JP3964645B2 - 移動体識別装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波帯の電波を使用し、目視では容易に識別できないような小さいサイズのICタグを識別する移動体識別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、商品や物品等の移動体にICタグ(応答器)を取り付け、このICタグに予め設定されている固有の識別データを非接触で読み取る移動体識別装置が考えられている。この移動体識別装置は、物品等に取り付けられるICタグと、ホスト側に接続される質問器からなり、質問器から送信されるマイクロ波帯の電波をICタグが受信して応答する。ICタグは、質問器との間における電波を送受信するアンテナと、このアンテナにより受信した電波を電源として動作し、予め記憶している固有のコード情報を出力するICチップからなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のICタグは、使用するマイクロ波の波長に比較して十分に大きいアンテナを有するICチップを使用しており、質問器とICタグとの間でアンテナ例えばダイポールアンテナ等を使用し、放射電磁界による結合を行なって通信を行なうことができる。
【0004】
しかし、ICチップは、近年益々小型化されており、最近ではアンテナ部分または結合回路を含むICチップによるタグ面積が使用するマイクロ波の波長(λ)に比較して十分小さいもの、例えば約1/10λ以下のものが考えられている。このようにICチップが非常に小さくなると、アンテナとして放射電磁界による十分な結合ができず、質問器とICタグとの間の通信が不可能になる。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、ICタグにマイクロ波の波長に比較して十分に小さいICチップを使用する場合であっても、質問器とICタグとの間で通信を確実に行なうことができる移動体識別装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、質問器と、移動体に取り付けられる面積が1/10λ以下で且つ並列共振の入力回路を有するICタグとがマイクロ波信号により交信して前記ICタグの固有の識別データを非接触で読み取り識別する移動体識別装置において、
前記質問器の結合回路は、マイクロストリップラインによる結合線路と、前記結合線路の先端に形成されるマイクロストリップラインによるλg/4インピーダンス変成器と、前記λg/4インピーダンス変成器の先端に一体的に形成される並列共振回路からなる結合器共振部とにより構成され、前記結合器共振部は、先端部に凹部が形成された円筒状誘電体と、前記円筒状誘電体の外周に巻回されるコイルと、前記コイルに並列に接続されて並列共振回路を構成するコンデンサとを備え、前記ICタグが前記凹部に入ることで前記ICタグの入力回路と電磁誘導結合することを特徴とする。
第2の発明は、質問器と、移動体に取り付けられる面積が1/10λ以下で且つ並列共振の入力回路を有するICタグとがマイクロ波信号により交信して前記ICタグの固有の識別データを非接触で読み取り識別する移動体識別装置において、
前記質問器の結合回路は、同軸線路による結合線路と、前記結合線路の先端に形成される同軸線路によるλg/4インピーダンス変成器と、前記λg/4インピーダンス変成器の先端に一体的に形成される並列共振回路からなる結合器共振部とにより構成され、前記結合器共振部は、先端部に凹部が形成された円筒状誘電体と、前記円筒状誘電体の外周に巻回されるコイルと、前記コイルに並列に接続されて並列共振回路を構成するコンデンサとを備え、前記ICタグが前記凹部に入ることで前記ICタグの入力回路と電磁誘導結合することを特徴とする。
【0007】
上記のように質問器の結合回路及び応答器の結合回路を並列共振回路にて構成し、両者を近付けた場合に電磁誘導結合するように構成したことにより、ICタグの面積が使用するマイクロ波の波長に比較して十分に小さく、例えば約1/10λ以下でアンテナの放射電磁界による十分な結合ができない場合であっても、質問器とICタグとの間を電磁誘導結合によって確実に結合でき、ICタグのID等を読み取って移動体を識別することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る移動体識別装置の構成図である。図1において、10は質問器で、変調・送信部11及び受信・復調部12を備えている。変調・送信部11は、マイクロ波を所定の送信データで変調し、方向性結合器13及びサーキュレータ14を介して質問器結合回路15に入力する。
【0009】
一方、上記質問器10と通信を行なうICタグ20は、ICチップ21と入力回路22からなり、商品や物品等に装着されて使用される。上記ICタグ20は、入力回路22を含むICチップ21のタグ面積が、使用するマイクロ波の波長に比較して十分小さいもの、例えば約1/10λ以下のものである。
