JP3946102B2 - 翻訳仲介システムおよび方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は翻訳仲介システムおよび方法に関し、例えば、翻訳依頼者と翻訳者のあいだ、あるいは翻訳を行うために連携する翻訳者と翻訳者のあいだを仲介するWebサイトなどに適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、インターネット上には、予め登録してある多数の翻訳者と翻訳依頼者のあいだを仲介するWebサイトが存在している。このWebサイトを用いれば、翻訳依頼者にとっては、いながらにして効率的に翻訳の依頼(発注)と翻訳結果の取得を行うことができ、翻訳者にとっては、いながらにして効率的に翻訳の仕事を得る(受注)ことができるという利点がある。
【0003】
またこのWebサイトでは、翻訳者に関する詳細な情報(翻訳者の経歴、プロフィール、翻訳事例、これまでの成績など)やランクなどの情報を翻訳依頼者に提供しているため、翻訳依頼者はこの情報を参考にして、翻訳を依頼する翻訳者を指定することができる。
【0004】
各翻訳者のランクは過去の多数の翻訳依頼者からの評価に応じて決定される指標であるから、詳細な情報を分析する時間のない翻訳依頼者にとっては、当該ランクだけに基づいて翻訳者を指定することも簡便である。
【0005】
また、翻訳者が翻訳を実行するため、機械翻訳に比べて高い品質の翻訳結果を入手することが可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところがこのWebサイトでは、効率化されているのは、翻訳依頼者による翻訳結果の取得を含む、受発注の部分であって、翻訳そのものは、各翻訳者のスキル(熟練度)や手作業だけに依存していて効率化されていない。
【0007】
また、翻訳者集団のなかでは、前記ランクの高い高スキルの翻訳者の数は少なく、ランクが低く、比較的スキルの劣る翻訳者の数が多いのが普通であり、依頼者がランクの低い翻訳者のなかから、前記詳細な情報などをもとに、依頼する翻訳の内容に応じて適切な翻訳者を選択することは容易ではないため、発注先は結局ランクの高い少数の翻訳者に集中し、ランクの低い多数の翻訳者にはあまり翻訳の仕事が発注されないという矛盾が起きる可能性が高い。
【0008】
換言するなら、上述したWebサイトでは、翻訳者集団全体としての能力を有効に活用することが難しい。
【0009】
また、例えば、高品質な翻訳ができるランクの高い翻訳者に、機械翻訳でできる辞書引きや訳文の文書化をさせたり、ランクの低い翻訳者にもできる簡単な文の翻訳をさせたりするのは、無駄であり、個々の翻訳者の観点でみても前記Webサイトは能力の活用効率が低いといえる。
【0010】
この点を改善するために、機械翻訳の翻訳結果を利用することが考えられるが、機械翻訳の翻訳結果をそのまますべて下訳としてランクの高い翻訳者に利用させるのは無理がある。機械翻訳の翻訳結果は一般に、誤って構文が崩れた場合など(訳語そのものは適切でも)、訳文が読みづらいために、直接、原文から翻訳する方がランクの高い翻訳者にとっては容易だからである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために、第1の発明では、所定の翻訳用辞書手段を利用して所定の翻訳処理により機械翻訳を実行する機械翻訳手段を備え、翻訳を依頼する依頼者が有する端末から、前記翻訳処理と性質の異なる翻訳処理を実行する所定の翻訳主体エンティティ(例えば、翻訳者または翻訳モジュール)が有する端末への翻訳依頼の仲介を行う翻訳仲介システムにおいて、(1)前記翻訳主体エンティティを、翻訳対象となる対象文書に前記機械翻訳手段を用いて翻訳処理を施した機械翻訳結果の構文または訳語の誤りを修正する翻訳能力を持つ第1階層と、前記第1階層の翻訳主体エンティティにより、前記機械翻訳結果の構文または訳語の誤りが修正された結果を、当該結果の属する言語体系における自然な表現に修正する翻訳能力を持つ第2階層にわけ、前記第2階層に該当する翻訳主体エンティティを、前記第1階層に属させないで管理をするエンティティ管理手段と、(2)前記対象文書に、前記機械翻訳手段を用いて翻訳処理を施した結果として得られる第1の翻訳結果を蓄積、管理する第1の翻訳結果管理手段と、(3)この第1の翻訳結果管理手段から取得した第1の翻訳結果を、前記第1階層の翻訳主体エンティティが翻訳処理により修正した結果として得られる第2の翻訳結果を蓄積、管理する第2の翻訳結果管理手段と、(4)この第2の翻訳結果管理手段から取得した第2の翻訳結果を、前記第2階層の翻訳主体エンティティが翻訳処理により修正した結果として得られる第3の翻訳結果を蓄積、管理する第3の翻訳結果管理手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、第2の発明では、所定の翻訳用辞書手段を利用して所定の翻訳処理により機械翻訳を実行する機械翻訳手段を用い、翻訳を依頼する依頼者が有する端末から、前記翻訳処理と性質の異なる翻訳処理を実行する所定の翻訳主体エンティティが有する端末への翻訳依頼の仲介を行う翻訳仲介方法において、(1)エンティティ管理手段が、前記翻訳主体エンティティを、翻訳対象となる対象文書に前記機械翻訳手段を用いて翻訳処理を施した機械翻訳結果の構文または訳語の誤りを修正する翻訳能力を持つ第1階層と、前記第1階層の翻訳主体エンティティにより、前記機械翻訳結果の構文または訳語の誤りが修正された結果を、当該結果の属する言語体系における自然な表現に修正する翻訳能力を持つ第2階層にわけ、前記第2階層に該当する翻訳主体エンティティを、前記第1階層に属させないで管理し、(2)第1の翻訳結果管理手段は、前記対象文書に、前記機械翻訳手段を用いて翻訳処理を施した結果として得られる第1の翻訳結果を蓄積して管理し、(3)第2の翻訳結果管理手段は、この第1の翻訳結果管理手段から取得した第1の翻訳結果を、前記第1階層の翻訳主体エンティティが翻訳処理により修正して第2の翻訳結果を得たあと、当該第2の翻訳結果を蓄積して管理し、(4)第3の翻訳結果管理手段は、この第2の翻訳結果管理手段から取得した第2の翻訳結果を、前記第2階層の翻訳主体エンティティが翻訳処理により修正して第3の翻訳結果を得たあと、当該第3の翻訳結果を蓄積して管理することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
(A)実施形態
以下、本発明にかかる翻訳仲介システムおよび方法を、インターネット上などに構築される翻訳仲介サーバに適用した場合を例に、実施形態について説明する。
【0014】
第1、第2の実施形態に共通する特徴は、翻訳者集団に属する各翻訳者を、自身で高品質な翻訳を完成させることは困難であるものの機械翻訳の翻訳結果に関し訳語の誤りや構文の崩れを修正することができるレベルの翻訳者(ポストエディット翻訳者)と、句読点、文体、語法などに配慮しネイティブに近い高品質な翻訳を行うことができるレベルの翻訳者(高スキル翻訳者)とに分け、1つの案件の翻訳を、機械翻訳システムによる機械翻訳と、この機械翻訳の翻訳結果に対するポストエディット翻訳者による修正作業(ポストエディット翻訳)と、このポストエディット翻訳の翻訳結果に対する高スキル翻訳者による修正作業(最終翻訳)とによって順次、品質を高めていくことを特徴とする。
【0015】
なお、ポストエディット翻訳や最終翻訳は、外形的には、修正作業とみることができるが、その作業を実行するには、翻訳特有の思考が不可欠であるから、翻訳作業の一種とみることもできる。
【0016】
前記機械翻訳から最終翻訳にいたる一連の流れのなかで、ポストエディット翻訳者は機械翻訳の翻訳結果の誤りを修正し上述した構文の崩れなどを解消することで、高スキル翻訳者が下訳として用いるのに適した状態にし、この状態の翻訳結果を受け取った高スキル翻訳者は文体や語調などの微妙な部分のみに注力して最終翻訳を行う。これにより、機械翻訳システムと、ポストエディット翻訳者と、高スキル翻訳者は、重複なく役割を分担して、それぞれの能力を効率的に活用することができる。
【0017】
