JP3958129B2 - 麻酔中の呼吸代謝測定装置、麻酔装置および麻酔中の呼吸代謝測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、麻酔中の患者の酸素摂取量(VO2)、炭酸ガス排出量(VCO2)などの呼吸代謝を測定するための技術に関し、特に従来は正確な測定が困難であった酸素ガス濃度が65%よりも高くなるか、あるいは酸素ガス以外に笑気ガスが含まれる可能性のあるガスを患者に吸入させる麻酔中の患者の呼吸代謝測定を正確に測定し得る麻酔中の呼吸代謝測定装置、麻酔装置および麻酔中の呼吸代謝測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、麻酔中の患者の酸素摂取量(VO2)や炭酸ガス排出量(VCO2)などの呼吸代謝を測定するため、呼吸代謝測定用の機器を設けた麻酔装置が提案されている。図3は、このような麻酔装置の一例として、特開2001−95921号公報に記載された麻酔装置を例示するものである。この麻酔装置1は、酸素ガスと、笑気ガスと空気の少なくとも一方と、揮発性麻酔剤を混合して供給する麻酔器本体2と、該麻酔器本体2から供給される、酸素ガスと、笑気ガスと空気の少なくとも一方と、揮発性麻酔剤を含んだ新鮮ガスを、患者Aの呼気に混入し、該循環気と前記新鮮ガスとを混合して吸気として患者Aに送る麻酔循環回路3とから概略構成されている。麻酔器本体2は、笑気ガスを含む麻酔ガスを供給するガス供給部10と、ガス供給部10から供給される麻酔ガスの流量を測定する流量計11と、前記麻酔ガス中に揮発性麻酔剤を気化した状態で供給する気化器12とを備えている。この麻酔装置1にあっては、呼吸流路22および吸気流路21中のミキシングチャンバー26,28にそれぞれ設けた酸素センサ41a,41b,炭酸ガスセンサ42a,42b、並びに、呼気流路と吸気流路の少なくとも一方に設けた流量センサ37の検出値から、演算部14にて、麻酔中の患者の各呼吸毎の酸素摂取量(VO2)、炭酸ガス排出量(VCO2)を演算するとともに、ミキシングチャンバー26,28にそれぞれ設けた麻酔ガスセンサ43a,43bおよび流量センサ37の検出値から麻酔剤出納バランスを演算し、それらの演算値を表示部15に患者の代謝の状態として表示するようになっている。
【0003】
従来、患者の酸素摂取量(VO2)や炭酸ガス排出量(VCO2)などの呼吸代謝を求めるには、体育生理分野で用いられている方法を、条件付きではあるが適用して測定および演算していた。従来、そのような呼吸代謝測定法として、▲1▼ブレス・バイ・ブレス法(以下、B/B法と記す)、および▲2▼その変形法、が知られている。
【0004】
▲1▼B/B法は、患者と麻酔装置との間に換気量検出ポートとガス濃度検出ポートを設け、それぞれのセンサ(流量センサとガス濃度センサ)によって患者の吸気換気量(Vi)と呼気換気量(Ve)、吸気中の酸素ガス濃度(FiO2)および炭酸ガス濃度(FiCO2)、呼気中の酸素ガス濃度(FeO2)および炭酸ガス濃度(FeCO2)を呼吸毎に測定し、次式(2)および(3)から酸素摂取量(VO2)と炭酸ガス排出量(VCO2)を求める。
【0005】
【数3】
【0006】
【数4】
【0007】
▲2▼変形法は、上記B/B法において、次の仮定イ)、ロ):
イ)存在するガス濃度を全て加えれば100%になる;
ロ)窒素(N2)は吸気・呼気を通して変化しない(ViN2=VeN2);
が成り立つとして、上記式(2)を次式(4)に変形する。
【0008】
【数5】
【0009】
この式(4)を用いる▲2▼変形法は、ガス濃度測定と呼気換気量(Ve)の測定のみで代謝測定が可能であり、吸気換気量(Vi)の測定を不要にできる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の代謝測定法には、以下のような問題があった。▲1▼B/B法について:
