎖7、7で囲まれる部分に該登山靴Sの前甲部が装入状態となるようにする。
【0045】
こうした上で、前記弾性バンド紐の前後連結部9e、9fを該登山靴Sの後方に引っ張って、該前後連結部9e、9fと前記踵側締付部9g、9hとの境界に位置する中間係止球11c、11dを立ち上げ鎖部6a、6bの上端と踵抱持鎖部6eとの境界の被吊上環6c、6dに係止させ、該被吊上環6c、6dから端部側の踵側締付部9g、9hを足首部前方に引っ張り、踵上部抱持鎖6の踵抱持鎖部6eを登山靴Sの踵部上部側にしかりと締付固定するとともに、その一方の前端に配してある紐端留め片12の切欠付係止孔12bに他方の端部の端部係止球11bの手前を挿入係止する。これで登山靴Sへのこの実施例の簡易アイゼンの装着は完了である。
【0046】
なお、以上の説明では、ヒールプレート2の踵上部抱持鎖6側の装着から順に説明したが、実際の手順としては、フロントプレート1の爪先部抱持鎖8側から装着する。
【0047】
以上の説明は、図4に示すように、左側の登山靴Sへの装着に関してのみ行ったが、前述のように、この簡易アイゼンは左右対称であり、右側の登山靴Sへの装着操作も左側のそれと左右対称に行えば良く、左側のそれと同様にして、右側用の簡易アイゼンを簡単に装着できる。
【0048】
このようにこの実施例の簡易アイゼンによれば、図4に示すように、フロントプレート1及びヒールプレート2を、登山靴Sの足首後部側では踵上部抱持鎖6で支持し、爪先側では爪先部抱持鎖8で巻いて支持し、側部では側部抱持鎖7、7で支持し、かつこれらの爪先部抱持鎖8及び側部抱持鎖7、7は登山靴Sの前甲部に配置された吊上補助片10の吊上補助孔10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hから垂下された弾性バンド紐9の吊上垂下部9a、9b、9c、9dで吊上げ、また該吊上補助片10は踵上部抱持鎖6とも弾性バンド紐9の前後連結部9e、9fで互いに支持し合い、更に踵上部抱持鎖6は弾性バンド紐9の踵側締付部9g、9hで、前甲部を必要以上に締付けることなく、しっかりと吊上げ締め付けることにより、登山靴Sに装着するものであり、登山靴Sの種類を問わず安全確実に、しかも簡単かつスピーディに装着できるものである。
【0049】
またこの実施例の簡易アイゼンは、前記ヒールプレート2及び前記フロントプレート1の下部にスパイク4、4…を突出させてあり、これによって氷雪上や泥道に於ける滑り止めの効果が十分発揮できるのは云うまでもなく、該ヒールプレート2及び該フロントプレート1の上面に横ズレ防止ピン5、5…が立ち上がっているため、踵上部抱持鎖6、側部抱持鎖7、7及び爪先部抱持鎖8の作用と相俟って、歩行中に該ヒールプレート2及び該フロントプレート1が前後又は左右にズレるような虞がない。それ故、一層歩行の安全性が確保できるものである。
【0050】
更に前記弾性バンド紐9が保護被覆を備えたものであるため、ガレ場の岩に当たったりするようなことがあっても容易に破断等の損傷を生じることがなく、より安全に使用できるものである。
【0051】
【発明の効果】
本発明の1の簡易アイゼンによれば、各部を所望の強さで締付けることができ靴の種類を問わずに装着可能であり、装着に際し左右のバランスも取り易く着脱が簡単で、歩行中に靴にしっかりと固定され、安全に歩行できると共に、装着のためのバンド手段を損傷する危険性も低く、携帯にも便利である。
【0052】
本発明の2の簡易アイゼンによれば、最後に弾性バンド紐の両端を足首部の前で連結する際は、その一方の端部の紐端留め片を掴んで、他方の端部の端部係止球の手前を該紐端留め片の切欠付係止孔に該切欠から挿入する操作のみで、簡単にそれができることになる。因みに、切欠付係止孔に挿入した端部はその端部係止球が該係止孔の部分に係止することで確かな連結となる。
【0053】
本発明の3の簡易アイゼンによれば、前記端部係止球及び中間係止球が前記被吊上部や紐端留め片の係止孔又は切欠付係止孔に確実に係止できるしっかりとしたものに構成できるとともに、その外観も優れたものとなる利点を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】装着準備状態にある一実施例の簡易アイゼンの概略斜視図。
