JP3947121B2 - 衛星投入方法,投入ルート提案装置及び投入ルート提案プログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、いわゆる準天頂軌道へ人工衛星を投入するための衛星投入方法と、人工衛星を準天頂軌道へ投入するための最適なルートを従事者に提案するための投入ルート提案装置と、このような投入ルート提案装置としてコンピュータを機能させる投入ルート提案プログラムとに、関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、人工衛星の軌道の一つに静止軌道[Geostationary Earth Orbit]がある。この静止軌道は、地球の重心である地心を中心とする円軌道であり、地球の赤道を含むいわゆる赤道面内において実現される軌道である。この静止軌道上にある人工衛星は、地球の自転周期とほぼ同じ周期にて地球の周囲を回転するため、地上からは、天空内の同じ位置に静止しているように見える。このような静止軌道は、通常、気象衛星や通信衛星などに採用されている。
【0003】
また、一般に、人工衛星が複雑な手順を経て静止軌道に投入されることが、知られている。その概略としては、人工衛星は、まず、打ち上げロケットによって引力圏脱出速度が与えられることによって地球の引力圏外へ出され、いわゆる待機軌道である高度約200km〜約300kmの円軌道に一旦投入される。続いて、人工衛星は、この待機軌道を一周する前に、その待機軌道上の一点において打ち上げロケットによって所定の方向に向けて再加速されることにより、待機軌道上に近地点を持つとともに静止軌道上に遠地点を持つ楕円軌道であるいわゆる静止遷移軌道[Geostationary Transfer Orbit]に投入され、打ち上げロケットから切り離される。そして、人工衛星がこの静止遷移軌道の遠地点を通過するたびに、人工衛星に搭載されている反動推進用のアポジロケット(固体燃料を使用する場合にはアポジモータといい、液体燃料を使用する場合にはアポジエンジンという)が点火されて所定量の燃焼ガスが僅かな期間だけ噴射されることにより、人工衛星が遠地点で繰り返し加速され、静止遷移軌道が徐々に円軌道に修正される。
【0004】
ところで、このような静止軌道上にある人工衛星を地上から見るときの仰角は、緯度がおよそ30°乃至60°である日本のような中緯度地域においては、それほど大きくないため、人工衛星との間で送受信される放送用や測位用などの各種電波が山や高層ビルなどによって遮られることがあった。そのため、最近では、このような欠点を可及的に解消できる新たな軌道として、準天頂軌道が提案されている。
【0005】
この準天頂軌道は、赤道面に対して軌道面が傾斜しているとともに地球の自転周期と同じ周期にて人工衛星を移動させるいわゆる傾斜同期軌道[Inclined Synchronous Orbit]を三つ(又は四つ)備えており、準天頂軌道としての機能は、これら三つ(又は四つ)の傾斜同期軌道について以下の三つの条件を成立させることにより、達成される。その条件は、第1に、各傾斜同期軌道の軌道面が赤道面に対して40°乃至50°ほど傾いていることであり、第2に、各傾斜同期軌道の昇交点赤径(後述)が120°ずつ(傾斜同期軌道が四つの場合には90°ずつ)ずれていることであり、第3に、人工衛星が後述の昇交点を通過するタイミングが約8時間ずつ(傾斜同期軌道が四つの場合には約6時間ずつ)ずれていることである。なお、昇交点とは、傾斜同期軌道と赤道面との二つの交点のうち、人工衛星が地球の南極側から北極側に向かって横切る交点を言い、昇交点赤径とは、地心を原点とするとともに赤道面内の各方向を0°の緯度とするいわゆる赤道座標において、春分の日にある太陽を赤道面に投影したときの位置である春分点に対する昇交点の経度を言う。この準天頂軌道によれば、中緯度地域において、何れかの人工衛星が、天空内における仰角が約70°以上の領域に、常に配置されることとなるため、上記の各種電波が山や高層ビルに遮られることが少なくなる。
【0006】
なお、軌道面の大きな回転を伴うような一般的な軌道変換の方法としては、例えば、効率の良い燃料(推薬)を用いて推進力の小さなスラスタ(推進用モータ)を連続的に使用することにより所定の楕円軌道を徐々に修正しながら任意の軌道へと変化させる方法(特許文献1参照)や、地球と月と人工衛星の重力及び遠心力が釣り合う安定位置へ人工衛星を一旦運んだ後、任意の軌道に投入できるようになるまでその安定位置で人工衛星を待機させる方法(特許文献2参照)がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−029599号公報
【特許文献2】
特表2001−518861号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、静止軌道に人工衛星を投入する場合、打ち上げロケットの発射時から人工衛星の軌道投入時までに掛けられる期間は、およそ十日である。そして、上述した準天頂軌道においても、静止軌道の場合と同様に、できるだけ短い期間で人工衛星が各傾斜同期軌道に投入されることが、その業務に携わっている従事者により、希望されている。
【0009】
しかしながら、上述したような従来の方法によって準天頂軌道に人工衛星を投入する場合、打ち上げロケットの発射時から人工衛星を傾斜同期軌道に投入するまでに、数十日から数百日を要することが、容易に見積もられ得る。このように軌道投入に時間が掛かるという問題があると、結果的に、人工衛星を使ったシステムを立ち上げる際にも時間が掛かることとなり、更には、人工衛星が故障した際に代用の人工衛星を打ち上げることによってシステム全体を復旧させる際にも、時間が掛かることとなる。
【0010】
なお、従来の方法に因らないで準天頂軌道における各傾斜同期軌道に人工衛星を投入する方法が、考えられなくはない。例えば、図21に示されるような方法である。この方法は、目的とする傾斜同期軌道ISOの昇交点Nに対して遠地点が一致している静止遷移軌道GTOに向けて人工衛星を投入し、続いて、その静止遷移軌道GTOの遠地点において、人工衛星の速度方向が静止遷移軌道GTOの接線方向から傾斜同期軌道ISOの接線方向へ変換されるような速度成分(図21の太線の矢印の方向を向く速度成分)を人工衛星に与えるように、アポジロケットを点火するというものである。
【0011】
この図21に示されるような方法によると、打ち上げロケットの射場(発射地点)と各傾斜同期軌道ISOの昇交点Nの位置とが決まっていると、地球の自転や公転の関係から、自ずと、打ち上げ可能な日時が幾つか決まってしまう。しかしながら、地球上の或る地点にある管制塔から上空の人工衛星へ姿勢制御のための指示を送ることができる時間帯や時期が、太陽の向きや地球の向きや人工衛星の向き等の影響によって非常に限られている。このため、準天頂軌道用の人工衛星を搭載した打ち上げロケットを発射することができる時が、一年のうちにほんの限られた期間、且つ一日の中でごく限られた時間帯となってしまうという問題がある。このような問題があると、上述したシステムの立ち上げ時や故障からの復旧時に、できるだけ短い期間で人工衛星を傾斜同期軌道ISOに投入することができないこととなる。
【0012】
本発明は、上述したような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、準天頂軌道の傾斜同期軌道の昇交点に静止遷移軌道の遠地点が一致しないような日時に人工衛星を打ち上げる場合でも、できるだけ少ない燃料にて、静止遷移軌道に投入された人工衛星を、任意の昇交点赤径を持つ傾斜同期軌道へ素早く投入することができる衛星投入方法と、人工衛星を任意の傾斜同期軌道へ投入するための最適なルートを従事者に対して提案するための投入ルート提案装置と、このような投入ルート提案装置としてコンピュータを機能させる投入ルート提案プログラムとを、提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明による衛星投入方法は、以下のような構成を採用した。