式(2)、(3)は、呼吸の刻々変化するガス濃度波形と換気量(流量)波形の積が基本となり、両者は時間的に同位相であることが要求される。しかし実際の測定では、
a)酸素、炭酸ガス、笑気のそれぞれのセンサの応答速度(時間遅れと立ち上がり速度)が異なる。
b)流量センサの応答速度は、上記a)でのセンサの応答速度とも異なる。
したがって、呼吸毎のガス濃度波形と換気量波形の位相がずれてしまい、結果として正確な代謝測定値が得られない問題がある。
さらに、測定方式や測定部の構造上から、
c)ガス濃度検出ポート部分では、ガスの混合が生じガス濃度波形が歪められる。
d)ガス濃度検出ポートからチューブを通して送られるガスがセンサまで到達する間にガス濃度波形の歪みが生じる。
e)測定系が圧変動(気圧も含む)、温度、湿度等の様々な要因により影響を受ける。したがって、正確な代謝測定値が得られない問題がある。
【0011】
▲2▼変形法について:
この▲2▼変形法に関する式(3)は、空気(吸気)を吸入して排気(呼気)することを前提とした体育生理学、体力医学等の分野ではよく使われる。しかし、次のf)およびg)に記した理由から、酸素ガス濃度または酸素ガスと笑気ガスの合計濃度が65%よりも高いガスを吸入させることが多い麻酔中の患者における代謝測定には適用できない問題がある。
f)麻酔では導入、維持、覚醒の全ての過程で吸気中の酸素濃度(FiO2)が空気中酸素濃度(21%)より大きく(FiO2>21%)、短時間では純酸素およびそれに近い高濃度酸素ガスの吸入も頻繁に実施される。したがって、高酸素濃度ガスの吸入状態下では、式(4)の分母が極めて小さくなり、正確な代謝測定値は得られなくなり、高酸素濃度ガスでは使用できないという限定的な応用となり、麻酔中では実質上使用できなかった。
g)笑気(N2O)を用いる麻酔では、吸入、呼気の笑気濃度をそれぞれFiN2O、FeN2Oとすると、ViN2=VeN2と仮定することにより、この麻酔環境下で酸素摂取量(VO2)は、次式(5)で表される。
【0012】
【数6】
【0013】
麻酔導入前に、麻酔装置の流路および患者の体内に溶け込んでいる窒素を追い出すために100%酸素ガスを流し、その後純酸素ガスと純笑気ガスとの混合比に基づいて、新鮮ガス濃度が設定されているため、FiO2+FiN2O=1(すなわち100%)となり、式(5)は最早成り立たなくなる。従って笑気(N2O)を用いる麻酔では、▲2▼変形法を用いた代謝測定は不可能である。
【0014】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、麻酔中の患者の代謝測定を正確に実施可能な麻酔中の呼吸代謝測定装置、麻酔装置および麻酔中の呼吸代謝測定方法の提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、患者の吸気および呼気の換気量を測定する換気量測定部と、該吸気および呼気中のガス濃度を測定するガス濃度測定部とを有し、該換気量測定部とガス濃度測定部との測定結果を演算して呼吸代謝測定値を求める呼吸代謝測定装置において、
前記患者の吸気が酸素ガス濃度または酸素ガスと笑気ガスの合計濃度が65%よりも高くなる可能性のある麻酔用吸気ガスであり、
前記ガス濃度測定部は、吸気または呼気中の少なくとも1つの成分ガス濃度を測定するガス濃度測定部と、患者からの呼気ガスを混合するミキシングチャンバーと、前記ミキシングチャンバー内のガスを前記ガス濃度測定部に供給する呼気ガス分析用流路とを含み、
前記呼吸代謝測定値のうち酸素摂取量(VO2)が、次式(1):
【0016】
【数7】
【0017】
[式中、kは前記換気量測定部で測定される換気量比Vi/Ve(ここでViは吸気換気量であり、Veは呼気換気量である)であり、FiO2は吸気中の酸素濃度であり、FeO2は前記呼気ガス分析用流路を経て送られるガス中の酸素濃度である]
