JP3960910B2 - 使い捨ておむつ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、排尿時の漏れ防止用立体ギャザーを備えた使い捨ておむつに関する。
【0002】
【従来の技術】
図6および図7に、従来から市場に提供されているテープ式使い捨ておむつ100を示す。ここで、図6(a)はこの使い捨ておむつ100の展開状態における平面図であり、図6(b)は、図6(a)中のB−B線矢視の縦断面図である。また、図7(a)は装着状態の使い捨ておむつのウエストでの横断面図であり、図7(b)は装着者中心の縦断面図である。尚、図中、接着される部分を×印で示している。
【0003】
図6に示すように、この使い捨ておむつ100は、透液性のトップシート11と、不透液性のバックシート21と、これら両シート11,21間に配置される吸液性の吸収体30と、この吸収体30よりも幅方向へ延出してサイドフラップ51となる外形シート23とから主に構成される。そして、最近では、尿等の排泄液の横漏れ防止を目的として、吸収体30の幅方向の両端部に沿って立体ギャザー43を設けたものが主流となっている。
【0004】
この立体ギャザー43は、前記外形シート23上、または前記吸収体30の前記端部上を固定端45とするとともに、この固定端45から前記吸収体30の幅方向中央側に自由端47aが位置するように設けられる。そして、この立体ギャザー43の自由端47aには、その長手方向に沿って伸長状態の糸状ゴム53aが固定され、この糸状ゴム53aから付与される収縮力によって立体ギャザー43には装着時に立体形状が付与される。この立体形状とは、立体ギャザー43の自由端側部分47が起立する起立形状と、自由端側部分47が長手方向に収縮する蛇腹形状とからなる。
【0005】
このような構成の使い捨ておむつ100は、図6(a)に示すように、長手方向には、前身頃3、股下部7、および後身頃5の三つに分けられる。そして、図7に示すように、前身頃3のサイドフラップ51の両端部51aと後身頃5のサイドフラップ51の両端部51aとを接合して当該使い捨ておむつ100を装着した際には、前身頃3から後身頃5までの各部分が、装着者1の腹部、股間部、および背部のぞれぞれにあてがわれ、前記各部分に跨って配された前記吸収体30が、装着者1の肌1aと対面するようになっている。この時、前記立体ギャザー43は前述した立体形状となっており、もって、立体ギャザー43は、前記起立形状によって尿2を幅方向の中心側に堰き止める一方で、前記蛇腹形状によって長手方向に収縮して装着者1の脚の付け根部を軽く締め付けて腹部から背部までに亘って密着するようになっている。尚、図7中、尿漏れの流れ2aを破線矢印にて示している(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−79140号公報(第5頁、第2図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この糸状ゴム53aを用いて立体ギャザー43に立体形状を付与する方法では、長手方向において部分的に隆起沈降するような複雑な形状までは表現することはできず、もって腹部から背部までの間における身体の部分的な起伏に対してまで立体ギャザー43を緊密にフィットさせることは不可能である。このため、微小な隙間からの若干の漏れは避けられず、以前から更に高いレベルの尿漏れ防止作用を奏する立体ギャザー43が望まれていた。
また、使い捨ておむつ100の製造工程においては、糸状ゴム53aを立体ギャザー43に配置する工程が必要であり、使い捨ておむつ100の製造工程の簡素化を阻む一要因にもなっていた。
【0008】
本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、糸状ゴム等の弾性部材を別途付設せずに装着状態の立体形状を実現できて、更に高レベルの尿漏れ防止作用を奏することが可能な立体ギャザーを備えた使い捨ておむつを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、透液性のトップシートと不透液性のバックシートとの間に吸液性の吸収体を備え、該吸収体の幅方向の両端部のそれぞれに長手方向に沿って一対の立体ギャザーが設けられた使い捨ておむつにおいて、前記立体ギャザーの構成繊維に形状記憶繊維を用いて、装着状態の立体形状を立体ギャザーに予め記憶させており、
前記形状記憶繊維は、前記装着状態を装着者の体温によって検知後、立体ギャザーを前記立体形状に復元し、
