JP3964065B2 - 人工股関節ステム装着用手術器具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人体に適用する人工股関節を構成するステムを装着するための手術器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来から用いられている人工股関節は寛骨に埋入したソケットと、該ソケットに対し回動自在に嵌合する骨頭球を先端に備えたステムとで構成されている。
【0003】
このうちステムはステンレス鋼、コバルトクロム等合金などの金属からなり、大腿骨髄腔中に挿入し、ステムと骨との間にセメントを介在させて固定し、一方の臼蓋側は骨頭球を受座するソケットを骨盤にセメントを用いて固定するものが一般的である。
【0004】
特に大腿骨側においてはステムを長管骨中に奥深く(長く)挿入するが、骨と金属のヤング率の相違により荷重を受けた場合の変形量が大きく異なり、セメント−骨、セメント−金属ステム間での緩みに伴う沈み込みが大きな問題となっており、人工股関節が骨から離脱したり、部材間にガタが生ずるなどにより関節機能を喪失してしまうという結果を招くことがあった。
【0005】
そこで、かかるセメント−骨、セメント−金属ステム間の緩みを生じさせないための試みとして、まず、ステムの材質に従来のステンレス鋼やコバルトクロム合金に代えて純チタンやチタン合金など、より骨に近いヤング率のものを用い骨の撓みにステムを適宜追従させようとする試みも行われてきたが、それだけでは完全に問題を解決するに至らなかった。
【0006】
そこで、ステムの外径を補綴箇所の形状、寸法に近似せしめることにより骨との間隔を可及的に小さくし、セメントを用いることなしにステムを固定せんとのデザイン的な改良も試みられてきた。しかし、そのような近似形状をデザインすることが非常に困難である上に、生体には固体差があるためカスタム品以外に実用的な製品を得ることができないというのが現状である。
【0007】
また、例えば、米国特許第4,895,572号明細書に記載されているように、再置換などで骨が弱い症例でネジ棒を用いてステムを固定する方法が用いられていた。しかしながら、ネジ棒はネジを形成した先端部位がそれ以外のネジを形成していない部位に比べ、ネジの高さ分だけ径が大きく、他方、ステムに設けるネジ棒挿通孔は大きな径の方に寸法を合わせる必要があり、その結果、ステムのネジ棒挿通孔の壁面とネジ棒との間には隙間が生じてしまう。そのため、マイクロムーブメント等の動きを抑止できないという問題点があった。
【0008】
このような問題点を解決するものとして最近になって、ステムにおける転子間部位にステムの長軸方向に略垂直なピン孔を設け、骨に穿設した貫通孔を介して該ピン孔内に円柱状のクロスピンを嵌挿し、該クロスピンを骨に係止するよう構成した人工股関節が開発された。
【0009】
そして実用上、このような人工股関節を設置するための有効な手術器具の開発が望まれていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明の人工股関節ステム装着用手術器具は、ステムの転子間部位に該ステムの長軸方向に対して垂直な方向に穿孔された水平ピン孔に、クロスピンを嵌挿させるための人工股関節ステム装着用手術器具であって、前記ステムの前記水平ピン孔と同軸上に配置される円筒ガイドを有し、前記ステムに装着されるガイドホルダーと、前記ステムのネックに嵌合する円筒体部を有し、前記ガイドホルダーを支持するためのキャップと、を備えていることを特徴とする。
また、前記ガイドホルダーは、前記ステムの肩面に該ステムの長軸方向に沿って穿孔された垂直ピン孔に嵌合させて、前記ステムに装着するためのピン部を有していることを特徴とする。
さらに、前記キャップ及び前記ガイドホルダーは、前記ステムに装着された状態で、互いに係合する顎部をそれぞれ有しているとともに、該顎部には、前記キャップ及び前記ガイドホルダーを互いに係止させるための貫通孔がそれぞれ形成されていることを特徴とする。
また、前記キャップ及び前記ガイドホルダーの顎部は、平面部分をそれぞれ備えているとともに、前記ガイドホルダーの顎部における前記平面部分と前記キャップの顎部における前記平面部分とが当接するように配置されることを特徴とする。
また、前記円筒ガイドに嵌合させる円筒体状のドリルガイドを備えていることを特徴とする。