によって求められることを特徴とする麻酔中の呼吸代謝測定装置を提供する。
【0018】
また本発明は、酸素ガスと、笑気ガスと空気の少なくとも一方と、揮発性麻酔剤を混合して新鮮ガスとして供給する麻酔器本体と、該麻酔器本体から供給される新鮮ガスを、患者の呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、該循環気と前記新鮮ガスとを混合し吸気として患者に送る麻酔循環回路とを備え、該麻酔循環回路から麻酔ガスを含んだ吸気を患者に送り該患者に麻酔を施す麻酔装置において、上記麻酔中の呼吸代謝測定装置を有する麻酔装置を提供する。
【0019】
さらに本発明は、酸素ガス濃度または酸素ガスと笑気ガスの合計濃度が65%よりも高くなる可能性のあるガスを患者に吸入させる麻酔中の患者の呼吸代謝測定方法であって、
患者の吸気および呼気の換気量を測定する換気量測定部と、該吸気および呼気中のガス濃度を測定するガス濃度測定部とを有し、前記ガス濃度測定部が、吸気または呼気中の少なくとも1つの成分ガス濃度を測定するガス濃度測定部と、患者からの呼気ガスを混合するミキシングチャンバーと、前記ミキシングチャンバー内のガスを前記ガス濃度測定部に供給する呼気ガス分析用流路とを含む呼吸代謝測定装置を用いて、
前記呼吸代謝測定値のうち酸素摂取量(VO2)を、次式(1):
【0020】
【数8】
【0021】
[式中、kは前記流量測定部で測定される換気量比Vi/Ve(ここでViは吸気換気量であり、Veは呼気換気量である)であり、FiO2は吸気中の酸素濃度であり、FeO2は前記呼気ガス分析用流路を経て送られるガス中の酸素濃度である]
によって求めることを特徴とする麻酔中の呼吸代謝測定方法を提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の麻酔中の呼吸代謝測定装置および麻酔装置の一実施形態を示す概略構成図であり、この図中、符号50は呼吸代謝測定装置、51は麻酔装置である。
【0023】
本実施形態において、呼吸代謝測定装置50は、麻酔装置51と患者52側の気管チューブ(またはマスク)とをつなぐ流路55に設けられ、麻酔装置51の吸気流路53を通して患者52が吸入する吸気の換気量を測定するための換気量検出ポート56と、同じく流路55に設けられたガス濃度検出ポート57と、換気量検出ポート56と流路58で接続された流量センサ59(換気量測定部)と、ガス濃度検出ポート57と流路60で接続されたガス濃度測定部62と、該流路60に介在された電磁弁61と、麻酔装置51の呼気流路54に設けられたミキシングチャンバー63と、このミキシングチャンバー63と電磁弁61をつなぐ呼気ガス分析用流路64と、上記流量センサ59とガス濃度測定部62からの測定値を入力し、予め記憶させておいた関係式に基づいて、酸素摂取量(VO2)、炭酸ガス排出量(VCO2)、笑気摂取量(VN2O)および揮発性麻酔剤摂取量(VAg)の内の少なくとも1つの代謝測定値を算出する演算部65とを備えて構成されている。
【0024】
また本発明の麻酔装置51は、酸素ガスと、笑気ガスと空気の少なくとも一方と、揮発性麻酔剤を混合して新鮮ガスとして供給する麻酔器本体と、該麻酔器本体から供給される新鮮ガスを、患者の呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、該循環気と前記新鮮ガスとを混合し吸気として患者に送る麻酔循環回路とを備え、該麻酔循環回路から麻酔ガスを含んだ吸気を患者に送り該患者に麻酔を施す麻酔装置であり、かつ上述した代謝測定装置50を備えていればよく、代謝測定装置50以外の麻酔機本体、および麻酔循環回路の構成は特に限定されず、従来公知の麻酔装置における麻酔機本体および麻酔循環回路の相当部分の構成を適用できる。
【0025】