ポストエディット翻訳者と、高スキル翻訳者は、通常ならば一人の翻訳者が行うべき仕事を分かち合い、協同で作業を行うことになる。
【0018】
ポストエディット翻訳も最終翻訳も、機械翻訳の翻訳結果に対する後編集(すなわち、ポストエディット)の一種であるとみることができる。したがって、本実施形態では、2段階の後編集を行うことになる。
【0019】
(A−1)第1の実施形態の構成
本実施形態の通信システム10の全体構成例を図1に示す。
【0020】
図1において、当該通信システム10は、翻訳仲介サーバ11と、ネットワーク12と、ユーザ端末13〜15を備えている。
【0021】
このうちネットワーク12は例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)などであってもかまわないが、ここでは、インターネットであるものとする。
【0022】
ユーザ端末13〜15は、翻訳仲介サーバ11を利用する各ユーザが操作する端末で、例えば、Webブラウザを搭載したパーソナルコンピュータであってよい。
【0023】
本実施形態の翻訳仲介サーバ11にとってユーザは大きく2つに分かれる。その1つは翻訳依頼者であり、もう1つは、翻訳者である。翻訳者はさらに、上述したポストエディット翻訳者と高スキル翻訳者の2つに細分される。これら3種類のユーザはすべて、予め翻訳仲介サーバ21に会員登録されている。
【0024】
ここでは、ユーザ端末13を操作するユーザURは翻訳依頼者であり、ユーザ端末14を操作するユーザUPはポストエディット翻訳者であり、ユーザ端末15を操作するユーザUHは高スキル翻訳者であるものとする。
【0025】
図1にはそれぞれ一人ずつしか図示していないが、通常、翻訳依頼者も、ポストエディット翻訳者も、高スキル翻訳者も、多数が翻訳仲介サーバ11に会員登録されることは当然である。したがって、翻訳仲介サーバ11は、多数の翻訳依頼者と、多数のポストエディット翻訳者と、多数の高スキル翻訳者によって共用されることになるが、以下では、主として、翻訳依頼者URと、ポストエディット翻訳者UPと、高スキル翻訳者UHが翻訳仲介サーバ11を共用する場合を例に説明を進める。当該翻訳依頼者URが翻訳を依頼する文書はDC1である。
【0026】
翻訳仲介サーバ11の構成要素のうちWebサーバ20は、いずれかのユーザ端末(例えば、13)からネットワーク12経由で供給されるHTTPリクエストに応じてHTTPレスポンスを返送する部分である。
【0027】
このHTTPレスポンスとして返送されるWebページは、基本的に翻訳サーバ21によって生成される。翻訳サーバ21は、翻訳管理手段22と、機械翻訳手段23と、辞書データベース24と、ユーザデータベース25と、翻訳結果データベース26とを備えている。
【0028】
翻訳管理手段22と機械翻訳手段23の機能は、ハードウエア的に実現してもかまわないが、通常は、CGIプログラムなどの外部プログラムを利用してソフトウエア的に実現される。一般的に、ある機能をソフトウエア的に実現するとハードウエア的に実現する場合に比べ、処理速度は遅くなるが、柔軟性に富み、はるかに低価格なものになる。
【0029】
また、図示の例では、翻訳サーバ21はいわゆるアプリケーションサーバに相当し、CGIプログラムは、Webサーバ20上ではなくアプリケーションサーバに搭載された形になっているが、必要に応じて、Webサーバ20上にCGIプログラムを搭載してもかまわない。Webサーバ20上にCGIプログラムを搭載すると、サーバマシンの数を低減できてコスト面で有利であるが、CGIプログラムをアプリケーションサーバ上に搭載すると、Webサーバ20はWebページの送信だけを行えばよく、Webサーバ20とアプリケーションサーバ21のあいだで負荷を分散することができ、応答時間の短縮などが可能となる。
【0030】
なお、図示の例では、3つのデータベース24,25,26がアプリケーションサーバ(翻訳サーバ)21の内部に置かれているが、このようなデータベースは、アプリケーションサーバの外部であって、データベースサーバの配下に配置するようにしてもよい。また、当該データベースサーバとアプリケーションサーバのあいだには、ファイアウオールなどを介在させてセキュリティ性を高めることも望ましい。
【0031】
前記機械翻訳手段23は、機械翻訳を実行する機械翻訳システムを搭載した部分である。周知のように、現在の技術では機械翻訳の訳質はそのまま最終的な翻訳結果として利用できるほど高いものではないが、誤訳も含め、一定のパターンにしたがった翻訳結果が得られる傾向が強いため、そのパターンに慣れればその修正作業(ポストエディット翻訳)はポストエディット翻訳者UPにとって比較的容易であり、思考を節約して、効率的に進めることができる。
【0032】
前記辞書データベース24は、ユーザ辞書DT1と一般辞書DT2を格納したデータベースである。
【0033】
一般辞書DT2とは、翻訳時に使用する一般的な対訳語彙や、文法などを格納した一般的な辞書である。
【0034】
これに対しユーザ辞書DT1は、ユーザが作成した対訳語彙などを格納する辞書である。当該ユーザ辞書DT1の作成には、高スキル翻訳者UHや翻訳依頼者が関与するようにしてもよいが、基本的には、ポストエディット翻訳者UPが当該ユーザ辞書DT1を作成し、ポストエディット翻訳者(その一人が、UP)ごとに異なるユーザ辞書が設けられる。
【0035】
また、高スキル翻訳者UHが作成するユーザ辞書DT3や、翻訳依頼者URが作成したユーザ辞書DT4を当該ユーザ辞書DT1と別個に辞書データベース24内に設けるようにしてもよい。ただしユーザ辞書はその性質上、その作成にかかわった翻訳者(あるいは翻訳者集団)の主観や個性が反映されるから、通常、ユーザ辞書ごとに対訳は相違する。すなわち、同じ原文言語(例えば、日本語)の単語や文に対する目的言語(例えば、英語)の単語や文は、ユーザ辞書ごとに相違するのが普通である。
【0036】
このため、辞書データベース24内にポストエディット翻訳者UPが作成したユーザ辞書DT1と、高スキル翻訳者UHが作成したユーザ辞書DT3を併置する場合、ユーザ辞書DT1とユーザ辞書DT3の対訳ができるだけ同じになるように調整するほうがよい。
【0037】
この調整を行うことによって、上述したポストエディット翻訳から最終翻訳にいたる部分の作業の効率が高まる。
【0038】
その反面、このような調整を行わない場合には、ユーザ辞書DT3を辞書データベース24に格納しておく必要性は低い。その場合、ユーザ辞書DT3は、翻訳仲介サーバ11側でなく、ユーザ端末15側に搭載して高スキル翻訳者UHだけがアクセスできるように構成しておくほうが、ユーザ端末15と翻訳仲介サーバ11間の通信トラフィック低減の観点や、翻訳仲介サーバ11の負荷軽減の観点など、様々な面で効率的である。
【0039】
なお、前記翻訳者(あるいは翻訳者集団)の主観や個性は、そのスキルが高まるほど、洗練され、多くの読者(翻訳依頼者も含む)に受け入れられやすいものになる傾向があるから、ユーザ辞書DT1またはDT3に格納される対訳も、翻訳者等のスキルの向上に応じて、洗練されたものとなる。
【0040】
ユーザ辞書はその性質上、当該ユーザ辞書の作成にかかわった辞書作成者(翻訳者(あるいは翻訳者集団)や翻訳依頼者)に帰属する情報資産(著作物とみることもできる)であると考えられ、辞書作成者の承諾なく勝手に利用したり内容を変更したりすることは許されないものである。したがって、翻訳依頼者が、あるユーザ辞書を使用したいと望む場合、そのユーザ辞書に関する辞書作成者が当該翻訳依頼者と異なる者(例えば、ポストエディット翻訳者UP)であれば、その翻訳者UPに翻訳を依頼するしかない。
【0041】
しかしながら当該翻訳仲介サーバ11に会員登録し、ユーザ辞書の作成者となり得る全ユーザのあいだでユーザ辞書を共用することに関して同意(ユーザ辞書共用の同意)が得られるなら、ユーザ辞書をその辞書作成者と切り離して、その辞書作成者と異なる翻訳者にそのユーザ辞書を利用した翻訳を依頼することも可能であると考えられる。
【0042】