【0014】
すなわち、本発明による衛星投入方法は、人工衛星を待機軌道から静止軌道へ投入するための静止遷移軌道から、準天頂軌道の持つ多数の傾斜同期軌道のうちの一つに向けて人工衛星を投入するための衛星投入方法であって、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入し、その後に、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する第1の投入ルート、前記静止遷移軌道から、その遠地点に降交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入し、その後に、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する第2の投入ルート、及び、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに軌道傾斜角が前記静止遷移軌道と一致する第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入し、その後に、その第1遷移円軌道から、その第1遷移軌道と同じ軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径及び軌道傾斜角を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する第3の投入ルートのうちの1つに、前記人工衛星を投入することを、特徴としている。
【0015】
このように構成されると、準天頂軌道の傾斜同期軌道の昇交点に静止遷移軌道の遠地点が一致しないような日時に人工衛星を打ち上げる場合に、静止遷移軌道に投入された人工衛星を傾斜同期軌道へ投入する場合に経るべき投入ルートを、第1乃至第3の投入ルートのなかから選択することができる。従って、従事者は、これら第1乃至第3の投入ルートのなかから最適の投入ルートを選択することにより、できるだけ少ない燃料にて、静止遷移軌道に投入された人工衛星を、任意の昇交点赤径を持つ傾斜同期軌道へ素早く投入することができる。
【0016】
なお、本発明の衛星投入方法においては、静止遷移軌道から第1及び/又は第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する際に、その人工衛星に搭載されるロケットを、作動させることができる。
【0017】
そのロケットは、人工衛星に推進用として搭載されているスラスタであっても良いが、静止遷移軌道の遠地点において作動させるために搭載されているアポジロケットであることが好ましい。また、このロケットは、固体燃料を使用するロケットであるモータであっても良いし、液体燃料を使用するロケットであるエンジンであっても良い。そのエンジンは、一液触媒燃焼ロケットであっても良いが、比推力等を考慮すると、二液燃焼ロケットであるほうが好ましい。
【0018】
また、上記の課題を解決するために、本発明による投入ルート提案装置は、以下のような構成を採用した。
【0019】
すなわち、本発明による投入ルート提案装置は、人工衛星を待機軌道から静止軌道へ投入するための静止遷移軌道から、準天頂軌道の持つ多数の傾斜同期軌道のうちの一つに向けて人工衛星を投入する計画を立案する際に用いられる投入ルート提案装置であって、各種画面を表示するための表示部と、各種情報を入力するための入力部と、前記静止遷移軌道及び前記傾斜同期軌道の軌道要素を定義する情報が前記入力部から入力されると、所定画面を前記表示部に表示させる制御部とを備え、前記制御部は、前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第1の投入ルートについてのルート情報として算出し、前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に降交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第2の投入ルートについてのルート情報として算出し、前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに軌道傾斜角が前記静止遷移軌道と一致する第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移軌道と同じ軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径及び軌道傾斜角を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第3の投入ルートについてのルート情報として算出し、前記第1乃至第3の投入ルートの各ルート情報のうち、前記静止遷移軌道から前記傾斜同期軌道へ投入するまでに必要な推薬量が最も少ない投入ルートのルート情報を抽出し、抽出したルート情報に対応する投入ルートを定義する情報を前記所定画面に含めることを、特徴としている。
【0020】
このように構成されると、静止遷移軌道の軌道要素と傾斜同期軌道の軌道要素が入力部に入力された場合に、第1乃至第3の投入ルートのなかから所定の抽出条件に基づいて抽出された投入ルートを定義する情報を含む画面が、表示部に表示される。従って、従事者は、入力部に軌道要素を入力することによって表示部に表示された画面により、最適な投入ルートを取得することができる。
【0021】
また、上記の課題を解決するために、本発明による投入ルート提案プログラムは、以下の構成を採用した。
【0022】
すなわち、本発明による投入ルート提案プログラムは、コンピュータに対し、人工衛星を待機軌道から静止軌道へ投入するための静止遷移軌道の軌道要素を定義する情報,及び、準天頂軌道の持つ多数の傾斜同期軌道のうちの一つの軌道要素を定義する情報を、受付させ、前記両情報を受け付けた場合には、前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第1の投入ルートについてのルート情報として算出させ、前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に降交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第2の投入ルートについてのルート情報として算出させ、前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに軌道傾斜角が前記静止遷移軌道と一致する第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移軌道と同じ軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径及び軌道傾斜角を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第3の投入ルートについてのルート情報として算出させ、前記第1乃至第3の投入ルートの各ルート情報のうち、前記静止遷移軌道から前記傾斜同期軌道へ投入するまでに必要な推薬量が最も少ない投入ルートのルート情報を抽出させ、抽出されたルート情報に対応する投入ルートを定義する情報を含む画面を表示させることを、特徴としている。
【0023】
従って、この投入ルート提案プログラムによると、上述したような本発明の投入ルート提案装置としてコンピュータを機能させることができることになる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
<軌道要素について>
まず、本実施形態の説明に先立ち、人工衛星の軌道を定義するための軌道要素について、説明する。図1は、この軌道要素の説明に用いられる概略図である。本実施形態の説明において用いられる軌道要素には、昇交点赤経[Right Ascension of Ascending Node]Ω,軌道傾斜角[Orbital Inclination]i,離心率[Eccentricity]e,軌道長半径[Semi Major Axis]a,近地点引数[Argument of Perigee]ω,及び、平均近点離角[Mean Anomaly]Mがある。
