以下に、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明を適用した情報処理システムの一実施の形態の構成を示す図である。図1においては、片側2車線の計4車線の道路を示している。上り車線、または、下り車線の一方、または、両方の道路上に、路上側制御装置1−1,1−2が設置されている。以下の説明において、路上側制御装置1−1,1−2を、個々に区別する必要がない場合、単に、路上側制御装置1と記述する。
図1においては、片側2車線のため、2台の路上側制御装置1−1,1−2が設置されているが、1車線に1台設置するというものではなく、1車線に複数台設置しても良いし、複数車線に1台設置するようにしても良い。
路上側制御装置1には、路上側制御装置1を統轄する統轄管制装置2が接続されている。この統轄管制装置2は、道路上に設置されている複数の路上側制御装置1からの情報を取得し、その情報を用いて、後述する処理(例えば、交通諸量の算出など)を実行するとともに、路上側制御装置1を制御する。
路上側制御装置1と通信を行う車両側制御装置3が、車両4には搭載されている。車両側制御装置3は、電子ナンバープレートや、ナビゲーションシステムなどに組み込まれても良いし、単独で搭載されるようにしても良い。
なお、図1に示したように、路上側制御装置1は、1車線上に1つ設置されるとし、それらの路上側制御装置1は、統轄制御装置2に、それぞれ接続されているとして説明するが、他の接続の仕方(他の構成)でも良く、他の接続の仕方について、図1に示した接続における説明後に説明する。また、図1に示していないが、統轄制御装置2には、他の地点に設置された路上側制御装置1も接続されている。以下の説明においては、1車線毎に交通諸量が計測される場合を例に挙げて説明する。
図2は、路上側制御装置1の内部構成を示す図である。路上側制御装置1は、送信するデータや受信したデータを処理するとともに、路上側制御装置1の各部を制御する制御処理部11を備えている。この制御処理部11から出力されたデータは、変調部12に供給される。変調部12には、発信器13により発信された信号も供給される。変調部12は、発信器13からの信号を用いて、制御処理部11から供給されたデータを変調し、増幅部14に出力する。
増幅部14は、変調部12からの信号を所定の大きさまで増幅し、送受信弁別部15に出力する。送受信弁別部15は、増幅部14からの信号の場合、その信号をアンテナ16に、アンテナ16からの信号の場合、その信号を増幅部17に供給する。アンテナ16は、車両側制御装置3との通信に用いられる。
アンテナ16により受信された車両側制御装置3からの信号は、送受信弁別部15を介して増幅部17に供給され、後段において処理が行える程度まで増幅される。増幅部17からの出力は、ミキサ18を介して復調部19に入力される。復調部19は、入力された信号からデータを復号し、その復号したデータを制御処理部11に出力する。制御処理部11は、入力されたデータを、統轄管制装置2に送信する。路上側制御装置1と統轄管制装置2とデータの授受は、無線が用いられる方式でも良いし、有線が用いられる方式でも良い。
図3は、統轄管制装置2の構成例を示す図である。統轄管制装置2は、路上側制御装置1と通信を行う通信部31を備える。統轄管制装置2には、ユーザが所定の情報の入力を行うキーボードなどの入力装置や、情報が出力され、表示されるディスプレイなどの出力装置などから構成される入出力部32も備えられている。
統轄管制装置2は、データやCPU(Central Processing Unit)34が所定の処理を実行する際のプログラムなどが記憶されたメモリ33を備える。CPU34は、通信部31や入出力部32から入力されたデータを処理したり、通信部31や入出力部32へ出力するデータを処理する。また、CPU34は、統轄管制装置2内の各部を制御する。
図4は、車両側制御装置3の構成例を示す図である。制御処理部51は、入力されたデータおよび出力するデータの処理を行うとともに、車両側制御装置3の各部を制御する。制御処理部51には、路上側制御装置1からの信号が、アンテナ52に受信され、弁別スイッチ53を介して復調部54に供給され、復調部54により復調されたデータが入力される。
制御処理部51は、路上側制御装置1に対して送信するデータを生成し、生成したデータを変調部55に出力する。変調部55は、入力されたデータを送信するための信号にするための変調を施し、弁別スイッチ53を介して、アンテナ52に供給する。アンテナ52に供給された信号は、路上側制御装置1に対して送信される。
次に、路上側制御装置1と車両側制御装置3との間で送受信される信号について説明する。図5は、路上側制御装置1と車両側制御装置3との間で送受信される信号の一例を示す図である。図5Aは、電波(信号)の波形を示す図であり、図5Bは、データ列(指令信号)を示す図である。図5に示した例は、ASK(Amplitude Shift Keying)方式を用いた場合の波形を示している。
