JP3949772B2 - 蓄熱体シート及び蓄熱体シートを用いた構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は蓄熱体シート及び蓄熱体シートを用いた構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、農作物等を保存するために設けられる冷蔵施設は、所定の空間を断熱材で覆って内空間が形成され、その内空間を冷却装置を用いて冷却する構造になっている。このような冷蔵施設では、先ず頑強な建物を建設し、その建物の中にパネル状の断熱材をプレハブ式に組み立てることで内空間を形成している。または、建物の壁に発泡ウレタンを吹きつけて断熱材の層を形成し、内空間を形成しているものもある。このような構造の施設は、大型の冷蔵施設に適しており、組合組織で大量の農作物の出荷調整を行う場合等に利用されている。
また、所定の空間を断熱材で覆って形成される内空間を有する施設は、きのこの人工栽培等の農作物の栽培室としても利用されている。
これらの施設では、断熱材による断熱効果によって内空間を保温することができるものの、基本的には外気の温度変化に応じて、冷却装置を運転して、内空間の温度を所定の範囲に維持している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の冷蔵施設を建設するには多額の費用を必要とし、中小規模の施設、或いは簡易的な施設を構築するには不向きであるという課題があった。
最近の農業では、農作物の多様化が進み、各農家が個別に出荷調整を行うことが求められてきているが、各農家が個別に出荷調整を行う場合は、中小規模、或いは簡単に組立解体できる簡易的な冷蔵施設で十分であり、構築コスト及びランニングコストの低いものでなければ普及しない。
また、外気の温度変化に応じて単に内空間の温度を調整するのでは、低料金の夜間電力を利用したり、外気の温度変化を平均化して利用することができない。すなわち、余分なエネルギーを浪費し、ランニングコストを低減できないという課題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、内空間の温度を所定の範囲に維持する冷蔵施設等を、容易に構築でき、そのランニングコストを低減するための蓄熱体シート及び蓄熱体シートを用いた構造物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、本発明に係る蓄熱体シートによれば、所定温度域でゲル化して蓄熱効果のある液相蓄熱体が、袋内に充填されて成る蓄熱体パックと、該蓄熱体パックを平面的に複数収納するよう、2枚の保護シートが縫合されて形成された複数のポケットを有するポケットシートとから成り、該ポケットシートに前記蓄熱体パックが収納され、複数の前記蓄熱体パックが、帯状に連続して形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記保護シートは、空気層を備える断熱シートであることで、液相蓄熱体の効果に加えて一層熱効率を向上させることができる。
【0008】
また、フックに吊るすための穴等の吊り手段が設けられていること、或いは、隣接するもの同士を接続するため、前記保護シート表面に面ファスナーが設けられていることで、蓄熱体シートを適切且つ容易に配置することができる。
【0009】
また、本発明は、以上に記載した構成の蓄熱体シートをテントシートとして用いて所定空間を覆い、貯蔵物を収容する内空間を形成したことを特徴とする蓄熱体シートを用いた構造物にもある。
【0010】
また、前記貯蔵物が冷蔵を要するものであり、前記内空間を冷却する冷却装置が設けられたことで、好適な冷蔵施設を提供できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る蓄熱体シートの好適な実施の形態例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
先ず、図1及び図2に蓄熱体シートの一実施例について説明する。図1はポケットシート30の複数のポケット32が一方側で開いた状態の斜視図であり、図2は蓄熱体シート10の断面図である。
【0012】
20は蓄熱体パックであり、所定温度域でゲル化して蓄熱効果のある液相蓄熱体22が、袋24内に充填されて成る。
液相蓄熱体22は、所定温度域外ではゾル化しているが、例えば0°C〜30°Cの温度域でゲル化するものを利用できる。なお、この温度域は液相蓄熱体22の成分を調整することで適宜調整することが可能である。この液相蓄熱体22は、ゾル状態とゲル状態との間の一種の相変化に伴って蓄熱し、或いは潜熱を放熱する。従って、液相蓄熱体22によれば、周囲の温度を所定の温度域に維持するように作用する。
