JP3946879B2 - フォトニック結晶材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光情報処理、光伝送、光学器械等に用いられるレンズ、プリズム、ビームスプリッター、波長分波器、光集積回路等の様々な光デバイス及び光学部品等を構成する基本材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レンズ、プリズムに代表されるような光ビームの伝搬方向を制御する素子では、外側(通常は空気)と素子側材料の屈折率の違いに応じてビームの伝搬方向が変化する、いわゆる屈折現象を利用している。この場合、入射角に対する屈折角の大きさは、境界面の両側の材料の屈折率の比によって決まる(スネルの法則)。現実に存在する物質の屈折率は可視光、近赤外光の波長領域では1から4程度の範囲に限定されており、そのために屈折率の異なる境界面での屈折現象におけるビーム伝搬方向の変化も制限を受けている(金属等のように著しく光の吸収が大きい物質では屈折率は大きくなり得るが、その場合には吸収が大きいために光は実効的に材料の中を伝搬することができないので、ここでの状況では使用することができない。光吸収が小さい範囲で考えると物質の屈折率は上記の範囲に限定されている)。この制限のために、屈折現象は図1に示されているように、互いに屈折率の異なる媒質1および媒質2の境界で入射光の屈折現象を生じ、例えば、媒質2の屈折率(通常のガラスでは1.5程度)が媒質1の屈折率(空気では1)よりも大きい場合には屈折角は入射角よりも小さくなる。すなわち屈折角は入射角と同じ符号となる。また、プリズムでは、物質の屈折率の波長依存性を利用してビームの伝搬方向を波長によって変化させて分光しているが、一般に物質固有の屈折率の波長依存性は小さく、そのために波長による伝搬方向の変化も小さい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようにレンズ、プリズムなどのような光ビームの伝搬方向を制御する素子では、現実に存在する物質固有の屈折率の大きさ及び屈折率の波長依存性の大きさによる制限を受けている。本発明の目的は、この物質固有の性質に制限されることなくビームの伝搬方向を変化させ得る人工的な材料構成を与えることにあり、特に従来物質では実現不可能であった屈折角が負になるような屈折材料の実現も可能にすることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明においては以下の各手段を用いたものである。すなわち、
請求項1においては、外部から入射した光ビームを、屈折角が負の屈折角となる方向、または空気から入射した場合に屈折角が入射角よりも大きくなる方向に伝搬する光屈折材料として用いるためのフォトニック結晶材料であって、外部から光を入射した場合に、その光によって誘起される0次回折波である透過波がフォトニックバンドギャップが開いている方向に存在し、高次の回折波がフォトニックバンドギャップ外に存在し、該高次の回折波のみが伝搬する入射方向が存在するようにしたフォトニックバンド構造を持つようにしている。
【0005】
請求項2においては、波数ベクトル面の形状が、外向きに凸な形状であることを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶材料としている。
【0006】
請求項3においては、上記フォトニックバンド構造において異方的なバンドギャップが開く効果で、折り返しにより傾きが負になっているバンドが一つのみ残る状態になっており、先が尖った星型の形をとる波数ベクトル面の形状が、バンドギャップが開くことにより円形に変わっており、光ビームの伝搬方向が前記波数ベクトル面の法線方向であり、かつ光の伝搬方向に関してはその屈折角が負になっている状態にあることを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶材料としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
上記のように、本発明では、2次元または3次元の人工的屈折率変調構造を用いて物質固有の屈折率に制限されない屈折を実現することを目的としている。このような屈折率変調構造は、一般にフォトニック結晶(photonic crystal)と呼ばれ、このような周期構造を有する結晶中での光は、通常の結晶中の電子と同じように一種のバンド構造を形成することが知られている。以下この種の結晶における屈折現象についての理論的考察を最初に行なう。
【0008】
