JP3692229B2 - 人工股関節 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人体に適用する人工股関節に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来から用いられている人工股関節は寛骨に埋入したソケットと、該ソケットに対し回動自在に嵌合する骨頭球を先端に備えたステムとで構成されている。
【0003】
このうちステムはステンレス鋼、コバルトクロム等合金などの金属からなり、大腿骨髄腔中に挿入し、ステムと骨との間にセメントを介在させて固定し、一方の臼蓋側は骨頭球を受座するソケットを骨盤にセメントを用いて固定するものが一般的である。
【0004】
特に大腿骨側においてはステムを長管骨中に奥深く(長く)挿入するが、骨と金属のヤング率の相違により荷重を受けた場合の変形量が大きく異なり、セメント−骨、セメント−金属ステム間での緩みに伴う沈み込みが大きな問題となっており、人工股関節が骨から離脱したり、部材間にガタが生ずるなどにより関節機能を喪失してしまうという結果を招くことがあった。
【0005】
そこで、かかるセメント−骨、セメント−金属ステム間の緩みを生じさせないための試みとして、まず、ステムの材質に従来のステンレス鋼やコバルトクロム合金に代えて純チタンやチタン合金など、より骨に近いヤング率のものを用い骨の撓みにステムを適宜追従させようとする試みも行われてきたが、それだけでは完全に問題を解決するに至らなかった。
【0006】
そこで、ステムの外径を補綴箇所の形状、寸法に近似せしめることにより骨との間隔を可及的に小さくし、セメントを用いることなしにステムを固定せんとのデザイン的な改良も試みられてきた。しかし、そのような近似形状をデザインすることが非常に困難である上に、生体には固体差があるためカスタム品以外に実用的な製品を得ることができないというのが現状である。
【0007】
また、最近の試みとして、例えば、米国特許第4,895,572号明細書に記載されているように、再置換などで骨が弱い症例でネジ棒を用いてステムを固定する方法が用いられていた。しかしながら、ネジ棒はネジを形成した先端部位がそれ以外のネジを形成していない部位に比べ、ネジの高さ分だけ径が大きく、他方、ステムに設けるネジ棒挿通孔は大きな径の方に寸法を合わせる必要があり、その結果、ステムのネジ棒挿通孔の壁面とネジ棒との間には隙間が生じてしまう。そのため、マイクロムーブメント等の動きを抑止できないという問題点があった。
【0008】
【発明の目的】
上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は、骨セメントを使わずにステムの固定が可能であり、且つ、大きな応力を受けて骨やステムが撓むような場合に、骨にかかる応力を低減できる長寿命のステムを備えた人工股関節を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記従来技術の問題点を解決するべく本発明は、軸長方向に略垂直なピン孔を設けた長尺状のステムと、前記ピン孔内に嵌挿され、かつ骨に設けられる貫通孔内に嵌挿されるクロスピンとを備え、前記クロスピンは、その軸長方向に直交する溝を有し、前記ステムは、その軸長方向にピンボルト穴と、該ピンボルト穴内に挿入されたクロスピンボルトを有し、前記クロスピンの溝と前記クロスピンボルトの外周を係合し、前記クロスピンボルトは、前記係合部にかかる部位がテーパー円柱状であることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図によって説明する。
【0011】
図1乃至図6は本発明の人工股関節を成すステム1を示し、図1はステム1の正面図、図2は側面図、図3は図2のA−A線断面図、図4は図2のB−B線断面図、図5は上記ステム1を構成する下記クロスピンボルトの平面図、図6は図1のC−C断面図である。
【0012】
このステム1は純チタン、チタン合金、コバルト/クロム合金など生体為害性のない金属材料よりなり、ステム本体2の上端側に骨頭球(不図示)を嵌合するためにテーパーピン状のネック3を備えており、さらに、骨の転子間部に対応するステム本体2における転子間部位4にステム1の長軸方向に略垂直なピン孔5を備え、骨に穿設した貫通孔を介して該ピン孔5内に円柱状のクロスピン6を嵌挿し、該クロスピン6を骨に係止するよう構成したものである。
【0013】
クロスピン6の挿入固定は次のような要領に従って行うことができる。まず、ステム1を大腿骨髄腔内に圧入し位置決めを行う。次に、ステム1の肩部やネック3の一定高さを基準とし、上記ピン孔5の中心軸と常に同軸状にドリル案内孔を配置することができるよう構成された、専用のドリルガイド(不図示)をステム1の肩部やネック3を利用して固定する。そして、骨の外側に配置した部材に備えるドリル案内孔に沿って、骨の一方外側からドリル刃を前進させ、上記ピン孔5を挿通させ、最後に骨の他方側をドリルで貫通させる。このような作業により、ピン孔5と骨に設けた貫通孔との芯合わせを確実に行うことができる。
【0014】