【0026】
昇交点赤経Ωとは、地球の重心である地心Cを原点とするとともに地球の赤道を含む赤道面[Equatorial Plane]EP内の各方向を0°の緯度とするいわゆる赤道座標において、春分の日にある太陽を赤道面EPに投影したときの位置である春分点γに対する昇交点[Ascending Node 又は Northbound Node]Nの経度を言う。なお、その昇交点Nとは、人工衛星の軌道と赤道面EPとの二つの交点のうち、人工衛星が地球の南極側から北極側に向かって横切る交点を言う。また、この昇交点Nの反対側にある交点は、降交点[Descending Node 又は Southbound Node]Sと言う。
【0027】
軌道傾斜角iとは、人工衛星の軌道を含む平面を軌道面OPとしたとき、この軌道面OPが赤道面EPに対してなす角度を言う。この軌道傾斜角iと上述した昇交点赤経Ωは、軌道面OPの赤道座標内での向きを定義する軌道要素である。
【0028】
離心率eとは、図1には示されていないが、軌道の楕円の度合いを示す比率を言う。具体的には、離心率eは、0に近付くほど軌道が円であることを示し、1に近付くほど軌道が細長い楕円であることを示す。つまり、離心率eは、軌道の形状を定義する軌道要素である。
【0029】
軌道長半径aとは、軌道の長径の半分の長さを言う。つまり、この軌道長半径aは、軌道の大きさを定義する軌道要素である。
【0030】
近地点引数ωとは、軌道面OPと赤道面EPとの交線に対して軌道の長軸がなす角度を言う。具体的には、近地点引数ωは、軌道上において地心Cに最も近い近地点[Perigee 又は Periapsis]が昇交点Nに一致している場合に0°を示し、軌道上において地心Cから最も遠い遠地点[Apogee 又は Apoapsis]が昇交点Nに一致している場合に180°を示す。つまり、近地点引数ωは、軌道面OP内での軌道の向きを定義する軌道要素である。
【0031】
平均近点離角Mは、図1に示されていないが、人工衛星が或る時刻にその軌道上のどの位置に存在しているかを示す角度である。具体的には、平均近点離角Mは、人工衛星が近地点にある場合に0°を示し、人工衛星が遠地点にある場合に180°を示す。なお、或る時刻とは、エポック時と称されており、協定世界時[Universal Time Coordinated]により表現される。
【0032】
ところで、人工衛星の軌道を計算するためには、上記の6つの軌道要素以外のものも幾つか用いられるが(例えばドラグ)、それらは本発明には関係ないので、それらの説明を省略する。
【0033】
<準天頂軌道について>
次に、本実施形態により人工衛星が最終的に投入される軌道である準天頂軌道について、説明する。この準天頂軌道は、地球における緯度がおよそ30°乃至60°である中緯度地域に含まれる狭い領域(国土)に対して適用するために提案された軌道である。図2は、この準天頂軌道の説明に用いられる概略図である。本実施形態の準天頂軌道は、赤道面EPに対して軌道面が傾斜しているとともに地球の自転周期と同じ周期にて人工衛星を移動させる三つの傾斜同期軌道[Inclined Synchronous Orbit]ISO1〜ISO3を、備えている。また、準天頂軌道がその機能を実現するためには、これら三つの傾斜同期軌道ISO1〜ISO3は、以下の三つの条件を成立させねばならない。その条件は、第1に、各傾斜同期軌道ISO1〜ISO3の軌道面IP1〜IP3が赤道面EPに対して40°乃至50°ほど傾いていることであり、第2に、各傾斜同期軌道ISO1〜ISO3の昇交点赤径Ωが120°の角度間隔にて離れていることであり、第3に、各傾斜同期軌道ISO1〜ISO3上にある三つの人工衛星の各々の昇交点N1〜N3を通過するタイミングが約8時間ずつずれていることである。
【0034】
<傾斜同期軌道への投入ルートについて>
次に、本実施形態において用いられる人工衛星の傾斜同期軌道ISOへの投入ルートについて、説明する。本実施形態においては、三つの投入ルートが用いられる。以下では、先に、何れの投入ルートにおいても共通する部分について説明し、その後に、第1乃至第3の投入ルートについて、順に説明する。
【0035】
(共通部分)
まず、打ち上げロケットによって人工衛星に対して引力圏脱出速度を与えることにより、その人工衛星を地球の引力圏外へ脱出させ、いわゆる待機軌道である高度約200km〜約300kmの円軌道に一旦投入する。続いて、人工衛星がこの待機軌道を一周する前に、その待機軌道上の一点において打ち上げロケットによって所定の方向に向けて人工衛星を再加速させることにより、待機軌道上に近地点を持つとともに静止軌道上に遠地点を持つ楕円軌道であるいわゆる静止遷移軌道[Geostationary Transfer Orbit]GTOに人工衛星を投入し、人工衛星から打ち上げロケットを切り離す。ここまでは、人工衛星を静止軌道[Geostationary Earth Orbit]へ投入する方法と何ら変わらない。
【0036】
なお、以下に説明する第1乃至第3の投入ルートでは、人工衛星は、静止遷移軌道GTOから一旦別の円軌道へ投入され、更に別の円軌道へ投入された後に、目的とする傾斜同期軌道へ投入される。そこで、以下では、説明のために、静止遷移軌道GTOの次に人工衛星が投入される円軌道を「第1遷移円軌道」と言い、第1遷移円軌道の次に人工衛星が投入される円軌道を「第2遷移円軌道」と言うことにする。また、以下の説明において、目的とする傾斜同期軌道ISOに関する軌道要素については、“k”の下付き文字を用いて、(Ωk,ik,ek,ak)と表現し、静止遷移軌道GTOに関する軌道要素については、“t”の下付き文字を用いて、(Ωt,it,et,at)と表現する。但し、投入ルートの説明においては、近地点引数ωと平均近点離角Mは使わない。
【0037】
(第1の投入ルート)
第1の投入ルートでは、人工衛星を静止遷移軌道GTOへ投入した後、この静止遷移軌道GTOの遠地点に人工衛星が差し掛かったところで、人工衛星に搭載されている反動推進用の二液式ロケットであるエンジンを点火して所定量の燃焼ガスを僅かな期間に噴射させることによって、後述する方向に向かって後述の速度成分を与えるように人工衛星を加速させ、その結果、以下に説明するような第1遷移円軌道へ人工衛星を投入する。図3は、第1の投入ルートにおける第1遷移円軌道の説明に用いられる概略図である。この図3に示されるように、第1の投入ルートにおける第1遷移円軌道は、静止遷移軌道GTOの昇交点赤径Ωtと同じ昇交点赤径Ωを持ち、目的とする傾斜同期軌道ISOの軌道傾斜角ikと同じ軌道傾斜角iを持つとともに、静止遷移軌道GTOのアポジ半径rt(=軌道長半径at×(1+離心率et))と同じ長さの軌道長半径aを持つ。このような軌道変換(Ω:Ωt,i:it→ik,e:et→0,a:at→rt)の結果、静止遷移軌道GTOの遠地点Aが第1遷移円軌道の昇交点Nに変換される。ところで、静止遷移軌道GTOの遠地点Aにおいて人工衛星が持つ速度ベクトルをVtとし、第1遷移円軌道の昇交点Nにおいて人工衛星が持つ速度ベクトルをV1としたとき、この軌道変換において人工衛星に与えられる速度成分ΔVAaは、合成ベクトル(V1−Vt)の方向、つまり、図3の太線の矢印の方向を向いている。また、軌道傾斜角の変位量をΔiA(=ik−it)とし、Vt及びV1がスカラー量であるとしたとき、この軌道変換において人工衛星に与えられる速度成分ΔVAaの大きさは、√[(Vt)2+(V1)2−2・(Vt)・(V1)・cosΔiA]である。なお、この軌道変換においてエンジンによって使用される推薬量ΔmAaは、人工衛星の制御前の質量msat,人工衛星に与える速度成分のスカラー量である増速量ΔV,エンジンの燃料である推薬の比推力ISP,及び重力加速度gに基づいて、いわゆる推薬計算公式(ΔmAa=msat[1−e-(ΔV/g・ISP)]により決定される。
【0038】