前記機械翻訳手段23は当該ユーザ辞書DT1に基づいて機械翻訳を実行する。機械翻訳の翻訳結果がポストエディット翻訳者UPの行う翻訳(換言するなら、ポストエディット翻訳者UPの主観や個性)に適合したものであるほうが、ポストエディット翻訳者UPによる修正作業(ポストエディット翻訳)が簡単になり、効率的だからである。
【0043】
ユーザ辞書(例えば、DT1)はポストエディット翻訳者ごとに設けられるが、各ポストエディット翻訳者に対応するユーザ辞書を1つに限定する必要はなく、複数としてもよい。同じポストエディット翻訳者(例えば、UP)であっても、ジャンルが異なれば異なる対訳を使用することが多く、一人のポストエディット翻訳者がジャンルごとに異なるユーザ辞書を必要とする可能性が高いからである。例えば、同じポストエディット翻訳者UPが「歴史」ジャンルの翻訳を行う場合と、「コンピュータ科学」ジャンルの翻訳を行う場合とでは、対訳が相違する可能性が高い。
【0044】
このため、各ユーザ辞書DT1は、図6に示すように、ユーザ名(例えば、UP)と、辞書名(例えば、X)によって指定される。辞書名は、前記ジャンルの名称に対応する名称を付与するようにするとよい。
【0045】
当該ユーザ辞書DT1は、機械翻訳手段23が機械翻訳を行う際に使用するほか、ユーザ(ポストエディット翻訳者UP)による翻訳の際に使用される。
【0046】
例えば、前記ポストエディット翻訳者UPが、過去に行ったポストエディット翻訳の結果に応じて、ユーザ辞書DT1に格納される対訳語彙が自動的に決定され蓄積されるものであってよい。この点は、前記ユーザ辞書DT3についても同様である。
【0047】
一般辞書DT2も、ユーザ辞書DT1も、前記機械翻訳手段23が実行する機械翻訳と、翻訳者UPが行う翻訳の双方で利用され得る。利用の優先順位はユーザ辞書DT1のほうを一般辞書DT2よりも高くするとよい。これにより、機械翻訳手段23や翻訳者は、まずユーザ辞書DT1を検索して訳語を調べ、ユーザ辞書DT1に適切な訳語を含む対訳が存在しない場合にかぎり、一般辞書DT2の対訳を検索することになる。
【0048】
翻訳結果データベース26は、翻訳結果を格納するデータベースである。
【0049】
本実施形態において、文書DC1の翻訳を実行する機能主体(機能主体には、情報処理装置と人間を含む)は上述したように3通りある。すなわち、最初に翻訳を実行する機能主体は、前記機械翻訳手段23であり、次に翻訳を実行する機能主体は、前記ポストエディット翻訳者UPであり、最後に翻訳を実行する機能主体は、前記高スキル翻訳者UHである。
【0050】
これらの機能主体が翻訳を実行するたびに翻訳結果(修正作業の結果も含む)が得られるから、機械翻訳手段23による翻訳結果TL1と、ポストエディット翻訳者UPによる翻訳結果TL2と、高スキル翻訳者UHによる翻訳結果TL3が、それぞれ当該翻訳結果データベース26に格納されることになる。
【0051】
翻訳結果TL2とTL3は、図8に示すように、その翻訳結果を得るための翻訳を実行したユーザを示すユーザ名と、辞書名(例えば、X)と、文書名(例えば、DC1)によって指定される。なお、高スキル翻訳者のためのユーザ辞書を辞書データベース24内に格納しない場合には、翻訳結果TL3の辞書名は省略してもよい。
【0052】
なお、機械翻訳手段23による翻訳結果TL1については図8に図示していないが、翻訳結果TL1の構成も、翻訳結果TL2と同様であってよい。ただし翻訳結果TL1の場合、翻訳を行った機能主体は常に機械翻訳手段23であるから、機械翻訳手段23を指定する所定のユーザ名が記述されることになる。
【0053】
ポストエディット翻訳者UPは、上述したように、自身で高品質な翻訳を行うことは困難であるが、機械翻訳の翻訳結果の誤りを修正することができるレベルの翻訳者であるから、前記翻訳結果TL2は、表現にやや不自然なところが残っているとしても、文法や個々の単語の訳語に関しては誤りがなく、構文の崩れもない読みやすい状態の文章になっていることが期待できる。
【0054】
すなわち、当該翻訳結果TL2は、そのまま最終的な翻訳結果として利用することはできないとしても、前記高スキル翻訳者UHの下訳として十分な品質を備えている。
【0055】
したがって、高スキル翻訳者UHは、当該翻訳結果TL2を利用して表現を改善する最終翻訳を実行することで、高品質の最終的な翻訳結果TL3を極めて効率的に作成することができる。
【0056】
一方、前記ユーザデータベース25は、各ユーザ(UR、UP、UHなど)の個人情報を含む情報をユーザ管理テーブルTB1に蓄積して、管理するデータベースである。
【0057】
図7に示すように、当該ユーザ管理テーブルTB1は、列名(データ項目あるいは属性名)として、ユーザ名、種別、レベルを備えている。
【0058】
ユーザ名は、前記会員登録の際に翻訳仲介サーバ11内で各ユーザを識別するために各ユーザに付与されたユーザIDを示し、種別は、ユーザが前記翻訳依頼者、翻訳者のいずれに属するかを示し、レベルは、各翻訳者が、ポストエディット翻訳者であるか高スキル翻訳者であるかを示す。依頼者の場合、このレベルの値は空値である。
【0059】
実際にユーザ管理を行うためには、ここにあげた以外の列名も必要になる。例えば、翻訳仲介サーバ11の外部における各ユーザの識別性を確保するために、住所、氏名、電話番号、電子メールアドレスなどの個人情報が必要になる可能性が高いし、翻訳仲介サーバ11が提供するサービスの利用が有料である場合には、決済方法に対応した情報(クレジットカード番号や銀行の口座番号など)も必要になる可能性が高い。また、納期を守ることができたか否かを示す列名(例えば、納期)、各ユーザが翻訳仲介サーバ11にアクセスする際にユーザ認証を行う場合には、各ユーザのパスワードを記述するための列名(例えば、パスワード)、過去の翻訳依頼者が当該翻訳者の翻訳結果の品質に対して下した評価を記述するための列名(例えば、過去の成績)、過去にその翻訳者が担当したジャンルを記述するための列名(例えば、ジャンル)、これまで一緒に仕事をしたことのある相性のよい翻訳者を記述(ポストエディット翻訳者の場合には一緒に仕事をしたい高スキル翻訳者のユーザIDの記述、高スキル翻訳者の場合には一緒に仕事をしたいポストエディット翻訳者のユーザIDの記述)するための列名(例えば、ペア)なども、必要になる可能性が高い。
【0060】
もし必要ならば、依頼者と、ポストエディット翻訳者と、高スキル翻訳者を、それぞれ別のテーブルで管理するようにしてもよい。特に、依頼者と翻訳者では管理の上で必要となる列名もかなり大きく相違する(例えば、依頼者を管理するテーブルでは、前記レベルなどは省略できるが、適切にサービスの利用料金を支払ったか否かを管理するための列名などが新たに必要になる可能性が高い)ため、別のテーブルで管理したほうが効率的となる可能性がある。
【0061】
前記翻訳管理手段22は前述の機械翻訳手段23や各種のデータベース24〜26を管理し、ユーザUR、UP、UHからの要求に応じて、データベース24〜26内の情報を利用し必要なWebページを生成して返す機能を備えている。
【0062】
例えば、依頼者URからの要求に対しては、翻訳依頼を受け付けるWebページを送信したり、最終的な翻訳結果TL3をダウンロードするためのWebページを送信したりする必要があり、ポストエディット翻訳者UPからの要求に対しては翻訳結果TL1を表示するWebページを返し、高スキル翻訳者UHからの要求に対しては翻訳結果TL2を表示するWebページを返すこと等が必要になる。
【0063】
ポストエディット翻訳者UPによる前記翻訳結果TL1の修正作業(ポストエディット翻訳)は、ユーザ端末14が翻訳仲介サーバ11に頻繁に接続するオンライン状態でインタラクティブに実行させるか、いったん翻訳結果TL1の全文(あるいは一部ずつ)をユーザ端末14にダウンロードさせ翻訳仲介サーバ11との接続を長時間(例えば、ポストエディット翻訳の開始から終了まで)切断したオフラインの状態で実行させるかについては、いずれの方法を用いてもかまわない。
【0064】
