JP3962503B2 - 排水処理装置及び方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生活系排水、し尿等の有機性窒素を含む排水を生物学的に処理する排水処理装置及び方法に関し、特に硝化液循環脱窒方式を用いた排水処理装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機性窒素を含む排水を処理する方法として、排水中の有機性窒素を生物学的な硝化、脱窒反応を用いて窒素ガスに還元して処理する処理方法が知られている。この種の処理方法を行う処理設備として、特許2559513号の技術が知られている。
【0003】
この技術は、脱窒反応を行う脱窒槽の下流側に硝化反応を行う硝化槽を配置し、硝化槽内の活性汚泥混合液の一部を脱窒槽へと返送する循環手段、硝化槽内に設置されて、混合液から透過させた処理水を系外に排出する限外ろ過膜装置、限外ろ過膜装置の下方に設置されて、限外ろ過膜装置の膜面1m2あたり0.2Nm3/h以上の空気を散気する散気管を有するものである。
【0004】
脱窒槽における脱窒反応は溶存酸素濃度がほぼゼロの無酸素状態で行われ、一方、硝化槽における硝化反応は溶存酸素濃度が一定以上の好気性条件下で行われる。本技術では、硝化槽内の混合液への曝気を利用して供給された曝気により形成される上昇流により膜面洗浄を行うことで、別途膜面洗浄を行う必要がなく、簡単な設備で効率の良い硝化・脱窒が行えると記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この技術においては、曝気量の下限のみを規定しているため、曝気量が不足した場合は、アンモニア性窒素分の硝化反応が思うように進まず、処理水質が悪化してしまう。逆に曝気量を増やしすぎると、混合液中に大量の酸素が溶け込み、循環手段で混合液の一部を脱窒槽へ移送した際に、脱窒槽内が無酸素状態でなくなり、脱窒反応が停止してしまう虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、効率良く硝化・脱窒反応を行うとともに、膜面の汚濁も防止可能な硝化液循環式の排水処理装置及び方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る排水処理装置は、有機性窒素を含有する排水を生物学的に処理する排水処理装置であって、この排水が導入され、(1)排水中の硝酸性窒素を脱窒菌により分解処理する脱窒槽と、(2)脱窒槽に接続されており、排水中のアンモニア性窒素を硝化菌により硝酸性窒素に酸化処理する硝化槽と、(3)硝化槽内の処理液を脱窒槽に返送して処理液を循環させる循環手段と、(4)硝化槽内に浸漬配置され、硝化槽内の処理液から清澄分をろ過して槽外に排出する浸漬平膜装置と、(5)硝化槽内の浸漬平膜装置下方に配置され、浸漬平膜装置に向けて空気を供する曝気装置と、(6)硝化槽内に配置され、処理液中の溶存酸素量を計測する溶存酸素計と、(7)浸漬平膜装置の膜面洗浄に必要な風量を確保しつつ、溶存酸素計により測定した硝化槽内の溶存酸素量が所定範囲に維持されるよう曝気装置による曝気風量を調整する制御装置と、を備え、曝気装置は、回転数を制御することで、供給風量を調整可能なブロワと、ブロワから硝化槽への曝気供給ラインと大気とを接続する空気抜きライン上に設けられた開度調整可能な空気抜き弁と、を備えており、制御装置は、ブロワの回転数と空気抜き弁の開度を調整することで、硝化槽に供給される曝気風量を調整することを特徴とする。
【0008】