例えば、本発明の麻酔装置として、図3に示す麻酔装置1の麻酔機本体2および麻酔循環回路3を適用することができる。図3に示す麻酔装置1は、酸素ガスと、笑気ガスと空気の少なくとも一方と、揮発性麻酔剤を混合して供給する麻酔器本体2と、該麻酔器本体2から供給される、酸素ガスと、笑気ガスと空気の少なくとも一方と、揮発性麻酔剤を含んだ新鮮ガスを、患者Aの呼気に混入し、該循環気と前記新鮮ガスとを混合して吸気として患者Aに送る麻酔循環回路3とを備える。麻酔器本体2は、笑気ガスを含む麻酔ガスを供給するガス供給部10と、ガス供給部10から供給される麻酔ガスの流量を測定する流量計11と、前記麻酔ガス中に揮発性麻酔剤を気化した状態で供給する気化器12とを備える。
【0026】
前記ガス供給部10は外部から供給される酸素ガス、笑気ガス、空気の圧力調整を行うとともに、そのときの圧力を表示するものである。
前記気化器12は、揮発性麻酔剤である、ハローセン、イソフルレン、エンフルレン、セヴォフルレン、デスフルレン等を、所定の濃度となるように微量注入ポンプにて気化室に送り、ここで気化した揮発性麻酔剤を、前記ガス供給部10から送られてくる麻酔ガスと混合させるものである。
麻酔器本体2には圧力センサ13、演算部14、及び表示部15が設けられている。
【0027】
麻酔循環回路3は、麻酔器本体2から供給される、揮発性麻酔剤を含んだ新鮮ガス(麻酔ガス)を患者Aの呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、該混入気と前記新鮮ガスとを混合したものを吸気として患者Aに送るものである。麻酔循環回路3は、患者Aへ供給する吸気が流れ込む吸気流路21と、患者Aからの呼気が流れ込む呼気流路22と、それら吸気流路21及び呼気流路22と患者Aを接続する呼吸回路23からなる。
【0028】
ただし、この図3に示す麻酔装置1における麻酔循環回路3を本発明の麻酔装置51に適用する場合、吸気流路21にはミキシングチャンバー26を設ける必要はない。また、センサ41a,41b,42a,42b,43a,43bをそれぞれのミキシングチャンバー26,28に設ける必要はなく、ガス濃度の測定に関しては、図1に示す通り、呼気流路54にミキシングチャンバー63を設け、ガス濃度検出ポート57と該ミキシングチャンバー63から、それぞれ流路60および呼気ガス分析用流路64を通って送られるガスを、ガス濃度測定部62で目的のガス濃度を測定できるように構成される。
【0029】
吸気流路21の患者A側と接続される側の反対側の端部は、前記麻酔器本体2から麻酔ガスを供給される流路2aと合流するとともに前記呼気流路22の端部に接続される。吸気弁25は、炭酸ガス吸収キャニスター32から患者A側へのガスの流れは許容するもののその逆の流れは規制するものである。
前記呼気流路22には、呼気弁29、リリーフ弁30、バッグ31及び炭酸ガス吸収キャニスター32が、及び麻酔剤吸収キャニスター33が患者Aから離れる方向へ順に設けられていて、炭酸ガス吸収キャニスター32には麻酔剤吸収キャニスター33が並設されている。呼気弁29は、患者Aからバッグ31側へのガスの流れは許容するもののその逆の流れは規制するものである。リリーフ弁30は、呼気流路22の圧力が所定圧以上になるときに、流路22内の圧力を開放しそれ以上圧力が上がるのを規制するものである。バッグ31は患者Aへ吸気を送り込むための圧排可能な袋状のものであり、患者Aへ送る吸気の供給量に応じて種々の大きさのものが用意されていて適宜交換可能となっている。
炭酸ガス吸収キャニスター32は、患者Aの呼気から炭酸ガスを吸収除去するものであり、内部には、ソーダライムなどの炭酸ガス吸収剤が充填されている。バッグ31の呼気流路22との接続部分には3方弁35が設けられ、この3方弁35によって、呼気流路22をバッグ31と人工呼吸器36の何れかに切換接続できるようになっている。
人工呼吸器36は、容量を制御対象とした容量リミット式と、圧力を制御対象とした圧力リミット式の何れも選択できるようになっている。また、人工呼吸器36には、余剰ガスを排出するための排出口(図示せず)が設けられている。