ただし、オンラインの状態で修正作業を行う場合、頻繁にHTTPリクエストが発生し修正作業の途中経過まで逐一、翻訳仲介サーバ11側で把握することが可能で、前記ユーザ辞書DT1の対訳の蓄積などを行いやすいものと考えられるが、翻訳仲介サーバ11の処理能力にかかる負荷や、翻訳仲介サーバ11とユーザ端末14のあいだの通信トラフィックは、オンラインの状態でインタラクティブに修正作業を行うよりも、オフラインの状態で行うほうがはるかに小さいため、その点では、オフラインの状態で行うほうが望ましい。
【0065】
翻訳仲介サーバ11は、多数の依頼者、ポストエディット翻訳者、高スキル翻訳者によって共用されるサーバであるため、これら多数のユーザから供給される多数のリクエストを同時に処理しなければならず、その負荷を軽減する必要性は小さくない。
【0066】
高スキル翻訳者UHによる前記翻訳結果TL2の修正作業(最終翻訳)についてもこれと同じことが成立する。
【0067】
本実施形態において必要なセッション管理を行うのも、この翻訳管理手段22である。
【0068】
一般的にハイパーテキストシステムでは、1つのHTTPリクエストと、それに対する1つのHTTPレスポンスで(すなわち、前記ユーザ端末(例えば、13)に新しいWebページが1つ表示されるごとに)ユーザ端末13と翻訳仲介サーバ(Webサーバ)11のあいだのセッションが切断されるから、個々のユーザ(例えば、UR)からの一連のアクセス(一連のHTTPリクエスト)を他のユーザ(例えば、UP)からのアクセスと識別して矛盾の無い応答(HTTPレスポンス)を返すためにセッション管理を行う必要がある。
【0069】
以下、上記のような構成を有する本実施形態の動作について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0070】
図2のフローチャートは、S10〜S19の各ステップから構成されている。
【0071】
(A−2)第1の実施形態の動作
まず最初に、前記翻訳依頼者URが文書DC1に関する翻訳を依頼する。このとき依頼者URは、例えば、トップページ上に設けられた所定のボタン(このボタンは所定のCGIプログラムを指定し、動作させるためのハイパーリンクになっている)を操作すること等により、前記翻訳管理手段22が生成しWebサーバ20経由で提供するWebページを閲覧することができる。前記翻訳管理手段22はユーザデータベース25中のユーザ管理テーブルTB1の格納内容を利用して、各翻訳者に関する情報を例えば一覧形式にして、当該Webページに表示することができる。
【0072】
このWebページ上に表示できる情報は、前記ユーザ管理テーブルTB1にどのような情報を格納してあるかに応じて変わるが、図7に図示した列名だけでなく、上述した過去の成績やジャンルなどの列名も設ける場合には、過去の翻訳依頼者が各翻訳者に対して下した評価や、過去にその翻訳者が担当したジャンルなどを参考にして、会員登録されている多くのポストエディット翻訳者や高スキル翻訳者のなかから所望の翻訳者を選択することができる。
【0073】
本実施形態ではこのとき、必ず、1組のポストエディット翻訳者と高スキル翻訳者が選択されるため、翻訳依頼が高スキル翻訳者だけ集中すること等がなく、ポストエディット翻訳者にも均等に分配される。これにより、翻訳仲介サーバ11に会員登録され前記ユーザ管理テーブルTB1に格納されている翻訳者集団全体の翻訳能力を有効に活用することができる。
【0074】
なお、実際には、翻訳依頼者が翻訳を依頼したとしても、各翻訳者の仕事のスケジュールによっては着手するまでに時間を要することもあるため、翻訳結果の納品に関する期限(納品期限)が設定されている翻訳案件の場合、スケジュール調整を行う必要が生じる可能性が高い。
【0075】
スケジュール調整は、ポストエディット翻訳者と、高スキル翻訳者のスケジュールがその納品期限を守れるものであるか、納品期限の変更は可能であるか等を相互に伝達し合うために、ポストエディット翻訳者と、高スキル翻訳者と、翻訳依頼者のあいだのメッセージ交換を行うものである。
【0076】
このようなメッセージ交換は、例えば、メーリングリストや、CGI掲示板(所定のCGIプログラムを利用して提供するWebベースの電子掲示板)を利用すると効率的に行える。そのために、翻訳仲介サーバ11が、CGI掲示板を提供する機能などを持つことも望ましい。
【0077】
どうしてもスケジュールを調整することができない場合には、翻訳依頼者は、翻訳者の選択を、スケジュールの合う翻訳者に変更する必要がある。
【0078】
なお、納品がいつ行われてもかまわず、納品期限が設定されていない翻訳案件を依頼する場合には、このようなスケジュール調整に関連する処理は不要である。
【0079】
ここでは、翻訳依頼者URが、ポストエディット翻訳者としてUPを選択し、高スキル翻訳者としてUHを選択し、それぞれにポストエディット翻訳と最終翻訳の依頼を予約するものとする(S10)。このとき機械翻訳手段23に対しては、予約ではなく翻訳の依頼(実行指示)が行われる。
【0080】
なお、使用するユーザ辞書に関する辞書作成者が翻訳依頼者UP自身である場合や、上述したユーザ辞書共用の同意が得られている場合などを除き、機械翻訳手段23が機械翻訳に使用するユーザ辞書DT1を特定するため、このステップS10の時点で少なくともポストエディット翻訳者の選択は決定しておく必要がある。
【0081】
また、実際の翻訳作業では、作業の効率や翻訳結果の品質に対し、ポストエディット翻訳者と高スキル翻訳者の相性なども重要な影響を与えるものと考えられるため、ここでは、当該ステップS10の時点で、実質的に、ポストエディット翻訳者と高スキル翻訳者の双方の選択を決定し予約しておくものとする。通常ならば一人の翻訳者が行うべき微妙な作業(後編集)を分担し協調して行うのであるから、ポストエディット翻訳者と高スキル翻訳者の相性はかなり重要な要素となる可能性が高い。もし必要ならば、予め、相性のよいポストエディット翻訳者と高スキル翻訳者の組合せを固定的に決めておき、依頼者はその組合せを選択するようにしてもよい。何回も同様な作業を分担して実行することにより、この組合せのポストエディット翻訳者と高スキル翻訳者のあいだで、良好な協調関係が生まれる可能性も高い。
【0082】
いずれにしても、最終的に依頼者URによって選択され予約された翻訳者UP、UHにはその事実を通知する必要がある。各翻訳者UP、UHに自身が翻訳依頼者URによって選択され翻訳の依頼が予約されたことを通知するには、前記スケジュール調整のためのメッセージ交換を行う場合には、そのメッセージ交換を利用することができるが、当該メッセージ交換を行わない場合には、例えば、予めユーザ端末14,15などに専用のクライアントソフトウエアを搭載しておき、プッシュ型の通信を利用するようにしてもよい。
【0083】
このようなプッシュ型の通信によれば、ユーザ端末(例えば、14)上でWebブラウザ、壁紙、スクリーンセーバーなどを媒介として、強制的に、通知用のウインドウを開き、このウインドウ内に、翻訳の依頼の予約があったことを伝えるメッセージを表示することができる。スクリーンセーバーを媒介とする場合などには、何度も通知用のウインドウが表示されるため、翻訳者UPやUHが通知を見逃す可能性はほとんどない。
【0084】
専用のクライアントソフトの搭載が必要となる理由は、Webブラウザ(ユーザ端末)とWebサーバのあいだの通信は通常、ユーザ端末(Webブラウザ)側からHTTPリクエストが供給されたときに、Webサーバ20側からHTTPレスポンスを返すタイプの通信(プル型の通信)であり、(ユーザ端末からHTTPリクエストが供給されていないのに)Webサーバ発でユーザ端末に何かを通知したり、情報を送信したりすることはできないからである。
【0085】
なお、HTTPプロトコルによる通信にこだわらない場合には、例えば、電子メールなどの通信手段を用いてこの通知を行うことができる。ただしその場合には、当該通信手段に対応するクライアントソフト(例えば、メーラ)をユーザ端末14などが搭載しておく必要、またはメーラを搭載した携帯電話機などを翻訳者(例えば、UP)が携帯している必要があるだけでなく、翻訳仲介サーバ11側にも、メールを作成する機能や、メールサーバなどの機能を設ける必要が生じる。電子メールもプッシュ型通信の一種であるとみることができる。