図5Aに示したように、電波の波形は、プリアンブル(Preamble)、データ部分、およびポストアンブル(Postamble)から構成されている。プリアンブルの部分には、図5Bに示すように、プリアンブル指令により生成され、データ部分には、データ列として、ユニークワード(UW)、フレーム長などが含まれる。このデータ列について、図6を参照して説明する。
図6Aは、路上側制御装置1から車両側制御装置3に対して送信されるデータ列である。図6Aに示すように、路上側制御装置1から車両側制御装置3に対して送信されるデータ列は、ユニークワード71、フレーム長72、送信要求73、フラグ74、スポットダイナミックコード75、および時刻76から構成されている。
ユニークワード71は、データ列の開始を示す予め定められたビット配列である。フレーム長72は、このデータ列の大きさを表すデータである。送信要求73は、このデータ列を受信した車両側制御装置3側で、受信したことを示すデータを送信するように指示するデータである。フラグ74は、後述する空間密度や旅行時間を算出する際に、路上側制御装置1と車両側制御装置3との間で送受信されたデータを用いるか否かを示すフラグであり、用いる場合にオンに設定される。
スポットダイナミックコード75は、路上側制御装置1の位置を表す情報である。スポットダイナミックコード75には、前の路上側制御装置1のコード(以下、(N−1)地点コードと記述する)と、現時点での路上側制御装置1のコード(以下、N地点コードと記述する)が含まれる。時刻76は、これらのデータ列が送信された時刻を示すデータである。
図6Bは、車両側制御装置3から路上側制御装置1に対して送信されるデータ列である。図6Aに示したようなデータ列を受信した車両側制御装置3は、図6Bに示したようなデータ列を生成し、路上側制御装置1に対して送信する。車両側制御装置3から路上側制御装置1に対して送信されるデータ列は、ユニークワード81、フレーム長、スポットダイナミックコード83、および時刻84から構成されている。
ユニークワード81は、ユニークワード71と同様に、データ列の開始を示す予め定められたビット配列である。フレーム長82は、フレーム長72と同様に、このデータ列の大きさを表すデータである。スポットダイナミックコード83は、受信したデータ列のうちの、スポットダイナミックコード75のN地点コードを含むコードであり、必要に応じ、(N−1)地点コードも含む。時刻84は、データ列のうちの時刻76の時刻データを返送する。
スポットダイナミックコード75,83(以下、特にスポットダイナミックコード75とスポットダイナミックコード83を区別する必要がない場合、スポットダイナミックコード75を代表として説明する)に含まれる(N−1)地点コードやN地点コードは、エリアコードとランダムなコード(以下、適宜、カウント値と記述する)から構成され、例えば、‘1018’といった4桁からなるコードである。
スポットダイナミックコード75を4桁からなるコードとした場合、前の2桁(この場合、‘10’)は、路上側制御装置1が設置されている位置を表すエリアコードとし、後の2桁をカウント値(この場合、‘18’)と設定する。エリアコードは、その位置に設置されている全ての路上側制御装置1に対して同一のコード(値)が設定される。カウント値は、路上側制御装置1において、所定周期で1づつカウントされている値である。
なお、スポットダイナミックコード75,83は、4桁以外のコードとされても勿論良い。また、カウンタ値は、2桁とした場合、00乃至99までの数値をとることが可能であるが、99までカウントされた後は、00に戻るといったカウントが継続される。
図7のタイミングチャートを参照して、授受されるカウント値について説明する。以下の説明においては、道路が一車線の場合を例に挙げて説明するが、複数の車線が存在する道路においても、本実施の形態を適用することができることは言うまでもない。複数の車線が存在する場合、後述する説明において算出された交通諸量を必要に応じ加算などの処理を実行することにより、1車線ではなく、複数の車線が存在する道路上の交通諸量を算出することができる。
路上側制御装置1は、所定の周期で、カウント値を1づつカウントし、そのカウント値をエリアコードとともに、スポットダイナミックコード75のN地点コードとし、上述したデータ列の構造にして、車両側制御装置3に送信する。なお、図7を参照した説明においては、(N−1)地点コードは、空白として送信され、図7には示さない。
車両4(図1)が、路上側制御装置1の交信領域に入ると、その送信されたデータ列は、車両側制御装置3に受信される。図7に示したタイミングチャートにおいては、スポットダイナミックコード75のN地点コードとして、‘1015’、‘1016’、‘1017’が送信されたときには、交信領域に車両4が存在しなかったために、車両側制御装置3から送信されるデータは存在しない。