さらに、前記クロスピンの一端を端部に係合して、前記クロスピンを前記円筒ガイドの案内で前記水平ピン孔内に圧入するための棒状のクロスピンプッシャーを備え、該クロスピンプッシャーには、圧入された前記クロスピンが適正な位置に配置されたときに前記円筒ガイドに当接するストッパーフランジが形成されていることを特徴とする。
また、前記円筒ガイドには、前記クロスピンを圧入する際の入口側に溝が形成されており、前記クロスピンプッシャーには、前記溝に係合する凸部が前記ストッパーフランジに隣接して形成されていることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。
【0012】
図1乃至7に本実施形態の手術器具とその使用方法を示し、図において、1は人工股関節を構成するステムSを大腿骨髄腔内に打ち込むためのステムインサーター、2は骨切りのためのガイドを保持するガイドホルダー、3はガイドホルダー2を支持するべくステムSのネックNに嵌合するとともに、ボルトBでガイドホルダー2に螺着されるキャップ、4はガイドホルダー2に対し着脱自在に嵌合して、ドリルDをガイドするドリルガイド、5はステムSに嵌着するクロスピンCPを圧入するためのクロスピンプッシャー、6は上記クロスピンCPに係合するクロスピンボルトCPB装着のためのトルクレンチである。
【0013】
図1に示すように、ステムSに対してステムインサーター1を上方に位置させ、不図示のハンマーにてステムインサーター1を殴打することによりステムSを大腿骨髄腔内の所定位置まで打ち込む。
【0014】
次に、図2に示すようにステムSのネックNにキャップ3を嵌合し、また、ガイドホルダー2をステムSに嵌挿する。キャップ3は円筒体部3aと鍔部3bを備え、該鍔部3bにボルト用貫通孔3cを穿設してなる。また、ガイドホルダー2はステムSの肩面S1から垂直方向に穿設した垂直ピン穴S2と係合するべくピン部2aを突出させてなるとともに円筒ガイド21を側方に、ボルト用貫通孔2cを備え且つ前記キャップ3の鍔部3bに係合する鍔部2dを上方にそれぞれ突出させてなる。
【0015】
そして図3に示すようにガイドホルダー2とキャップ3の鍔部2d、3bを係合当接の状態とし、ボルトBでもって両者を螺着することによりガイドホルダー2が微動しないようにする。
【0016】
図4にガイドホルダー2の固定状態を示すように、ガイドホルダー2はボルトBによる固定状態で、下端に備える円筒ガイド21とステムSの水平ピン孔S3とが同軸状になる。この同軸状関係を利用し、後述のクロスピン圧入作業のために大腿骨の外面から髄腔内の前記水平ピン孔S3にかけて骨孔を穿設するべく、前記ガイドホルダー2に備えた円筒ガイド21内に一端側にストッパーフランジ41を設けた円筒体からなるドリルガイド4を嵌合し、このドリルガイド4の案内によるドリルDの切削作業により前記骨孔を穿設する。
【0017】
次に、ガイドホルダー2の固着状態を維持したまま図5に示すように、クロスピンプッシャー5によりクロスピンCPをステムSの水平ピン孔S3に挿通する。上記クロスピンプッシャー5は先端にクロスピンCPの端面に凹設した六角孔に係合する六角突起5aを備え、クロスピンCPの回動を防止している。また、同図に示す如く、ガイドホルダー2の円筒ガイド21にはキー溝21a(溝)を備え、クロスピンプッシャー5のストッパーフランジ5bに設けたミニピン5c(凸部)が上記キー溝21aに係合するようになっており、この機構により図6に示すように右仕様、左仕様いずれの場合でもクロスピンCPに備える中央窪みCPaの向きを確実にステムの外側面S4の側とする。
【0018】
なお、クロスピンCPとステムSの水平ピン孔S3のサイズは両者が圧着するように設定されており、このためクロスピンCPの装着は圧入による。また、クロスピンプッシャー5の前記ストッパーフランジ5bとガイドホルダー2の端面との当接状態でクロスピンCPに備える中央窪みCPaがステムSの前記垂直ピン穴S2と水平ピン孔S3との貫通部分に配置されるよう各部材のサイズが設定されている(図5参照)。
【0019】
また、図6の説明図に示すようにクロスピンCPの前記中央窪みCPaは長手方向の真ん中よりも一方端寄りとなっており、右仕様、左仕様のいずれかに関わらず突出量が前側が短めに、後側が長めにそれぞれなるようにクロスピンCPを装着する。
【0020】
最後に、ガイドホルダー2とキャップ3をステムSから抜去し、図7に示すように前記クロスピンCPを係合固定するクロスピンボルトCPBをステムSの垂直ピン孔S2内にトルクレンチ6を用いて螺合する。以上により、クロスピンCPの装着を完了する。
【0021】
