JP3947697B2 - 滑空凧飛行機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機体の胴体の中間部から後部に配設された凧翼の飛行中に発生する抗力を胴体前部の推進装置の推進気流で解消することで揚力を増加させ、飛行仰角を大きくして低速飛行を可能にした滑空凧飛行機に関する。
【0002】
【従来の技術】
飛行機は、一般に、前方へ移動することによって主翼の下面側と上面側とへ分流する気流を発生させ、この気流によって得られる揚力を利用して空間を飛行する。
【0003】
ところで、この飛行機では、上記の揚力によって機体を空中に浮かせておくために、胴体の尾部に安定翼と方向翼とを設けると共に、扁平で狭隘かつ長大な主翼を胴体中央部の左右側に設けた略十字型の構造にしている。そして、飛行性能として機体の重量を超える主翼揚力が必要なため、高速飛行を余儀なくされている。
【0004】
このため、装置異常等によって飛行中に失速すると、安全に着陸することが困難であるという問題があった。また、上方から見て略十字型の構造であるので、飛行場等の付帯設備が大規模になるという問題もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事実を考慮して、可変速飛行を行っても安全に着陸することができると共に付帯設備の小型化を可能にした滑空凧飛行機を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
従来の一般的な飛行機では主翼のみに依存していて、機体の重心の付近の一点に揚力の支点を固定している。このため、主翼の揚力は機体の全重量を支えなければならない。このため、斜め飛行をすると失速するため、水平飛行を行っていた。また、凧では揚力は大きいが空気による抗力(空気抵抗)が大きく、飛行機の揚力装置として用いるには不向きとされていた。
【0007】
しかし、本発明者は、噴射型の推進装置が近年益々高性能化され、小型の推進装置であっても多量の推進気流を噴射できることに着目した。そして、推進装置を機首に設置して機体を機首で牽引すると共に、揚力装置として、飛行中に推進気流で抗力を解消できる変形三角凧翼を、胴体に有効に揚力が発生する角度で推進装置の後方に固定することを発想した。この構成であれば、推進機能と揚力機能とが位置的に分離され、この結果、機体の重量を支える支点が機首部と機体後部とに分散される。
【0008】
そうするには、垂直離陸するか、又は、水平飛行で機首部に補助翼を付けて機首部に可変揚力機能を持たせ機首を上げて斜め飛行をすることによって、機首部に飛行中に動的支点が確保される。胴体の重量は機首を支点に縦長の三角凧翼が梃子の機能を持って胴体の後部を持ち上げるようにして更に上げる。飛行中は三角凧翼には機体全重量を支える揚力を発生させる必要はない。これにより、揚力翼の役割が軽減される。
【0009】
このように鋭意検討を行って、本発明者は本発明を完成するに至った。
【0010】
請求項1に係る発明は、飛行方向に沿った細長状の中空の胴体部と、前記胴体部の左右側からそれぞれ張り出し、飛行機正面側へ凸状に湾曲した凧型の翼部と、前記翼部の背面側に形成された湾曲凹部へ向けて斜め下方へ気流を噴射することにより推進力及び揚力を発生させる噴射部と、飛行中での前記翼部の傾斜角度を変更させる角度変更手段と、を有し、前記角度変更手段が、前記胴体部の機首から左右方向へ延びるように回動可能に取付けられた角度調整翼であることを特徴とする。
【0011】
翼部の傾斜角度とは、水平面と翼部とのなす角度のことである。この傾斜角度を大きくすると、この飛行姿勢では空気抵抗が大きくなって飛行速度が遅くなる。従って、可変速飛行が可能になると共に、着陸時に上記の傾斜角度を大きくすることにより低速で安全に着地することができる。
【0012】
また、機体の形状がこじんまりとしており、飛行機の主翼のように胴体部から大きくはみ出すことはないので、飛行場等の付帯設備を小規模にできると共に、水上での離発着も可能になる。
【0013】
更に、翼部の背面側に形成された湾曲凹部へ向けて斜め下方へ気流を噴射しており、湾曲凹部への気流の強制拡散がなされるので、機体の移動により上記の湾曲凹部に発生する抗力を解消できると共に、湾曲凹部の下端側から渦が巻き込まれることを防止できる。従って、低空での推進効率が良くなると共に推進力を上げることができる。