前記吸収体よりも幅方向へ延出するサイドフラップを備え、前記立体ギャザーは、前記サイドフラップ上または前記吸収体の端部上を固定端とするとともに、該固定端から前記吸収体の幅方向中央側に自由端が位置するように設けられ、
前記形状記憶繊維は、前記立体ギャザーの自由端側部分に長手方向に亘って設けられ、前記装着状態を検知して自身が収縮することにより前記立体ギャザーを長手方向に収縮させて前記立体形状を形成させることを特徴とする。
【0010】
上記発明によれば、前記立体ギャザーは、自身を構成する形状記憶繊維によって自力で予め記憶した立体形状になる。よって、立体ギャザーを立体形状にするための糸状ゴム等の弾性部材を別途付設せずに済む。
【0011】
また、立体ギャザーを構成する形状記憶繊維自体が個々に立体形状を記憶するので、立体ギャザーに複雑な形状を記憶させることが可能となる。よって、立体ギャザーが当接する身体のラインに複雑な形状の部分があっても、その形状を綿密に調べてその調査結果に基づいて立体形状を記憶させれば、身体の腹部から背部までの全ラインに亘って立体形状をより効果的に沿わせることができる。従って、装着時に立体ギャザーをその全長に亘って身体に可及的に密着させることができて、更に高レベルの尿漏れ防止作用を奏することが可能となる。
【0012】
また、装着者の体温によって装着状態を検知した後、形状記憶繊維は記憶した立体形状に立体ギャザーを復元する。よって、立体ギャザーは身体にきつく当たることなく身体との隙間を有効に埋めて当接し、もって履き心地の良いものとなる。
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の使い捨ておむつにおいて、前記記憶した立体形状は、前記吸収体上において起立する立体ギャザーの起立形状であることを特徴とする。
上記発明によれば、立体形状として起立形状を記憶しているので、前記立体ギャザーは自力で起立状態となる。よって立体ギャザーを起立させるための糸状ゴム等の弾性部材を別途付設せずに済む。
【0013】
請求項3に示す発明は、請求項1または2のいずれかに記載の使い捨ておむつにおいて、前記記憶した立体形状は、前記立体ギャザーの長手方向に収縮する蛇腹形状であることを特徴とする。
上記発明によれば、立体形状として蛇腹形状を記憶しているので、立体ギャザーは自力で長手方向に収縮可能であり、この収縮力によって装着時に立体ギャザーが当たる身体の部分を締め付けることができる。よって、立体ギャザーに収縮力を付与するための糸状ゴム等の弾性部材を別途付設せずに済む。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る参考例及び実施形態についてテープ式の使い捨ておむつ、すなわち装着時にファスニングテープで前身頃と後身頃とを接合する形式の使い捨ておむつを例に詳細に説明する。尚、本発明は、前身頃と後身頃とを予め接合してなるパンツ式使い捨ておむつに対しても全く同様に適用することができる。
【0015】
===本発明に係る使い捨ておむつの基本構成===
−−−(1)使い捨ておむつの全体構成−−−
図1(a)は本発明に係る第1参考例の使い捨ておむつの展開状態における平面図であり、図1(b)は、図1(a)中のB−B線矢視の縦断面図である。また図2は、図1中のII部を拡大して示す平面図である。
【0016】
図1に示すように、この使い捨ておむつ10は、透液性のトップシート11と、このトップシート11との間に吸収体30を介装する不透液性のバックシート21と、このバックシート21の裏側全面を覆いつつ吸収体30よりも幅方向へ延出する部分において後記立体ギャザーシート41と共にサイドフラップ51を構成する外形シート23と、吸収体30の幅方向の両端部上に位置して起立する立体ギャザー43を、長手方向に沿って形成する立体ギャザーシート41とから主に構成される。
【0017】
また、この使い捨ておむつ10は、図1(a)に示すように、長手方向には、前身頃3、股下部7、および後身頃5の三つに分けられる。そして、使い捨ておむつ10の平面外形をなす前記サイドフラップ51の幅方向の両端縁は、腹側部3から股下部7を介して背側部5にかけて凹曲線57に切り欠かれており、もって使い捨ておむつ10の平面外形は、腹側部3および背側部5が広幅でこれらの間の股下部7が狭幅の略砂時計形状を呈している。
【0018】
−−−(2)吸収体−−−
