JP3958152B2 - 樹脂成形用金型 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、長繊維等の繊維と熱可塑性樹脂との組成物から構成されている繊維強化樹脂の成形に用いて好適な樹脂成形用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、強度や剛性等を向上した樹脂成形品を得るために、ガラス等からなる長繊維を強化材として含有させた樹脂(長繊維強化樹脂)を射出成形法等により成形するものが知られている。上記の長繊維強化樹脂の成形では、従来からある繊維強化されていない樹脂や長繊維を含まない繊維強化樹脂の成形時に用いるものと同様の金型を使用する場合が多い。
【0003】
このような金型において、複数のゲートを備えるものにあっては、キャビティ内に樹脂を供給するためのランナー等の供給流路が分岐構造を有する。金型の樹脂供給流路の分岐点の概略構造の一例を図5に示す。図5に示すように、金型101に設けられた樹脂の供給流路は、分岐点120より上流側の第1供給流路(例えば、主ランナー)102と、分岐点120より下流側の第2供給流路(例えば、副ランナー)103とからなる。
【0004】
分岐点120では、第1供給流路102に流入した樹脂が複数の第2供給流路103に分配されるように、第2供給流路103の延設方向が、第1供給流路102の延設方向に対し、垂直となるように形成されている。換言すれば、分岐点120では、第1の供給流路102と第2の供給流路103とがT字状に接続している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術の金型101では、成形時に樹脂の供給流路に樹脂が流入すると、分岐点120において樹脂の流動方向が急激に変化する。これに伴ない、樹脂に加わるせん断応力が急激に増大し、樹脂に含まれる長繊維が折損するという問題がある。長繊維の折損が著しい場合には、目標とする強度や剛性等を有する成形品を得ることができない。
【0006】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、樹脂の供給流路の分岐点において樹脂に含まれる繊維の折損を抑制することが可能な樹脂成形用金型を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
製品部となるキャビティ(5)内に樹脂を供給するための、分岐点(20)を有する供給流路(2、3)を備え、
供給流路(2、3)の下流側端部に設けたゲート部(4)を介してキャビティ(5)内に樹脂を供給する樹脂成形用金型であって、
供給流路(2、3)は、分岐点(20)より上流側の第1供給流路(2)と、分岐点(20)より下流側の複数の第2供給流路(3)とからなり、
分岐点(20)の第1供給流路(2)延設方向の内壁に、樹脂の流れ方向を変えるための凹部(21)を形成し、
凹部(21)は、第1供給流路(2)に垂直な面内の第2供給流路(3)方向の長さ(W)が、第1供給流路(2)の径(a1)の1.5倍以上であることを特徴としている。
【0008】
これによると、分岐点(20)において、樹脂が凹部(21)に回り込みながら分岐する。したがって、樹脂の流動方向が急激に変化することを抑制して、せん断応力の増大を抑えることができるとともに、繊維にせん断応力が作用した場合に繊維の回転等に必要な空間を確保できる。このようにして、繊維の折損を抑制することができる。
また、請求項2の発明のように、凹部(21)を分岐点(20)の第1供給流路(2)延設方向の内壁のみに形成したものとすることができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、第2供給流路(3)の延設方向が、第1供給流路(2)の延設方向に対し、略垂直となるように形成されていることを特徴としている。
【0010】
これによると、第1供給流路(2)に流入した樹脂を、分岐点(20)において、安定して第2供給流路(3)に分配することができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明では、凹部(21)は、内面(22)が連続した曲面により形成されていることを特徴としている。
【0014】
これによると、分岐点(20)において、樹脂を凹部(21)に回り込ませながらスムースに分岐することができる。したがって、樹脂の流動方向が急激に変化することを一層抑制することができる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明では、凹部(21)は、第2供給流路(3)に隣接する内面(221)が、第1供給流路(2)延設方向から第2供給流路(3)側に5°以上傾斜していることを特徴としている。
【0016】
これによると、凹部(21)内に流入した樹脂を第2供給流路(3)に流出させやすい。したがって、樹脂を凹部(21)に滞留させることなくスムースに分岐することができる。
また、請求項6に記載の発明のように、供給流路(2、3)は、成形時に内部の樹脂を固化させないホットランナーとすることができる。
【0017】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の樹脂成形用金型である金型1の概略断面構成図である。