スポットダイナミックコード75のN地点コードとして、‘1018’が路上側制御装置1から送信されたとき、車両4が交信領域に入り、車両側制御装置3に、送信されたデータが受信される。車両側制御装置3は、路上側制御装置1からのデータ列を受信したことに対応する処理として、図7に示したようなデータ列を路上側制御装置1に送信する。その送信されるスポットダイナミックコード83に含まれるN地点コードは、受信されたスポットダイナミックコード75のN地点コードである。
路上側制御装置1は、車両側制御装置3からのデータ列を受信すると、その受信したデータ列に含まれるスポットダイナミックコード83のN地点コードを、スポットダイナミックコード75のN地点コードして、車両側制御装置3に対して、再度送信する。
車両4が、路上側制御装置1の交信領域内に存在する間は、このような、同一のN地点コード(この場合、‘1018’)を含むデータ列の送受信が繰り返される。この送受信が繰り返されている間、路上側制御装置1の所定の通信チャンネルは、スポットダイナミックコード75のN地点コードを変更しないわけだが、バックグランドで、カウントは継続されている。
ところで、路上側制御装置1の交信領域に、常に1台の車両4しか存在しない場合には、1通信チャンネルだけ備えていればよいが、1通信チャンネルしかないと、図8に示すように、車両4−1と車両4−2といった複数台の車両4が存在する場合には、その複数台の車両4に対して、同一のN地点のコードを供給することになってしまう。
しかしながら、このようなことは、後述する交通諸量の算出にときに、正確な算出が行えなくなるため、個々の車両4に異なるN地点コードを供給する必要がある。そこで、路上側制御装置1は、複数の通信チャンネルを備える。通信チャンネル数は、例えば、交信領域に入ることができる最大の車両4の数に設定すればよい。
1つの交信領域において、複数の通信相手(車両4)と同時に無線交信するために、複数の通信チャンネルを設ける手段としては、例えば、FDM(周波数分割多重方式)やTDM(時分割多重方式)がある。FDMは、複数の無線周波数を用意し、各通信相手毎に異なる周波数を割り当てるものである。
TDMは、一つの周波数を複数の通信相手に時分割で割り当てて共用するものだが、その割当て方法に幾つかの方法がある。例えば、ランダムアクセス方式(純アロハ方式やスロットアロハ方式)、あるいは搬送波検知(CSMA)方式等がある。
これらの具体的な内容については、例えば、書籍「移動通信ネットワーク(情報ネットワークシリーズ12)」(横山光男著、昭晃堂刊)の126頁以降に記載されている。また、スペクトラム拡散方式もTDMの分野に含まれる。
複数の車両4が進入してくると、FDMやTDMの方式により各車両と通信リンクを確立するが、各通信リンクは、完全に独立した交信動作を行う。そして、通信リンク毎に独立して、後述する交通諸量の算出が行われる。この複数のリンクからのデータを処理することにより得られた交通諸量の結果は、交信領域に1台毎に車両が進入してきた場合の単に複数台分に相当すると見なせるので、必要に応じた加算処理を行うことで所定の交通諸量が得られることになる。
図7に示したタイミングチャートの説明に戻り、路上側制御装置1は、車両側制御装置3と交信が行われている間は、N地点コードとして‘1018’を送受信するが、車両4が交信領域から出てしまうことにより、車両側制御装置3からのデータ列が途絶えると、バックグランドでカウントが継続されていたカウント値を用いて、新たなN地点コードを作成し、送信する。図7に示した例では、新たなN地点コードとして、‘1033’が送信されている。
このように、バックグランドでカウントを継続し、その継続されているカウント値を用いるのは、例えば、複数のリンクが路上側制御装置1と車両4との間で張られている場合、第1のリンクでは、第1の車両側制御装置3とN地点コードが‘1018’のデータ列を送受信し、第2のリンクでは、第2の車両側制御装置3とN地点コードが‘1019’のデータ列を送受信することも考えられ、このようなときに、第1のリンクが、第1の車両側制御装置3との交信を終了し、N地点コードとして‘1019’を送信してしまうと、異なる車両4に同一のN地点コードが付与されてしまうことが考えられる。
このようなことを防ぐ為に、路上側制御装置1に複数のリンクが張られるような場合には、それらの複数のリンクに共通して用いられるカウンタを用意し、そのカウンタのカウンタ値をN地点コードとして用いるようにする。そのために、図7に示した例では、N地点コードが、‘1018’から‘1033’へと下2桁のカウンタ値が飛んだ値に変更されている。