【0086】
携帯電話機の電子メールシステムは、通常、電子メールの着信を着信音やバイブレーションによって直ちに携帯者に伝える機構を備えているため、かなりリアルタイム性の高い通信手段として利用できる。
【0087】
なお、翻訳の依頼の通知以外にも、図2のフローチャートのなかにはプッシュ型の通信が必要な処理がいくつか存在するが、そのような通信に関しても、ここで述べたことが当てはまる。
【0088】
当該ステップS10の翻訳の依頼(あるいは、依頼の予約)を行ったあと、その予約の内容(翻訳者の選択)に応じて、前記翻訳管理手段22が、データベース24,26をチェックする(S11)。辞書データベース24に対するチェックでは、機械翻訳手段23が当該文書DC1を機械翻訳する際に使用するユーザ辞書DT1が指定される(S12)とともにそのユーザ辞書DT1の辞書名Xが取得される。また、翻訳結果データベース26に対するチェックでは、ユーザ名(例えば、UP)、辞書名(例えば、X)、文書名(ここでは、DC1)を書き込んで図8に示すような管理構造(例えば、ファイル)が生成される。この管理構造は、各機能主体による翻訳結果TL1、TL2,またはTL3が得られたとき、その翻訳結果の本体を収容しておく部分である。
【0089】
なお、管理構造の生成は必ずしもこの時点で行う必要はなく、実際に、各翻訳結果が得られ格納する必要が生じたときに生成するようにしてもよいことは当然である。
【0090】
次に、前記機械翻訳手段23が、前記ステップS12で指定されたユーザ辞書DT1を利用して前記文書DC1の機械翻訳を実行し、その結果として得られる前記翻訳結果TL1を、翻訳結果データベース26内に生成した前記管理構造に格納する(S13)。
【0091】
このとき文書DC1(その一部)が図3(A)に示す通りであり、ユーザ辞書DT1(または一般辞書DT2)に図3(B)に示す対訳が格納されているものとすると、機械翻訳の翻訳結果TL1は図3(C)に示すものとなる。
【0092】
なお、機械翻訳手段23が文書DC1を機械翻訳するために要する時間は極めて短い時間であると考えられるが、翻訳仲介サーバ11には同時に多数の文書(そのなかの1つがDC1)の機械翻訳依頼が供給され待ち行列(キュー)を形成している可能性が高く、当該文書DC1よりも先に処理する文書の機械翻訳が完了してからでないと当該文書DC1の機械翻訳を開始することができないため、ステップS10で機械翻訳を依頼してから、実際に機械翻訳の翻訳結果TL1が得られるまでの時間は必ずしも短時間ではない。具体的な運用の方法にも大きく依存するが、実際のBtoCのWebサイトでは、一例として、1秒間に数千ものHTTPリクエスト(この場合、HTTPリクエストは、機械翻訳の依頼に相当する)が殺到する例もある。
【0093】
したがって、上述したスケジュール調整を行う場合には、その時点の待ち行列の長さなどをもとに、機械翻訳の完了する時刻を予測し、その予測結果にも配慮することが望ましい。
【0094】
翻訳結果TL1が得られると、前記ステップS10で予約したポストエディット翻訳者UPに、前記プッシュ型通信を用いて、翻訳の依頼を行う(S14)。ポストエディット翻訳者UPに対する実質的な依頼はすでに前記ステップS10における予約の時点で完了しているため、この依頼は、実質的には機械翻訳手段23による機械翻訳が完了したことを通知し、ポストエディット翻訳の作業開始を促すものとして機能する。
【0095】
例えば、ユーザ端末14でステップS14の通知を受けると、ポストエディット翻訳者UPはユーザ端末14を操作し、速やかに翻訳仲介サーバ11へアクセスして翻訳結果TL1を取得し、ポストエディット翻訳を開始する(S15)。このポストエディット翻訳では、図3(C)に示す翻訳結果TL1が、例えば、図3(D)に示す翻訳結果TL2に修正される。この修正では、日本語の「〜として」、「〜で」、「〜に」などに相当する部分、すなわち構文や訳し分けの誤りが修正されている。
【0096】
なお、ステップS14の通知自体は例えばポストエディット翻訳者UPが携帯する携帯電話機などに電子メールを送信すること等によっても実行可能であるが、翻訳結果TL1を取得してポストエディット翻訳を実行するためには、パーソナルコンピュータ並みの使い勝手のよいユーザインタフェースが必要であり、ユーザ端末14を用いる必要がある。
【0097】
ポストエディット翻訳者UPは、自身のユーザ端末14に表示された例えば図4に示すような画面を目視しながら、キーボードやポインティングデバイスを操作して、このポストエディット翻訳を実行する。
【0098】
図4の画面は、文書DC1の原文と機械翻訳による翻訳結果TL1を1文ずつ比較して、その下の下訳入力部分にポストエディット翻訳の翻訳結果TL2を記述し編集することができるように、効率的な画面構成となっている。ポストエディット翻訳は、上述したオンライン状態またはオフライン状態のいずれで実行することも可能である。
【0099】
ポストエディット翻訳者UPが文書DC1の原文から直接翻訳を行わずに、機械翻訳の翻訳結果TL1を利用する利点は、機械翻訳の翻訳結果TL1は、誤訳も含め、一定のパターンにしたがった翻訳結果が得られる傾向が強いため、そのパターンに慣れればその修正作業(ポストエディット翻訳)は比較的容易であり、思考を節約して、効率的に進めることができることにある。
【0100】
ポストエディット翻訳が完了し、翻訳結果TL2が翻訳結果データベース26に格納されると、前記プッシュ型通信を利用して、前記ステップS10で予約した高スキル翻訳者UHに対して最終翻訳を依頼する(S16)。高スキル翻訳者UHに対する実質的な依頼はすでに前記ステップS10における予約の時点で完了しているため、この依頼は、実質的にはポストエディット翻訳者UPによるポストエディット翻訳が完了したことを通知し、最終翻訳の作業開始を促すものとして機能する。
【0101】
以降は、ポストエディット翻訳の場合と同様、例えば、ユーザ端末15でステップS16の通知を受けると、高スキル翻訳者UHはユーザ端末15を操作し、速やかに翻訳仲介サーバ11へアクセスして、翻訳結果TL2を取得し、最終翻訳を開始する(S17)。この最終翻訳では、図3(D)に示す翻訳結果TL2が、例えば、図3(E)に示す翻訳結果TL3に修正される。この修正では、文の構造の変更や定冠詞の付与などの、よりよい訳文にするための変更が行われている。
【0102】
なお、ステップS16の通知を高スキル翻訳者UHが携帯する携帯電話機などへの電子メールで行うことができる点、最終翻訳を実行するためには、パーソナルコンピュータ程度のユーザインタフェースが必要である点なども、ポストエディット翻訳の場合と同様である。
【0103】
高スキル翻訳者UHは、自身のユーザ端末15に表示された例えば図5に示すような画面を目視しながら、キーボードやポインティングデバイスを操作して、この最終翻訳を実行する。
【0104】
図5に示す画面は、文書DC1の原文のパラグラフ単位で複数文ずつ原文と下訳を近くに並べて表示し、その上の訳文入力部分に最終翻訳の翻訳結果を記述し編集する。1文ずつにしないのは、最終翻訳では原文の1文を訳文の複数文にしたり、原文の複数文を訳文の1文にしたりする可能性が高いからである。また、翻訳結果TL3を上に置くのは、最終翻訳の作業内容は、修正というより意訳に近いものと考えられるので、より原文の近くに表示して、原文と比較しやすくするためである。当該最終翻訳は、ポストエディット翻訳の場合と同様、上述したオンライン状態またはオフライン状態のいずれで実行することも可能である。
【0105】
ポストエディット翻訳の翻訳結果であるTL2を下訳として利用する利点は、機械翻訳の翻訳結果TL1に比べ、翻訳結果TL2のほうは構文の崩れもない読みやすい状態の文章になっていて、文体や語調などの微妙な部分にのみ注力して修正を行うことができることにある。また、翻訳結果TL2のほうが機械翻訳の翻訳結果TL1よりも述語や固有名詞が確認しやすいため、欠落した語の二重チェックなどにも有用である。
【0106】
最終翻訳が完了し、翻訳結果TL3が翻訳結果データベース26に格納されると、前記プッシュ型通信を利用して、前記ステップS10で予約を実行した翻訳依頼者URに対して翻訳終了を通知する(S18)。