【0030】
図1に示す呼吸代謝測定装置50において、呼気流路54に設けられたミキシングチャンバー63としては、従来公知のものが使用でき、例えば特公平2−16148号公報に開示されているように、流路内を流れる呼気の総流量とたえず一定の比率で変化する少量の分流をバイパス流路を介してチャンバー内に混入させて、濃度を平均化させる構造のものが好ましい。
【0031】
また電磁弁61は、患者の呼吸気を流路60を通して、またはミキシングチャンバー63から呼気ガス分析用流路64を通してのいずれか一方から送られるガスをガス濃度測定部62に送るように配置されている。この電磁弁61は、演算部65の指令によって、流路60側または呼気ガス分析用流路64側のいずれか一方の流路をガス濃度測定部62と連通させ、他方の流路を閉止し、一定時間経過後にいずれか他方の流路をガス濃度測定部62と連通させ、一方の流路を閉止する動作を交互に繰り返し行うようになっている。
【0032】
また流量センサ59は、従来公知の高感度の流量センサが用いられ、例えば差圧式の電子流量センサ等が好適に用いられる。なお、本実施形態では、1つの換気量検出ポート56と流量センサ59によって患者52の吸気と呼気の換気量を測定する構成としたが、吸気流路53と呼気流路54の両方に換気量検出ポートと流量センサを設け、吸気換気量Viと呼気換気量Veとを別々に測定してもよい。
【0033】
また図1に示す呼吸代謝測定装置50において、ガス濃度測定部62は、患者の吸気および呼気中に含まれる、酸素ガス濃度、炭酸ガス濃度、笑気ガス濃度および揮発性麻酔剤(Ag)ガス濃度を迅速かつ正確に測定可能なものが使用される。例えば、一台で炭酸ガス、笑気ガスおよび複数の揮発性麻酔剤(ハローセン、イソフルレン、エンフルレン、セヴォフルレン、デスフルレンの5種類)のそれぞれの濃度を測定可能な赤外線吸収方式のガス濃度測定機器として、ARTEMA社(スウェーデン)製のAION MULTI−GAS ANALYZER(商品名)を用いることができ、これと酸素センサとを組み合わせ、ガス濃度測定部62を構成することが好ましい。酸素センサとしては、酸素濃度に応じてガスの磁化率が変化する特性を利用したパラマグネチック方式の酸素センサであるServomex社(イギリス)製のmodel PM1111E(商品名)を用いることができる。
【0034】
また演算部65は、流量センサ59およびガス濃度測定部63からそれぞれ送られた測定値(吸気および呼気換気量、酸素ガス濃度、炭酸ガス濃度、笑気ガス濃度、揮発性麻酔剤ガス濃度)を入力し、予め記憶させておいた計算式に基づいて、患者の酸素摂取量(VO2)、炭酸ガス排出量(VCO2)、笑気摂取量(VN2O)および揮発性麻酔剤摂取量(VAg)の内の少なくとも1つの代謝測定値を算出するようになっている。なお、この演算部65は、麻酔装置51側に演算部を設けている場合(図3の符号14参照)、これと別に設けてもよいし、一台で両方の機能を兼用させても良い。また演算部65で得られた結果は、表示部で表示するが、この表示部についても、麻酔装置51側に表示部を設けている場合(図3の符号15参照)、これと別に設けてもよいし、一台で種々の情報画面を切り替え表示する構成としてもよい。
【0035】
本実施形態の呼吸代謝測定装置50は、上述したように図1に示すように構成され、この呼吸代謝測定装置50は、後述する呼吸代謝測定方法に従って、麻酔中の患者の呼吸代謝測定値を得る。
なお、上述した呼吸代謝測定装置50においては、電磁弁61を用いて、流路60と呼気ガス分析用流路64とのいずれか一方の流路を切り替え可能に一台のガス濃度測定部62に接続した構成としたが、電磁弁61を用いず、流路60と呼気ガス分析用流路64とのそれぞれに別個のガス濃度測定部を設けて構成することもできる。
【0036】
