JP3955350B2 - 顔料組成物 - Google Patents

Description

【０００１】
本発明は顔料組成物およびそのインク、とくに銀行券およびその他の証券類に使用するインクにおける使用に関する。
【０００２】
銀行券、小切手、旅券、免許状、切符およびブランド品のような証券印刷物は、本物であることが法的に認証されるように作られる必要がある。機械によってのみ証明されるような容易に認識できる特徴から種々の方法が採用されている。
【０００３】
米国特許第５，３２４，５６７号には、ポリジアセチレンを含有するインクの使用に関してラマン分光法および共鳴ラマン散乱分光法（ＲＲＳ）を使用することが記載されている。上記のインクが印刷されている物をレーザー光に暴露すると、適当な機械によって検出できるラマン散乱が生じる。
【０００４】
ポリジアセチレンには耐光性がないため、時間経過とともに検出法の感度が落ちる。
証券類のための印刷インクに使用される顔料は、通常耐光性がある。今や我々は、ＲＲＳを用いて容易に検出できるような顔料自身を部分的に変更する方法を開発した。この改良方法は、１個以上の検出用の励起波長を使用できる。
【０００５】
本発明は、顔料組成物の全重量を基準にして、１０重量％までの化合物を、その表面上に吸着して有しているか、または物理的混合物として有している顔料を含有し、前記化合物がアゾ発色団、アゾメチン発色団または多環式発色団を含有する化合物であり、かつ該顔料またはこの種の印刷インクに通常使用される他の顔料のものとは異なる吸収スペクトルおよびラマンスペクトルを有している顔料組成物を提供する。
顔料表面に吸着させるか、または機械的な混合物として加えられる化合物を、以下、暗号化合物という。
【０００６】
顔料は、アリールアミド、ジアリーライド、アゾ金属塩またはフタロシアニン顔料のような通常印刷インクに使用されている任意の顔料であることができる。
顔料表面に吸着される暗号化合物は、銅フタロシアニン誘導体のような印刷インクに通常使用されていない化合物が好ましい。
【０００７】
顔料と機械的に混合される暗号化合物は、イソインドリノン、ジケトピロロピロール、シッフ塩基金属錯化合物、フェリシアニドまたは式（１）の化合物が好ましい。
【化２】

