JP3950238B2 - 回転振動試験時の振動モード励振装置 - Google Patents

回転振動試験時の振動モード励振装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転振動試験時の振動モード励振装置に関し、特に、産業用タービンの回転翼のような回転体の回転振動を試験するための回転振動試験時の振動モード励振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業用タービンは、その出荷前にその性能試験の1つである回転振動に関する試験が実施される。タービンの回転翼の回転振動試験は、図8に示すように、ロータ101を車室102である真空室の中で回転させ試験対象である回転翼103の振動特性を把握することを目的としている。このような回転試験では、ロータ101を回転駆動するモータ等の容量、車室内の温度制限等から車室102内又は回転室内全体を真空に保って運転している。そのため、回転翼103を振動させるための励振力がほとんどない条件下で実施することになり、試験に必要な回転数範囲で回転翼103を励振(加振)する励振装置が使用される。
【0003】
そのような励振装置として、先端にノズルを備える空気配管105が車室内に導入され、そのノズルから回転中の回転翼103にエアを噴射する噴射手段が知られている。このように励振される回転翼103の振動は、振動計測装置(参考:特願平5−229477号)の電磁式回転パルス検出器106により検出される。
【0004】
このような従来の振動検出方法は、様々な問題を抱えている。第1に、ロータの高速回転中に、真空室内でのエアの噴射が真空度を低下させ、車室内の温度を上昇させる。このように上昇する温度は、振動計測装置に使用している非接触の電磁式回転パルス検出器、検出器ケーブルの許容温度を越える。このような温度上昇は、これら機器を破損させる。第2に、従来の回転翼励振装置のエアの噴射箇所は1回転翼について1カ所であり、励振力がランダムになる。このため、回転翼の鮮明な振動特性を得ることが困難である。第3に、このようなランダムな励振力は、振動計測装置の検出機器取付治具をも励振するので、その鮮明な振動特性を得ることが更に困難である。
【0005】
車室内の真空度を低下させず、鮮明な振動特性を得ることが求められている。更に、任意の振動モードが得られるように励振力の発生が制御されることが求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、真空度を低下させず鮮明な振動特性を得ることができる回転振動試験時の振動モード励振装置を提供することにある。
本発明の他の課題は、多様な振動モードで励振することにより高精度な振動特性を得ることができる回転振動試験時の振動モード励振装置を提供することにある。
本発明の更に他の課題は、励振力がランダムでなく確定性があり高精度な振動特性を得ることができる回転振動試験時の振動モード励振装置を提供することにある。
本発明の更に他の課題は、同じ機器を励振器としても受振器としても用いることができ任意の振動モードで加振することにより高精度な振動特性を得ることができる回転振動試験時の振動モード励振装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による回転振動試験時の振動モード励振装置は、回転試験を受ける回転試験体の周囲の複数位置に配置され前記複数位置で前記回転試験体にそれぞれの力を作用させる複数の励振器と、前記回転試験体の周囲の複数位置に配置され前記回転試験体の前記複数位置に対応する部分の振動を受ける受振器と、前記励振器を駆動するためのコントローラとからなる。
【0008】
回転翼は、選択される位置又は任意の数の位置で励振力を受ける。その励振力は、電磁気力であるから、車室内の真空度を下げる原因をつくらない。コントローラにより任意の個数の励振器により励振力を作用させることができるので、振動モードを自在に変えることができる。このような励振モードの変更により、回転翼を含むロータの振動特性を多面的に検出して、より確定的な振動特性を得ることができる。励振力である電磁気力は、電気的に確定的に発生させることができるので、得られる振動特性は鮮明である。ここで、電磁気力は、電流制御により得られる磁気力であることが好ましいが、レーザーのような電磁力伝達媒体も含む。
【0009】
