JP3962068B2 - 長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を含む植物油脂組成物 - Google Patents

長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を含む植物油脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体から成るコク味向上剤、及びこれを含む植物油脂組成物などに関する。
アラキドン酸(シス−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)は長鎖高度(多価)不飽和脂肪酸の一種であり動物の臓器及び組織から得られるリン脂質中に存在する。これは必須脂肪酸でありプロスタグランジン、トロンボキサンチン及びロイコトリエン等の合成の前駆体となる重要な化合物である。
このようなアラキドン酸の機能に注目して、従来、アラキドン酸のような長鎖高度不飽和脂肪酸及びそのエステルを、栄養強化及び各種生理的作用を付与する目的で油脂及び食品等の各種組成物へ添加することが試みられてきた。
特開平10−99048に記載の栄養強化組成物には、母乳に近い成分を実現する為に添加される成分の一種としてアラキドン酸が0.1〜10重量%含有されている。
一方、エステル体の例としては、特開平4−197134に蒸発潜熱による生地内部の温度降下が防止されたフライ用油脂組成物が記載されているが、そこにはアラキドン酸等の不飽和脂肪酸が構成脂肪酸として20〜60重量%含有されている。
特開平9−13075では、アラキドン酸等の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むグリセリドからなる血中脂質濃度を低減する作用のある油脂が記載されているが、このグリセリドはエステル交換法により得られ、該長鎖多価不飽和脂肪酸の総量の40モル%未満がグリセリドの2位に結合するという天然油とは異なる構造を有するものである。特開平9−13076では、同じ構成から成る血小板凝集能を抑制する作用のある油脂が記載されている。
又、特開平11−89513に記載のヒト乳脂肪に近似する合成脂質組成物には、アラキドン酸を含む長鎖n−6高度不飽和脂肪酸がトリグリセリドを構成する脂肪酸の一種として使用されている。
更に、特開平10−70992及び特開平10−191886にはアラキドン酸をトリグリセリドの形で豊富に含有する微生物由来の食用油脂が記載されており、この好適用途として、未熟児用調製乳、乳児用調製乳、幼児用食品、及び妊婦用食品等が挙げられている。
しかしながら、上記の従来技術のいずれにおいても、アラキドン酸等の長鎖多価不飽和脂肪酸を食品や植物油脂のコク等の風味を向上させる目的で使用することに関する開示はなく、このような目的に使用できる可能性を示唆する記載も見当たらない。
一方で、このような長鎖高度不飽和脂肪酸を添加した場合には、その酸化分解物の臭い(所謂「戻り臭」)が食品等の風味を損ねるという問題点があり、その解決策として様々な手段が講じられてきた。
かかる手段の例として、例えば、特開昭63−44843に記載の油中水中油型乳化油脂組成物においては高度不飽和脂肪酸を内相油に含有することを特徴とする技術が開示されている。特開平6−172782では高度不飽和脂肪酸を含有する油脂を粉末化する技術が記載されている。特開平9−176679では不飽和脂肪酸粉状体に粉末状の抗酸化剤を混合させる技術が開示されている。特開平9−263784では多価不飽和脂肪酸を含有する油脂にδ−トコフェノールを含有させる技術が開示されている。又、特開平11−12592では高度不飽和脂肪酸を含有する魚脂類にしょうゆ油を添加することを特徴とする技術が開示されている。
また、食品分野における長鎖高度不飽和脂肪酸の利用例として、特開2001−78702には、油脂とエキスを水中油型に乳化させることで、まろやかさ、後味、うま味が増強された調味料が開示されており、油脂の例として魚油又は魚油を含有する油脂が挙げれられており、魚油を構成する脂肪酸のうちω3系高度不飽和脂肪酸を10%以上含む例が記載されている。
この調味料においては、含まれる油脂の酸化を抑制する為に乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いたり、油脂の酸化を防ぐためにエキスに天然物型抽出されたカルノシン、及びアンセリン等の抗酸化物質が含まれていることがこの好ましいとされている。又、調味料を製造する段階で、加熱処理等の酸化処理は一切行われていない。更に、この調味料の効果を有効に発揮できる使用する食品の例としては、水産練り製品、魚類、魚類加工品が挙げられているのみである。