【0010】
上記質問器10の結合回路15とICタグ20の入力回路22が所定の距離に近付くと両者が結合し、質問器10の変調・送信部11から出力されるマイクロ波帯の信号が方向性結合器13、サーキュレータ14及び結合回路15を介してICタグ20の入力回路22へ送られる。また、上記変調・送信部11の出力信号の一部は、方向性結合器13を介して受信・復調部12に入力される。
【0011】
上記ICタグ20は、質問器10の結合回路15から送られてくる信号を入力回路22で受信し、ICチップ21に入力する。ICチップ21は、上記受信信号から駆動電力を生成して内部の論理回路を動作させ、固有の識別データを入力回路22を介して質問器10に返送する。
【0012】
質問器10は、ICタグ20から返送される識別データを結合回路15及びサーキュレータ14を介して受信・復調部12に入力する。受信・復調部12は、方向性結合器13を介して入力される変調・送信部11の出力信号からクロック信号を抽出してICタグからの識別データを復調し、タグデータを生成して処理回路(図示せず)へ出力する。
【0013】
次に、上記質問器10に設けられている結合回路15の具体的な構成について説明する。
図2は、上記結合回路15の基本的構成について示したものである。図2において、31はサーキュレータ14に接続される結合回路15の入力端子で、その入力インピーダンス(Zo)が例えば50Ωに設定されている。上記入力端子31には、特性インピーダンスが50Ωの結合線路32を接続し、その先端部にλg(伝送波長)/4インピーダンス変成器33を形成する。そして、このλg/4インピーダンス変成器33の先端に結合器共振部34を設けている。この結合器共振部34は、ICタグ20の入力回路22と結合する部分で、並列共振回路によりハイインピーダンス構成としたもので、その詳細については後述する。
【0014】
図3は、上記質問器10の結合回路15をマイクロストリツプ構成とした場合の例を示したものである。図3において、41は長方形の絶縁基板で、先端部42を幅狭に形成している。上記絶縁基板41には、上面の中央に沿ってマイクロストリツプライン(銅箔)43を形成すると共に、下面全体にマイクロストリツプラインのグランド面(銅箔)44を形成する。上記マイクロストリップライン43は、先端部におけるλg/4の長さだけ細く形成し、λg/4インピーダンス変成器33を構成している。そして、上記絶縁基板41の先端に結合器共振部34を設けている。
【0015】
図4は、上記質問器10の結合回路15を同軸線路構成とした場合の例を示したものである。図4において、51は同軸線路で、中心導体線路52を先端よりλg/4の長さだけ突出させてλg/4インピーダンス変成器33を構成している。この場合、同軸線路51の外側に外部シールド53を施すと共に、λg/4インピーダンス変成器33部分の中心導体線路52の外側に外部シールド54を施している。そして、上記中心導体線路52の先端部に結合器共振部34を設けている。
【0016】
図5は、上記結合器共振部34の詳細を示したものである。図5において、61は円筒状誘電体で、先端に凹部62を形成している。この凹部62の面積は、ICタグ20を構成するICチップ21の面積の数倍、例えば4倍程度に設定される。
【0017】
上記円筒状誘電体61の外周にインダクタンスとしてコイル(集中定数)63を巻回すると共に、このコイル63に並列にキャパシタンスとしてコンデンサ(集中定数)64を設け、上記コイル63とコンデンサ64の接続点の一方を信号端子65、他方を接地端子66とする。
【0018】
すなわち、図6の等価回路に示すようにコイル63とコンデンサ64により並列共振回路を構成してハイインピーダンスとなるようにし、その一端を信号端子65に接続し、他端を接地端子66に接続する。
【0019】
そして、上記信号端子65を図3のマイクロストリップライン43あるいは図4の中心導体線路52に接続し、接地端子66を図3のグランド面44あるいは図4の外部シールド53に接続する。
【0020】
一方、ICタグ20の入力回路22においても、質問器10の結合回路15と同様にインダクタンス及びキャパシタンスにより並列共振回路を構成し、ハイインピーダンスになるようにしている。
【0021】
図7は、質問器10の結合回路15をICタグ20の入力回路22に近付けて電磁誘導結合させた場合の結合状態を等価回路により示したものである。図7において、Lは上記結合回路15のコイル63によるインダクタンス、Cはコンデンサ64によるキャパシタンス、rは回路の直列抵抗を示している。また、L1はICタグ20の入力回路22を構成する並列共振回路のインダクタンス、C1はキャパシタンス、r1は回路の並列抵抗を示している。また、Mは上記質問器結合回路15のインダクタンスLとICタグ入力回路22のインダクタンスL1との間の相互インダクタンスである。なお、上記直列抵抗rと並列抵抗r1との関係は、「r1≫r」、「r=0」である。