励振器も受振器もともに電磁誘導器であることが好ましい。ここで電磁誘導器とは、電磁コイルとヨークとからなる磁力発生器(第1電磁誘導器)である。このような磁力発生器は、電磁誘導の原理により、同時に、磁力受容器(第2電磁誘導器)でもある。従って、コントローラの制御により、任意の電磁誘導器を使用し、且つ、その使用する電磁誘導器を加振用にも受振用にも用いることができる。第1電磁誘導器の個数は2のn(nは3より大きい整数)乗であることが好ましい。第1電磁誘導器の個数は、例えば、32、64である。更には、これらの数に3がかけられた数であることが好ましい。例えば、48、96である。このような数は、1つのロータにその周囲から均衡に加振力を作用させるのに適した数である。
【0010】
このような第1電磁誘導器は回転試験体の回転軸心線を中心線とする1円周上に等角度間隔で配置されていることが好ましい。電磁誘導器としては、62個が同一円周上に等角度間隔で配置されている。その内の半数は第1電磁誘導器であり、残りの半数は第2電磁誘導器であり、第1電磁誘導器と第2電磁誘導器は交互に配置されることが特に好ましい。
【0011】
本発明による回転振動試験時の振動モード励振装置は、言い換えれば、回転試験を受ける回転試験体の周囲の複数位置に配置され前記複数位置で前記回転試験体にそれぞれの力を作用させる複数の励振器と、前記回転試験体の周囲の複数位置に配置され前記回転試験体の前記複数位置に対応する部分の振動を受ける受振器と、前記励振器を駆動するためのコントローラとからなり、前記励振器と前記受振器は、ともに、ヨークとコイルとを備え、更には、前記励振器と前記受振器は、ともに、前記ヨークを磁化するための永久磁石を備える。この永久磁石の追加は、励振機能と受振機能を同時に向上させる。このような励振と受振は、電磁誘導法則で表裏一体の関係にあり、励振力と受振力がシャープであり鮮明な振動特性を得るための好適な物理的特性を有し、且つ、車室内の環境を乱すことが全くない。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による回転振動試験時の振動モード励振装置の実施の形態1を示し、正面図である。ベッド1の上面に脚台2が強固に支持されている。脚台2に2つ割支持環が支持されている。その2つ割支持環は、下側支持環3と上側支持環4とから形成されている。上側支持環4は、下側支持環3に支持されている。下側支持環3と上側支持環4とで、1つの円環が形成されている。下側支持環3には、これと同心に半円環状の下側取付治具5が取り付けられている。上側支持環4には、これと同心に半円環状の上側取付治具6が取り付けられている。このような治具は、特開平8−94432号で公知である。
【0013】
下側取付治具5と上側取付治具6は、共通の中心点を共有する1つの円環を形成している。この中心点は、下側支持環3と上側支持環4が形成する1つの円環の中心点に一致している。ロータとそのロータの周囲を囲むようにロータに取り付けられている回転翼は、下側支持環3と上側支持環4の裏側に位置して、図1には現れていない。回転翼は、回転中は、その外周縁部が1体に連続して閉じるリングに形成される。そのリングの外周縁の直径は、概ね、下側支持環3と上側支持環4の外周縁の直径に等しい。
【0014】
下側取付治具5と上側取付治具6とで形成される1体の取付治具に、64個の長孔7が開けられている。各長孔7の長軸方向は半径方向であり、全ての長孔は同一の径座標位置を有している。64個の長孔7は、等角度間隔で配置されている。それぞれの長孔7に電磁誘導器である市販の電磁式回転パルス検出器が装着されている。各電磁誘導器は、それに対応する長孔7に案内されて半径方向にその位置調整が行われ、適正な半径方向位置で下側取付治具5又は上側取付治具6に固着される。
【0015】
電磁誘導器は、32個の第1電磁誘導器8−1〜32と32個の第2電磁誘導器9−1〜32とから構成されている。後述するコントローラにより、64個の電磁誘導器は、第1電磁誘導器又は第2電磁誘導器として選択的に用いられ得る。第1電磁誘導器8−1〜32と第2電磁誘導器9−1〜32は、同一円周上に交互に配置されている。第1電磁誘導器8−1〜32と第2電磁誘導器9−1〜32は、非動作中は全く同一のものである。
【0016】