前記吸収体30は、セルロース繊維材料等の綿状パルプを層状に成形した略平面視砂時計状の吸収層31を主材とし、この吸収層31の全体を透水性シート33としてのクレープ紙によって包んで構成される。詳細には、この吸収層31の表裏面および四つの側面は、前記クレープ紙33によって春巻き状にくるまれて被覆されている。尚、前記綿状パルプには、吸収層31の可能吸収容量を大きくすべく、高吸収性樹脂を添加するのが望ましい。また、必要に応じて、前記吸収体30の表面には、排泄液の表面拡散を促すべく、その全面を覆って不織布製拡散シート(不図示)を敷くと良い。
【0019】
−−−(3)バックシート−−−
前記吸収体30の裏面側には前記バックシート21が配されていて、この吸収体30の裏面全面を覆って貼着されるとともに、裏面から表面側に回り込んだバックシート21の端部が、前記吸収体30の各側面に貼着され、もってバックシート21と吸収体30とは接着一体化されている。この貼着は、ホットメルト接着剤によってなされる。尚、以降の説明で出てくる接着に関する記載は、基本的にホットメルト接着剤によってなされ、その都度説明はしない。
【0020】
このバックシート21は、おむつの裏面側における防漏性を高めるためのものであり、その素材としてはポリエチレンプラスチックフィルムなどが好適である。尚、好ましくは、前記ポリエチレンフィルムに、液体分子を透過させない程度の多数の微孔を設け、蒸れ防止とするのが良い。
【0021】
−−−(4)トップシート−−−
前記吸収体30の表面には、その全面を覆って前記透液性のトップシート11が配されている。そして、吸収体30よりも幅方向へ若干延出するトップシート11の部分11aは、吸収体30の裏面側に配される後記外形シート23に貼り合わされ、もって両シート11,23間に吸収体30が保持されている。このトップシート11は親水性の不織布や織布等であり、その構成繊維は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の単繊維、若しくはこれらのうちの2成分以上からなる複合繊維にて構成される。
【0022】
−−−(5)外形シート−−−
前記外形シート23は、前記バックシート21の裏面側を覆って配され、その形状は吸収体30と類似形状の平面視砂時計形状を呈する。そして、この外形シート23の長手方向の中央に、互いの括れ部を一致させつつ前記吸収体30が配されて、前述した吸収体30表面を覆うトップシート11の延出部分11aと貼着される。尚、この外形シート23は、吸収体30よりも平面的には大きいものであり、吸収体30から幅方向に延出する部分は、後述する立体ギャザーシート41と重ね合わされて、使い捨ておむつ10の平面外形をなすサイドフラップ51となる。
【0023】
この外形シート23は、通気性および撥水性を共に備えた単層の不織布シート、若しくは通気性を有する不織布に撥水性を備えた不織布を貼り合わせた複層の不織布シート等を用いることができる。尚、この外形シート23には、必要に応じて糸状ゴムや帯状ゴム等の弾性伸縮部材を適宜幅方向および長手方向に配置することにより、または外形シート23自体を弾性伸縮性素材にて構成することにより、外形シート23に弾性伸縮性を付与しても良い。
【0024】
−−−(6)立体ギャザーシート−−−
前記立体ギャザーシート41は、立体ギャザー43の自由端47aにて折り返された2枚重ねで使用される撥水性シートである。この立体ギャザーシート41は、トップシート11を介しつつ前記吸収体30の幅方向の両端部をそれぞれに覆って一対が、吸収体30の長手方向に亘って配されている。そして、各立体ギャザーシート41は、吸収体30の前記各端部に沿ってトップシート11または外形シート23に貼着固定されて立体ギャザー43の固定端45を形成する。
【0025】
この固定端45よりも吸収体30の幅方向中央側には、立体ギャザー43の自由端47aが存在し、つまりこの固定端45から自由端47aまでの部分が立体ギャザー43となっている。この立体ギャザー43のうちの自由端側部分47には、図1(b)に示すように吸収体30の前記端部上で起立するように起立形状が付与されているとともに、図2に示すように長手方向に収縮するように長手方向に亘って蛇腹形状が付与されている。一方、固定端側部分49は吸収体30上のトップシート11面に接離可能に重なって概ね平坦になっている。
【0026】