また、液相蓄熱体22を包装している袋24は、熱溶着によって袋状に形成され、液相蓄熱体22が充填された後は再び熱溶着によって封止できる樹脂シートによって形成されている。樹脂シートとしては、いわゆるビニール、ナイロン等の薄膜シートを利用できる。
【0013】
30はポケットシートであり、蓄熱体パック20を平面的に複数収納するよう、2枚の保護シート40、40が縫合されて形成された複数のポケット32を有する。48は縫い目である。このポケットシート30の各ポケット32のそれぞれに、蓄熱体パック20が収納されている。これにより、ポケットシート30に蓄熱体パック20が収納されて、液相蓄熱体22が平面的に配された蓄熱体シート10を形成することができる。
【0014】
本実施例によれば、蓄熱体パック20は、図1に示すように、複数が帯状に連続されて形成され、帯状パック26になっている。このように形成された帯状パック26が、細長く形成されたポケット32に挿入され、挿入口が縫合されることで閉じたポケット32内に収納される。
なお、本発明はこのように収納されるとは限られず、個々或いは所定数の単位に連続された蓄熱体パック20を、細長いポケット32の奥へ順々に挿入し、その都度2枚の保護シート40、40を縫合して、小区画を形成しつつ蓄熱体20をポケット32内へ順々に収納してもよい。
このように、蓄熱体パック20をポケット32内に収納することで、液相蓄熱体22を片寄ることなく、効率良く平面的に配した蓄熱体シート10を形成することができる。
【0015】
また、図2に示すように本実施例では、保護シート40は、空気層42を備える断熱シートに形成されている。従って、この保護シート40を備える蓄熱体シート10で内空間を覆った際には、その断熱効果によって、液相蓄熱体22の蓄熱効果に加えて、一層熱効率を向上させて、その内空間を所定の温度範囲に維持できる。
空気層42は、2枚の樹脂製薄膜シートを部分的に熱溶着し、空気を内包する小室を多数形成することで形成できる。この構造は、空気を多数の丸粒状の小室に閉じ込めて形成され、クッション材として利用されるいわゆるエアマット(又はいわゆるエアパック)と同一のものでよい。
【0016】
この空気層42の表裏には、それぞれ、極薄いポリエチレン等の膜シートを介してテント地44、44が熱溶着されている。すなわち、膜シートが接着材になって空気層42の表裏にテント地44、44が接着されており、これによってテント地44が空気層42を破裂させないように保護する保護層になっている。
また、以上のテント地44を接着した方法と同様の方法などによって、一方のテント地44の表面で、保護シート40の表面となる面には、アルミニウム箔46が貼着されている。
このアルミニウム箔46の層によれば、輻射熱を反射し、断熱シートである保護シート40の断熱性能を向上できる。
【0017】
そして、本実施例によれば、図2に示すように、以上のように形成された保護シート40が2枚重ねられて、所定の間隔をおいて縫合されることで、前述したポケット32が形成されている。また、そのポケット32内に、前述したように蓄熱体パック20が収納されている。
なお、保護シート40としては、以上に説明した断熱シートに限らず、単に、蓄熱体パック20を保護するシートによってポケット32を形成しても、液相蓄熱体22による蓄熱効果を得ることはできる。また、図2に示した実施例では、断熱シートである保護シート40をポケットシート30の両面に用いたが、一方の面のみに利用して他方の面を単なるシートとしてもよい。
また、テント地44としては、ズック状等の強度のある布を用いればよい。
【0018】
次に、図3及び図4に基づいて、蓄熱体パックの他の実施例について説明する。図3は、多数の小室に前記液相蓄熱体22が分けられて充填され、シート状に形成された蓄熱体パック200の一実施例を示す斜視図である。また、図4は、図3に示した蓄熱体パック200の両面に保護シート400を貼着した状態を示す断面図である。
この蓄熱体パック200は、前述した空気層42を形成する方法と類似しており、相違する点は小室に空気に代えて液相蓄熱体22を充填することにある。すなわち、2枚の樹脂製薄膜シートを部分的に熱溶着等で接着し、液相蓄熱体22を内包する小室241を多数形成する。従って、液相蓄熱体22が充填される多数の小室241から成る袋240の構造は、空気を多数の丸粒状の小室に閉じ込めて形成され、クッション材として利用されるいわゆるエアマット(又はいわゆるエアパック)と同一の形態になっている。
