JP3960219B2 - 鉛蓄電池の検査方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は鉛蓄電池の製造工程において、極板群の電槽への挿入方向を検査する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉛蓄電池の極板群を電槽に挿入する工程において、極板群の挿入方向を誤った(以下、逆セル不良)場合、その後の化成充電工程において、本来酸化されて2酸化鉛となる未化成正極板は海綿状鉛に還元され、他方、本来還元されて海綿状鉛となるべき未化成負極板は2酸化鉛に酸化される。鉛蓄電池の場合、未化成極板はいずれも塩基性硫酸鉛、硫酸鉛と酸化鉛の混合物で構成されているので、極板群の極性を逆方向で電槽に収納しても化成充電後すると鉛蓄電池として成立する。
【0003】
このような極板群の収納方向を誤った鉛蓄電池はある程度まで放電できるので、最終的な容量検査工程で完全放電もしくは完全放電に近い状態にまで深い放電を行わない限り不良品として選別することはできない。そしてこのような不良電池は寿命が著しく短く、市場で初めて短寿命として問題となる。
【0004】
上記のような逆セル不良を未然に防止するために、例えば特許文献1では極板群を構成する正極棚と負極棚の長さ寸法をそれぞれ異なったものとし、逆セル不良の場合に電槽蓋内面に正極棚もしく負極棚と干渉するリブを設け、逆セル不良の場合には電槽蓋が電槽に装着できないようにする構造が知られている。
【0005】
また、正極棚もしくは負極棚に極性判別のための突起を設け、逆セル状態を目視もしくは画像認識装置によって判別することも行われている。
【0006】
前記の特許文献1のような逆セル防止方法は一見確実な方法と考えられるが、電槽蓋を電槽に装着しようとした時点で初めて逆セルと判明するため、電槽蓋を装着する時の力の大小によっては、互いに干渉しあうリブあるいは棚が変形し、電槽蓋が電槽に無理やり装着され、結果的に逆セル不良電池を作ってしまうという課題があった。
【0007】
【特許文献1】
実開平2‐59565号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記したような鉛蓄電池の組み立て工程における逆セル不良を精度よく、かつ簡便に判別でき鉛蓄電池の検査方法をするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、それぞれ未化成状態の正極板と負極板の間に水分を吸着したマットセパレータを介して構成される極板群を電槽に収納して前記極板群に群圧を加えた状態とし、前記正極板と前記負極板間の電圧を測定し、この電圧値に基いて前記極板群の電槽に対する挿入方向を検査することを特徴とする鉛蓄電池の検査方法を示すものである。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る発明は請求項1の鉛蓄電池の検査方法において、マットセパレータとしてガラスマットを用いるとともに、ガラスマットセパレータ中の水分量が0.10質量%以上であることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、請求項2の鉛蓄電池の検査方法において、極板群が電槽に収納された状態でこの極板群に加えられた群圧を98N/dm2以上としたことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態による鉛蓄電池の検査方法を図面を用いて説明する。
【0013】
図1は本発明による鉛蓄電池の検査方法を適用する鉛蓄電池の極板群8を示す図である。未化成状態の正極板1と負極板2とがマットセパレータ3を介して対向させ、それぞれの極板には集電用の正極耳4および負極耳5が設けられ、同極性の極板耳が集合溶接された正極棚6および負極棚7を備えている。
【0014】
この極板群8を図2に示したように、電槽9に収納する。極板群8は電槽に収納された状態では群圧が加えられ、マットセパレータ3はその厚み方向に圧縮された状態となっている。マットセパレータ3はガラスマット、親水処理された合成樹脂繊維マット、およびこれらの混抄マット、あるいはガラスマットと合成樹脂繊維マットを重ね合わせたもの等を用いることができる。
【0015】