又、特許公報第3220155号には、乳脂肪以外の脂肪酸等の酸化によって得ることができる香味料組成物が開示され、この脂肪酸がω−3非共役二重結合系をもつ少なくとも1種類のポリ不飽和脂肪酸を0.01重量%を超える量含むことを特徴としている。この香味料組成物はバター様フレーバーに強く認められている甘く、クリーミィなノートが含まれるものであるが、かかるノートを得る為には油脂を必ず酸化処理する必要がある。そしてこの酸化処理は、酸化を若干遅らせるような量の酸化防止剤が存在するプロセスによる制御された酸化処理である必要がある。又、かかる酸化処理によって発生するフレーバーは揮発性成分であるので、酸化処理は密閉系で行うことが好ましいとされ、実施例においては還流凝縮器を使用して酸化処理を行っている。香味料組成物の用途としてはバターフレーバーをもつと有益な食品の香味付与に特に適していると記載されている。
ところで、食品の分野において、とんかつ等の油調食品やカレー、餃子等の油脂含有食品等、食品によっては「コク」や「濃厚感」が必要なものがある。そのような食品へ「コク」や「濃厚感」を賦与するため、従来は、香料を添加したり、動物性油脂を単独または植物油脂に配合して使用していた。
しかしながら、香料を添加したものにおいては、加熱調理中に香料が揮発し、賦与した「コク味」が持続しないという課題があった。また動物油脂の使用は同油脂に含まれるコレステロールや飽和脂肪酸の健康への影響が懸念されていた。植物油脂はノンコレステロールで飽和脂肪酸が少ないが、植物油脂で調理した食品は「あっさり」しており、「コク味」を必要とする食品には「物足りなさ」が感じられるという課題があった。
これらの課題から、ノンコレステロールで飽和脂肪酸が少なく、しかも「コク味」のある油脂の実現が望まれていた。
特開2001−78702号公報 特許公報第3220155号
本発明者は上記の課題を解決すべく研究した結果、従来は肉類等の腐臭等、オフフレーバーの原因物質とされてきたアラキドン酸等の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を単独で食品に含有させるか、又はそれを特定の範囲で含有する植物油脂で加熱調理などの酸化処理をした場合に、食品のコク味が増し、味を引き立たす効果が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、n−6系の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体から成るコク味向上剤、特に、植物油脂のコク味向上剤に係る。
更に、n−3系の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体から成り、酸化処理することによって得られるコク味向上剤、特に、植物油脂のコク味向上剤に係る。
ここで、「コク味向上剤」とは、このコク味若しくはこれを含む植物油脂組成物を含有する食品又はこの植物油脂組成物で加熱調理などの酸化処理をした食品に有意な「コク味」や「濃厚感」を新たに付与したり、又はそれらを向上させるという本発明の効果が得られるものをいう。このような「コク味」に関する評価は、本明細書中の実施例に示した官能評価法によって行うことが出来る。
本発明で「長鎖高度不飽和脂肪酸」とは、n−3系の長鎖高度不飽和脂肪酸の場合には炭素数が20以上かつ二重結合を3つ以上有する脂肪酸を意味し、n−6系の長鎖高度不飽和脂肪酸の場合には炭素数が18以上かつ二重結合を3つ以上有する脂肪酸を意味する。更に、n−3系及びn−6系の双方ともに炭素数が20〜24かつ二重結合を4〜6有する長鎖高度不飽和脂肪酸が好ましい。n−6系の長鎖高度不飽和脂肪酸の例としてアラキドン酸(AA)及びドコサテトラエン酸(DTA)を挙げることが出来、特に、アラキドン酸が好適である。又、n−3系の長鎖高度不飽和脂肪酸の例として、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びエイコサペンタエン酸(EPA)を挙げることが出来る。
アラキドン酸等の本発明で使用する長鎖高度不飽和脂肪酸及びそのエステル体の由来に特に制限はなく、各種動植物、微生物、藻類等から得られたものが市販されており、これら当業者には公知のものを適宜使用することが出来る。
例えば、上記の特開平10−70992及び特開平10−191886に記載されたアラキドン酸をトリグリセリドの形で豊富に含有する微生物由来の食用油脂を使用することが出来る。
2種以上の長鎖高度不飽和脂肪酸とは又は異なる原料から得られた同種の脂肪酸を適宜混合して使用することも可能である。
エステル体の構造及びその製造方法に特に制限はなく、これを構成するアルコール類としては、一価及び多価アルコールを使用することが出来る。多価アルコールの中でも、安全性やコストの点から好ましいものの例としてグリセロールをあげることができ、この場合にエステル体としてトリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドを構成する。これらのエステル体を構成する脂肪酸中に本発明の長鎖高度不飽和脂肪酸以外の脂肪酸が含まれていても良い。