なお、このようにしてカウンタ値が飛んだ場合のN地点コード、この場合、‘1019’乃至‘1032’のN地点コードは、同一リンクにおいて他の車両4に対して割り当てられる、異なるリンクにおいて他の車両4に対して割り当てられるなどして、用いられている場合がある。
路上側制御装置1と車両側制御装置3との間で、同一のN地点コードが送受信されている時間をΔtnとする。この時間Δtnは、例えば、路上側制御装置1が、この場合、N地点コードとして‘1018’を含むデータ列を送信する際の時刻76(図6A)と、最後に車両側制御装置3からのデータ列を受信したときの時刻の差分を算出することにより求められる。または、データ列が送信される周期と、同一のN地点コードが送信された回数を用いて算出することもできる。
ここで、時間Δtnについて更に説明する。例えば、交信領域内の車両4に対して、データ列を送信した場合、そのデータ列が車両側制御装置3に受信され、その受信に対応する処理として、車両側制御装置3から送信されたデータ列を、路上側制御装置1が、必ず受信するとは限らない。
図9に示すように、路上側制御装置1から、N地点コードとして‘1018’を含むデータ列が送信され、車両側制御装置3からN地点コードとして‘1018’を含むデータ列が送信されている状態のときに、何らかの原因で、車両側制御装置3からのデータ列が送信されなかったり、または、送信されたが、路上側制御装置1で受信されなかったりしたような状態が発生することが考えられる。このような状態を瞬断と称する。
路上側制御装置1は、車両側制御装置3からのデータ列が受信されないと、それが、瞬断という状態であっても、そのことを、この時点では、判断できないため、上述したように、バックグランドでカウントされていたカウント値を用いた新たなN地点コード(図9では、‘1025’)を含むデータ列を送信する。そして路上側制御装置1が、N地点コードとして‘1026’を含むデータ列を送信したとき、車両側制御装置3が、そのデータ列を受信すると、車両側制御装置3は、その受信に対応する処理として、上述したように、データ列を送信する。
このとき、送信されるデータ列は、N地点コードとして‘1018’を含むものである。車両側制御装置3は、路上側制御装置1からのデータ列を受信したとき、そのデータ列に含まれるスポットダイナミックコード75のN地点コードを参照する。車両側制御装置3は、参照したN地点コードのエリアコード(前の2桁)が、自身が記憶しているN地点コードのエリアコードと同一のものであるか否かを判断し、同一のものであると判断された場合、自身が記憶しているN地点コードをデータ列に含めて送信する。
このようにすることにより、瞬断などの状況が発生したような場合でも、再度、正しい交信に復帰させることが可能となる。すなわち、図9に示すように瞬断を、誤って、交信が終了した(交信領域から車両4が出てしまった)として処理してしまうと、交信していた時間(すなわち、交信領域内に車両4が存在していた時間)は、時間Δtn´となってしまう。しかしながら、上述したように、N地点コードを含むデータ列を送受信することにより、瞬断が発生したとしても、瞬断として処理することが可能であり、交信領域内に車両4が存在していた時間を、時間Δtnと正しい時間で計測することが可能となる。
この時間Δtnは、車両4が交信領域を通過するのにかかった時間である。この時間Δtnを用いて、交通諸量として、速度と渋滞占有率を求めることができる。速度は、車両4の速度である。渋滞占有率は、渋滞の度合い、そのものを表すパラメータである。
車両4の速度Vnは、次式(1)により算出される。
Vn=L/Δtn ・・・(1)
式(1)において、Lは、交信領域の進行方向における距離である。この距離は、予め取得しておくことが可能な値である。従って、式(1)から車両4の速度Vnを算出することができる。
渋滞占有率Roccは、以下の式(2)により算出される。
Rocc=ΣΔtn/T ・・・(2)
式(2)において、Tは、予め設定された所定の時間であり、ΣΔtnは、所定の時間Tの間の時間tnを加算した値(所定の時間Tの間に、複数の車両4と交信した総時間)である。図10を参照して説明するに、所定の時間Tの間に、3台の車両4と交信し、それぞれの交信時間が、時間Δtn-1、時間Δtn、および、時間Δtn+1であった場合、ΣΔtnは、時間Δtn-1、時間Δtn、および、時間Δtn+1を加算した値となる。
このようにして、速度と渋滞占有率を算出することができる。速度と渋滞占有率を算出する場合、スポットダイナミックコード75のN地点コードが送受信されるようにすれば良く、スポットダイナミックコード75の(N−1)地点コードは必要がなく、また空間密度や旅行時間を計測するわけではないので、フラグ74(図6A)も必要ない。