【0020】
金型1は、繊維強化樹脂(本例では、ガラス長繊維強化ポリプロピレン樹脂)の射出成形用金型であって、固定型11と可動型12とにより構成されている。固定型11内にはスプルー2が設けられ、スプルー2の下流側端部には複数の(本例では2つの)ランナー3が接続している。そして、ランナー3の先端にゲート部4を介してキャビティ(製品部)5が形成されている。
【0021】
本実施形態では、射出機として、例えばインライン式のスクリュー射出機が使用され、成形時には、スクリューを内蔵したスクリュー外筒の先端部であるノズル部6が、金型1のスプルー2の開口部に当接して配置されるようになっている。なお、本実施形態の金型1では、成形時にスプルー2およびランナー3内の樹脂を固化させない所謂ホットランナーを採用している。
【0022】
スプルー2およびランナー3からなる構成が、キャビティ5内に樹脂を供給するための、本実施形態における分岐構造を有する供給流路であり、スプルー2と2つのランナー3との接続点が分岐点20である。したがって、スプルー2は、分岐点20より上流側の本実施形態における第1供給流路であり、ランナー3は、分岐点20より下流側の本実施形態における第2供給流路である。
【0023】
図2は、分岐点20を含む図1中A部を示す要部断面図である。なお、図1と図2とでは、図中の上下方向は一致させていない。
【0024】
図2に示すように、スプルー2に流入した樹脂を、分岐点20において、2つのランナー3に安定して分配することができるように、ランナー3の延設方向は、スプルー2の延設方向に対しそれぞれ垂直となるように形成されている。そして、分岐点20のスプルー2延設方向の(図2中下方側の)内壁には、略半球形状の凹部21が形成されている。すなわち、内面22が連続したなめらかな曲面により構成された凹部21が形成されている。
【0025】
凹部21は、本例では深さDが5mmであり、キャビティ5内に供給された後の樹脂(すなわち、金型1で成形される成形品)に含有される強化材としての繊維の所望長さ(本例では、成形品に求められる強度、剛性、耐衝撃性、疲労特性、クリープ特性等より、重量平均繊維長2mm)以上となっている。
【0026】
また、凹部21のスプルー2の垂直方向の長さ(略半球形状の凹部のランナー3方向の径)Wは25mmであり、スプルー2の径a1(本例では16mm)の1.56倍となっている。ちなみに、ランナー3の径a2も16mmである。
【0027】
上述の構成によれば、射出機のノズル部6よりガラス長繊維強化樹脂を射出したときに、スプルー2からランナー3へ流れる樹脂は分岐点20において流動方向を変化するが、樹脂は凹部21に回り込みながらスムースに分流するので、流動方向の変化に伴なうせん断応力の増大を抑制することができる。また、繊維にせん断応力が作用した場合に繊維の回転等に必要な空間を凹部21により十分に確保できる。このようにして、分岐点20における繊維の折損を抑制することができる。
【0028】
ここで、本発明者らが評価確認した凹部21による繊維折損抑制効果について説明する。本発明者らは、射出成形機に上記の金型1を装着し、長さ9mmのガラス繊維を40重量%含有するポリプロピレンのペレットを用いて射出成形を行ない、スプルー2からガラス繊維の重量平均繊維長が4.50mmとなった溶融樹脂を注入した。そして、この成形により得られたキャビティ5内の成形品の重量平均繊維長を確認したところ、所望長さ(目標値)2mmより長い2.23mmであった。
【0029】
一方、従来の金型(分岐点の構造を図5に示す金型であり、分岐点以外は金型1に同じ)を用いて同一条件で成形を行なった場合は、成形品の重量平均繊維長は、1.80mmであり、本実施形態の金型1では、分岐点20における繊維の折損が抑制されていることを確認している。
【0030】
なお、分岐点20に形成した凹部21は、深さDを、キャビティ5内に供給された後の樹脂に含有される強化材としての繊維の所望長さ以上とするとともに、スプルー2の垂直方向の長さ(略半球形状の凹部の径)Wを、スプルー2の径a1の1.5倍以上とすることが好ましい。
【0031】
このようにすることで、樹脂の流動方向の変化に伴なうせん断応力の増大を確実に抑制することができるとともに、繊維にせん断応力が作用した場合に繊維の回転等に必要な空間を凹部21により十分に確保できる。
【0032】
(他の実施形態)
上記一実施形態では、凹部21の形状は略半球形状であったが、これに限定されるものではない。内部に樹脂を滞留させることなく樹脂を分流できる形状であればよい。例えば、図3に凹部形状のみを示すように、略半円柱形状の凹部21であってもよい。図3に示す凹部21も、上記一実施形態の凹部21と同様に、分流方向の内面22が連続した曲面により形成されており、樹脂を凹部21に回り込ませながらスムースに分岐することができるので好ましい。
【0033】
また、上記の略半円柱形状の凹部21を採用した場合も、上記一実施形態と同様に、深さDを、キャビティ5内に供給された後の樹脂に含有される強化材としての繊維の所望長さ以上とするとともに、スプルー2の垂直方向の長さ(ランナー3方向の幅)Wを、スプルー2の径a1の1.5倍以上とすることがより好ましい。
【0034】