以上、本発明の実施形態を図により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができることは言うまでもない。
【0022】
【発明の効果】
叙上のように本発明によれば、転子間部位に設けた水平方向から挿入するためのピン孔内に着脱自在の円柱状のクロスピンを嵌挿し、該クロスピンを骨に係止するよう構成してなるステムを装着するための非常に有効な手術器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】人工関節のステムとこれを大腿骨に打ち込むためのステムインサーターを示す説明図である。
【図2】(a)、(b)は本実施形態の手術器具を構成するガイドホルダとキャップについての説明図であり、(b)は(a)のX矢視図である。
【図3】図2のガイドホルダとキャップについての別説明図である。
【図4】図2のガイドホルダへのドリルガイドの取付及びドリリングについての説明図である。
【図5】(a)、(b)は本実施形態の手術器具を構成するクロスピンプッシャーを用いたクロスピンの挿入についての説明図であり、(b)は装着後状態を示す。
【図6】図5のクロスピンの挿入についての別説明図であり、それぞれLは左側仕様のステムについて、Rは右側仕様のステムについての説明図ある。
【図7】人工関節のステム、クロスピンと係合するクロスピンボルト並びに該クロスピンボルトを螺着するトルクレンチを示す説明図である。
【符号の説明】
1 ステムインサーター
2 ガイドホルダー
3 キャップ
4 ドリルガイド
5 クロスピンプッシャー
6 トルクレンチ
2a ピン部
2c、3c ボルト用貫通孔
2d、3b 鍔部
3a 円筒体部
5a 六角突起
5b ストッパーフランジ
5c ミニピン
21 円筒ガイド
F 大腿骨
F1 骨孔
d1、d2 孔径
CPa 中央窪み
S ステム
N ネック
B ボルト
CP クロスピン
D ドリル
CPB クロスピンボルト
S1 肩面
S2 垂直ピン孔
S3 水平ピン孔
S4 外側面
Claims (7)
- ステムの転子間部位に該ステムの長軸方向に対して垂直な方向に穿孔された水平ピン孔に、クロスピンを嵌挿させるための人工股関節ステム装着用手術器具であって、
前記ステムの前記水平ピン孔と同軸上に配置される円筒ガイドを有し、前記ステムに装着されるガイドホルダーと、
前記ステムのネックに嵌合する円筒体部を有し、前記ガイドホルダーを支持するためのキャップと、
を備えていることを特徴とする人工股関節ステム装着用手術器具。 - 前記ガイドホルダーは、前記ステムの肩面に該ステムの長軸方向に沿って穿孔された垂直ピン孔に嵌合させて、前記ステムに装着するためのピン部を有していることを特徴とする請求項1記載の人工股関節ステム装着用手術器具。
- 前記キャップ及び前記ガイドホルダーは、前記ステムに装着された状態で、互いに係合する顎部をそれぞれ有しているとともに、該顎部には、前記キャップ及び前記ガイドホルダーを互いに係止させるための貫通孔がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の人工股関節ステム装着用手術器具。
- 前記キャップ及び前記ガイドホルダーの顎部は、平面部分をそれぞれ備えているとともに、前記ガイドホルダーの顎部における前記平面部分と前記キャップの顎部における前記平面部分とが当接するように配置されることを特徴とする請求項3記載の人工股関節ステム装着用手術器具。
- 前記円筒ガイドに嵌合させる円筒体状のドリルガイドを備えていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の人工股関節ステム装着用手術器具。
- 前記クロスピンの一端を端部に係合して、前記クロスピンを前記円筒ガイドの案内で前記水平ピン孔内に圧入するための棒状のクロスピンプッシャーを備え、該クロスピンプッシャーには、圧入された前記クロスピンが適正な位置に配置されたときに前記円筒ガイドに当接するストッパーフランジが形成されていることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の人工股関節ステム装着用手術器具。
- 前記円筒ガイドには、前記クロスピンを圧入する際の入口側に溝が形成されており、前記クロスピンプッシャーには、前記溝に係合する凸部が前記ストッパーフランジに隣接して形成されていることを特徴とする請求項6記載の人工股関節ステム装着用手術器具。
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