続いて、この第1遷移円軌道上を移動中の人工衛星が昇交点Nと降交点Sとの中間地点Hに差し掛かったところで、エンジンから所定量の燃焼ガスを僅かな期間に噴射させることによって、後述の方向に向かって後述の速度成分を与えるように人工衛星を再加速させ、その結果、以下に説明するような第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する。図4は、第1の投入ルートにおける第2遷移円軌道の説明に用いられる概略図である。この図4に示されるように、第1の投入ルートにおける第2遷移円軌道は、第1遷移円軌道における昇交点N及び降交点Sの中間地点Hと地心Cとを結ぶ軸回りに第1遷移円軌道を回転させたのと等価な円軌道であり、目的とする傾斜同期軌道ISOの昇交点赤径Ωkと同じ昇交点赤径Ωを持つ。このような軌道変換(Ω:Ωt→Ωk,i:ik,e:0,a:rt)の結果、昇交点Nが、静止遷移軌道GTOの昇交点赤径Ωtの位置から傾斜同期軌道ISOの昇交点赤径Ωkの位置まで、地心Cの周りを回転する。ところで、第1遷移円軌道の地点Hにおいて人工衛星が持つ速度ベクトルをV1とし、第2遷移円軌道の地点Hにおいて人工衛星が持つ速度ベクトルV2としたとき、この軌道変換において人工衛星に与えられる速度成分ΔVAbは、合成ベクトル(V2−V1)の方向、つまり、図4の太線の矢印の方向を向いている。また、V1及びV2がスカラー量であるとしたとき、V1=V2であるので、この軌道変換において人工衛星に与えられる速度成分ΔVAbの大きさは、昇交点赤径Ωの変位量をΔΩ(=Ωk−Ωt)としたとき、sin(ik)・V1・√(2−2cosΔΩ)である。なお、この軌道変換においてエンジンによって使用される推薬量ΔmAbは、上記推薬計算公式により決定される。
【0039】
最後に、周知の面内軌道制御方法であるホーマン軌道制御方法に従って、エンジンを随時点火することにより、同一軌道面内において、第2遷移円軌道から目的の傾斜同期軌道ISOへと軌道の形状を整える(Ω:Ωk,i:ik,e:0→ek,a:rt→ak)。
【0040】
(第2の投入ルート)
第2の投入ルートでは、人工衛星を静止遷移軌道GTOへ投入した後、この静止遷移軌道GTOの遠地点において、エンジンから所定量の燃焼ガスを僅かな期間に噴射させることによって、後述の方向に向かって後述の速度成分を与えるように人工衛星を加速させ、その結果、以下に説明するような第1遷移円軌道へ人工衛星を投入する。図5は、第2の投入ルートにおける第1遷移円軌道の説明に用いられる概略図である。この図5に示されるように、第2の投入ルートにおける第1遷移円軌道は、静止遷移軌道GTOの昇交点赤径Ωtに180°加えた経度と同じ昇交点赤径Ωを持ち、目的とする傾斜同期軌道ISOの軌道傾斜角ikと同じ軌道傾斜角iを持つとともに、静止遷移軌道GTOのアポジ半径rtと同じ長さの軌道長半径aを持つ。このような軌道変換(Ω:Ωt→Ωt+180°,i:it→ik,e:et→0,a:at→rt)の結果、静止遷移軌道GTOの遠地点Aがこの円軌道の降交点Sに変換される。ところで、静止遷移軌道GTOの遠地点Aにおいて人工衛星が持つ速度ベクトルをVtとし、第1遷移軌道の降交点Sにおいて人工衛星が持つ速度ベクトルをV1としたとき、この軌道変換において人工衛星に与えられる速度成分ΔVBaは、合成ベクトル(V1−Vt)の方向、つまり、図5の太線の矢印の方向を向いている。また、軌道傾斜角の変位量をΔiB(=ik+it)とし、Vt及びV1がスカラー量であるとしたとき、この軌道変換において人工衛星に与えられる速度成分ΔVBaは、√[(Vt)2+(V1)2−2・ (Vt)・(V1)・cosΔiB]である。なお、この軌道変換においてエンジンによって使用される推薬量ΔmBaは、上記推薬計算公式により決定される。
【0041】
続いて、この第1遷移円軌道上を移動中の人工衛星が昇交点Nと降交点Sとの中間地点Hに差し掛かったところで、第1の投入ルートにおける第1遷移円軌道から第2遷移円軌道への軌道変換と同じ操作を行う。具体的には、この地点Hにおいてエンジンから所定量の燃焼ガスを僅かな期間に噴射させることによって、後述の方向に向かって後述の速度成分を与えるように人工衛星を再加速させ、その結果、以下に説明するような第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する。図6は、第2の投入ルートにおける第2遷移円軌道の説明に用いられる概略図である。この図6に示されるように、第2の投入ルートにおける第2遷移円軌道は、第1遷移円軌道における昇交点N及び降交点Sの中間地点Hと地心Cとを結ぶ軸回りに第1遷移円軌道を回転させたのと等価な円軌道であり、目的とする傾斜同期軌道ISOの昇交点赤径Ωkと同じ昇交点赤径Ωを持つ。このような軌道変換(Ω:Ωt+180°→Ωk,i:ik,e:0,a:rt)の結果、昇交点Nが、静止遷移軌道GTOの昇交点赤径Ωtに180°加えた経度の位置から傾斜同期軌道ISOの昇交点赤径Ωkの位置へと、地心Cの周りを回転する。ところで、この軌道変換において人工衛星に与えられる速度成分ΔVBbの方向は、第1の投入ルートにおける二回目の軌道変換の場合と同様に、合成ベクトル(V2−V1)の方向と表現することができ、その具体的な方向は、図6において太線の矢印にて示されている。また、速度成分ΔVBbの大きさも、第1の投入ルートにおける二回目の軌道変換の場合と同様に、sin(ik)・V1・√{2−2cosΔΩ}と表現することができる。なお、この軌道変換においてエンジンによって使用される推薬量ΔmBbは、上記推薬計算公式により決定される。
【0042】
そして、最後に、第1の投入ルートと同様にして、ホーマン軌道制御方法に従って、同一軌道面内において、第2遷移円軌道から目的の傾斜同期軌道ISOへと軌道の形状を整える(Ω:Ωk,i:ik,e:0→ek,a:rt→ak)。
【0043】
(第3の投入ルート)
第3の投入ルートでは、人工衛星を静止遷移軌道GTOへ投入した後、この静止遷移軌道GTOの遠地点に人工衛星が差し掛かったところで、エンジンから所定量の燃焼ガスを僅かな期間に噴射させることによって、後述の方向に向かって後述の速度成分を与えるように人工衛星を加速させ、その結果、以下に説明するような第1遷移円軌道へ人工衛星を投入する。図7は、第3の投入ルートにおける第1遷移円軌道の説明に用いられる概略図である。この図7に示されるように、第3の投入ルートにおける第1遷移円軌道は、静止遷移軌道GTOの昇交点赤径Ωtと同じ昇交点赤径Ωを持ち、静止遷移軌道GTOの軌道傾斜角itと同じ軌道傾斜角iを持つとともに、静止遷移軌道GTOのアポジ半径rtと同じ長さの軌道長半径aを持つ。このような軌道変換(Ω:Ωt,i:it,e:et→0,a:at→rt)の結果、人工衛星の軌道が、同一軌道面内において静止遷移軌道GTOから第1遷移円軌道に変換され、静止遷移軌道GTOの遠地点Aが、第1遷移円軌道の昇交点Nに変換される。ところで、静止遷移軌道GTOの遠地点Aにおいて人工衛星が持つ速度ベクトルをVtとしたとき、この軌道変換において人工衛星に与えられる速度成分ΔVCaは、図7の太線の矢印にて示されるように、Vtと同じ方向を向いている。また、第1遷移軌道の昇交点Nにおいて人工衛星が持つ速度ベクトルのスカラー量をV1とし、Vtがスカラー量であるとしたとき、この軌道変換において人工衛星に与えられる速度成分ΔVCaの大きさは、V1−Vtである。また、この軌道変換においてエンジンによって使用される推薬量ΔmCaは、上記推薬計算公式により決定される。
【0044】