また、上記一実施形態では、凹部21のランナー3に隣接する内面の角度について説明しなかったが、凹部21は、ランナー3に隣接する内面が、スプルー(第1供給流路)2延設方向からランナー(第2供給流路)3側に5°以上傾斜していることが好ましい。
【0035】
例えば、図4(a)に示すように、凹部21が円錐台形状である場合には、凹部21の内面22のうち、ランナー3に隣接する内面221の傾斜角度αは、5°以上であることが好ましい。また、図4(b)に示すように、凹部21が椀形状である場合においても、凹部21の内面22のうち、ランナー3に隣接する内面221の傾斜角度αは、5°以上であることが好ましい。
【0036】
これによると、凹部21内に流入した樹脂をランナー3に確実に流出させやすい。したがって、分岐点20において、樹脂を凹部21に滞留させることなくスムースに分流することができる。
【0037】
また、上記一実施形態では、第1供給流路はスプルー2であり、第2供給流路はランナー3であったが、キャビティへの樹脂の供給流路に分岐構造を有する金型であれば本発明を適用することができる。例えば、キャビティに接続する副ランナーとスプルーとの間に主ランナーを設ける構成(ランナー内に分岐構造を有する構成)の金型においては、主ランナーを第1供給流路とし、副ランナーを第2供給流路とし、主ランナーから副ランナーへの分岐点に本発明を適用してもよい。
【0038】
また、上記一実施形態では、分岐点20において、供給流路を2つのランナー3に分岐していたが、3つ以上に分岐するものであってもよい。
【0039】
また、上記一実施形態では、金型1は、キャビティ5が1つである所謂1個取り金型であったが、多数個取り金型であってもよい。
【0040】
また、上記一実施形態では、成形に用いた樹脂材料はポリプロピレン樹脂であったが、これに限定されるものではない。他の熱可塑性樹脂であっても本発明を適用することができる。
【0041】
また、上記一実施形態では、強化材としての繊維はガラス繊維であったが、他の繊維であってもかまわない。例えば、カーボン繊維等であってもよい。
【0042】
また、上記一実施形態では、金型1は射出成形用の金型であったが、トランスファー成形用の金型にも本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における樹脂成形用金型である金型1の概略断面構成図である。
【図2】図1の金型1の要部概略断面図である。
【図3】他の実施形態における金型の要部概略断面図である。
【図4】(a)、(b)は、ともに、他の実施形態における金型の要部概略断面図である。
【図5】従来の金型の要部概略断面図である。
【符号の説明】
1 金型(樹脂成形用金型)
2 スプルー(供給流路の一部、第1供給流路)
3 ランナー(供給流路の一部、第2供給流路)
5 キャビティ
20 分岐点
21 凹部
22 内面
221 ランナー(第2供給流路)に隣接する内面
D 深さ(凹部の深さ)
W 長さ(凹部の長さ)
a1 径(スプルーの径)

Claims (6)

  1. 製品部となるキャビティ(5)内に樹脂を供給するための、分岐点(20)を有する供給流路(2、3)を備え、
    前記供給流路(2、3)の下流側端部に設けたゲート部(4)を介して前記キャビティ(5)内に樹脂を供給する樹脂成形用金型であって、
    前記供給流路(2、3)は、前記分岐点(20)より上流側の第1供給流路(2)と、前記分岐点(20)より下流側の複数の第2供給流路(3)とからなり、
    前記分岐点(20)の前記第1供給流路(2)延設方向の内壁に、前記樹脂の流れ方向を変えるための凹部(21)を形成し、
    前記凹部(21)は、前記第1供給流路(2)に垂直な面内の前記第2供給流路(3)方向の長さ(W)が、前記第1供給流路(2)の径(a1)の1.5倍以上であることを特徴とする樹脂成形用金型。
  2. 前記凹部(21)を前記分岐点(20)の前記第1供給流路(2)延設方向の内壁のみに形成したことを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形用金型。
  3. 前記第2供給流路(3)の延設方向が、前記第1供給流路(2)の延設方向に対し、略垂直となるように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂成形用金型。
  4. 前記凹部(21)は、内面(22)が連続した曲面により形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の樹脂成形用金型。
  5. 前記凹部(21)は、前記第2供給流路(3)に隣接する内面(221)が、前記第1供給流路(2)延設方向から前記第2供給流路(3)側に5°以上傾斜していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の樹脂成形用金型。
  6. 前記供給流路(2、3)は、成形時に内部の樹脂を固化させないホットランナーであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の樹脂成形用金型。
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