図2に示すような例えば屈折率3.6の媒質に空気の円筒状の穴を開けた2次元三角格子フォトニック結晶(円筒部とそのまわりの媒質の体積比は1:1)のTE波(磁界ベクトルがz方向にあるモード)の分散関係、すなわち波数ベクトルと規格化周波数の関係を図3に示す。以下では穴の周期aで規格化した規格化周波数ωa/2πcを周波数として用いる。ここでcは光速である。通常の物質での振動数と波数ベクトルの分散関係は単純な比例関係になるが、このようにフォトニック結晶における分散関係は通常の物質とは大きく異なる。物質中での光ビームの伝搬は、この分散関係から決定されることから、フォトニック結晶中でのビーム伝搬は通常物質とは大きく異なることが予想される。ここで、このようなフォトニック結晶を構成する材料としては、光学的損失が少なく、屈折率差が大きく採れる材料が望ましく、例えば、高屈折率側の材料としては、Si、GaAs等の半導体材料(屈折率が3.4乃至3.6程度)、低屈折率側の材料としては単なる空隙(すなわち空気、屈折率が1)またはSiO2(屈折率が1.46)等が用いられる。ここで一般的にフォトニック結晶中での光ビームの伝搬がどのように決定されるかを図によりまず説明する。
【0009】
フォトニック結晶中での光ビーム伝搬は、複屈折性の誘電体中の光ビーム伝搬と同じように扱うことができる。そこではじめに複屈折性を有する誘電体の場合の光ビーム伝搬を図4に示す。図4は入射側(空気)と出射側(複屈折性媒質)における振動数一定の波数ベクトル面(等周波数面)をプロットしたものである。通常の物質では、波数ベクトル面は一つの円となるが、複屈折性の物質では二つの楕円となる。
【0010】
ここで、空気側から光ビームを、ある入射角を持たせて傾けて入射した場合を考える。境界面はx=0であり、入射面はyz面である。スネルの法則により境界面での波数ベクトルkの接線成分は保存されるため、複屈折媒質側で誘起される光ビームの波数ベクトルkは、図4に示した垂線、すなわちスネル線、と二つの楕円との交点と円の中心とを結ぶベクトルとして与えられる。一般に複屈折性媒質では交点は4点存在する。通常の物質では波数ベクトルkの方向と光ビームの伝搬方向は一致するが、このように波数ベクトル面が非円であるような場合には両者は一般に異なる。光ビームの伝搬は群速度ベクトルvδの方向であるが、群速度ベクトルは
【0011】
【数1】
【0012】
で与えられ、この方向は波数ベクトル面の法線方向となる。従って、図4の複屈折材料側(射出側)となる領域では4点の波数ベクトルに対応する光ビームの伝搬方向は図の矢印の方向となる。この中で二つは伝搬方向が逆向きであり物理的に意味の無い解に相当するため、最終的に複屈折物質内に誘起される光ビームはいわゆる常光線と異常光線の二本のみとなる。
【0013】
フォトニック結晶の場合の波数ベクトル面は、その材料のバンド構造から計算することができるが、バンドの折り返しのために、図5のように複雑な形になる。図5ではバンドの折り返しの効果を見るために、バンドギャップが無限に小さい空格子フォトニック結晶の場合についてプロットした。この場合の光ビームの伝搬は複屈折物質の時と同じように入射ビームの波数ベクトルkの接線成分から垂線スネル線を引き、第1ブリルアンゾーン内の波数ベクトル面との交点を求めると、フォトニック結晶の場合にも一般に複数の点で交点が生じる。この場合もビームの伝搬方向は(数1)で示したvδで与えられ、波数ベクトルkの法線方向が伝搬方向となる。物理的に意味の無い解を除くと、この場合、図5の実線の矢印AおよびBで示すように二本のビームが誘起されることがわかる。
【0014】
このようにフォトニック結晶ではバンドの折り返しに伴う複屈折が生じる。このフォトニック結晶における光ビーム伝搬と複屈折性物質における光ビーム伝搬とは以下のような点で本質的に異なる。
【0015】
1)複屈折においては二本に別れるビームは、それぞれ常光線、異常光線と呼ばれるが、各々が独立な偏光面を持つため、入射光のビームを特定な偏光に選ぶことにより、どちらかの一本だけを選択することができる。一方フォトニック結晶の場合には、図5から知れるように偏光等によって複数に分解したビームの一本だけを選択することはできない。
【0016】
2)複屈折におけるビームの伝搬方向は常光線、異常光線で異なるが、それぞれは通常物質における屈折角と大きくは異ならない。一方フォトニック結晶におけるビームの伝搬方向は、図5において見られるように複数本のビームの内の一部については、従来の物質の屈折角とは大きく異なる角度をとる。
【0017】
3)複屈折の場合には光ビームの分解は二本までであるが、フォトニック結晶の場合にはビームはさらに大きな数に分解することもある。
【0018】