従って、速度または渋滞占有率を算出することを目的とした場合、路上側制御装置1から送信されるデータ列は図11に示すようなデータ列でも良い。すなわち、図6Aに示したデータ列と比較し、フラグ74が削除され、スポットダイナミックコード75のN−1地点コードが削除された構成のデータ列である。
次に、図6Aに示したようなデータ列が路上側制御装置1から送信される場合、すなわち、空間密度、または、旅行時間の算出がされる場合について説明する。図12を参照して、空間密度について説明する。空間密度とは、所定の時刻における、一定区間内に存在する車両4の台数である。図12に示したように、所定区間として、N−1地点からN地点までの区間とした場合、任意の時刻において、その区間内に存在している車両4の数を数えることにより空間密度が算出される。
旅行時間とは、所定の地点から他の所定の地点まで移動するのに要する時間である。N地点において取得される(N−1)地点コードと時刻を用いて算出することができる。すなわち、(N−1)地点を通過した車両4((N−1)地点コードを記憶している車両4)の時刻と、その車両4が、N地点に設置された路上側制御装置1と交信を開始した時刻との差分を算出することにより、(N−1)地点からN地点までにかかった走行時間、すなわち、旅行時間が算出される。
本実施の形態においては、路上側制御装置1が設置された場所を車両4が通過すると、上述したような交信が行われることにより、車両4に搭載されている車両側制御装置3には、地点コードが記憶(付与)される。このように、所定の区間内に存在する車両4に付与された地点コードを用いることにより、空間密度および旅行時間が算出される。空間密度および旅行時間の算出についての詳細は、後述する。
図13を参照して、N地点における路上側制御装置1と車両側制御装置3の間で送受信されるデータ列について説明する。図13においては、送受信されるデータ列のうち、スポットダイナミックコード75またはスポットダイナミックコード83のみを示している。また、図13においては、スポットダイナミックコード75,83の(N−1)またはNは、2桁の数字で表されるエリアコードを示す。
所定の時刻t1において、路上側制御装置1から車両側制御装置3に対して、スポットダイナミックコード75のうち、(N−1)地点コードは空白とされ、N地点コードが‘N55’とされたデータ列が送信される。送信されるデータ列のフラグ74(図6A)は、オンの状態にされている。
そのデータ列を時刻t2において受信した車両側制御装置3は、受信したことに対応する処理としてデータ列を送信するが、そのデータ列のスポットダイナミックコード83として、自身が記憶している(N−1)地点に設置された路上側制御装置1から受信した(N−1)地点コード(この場合、‘(N−1)18’)を含み、N地点に設置された路上側制御装置1から受信したN地点コード(この場合、‘N55’)を含むデータ列を送信する。
(N−1)地点コードを含むスポットダイナミックコード83が送信される場合、(N−1)地点コードを取得したときの時刻(N−1地点に設置されている路上側制御装置1から供給された時刻)が、(N−1)地点コードとともに送信される。
時刻t3において、車両側制御装置3からのデータ列を受信した路上側制御装置1は、スポットダイナミックコード75として、受信したデータ列に含まれるスポットダイナミックコード83と同様のコードを含むデータ列を送信する。このように、同様のコードを含むデータ列を返信するのは、車両側制御装置3からのデータ列を、路上側制御装置1側で正確に受信したことを車両側制御装置3に認識させるためである。
時刻t4において、車両側制御装置3は、路上側制御装置1からのデータ列を受信し、その受信したことに対応する処理として、スポットダイナミックコード83に、N地点コードを含むデータ列を送信する。この際、車両側制御装置3に受信されたデータ列のスポットダイナミックコード75には、(N−1)地点コードとN地点コードが含まれており、このような2つの地点コードが含まれているスポットダイナミックコード75を受信したときには、車両側制御装置3は、N地点コードのみがスポットダイナミックコード83に含まれるデータ列を送信する。
時刻t5において、路上側制御装置1は、車両側制御装置3に対して、(N−1)地点コードは空白のスポットダイナミックコード75、すなわち、時刻t1において送信したスポットダイナミックコード75と同様のスポットダイナミックコード75を含むデータ列を送信する。時刻t4以降に、路上側制御装置1と車両側制御装置3との間で行われる交信において送受信されるデータ列は、基本的に、N地点コードのみを含み、図7などを参照して説明した処理と同様である。
図13を参照した説明においては、時刻t4以降は、(N−1)地点コードを含まないスポットダイナミックコード75,83の送受信が行われるとして説明したが、含まれるようにしても良い。このように、(N−1)地点コードを送受信することにより、N地点を通過する車両4が、(N−1)地点を通過した車両4であるか否かを判断することができる。