【0107】
この通知を受け取ると、翻訳依頼者URは、ユーザ端末13を操作し翻訳仲介サーバ11にアクセスして、前記翻訳結果TL3を受け取る(S19)。前記ユーザ管理テーブルTB1に前記過去の成績や納期などの列名が設けられている場合には、この翻訳結果TL3を読んだ依頼者URは、当該翻訳結果TL3の品質に対する評価や、納期を守ることができたか否かなどを判断して、高スキル翻訳者UHの各列名に対する値を供給し、サービスの利用料金の支払いなどを行う。
【0108】
最終的に依頼者URが必要とするのは、最終翻訳の翻訳結果であるTL3だけであるが、必要に応じて、依頼者URが前記翻訳結果TL2も受け取り、ポストエディット翻訳者UPに対する評価なども行うことができるようにしてもよい。
【0109】
この評価に応じて、それまでポストエディット翻訳者であったUPが高スキル翻訳者となったり、それまで高スキル翻訳者であったUHがポストエディット翻訳者になったりすることが起きるようにしてもよい。
【0110】
また、互いの翻訳結果TL2,TL3の品質について、翻訳者UPとUHのあいだで相互に評価し合うようにしてもよい。高スキル翻訳者(例えば、UH)は最終翻訳を行うために必ずポストエディット翻訳者(例えば、UP)の翻訳結果を読むことになるから、高スキル翻訳者がポストエディット翻訳者に対する評価を下すことは、システム構成上、極めて効率的に実行可能である。
【0111】
評価するために最終翻訳の翻訳結果TL3を読むことは、ポストエディット翻訳者UPの翻訳能力を高めるためにも有効であるから、評価することによってポストエディット翻訳者UPが高スキル翻訳者にレベルアップする可能性を高めることができる。
【0112】
なお、ユーザ端末13へ宛てた電子メールによって翻訳終了を通知する場合などには、同じ電子メールで、依頼者URに対するこの通知と翻訳結果TL3の送付を実行することも可能である。この場合、ステップS18とS19は1つのステップに集約することができる。
【0113】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、本実施形態によれば、機械翻訳手段(23)と、ポストエディット翻訳者(UP)と、高スキル翻訳者(UH)が、重複なく役割を分担して、それぞれの翻訳能力を効率的に活用することができるため、個々の翻訳者(UP、UHなど)に関してその翻訳能力の活用効率を高めることができる。
【0114】
さらに本実施形態では、1つの翻訳案件(例えば、文書DC1の翻訳)を一人の翻訳者ではなく、必ずポストエディット翻訳者と高スキル翻訳者のペアが担当するため、特定の翻訳者に対する依頼の集中が緩和されて、翻訳者集団全体としても、その翻訳能力の活用効率を高めることができる。
【0115】
(B)第2の実施形態
以下では、本実施形態が第1の実施形態と相違する点についてのみ説明する。
【0116】
この相違点は、主として、作業履歴データベース42(図10参照)に関連する部分にある。
【0117】
ここでは、第1の実施形態と同様、翻訳依頼者URが、ポストエディット翻訳者としてUPを選択し、高スキル翻訳者としてUHを選択し、それぞれに文書DC1に関するポストエディット翻訳と最終翻訳の依頼を行う場合を例に説明する。
【0118】
(B−1)第2の実施形態の構成および動作
本実施形態の通信システムの全体構成例を図10に示す。図10において、図1と同じ符号を付与した構成要素や信号の機能は基本的に第1の実施形態と同じなので、その詳しい説明は省略する。
【0119】
本実施形態の翻訳仲介サーバ31は、第1の実施形態の翻訳仲介サーバ11に対応し、翻訳サーバ41は第1の実施形態の翻訳サーバ21に対応する。
【0120】
当該翻訳サーバ41には、前記作業履歴データベース42が設けられている。
【0121】
当該作業履歴データベース42は各翻訳者の作業履歴と翻訳結果の評価を格納するデータベースで、例えば、図9に示すようなデータ項目(属性名)を備えている。
【0122】
図9において、当該作業履歴データベース42は、データ項目として、「文書名」、「辞書名」、「依頼者名」、「ポストエディット翻訳の担当者名」、「最終翻訳の担当者名」、「翻訳作業時間」、「ポストエディット翻訳の評価」、「ポストエディット翻訳の評価の担当者名」、「ポストエディット翻訳の作業時間」、「最終翻訳の評価」、「最終翻訳の評価の担当者名」、「最終翻訳の作業時間」を備えている。
【0123】
このうち「文書名」、「辞書名」の意味は、第1の実施形態の図6や図8と同じである。
【0124】
また、「依頼者名」、「ポストエディット翻訳の担当者名」、「最終翻訳の担当者名」は、第1の実施形態の(例えば、図7で使用した)ユーザ名に相当するデータ項目であるが、第1の実施形態では1つのデータ項目(列名)であったユーザ名を、本実施形態では、3つのデータ項目に分割した。
【0125】
さらに、「ポストエディット翻訳の評価の担当者名」および「最終翻訳の評価の担当者名」も、第1の実施形態のユーザ名に相当するものとみることができるが、ポストエディット翻訳の翻訳結果TL2の評価を行うのは、第1の実施形態でも述べたように、ポストエディット翻訳の翻訳結果TL2を修正した高スキル翻訳者UHとするのが効率的であるので、多くの場合、「ポストエディット翻訳の評価の担当者名」には、当該高スキル翻訳者UHのユーザIDが記述される。
【0126】
ただし、前記翻訳依頼者URが翻訳結果TL2の評価を下した場合には、翻訳依頼者URのユーザIDが記述されることになる。
【0127】
また、一般的に、ある翻訳結果に対して適正な評価を下すには、その翻訳結果を作成した翻訳者と同等かそれ以上の翻訳能力が必要であると考えられるので、十分に高い翻訳能力を備えた評価専門の担当者(専門評価担当者)を置くようにしてもよい。当該専門評価担当者は、翻訳仲介サーバ31に会員登録した高スキル翻訳者の集団のなかから選抜するようにしてもよく、システム管理者が専門評価担当者の役割を担うようにしてもよい。
【0128】
当該専門評価担当者が評価を下した場合には、「ポストエディット翻訳の評価の担当者名」に、この専門評価担当者のユーザIDが記述されることになる。
【0129】
「最終翻訳の評価の担当者名」には、当該専門評価担当者か、翻訳依頼者URのユーザIDが記述される。第1の実施形態でも述べたように、翻訳結果TL2を作成したポストエディット翻訳者UPが当該高スキル翻訳者UHの翻訳結果TL3を評価できるようにした場合には、当該ポストエディット翻訳者UPのユーザIDが記述されることになる。
【0130】
また、前記データ項目のうち「ポストエディット翻訳の作業時間」は、ポストエディット翻訳者UPが前記翻訳結果TL2を作成するために要した時間を記述する部分で、「最終翻訳の作業時間」は、前記高スキル翻訳者UHが翻訳結果TL3を作成するのに要した時間を記述する部分である。
【0131】
さらに、「翻訳作業時間」は、これら「ポストエディット翻訳の作業時間」と「最終翻訳の作業時間」の値の合計値が記述される部分である。これらの作業時間に関するデータ項目は、翻訳依頼者URが納期の見積もりを行うために利用することができる。
【0132】
また、前記作業履歴データベース42内に、「過去の翻訳作業時間の平均値」や、「所定ワード数当たりの翻訳作業時間の平均値」などのデータ項目を設けることも、翻訳依頼者URによる納期の見積もりを適切で容易なものとするのに有効である。
【0133】
このようなデータ項目を備えた作業履歴データベース42をもとに、翻訳仲介サーバ31とのあいだでインタラクティブなやり取りを行うことにより、翻訳依頼者URは、翻訳案件を依頼する翻訳者の選択や納期の見積もり(納期の設定)などに必要な様々な情報を得ることができる。
【0134】
例えば、自分が過去に依頼した文書の辞書や翻訳担当者を検索したり、自分が依頼したい文書と似ている文書を検索してその辞書や翻訳担当者を検索したり、評価と評価担当者を重視して検索したり、作業時間を重視して検索したり、することができる。
【0135】