一方、本発明に係る排水処理方法は、(1)排水を脱窒槽に導入し、脱窒菌により排水中の硝酸性窒素を分解処理する脱窒工程と、(2)脱窒工程後、排水を硝化槽に導いて、曝気装置から曝気を行いつつ、硝化菌により排水中のアンモニア性窒素を硝酸性窒素に酸化処理する硝化工程と、(3)硝化槽内の処理液を脱窒槽に返送することで処理液を循環させる循環工程と、(4)硝化槽内に浸漬配置されている浸漬平膜装置により、硝化槽内の処理液から清澄分をろ過して槽外に排出するろ過工程と、を備えており、曝気装置による曝気は、浸漬平膜装置の膜面洗浄に必要な風量を確保しつつ、硝化槽内の溶存酸素量を溶存酸素計により測定して該測定値が所定範囲に維持されるよう前記曝気装置による曝気風量が調整され、曝気装置は、回転数を制御することで、供給風量を調整可能なブロワと、ブロワから硝化槽への曝気供給ラインと大気とを接続する空気抜きライン上に設けられた開度調整可能な空気抜き弁と、を備えており、曝気風量の調整は、ブロワの回転数と空気抜き弁の開度を調整することで行われることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る排水処理装置及び方法においては、硝化槽内の溶存酸素量が所定の範囲になるよう曝気量を調整しているので、過曝気、曝気不足となることがなく、硝化槽の硝化反応、脱窒槽の脱窒反応とも効率良く行うことができる。そして、曝気量は洗浄に必要な風量を確保しているので効率的な膜面洗浄が行える。曝気量調整により曝気量は一定ではなく、時間的に変動するが、風量変動により、硝化槽内部に形成される循環流も変動するのでさらに膜面の洗浄が促進されて好ましい。
【0011】
ここで、ブロワは一般的に回転数制御により調整できる吐出風量域が限られ、最低吐出風量を充分に低くすることが困難である。空気抜き弁と併用することで、曝気風量を0から最大風量まで無段階で調整することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係る硝化液循環式の排水処理装置の全体構成を示す概略図である。
【0013】
この装置は、図1に示されるように、それぞれに活性汚泥が貯留されている脱窒槽1と硝化槽2とを障壁1aを挟んで隣接させた構成となっている。そして、硝化槽2内には、浸漬平膜をその膜面を鉛直方向に向けて並べて配置した浸漬平膜装置3が配置されている。そして、この浸漬平膜装置3の下側に、散気管4が配置されている。硝化槽2の液相中には液相内の溶存酸素量を測定するための溶存酸素計(DOセンサ)5が配置されている。
【0014】
処理対象排水を供給するラインL1は脱窒槽1に接続され、硝化槽2と脱窒槽1の間には、硝化槽2から脱窒槽1へと排水を返送するポンプ6を有するラインL2が設けられて、循環手段を構成している。また、散気管4には、ブロワ7と空気抜き弁8と流量計9とを有するラインL3が接続されて、曝気系を構成している。そして、DOセンサ5と流量計9の出力が送られ、ブロワ7、開放弁8を制御する制御装置10が設けられている。一方、浸漬平膜装置3には、ろ過した清澄水である処理水を排出するラインL4が接続されている。
【0015】
次に、本実施形態の動作、すなわち、本発明に係る排水処理方法について、図1、図2を参照して詳しく説明する。図2は、曝気系の動作を説明するフローチャートである。
【0016】
処理対象の有機性窒素を含む排水は、ラインL1を介してまず、脱窒槽1へと供給され、脱窒槽1内の活性汚泥と混合される。脱窒槽1内は、溶存酸素の不足したいわゆる無酸素状態に維持されており、この無酸素状態では、活性汚泥内の脱窒菌により硝酸性窒素が窒素ガスへと還元され、大気中へと放出される。脱窒槽1内の混合液の一部は、障壁1aを越えて溢れ、硝化槽2へと流出する。
【0017】
硝化槽2内では、ブロワ7からラインL3を介して散気管4へと空気が送られることにより、曝気が行われている。この曝気によって硝化槽2内は溶存酸素量が一定に維持され、好気条件が保たれるとともに、曝気のエアリフトによって形成される循環流によって浸漬平膜装置3の限外ろ過膜の膜面に付着した活性汚泥の洗浄が行われる。
【0018】
ここで、図2を参照して曝気量の制御動作を具体的に説明する。制御装置10は、DOセンサ5により測定した溶存酸素量(DO値)を計測しており、ステップS1では、その値が所定値以上に変動したかどうかを判定する。変動が所定値内であれば、DO値一定として、曝気系の制御動作は行わない。