上述した路上側制御装置1や車両側制御装置3において行われる処理、交通諸量の算出などについて、さらに、以下に説明する。まず、図14のフローチャートを参照して、車両側制御装置3の動作について説明する。ステップS1において、車両側制御装置3の制御処理部51(図4)は、路上側制御装置1からのデータ列を受信したか否かを判断する。制御処理部51は、アンテナ52により受信され、弁別スイッチ53を介し、復調部54により復調されたデータがあるか否かを判断することにより、データ列を受信したか否かを判断する。
ステップS1の処理は、データ列を受信したと判断されるまで繰り返し行われる(待機状態が継続される)。ステップS1において、データ列を受信したと判断された場合、ステップS2のおいて、受信されたデータ列のフラグ74は、オンであるか否かが判断される。ステップS2において、受信されたデータ列のフラグ74は、オンの状態であると判断された場合、ステップS3に進み、制御処理部51は、自身が記憶している1つ前の地点((N−1)地点)のエリアコードに1を加算した値と、受信したデータ列に含まれるN地点のエリアコードの値が一致するか否かを判断する。
このような判断を行うため、制御処理部51は、少なくとも1つの地点コードを記憶する記憶部(不図示)を備える。また、記憶部は、後述する処理により、受信した地点コードも記憶する必要があるため、少なくとも2つの地点コードを記憶する。
ステップS3において、記憶している(N−1)地点コードのエリアコードに1だけ加算した値と、受信したN地点コードのエリアコードが一致すると判断された場合、ステップS4に進む。ステップS4において、記憶している(N−1)地点コードのエリアコードが、路上側制御装置1からのデータ列に含まれる(N−1)地点コードのエリアコードと同一であるか否かが判断される。
ステップS4において、記憶している(N−1)地点コードのエリアコードが、路上側制御装置1からのデータ列に含まれる(N−1)地点コードのエリアコードと同一ではないと判断された場合、ステップS5に進む。受信された路上側制御装置1からのデータ列に含まれるN地点コードが、制御処理部51に記憶される。そして、ステップS6において、制御処理部51は、記憶していた(N−1)地点コードと、記憶したN地点コードを、それぞれスポットダイナミックコード83に含むデータ列を生成し、路上側制御装置1に対して送信する。
ステップS1乃至S6までの処理の流れは、図13に示した時刻t2の状態である。即ち、車両4が路上側制御装置1の交信領域に入り、通信を開始した時点における処理である。通信を開始した時点では、図13を再度参照するに、時刻t1で路上側制御装置1から送信されるデータ列のスポットダイナミックコード75には、(N−1)地点コードは空白であるので、車両側制御装置3が記憶している(N−1)地点コードとは一致せず、従って、ステップS4において、記憶している(N−1)地点コードのエリアコードが、路上側制御装置1からのデータ列に含まれる(N−1)地点コードのエリアコードと同一ではないと判断され、ステップS5とステップS6の処理が実行される。
一方、ステップS4において、制御処理部51が、記憶している(N−1)地点コードのエリアコードと、路上側制御装置1からのデータ列に含まれる(N−1)地点コードのエリアコードが同一であると判断した場合、ステップS7に進み、記憶している(N−1)地点コードが削除される。そして、ステップS8において、記憶されているN地点コードを含むデータ列が生成され、送信される。
ステップS4からステップS7,S8へと処理が流れるのは、図13に示した時刻t4の状態のときである。この状態は、路上側制御装置1が、車両側制御装置3から初めて送信されたデータ列を、正確に受信したことを示す為に、受信したデータ列のスポットダイナミックコード83と同一のコードを含むスポットダイナミックコード75を送信したときの、車両側制御装置3の処理である。
従って、ステップS7の処理に処理が来る場合、図13における時刻t1乃至t3までの処理は終了していることになり、換言すれば、ステップS1乃至S6の処理が終了していることになり、ステップS5において、N地点コードが記憶されているため、ステップS8において、制御処理部51が、記憶しているN地点コードを含むデータ列を生成し、送信する処理を実行することが可能となる。
一方、ステップS3において、制御処理部51が、記憶している(N−1)地点コードのエリアコードに1だけ加算した値が、受信したN地点コードのエリアコードと同一ではないと判断した場合、ステップS8に進む。ステップS8においては、上述したように、記憶されているN地点コードを含むデータ列が生成され、送信される。