この起立形状および蛇腹形状については後で詳述するが、立体ギャザーシート41のシート基材の構成繊維に形状記憶繊維を用いることによって前記両形状が付与されている。つまり、この形状記憶繊維が、立体ギャザー43の立体形状として起立形状および蛇腹形状を記憶していて、これによって立体形状を形作っている。このため、本発明にあっては、立体ギャザー43に立体形状を付与するための前述した糸状ゴムは設けられていない。
【0027】
一方、図1に示すように、前記固定端45からは、幅方向の外側に向けて外形シート23と同形状に延出し、この延出部分42は外形シート23に貼り合わされてサイドフラップ51を構成する。このサイドフラップ51は、装着者の腹部にあてがう前身頃3および背部にあてがう後身頃5については幅広に形成される一方、股間部にあてがう股下部7については幅狭に形成され、もって、使い捨ておむつ10の外形は平面視略砂時計状になっている。
【0028】
−−−(7)その他の構成要素−−−
前記サイドフラップ51の幅方向の両端部には、各端部に沿って、複数本の糸状ゴム53bが伸長状態にて前記二枚重ねの立体ギャザーシート41間に介装固定されており、その収縮力によって左右一対の脚周りギャザーを形成している。この糸状ゴム53bとしては、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材が適用される。尚、この糸状ゴム53bは必須構成ではなく、脚周りギャザーはなくても良い。
【0029】
前記後身頃5のサイドフラップ51の幅方向の両端部51aには、このサイドフラップ51を前身頃3のサイドフラップ51と接合して、当該おむつ10を装着者に装着させるためのファスニングテープ55がそれぞれ設けられている。
【0030】
−−−(8)使い捨ておむつの装着−−−
以上の構成からなる使い捨ておむつ10を装着者に装着した状態を、前述した図7を参照して説明する。前述したように、前身頃3から後身頃5までの各部分が、装着者1の腹部、股間部、および背部のぞれぞれにあてがわれ、前記各部分に跨って配された前記吸収体30が、装着者1の肌1aと対面するようになっている。この時、立体ギャザー43は、前記起立形状および蛇腹形状からなる立体形状となっており、もって前記起立形状によって尿2を幅方向の中心側に堰き止める一方で、前記蛇腹形状によって長手方向に収縮して装着者1の脚の付け根部を軽く締め付けて腹部から背部までに亘って密着するようになっている。そして、これによって、おむつ外への尿漏れ2aを防止する。
【0031】
===本発明に係る使い捨ておむつの特徴的事項===
尚、以上説明してきた構成は、通常の使い捨ておむつと概ね同じであり、以下にて説明する内容が本発明の特徴的事項に関わるものである。
【0032】
図1および図2に示す本発明に係る立体ギャザー43は、その構成繊維に形状記憶繊維が使用されており、これによって立体ギャザー43には装着状態における立体形状が予め記憶されている。本第1参考例にあっては、立体形状として、図1(b)に示すように立体ギャザー43の自由端側部分47が起立した起立形状、および図2に示すように自由端側部分47が長手方向に沿って収縮した蛇腹形状に固定されている。
【0033】
この立体形状を詳細に説明すると、前記起立形状は、図1(b)に示すように、吸収体30上に接離可能に重なる固定端側部分49から幅方向の中央側に連なる自由端側部分47にかけて略く字状に折れ曲がり、もって自由端47aを前記中央側へ向けて起立した形状となっている。一方、蛇腹形状は、図2に示すように、幅方向に沿った皺が立体ギャザー43の長手方向に亘って形成されたものであり、より詳細には、立体ギャザー43の自由端47aは大振幅の皺状に、また固定端45は前記皺のない平面状に形成され、これら自由端47aと固定端45との間の部分47,49においては、自由端47aから固定端45に向かうに従って前記振幅の大きさが小さくなるように形成されている。尚、この自由端47aと前記固定端45との長手方向の各全長は、この自由端47aの皺が完全に伸びた伸長状態において等しくなるようになっており、この伸長状態では立体ギャサー43は起立せず、皺状に収縮した状態において起立するようになっている。
【0034】
このような立体ギャザー43を形成する立体ギャザーシート41は、その構成繊維の全部に形状記憶繊維を用いた不織布または織布から構成される。そして、この形状記憶繊維には、ガラス転移点が0〜60℃の形状記憶樹脂を用いる。この形状記憶樹脂としては、ウレタン化合物、アクリル化合物またはシリコン化合物が用いられる。
【0035】
この形状記憶樹脂は、ガラス転移点の前後での弾性率変化が大きいという性質を備えるものであり、この性質に基づいて次に示すような形状記憶機能を有している。