【0014】
また、飛行方向に沿った細長状の中空の胴体部を有するので、機体の飛行姿勢を安定させ易いと共に、胴体部に人間或いは運搬物を搭載することができる。
また、角度調整翼の回動角度を調整することによって、機体の傾斜角度すなわち翼部の傾斜角度を容易に調整することができる。
なお、胴体部に機体横転舵を設けてもよい。
【0015】
請求項2に係る発明は、着陸時には前記傾斜角度を大きくすることを特徴とする。
【0016】
これにより、より低速で安全に着地することができる。
【0019】
請求項3に係る発明は、前記翼部の尾部の上部両端に架け渡された補助翼を有することを特徴とする
【0020】
これにより、胴体部を補強することができると共に、尾部に生じる揚力を更に上げることができる。
【0021】
請求項4に係る発明は、前記補助翼を構成するフラップ板を有することを特徴とする。
【0022】
これにより、機体を左右に横回転させて飛行方向を変更することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
[第1形態]
図1に示すように、第1形態の滑空凧飛行機10は、機体の中心となる中空の細長状の胴体部12と、胴体部12の左右側から張り出し、正面側へ凸状に湾曲した凧型の翼部14と、を有する。翼部14は平面略三角形状であり、必要に応じて補強用の骨部材(図示せず)が設けられている。胴体部12には、人間或いは荷物を搭載できる中空部16が形成されており、人間或いは荷物が出入するドア部(図示せず)が設けられている。また、胴体部12の前方側には、図示しない搭乗した人間(操縦者)が外部を見ることができるように窓部材20が取付けられている。
【0025】
また、滑空凧飛行機10は、胴体部12の機首側に取付けられた2台の噴射推進装置22を備えている。噴射推進装置22は、翼部14の背面側の湾曲凹部24へ向けて斜め下方へジェット気流を噴射することにより推進力及び揚力を発生させる。噴射推進装置22の出力(噴射量)は調整可能になっている。
【0026】
更に、滑空凧飛行機10は、胴体部12の機首側に取付けられ、機首を上下方向に操舵する水平安定翼26を備えている。飛行中に水平安定翼26の後部を下げることにより機首が上昇して、水平面と翼部14とのなす角度である傾斜角度θ(図3参照)が増大し、後部を上げることにより機首が下降して傾斜角度θが減少する。この水平安定翼26は、ほぼ垂直方向へ上昇する際の方向操舵として威力を発揮する。また、飛行中に水平安定翼26を気流に対して平行に維持することにより、機体の横揺れ、縦揺れを防止することができる。
【0027】
更に、滑空凧飛行機10は、胴体部12の尾部の左右上部両端に結合された架橋補助翼30A、30Bと(図2も参照)、架橋補助翼30を支える補助翼支持直立安定板32と、を備えている。この架橋補助翼30によって、ほぼ水平方向に飛行する際に揚力が発生する。
【0028】
架橋補助翼30A、30Bは、それぞれ、飛行方向Pと直交する方向の軸回り(すなわち胴体部12と直交する方向の軸回り)に回動可能なフラップ板31A、31Bを有する。フラップ板31は、ほぼ水平方向に飛行する際の上下方向の方向操舵として用いられることが多い。
【0029】
また、滑空凧飛行機10を左右方向へ操舵する場合、主としてこのフラップ板31A、31Bを用いる。すなわち、フラップ板31A、31Bの一方を上げ、他方を下げて斜め飛行することによって、滑空凧飛行機10の左右方向への操舵が可能であり、小型機としての小回り性が良好となる。
【0030】
また、胴体部12の尾部の左右両端部には、機体横転舵34A、34Bがフラップ動作可能なように設けられている。機首を上げ、機体横転舵34により機体を横に捻り、更に機首を元の状態に戻すことにより、左右の進行方向を変えることができる。なお、機体横転舵34を設けない構造にすることも可能である。
【0031】
図3(A)に示すように、滑空凧飛行機10で高速で飛行するには、傾斜角度θを小さくして飛行する。
【0032】
図3(B)に示すように、傾斜角度θが増すに従い、翼部14に作用する空気抵抗が大きくなるので、噴射推進装置22の出力が同じである場合、飛行速度は低下する。
【0033】
着地する際には、傾斜角度θを充分に大きくして飛行速度を充分に落とした状態で着地する。
【0034】