上記式（１）において、
ＭＰｃはフタロシアニン核、
Ｍは金属原子、クロロ−金属基、オキシ−金属基または水素、
Ｘは水素、
Ｒ¹ は有機残基、
Ｒ² は水素または所望により置換されているアルキル基、
ａは１５乃至１の平均値、
ｂは１乃至１５の平均値、
ａ＋ｂは４乃至１６である。
【０００８】
暗号化合物は、その吸収波長極大を、顔料の吸収極小の個所に、またはその近傍に、もしくは顔料のスペクトル領域外においてさえ持つものが好ましい。この分離によって、ＲＲＳによる検出の感度が最高になる。
【０００９】
もし照射光線の波長が暗号化合物の吸収極大と一致すると、検出されるラマンスペクトルは顕著に高められて、より大きな感度が得られる。すなわち、検出に必要な暗号化合物の量は非常に少ない量で良いか、もしくは放射光線として低い放射量が使用できる。さらに暗号化合物の色はそれが効果的に不可視になるように、より効果的にマスクされることになる。
【００１０】
照射光線の波長と、暗号化合物の吸収極大とを一致させることは、２つの方法によって達成できる。その第１の方法は、レーザー波長をある工夫した波長に選択し、それによって多くの異なった物質の存在下において、暗号化合物のラマンスペクトルを検出するのにレーザー波長を使用することができる。別法としては、入手できるレーザー波長の個所か、またはそれに近い個所に吸収極大を持つように暗号化合物を選択することができる。波長可変レーザーは高価であるので、後者が効率を損なわない最低コストの方法である。
暗号化合物の吸収と適当に一致させれば、レーザー波長は可視光線、紫外線または赤外線が使用できる。
【００１１】
かくして、５１８ｎｍまたはその近くに吸収極大を持つ暗号化合物を選択し、この物質を基質上に印刷されるインクに組み込めば、５１８ｎｍのレーザー照射を使用するラマン分光計が、暗号化合物が存在するか存在しないかを容易に検出することができる。
例えば、顔料が６７３ｎｍに吸収極大を有していれば、暗号化合物の吸収極大を５１８ｎｍにすることができる。
５１８ｎｍの波長のレーザー照射を使用すれば、暗号化合物は容易に検出することができる。もし２つの波長、例えば６７３ｎｍと５１８ｎｍとを使用すれば、顔料と暗号化合物との比を決定することができる。これによって、立証をより確実にすることができる。
【００１２】
暗号化合物の量は、顔料の色の変化を避けるために、５重量％より多くしてはならない。あまり少なすぎないか、ＲＲＳによる検出を免れることがない限り、より少ない量も使用できる。
【００１３】
ＲＲＳの使用は、暗号化合物として、顔料および顔料様材料の使用が許される蛍光分析法よりも明らかに有利である。ＲＲＳによって暗号化合物から得られる分解能は、蛍光分析での分解能よりも遙かに優れている。このため、検出に有用な指紋スペクトル法が可能な上に、１種類以上の暗号化合物を組み込むことができる。
【００１４】
６７３ｎｍと５１８ｎｍとに吸収極大を与える顔料と暗号化合物との適当な組合せは、その表面に吸着された暗号化合物として銅フタロシアニンスルホン酸を有するカルシウム４Ｂ金属塩顔料（Pigment Red 57.1）である。
【００１５】
顔料上に所望の暗号化合物を吸着させるためには、上記の場合、その化合物を水中において一緒に撹拌するだけで良い。暗号化合物を顔料と機械的に混合する場合には、適当な溶剤を使用するか、または乾式混合を行なうか、分散装置を使用するなどの別の方法がある。
【００１６】
顔料を暗号化合物によって処理した後、該組成物を天然樹脂または合成樹脂による樹脂処理のような通常の処理法によって処理できる。
本発明の顔料組成物は、平版印刷、凸版印刷、凹版印刷またはスクリーン印刷に使用されるための印刷インクの成分でありうる。これらのインクは、本発明顔料組成物を０．１乃至２５重量％、好ましくは１乃至２０重量％含むことができる。さらに、これらインクはドライヤーやその他の顔料の如き他の成分を含有することができる。
【００１７】
本発明は、またインクビヒクルおよび本発明の顔料組成物を含有するインクをも含む。
【００１８】
本発明のインクは、主に本物であることが法的に認証される必要のある証券類やその他の物品に印刷しようとするものである。これに関連して印刷に使用される基質としては、一般に、ぼろパルプ紙、好ましくは通貨級紙、プラスチック被覆紙または積層紙、およびバンクカード級ＰＶＣまたは例えば不織プラスチックペーパーのようなプラスチックペーパーなどのプラスチックが挙げられる。証券印刷された物品としては、銀行券、銀行券より糸、通貨、旅行小切手、証書、証明書、証紙、富くじ札、所有権証書、旅券、身分証明書、クレジットカード、チャージカード（charge cards）、面会証（access cards）、スマートカード（smart cards ）、銘柄証明ラベルおよび標識（tags）ならびに不正防止ラベル（tamperproof labels）が含まれる。
【００１９】
通常、証券類には凹版印刷、オフセット平版印刷、凸版印刷および時にはグラビア印刷から選ばれた種々のタイプの印刷物がある。本発明のインクは、各種の色において、証券印刷領域においての外に、それに隣接する分野において使用される。レインボー印刷技術は、証券類において屡々使用される。
本発明の顔料組成物は、電子写真トナー、マトリックス（matrix）またはデージーホイル（daisy-wheel） 印刷機インクおよびノンインパクト（non-impact）印刷法にも含まれうる。
【００２０】
本発明の顔料組成物は、ぼろパルプ紙およびプラスチックペーパー、銀行券とじ糸、プラスチックカードおよびその他の証券書類または本物であることが法的に認証される必要のある物品を含む紙の中に、必ずしもインクとしてでなくとも含まれ、必要があればポリマーと混合され、またインク以外に結合されていることができる。本発明の顔料組成物は、単一の領域または連続した領域に付着していることができ、もし必要であるか、または所望するならばクールド・パターン（cooled pathernc)におかれる。
【００２１】