続いて、この第1遷移円軌道上を移動中の人工衛星が後述の地点に差し掛かったところで、エンジンから所定量の燃焼ガスを僅かな期間に噴射させることによって、後述の方向に向かって後述の速度成分を与えるように人工衛星を再加速させ、その結果、以下に説明するような第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する。図8は、第2の投入ルートにおける第2遷移円軌道の説明に用いられる概略図である。この図8に示されるように、第3の投入ルートにおける第2遷移円軌道は、目的とする傾斜同期軌道ISOの昇交点赤径Ωkと同じ昇交点赤径Ωを持ち、同じ傾斜同期軌道ISOのの軌道傾斜角ikと同じ軌道傾斜角iを持つとともに、第1遷移円軌道の軌道長半径rtと同じ軌道長半径aを持つ。従って、この第2遷移円軌道は、第1遷移円軌道を含んで地心Cを中心とする仮想的な球面内に、存在することとなり、第1遷移円軌道と二点で交わる。この二点のうちの一点が、上述したエンジンの点火位置とされることにより、第1遷移円軌道を第2遷移円軌道へと変換することが可能となる。図8では、この点をPとして図示している。このような軌道変換(Ω:Ωt→Ωk,i:it→ik,e:0,a:rt)の結果、昇交点赤径Ωが、静止遷移軌道GTOの昇交点赤径Ωtから目的の傾斜同期軌道ISOの昇交点赤径Ωkへと変換されると同時に、軌道傾斜角iが、静止遷移軌道GTOの軌道傾斜角itから目的の傾斜同期軌道ISOの軌道傾斜角ikに変換される。ところで、第1遷移円軌道の地点Pにおいて人工衛星が持つ速度ベクトルをV1とし、第2遷移円軌道の地点Pにおいて人工衛星が持つ速度ベクトルV2としたとき、この軌道変換において人工衛星に与えられる速度成分ΔVCbは、合成ベクトル(V2−V1)の方向、つまり、図8の太線の矢印の方向を向いている。また、V1及びV2がスカラー量であるとしたとき、V1=V2であるので、この軌道変換において人工衛星に与えられる速度成分ΔVCbの大きさは、第1遷移円軌道の軌道面(すなわち静止遷移軌道GTOの軌道面)の法線ベクトルをJtとし、第2遷移円軌道の軌道面(すなわち目的の傾斜同期軌道ISOの軌道面)の法線ベクトルをJkとしたとき、V1・|Jk−Jt|である。なお、この軌道変換においてエンジンによって使用される推薬量ΔmCbは、上記推薬計算公式により決定される。
【0045】
そして、最後に、第1の投入ルートと同様にして、ホーマン軌道制御方法に従って、同一軌道面内において、第2遷移円軌道から目的の傾斜同期軌道ISOへと軌道の形状を整える(Ω:Ωk,i:ik,e:0→ek,a:rt→ak)。
【0046】
<投入ルートの選択方法について>
本実施形態では、打ち上げロケットの打ち上げ日時と打ち上げロケットの射場の位置とによって決定される静止遷移軌道GTOの軌道要素,傾斜同期軌道ISOの軌道要素,推薬の能力,及び、人工衛星の質量により、上述した第1乃至第3の投入ルートを経るために必要な推薬質量を算出し、この推薬質量に基づいて最適な投入ルートを1つ選択する。そこで、以下では、本実施形態に適用される具体例を一例挙げ、この具体例を用いて、最適な投入ルートについて説明する。
【0047】
図9は、第1乃至第3の投入ルートに共通する数値が列挙されている表である。この図9には、多数の数値が列挙されているが、このうち、後述する計算に必要な数値としては、地心重力定数μ,重力加速度g,ロケット分離時の人工衛星の質量msat0,エンジンが使用する推薬の比推力ISP0,静止遷移軌道GTOの軌道傾斜角itと離心率etと軌道長半径atとアポジ半径rtと遠地点速度Vt,並びに、準天頂軌道の傾斜同期軌道ISOの軌道傾斜角ikと離心率ekと軌道長半径akである。なお、この具体例においては、人工衛星に搭載されているエンジンには、異なる二種類の液体燃料を推薬として用いるアポジエンジンが、採用されている。
【0048】
図10及び図11は、人工衛星が第1の投入ルートを経て傾斜同期軌道ISOへ投入されるときに必要な全ての推薬質量を、静止遷移軌道GTOの昇交点赤径Ωtに対する傾斜同期軌道の昇交点赤径Ωkの変化量を10°ずつ変化させた場合について、それぞれ計算したときの計算結果を示す表である。これと同様に、図12及び図13は、人工衛星が第2の投入ルートを経る場合の全ての推薬質量の計算結果を示し、図14乃至図17は、人工衛星が第3の投入ルートを経る場合の全ての推薬質量の計算結果を示している。但し、図14及び図15の表は、互いに組み合わせることによって一つの表として機能する。これと同様に、図16及び図17の表も、互いに組み合わせることによって一つの表として機能する。これら図10乃至図17の表に列挙される数値は、上述した数式を用いて簡単に算出できるので、詳しく説明しない。また、図10乃至図13,図15,及び図17の表において最も下側の行に記載されている“合計推薬質量”の値が、静止遷移軌道GTOから傾斜同期軌道ISOへ軌道変換する際に必要な全ての推薬質量を、示している。
【0049】
図18は、Ω回転の変化量ΔΩを横軸に且つ推薬質量を縦軸にとった二次元座標上において、図10乃至図13,図15,及び図17の表の最も下側の行に列挙された合計推薬質量をプロットした結果を示すグラフである。
【0050】
この図18に示されるように、静止遷移軌道GTOから傾斜同期軌道ISOへ人工衛星を投入するために必要な推薬質量は、Ω回転における変化量ΔΩが0°から31°までは、第1の投入ルートを採用した場合に最も少なく、Ω回転における変化量ΔΩが31°から131°までは、第3の投入ルートを採用した場合に最も少なく、Ω回転における変化量ΔΩが131°から180°までは、第2の投入ルートを採用した場合に最も少なくなっている。
【0051】
なお、静止遷移軌道GTOと傾斜同期軌道の昇交点赤径の差が何れの大きさにあっても、静止遷移軌道GTOから任意の傾斜同期軌道ISOへ投入できるようにするためには、図18に示されるように、4トン弱の推薬を人工衛星に搭載せねばならない。しかし、我が国が開発したH−IIA型ロケットが静止遷移軌道GTOへ投入することができるペイロード(搭載物)の重量は5トンであり、増強型の場合は6トンである。このため、準天頂軌道へ投入される人工衛星が1トン級のものであるならば、打ち上げロケットは、その人工衛星を地球の重力圏外へ打ち上げることができる。
【0052】
従って、傾斜同期軌道ISOの昇交点に静止遷移円軌道GTOの遠地点が一致しないような日時に打ち上げロケットにて人工衛星を地球上から発射する場合であっても、静止遷移軌道GTOに投入された人工衛星を、任意の昇交点赤径Ωを持つ傾斜同期軌道ISOへ素早く投入することができる。また、打ち上げロケットの射場及び打ち上げ日時、並びに目的の傾斜同期軌道ISOの軌道要素が判明していれば、エンジン用の燃料(推薬)をできるだけ少なくすることができる。
【0053】
<投入ルート提案装置について>
次に、上述した第1乃至第3の投入ルートの何れが最適な投入ルートであるかを従事者に提案する投入ルート提案装置について、説明する。
【0054】
(ハードウエア構成)
図19は、投入ルート提案装置10を概略的に示す構成図である。この図19に示されるように、投入ルート提案装置10は、CPU[Central Processing Unit]10a,RAM[Random Access Memory]10b,表示装置10c,入力装置10d,FDD[Flexible Disk Drive]10e,CDD[Compact Disk Drive]10f,及びHDD[Hard Disk Drive]10gを、備えている。
【0055】
CPU10aは、この投入ルート提案装置10全体を制御する中央処理装置である。RAM10bは、CPU10aが各種プログラムを実行するに際しての作業領域が展開される主記憶装置である。表示装置10cは、CPU10aによって生成された画像を表示するための装置であり、具体的にはブラウン管ディスプレイや液晶ディスプレイである。入力装置10dは、オペレータからの入力を受け付けるための装置であり、具体的にはキーボードやマウスやタッチスクリーンである。FDD10e及びCDD10fは、コンピュータ可読媒体であるフレキシブルディスクFDやコンパクトディスクCDに対してデータやプログラムを読み書きする装置である。FDD10e及びCDD10fによって各ディスクFD,CDから読み出されたデータやプログラムは、HDD10gにインストールされる。
【0056】