このようにフォトニック結晶におけるビーム伝搬は、従来の物質におけるビーム伝播に比べると大きく異なる性質を持つことがわかる。この違いは、結局、光ビームの入射に対して、フォトニック結晶が一種の回折格子として働いていることに因る。図6に透過型回折格子において光ビームが分解される様子を図示する。回折格子の場合には入射した光ビームは透過光と複数の回折光に分解される。フォトニック結晶の場合にも、回折格子と同じように複数に分解された光ビームを透過光(0次光)と回折光に分類することができる。透過光は図5において原点を中心とする円弧と垂線、すなわちスネル線、が交点を結ぶ点に相当する。図5からわかるように透過光の伝搬方向は通常物質における屈折光の伝搬方向と大きく異ならない。一般に透過型回折格子においては必ず透過光が最大の強度を持ち、他の回折光は高次になればなるほど強度が小さくなるが、フォトニック結晶の場合にも同様に一般には透過光が最大の強度を持つ。これは外部から平面波として入射した光ビームが、フォトニック結晶内のブロッホ波を誘起する場合に振幅の接続条件を書くと下記の(数2)および(数3)明らかになる。
【0019】
【数2】
【0020】
【数3】
【0021】
波数ベクトルkには拡張されたスネルの法則を適用する。上の式でΨは電磁界ベクトルの成分を意味し、A0は入射波の振幅、k0は入射波の波数ベクトル、Gはフォトニック結晶の逆格子ベクトル、β、α、CG は、それぞれ逆格子ベクトルで反射波、屈折波をフーリエ展開した時の展開係数である。Ψはフォトニック結晶中のブロッホ波である。これを各フーリエ成分についての接続条件を示すと(数4)の関係となる。
【0022】
【数4】
【0023】
上の(数4)式の内容を定性的に述べると、入射波のパワーは、まずG=0のブロッホ波(透過波)にトランスファーされ、しかる後に他のG≠0のブロッホ波(回折波)に分配される、ということを意味している。即ち、常にG=0の透過波に主要なパワーが引き渡される。これは透過型回折格子の特性において常に0次回折光が最大パワーになることと同値である。
【0024】
(数4)式で明らかなように、外から入射した平面波の振幅はG=0のブロッホ波に接続され、このG=0のブロッホ波から他のG≠0のブロッホ波にパワーが移されることがわかる。即ち、G=0のブロッホ波が誘起されない場合には他のG≠0のブロッホ波も誘起されない。
【0025】
以上からわかるように、フォトニック結晶の場合のビームの伝搬は回折格子におけるビームの分解と似たような現象が起こる。そしてこれを屈折として見た場合には、回折光の中には通常の物質における屈折と大きく異なるものも現れるが、主要なエネルギーを伝搬する透過光は通常の物質における屈折と大差ない。
【0026】
以上が通常のフォトニック結晶における屈折現象の理論的考察である。従って新しいフォトニック結晶を光屈折材料として用いる場合には、主要なエネルギーを伝搬する光ビームの屈折角が通常の物質における屈折角と異なるような状況を実現しなければならないことが知れる。
【0027】
本発明では、フォトニック結晶の構造に特定の条件を課すことにより、透過光を誘起することなく一本の回折波のみを誘起することを可能とするものである。また別の条件により透過光そのものの屈折角が通常の物質における屈折角と大きく異なるような状況を実現するものでもある。
【0028】
1)(数4)式の接続条件において、通常の場合には全てのフーリエ成分は伝搬解であると考えたが、G=0の透過光成分が減衰解、即ちエバネッセント解になるように選ぶことにより、伝搬解として回折光のみが一本だけ残るようにすることができる。この場合、通常のフォトニック結晶や回折格子のようにビームの分解が起こらず、出射側の媒質(即ちフォトニック結晶)内では、光ビームは一本だけが誘起されるので、見かけ上は通常物質の屈折現象と同じ現象として扱うことができる。しかも、前述のように誘起される回折による見掛け上の屈折角は、通常の物質の屈折角とは大きく異なる値をとることができ、負の屈折角や空気から入射した場合に屈折角の方が入射角より浅くなる等の現象が実現できる。G=0の成分をエバネッセントにするためには、G=0の成分がフォトニックバンドギャップ内に入るようにするか、または全反射条件を満たすようにすれば良い。具体的な配置については後述の実施例1および実施例2で説明する。
【0029】