【0019】
DO値が所定値以上に増加している場合には、過曝気状態であると判定してステップS2に進行する。ここで、ブロワ7の回転数とその制御最小値との比較を行う。現在のブロワ7の回転数が制御最小値を超えているときは、ステップS3に進行し、ブロワ7の回転数を減少させることで、ブロワ7からの吐出風量を抑制する。一方、現在のブロワ7の回転数が制御最小値であるときは、ブロワ7の回転数操作による吐出風量の抑制は無理であると判定して、ステップS4に進行し、空気抜き弁8を操作して、弁を少し開放することで、ブロワ7から吐出された空気の一部を大気中に逃がすことで、散気管4に送られる空気量、すなわち、曝気量を減少させる。
【0020】
曝気量の調整が終了すると、ステップS5において、流量計9で測定した曝気量と浸漬平膜装置3の洗浄に必要な曝気量である洗浄必要量とを比較する。この洗浄必要量は、例えば、平膜の単位面積あたり0.9m3/m2hである。曝気量がこの洗浄必要量以上であるときは、調整処理を終了し、曝気量が洗浄必要量に達しないときは、洗浄必要量が曝気量となるようブロワ7の回転数及び空気抜き弁8の開度調整を行う。
【0021】
一方、ステップS1において、DO値が所定量以下に減少している場合は、制御装置10は、曝気不足状態に陥っていると判断し、ステップS7へと移行する。ステップS7では、空気抜き弁8の開度が全閉であるか否かを調べる。そして、全閉の場合は、ブロワ7の回転数調整による曝気量調整が必要と判定し、ステップS8に移行して、ブロワ7の回転数を増加せしめてこれにより散気管4からの曝気量を増大させる。一方、空気抜き弁8が全閉でない場合は、ブロワ7の回転数調整よりも空気抜き弁8の操作による曝気量調整を先行させるべきと判定し、ステップS9に移行して、空気抜き弁8を少し閉じることにより、空気抜き弁8からの空気漏洩量を減らし、散気管4からの曝気量を増大させる。
【0022】
ステップS1〜S9を繰り返すことで、硝化槽2内のDO値を原則として一定に維持しつつ、浸漬平膜装置3の膜面洗浄に必要な曝気風量もまた確保することが可能である。
【0023】
このようにしてDO値を一定状態に維持して好気状態とされている硝化槽2内では、活性汚泥中の硝化菌により、排水中のアンモニア性窒素が硝酸性窒素へと酸化分解される。DO値を一定状態に維持しているので、硝化反応を効率良く行うことが可能である。こうして、分解された硝酸性窒素を含む排水の一部は、ポンプ6によりラインL2を介して脱窒槽1へと返送される。上述したように、脱窒槽1では、硝酸性窒素が還元除去されるから、排水中に含まれていたアンモニア性窒素も硝化・脱窒反応により除去されることになる。この際に、硝化槽2内が過曝気状態にならないよう曝気量を調整していることから、脱窒槽1内に持ち込まれる酸素量を抑えて脱窒槽1内の無酸素状態を維持することができ、脱窒槽1内の脱窒反応も効率的に行うことができる。
【0024】
硝化槽2内に設置された浸漬平膜装置3の限外ろ過膜によって硝化槽2内の排水・活性汚泥混合液から分離された清澄水は有機性窒素がほぼ除去されており、ラインL4を介して系外に排出される。ここで、膜面洗浄に必要な曝気風量が常に確保されているので、膜面に活性汚泥が付着することがなく、ろ過処理が好適に行われる。さらに、曝気風量制御による曝気風量の変動によって硝化槽2内に形成される循環流自体も変動するので、より効果的な膜面洗浄を行うことができるとともに、硝化槽2全体に効率良く酸素を供給することができ、硝化槽2内の溶存酸素量分布を均一に保つのが容易であり、硝化反応をさらに効率良く行うことが可能となる。
【0025】
以上の説明では、脱窒槽1と硝化槽2とを隣接させ、脱窒槽1でオーバーフローした混合液を硝化槽2へ導く装置構成を説明してきたが、両者を独立させて、ポンプ、配管等により脱窒槽から硝化槽へと混合液を導く構成としてもよい。
【0026】