HDD10gは、CPU10aによってRAM10b上に読み出されて実行される各種プログラムを格納している記録装置である。このHDD10gが格納しているプログラムには、ハードウエアとソフトウエアとを統合的に管理するためのオペレーションシステムプログラムの他、図20に示される処理内容を実現させるための投入ルート提案プログラム11が、含まれている。なお、この投入ルート提案プログラム11は、フレキシブルディスクFDやコンパクトディスクCDからHDD10gにインストールされたものであっても良い。
【0057】
(処理内容)
人工衛星に関する業務に携わっている従事者が、この投入ルート提案装置10の入力装置10dを操作して、投入ルート提案プログラム11をCPU10aに読み込ませると、投入ルート提案処理が開始される。
【0058】
投入ルート提案処理の開始後、最初のS101では、CPU10aは、静止遷移軌道GTOの軌道要素(at,et,it,Ωt,ωt,Mt)と傾斜同期軌道ISOの軌道要素(ak,ek,ik,Ωk,ωk,Mk)を入力するためのテキストボックスを備えた軌道要素入力画面(図示略)を、表示装置10cに表示する。その後、CPU10aは、軌道要素入力画面上のOKボタンがクリックされるまで待機する。なお、CPU10aが待機する間に、オペレータである従事者によって各テキストボックスに軌道要素が入力されても良い。そして、従事者が入力装置10dを操作することによってOKボタンがクリックされた場合には、CPU10aは、そのクリック時点において軌道要素入力画面の各テキストボックス内に入力されている軌道要素を取得する。
【0059】
次のS102では、CPU10aは、傾斜同期軌道ISOの昇交点赤径Ωkから静止遷移軌道GTOの昇交点赤径Ωtを差し引くことにより、昇交点赤径の差ΔΩ(=Ωk−Ωt)を算出する。
【0060】
次のS103では、CPU10aは、静止遷移軌道GTOから第1遷移円軌道への軌道変換に必要なパラメータを算出する。具体的には、CPU10aは、まず、静止遷移軌道GTOの軌道長半径at及び離心率etからアポジ半径rtを算出し(rt=at・(1+et))、次に、そのアポジ半径rtと軌道長半径atと地心重力定数μとから遠地点速度Vtを算出する(Vt=1000√[μ[(2/rt)−(1/at)]])。続いて、CPU10aは、静止遷移軌道GTOのアポジ半径rtから第1遷移円軌道の軌道長半径a1を算出し(a1=rt)、最後に、その軌道長半径a1と地心重力定数μとから第1遷移円軌道の速度V1を算出する(V1=1000√(μ/a1))。
【0061】
次のS104では、CPU10aは、S102において算出した昇交点赤径の差ΔΩについて、第1の投入ルートにおける二回の軌道変換において必要な増速量の合計を、算出する。なお、増速量は、上記図16のグラフにプロットされた合計推薬質量を算出する際に利用される数値であるとともに、この合計推薬質量に比例する。また、この合計推薬質量を算出する際に利用される数値としては、他に、重力加速度,推薬の比推力,及び、ロケット分離時の人工衛星質量があるが、これら数値は、各投入ルートに共通するものであるので、増速量は、合計推薬質量の代わりに、各投入ルート間の比較の対象となり得る。このS104において、CPU10aは、まず、静止遷移軌道GTOから第1遷移円軌道への軌道変換における軌道傾斜角の変化量を算出し(ΔiA=ik−it)、次に、静止遷移軌道GTOから第1遷移円軌道への軌道変換において必要な増速量を算出する(VAa=√[(Vt)2+(V1)2−2・(Vt)・(V1)・cosΔiA])。続いて、CPU10aは、第1遷移円軌道から第2遷移円軌道への軌道変換において必要な増速量を算出し(VAb=sin(ik)・V1・√(2−2cosΔΩ))、最後に、二回の軌道変換における増速量の合計を算出する(ΔVA=VAa+VAb)。
【0062】
次のS105では、CPU10aは、S102において算出した昇交点赤径の差ΔΩについて、第2の投入ルートにおける二回の軌道変換において必要な増速量の合計を、算出する。具体的には、CPU10aは、まず、静止遷移軌道GTOから第1遷移円軌道への面外軌道変換における軌道傾斜角の変化量を算出し(ΔiB=ik+it)、次に、静止遷移軌道GTOから第1遷移円軌道への軌道変換において必要な増速量を算出する(VAa=√[(Vt)2+(V1)2−2・(Vt)・(V1)・cosΔiB])。続いて、CPU10aは、第1遷移円軌道から第2遷移円軌道への軌道変換において必要な増速量を算出し(VBb=sin(ik)・V1・√(2−2cosΔΩ))、最後に、二回の軌道変換における増速量の合計を算出する(ΔVB=VBa+VBb)。
【0063】
次のS106では、CPU10aは、S102において算出した昇交点赤径の差ΔΩについて、第3の投入ルートにおける二回の軌道変換において必要な増速量の合計を、算出する。具体的には、CPU10aは、まず、静止遷移軌道GTOから第1遷移円軌道への面外軌道変換において必要な増速量を算出し(ΔVCa=V1−Vt)、次に、第1遷移円軌道の軌道面の法線ベクトルを算出し(Ja=(Jax,Jay,Jaz)=(sin(it)・cos(Ωt),sin(it)・sin(Ωt),cos(it)))、更に、第2遷移円軌道の軌道面の法線ベクトルを算出する(Jb=(Jbx,Jby,Jbz)=(sin(ik)・cos(Ωk),sin(ik)・sin(Ωk),cos(ik)))。続いて、CPU10aは、第1遷移円軌道から第2遷移円軌道への面外軌道変換において必要な増速量を算出し(ΔVCb=V1・|Jk−Jt|)、最後に、最後に、二回の軌道変換における増速量の合計を算出する(ΔVC=VCa+VCb)。
【0064】
次のS107では、CPU10aは、合計増速量が最も小さい投入ルートを特定する。
【0065】
次のS108では、CPU10aは、各投入ルートの計算結果(合計増速量など)を含むとともに、S107において特定した最適な投入ルートを定義する情報(例えば、各投入ルートの合計増速量のなかから最適な投入ルートの合計増速量だけを指し示す矢印)を含む結果提示画面を、表示装置10cに表示する。なお、CPU10aは、このS108において、推薬量,噴射時間,人工衛星質量などを示す情報を算出して、算出結果を上記結果提示画面に含める処理を行っても良い。また、CPU10aは、近地点引数ωや平均近点離角M,及び、打ち上げロケットの射場の位置などから、打ち上げロケットの打ち上げ日時や、軌道変換の実行時刻などの飛行計画を算出して、算出結果を上記結果提示画面に含める処理を行っても良い。CPU10aは、このS108のステップの実行後、投入ルート提案処理を終了する。
【0066】
上述したような投入ルート提案処理が実行されるので、従事者は、静止遷移軌道GTOと傾斜同期軌道ISOの軌道要素をこの投入ルート提案装置10に入力することにより、最適な投入ルートを示す結果提示画面を表示装置10cに表示させることができる。このため、従事者は、複雑な計算を手作業にて行うことなく、簡単に、最適な投入ルートを知ることができる。
【0067】
(付記1)
人工衛星を待機軌道から静止軌道へ投入するための静止遷移軌道から、準天頂軌道の持つ多数の傾斜同期軌道のうちの一つに向けて人工衛星を投入するための衛星投入方法であって、
前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入し、その後に、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する第1の投入ルート、
前記静止遷移軌道から、その遠地点に降交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入し、その後に、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する第2の投入ルート、及び、
前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに軌道傾斜角が前記静止遷移軌道と一致する第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入し、その後に、その第1遷移円軌道から、その第1遷移軌道と同じ軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径及び軌道傾斜角を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する第3の投入ルート