この状態は、図13に示した時刻t4以降の状態である。即ち、路上側制御装置1と車両側制御装置3との間で、交信が複数回行われている状態である。
一方、ステップS2において、受信したデータ列のフラグ74は、オンではないと判断された場合、ステップS9に進む。ステップS2において、受信したデータ列のフラグ74は、オンではないと判断される状態は、図11に示したようなフラグ74を含まないデータ列を受信した状態も含まれる。ステップS9において、車両側制御装置3の制御処理部51は、記憶しているN地点コードのエリアコードと、受信したN地点コードのエリアコードが同一であるか否かを判断する。
ステップS9において、記憶しているN地点コードのエリアコードと、受信したN地点コードのエリアコードが同一ではないと判断されるのは、車両4がN地点の路上側制御装置1の交信領域に入り、その路上側制御装置1と車両側制御装置3が交信を開始したと判断された場合である。従って、ステップS9において、記憶しているN地点コードのエリアコードと、受信したN地点コードのエリアコードが同一ではないと判断された場合、ステップS10に進み、受信したデータ列のスポットダイナミックコード75に含まれるN地点コードが記憶される。
ステップS10の処理が終了した場合、または、ステップS9において、記憶しているN地点コードのエリアコードと、受信したN地点コードのエリアコードが同一であると判断された場合、ステップS8に進み、記憶しているN地点コードを含むデータ列が生成され、送信される。
ステップS8乃至S10の処理は、上述した速度や渋滞占有率を求める際に送受信されるデータ列の処理である。
次に、路上側制御装置1または統轄管制装置2の動作について、図15以降のフローチャートを参照して説明する。まず、路上側制御装置1の動作について、図15のフローチャートを参照して説明する。ステップS21において、路上側制御装置1の制御処理部11は、N地点コードのカウント値(下2桁)のカウントを開始する。ステップS22において、そのカウントされているカウント値をN地点コードのカウント値とし、図6Aまたは図11に示したようなデータ列を生成し、車両4に対して送信する。
ステップS23において、車両4が交信領域に存在することにより、送信したデータ列が受信され、その結果、車両側制御装置3から送信されたデータ列を受信したか否かが、制御処理部11により判断される。ステップS23において、車両側制御装置3からのデータ列を受信したと判断された場合、ステップS24に進み、制御処理部11は、自己のN地点コードのエリアコードと、受信したデータ列に含まれるN地点コードのエリアコードが一致するか否かを判断する。
ステップS24において、制御処理部11が、自己のN地点コードのエリアコードと、受信したデータ列に含まれるN地点コードのエリアコードが一致しないと判断した場合、ステップS25に進み、同じ動作状況が時間T1以上連続しているか否かが判断される。時間T1は、例えば、1乃至2分ぐらいに設定される。
ステップS25において、同じ動作状況が時間T1以上連続してはいないと判断された場合、ステップS26に進み、車両4が交信領域に進入してきたと判断し、車両4の進入時の処理が実行される。ステップS26において行われる車両進入時の処理は、例えば、その後の処理において、車両側制御装置3と交信を行うデータ列に含まれるN地点コードのカウンタ値を維持する、瞬断時の回数をカウントするカウンタをリセットする、フラグ74がオンの状態のデータ列を送信したことにより、車両側制御装置3からのデータ列に(N−1)地点コードが含まれている場合、その(N−1)地点コードを記憶するなどである。
一方、ステップS24において、制御処理部11が、自己のN地点コードのエリアコードと、受信したデータ列に含まれるN地点コードのエリアコードが一致すると判断した場合、換言すれば、車両側制御装置3との交信が少なくても1回は行われたと判断した場合、ステップS27に進む。ステップS27において、制御処理部11は、自己のN地点コードのカウンタ値と、受信したデータ列に含まれるN地点コードのカウンタ値が一致するか否かを判断する。自己のN地点コードのカウンタ値とは、ステップS26において車両進入時の処理として、カウンタ値が維持されている場合は、そのカウンタ値であり、カウンタ値が維持されていない場合は、カウンタによりカウントされているカウンタ値のことである。
ステップS27において、制御処理部11は、自己のN地点コードのカウンタ値と、受信したデータ列に含まれるN地点コードのカウンタ値が一致しないと判断した場合、ステップS28に進み、同じ動作状況が時間T2以上連続しているか否かを判断する。時間T2は、例えば、1乃至2分に設定される。