また、DO制御についての制御フローはあくまで例示であって、ブロワ回転数及び弁開度と曝気風量との対応マップを用い、風量測定値により微調整する手法を採ってもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、硝化液循環式の有機性窒素を処理する排水処理装置及び方法において、硝化槽内に設置された浸漬平膜装置の膜面洗浄に必要な曝気量を確保しつつ、その曝気量を硝化槽内の溶存酸素量が所定の範囲に維持されるように制御しているので、硝化槽内の硝化反応を効率良く行うとともに、脱窒槽へ持ち込まれる酸素量を抑制して脱窒槽の無酸素状態を維持して効率的な脱窒反応を行うことができる。そして、平膜の膜面洗浄も効率良く行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排水処理装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1の装置における曝気系の制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…脱窒槽、2…硝化槽、3…浸漬平膜装置、4…散気管、5…DOセンサ、6…ポンプ、7…ブロワ、8…空気抜き弁、9…風量計、10…制御装置。

Claims (2)

  1. 有機性窒素を含有する排水を生物学的に処理する排水処理装置であって、
    前記排水が導入され、前記排水中の硝酸性窒素を脱窒菌により分解処理する脱窒槽と、
    前記脱窒槽に接続されており、前記排水中のアンモニア性窒素を硝化菌により硝酸性窒素に酸化処理する硝化槽と、
    前記硝化槽内の処理液を前記脱窒槽に返送して処理液を循環させる循環手段と、
    前記硝化槽内に浸漬配置され、前記硝化槽内の処理液から清澄分をろ過して槽外に排出する浸漬平膜装置と、
    前記硝化槽内の前記浸漬平膜下方に配置され、前記浸漬平膜装置に向けて空気を供給する曝気装置と、
    前記硝化槽内に配置され、処理液中の溶存酸素量を計測する溶存酸素計と、
    前記浸漬平膜装置の膜面洗浄に必要な風量を確保しつつ、前記溶存酸素計により測定した硝化槽内の溶存酸素量が所定範囲に維持されるよう前記曝気装置による曝気風量を調整する制御装置と、
    を備え、
    前記曝気装置は、
    回転数を制御することで、供給風量を調整可能なブロワと、
    前記ブロワから前記硝化槽への曝気供給ラインと大気とを接続する空気抜きライン上に設けられた開度調整可能な空気抜き弁と、
    を備えており、
    前記制御装置は、前記ブロワの回転数と前記空気抜き弁の開度を調整することで、前記硝化槽に供給される曝気風量を調整することを特徴とする排水処理装置。
  2. 有機性窒素を含有する排水を生物学的に処理する排水処理方法であって、
    前記排水を脱窒槽に導入し、脱窒菌により前記排水中の硝酸性窒素を分解処理する脱窒工程と、
    前記脱窒工程後、排水を硝化槽に導いて、曝気装置から曝気を行いつつ、硝化菌により前記排水中のアンモニア性窒素を硝酸性窒素に酸化処理する硝化工程と、
    前記硝化槽内の処理液を前記脱窒槽に返送して処理液を循環させる循環工程と、
    前記硝化槽内に浸漬配置されている浸漬平膜装置により、前記硝化槽内の処理液から清澄分をろ過して槽外に排出する濾過工程と、
    を備えており、
    前記曝気装置による曝気は、前記浸漬平膜装置の膜面洗浄に必要な風量を確保しつつ、前記硝化槽内の溶存酸素量を溶存酸素計により測定して該測定値が所定範囲に維持されるよう前記曝気装置により曝気風量が調整され、
    前記曝気装置は、回転数を制御することで、供給風量を調整可能なブロワと、前記ブロワから前記硝化槽への曝気供給ラインと大気とを接続する空気抜きライン上に設けられた開度調整可能な空気抜き弁と、を備えており、前記曝気風量の調整は、前記ブロワの回転数と前記空気抜き弁の開度を調整することで行われることを特徴とする排水処理方法。
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