図2は、そのような全く同一の第1電磁誘導器8−1〜32と第2電磁誘導器9−1〜32の1つを示し、断面図である。第1電磁誘導器8−1は、いわゆる電磁式回転パルス検出器と呼ばれて市販されている慣用の検出器であり、円筒状の本体11を備えている。本体11の中に、電磁コイル12が同軸に固定されている。電磁コイル12の中心領域に同軸にヨーク(鉄心)13が装着され固定されている。永久磁石14が、ヨーク13に接触して固着されている。電磁コイル12は、電気導線15中に介設されている。電気導線15の両端は後述するコントローラに電気的に接続されている。
【0017】
電気導線15の両端に電圧を積極的にかけて電磁コイル12に電流を通す場合は、この電磁誘導器は磁力を発生させる第1電磁誘導器8−1として用いられ、この第1電磁誘導器8−1は励振器としての電磁式マグネットである。電気導線15の両端に電圧を積極的にかけず電磁コイル12に電流を通さない場合は、ヨーク13の先端の近傍を磁性体が高速で通過したりそこに急速に接近し遠ざかる際にこの電磁誘導器の電磁コイル12に電磁誘導により電圧を誘起する第2電磁誘導器9−1として用いられ、この第2電磁誘導器9−1は受振器である。
【0018】
図3は、第1電磁誘導器8−1〜32と第2電磁誘導器9−1〜32を個々に選択して動作させるコントローラ21を示す回路ブロック図である。図2に示した電気導線15は、コントローラ21と各第1電磁誘導器8−1〜32又は各第2電磁誘導器9−1〜32を個々に接続している。各第1電磁誘導器8−1〜32とコントローラ21を接続する電気導線15は、コントローラ21から電力として電流を各第1電磁誘導器8−1〜32に供給する。各第2電磁誘導器9−1〜32とコントローラ21を接続する電気導線15は、各第2電磁誘導器9−1〜32から検出電圧を検出電流としてコントローラ21に供給する。
【0019】
コントローラ21は、各第1電磁誘導器8−1〜32に供給する電力の大きさを個々に制御することができる。コントローラ21は、各第2電磁誘導器9−1〜32から受ける電気信号である電圧の大きさを測定してその電圧に対応する受振力又は受振振幅に換算する計算機能を有している。
【0020】
図4〜図6は、異なるノーダルNDで1体の回転翼に振動力を負荷する励振モードを示している。図4(a),(b)は、9NDの励振モードを示している。32個の電磁マグネットである32個の第1電磁誘導器8−1〜32の内の16個が、1円周上の9カ所の定点領域でONになる。図4(b)に示されるように、コントローラ21により電磁マグネットが選択され、9カ所の内の7カ所の定点領域では隣り合う2個であり、その2カ所の定点領域では1個である第1電磁誘導器8−1,4−5,8,11−12,15−16,18−19,22−23,25−26,29−30がONであり、同一円周方向に順次に点灯(ON)する。
【0021】
点灯持続時間は、直流を流す通電時間である。通電時間及び通電時間帯(タイミング)は、個々に、コントローラ21により制御される。このように、全第1電磁誘導器8−1〜32のうちの上述のものを選択的にONにすることにより、9NDの励振モードを形成することができる。
【0022】
図4(a)に示されるような点灯により、1体の回転翼の周縁の斜線で示す部分が順次に概ねサインカーブに近似して変動する吸着力を受ける。このような吸着力を受ける回転体には、その回転数に関係する共鳴振動が発生する。このような共鳴振動の回転翼は、32個の第2電磁誘導器9−1〜32のヨーク13に対してその共鳴振動数で接近し遠ざかる。このような振動変位の1回について、概ね1波長のサインカーブに近似する起電力が第2電磁誘導器9−1〜32の電磁コイル12に誘起され、その誘起電圧の信号がコントローラ21に伝達されその記録部(図示せず)に記録される。
【0023】
図5(a),(b)は、10NDの励振モードを示している。32個の電磁マグネットである32個の第1電磁誘導器8−1〜32の内の17個が、1円周上の10カ所の定点領域でONになる。10カ所の内の7カ所の定点領域では隣り合う2個であり、その3カ所の定点領域では1個である第1電磁誘導器8−1,4,7−8,10−11,13−14,16−17,20,23−24,26−27,29−30がONであり、同一円周方向に順次に点灯する。
【0024】
図6(a),(b)は、11NDの励振モードを示している。32個の電磁マグネットである32個の第1電磁誘導器8−1〜32の内の16個が、1円周上の11カ所の定点領域でONになる。11カ所の内の5カ所の定点領域では隣り合う2個であり、その6カ所の定点領域では1個である第1電磁誘導器8−1,3−4,6−7,9−10,12−13,15−16,18,21,24,27,30がONであり、同一円周方向に順次に点灯する。