略円柱体をなす上記クロスピン6には図3に示すように、その長軸方向の略中央に軸線方向に直交する方向の溝6aが設けられており、図4に示すように、クロスピン6を前記ピン孔に嵌挿する際にこの溝6aを、ステム1の肩部7より鉛直方向に形成したピンボルト穴8内に位置するようにする。そして、この状態下ピンボルト穴8内に、図5に示すようなクロスピンボルト9を挿入螺着し、クロスピン6の溝6aとクロスピンボルト9の外周を係合せしめ、これによってクロスピン6を所定位置に固定する。
【0015】
なお、図5に示すように上記クロスピンボルト9は、中間部位9aがテーパー円柱形状であり、このテーパー外周面9bでもって前記クロスピン6と嵌合することにより、クロスピン6を大きな力で押圧する。これにより、クロスピン6は反対側のピン孔5の孔壁5aに強く押しつけられるのでマイクロムーブメントなどを起こしにくくなっている。
【0016】
また、ステム1の遠位端部位は大腿骨髄腔の形状に対応して先細のテーパー状であるとともに、骨の増生進入によるアンカリングを得るため、図6の断面図に示しように、複数箇所に縦長のエッジ10と溝11を設けた略正多角形状としている。このようなステム1の遠位端の形状によれば、この部分でもセメント等を用いずに骨との強力な固定力を得ることができる。
【0017】
このように人工股関節のステムを構成するコンセプトは、ステムの固定を遠位部と近位部の2箇所で確実に行うことにある。
【0018】
髄腔断面を有する遠位部は形状適合性がよいのに対して、近位部は髄腔の形状及びサイズが個々の症例によって大きく異なることから、ステム外周面形状の調整により良好な適合を得ることは難しく、固定が不確実であったが、前記クロスピン6を骨と係合せしめることにより、クロスピン6が固定端として働き、固定が症例によらず確実に行えるという作用がある。
【0019】
ところで、前記クロスピン6は骨に開いた孔を介して挿入するので、ステム1の抜ける方向への動きを押さえることができる。すなわち、前記ステム1は、抜ける方向に対する抵抗力が非常に大きいという特徴も有する。さらに、クロスピン6とピン孔5の孔壁5aとの隙間が非常に小さく、また、骨に設けた貫通孔とクロスピン6の形状もフィットするので、マイクロムーブメントを確実に抑止できる。また、クロスピン6の両端での固定態様が同じようになるよので、固定力のバランスも安定し、骨への偏った負担を軽減する作用がある。
【0020】
以上、本発明の実施形態を図により例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、発明の目的を逸脱しない限り、任意の形態とすることができることは言うまでもない。
【0021】
【発明の効果】
叙上のように本発明によれば、人工股関節を構成するステムにおける転子間部位にステムの長軸方向に略垂直なピン孔を設け、骨に穿設した貫通孔を介して該ピン孔内に円柱状のクロスピンを嵌挿し、該クロスピンでもって骨に係止するよう構成したことにより、セメントを用いずにステムの固定を遠位部と近位部の2箇所で確実に行うことができ、特に、前記クロスピンを骨と係合せしめることにより、クロスピンが固定端として働き、近位部でも固定が症例によらず確実に行える。
【0022】
また、前記クロスピンは骨に開いた孔を介して挿入するので、前記ステムは、抜ける方向に対する抵抗力が非常に大きい。さらに、クロスピンとピン孔の孔壁との隙間が非常に小さく、また、骨に設けた貫通孔とクロスピンの形状もフィットするので、マイクロムーブメントを確実に抑止できる。また、クロスピンの両端での固定態様が同じようになるよので、固定力のバランスも安定し、骨への偏った負担を軽減する作用がある。
【0023】
次に本発明によれば、ステムの遠位端部位で骨の増生進入によるアンカリングを得るため、遠位端部位を、複数箇所に縦長のエッジと溝を設けた略正多角形状とすることによって、この部分でもセメント等を用いずに骨との強力な固定力を得ることができる。
【0024】
以上のように本発明は、極めて優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の人工股関節を構成するステムの正面図である。
【図2】図1のステムの側面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】図1のステムを構成するクロスピンボルトの平面図である。
【図6】図1のC−C断面図である。
【符号の説明】
1 ステム
2 ステム本体
3 ネック
4 転子間部位
5 ピン孔
5a 孔壁
6 クロスピン
6a 溝
7 肩部
8 ピンボルト穴
9 クロスピンボルト
9a 中間部位
9b テーパー外周面
10 エッジ
11 溝

Claims (2)

  1. 軸長方向に略垂直なピン孔を設けた長尺状のステムと、前記ピン孔内に嵌挿され、かつ骨に設けられる貫通孔内に嵌挿されるクロスピンとを備え、前記クロスピンは、その軸長方向に直交する溝を有し、前記ステムは、その軸長方向にピンボルト穴と、該ピンボルト穴内に挿入されたクロスピンボルトを有し、前記クロスピンの溝と前記クロスピンボルトの外周を係合し、前記クロスピンボルトは、前記係合部にかかる部位がテーパー円柱状であることを特徴とする人工股関節。
  2. 前記ステムの遠位端に縦長のエッジおよび溝を設け、断面略正多角形状としたことを特徴とする請求項1に記載の人工股関節。
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