(a)形状記憶樹脂を任意の形状aに成形し、その形状aの状態でガラス転移点よりも高温に加熱して結晶部分を絡み合わせる結晶化または分子間架橋によって固定点を形成して形状を記憶させる。
(b)次に、ガラス転移点以上かつ前記加熱温度未満の雰囲気下で外力を加えて形状bに変形し、そのままガラス転移点未満の温度に下げると、その形状は形状bに固定される(形状固定特性)。
(c)これを更にガラス転移点以上に加熱することによって、外力を加えることなく形状aに復元する(形状復元特性)。
【0036】
そして、本第1参考例にあっては立体形状を記憶させるのに、上記手順(a)〜(c)のうちで特に(a)および(b)を実行して実現される「形状固定特性」を利用している。すなわち、第1参考例の立体ギャザーシート41は、以下のようにして立体形状が記憶されて形成される。
【0037】
先ず、形状記憶樹脂を素材とし溶融紡糸等にて製造した形状記憶繊維を堆積してウエブ状のシート基材を成形する。そして、ガラス転移点以上の雰囲気下で、記憶させるべき立体形状bが刻設された雄雌一対の押し型部材に前記シート基材を挟み込んで前記立体形状bに変形し、そのままガラス転移点未満の温度に下げる。すると、このシート基材は立体形状bに固定され、つまり立体形状bが発現した状態で記憶される。尚、この立体形状bは、前述した起立形状および蛇腹形状であるのは言うまでもない。
【0038】
そして、このようにして立体形状bに固定された立体ギャザーシート41は、使い捨ておむつ10の製造過程における適宜工程にて、不図示の半製品状態の使い捨ておむつに貼着されて取り付けられる。
【0039】
尚、上記ウエブ状シート基材が不織布の場合の製法としては、スパンボンド法やエアスルー法等の通常の方法を使用できるが、望ましくは、繊維同士の接合を確実にできるという意味でエアスルー法が好ましい。
【0040】
ここで、本発明の作用を説明する。本発明によれば、形状記憶繊維によって、立体ギャザー43は装着状態の立体形状を記憶しており、つまりこの立体形状に固定されている。よって、立体ギャザー43は自力で、起立形状および蛇腹形状といった立体形状になっており、もって立体形状にするための糸状ゴム等の弾性部材を省略することができる。
【0041】
また、前記押し型部材によって立体ギャザーシート41を立体形状bに変形してその構成繊維自体に個々に立体形状を記憶させることができるので、押し型部材の彫刻形状の設定によって複雑な形状を随意記憶させることができる。よって、立体ギャザー43が当接する身体のラインを綿密に調べて、その調査結果に基づいて押し型部材を成形すれば、身体の腹部から背部までに亘って変化するラインに対して立体形状をより効果的に沿わせることが可能となる。従って、装着時に立体ギャザーをその全長に亘って身体に可及的に密着させることができて、更に高レベルの尿漏れ防止作用を奏することが可能となる。
【0042】
図3に、本第1参考例に係る第1変形例を示す。尚、図3は、前記図1(a)中のB−B線矢視にて示している。
前記第1参考例にあっては、立体ギャザー43の起立形状を、その自由端47aが幅方向の中央側たる内側を向いて起立する形状にしていたが、本第1変形例にあっては、自由端47aが、幅方向の外側を向いて起立する形状になっている点で相違する。すなわち、この立体ギャザー43にあっては、その固定端45から中央側に連続する自由端側部分47が、吸収体30の端部近傍の位置にて外側へ折り返されており、折り返し部から自由端47aにかけての部分が、幅方向の外側を向いて起立するようになっている。
【0043】
図4は、前記第1参考例に係る第2変形例を示す図であって、図4(a)に展開状態の平面図を、図4(b)に、図4(a)中のB−B線矢視の断面図を示す。
前記第1参考例は、サイドフラップ51を立体ギャザーシート41にて構成したところ、本第2変形例は、この立体ギャザーシート41に代えてトップシート11がサイドフラップ51を構成している点で相違する。
【0044】
つまり、図4に示すようにトップシート11は、吸収体30より幅方向に延出して前記外形シート23と概ね同形の略砂時計形状に形成され、その延出部分11bが外形シート23に重ね合わされてサイドフラップ51を形成している。一方、前記立体ギャザーシート41は、前記自由端側部分47から前記固定端45までしかなく、サイドフラップ51の部分には存在していない。
【0045】