のうちの1つに、前記人工衛星を投入する
ことを特徴とする衛星投入方法。
【0068】
(付記2)
前記第1乃至第3の投入ルートのうち、前記静止遷移軌道から前記傾斜同期軌道へ投入するまでに必要な推薬量が最も少ない投入ルートに、前記人工衛星を投入する
ことを特徴とする付記1記載の衛星投入方法。
【0069】
(付記3)
前記静止遷移軌道から前記第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際には、前記人工衛星に搭載されるロケットを、作動させる
ことを特徴とする付記1又は2記載の衛星投入方法。
【0070】
(付記4)
前記第1遷移円軌道から前記第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際には、前記人工衛星に搭載されるロケットを、作動させる
ことを特徴とする付記1又は2記載の衛星投入方法。
【0071】
(付記5)
前記ロケットは、アポジロケットである
ことを特徴とする付記3又は4記載の衛星投入方法。
【0072】
(付記6)
前記アポジロケットは、アポジエンジンである
ことを特徴とする付記5記載の衛星投入方法。
【0073】
(付記7)
前記アポジロケットの作動時に噴射されるガスは、燃焼ガスである
ことを特徴とする付記5記載の衛星投入方法。
【0074】
(付記8)
前記燃焼ガスは、異なる二種類の液体燃料を燃焼して得られる二液燃焼ガスである
ことを特徴とする付記7記載の衛星投入方法。
【0075】
(付記9)
人工衛星を待機軌道から静止軌道へ投入するための静止遷移軌道から、準天頂軌道の持つ多数の傾斜同期軌道のうちの一つに向けて人工衛星を投入する計画を立案する際に用いられる投入ルート提案装置であって、
各種画面を表示するための表示部と、
各種情報を入力するための入力部と、
前記静止遷移軌道及び前記傾斜同期軌道の軌道要素を定義する情報が前記入力部から入力されると、所定画面を前記表示部に表示させる制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第1の投入ルートについてのルート情報として算出し、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に降交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第2の投入ルートについてのルート情報として算出し、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに軌道傾斜角が前記静止遷移軌道と一致する第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移軌道と同じ軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径及び軌道傾斜角を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第3の投入ルートについてのルート情報として算出し、所定の抽出条件に基づいて、前記第1乃至第3の投入ルートの各ルート情報のなかから1つのルート情報を抽出し、
抽出したルート情報に対応する投入ルートを定義する情報を前記所定画面に含める
ことを特徴とする投入ルート提案装置。
【0076】
(付記10)
コンピュータに対し、
人工衛星を待機軌道から静止軌道へ投入するための静止遷移軌道の軌道要素を定義する情報,及び、準天頂軌道の持つ多数の傾斜同期軌道のうちの一つの軌道要素を定義する情報を、受付させ、
前記両情報を受け付けた場合には、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第1の投入ルートについてのルート情報として算出させ、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に降交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第2の投入ルートについてのルート情報として算出させ、前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに軌道傾斜角が前記静止遷移軌道と一致する第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移軌道と同じ軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径及び軌道傾斜角を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第3の投入ルートについてのルート情報として算出させ、
所定の抽出条件に基づいて、前記第1乃至第3の投入ルートの各ルート情報のなかから1つのルート情報を抽出させ、
抽出されたルート情報に対応する投入ルートを定義する情報を含む画面を表示させる
ことを特徴とする投入ルート提案プログラム。
【0077】
(付記11)
コンピュータに対し、
人工衛星を待機軌道から静止軌道へ投入するための静止遷移軌道の軌道要素を定義する情報,及び、準天頂軌道の持つ多数の傾斜同期軌道のうちの一つの軌道要素を定義する情報を、受付させ、
前記両情報を受け付けた場合には、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第1の投入ルートについてのルート情報として算出させ、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に降交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第2の投入ルートについてのルート情報として算出させ、前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに軌道傾斜角が前記静止遷移軌道と一致する第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移軌道と同じ軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径及び軌道傾斜角を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第3の投入ルートについてのルート情報として算出させ、
所定の抽出条件に基づいて、前記第1乃至第3の投入ルートの各ルート情報のなかから1つのルート情報を抽出させ、
抽出されたルート情報に対応する投入ルートを定義する情報を含む画面を表示させる
投入ルート提案プログラムを格納した
ことを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【0078】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、準天頂軌道の傾斜同期軌道の昇交点に静止遷移軌道の遠地点が一致しないような日時に人工衛星を打ち上げる場合でも、できるだけ少ない燃料にて、静止遷移軌道に投入された人工衛星を、任意の昇交点赤径を持つ傾斜同期軌道へ素早く投入することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 軌道要素を説明するための説明図
【図2】 準天頂軌道を説明するための説明図
【図3】 第1の投入ルートの第1遷移円軌道を説明するための説明図
【図4】 第1の投入ルートの第2遷移円軌道を説明するための説明図
【図5】 第2の投入ルートの第1遷移円軌道を説明するための説明図
【図6】 第2の投入ルートの第2遷移円軌道を説明するための説明図
【図7】 第3の投入ルートの第1遷移円軌道を説明するための説明図
【図8】 第3の投入ルートの第2遷移円軌道を説明するための説明図