なお、図3(B)ように角度θが大きくなって速度が落ちた場合には揚力が低減するが、噴射推進装置22からの推進気流によって不足した揚力を補うことができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態で説明した滑空凧飛行機10によれば、可変速飛行が可能であり、着陸時に傾斜角度θを大きくすることにより低速で安全に着地することができる。従って、人間が搭乗できる滑空凧飛行機10が実現される。また、この滑空凧飛行機10には、飛行機の主翼のように胴体部から大きくはみ出す部位がなく、小型にでき、滑走路の短い飛行場や水上に水平離着陸が容易になる。更に、胴体12の中空部16に複数の人間や貨物を搭載できる。
【0036】
単人乗りの軽量小型機では胴体12は軽量プラスチックを凧翼14は通気性のない軽い布で軽量化して前部には強力な推力を持った噴射推進装置(ダクテッドファン)22据え付け操舵用に軽量なフラップを持った架橋翼30で垂直離着陸飛行機を構成することができる。離陸時の推力補助には軽量圧縮タンクを搭載して空気噴射を利用すると動力の軽量化ができる。この軽量機は狭い空間を安全に飛行することができる。
【0037】
[第2形態]
次に、第2形態について説明する。図4に示すように、第2形態では、第1形態に比べ、噴射推進装置40のカバー後端部が複数枚のフラップ板42で構成されており、任意のフラップ板を開閉できるようになっている。
【0038】
図4(A)に示すように、通常ではフラップ板42は全て閉じた状態で飛行する。図4(B)に示すように、上側のフラップ板42Uを開けることにより、噴射推進装置40で吸引した空気は、後方へ噴射されると共に上方へも噴射されるので、機首を素早く下方へ向けさせることができる。図4(C)に示すように、下側のフラップ板42Lを開けることにより、噴射推進装置40で吸引した空気は、後方へ噴射されると共に下方へも噴射されるので、機首を素早く上方へ向けさせることができる。このことは、低速飛行時に特に有効である。また、多人数と貨物が運搬できる大型機の水平離発着陸時の低速飛行時の機首の強制上下操作を可能にして安全な離発着が行える。
【0039】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0040】
【発明の効果】
本発明は上記構成としたので、可変速飛行を行っても安全に着陸することができると共に付帯設備の小型化を可能にした滑空凧飛行機が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)から(C)は、それぞれ、第1形態の滑空凧飛行機の側面図、平面図、及び、背面図である。
【図2】図1の矢視2−2の側面断面図である。
【図3】図3(A)及び(B)は、それぞれ、第1形態で、滑空凧飛行機が高速飛行、中速飛行、及び、着地時の低速飛行をする際の傾斜角度の違いを示す側面図である。
【図4】図4(A)から(C)は、それぞれ、第2形態の滑空凧飛行機の噴射推進装置のフラップ板の開閉状態を示す側面図である。
【符号の説明】
10 滑空凧飛行機
12 胴体部
14 翼部
22 噴射推進装置(噴射部)
24 湾曲凹部
26 水平安定翼(角度調整翼)
30A、B 架橋補助翼(補助翼)
31A、B フラップ板
32 補助翼支持直立安定板
40 噴射推進装置(噴射部)
θ 傾斜角度
Claims (4)
- 飛行方向に沿った細長状の中空の胴体部と、
前記胴体部の左右側からそれぞれ張り出し、飛行機正面側へ凸状に湾曲した凧型の翼部と、
前記翼部の背面側に形成された湾曲凹部へ向けて斜め下方へ気流を噴射することにより推進力及び揚力を発生させる噴射部と、
飛行中での前記翼部の傾斜角度を変更させる角度変更手段と、
を有し、
前記角度変更手段が、前記胴体部の機首から左右方向へ延びるように回動可能に取付けられた角度調整翼であることを特徴とする滑空凧飛行機。 - 着陸時には前記傾斜角度を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の滑空凧飛行機。
- 前記翼部の尾部の上部両端に架け渡された補助翼を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の滑空凧飛行機。
- 前記補助翼を構成するフラップ板を有することを特徴とする請求項3に記載の滑空凧飛行機。
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