尚、この場合、第1参考例において立体ギャザーシート41間に介装されて脚周りギャザーを形成した糸状ゴム53bは、図4(b)に示すように、トップシート11bと外形シート23との間に介装されている。
【0046】
以上説明してきた第1参考例およびその変形例に係る立体ギャザー43は、既に装着前に立体形状に固定されており、すなわち装着前において既に記憶した立体形状が発現してしまっているものであった。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、例えば、次に示す第2参考例のように装着状態を検知後に、前記立体形状が発現(以下では、「復元」と言う場合もある)するようにしても良い。
【0047】
この第2参考例の立体ギャザー43は、図1(a)に示すような装着前の展開状態においては、前記起立形状および蛇腹形状のいずれも発現しておらず、無負荷状態においては平坦になっていて、もって吸収体30上に重なっている。しかしながら、一旦装着者の体温等によって装着状態を検知したら、記憶している起立形状および蛇腹形状といった立体形状が発現するようになっている。
【0048】
そして、このような構成によれば、装着者の体温等によって装着状態を検知後、形状記憶繊維は記憶した立体形状に復元する。つまり、立体ギャザー43は、装着後に、装着者の身体のラインに沿う立体形状になる。よって、立体ギャザー43は身体にきつく当たることなく身体との隙間を有効に埋めて身体に当接し、もって履き心地の良いものとなる。
【0049】
このような立体ギャザー43を備える立体ギャザーシート41は、前記第1参考例と同様に、その構成繊維の全部に形状記憶繊維を用いた不織布または織布によって実現可能である。但し、この形状記憶繊維の単糸繊度および繊維長は前記第1参考例と同じであるが、ガラス転移点が、人間の体温と同じ36〜37℃の形状記憶樹脂を用いている点で相違する。
【0050】
そして、この相違点に基づいて、本第2参考例では、前述した(a)〜(c)の全手順を実行して実現される「形状復元特性」を利用することによって、装着状態を体温にて検知後、立体形状に復元することが可能となっている。
【0051】
すなわち、第2参考例の立体ギャザーシート41は、以下のようにして立体形状を発現せずに記憶するとともに、この記憶に基づいて装着時に立体形状に復元する。
【0052】
先ず、溶融紡糸等にて製造した形状記憶繊維を堆積してなるウエッブ状シート基材を、記憶させるべき立体形状aに成形する。尚、この立体形状aは、前述した起立形状および蛇腹形状である。そして、この繊維のガラス転移点たる36〜37℃以上の雰囲気下で外力を加えて前記立体形状aを潰して平坦形状bに変形し、そのままガラス転移点未満の温度に下げる。するとその形状は平坦形状bに固定され、前記立体形状aは記憶されてはいるが発現されずにいる。
【0053】
そして、この立体形状aが未発現の立体ギャザーシートは、使い捨ておむつの製造過程の適宜工程において、半製品状態の使い捨ておむつに取り付けられる。尚、この立体ギャザーシートは平坦形状bになっているため、取り付け易い。
【0054】
この後、所期工程を経て市場に提供されたこの使い捨ておむつは、装着者の手元に届く。そして、装着者に装着された際に、その体温によって前記形状記憶繊維はガラス転移点まで暖められ、もって前記記憶された立体形状aである前記起立形状および蛇腹形状に復元する。
【0055】
尚、この第2参考例にあっては、装着状態を体温によって検知したが、湿度によって記憶形状に復元可能な形状記憶繊維を用いれば、装着状態を湿度によっても検知し得る。ちなみにこの場合には、検知する目標湿度の設定によって、装着後の復元タイミングを調整することも可能となる。例えば目標湿度を低く設定すれば、装着者の発汗による湿度上昇を直ちに検知して装着直後に立体形状に復元させることができる。一方、目標湿度を高く設定すれば、装着者の排尿による湿度上昇を検知して、排尿時に立体形状に復元させることもできる。尚、後者にあっては、装着してから排尿時までの間は立体ギャザー43は立体形状に復元しないため、排尿前の履き心地は確実に良好なものとなる。
【0056】
図5に、本実施形態を示す。尚、図5は、前記図1(a)中のB−B線矢視にて示している。
前記第2参考例にあっては、立体ギャザーシート41の全面に亘って形状記憶繊維を用いたところ、本実施形態では立体ギャザー43の自由端47aの部分のみに形状記憶繊維を用いている点で相違する。
【0057】