【図9】 第1乃至第3の投入ルートに共通するパラメータが列挙された表
【図10】 第1の投入ルートの具体例を示す表
【図11】 第1の投入ルートの具体例を示す表
【図12】 第2の投入ルートの具体例を示す表
【図13】 第2の投入ルートの具体例を示す表
【図14】 第3の投入ルートの具体例を示す表
【図15】 第3の投入ルートの具体例を示す表
【図16】 第3の投入ルートの具体例を示す表
【図17】 第3の投入ルートの具体例を示す表
【図18】 第1乃至第3の投入ルートの比較結果
【図19】 投入ルート提案装置を概略的に示す構成図
【図20】 投入ルート提案処理の内容を示すフローチャート
【図21】 静止遷移軌道の遠地点と傾斜同期軌道の昇交点が一致する場合の面外軌道変換の説明図
【符号の説明】
GTO 静止遷移軌道
ISO 傾斜同期軌道
GEO 静止軌道
EP 赤道面
OP 軌道面
IP1〜3 傾斜同期軌道の軌道面
C 地心
A 遠地点
N 昇交点
S 降交点
10 投入ルート提案装置
10a CPU
10b RAM
10c 表示装置
10d 入力装置
10e FDD
10f CDD
10g HDD
11 投入ルート提案プログラム
Claims (6)
- 人工衛星を待機軌道から静止軌道へ投入するための静止遷移軌道から、準天頂軌道の持つ多数の傾斜同期軌道のうちの一つに向けて人工衛星を投入するための衛星投入方法であって、
前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入し、その後に、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する第1の投入ルート、
前記静止遷移軌道から、その遠地点に降交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入し、その後に、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する第2の投入ルート、及び、
前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに軌道傾斜角が前記静止遷移軌道と一致する第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入し、その後に、その第1遷移円軌道から、その第1遷移軌道と同じ軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径及び軌道傾斜角を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する第3の投入ルート
のうちの1つに、前記人工衛星を投入する
ことを特徴とする衛星投入方法。 - 前記第1乃至第3の投入ルートのうち、前記静止遷移軌道から前記傾斜同期軌道へ投入するまでに必要な推薬量が最も少ない投入ルートに、前記人工衛星を投入する
ことを特徴とする請求項1記載の衛星投入方法。 - 前記静止遷移軌道から前記第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際には、前記人工衛星に搭載されるロケットを、作動させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の衛星投入方法。 - 前記第1遷移円軌道から前記第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際には、前記人工衛星に搭載されるロケットを、作動させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の衛星投入方法。 - 人工衛星を待機軌道から静止軌道へ投入するための静止遷移軌道から、準天頂軌道の持つ多数の傾斜同期軌道のうちの一つに向けて人工衛星を投入する計画を立案する際に用いられる投入ルート提案装置であって、
各種画面を表示するための表示部と、
各種情報を入力するための入力部と、
前記静止遷移軌道及び前記傾斜同期軌道の軌道要素を定義する情報が前記入力部から入力されると、所定画面を前記表示部に表示させる制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第1の投入ルートについてのルート情報として算出し、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に降交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第2の投入ルートについてのルート情報として算出し、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに軌道傾斜角が前記静止遷移軌道と一致する第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移軌道と同じ軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径及び軌道傾斜角を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第3の投入ルートについてのルート情報として算出し、
前記第1乃至第3の投入ルートの各ルート情報のうち、前記静止遷移軌道から前記傾斜同期軌道へ投入するまでに必要な推薬量が最も少ない投入ルートのルート情報を抽出し、
抽出したルート情報に対応する投入ルートを定義する情報を前記所定画面に含める
ことを特徴とする投入ルート提案装置。 - コンピュータに対し、
人工衛星を待機軌道から静止軌道へ投入するための静止遷移軌道の軌道要素を定義する情報,及び、準天頂軌道の持つ多数の傾斜同期軌道のうちの一つの軌道要素を定義する情報を、受付させ、
前記両情報を受け付けた場合には、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第1の投入ルートについてのルート情報として算出させ、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に降交点が一致するとともに前記傾斜同期軌道と同じ軌道傾斜角を持つ第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移円軌道と同じ軌道傾斜角及び軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径を持つ第2遷移円軌道へ人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第2の投入ルートについてのルート情報として算出させ、
前記軌道要素を定義する情報に基づいて、前記静止遷移軌道から、その遠地点に昇交点が一致するとともに軌道傾斜角が前記静止遷移軌道と一致する第1遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量,及び、その第1遷移円軌道から、その第1遷移軌道と同じ軌道長半径を持つとともに前記傾斜同期軌道と同じ昇交点赤径及び軌道傾斜角を持つ第2遷移円軌道へ前記人工衛星を投入する際に必要な増速量の和を、第3の投入ルートについてのルート情報として算出させ、
前記第1乃至第3の投入ルートの各ルート情報のうち、前記静止遷移軌道から前記傾斜同期軌道へ投入するまでに必要な推薬量が最も少ない投入ルートのルート情報を抽出させ、
抽出されたルート情報に対応する投入ルートを定義する情報を含む画面を表示させる
ことを特徴とする投入ルート提案プログラム。
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JP2003078496A JP3947121B2 (ja) | 2003-03-20 | 2003-03-20 | 衛星投入方法,投入ルート提案装置及び投入ルート提案プログラム |
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