2)一般にバンドギャップが開くと波数ベクトル面の形状が円形に近づくことが、通常の結晶の電子状態に関しては知られている。同じ現象がフォトニック結晶でも起こり、バンドギャップが大きく開くと、その周辺の周波数領域で波数ベクトル面の形状が円形に近づく。高次のバンドでは、バンドの折り返し効果により波数ベクトル面の形状は先の尖った星形の形をとるが、この星形の形状がバンドギャップが開くことにより円形に変わっていくことになる。光ビームの伝搬方向は波数ベクトル面の法線方向であるので、波数ベクトル面の形状が星形から円形になると光ビームの伝搬方向は大きく変化する。この効果により、屈折角を負にすることも可能である。なお、フォトニックバンド構造自体の制御には周期構造の単位構造および周期を変化させるか、あるいは周期構造を構成する材料そのものを変えることにより屈折率を変える方法等が知られている。
【0030】
上記の1)と2)の作用により、フォトニック結晶内に存在する光ビームが一本だけであり、かつ、その光ビームの屈折角を大きく制御することが可能である状況を実現できる。この場合のフォトニック結晶へ光ビームを入射した場合の屈折の様子を模式的に図7に示す。この図のようにフォトニック結晶では実線で示すような負の屈折角を示す場合や、矢印破線で示すように屈折率1の空気から入射した場合に屈折角が入射角よりも大きくなる等の、通常の光学系ではあり得ない屈折角が可能になる。また、この場合の屈折角は結晶構造によって制御可能であり、材料に制限されずに構造パラメーターによって設計することができる。
【0031】
具体的な配置、条件については実施例で説明するが、上記1)および2)による作用は、多くの場合において両者が同時に働くことにより、大きな制御が可能になる。1)の効果は主にビームを一本だけにすることに用いられ、2)の効果は導波の方向を制御するのに用いられる。
【0032】
【実施例1】
以下、図面を用いて本発明のフォトニック結晶を用いた光屈折材料の構成例について説明する。図2及び図3に示した2次元三角格子フォトニック結晶の場合を例にとり、透過波をエバネッセント波にする構成例について説明する。
【0033】
2次元フォトニック結晶の作製方法としては多くの方法が提案されているが、例えば半導体基板上に電子ビームリソグラフィを用いて三角格子のレジストパターンを形成し、これを用いて垂直性のよいドライエッチングにより半導体に円柱上の深い穴を開けることにより図2のような2次元三角格子フォトニック結晶を作成することが可能である。フォトニック結晶の特性の波長依存性は全て(穴の周期/波長)でスケールされるので、使用波長に応じて穴の周期を変えることにより所望の波長で動作するフォトニック結晶を作成することが出来る。例えば1.5μmを使用波長とすると、ω=0.4で動作するフォトニック結晶を作成する場合には穴の周期は0.6μmにすれば良い。このフォトニック結晶についてω=0.35の場合の波数ベクトル面を図8に示す。図9に同じ平均屈折率を持つ空格子結晶の場合を示す。これはバンドの折り返しの効果のみが存在し、バンドギャップが開く効果が入っていない場合に相当する。図9の場合について見てみると、逆方向に進行する非物理的な解を捨てると入射平面波によって、二つのブロッホ波(A、B)が誘起されることがわかる。A波は透過波であり、B波は回折波である。図8の場合では誘起される波は一つしかない。この波は空格子の場合のB波に相当する波である。図8からわかるようにこの場合、透過波成分が垂線と交点を持つはずの所にバンドギャップが生じている。即ち、この場合はG=0の透過波はエバネッセント波になっている。従って、この場合、光ビームの入射によって生じる屈折波は図8に示された一本だけであり、その屈折角は負になっている。図8では原理を示すためにギャップが大きく開いていない場合について示したが、同じフォトニック結晶において他の周波数領域で、もっと広くギャップが開き、全角度範囲でビームは回折波だけであり、かつ屈折角が負になる領域が存在する。図10はω=0.45の場合の波数ベクトル面を示す。この場合の入射角と屈折角の関係は図11に示すようになり、屈折角は全範囲で負になっている。
【0034】
このような状況は、一般に図3のバンド図においてハッチした領域において実現する。図8の例は一番下のハッチング領域にあたり、図10のように広い範囲で負の屈折を示す状態は2番目のハッチング領域に対応する。フォトニック結晶ではバンドの折り返しによって傾きが負になっているバンド(上に向かって山型になっているバンド)が存在するが、このようなバンドは通常同じ周波数に二つ以上存在する。ところがその内の一つを除いて他のバンドに対してバンドギャップが開き(これは即ち異方的にバンドギャップが開くことを意味する)、結果として上に向かって山型になるバンドが一つだけ存在する状態が即ち、図7のような負の屈折が実現するための必要条件である。このような条件は、2次元三角格子だけでなく一般のフォトニック結晶においても広く成立する。
【0035】
【実施例2】