次に、本発明による麻酔中の患者の呼吸代謝測定方法の一例を説明する。
本例示では、図1に示すように構成された呼吸代謝測定装置50を用い、酸素ガス濃度が65%よりも高くなるか、あるいは酸素ガス以外に笑気ガスが含まれる可能性のある麻酔用吸気ガスを患者に吸入させる麻酔中の患者の酸素摂取量(VO2)、炭酸ガス排出量(VCO2)、笑気摂取量(VN2O)および揮発性麻酔剤摂取量(VAg)の内の少なくとも1つの代謝測定値を算出する。
前記呼吸代謝測定値のうち、酸素摂取量(VO2)は、次式(1):
【0037】
【数9】
【0038】
[式中、kは前記流量測定部で測定される換気量比Vi/Ve(ここでViは吸気換気量であり、Veは呼気換気量である)であり、FiO2は吸気中の酸素濃度であり、FeO2は呼気ガス分析用流路を経て送られるガス中の酸素濃度である]
によって算出する。
【0039】
炭酸ガス排出量(VCO2)は、次式(6):
【0040】
【数10】
【0041】
[式中、kは前記流量測定部で測定される換気量比Vi/Ve(ここでViは吸気換気量であり、Veは呼気換気量である)であり、FiCO2は吸気中の炭酸ガス濃度であり、FeCO2は呼気ガス分析用流路を経て送られるガス中の炭酸ガス濃度である]
によって算出する。
【0042】
笑気摂取量(VN2O)は、次式(7):
【0043】
【数11】
【0044】
[式中、kは前記流量測定部で測定される換気量比Vi/Ve(ここでViは吸気換気量であり、Veは呼気換気量である)であり、FiN2Oは吸気中の笑気ガス濃度であり、FeN2Oは呼気ガス分析用流路を経て送られるガス中の笑気ガス濃度である]
によって算出する。
【0045】
ハローセン、イソフルレン、エンフルレン、セヴォフルレン、デスフルレン等の揮発性麻酔剤摂取量(VAg)は、次式(8):
【0046】
【数12】
【0047】
[式中、kは前記流量測定部で測定される換気量比Vi/Ve(ここでViは吸気換気量であり、Veは呼気換気量である)であり、FiAgは吸気中の揮発性麻酔剤濃度であり、FeAgは呼気ガス分析用流路を経て送られるガス中の揮発性麻酔剤濃度である]
によって算出する。
【0048】
図2は、本例示による呼吸代謝測定方法(以下、本方法と略記する)の測定原理および演算処理を説明する図である。本方法では、図2に示すように、一定時間間隔Tで演算値を出力する。
また本方法では、このT時間内に、患者口元のガス濃度検出ポート57から流路60を通して送られるガス中のガス濃度を測定する部分(瞬時区間:T1)と、ミキシングチャンバー63から呼気ガス分析用流路64を通して送られるガス中のガス濃度を測定する部分(平均区間:T2)とに、電磁弁61によって流路を切り替えてガス濃度分析がなされる。
【0049】
瞬時区間T1では呼吸毎の吸入ガス濃度(FiO2,FiCO2,FiN2O,FiAg)が測定される。同時に、流量センサ59から入力される信号により、呼吸毎にViとVe(Viは吸気換気量、Veは呼気換気量である)が測定され、k(=Vi/Ve)が計算される。
【0050】
平均区間T2に切り替わった時、ミキシングチャンバー63内のガス濃度(FeO2,FeCO2,FeN2O,FeAg)が分析され、流量センサ59から呼気換気量Veの算出とともに、上記式(1)、(6)〜(8)に基づいた各代謝項目が演算される。
【0051】
本方法によれば、次のような効果を奏し得る。
1)本方法によれば、いかなる麻酔条件下でも代謝測定が可能となる。本方法では、吸気換気量Viと呼気換気量Veとの比k(k=Vi/Ve)を実測する概念を導入したことにより、吸入ガスの種類やその濃度の範囲如何を問わず、無条件で測定が可能となった。
【0052】
2)本方法によれば、高精度測定が可能である。呼気流路54にミキシングチャンバー63を設け、ここで混合した呼気ガス中のガス濃度を分析してFeO2,FeCO2,FeN2O,FeAgとすることで、従来のB/B法やその変形法において要求される位相合わせや波形の各種補正を行う必要がなくなり、極めて高精度の代謝測定値が得られる。