また、各データ項目の詳細を知りたい場合などには、他のデータベース24〜26に格納されている内容が呼び出される。
【0136】
本実施形態において、翻訳依頼者URが翻訳を依頼してから翻訳結果を受け取るまでの動作は、図11に示すフローチャートのようになる。このフローチャートは、第1の実施形態の図2のフローチャートに対応するものである。
【0137】
図11のフローチャートは、S30〜S43の各ステップから構成されている。
【0138】
このうちステップS30は、前記S10に対応し、ステップS32は前記S13に対応し、ステップS35は前記S14に対応し、ステップS36は前記S15に対応し、ステップS39は前記S16に対応し、ステップS40は前記S17に対応し、ステップS42は前記S18に対応し、ステップS43は前記S19に対応する。
【0139】
ただし第1の実施形態にかかる図2のフローチャートでは、ステップS10でスケジュール調整を行う場合について説明したが、本実施形態では当該ステップS10に対応するステップS30の時点ではスケジュール調整は行わない。
【0140】
当該ステップS30において、翻訳依頼者URは、前記作業履歴データベース42をもとにした翻訳仲介サーバ31とのあいだのインタラクティブなやり取りで、文書DC1の翻訳案件を依頼する翻訳者(ここでは、UP、UHとする)の選択と納期の設定を行う。ただしこの選択や納期の設定の内容は、この時点ではまだ、各翻訳者に通知されない。
【0141】
なお、第1の実施形態では、翻訳者の選択は必ずポストエディット翻訳者および高スキル翻訳者に対して行ったが、本実施形態では、ポストエディット翻訳者だけを選択することもあり得る。これは、翻訳依頼者URが、翻訳結果の品質よりも、翻訳結果の早期取得を重視する場合に対応するためである。
【0142】
当該ステップS30につづくステップS31では、当該依頼者URが辞書と納期と担当者(翻訳者)の指定を翻訳仲介サーバ31に伝える。ただしこの段階では、翻訳仲介サーバ31は、指定された各翻訳担当者(ここでは、UP、UH)に対し、指定の事実を通知したりはしない。なお、このステップS31で、高スキル翻訳者(ここでは、UH)を指定するか否かは、翻訳依頼者URの自由である。
【0143】
ステップS31により機械翻訳に使用するユーザ辞書(ここではDT1)が特定できるため、前記機械翻訳手段23が当該文書DC1の機械翻訳を実行する(S32)。
【0144】
機械翻訳手段23が当該文書DC1の機械翻訳を実行している間に、前記翻訳管理手段22が、前記プッシュ型通信を利用して、ポストエディット翻訳の担当者(ポストエディット翻訳者UP)に、翻訳依頼者URによってポストエディット翻訳者として選択された事実と、納期の内容を通知する(S33)。
【0145】
このとき、前記作業履歴データベース42を検索することによって、「ポストエディット翻訳の担当者名」の値であるポストエディット翻訳者のユーザID(ここでは、UR)を得、当該ユーザIDを検索キーとして、図7のユーザ管理テーブルTB1を検索すると、ユーザ管理テーブルTB1に電子メールアドレスなどの列名が設けられている場合には、翻訳者UPの電子メールアドレスを得ることができるため、そのアドレスに宛てて電子メールを送信することが可能である。
【0146】
この通知を受けた翻訳者UPは、自身の仕事のスケジュールなどを考慮し、ユーザ端末14などを利用して、翻訳仲介サーバ31に、その納期を守ることが可能であるか否かを伝える(S34)。
【0147】
守れないことを伝えた場合には、ステップS34はNO側(N側)に分岐して処理は前記ステップS31にもどる。この場合、依頼者URはポストエディット翻訳者の選択を当該UPから変更して、再びステップS31を実行し、ステップS32,S33が繰り返されることになる。
【0148】
ステップS31,S32,S33,S34によって構成されるループのなかで機械翻訳(S32)を実行するのは、ポストエディット翻訳者(例えば、UP)の選択が変われば、前記ユーザ辞書(例えば、DT1)の選択も変わり、得られる機械翻訳の翻訳結果TL1の内容も変わるためである。したがって、例えば、上述したユーザ辞書共用の同意が得られている場合や、指定するユーザ辞書が翻訳依頼者URが作成した辞書である場合などには、このループのなかからステップS32を省略することが可能である。
【0149】
前記ステップS33の通知を受けた翻訳者UP(あるいは、選択変更後のポストエディット翻訳者)が納期を守れることを翻訳仲介サーバ31に伝えてきた場合には、ステップS34はYES側(Y側)に分岐して、そのポストエディット翻訳者に対する翻訳の依頼が行われ(S35)、当該ポストエディット翻訳者(ここでは、UPとする)が機械翻訳の翻訳結果TL1のポストエディット翻訳を実行する(S36)。
【0150】
ステップS35の依頼でも、前記ステップS33と同様、例えば、電子メールアドレスなどを得るために、各データベースや各テーブルの検索が実行される。
【0151】
なお、前記ステップS32の機械翻訳は、前記ループのなかではなく、ステップS34のYES側の分岐のあとに配置したほうが、処理の効率が高まり、翻訳仲介サーバ31の処理能力にかかる負荷を軽減することができて望ましい。当該ループが何回も繰り返し処理され、利用されない(あるいは、利用されない可能性のある)翻訳結果TL1を得るために限られた処理能力を消費することは非効率であるし、上述した待ち行列が長くなって、翻訳仲介サーバ31に過大な負荷をかける可能性が高まるからである。
【0152】
前記ステップS36のポストエディット翻訳が終了すると、それに要した作業時間を前記作業履歴データベース42に格納する(S37)。この作業時間としては、翻訳者UPの自己申告に基づく値を格納してもよいが、ポストエディット翻訳者UPが、前記翻訳結果TL1をダウンロードしてから、翻訳結果TL2をアップロードするまでの時間を翻訳仲介サーバ31側で計測しておき、その計測結果を当該アプロードとともに、自動的に作業履歴データベース42に格納することも、値の信頼性や翻訳者UPの操作負担が軽減できる点で望ましい。
【0153】
当該ステップS37につづくステップS38では、前記ステップS31で、高スキル翻訳者(ここでは、UH)を指定したか否かが検査され、検査結果に応じて分岐する。
【0154】
指定していないとの検査結果が得られた場合、ステップS38はNO側に分岐し、前記翻訳依頼者UPに、前記プッシュ型通信を利用して翻訳終了を通知し(S42)、この通知を受けた翻訳依頼者UPは、最終的な翻訳結果(ここでは、TL2)を受け取る(S43)。
【0155】
一方、指定したとの検査結果が得られた場合、ステップS38はYES側に分岐して、指定した高スキル翻訳者UHに対する最終翻訳の依頼(S39)と、当該高スキル翻訳者UHによる最終翻訳の実行(S40)と、最終翻訳終了後、その作業時間の作業履歴データベース42への格納(S41)が順次、実行される。当該ステップS41の処理の内容は、前記ステップS37と同様である。
【0156】
ステップS41以降は、前記ステップS42とS43が実行される。
【0157】
ただし、ステップS41のあとで実行されるステップS43において、翻訳依頼者URが受け取る翻訳結果は、TL2ではなくTL3である。
【0158】
なお、ステップS39の依頼でも、前記ステップS33やS35と同様、例えば、電子メールアドレスなどを得るために、各データベースや各テーブルの検索が実行される。
【0159】
なお、前記ステップS34と同様に納期を守れるか否かの確認を高スキル翻訳者UHに対して行うステップを、ステップS38のYES側の分岐のあとに配置してもかまわない。
【0160】
(B−2)第2の実施形態の効果
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果とほぼ同等な効果を得ることができる。
【0161】
加えて、本実施形態では、作業履歴に関連する多くのデータ項目を備えた作業履歴データベース(42)を設けたため、翻訳仲介サーバ(31)側でより多くの情報を効率的に管理でき、翻訳者の選択や、納期の見積もり等を容易で適切なものとするための有用な情報を、翻訳依頼者(UP)に対して、豊富に提供することが可能になる。