このように蓄熱体パック200を形成することで、液相蓄熱体22を片寄ることなく、効率良く平面的に配することができる。
【0019】
そして、この蓄熱体パック200を保護するために、図4に示すようにテント地44を貼着してもよい。この工程は、前述した保護シート40(断熱シート)を形成する方法と同様に行えばよい。すなわち、蓄熱体パック200の表裏には、それぞれ、極薄いポリエチレン等の膜シート45、45を介してテント地44、44等を熱溶着する。これによれば、膜シート45、45が接着材になって蓄熱体パック200の表裏にテント地44、44が貼着(熱溶着)され、そのテント地44が蓄熱体パック200を破裂させないように保護する保護層になる。なお、テント地44を貼着するには、他の接着方法、例えば接着剤を利用して行ってもよいのは勿論である。また、蓄熱体パック200に貼着するのは、テント地44に限られず、蓄熱体パック200を補強保護でき、柔軟性のあるものであれば、他のシート材を保護材として利用できるのは勿論である。
また、本実施例では、以上のテント地44を貼着した方法と同様の方法などによって、一方のテント地44の表面には、アルミニウム箔46が貼着されている。なお、アルミニウム箔46の効果は前述したものと同様である。
【0020】
以上のように形成された蓄熱体パック200は、所定の大きさにカットされてて、図1及び図2に示した蓄熱体パック20に代えて、ポケットシート30に収納すればよい。液相蓄熱体22がより小分けにパックされているため、液相蓄熱体22がゾル化しても、重力によって片寄ることを、全体的により好適に防止できる。
また、図4に示したように、蓄熱体パック200の表面にテント地44等の保護材を貼着した場合は、それ自体を蓄熱体シート100として利用することも可能である。
【0021】
以上の構成から成る蓄熱体シート10、100によれば、全ての材料が柔軟性のあるもので構成されてシート状に形成され、最終的にも柔軟性のある形態となっている。その柔軟性によって、従来のパネル状の断熱材とは異なり、巻き取ったり、折り畳んだりすることができる。
従って、容易に搬送でき、容易に設置できるなど、取扱い易い。特に簡易的な施設を構築するには便利である。
【0022】
次に、以上に説明した蓄熱体シートを利用して、冷蔵施設等の構造物を構築した実施例について説明する。図5は既存の建物の壁及び天井を利用して冷蔵施設等を構築した状態を示す断面図であり、図6は箱型に形成されたフレームを蓄熱シートで覆うようにして冷蔵施設等を構築した状態を示す断面図である。
蓄熱体シート10には、吊り手段が設けられている。本実施例では、フック50に吊るすための穴52(鳩目、図2参照)、或いは吊り紐54が設けられている。なお、吊り手段としては、蓄熱体シート10の所定位置にパイプ等の棒状部材が挿通される挿通部が設けられ、その棒状部材を吊り下げることで、蓄熱体シート10を吊り下げるようにしてもよい。
【0023】
図5の実施例では、壁60に固定さてたフック50に穴52を掛けて蓄熱体シート10を垂れ下げて配設すると共に、天井62に固定されたフック50に吊り紐54を掛けて吊り下げている。そして、各蓄熱体シート10の表面である保護シート40の表面には、いわゆるマジックテープである面ファスナー56が設けられており、その面ファスナー56、56を合わせることで、隣接するもの同士を接続することができる。これによって、所定空間を覆い、貯蔵物を収容する内空間64を形成することができる。
【0024】
図6の実施例では、箱状に形成されたフレーム70に固定さてたフック50に穴52を掛けて蓄熱体シート10を垂れ下げて配設すると共に、天井フレーム72上に蓄熱体シート10を載せている。そして、図5の実施例と同様に、面ファスナー56、56を合わせることで、隣接するもの同士を接続している。この構造はテントと同一のものであるが、これによっても、所定空間を覆い、貯蔵物を収容する内空間64を形成することができる。
上記どちらの実施例においても、蓄熱体シート10は、シート状の部材であり、テント布と同じように扱うことが可能であるため、適切且つ容易に配置することができる。すなわち、構造が簡単で容易に組み立てが可能であるので、既存の倉庫等の建築物内部を利用して容易に設置できる。従って、構築コストを低減でき、ニーズに即応できる。
【0025】
以上のように形成された内空間64を冷蔵施設として利用すれば、冷蔵を要する貯蔵物を好適に収容しておくことが可能である。なお、この場合は、内空間を冷却する冷却装置80(空調装置)が別途設けられる。
以上のように構築された冷蔵施設は、空調装置の冷房を強く効かせるようにすれば冷蔵庫(冷蔵施設)として使用することができる。