本発明の顔料組成物は、本物であることが法的に認証される必要がある物品に組み込むことができ、例えばラマン活性化合物を含むインクで印刷されたホログラフィーラベルの如きラベル中、またはホットスタンピングホイル構造中に組み込むこともできる。一般に、本発明の顔料組成物は、本物であることが法的に認証される必要がある物品の表面上またはその近くに存在させることができる。
以下の実施例によって本発明を説明する。
【００２２】
顔料混合物
以下の実施例によって混合顔料を調整した。それぞれの混合顔料は、多量の顔料成分と少量の顔料成分とを含み、後者の顔料は多量の顔料成分によっておおい隠されているが、ラマン検出によって可視である。
【００２３】
実施例１
銅フタロシアニン顔料（IRGALITE Blue GLG） １８ｇをPigment Red 57.1（IRGALITE Rubine L4BD）２ｇと、完全な粉末混合物が得られるまで粉末混合する。
【００２４】
実施例２
Pigment Yellow 13（IRGALITE Yellow LBS）１８ｇを、マラカイトグリーン顔料２ｇと、完全な粉末混合物が得られるまで粉末混合する。
【００２５】
実施例３
銅フタロシアニン顔料（IRGALITE Blue GLG） １８ｇを、IRGAZIN Orange 5R ２ｇと、完全な粉末混合物が得られるまで粉末混合する。
【００２６】
実施例４
銅フタロシアニン顔料（IRGALITE Blue GLG） １８ｇを、IRGAZIN Yellow 5GT２ｇと、完全な粉末混合物が得られるまで粉末混合する。
【００２７】
実施例５
乾燥重量１０ｇの顔料を含むPigment Red 57.1 のフィルターケーキ３０ｇを、水中において再スラリー化し、銅フタロシアニン・モノスルホン酸０．１ｇの水溶液を添加する。得られたスラリーを９５℃において３時間加熱し、冷却し、濾過し、洗浄し、乾燥する。固体顔料を回収し、これを微粉化する。
【００２８】
実施例６
乾燥重量１０ｇの顔料を含むPigment Red 57.1 のフィルターケーキ３０ｇを、水中において再スラリー化し、銅フタロシアニン・モノスルホン酸０．０１ｇの水溶液を添加する。得られたスラリーを９５℃において３時間加熱し、冷却し、濾過し、洗浄し、乾燥する。固体顔料を回収し、これを微粉化する。
【００２９】
実施例７
乾燥重量１０ｇの顔料を含むPigment Red 57.1 のフィルターケーキ３０ｇを、水中において再スラリー化し、銅フタロシアニン・モノスルホン酸０．５ｇの水溶液を添加する。得られたスラリーを９５℃において３時間加熱し、冷却し、濾過し、洗浄し、乾燥する。固体顔料を回収し、これを微粉化する。
【００３０】
インク配合と組成物
上記の実施例に記載した顔料組成物を含有するインクを、以下のようにして調整する。
顔料組成物２０ｇと、以下の成分を含有するインクワニス８０ｇとを手で混合する。
長油アルキド ３２部
変性フェノール樹脂 ５０部
インク油 １８部
三本ロールミルにインクを２回通し、インクワニスを添加して顔料着色レベルを１５％に減少する。
【００３１】
印刷段階
実施例１乃至７に記載したようにして調整したインクを、プルフバウ（Prufbau）を用いて紙基質の選択された個所に印刷する。印刷重量が印刷面ｍ² 当たり約１．２５ｇになるように調節する。
【００３２】
検出
印刷された紙上の顔料混合物中の少量成分の検出は、Renishaw 2000 分光計（実施例１〜５、７および８）またはAnaspec modified Cary 81分光計（実施例６）を使用する。励起は、アルゴンイオンレーザーを使用する。Renishawは５１４．５ｎｍの照射２０ｍｗを使用し、Caryはポンプとしてアルゴンイオンレーザーによる２０〜５０ｎｍの波長可変照射を使用し、赤色領域での波長可変照射を行なうために、ＤＣＭ染料を用いたSpectra Phisics ３７５色素レーザーを使用する。
【００３３】
実施例１
顔料混合物の少量成分（Pigment Red 57.1）は、１３６５cm^-1、１４９２cm^-1、１６０８cm^-1にピークがある回収された検出スペクトルに明瞭に示され、銅フタロシアニンスペクトルとは明瞭に識別される。このスペクトルを図１に示す。
【００３４】
実施例２
実施例１と同じ方法で、少量成分マラカイトグリーンは、印刷された紙からの回収されたスペクトルから明瞭に識別することができる。
【００３５】
実施例３
実施例１と同じ方法で、IRGALITE Orange 5R のスペクトルは、１３５１cm-¹、１４８４cm-¹、１３９１cm-¹および１２３４cm-¹にピークがある印刷された紙からの回収されたスペクトルから明確に同定することができる。
【００３６】
実施例４
実施例１と同じ方法で、IRGALITE Yellow 5GT のラマンスペクトルは、印刷された紙から回収されたスペクトルから明確に同定することができる。
【００３７】
実施例５
銅フタロシアニンラマンスペクトルは、７４８cm-¹、６８０cm-¹、５９２cm-¹および４８８cm-¹にピークを示す印刷された紙から回収されたデータで明確に見ることができる。この場合、検出感度を増加する銅フタロシアニンに対する吸収共鳴に近い励起照射周波数を持つ波長可変色素レーザーを使用した。このラマンスペクトルを図２に示す。
【００３８】
実施例６
実施例５と同じ方法で、銅フタロシアニンラマンスペクトルは、７４８cm-¹、６８０cm-¹、５９２cm-¹および４８８cm-¹にピークを示す印刷された紙から回収されたデータ中に明確に見ることができる。
【００３９】
実施例７
実施例５と同じ方法で、銅フタロシアニンラマンスペクトルは、７４８cm-¹、６８０cm-¹、５９２cm-¹および４８８cm-¹にピークを示す印刷された紙から回収されたデータ中に明確に見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は、検出の実施例１において得られた検出スペクトルである。
【図２】図２は、検出の実施例５において得られた検出ラマンスペクトルである。