【0162】
また、翻訳結果の品質よりも早期の取得を重視する場合にも、柔軟に対応することができる。
【0163】
(C)他の実施形態
上記第1および第2の実施形態にかかわらず、予め各翻訳者(UP、UHなど)のスケジュールをユーザ管理テーブルTB1に格納しておき、前記一覧形式のWebページにそのスケジュールを表示すれば、スケジュール調整の手順を簡略化することができ、翻訳依頼者URや翻訳者UP、UHなどにとって、簡便である。
【0164】
なお、上記第1および第2の実施形態では、最初のステップS10やステップS30でポストエディット翻訳者と高スキル翻訳者の双方の選択、非選択を決定するものとしたが、各翻訳結果が生成されたあとで、逐次、その翻訳結果を修正する翻訳者を決定するようにしてもよいことは当然である。
【0165】
また、各翻訳者のレベルの初期値は、例えば、会員登録の際、その翻訳者自身の申告に基づいて決定してもよく、前記専門評価担当者の査定に基づいて決定するようにしてもよい。
【0166】
さらに、上述したCGIプログラムは、その他のプログラムに置換可能である。この場合、外部プログラムを呼び出すためのインタフェースもCGIインタフェースと異なるものを用いる。
【0167】
各種ベンダから提供される例えばISAPIなどのインタフェースを使用すれば、CGIよりも高いスループットが得られる可能性が高い。
【0168】
なお、前記高スキル翻訳者としては、英語を母国語とするネイティブ翻訳者を利用してもよい。前記翻訳結果TL2の品質が十分に高い場合、当該ネイティブ翻訳者は、必ずしも原文(日本語)を理解する能力を持つ必要はない。
【0169】
さらに、上記第1および第2の実施形態では、各ユーザUR、UP、UHは異なるユーザ端末13〜15を利用したが、ユーザ間の関係によっては、ユーザUR、UP、UHのうち任意の二人または三人すべてが、同じユーザ端末を利用することがあり得ることは当然である。
【0170】
また、上記第1および第2の実施形態では、日本語で記述された文書DC1を英語に翻訳する場合を例に説明したが、翻訳の方向は、これと反対でもよく、また、英語と日本語以外の言語のあいだで翻訳を行うようにしてもよいことは当然である。
【0171】
さらに、上記第1および第2の実施形態では、翻訳を行う機能主体が主として人間(翻訳者)である場合を例に説明を行ったが、翻訳能力に関する特性の異なる各機械翻訳システム(翻訳モジュール)を、前記ポストエディット翻訳者や高スキル翻訳者に置換してもよい。またこの翻訳モジュールは、必ずしも、翻訳仲介サーバ内に搭載しておく必要はない。
【0172】
以上の説明では主としてソフトウエア的に本発明を実現したが、本発明はハードウエア的に実現することも可能である。
【0173】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の翻訳仲介システムおよび方法によれば、個々の翻訳主体エンティティ(あるいは、翻訳主体エンティティの集合)の持つ翻訳能力を効率的に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る通信システムの全体構成例を示す概略図である。
【図2】第1の実施形態の動作例を示すフローチャートである。
【図3】第1および第2の実施形態における翻訳結果の一例を示す概略図である。
【図4】第1および第2の実施形態におけるポストエディット翻訳時の表示画面例を示す概略図である。
【図5】第1および第2の実施形態における最終翻訳時の表示画面例を示す概略図である。
【図6】第1および第2の実施形態で使用するユーザ辞書の構成例を示す概略図である。
【図7】第1および第2の実施形態で使用するユーザ管理テーブルの構成例を示す概略図である。
【図8】第1および第2の実施形態における翻訳結果の管理構造の一例を示す概略図である。
【図9】第2の実施形態で使用する作業履歴データベースの格納内容を示す概略図である。
【図10】第2の実施形態に係る通信システムの全体構成例を示す概略図である。
【図11】第2の実施形態の動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10、30…通信システム、11、31…翻訳仲介サーバ、12…ネットワーク(インターネット)、13〜15…ユーザ端末、20…Webサーバ、21,41…翻訳サーバ、22…翻訳管理手段、23…機械翻訳手段、24…辞書データベース、25…ユーザデータベース、26…翻訳結果データベース、42…作業履歴データベース、DT1,DT3…ユーザ辞書、DT2…一般辞書、TL1…翻訳結果、TB1…ユーザ管理テーブル。
Claims (3)
- 所定の翻訳用辞書手段を利用して所定の翻訳処理により機械翻訳を実行する機械翻訳手段を備え、翻訳を依頼する依頼者が有する端末から、前記翻訳処理と性質の異なる翻訳処理を実行する所定の翻訳主体エンティティが有する端末への翻訳依頼の仲介を行う翻訳仲介システムにおいて、
前記翻訳主体エンティティを、翻訳対象となる対象文書に前記機械翻訳手段を用いて翻訳処理を施した機械翻訳結果の構文または訳語の誤りを修正する翻訳能力を持つ第1階層と、前記第1階層の翻訳主体エンティティにより、前記機械翻訳結果の構文または訳語の誤りが修正された結果を、当該結果の属する言語体系における自然な表現に修正する翻訳能力を持つ第2階層にわけ、前記第2階層に該当する翻訳主体エンティティを、前記第1階層に属させないで管理をするエンティティ管理手段と、
前記対象文書に、前記機械翻訳手段を用いて翻訳処理を施した結果として得られる第1の翻訳結果を蓄積、管理する第1の翻訳結果管理手段と、
この第1の翻訳結果管理手段から取得した第1の翻訳結果を、前記第1階層の翻訳主体エンティティが翻訳処理により修正した結果として得られる第2の翻訳結果を蓄積、管理する第2の翻訳結果管理手段と、
この第2の翻訳結果管理手段から取得した第2の翻訳結果を、前記第2階層の翻訳主体エンティティが翻訳処理により修正した結果として得られる第3の翻訳結果を蓄積、管理する第3の翻訳結果管理手段とを備えることを特徴とする翻訳仲介システム。 - 請求項1の翻訳仲介システムにおいて、
前記エンティティ管理手段は、
前記第2の翻訳結果または第3の翻訳結果に対する評価を示す評価情報を管理する評価情報管理部を備え、
この評価情報は、前記対象文書を提供して翻訳を依頼する依頼者が、第1階層または第2階層の翻訳主体エンティティを選択する際の基礎情報として用いることを特徴とする翻訳仲介システム。 - 所定の翻訳用辞書手段を利用して所定の翻訳処理により機械翻訳を実行する機械翻訳手段を用い、翻訳を依頼する依頼者が有する端末から、前記翻訳処理と性質の異なる翻訳処理を実行する所定の翻訳主体エンティティが有する端末への翻訳依頼の仲介を行う翻訳仲介方法において、
エンティティ管理手段が、前記翻訳主体エンティティを、翻訳対象となる対象文書に前記機械翻訳手段を用いて翻訳処理を施した機械翻訳結果の構文または訳語の誤りを修正する翻訳能力を持つ第1階層と、前記第1階層の翻訳主体エンティティにより、前記機械翻訳結果の構文または訳語の誤りが修正された結果を、当該結果の属する言語体系における自然な表現に修正する翻訳能力を持つ第2階層にわけ、前記第2階層に該当する翻訳主体エンティティを、前記第1階層に属させないで管理し、
第1の翻訳結果管理手段は、前記対象文書に、前記機械翻訳手段を用いて翻訳処理を施した結果として得られる第1の翻訳結果を蓄積して管理し、
第2の翻訳結果管理手段は、この第1の翻訳結果管理手段から取得した第1の翻訳結果を、前記第1階層の翻訳主体エンティティが翻訳処理により修正して第2の翻訳結果を得たあと、当該第2の翻訳結果を蓄積して管理し、
第3の翻訳結果管理手段は、この第2の翻訳結果管理手段から取得した第2の翻訳結果を、前記第2階層の翻訳主体エンティティが翻訳処理により修正して第3の翻訳結果を得たあと、当該第3の翻訳結果を蓄積して管理することを特徴とする翻訳仲介方法。
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