【図2】 弾性バンド紐に固設する端部係止球(中間係止球)の断面図。
【図3】端部係止球と組合せて弾性バンド紐の両端部を連結するための紐端留め片の平面図。
【図4】登山靴に装着した状態の一実施例の簡易アイゼンの概略斜視図。
【符号の説明】
1 フロントプレート
2 ヒールプレート
3 ジョイント鎖
4 スパイク
5 横ズレ防止ピン
S 登山靴
6 踵上部抱持鎖
6a、6b 立ち上げ鎖部
6c、6d 被吊上環(被吊上部)
6e 踵抱持鎖部
7 側部抱持鎖
7a、7b 被吊上環(被吊上部)
7c、7c 立ち上げ鎖部
8 爪先部抱持鎖
8a、8b 立ち上げ鎖部
8c、8d 被吊上環(被吊上部)
8e 爪先抱持鎖部
9 弾性バンド紐
9a、9b、9c、9d 吊上垂下部
9e、9f 前後連結部
9g、9h 踵側締付部
9i 結び部
10 吊上補助片
10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h 吊上補助孔
11a、11b 端部係止球
11c、11d 中間係止球
12 紐端留め片
12a 係止孔
12b 切欠付係止孔
Φ1 大径部側の径
Φ2 小径部側の径
Claims (3)
- 相互にフレキシブルなジョイント部材で結合され、かつ各々に複数のスパイクを備えたフロントプレート及びヒールプレートと、これらを登山靴に装着するためのバンド手段とを備えたアイゼンに於いて、
前記スパイクを、フロントプレート及びヒールプレートの双方の下方に突き出す複数の突起であって、各々の上部から、該フロントプレート及び該ヒールプレートの上方に立ち上がる横ズレ防止ピンを一体に備えた突起に構成し、
前記バンド手段を、
両端を各々前記ヒールプレートの左右側部から立ち上げ、中間部で、装着する登山靴の踵上部を抱えるとともに、該中間部とその両側の立ち上げ部分との各境界を被吊上部に構成した踵上部抱持鎖と、
両端を各々前記フロントプレートの左右前側部から立ち上げ、中間部で、装着する登山靴の爪先部分を抱えるとともに、該中間部とその両側の立ち上げ部分との各境界を被吊上部に構成した爪先部抱持鎖と、
各々前記フロントプレートの左右後側部から立ち上げ、各上端を被吊上部に構成した左右1対の側部抱持鎖と、
左右両側の前側部と後側部に各一対の吊上補助孔を開口し、装着する登山靴の前甲部に配置して使用される吊上補助片と、
保護被覆を備えた弾性バンド紐であって、その長さ方向中間部を前記吊上補助片の前部中央上に位置させ、その両側への延長部分の途中を各々該吊上補助片の対応する前側部の一対の吊上補助孔の前部側のそれに挿入して垂下させるとともに各々前記爪先部抱持鎖の対応する被吊上部に貫通係止させた上で各々後部側のそれに挿入して該吊上補助片上に引き出し、更にそれぞれを該吊上補助片の対応する後側部の一対の吊上補助孔の前部側のそれに挿入して垂下させるとともに各々対応する側の前記側部抱持鎖の上端の被吊上部に貫通係止させた上で各々後部側のそれに挿入して該吊上補助片上に引き出し、かつ各々を後方に延長させて前記ヒールプレートの踵上部抱持鎖の両側に位置する被吊上部にその直前に固設した抜け止め用の中間係止球の後方を貫通させ、更にその延長部の各端部付近に端部係止球を固設した弾性バンド紐と、
前記弾性バンド紐の端部相互を着脱自在に連結する連結手段と、
で構成した簡易アイゼン。 - 前記連結手段を、係止孔及び切欠付係止孔を有する紐端留め片であって、該係止孔が、前記弾性バンド紐の一端側をこれに挿入してその端部に固設した端部係止球で抜け止め状態にすることができ、かつ該切欠付係止孔が、該弾性バンド紐の他端側を挿脱自在に挿入してその端部に固設した端部係止球で係止し得るようにしたものである、紐端留め片で構成した請求項1の簡易アイゼン。
- 前記端部係止球及び前記中間係止球を、それぞれその貫通孔に弾性バンド紐を貫通させ、該弾性バンド紐に形成した結び部を該貫通孔の大径部に嵌入させ、かつ該結び部から延長する部位を該貫通孔の小径部から抜け出るようにして該弾性バンド紐に外装固定した請求項1又は2の簡易アイゼン。
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