【0025】
図7は、回転試験の計測結果を示すキャンベル線図である。タービン回転試験は、任意の回転数域において特有の振動モードが計算により予め解析されて予想されている。図7は、回転数域が2800〜3000RPMの11,10,9ノーダルモードの振動モードの実測値を示している。3000RPMの回転体は、3000を60で割ると、その基底振動数は50である。この振動体の回転数と振動数は、1Hで示す直線で表される。
【0026】
10倍振動数の直線10H上では、2800RPMの付近の回転数の回転翼は、各ノーダルNDについて、約500の振動数で共鳴する。11H、12H、13Hで示される直線上では、10H上の点よりも僅かにシフトした位置で共鳴が起きている。共鳴時の振幅は、丸の大きさで示されている。グラフ中の左上の大きい丸は、0.0150(ある単位)の基準振幅の大きさを示している。
【0027】
このように実測された振動特性は、極めてシャープ(鮮明)であり、且つ、計算により予め求められているものに完全に一致している。このように計算値に一致する結果を得た後に、その性能表が添付されて当該タービンの出荷が行われる。
【0028】
様々な回転数域において様々なNDで行われる複数の計測は、それぞれに正確な値を与えるので、より精緻な性能テストの信頼性が極めて高く、且つ、励振モードを簡単に正確に変更することができるので、計測時間が大幅に短縮される。なお、コントローラ21は、第1電磁誘導器(励振器)に関して、その通電時間、その通電タイミング、電流量(電圧)、全体の通電タイミング(順序)を自在にコントロールすることができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明による回転振動試験時の振動モード励振装置は、試験対象翼の励振したい箇所に擾乱なく任意の励振力を作用させるので、任意の回転数域において予想される振動モード(例えば、翼・ディスク練成モード)を容易に発生させることができる。
【0030】
本発明による回転振動試験時の振動モード励振装置は、一方で、励振器と受振器が電磁誘導器として兼用され、それらの配置構成が自由自在になり、任意の振動モードの作成を極端に容易にしている。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による回転振動試験時の振動モード励振装置の実施の形態を示す正面図である。
【図2】図2は、電磁誘導器の断面図である。
【図3】図3は、回路ブロック図である。
【図4】図4(a),(b)は、励振モード、そのモード作成の回路構成をそれぞれに示す幾何学図、回路図である。
【図5】図5(a),(b)は、他の励振モード、そのモード作成の回路構成をそれぞれに示す幾何学図、回路図である。
【図6】図6(a),(b)は、更に他の励振モード、そのモード作成の回路構成をそれぞれに示す幾何学図、回路図である。
【図7】図7は、キャンベル線図である。
【図8】図8は、公知の回転振動試験機を示す正面断面図である。
【符号の説明】
8−1〜32…第1電磁誘導器(励振器)
9−1〜32…第2電磁誘導器(受振器)
12…電磁コイル
13…ヨーク
14…永久磁石
21…コントローラ

Claims (3)

  1. 回転試験を受ける回転試験体の周囲の複数位置に配置され前記複数位置で前記回転試験体にそれぞれの電磁気力を作用させる複数の励振器と、
    前記回転試験体の周囲の複数位置に配置され前記回転試験体の前記複数位置に対応する部分の振動を受ける受振器と、
    前記励振器を駆動するためのコントローラとを備え、
    前記励振器は第1電磁誘導器であり、
    前記受振器は第2電磁誘導器であり、
    前記第1電磁誘導器と前記第2電磁誘導器は前記回転試験体の回転軸心線を中心線とする1円周上に等角度間隔で配置されており、
    前記第1電磁誘導器と前記第2電磁誘導器は、同一円周上で交互に配置されている回転振動試験時の振動モード励振装置。
  2. 請求項1において、
    前記コントローラは前記複数の励振器のうちの任意の個数の励振器を選択的に駆動する回転振動試験時の振動モード励振装置。
  3. 請求項において、
    前記第1電磁誘導器の個数は2のn(nは3より大きい整数)乗を因数とする数である回転振動試験時の振動モード励振装置。
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