本発明のコク味向上剤中の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体の含有量に特に制限はないが、含有量があまり少ないと所望の効果を得るために多量のコク味向上剤が必要とされ、その他の成分に由来する雑味の悪影響が生じる可能性もある。従って、本発明のコク味向上剤は、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上含有するものである。
本発明のコク味向上剤中には、上記活性成分の他に、コク味向上剤の効果に悪影響を与えない限り、当業者に公知の他の任意成分、例えば、乳化剤、トコフェロール類、ステロール類、リン脂質、その他の脂肪酸、その他の脂肪酸より構成されるトリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリド等が含まれていても良い。
尚、n−3系の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体の酸化処理の方法に特に制限はないが、その一例として加熱処理があげられる。加熱処理の方法に特に制限はないが、酸化防止剤を存在させる必要はなく、又、酸化処理を密閉系で行う必要もない。開放系において、通常、40℃〜200℃において0.1時間〜240時間加熱する方法があり、好ましくは、80℃〜180℃において0.5時間〜72時間加熱する。
又、n−6系の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体から成るコク味向上剤の効果を発揮するために酸化処理は必要ないが、酸化処理することによって、そのコク味向上剤としての効果が一層増す。更に、このような酸化処理は、本発明の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体から成るコク味向上剤を含有する食品を加熱処理することによっても実施することが出来る。
本発明は、更に、上記のコク味向上剤を植物油脂に添加することからなる、植物油脂のコク味を向上させる方法、及び、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を長鎖高度不飽和脂肪酸として10〜10,000ppm含有することを特徴とする、植物油脂組成物に係る。
本発明の植物油脂組成物は、植物油脂に本発明のコク味向上剤又は長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を添加又は混合する等の適当な方法によって容易に調製することが出来る。
ここで、対象となる植物油脂としては、当業者に公知に任意のものを使用することが出来る。このような植物油脂の例として、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、米油、ごま油、オリーブ油、及びパーム油等を挙げることが出来る。この中でも、特に、フライや炒め物などの加熱調理に主に利用される大豆油、菜種油、コーン油、及びパーム油等に本発明のコク味向上剤を添加することによって、本発明の効果を有利に達成することが出来る。任意の2種類以上の植物油脂を適宜混合して使用することも出来る。
更に、植物油脂の孤立トランス異性体含量が10〜85%、特に20〜60%の範囲にある場合には、本発明の効果が一層増大する。孤立トランス異性体含量「%」は試料脂肪酸メチルエステルの赤外スペクトルを測定し、規定の計算式からエライジン酸メチルとして算出した孤立トランス異性体の試料に対する百分率をいい、基準油脂分析試験法による。このような孤立トランス異性体含量を有する植物油脂は当業者に公知の任意の手段で調製することが可能である。例えば、原料となる植物油脂に公知の方法で適当な程度の水素添加を施すことによって得ることが出来る。又、水素添加して得られた油脂を非水素添加の油脂を適宜混合することも可能である。
尚、本発明において、「孤立トランス異性体」とは、トランス型の孤立二重結合(1個の二重結合あるいは非共役二重結合)を有する不飽和脂肪酸を意味し、その含量は「基準油脂分析法2.4.4.2−1996」で測定した値である。
本発明の効果を有効に得るためには、本発明の植物油脂組成物中の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体の含有量は、長鎖高度不飽和脂肪酸として、好ましくは10〜10,000ppm、より好ましくは10〜8,000ppm、更に好ましくは10〜3,000ppm、特に好ましくは20〜1,000ppmである。