電槽9に収納された極板群8は図3に示したように、正極棚6と負極棚7間の電圧は棚に接触する探針10に接続された電圧計11によって計測され、その計測結果に基いて判定装置12により逆セル状態であるかどうかが判定される。この判定基準となる電圧値は蓄電池の仕様、すなわち活物質処方、添加剤の有無とその種類等によって異なるので、対象となる蓄電池毎に設定する必要がある。この判定電圧値について例をあげるならば、本発明の発明者らが試作した2V2.2Ahの制御弁式鉛蓄電池では40mV、2V150Ah電池では−160mV、2V1000Ah電池では300mVであった。したがって、それぞれの電圧値に応じて判定電圧を決定する。例えば上記の2V2.2Ah電池では正常状態で40mV、逆セル状態で−40mVとなるので判定電圧を40mV〜−40mVの間に定め、その定めた判定電圧以上を正常品、判定電圧未満を逆セル不良品として判定する。また上記の2V150Ahの電池では正常状態で−160mV、逆セル状態で160mVとなるので、判定電圧を−160mV〜160mVの範囲に定め、その定めた判定電圧以下を正常品、判定電圧を超えて高いものを逆セル不良品として判定する。
【0016】
また、図3に示した例では極板群の正極−負極間の電圧を測る際に、電圧測定用の探針を正極棚6と負極棚7にそれぞれ接触させているが、極板間の電圧が計測できる構成であればよいことは言うまでもない。
【0017】
上記のように電槽9と極板群8の挿入方向を判別したのち、逆セルの電池は不良品として排出し、正常品を次工程に送り出す。その後は常法によって鉛蓄電池を組み立て、化成充電、仕上げ工程を経ることにより最終製品とする。
【0018】
本発明による鉛蓄電池の検査方法ではマットセパレータ中に吸着した水分が必要である。マットセパレータが極度に乾燥した状態で吸着水分を殆ど有しない場合は、正極板−負極板間に電圧は発生せず、極性の判定を行うことはできない。
【0019】
図4は図2に示した電槽に収納されたガラスマットセパレータを用いた制御弁式鉛蓄電池用の極板群において、ガラスマットセパレータ中の水分吸着量と正極−負極間の電圧との関係を示す図である。図4に示した結果から、少なくとも安定して電圧測定を行うにはガラスマットセパレータ重量の0.10質量%以上に相当する水分量が適切であることがわかる。本発明ではガラスマットセパレータ中の水分量の上限を定めるものではないが、1.5質量%を超えると正極−負極間の短絡を検出する短絡検査の精度が急激に悪化するためガラスマットセパレータ中の水分量は0.10〜1.5質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0020】
また、本発明の検査方法ではガラスマットセパレータを用いた場合、極板群圧は少なくとも98N/dm2以上とすることが好ましい。図5は電槽収納状態における極板群圧をスペーサを用いて変化させた時の正極−負極間の電圧をサンプル数50で測定した時の標準偏差を示す図である。群圧を加えない状態では電圧の標準偏差は大きく、電圧のばらつきが大きいことがわかる。群圧を高くしていくに従い電圧の標準偏差は小さくなり、群圧98N/dm2で標準偏差値は低下してほぼ一定値となる。したがって、本発明の検査方法を適用して精度の良い判定を行うためには極板群圧が98N/dm2以上であることが好ましい。
【0021】
本発明においては好ましい極板群圧の上限値を限定するものではない。しかしながら、極板群圧を増加させると極板群の電槽への挿入性が低下して組み立てが困難になったり、電槽が変形したりといった他の問題が生じるため、極板群圧は490N/dm2以下とすることが好ましい。
【0022】
【発明の効果】
以上、説明してきたように、本発明の鉛蓄電池の検査方法によれば、蓄電池の組み立て工程における逆セル不良を精度よく、かつ簡便に判別できることから、工業上、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による鉛蓄電池の検査方法を適用する鉛蓄電池の極板群の例を示す図
【図2】本発明による鉛蓄電池の検査方法において、極板群が電槽に収納された状態を示す図
【図3】本発明による鉛蓄電池の検査状態を示す図
【図4】ガラスマットセパレータ中に含まれる水分量と正極−負極間の電圧との関係を示す図
【図5】極板群に加えられた群圧と正極−負極間の電圧の標準偏差を示す図
【符号の説明】
1 正極板
2 負極板
3 マットセパレータ
4 正極耳
5 負極耳
6 正極棚
7 負極棚
8 極板群
9 電槽
10 探針
11 電圧計
12 判定装置
Claims (3)
- それぞれ未化成状態の正極板と負極板の間に水分を吸着したマットセパレータを介して構成される極板群を電槽に収納して前記極板群に群圧を加えた状態とし、前記正極板と前記負極板間の電圧を測定し、この電圧値に基いて前記極板群の電槽に対する挿入方向を検査することを特徴とする鉛蓄電池の検査方法。
- 前記マットセパレータとしてガラスマットを用いるとともに、前記ガラスマットセパレータ中の水分量が0.10質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の鉛蓄電池の検査方法。
- 前記極板群が前記電槽に収納された状態でこの極板群に加えられた群圧を98N/dm2以上としたことを特徴とする請求項2記載の鉛蓄電池の検査方法。
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