すなわち、立体ギャザー43の自由端47aの部分には、その長手方向に沿って糸状の形状記憶繊維48が少なくとも一本固定されており、これ以外の立体ギャザーシート41の部分は、形状記憶機能を有しない繊維で構成されている。そして、この糸状の形状記憶繊維48には、前記(a)〜(c)における立体形状aとして長手方向の全長が短縮した状態が記憶されている。よって、この使い捨ておむつ10を装着すると、装着者の体温等によって前記糸状の形状記憶繊維48が装着状態を検知して、形状記憶繊維は短くなる。すると、この形状記憶繊維48から立体ギャザー43には収縮力が付与されて、もって従来の糸状ゴム53aと全く同様の原理に基づいて自由端側部分47は起立状態になるとともに蛇腹状態にもなり、もって第2参考例と同様の作用を奏することができる。
【0058】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0059】
本実施形態においては、立体ギャザーシート41における立体ギャザー43にのみ立体形状を記憶させたが、これに限るものではなく、立体ギャザーシート41のサイドフラップ51を構成する部分に対しても装着状態の立体形状を記憶させても良い。
【0060】
本実施形態においては、脚周りギャザーを糸状ゴムの収縮力によって形成したが、これに代えて、この収縮力を奏する蛇腹形状の如き立体形状を前記サイドフラップ51の脚周りギャザー部分の形状記憶繊維に記憶させても良い。
【0061】
本実施形態においては、立体ギャザーシート41を二枚重ねにして用いたが、これに限るものではなく一枚でも良い。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、糸状ゴム等の弾性部材を別途付設せずに装着状態の立体形状を実現し、更に高レベルの尿漏れ防止作用を奏することが可能な立体ギャザーを備えた使い捨ておむつを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(a)は展開状態の使い捨ておむつの平面図であり、図1(b)は、図1(a)中のB−B線矢視の断面図である。
【図2】 図1中のII部を拡大して示す平面図である。
【図3】 第1参考例に係る第1変形例を、図1(a)中のB−B線矢視にて示す図である。
【図4】 第1参考例に係る第2変形例を示す図であって、図4(a)に展開状態の平面図を、図4(b)に、図4(a)中のB−B線矢視の断面図を示す。
【図5】 本実施形態を、図1(a)中のB−B線矢視にて示す図である。
【図6】 図6(a)は、従来の使い捨ておむつの展開状態における平面図であり、図6(b)は、図6(a)中のB−B線矢視の縦断面図である。
【図7】 図7(a)は、装着状態の使い捨ておむつのウエストでの横断面図であり、図7(b)は装着者中心の縦断面図である。
【符号の説明】
1 装着者
10 使い捨ておむつ
11 トップシート
21 バックシート
23 外形シート
30 吸収体
41 立体ギャザーシート
43 立体ギャザー
45 固定端
47 自由端側部分
47a 自由端
49 固定端側部分
51 サイドフラップ
Claims (3)
- 透液性のトップシートと不透液性のバックシートとの間に吸液性の吸収体を備え、該吸収体の幅方向の両端部のそれぞれに長手方向に沿って一対の立体ギャザーが設けられた使い捨ておむつにおいて、
前記立体ギャザーの構成繊維に形状記憶繊維を用いて、装着状態の立体形状を立体ギャザーに予め記憶させており、
前記形状記憶繊維は、前記装着状態を装着者の体温によって検知後、立体ギャザーを前記立体形状に復元し、
前記吸収体よりも幅方向へ延出するサイドフラップを備え、前記立体ギャザーは、前記サイドフラップ上または前記吸収体の端部上を固定端とするとともに、該固定端から前記吸収体の幅方向中央側に自由端が位置するように設けられ、
前記形状記憶繊維は、前記立体ギャザーの自由端側部分に長手方向に亘って設けられ、前記装着状態を検知して自身が収縮することにより前記立体ギャザーを長手方向に収縮させて前記立体形状を形成させることを特徴とする使い捨ておむつ。 - 前記記憶した立体形状は、前記吸収体上において起立する立体ギャザーの起立形状であることを特徴とする請求項1に記載の使い捨ておむつ。
- 前記記憶した立体形状は、前記立体ギャザーの長手方向に収縮する蛇腹形状であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の使い捨ておむつ。
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