このように、本発明の効果をより有効に得るためには、植物油脂組成物中の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体の含有量が特定の範囲内であることが特徴である。
尚、エステル体の中でも特にグリセリンエステルの場合には、長鎖高度不飽和脂肪酸はそれらのエステル体に比べて揮発性が高いので、より少量で本発明の効果を得ることが出来る。対して、エステル体は揮発性が比較的低い一方で持続性に優れているので、エステル体を含む場合には相対的に含有量が多くなる。
更に、アラキドン酸等の本発明の活性成分である脂肪酸及びそのエステル体として微生物由来のものを使用した場合には、動物由来の油脂を実質的に含有しないノンコレステロールで飽和脂肪酸含量が少ない植物油脂組成物を得ることが出来る。
ここで、n−3系の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を含有する植物油脂組成物は、上記のコク味向上剤の酸化処理と同様な方法で酸化することにより、n−3系の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体によるコク味向上効果が発現される。
又、n−6系の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を含有する植物油脂組成物の場合には、特に酸化処理する必要はないが、同様にかかる方法に特に制限はないが、酸化処理することによって、そのコク味向効果が更に有効に発現される。
こうして得られる本発明の植物油脂組成物は、様々な加熱調理法、例えば、80〜300℃、より好ましくは110〜300℃に加熱する調理法に使用することができる。このような温度範囲で加熱すると、本発明の植物油脂組成物を用いて調理した食品のコク味が増し、食品の味を一層引き立たせることが出来る。
最後に、本発明は、上記コク味向上剤、又は植物油脂組成物を含む食品にも係る。ここで、対象となる食品の種類に特に制限はなく、例えば、各種フライ食品及び炒め物等の油調食品、並びに、カレー、餃子、及び焼売等の油脂添付食品を挙げることが出来る。本発明の食品は、それに含まれる本発明に係るコク味向上剤又はこれを含む植物油脂組成物によって、有意な「コク味」や「濃厚感」が付与されている。これらの食品は、既に記載したような加熱処理されることによって、更にそのコク味が向上する。
食品中に含有される本発明のコク味向上剤又はこれを含む植物油脂組成物の量に特に制限はないが、通常、喫食時に長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体の量に換算して、0.1〜100,000ppm、より好ましくは0.1〜10,000ppmを含有させることによって、食品のコク味向上効果が得られる。例えば、醤油、スープ等の液状食品に対しては、喫食時に長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体の量に換算して、好ましくは1〜1,200ppm、より好ましくは1〜500ppm、更に好ましくは1〜100ppmを含有させることによって、食品のコク味向上効果が得られる。又、ハンバーグのような固形食品においては、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体の量に換算して、好ましくは20〜2,500ppm、より好ましくは20〜1,000ppm、更に好ましくは30〜500ppmを含有させることによって、食品のコク味向上効果が得られる。
以下、実施例を参照しながら本発明を詳述するが、これらの実施例は本発明の技術的範囲を何ら制限するものでない。尚、以下の実施例等において、他に記載のない限り、「%」は「重量%」を意味する。尚、本発明において、アラキドン酸含有トリグリセリド(AATG)及びDHA27G中のAA及びDHA含量は、ガスクロマトグラム(GLC)分析における各脂肪酸ピークの面積比に基づくAA及びDHAの百分率組成比で算出した。GLC分析は「基準油脂分析試験法 参3.2.3-1996」に従った。
ポテトフライ官能評価試験:下記油脂で揚げたフライドポテトの官能評価
以下の実施例1〜4、及び比較例1において、以下のような植物油脂組成物を調製し、フライドポテト(味の素冷凍食品(株)「シューストリング」150g)を各油脂3kgを用いて、180℃で3分間揚げた。
(実施例1)
コーン油(味の素(株))にアラキドン酸(AA)(純度98%以上(和光純薬工業(株)販売,ICN製造 由来不明)を20ppm/油脂組成物になるように添加した植物油脂組成物(対照:コーン油)。
(実施例2)
実施例1と同じコーン油にアラキドン酸含有トリグリセリド(AATG)(アラキドン酸含有量40%以上、トリグリセリド純度95%以上:ナカライテスク(株)販売、サントリー(株)製造、微生物由来)を1000ppmアラキドン酸/油脂組成物になるように添加した植物油脂組成物(対照:コーン油)。