【0022】
図8は、質問器10の結合回路15における円筒状誘電体61の先端に形成した凹部62内にICタグ20の入力回路22が僅かに挿入された場合の結合状態を等価回路により示したものである。このように結合回路15を構成する円筒状誘電体61の先端に凹部62を形成し、この凹部62内にICタグ20が入るように構成することにより、質問器結合回路15とICタグ入力回路22の結合をより確実に行なうことができる。
【0023】
上記のようにICタグ20の面積が使用するマイクロ波の波長に比較して例えば約1/10λ以下で、アンテナの放射電磁界による十分な結合ができない場合であっても、質問器10の結合回路15及びICタグ20の入力回路22を並列共振回路にて構成することにより、両者を近付けた場合に電磁誘導結合させることができ、質問器10とICタグ20との間の通信を行なうことが可能となる。また、上記結合回路15を構成する円筒状誘電体61の先端に凹部62を形成し、この凹部62内にICタグ20が入るように構成することにより、質問器10とICタグ20との位置の特定について容易に対向し得るシステム構成が可能となり、低コスト化並びに小型化を図ることができる。
【0024】
【発明の効果】
以上詳記したように本発明によれば、質問器結合回路及び応答器結合回路を並列共振回路にて構成し、両者を近付けた場合に電磁誘導結合するようにしたので、ICタグの面積が使用するマイクロ波の波長に比較して十分に小さく、例えば約1/10λ以下でアンテナの放射電磁界による十分な結合ができない場合であっても、質問器とICタグとの間を電磁誘導結合により確実に結合でき、ICタグのID等を読み取って移動体を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る移動体識別装置の構成図。
【図2】同実施形態における質問器結合回路の基本的構成を示す図。
【図3】同実施形態における質問器結合回路をマイクロストリップ構成とした場合の外観斜視図。
【図4】同実施形態における質問器結合回路を同軸線路構成とした場合の外観斜視図。
【図5】同実施形態における質問器結合回路の結合器共振部の構成図。
【図6】図5における結合器共振部の等価回路を示す図。
【図7】質問器結合回路を応答器結合回路に近付けて電磁誘導結合させた場合の結合状態を等価回路により示した図。
【図8】質問器結合回路における絶縁体の先端に形成した凹部内に応答器結合回路が僅かに挿入された場合の結合状態を等価回路により示した図。
【符号の説明】
10…質問器
11…変調・送信部
12…受信・復調部
13…方向性結合器
14…サーキュレータ
15…質問器結合回路
20…ICタグ
21…ICチップ
22…ICタグの入力回路
31…入力端子
32…結合線路
33…λg/4インピーダンス変成器
34…結合器共振部
41…絶縁基板
42…先端部
43…マイクロストリップライン
44…グランド面
51…同軸線路
52…中心導体線路
53、54…外部シールド
61…円筒状誘電体
62…凹部
63…コイル
64…コンデンサ
65…信号端子
66…接地端子
Claims (2)
- 質問器と、移動体に取り付けられる面積が1/10λ以下で且つ並列共振の入力回路を有するICタグとがマイクロ波信号により交信して前記ICタグの固有の識別データを非接触で読み取り識別する移動体識別装置において、
前記質問器の結合回路は、マイクロストリップラインによる結合線路と、前記結合線路の先端に形成されるマイクロストリップラインによるλg/4インピーダンス変成器と、前記λg/4インピーダンス変成器の先端に一体的に形成される並列共振回路からなる結合器共振部とにより構成され、前記結合器共振部は、先端部に凹部が形成された円筒状誘電体と、前記円筒状誘電体の外周に巻回されるコイルと、前記コイルに並列に接続されて並列共振回路を構成するコンデンサとを備え、前記ICタグが前記凹部に入ることで前記ICタグの入力回路と電磁誘導結合することを特徴とする移動体識別装置。 - 質問器と、移動体に取り付けられる面積が1/10λ以下で且つ並列共振の入力回路を有するICタグとがマイクロ波信号により交信して前記ICタグの固有の識別データを非接触で読み取り識別する移動体識別装置において、
前記質問器の結合回路は、同軸線路による結合線路と、前記結合線路の先端に形成される同軸線路によるλg/4インピーダンス変成器と、前記λg/4インピーダンス変成器の先端に一体的に形成される並列共振回路からなる結合器共振部とにより構成され、前記結合器共振部は、先端部に凹部が形成された円筒状誘電体と、前記円筒状誘電体の外周に巻回されるコイルと、前記コイルに並列に接続されて並列共振回路を構成するコンデンサとを備え、前記ICタグが前記凹部に入ることで前記ICタグの入力回路と電磁誘導結合することを特徴とする移動体識別装置。
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