即ち、式(1)に代入する場合、換気量は呼気換気量Veだけであり、また呼気ガス濃度(FeO2,FeCO2,FeN2OまたはFeAg)はB/B法で用いるサイクリックな変動波形ではなく、ミキシングチャンバー63による平均化波形を当てはめることができるからである。
【0053】
3)本方法によれば、従来法では実質的に測定できなかった笑気摂取量(VN2O)および揮発性麻酔剤摂取量(VAg)も、上記の式(7)、(8)によって測定可能となる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、麻酔中の患者の代謝測定を正確に実施可能な麻酔中の呼吸代謝測定装置、麻酔装置および麻酔中の呼吸代謝測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の呼吸代謝測定装置と麻酔装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】 本発明の呼吸代謝測定方法の測定原理および演算処理を説明する図である。
【図3】 従来の麻酔装置を例示する概略構成図である。
【符号の説明】
50 呼吸代謝測定装置
51 麻酔装置
52 患者
53 吸気流路
54 呼気流路
55,58,60 流路
56 換気量検出ポート
57 ガス濃度検出ポート
59 流量センサ(換気量測定部)
61 電磁弁
62 ガス濃度測定部
63 ミキシングチャンバー
64 呼気ガス分析用流路
65 演算部
Claims (3)
- 患者の吸気および呼気の換気量を測定する換気量測定部と、該吸気および呼気中のガス濃度を測定するガス濃度測定部とを有し、該換気量測定部とガス濃度測定部との測定結果を演算して呼吸代謝測定値を求める呼吸代謝測定装置において、
前記患者の吸気が酸素ガス濃度が65%よりも高くなるか、あるいは酸素ガス以外に笑気ガスが含まれる可能性のある麻酔用吸気ガスであり、
前記ガス濃度測定部は、吸気または呼気中の少なくとも1つの成分ガス濃度を測定するガス濃度測定部と、患者からの呼気ガスを混合するミキシングチャンバーと、前記ミキシングチャンバー内のガスを前記ガス濃度測定部に供給する呼気ガス分析用流路とを含み、
前記呼吸代謝測定値のうち酸素摂取量(VO2)が、次式(1):
によって求められることを特徴とする麻酔中の呼吸代謝測定装置。 - 酸素ガスと、笑気ガスと空気の少なくとも一方と、揮発性麻酔剤を混合して新鮮ガスとして供給する麻酔器本体と、該麻酔器本体から供給される新鮮ガスを、患者の呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、該循環気と前記新鮮ガスとを混合し吸気として患者に送る麻酔循環回路とを備え、該麻酔循環回路から麻酔ガスを含んだ吸気を患者に送り該患者に麻酔を施す麻酔装置において、請求項1記載の麻酔中の呼吸代謝測定装置を有することを特徴とする麻酔装置。
- 酸素ガス濃度が65%よりも高くなるか、あるいは酸素ガス以外に笑気ガスが含まれる可能性のあるガスを患者に吸入させる麻酔中の患者の呼吸代謝測定方法であって、
患者の吸気および呼気の換気量を測定する換気量測定部と、該吸気および呼気中のガス濃度を測定するガス濃度測定部とを有し、前記ガス濃度測定部が、吸気または呼気中の少なくとも1つの成分ガス濃度を測定するガス濃度測定部と、患者からの呼気ガスを混合するミキシングチャンバーと、前記ミキシングチャンバー内のガスを前記ガス濃度測定部に供給する呼気ガス分析用流路とを含む呼吸代謝測定装置を用いて、
前記呼吸代謝測定値のうち酸素摂取量(VO2)を、次式(1):
によって求めることを特徴とする麻酔中の呼吸代謝測定方法。
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