(実施例3)
実施例1と同じコーン油に実施例2と同じアラキドン酸含有トリグリセリドを5000ppmアラキドン酸/油脂組成物になるように添加した植物油脂組成物(対照:コーン油)。
(実施例4)
菜種油及び菜種水添脂に実施例2と同じアラキドン酸含有トリグリセリドを1000ppmアラキドン酸/油脂組成物になるように添加した植物油脂組成物(対照:菜種水添脂)。
尚、菜種水添脂は、味の素製油(株)製菜種油を水添して調製した。得られた菜種水添脂の分析値は以下のとおりである。
・IV(ヨウ素価):70(基準油脂分析試験法3.3.3−1996)
孤立トランス異性体含量:31%(基準油脂分析法2.4.4.2−1996)
(比較例1)
実施例1と同じコーン油に実施例2と同じアラキドン酸含有トリグリセリドを10000ppm及び20000ppmアラキドン酸/油脂組成物になるように添加した植物油脂組成物(対照:コーン油)。
<フライドポテト官能評価法>
以下の官能評価において、「コク味が向上する」とは、各表中の評価項目にある、「風味の強さ」、「味の強さ」及び「後味の強さ」が、それぞれ、「風味の好ましさ」、「味の好ましさ」及び「後味の好ましさ」を損なうことなく増大することである。
項目1〜9
5点法 −2:極めて悪い(弱い),−1:悪い(弱い) 0:普通 1良い(強い) 2極めて良い(強い)
項目10
10点法 1極めて好ましくない 5普通 10極めて好ましい
パネル n=15 表中数字:各項目の平均点
検定 ?:危険率30%で有意差あり、 *:危険率5%、 **危険率1%
以下に各実施例で得られた結果を示す。
Figure 0003962068
Figure 0003962068
Figure 0003962068
Figure 0003962068
Figure 0003962068
実施例1〜4の結果から、アラキドン酸含有量が特定の範囲になるように調整した植物油脂組成物は食品に良好な食味(コク味)を付与することが判明した。一方で、過度の添加は逆に食品の食味性を損なうことが判明した(比較例1)。
更に、以下の実施例5〜11で使用する各長鎖不飽和脂肪酸を含む植物油脂組成物を以下のように調製した。
使用した長鎖不飽和脂肪酸
アラキドン酸(AA:純度98%,和光純薬工業(株)販売、ICN製造)、AA含有トリグリセリド(AATG:純度40〜45%:ナカライテスク(株)販売、サントリー(株)製造、ドコサテトラエン酸(n-6)(DTA:純度98%,SIGMA社)、γリノレン酸:(純度99%,SIGMA社)、「DHA27G」:(日本化学飼料(株)、DHA含量27%)、EPA:(純度99% SIGMA社)、DHA:(純度98% SIGMA社)、リノール酸:(純度99%、SIGMA社)、αリノレン酸:(純度99%、SIGMA社)、ピュアオイル(=低リノレン酸菜種油、味の素(株)、以下「PL油」という)、コーン油(味の素(株))
<官能評価法>
以下の官能評価において、「コク味が向上する」とは、各表中の評価項目にある、「香りの強さ」及び「味の強さ」が、それぞれ、「香りの好ましさ」及び「味の好ましさ」を損なうことなく増大することである。
パネル n=7 表中数字:各項目の平均
以下の実施例の結果を示した表における記号の意味は以下のとおりである。
×:コントロールより弱いまたは好ましくない;△:コントロールと同等;〇:コントロールより強いまたは好ましい;◎コントロールより明らかに強いまたは好ましい
(実施例5)
高度不飽和脂肪酸と食品を加熱することによる食品のコク味向上効果
各脂肪酸をPL油で1%(W/W)に希釈して調製油(1)を作成した。
7%濃口醤油(キッコーマン(株)社製、商品名「本醸造しょうゆ」)溶液100gに調製油(1)0.1gを添加し、90℃で30分加熱した。その結果を表6に示す。表6から明らかなように、加熱することによりコク味向上効果が発現することが判明した。
Figure 0003962068
(実施例6)
酸化処理された高度不飽和脂肪酸のコク味向上効果
各脂肪酸をPL油で1%(W/W)に希釈して調製油(1)を作成した。
調製油(1)30gを120℃で3時間加熱した。その後、7%濃口醤油(キッコーマン(株)社製、商品名「本醸造しょうゆ」)溶液100gに加熱した調製油(1)0.1gを添加した。その結果を表7に示す。表7から明らかなように、酸化した高度不飽和脂肪酸を添加することによりコク味向上効果が発現することが判明した。
Figure 0003962068
(実施例7)
酸化処理された高度不飽和脂肪酸のコク味向上効果
各脂肪酸をPL油で1%(W/W)に希釈して調製油(1)を作成した。