Claims (6)

1. 顔料を含有する凹版、オフセット平版、凸版、マトリックス、デージーホイールまたはノンインパクト印刷インク組成物であって、該顔料が、その表面に吸着されているかまたは物理的混合物として、顔料組成物の全重量に対して１０重量％までの暗号化合物を有し、
   前記暗号化合物が、
   アゾ、アゾメチン、イソインドリノン、ジケトピロロピロール、シッフ塩基金属錯体、フェリシアニドまたはマラカイトグリーン発色団を含む化合物であるか、またはフタロシアニン誘導体であり、そして
   顔料と異なるラマンスペクトルおよび顔料の吸収極小の個所にもしくはその７０ｎｍ以内にまたは顔料のスペクトル範囲外に吸収波長極大を有する、
   ことを特徴とする印刷インク組成物。
2. 前記暗号化合物の量が５重量％より多くない、請求項１に記載の印刷インク組成物。
3. 前記暗号化合物が式（１）：
   

   

   （式中、
   Ｐｃはフタロシアニン核であり、
   Ｍは金属原子、クロロ−金属基、オキシ−金属基または水素であり、
   Ｘは水素であり、
   Ｒ^１は有機基であり、
   Ｒ^２はＨまたは置換されていることができるアルキル基であり、
   ａは１５〜１の平均値を有し、
   ｂは１〜１５の平均値を有し、および
   ａ+ｂは４〜１６である）
   の化合物である、請求項１に記載の印刷インク組成物。
4. 前記顔料が、その表面に吸着されている暗号化合物として銅フタロシアニンスルホン酸を有するカルシウム４Ｂ金属塩顔料（顔料レッド５７：１）である、請求項１に記載の印刷インク組成物。
5. 顔料組成物を０．１〜２５重量％の量で含む請求項１乃至４のいずれか１項に記載の印刷インク組成物を使用して印刷された銀行券、銀行券より糸、通貨、旅行小切手、証書、証明書、証紙、富くじ札、所有権証書、旅券、身分証明書、クレジット・カード、チャージ・カード、面会証、スマート・カード、銘柄証明ラベル、荷札または不正防止ラベル。
6. 銀行券、銀行券より糸、通貨、旅行小切手、証書、証明書、証紙、富くじ札、所有権証書、旅券、身分証明書、クレジット・カード、チャージ・カード、面会証、スマート・カード、銘柄証明ラベル、荷札または不正防止ラベルの印刷のための、顔料組成物を０．１〜２５重量％の量で含む請求項１乃至４のいずれか１項に記載の印刷インク組成物の使用。

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