次に図12に示す屈折率3.6の媒質に空気の円筒状の穴を開けた2次元正方格子フォトニック結晶(円筒部とそのまわりの媒質の体積比は1:1)の場合を例にとり、バンドギャップが開く効果により波数ベクトル面の形状が変形する構成例について説明する。このフォトニック結晶についてω=0.30の場合のTE波についての波数ベクトル面を図13に示す。図14に同じ平均屈折率を持つ空格子結晶の場合を示す。これはバンドの折り返しの効果のみが存在し、バンドギャップが開く効果が入っていない場合に相当する。図14の場合について見てみると、入射平面波によって励起される波は2本あり、それぞれが透過波と回折波に相当する。次に図13を見てみると、この場合誘起される波は一本だけである。ω=0.26の場合には波数ベクトル面の形状は図14の場合と似たような形状になっており、ビームの伝搬方向は図14の場合と同じであり屈折角は正であるが、バンドギャップに近い周波数ω=0.30〜0.32では、波数ベクトル面の形状が円に近づき、屈折角は負になっている。
【0036】
以上の例では2次元三角格子及び正方格子フォトニック結晶を例に取り説明を行ったが、請求項に示す条件を満たす限り他の周期構造においても同様の効果が期待されることは自明である。また3次元フォトニック結晶においても同様の効果が期待できる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明により、従来物質では実現不可能であった負の屈折角あるいはスネルの法則を満足する屈折角よりの大きな屈折角になるような光学材料を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】通常の物質における屈折現象を示す模式図。
【図2】2次元三角格子のフォトニック結晶構造模式図。
【図3】図2で示した2次元三角格子フォトニック結晶のTE波のフォトニックバンド構造図。
【図4】複屈折性媒質へ光ビームを入射した場合の屈折角を求める波数ベクトル図。
【図5】バンドギャップが開いていない空格子2次元三角格子フォトニック結晶へ光ビームを入射した場合の屈折角を求める等周波数面図。
【図6】透過型回折格子におけるビーム伝搬の様子を示す模式図。
【図7】本発明によるフォトニック結晶において空気から光ビームを入射した場合の屈折現象を示す模式図。
【図8】図2、図3と同じ2次元三角格子フォトニック結晶においてω=0.35の光を入射した場合の屈折角を求める波数ベクトル面図。
【図9】図8と同じ条件で同じ周波数の光を平均屈折率が同じ空格子2次元三角格子結晶に入射した場合の屈折角を求める波数ベクトル面図。
【図10】図2、図3と同じ2次元三角格子フォトニック結晶においてω=0.45の光を入射した場合の屈折角を求める波数ベクトル面図。
【図11】図10の条件において入射角と反射角の関係を示す図。
【図12】2次元正方格子フォトニック結晶の構造模式図。
【図13】図12で示した2次元正方格子フォトニック結晶へω=0.30の光(TE波)を入射した場合の屈折角を求める波数ベクトル面図である。
【図14】図13と同じ条件で同じ周波数の光を平均屈折率が同じ空格子2次元正方格子フォトニック結晶に入射した場合の屈折角を求める波数ベクトル面図。
【符号の説明】
1 低屈折率の媒質
2 高屈折率の媒質
Claims (3)
- 外部から入射した光ビームを、屈折角が負の屈折角となる方向、または空気から入射した場合に屈折角が入射角よりも大きくなる方向に伝搬する光屈折材料として用いるためのフォトニック結晶材料であって、
外部から光を入射した場合に、その光によって誘起される0次回折波である透過波がフォトニックバンドギャップが開いている方向に存在し、高次の回折波がフォトニックバンドギャップ外に存在し、該高次の回折波のみが伝搬する入射方向が存在するようにしたフォトニックバンド構造を持つことを特徴とするフォトニック結晶材料。 - 波数ベクトル面の形状が、外向きに凸な形状であることを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶材料。
- 上記フォトニックバンド構造において異方的なバンドギャップが開く効果で、折り返しにより傾きが負になっているバンドが一つのみ残る状態になっており、先が尖った星型の形をとる波数ベクトル面の形状が、バンドギャップが開くことにより円形に変わっており、光ビームの伝搬方向が前記波数ベクトル面の法線方向であり、かつ光の伝搬方向に関してはその屈折角が負になっている状態にあることを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶材料。
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