調製油(1)30gを120℃で3時間加熱した(調製油(2))。チキンコンソメ(味の素(株))2ヶ(10.6g)に水600gを加え90℃、30分間加熱し、コンソメ溶液を調製した。調製したコンソメ溶液100gに0.03gの調製油(1)又は(2)を添加し、AA(1)、DHA(1)またはAA(2)、DHA(2)をそれぞれ調製した。その結果を表8に示す。表8から明らかなように、酸化した高度不飽和脂肪酸を添加することによりコク味向上効果が発現することが判明した。
Figure 0003962068
(実施例8)
高度不飽和脂肪酸の食品と加熱することによりコク味向上効果が得られる添加量
以下の調製油を使用した。
0.05%高度不飽和脂肪酸/PL油、(2)同0.1%、(3)同1%、(4)同10%、(5)同50%。
濃口醤油(キッコーマン(株)社製、商品名「本醸造しょうゆ」)溶液100gに各調製油を0.1g添加し、90℃で30分加熱した。その結果を表9に示す。表9から明らかなように、高度不飽和脂肪酸を0.5〜100ppm添加し加熱することにより醤油のコク味が向上すること、及び、高度不飽和脂肪酸を添加しすぎると不快な風味となることが判明した。
Figure 0003962068
(実施例9)
高度不飽和脂肪酸を添加し加熱することにより得られる食品例
以下の調製油を使用して、下記のごとくラーメンスープを調製した。
(1)1%高度不飽和脂肪酸/PL油(高度不飽和脂肪酸含量1%)
(2)10%AATG/PL油 (AA含量4%)
(3)10%「DHA27G」/PL油(DHA含量2.7%)
(4)AATG(AA含量40%)
(5)DHA27G(DHA含量27%)
尚、以下の表10中、「MSG」は味の素(株)社製のL−グルタミン酸ナトリウム(100%)の商品名であり、「IN」は味の素(株)社製の5’−イノシン酸ナトリウム(100%)の商品名である。
Figure 0003962068
上記表10のスープ原液100gに各調製油(1)〜(3)、又は高度不飽和脂肪酸原液(4)及び(5)を添加し、90℃で30分間加熱し、冷却した後、15%熱湯希釈溶液中で評価した。その結果を表11及び表12に示す。これらの表から明らかなように、高度不飽和脂肪酸を3〜1,200ppm、より好ましくは10〜1,200ppm添加し加熱することによりコク味のあるラーメンスープが得られること、及び、高度不飽和脂肪酸を添加しすぎると不快な風味となることが判明した。
Figure 0003962068
Figure 0003962068
(実施例10)
高度不飽和脂肪酸を添加し加熱することにより得られる食品例
以下の調製油を使用して、下記のごとくハンバ−グを調製した。
(1)AATG(AA含量40%)
(2)10%AATG/PL油 (AA含量4%)
(3)10%「DHA27G」/PL油(DHA含量2.7%)
Figure 0003962068
上記表13の組成をホバートミキサーで混合し160gづつに小分けにして各油脂を加えて混合後成型した後焼いた。
焼き条件:ホットプレート200℃、 設定:片面5分×2、計10分。
その結果を表14に示す。表14の結果から明らかなように、高度不飽和脂肪酸を50〜2,500ppm添加し加熱することによりコク味のあるハンバーグが得られること、及び、高度不飽和脂肪酸を添加しすぎると不快な風味となることが判明した。
Figure 0003962068
(実施例11)
油脂組成物 フライドポテト揚げ時
実施例1〜4と同様の条件で、DTA添加油脂を使用してフライドポテトを揚げ、同様の官能評価法で評価した。パネル n=12。その結果を表15に示す。
Figure 0003962068
アラキドン酸等の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を植物油脂に特定の範囲含有させることによって得られる植物油脂組成物を食品に含有させたり、又はこの植物油脂組成物を用いて食品を加熱調理することによって、得られる食品のコク味が増し、味を引き立たす効果が得られることがわかった。

Claims (4)

  1. アラキドン酸及び/又はそのエステル体をアラキドン酸として10〜10,000ppm含有し、動物由来の油脂を実質的に含有しないことを特徴とする、調理用植物油脂組成物。
  2. アラキドン酸が微生物由来である請求項1に記載の調理用植物油脂組成物。
  3. 炭素数が20以上かつ二重結合を3つ以上有するn−3系の長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を長鎖高度不飽和脂肪酸として10〜10,000ppm含有し、酸化処理することによって得られることを特徴とする、調理用植物油脂組成物。
  4. 植物油脂の孤立トランス異性体含量が10〜85%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の調理用植物油脂組成物。
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