また、温度を所定の範囲内に保つことができるので、人工きのこ栽培等の農作物の栽培や、家畜の畜舎等としても使用できる。この場合にはテント内の換気を行わなければならないので、適宜な換気装置を設置したり、側壁を形成する蓄熱体シート10、100を容易且つ適宜に巻き上げるようにしてもよい。
【0026】
そして、このように形成された施設によれば、蓄熱体シート10、100の液相蓄熱体22の蓄熱効果によって、内空間64の温度に好適に維持することができる。すなわち、蓄熱作用によって、例えば、低料金の深夜電力を利用して冷却装置80を運転して冷気を蓄えたり、外界の夜間の冷気を蓄えておき、昼間に放出する。このように利用することによって、ランニングコストを大幅に低減できる。
【0027】
以上の実施例では冷蔵施設について説明したが、保温施設としても好適に利用できるのは勿論である。
また、蓄熱体シート10、100は床に敷くことも可能であるし、多重に設置してもよい。さらにまた、2重に設置する場合は、両シートの間に空間を設け、その空間を空調装置のダクトとして利用することも可能である。
以上、本発明の好適な実施の形態について種々述べてきたが、本発明は上述する実施の形態に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【0028】
【発明の効果】
本発明に係る蓄熱体シートによれば、液相蓄熱体が平面的に好適に収納され、巻き取ったり、折り畳んだりできるシート状に好適に形成されており、テント布のように取り扱うことができると共に、液相蓄熱体を片寄らせることなく、効率良く平面的に配することができる。また、液相蓄熱体の蓄熱効果によって、この蓄熱シートで覆われた内空間の温度を好適に維持することができる。
このため、本発明によれば、内空間の温度を所定の範囲に維持する冷蔵施設等を、容易に構築でき、そのランニングコストを低減することができるという著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る蓄熱体シートの一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る蓄熱体シートの一実施例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る蓄熱体パックの他の実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る蓄熱体シートの他の実施例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る蓄熱体シートを用いた構造物の一実施例の断面図である。
【図6】本発明に係る蓄熱体シートを用いた構造物の他の実施例の断面図である。
【符号の説明】
10 蓄熱体シート
20 蓄熱体パック
22 液相蓄熱体
24 袋
30 ポケットシート
32 ポケット
40 保護シート
42 空気層
50 フック
52 穴
56 面ファスナー
80 冷却装置
100 蓄熱体シート
200 蓄熱体パック
240 袋
241 小室
400 保護シート
Claims (7)
- 所定温度域でゲル化して蓄熱効果のある液相蓄熱体が、袋内に充填されて成る蓄熱体パックと、
該蓄熱体パックを平面的に複数収納するよう、2枚の保護シートが縫合されて形成された複数のポケットを有するポケットシートとから成り、
該ポケットシートに前記蓄熱体パックが収納され、
複数の前記蓄熱体パックが、帯状に連続して形成されていることを特徴とする蓄熱体シート。 - 前記蓄熱体パックは、多数の小室に前記液相蓄熱体が分けられて充填され、シート状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の蓄熱体シート。
- 前記保護シートは、空気層を備える断熱シートであることを特徴とする請求項1記載の蓄熱体シート。
- フックに吊るすための穴等の吊り手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の蓄熱体シート。
- 隣接するもの同士を接続するため、前記保護シート表面に面ファスナーが設けられていることを特徴とする請求項1記載の蓄熱体シート。
- 請求項1、2、3、4、または5記載の蓄熱体シートをテントシートとして用いて所定空間を覆い、貯蔵物を収容する内空間を形成したことを特徴とする蓄熱体シートを用いた構造物。
- 前記貯蔵物が冷蔵を要するものであり、前記内空間を冷却する冷却装置が設けられたことを特徴とする請求項6記載の蓄熱体シートを用いた構造物。
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