ステップS28において、同じ動作状況が時間T2以上連続してはいないと判断された場合、ステップS29に進み、瞬断時の処理が実行される。ステップS29に処理が進むということは、図9を参照して説明した瞬断という状況が発生していると考えられる。そこで、ステップS29において実行される瞬断時の処理としては、例えば、受信された車両側制御装置3からのデータ列に含まれていたN地点コードのカウンタ値を再度維持する、瞬断回数カウンタの値を1だけ加算するなどである。
一方、ステップS27において、制御処理部11が、自己のN地点コードのカウンタ値と、受信したデータ列に含まれるN地点コードのカウンタ値が一致したと判断した場合、ステップS30に進む。ステップS30において、同じ動作状況がT3以上連続しているか否かが判断される。時刻T3は、例えば、5乃至6時間に設定される。
ステップS30において、同じ動作状況がT3以上連続していないと判断された場合、ステップS31に進み、車両検知中の処理が実行される。ステップS31に処理が進む場合、路上側制御装置1と車両側制御装置3は、少なくとも1回は交信を行っており、かつ、瞬断の状態が発生していない(または、発生したが回復した)状態であり、正常に交信が行われている状態であることを示す。
そこで、ステップS31において行われる車両検知中の処理としては、維持しているカウンタ値をそのまま維持し続ける、記憶した(N−1)地点コードを削除するなどである。
一方、ステップS23において、車両側制御装置3からのデータ列を受信していないと判断された場合、ステップS32に進み、カウンタのカウンタ値が1だけ加算された値に設定し直される。そして、S33において、前回の送信(ステップS22におけるデータ列の送信)から、サイクリック時間だけ時間が経過したか否かが判断される。ステップS33において、前回の送信から、サイクリック時間だけ時間が経過したと判断されるまで、ステップS33の処理は繰り返され、経過したと判断されると、ステップS22に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
ステップS32の処理には、ステップS25、ステップS28、およびステップS30において、それぞれ、同じ動作状況が、時間T1,T2,T3以上連続していると判断された場合も来る。これらの各ステップで、同じ動作状況が所定時間以上連続していると判断されるということは、何らかのエラーが発生していると判断することができる。そこで、そのように判断される場合は、ステップS32に進み、カウンタ値を維持せずに、カウントを進めて、新たな処理を実行するようにする。
このような処理が、路上側制御装置1において行われることにより得られたデータを用いた処理について説明する。以下の説明は、路上側制御装置1において行われるようにしても良いし、路上側制御装置1からのデータを取得した統轄管制装置2において行われるようにしても良い。
まず、図16のフローチャートを参照して、交通量の算出について説明する。交通量の算出は、ステップS41において、路上側制御装置1に張られている各リンク毎に、カウント値を維持した回数をカウントすることにより算出される。ここで、カウント値を維持した回数とは、1台の車両側制御装置3と交信が継続されることにより、カウント値が維持されたのを1回として数えたとき累積回数である。
図17のフローチャートを参照して、速度の算出について説明する。ステップS51において、所定の車両4に搭載されている車両側制御装置3との交信が終了したか否かが判断される。この判断は、車両側制御装置3からのデータ列がとぎれたか否かを判断することにより行われる。ステップS51において、所定の車両側制御装置3との交信が終了したと判断されると、ステップS52に進み、その車両側制御装置3との交信に用いられたN地点コードのカウント値を維持していた時間が補正される。
N地点コードのカウント値の維持が開始された時点の立ち上がり、終了された時点の立ち下がりは、車両4が、それぞれ、路上側制御装置1の交信領域に進入した時点、交信領域から出た時点であることから、交信の途中の部分が含まれていることになる。そのような状況を考慮し、速度の算出に用いられる時間を補正する場合、立ち上がりと立ち下がりを合わせて、平均的に1交信時間(周期間隔)を加算するといった方法がある。または、補正係数として、その地点毎に、その補正係数を決め、その補正係数を用いて補正する方法がある。どのような方法を用いても良い。
ステップS52において、補正された時間が用いられて、ステップS53において速度の算出が行われる。速度の算出は、上述したように、式(1)を用いて行われる。式(1)は、補正した時間を用いていない式である。補正した時間を用いる場合、式(1)は、次式(1)´のようになる。
Vn=L/(Δtn+Tc) ・・・(1)´
式(1)´において、Tcは、路上側制御装置1において、データ列を送信するサイクル周期時間である。式(1)´においては、時間Δtnに、Tcが加算されることにより補正が行われる例を示している。
なお、このような時間Δtnの補正は、後述する他の交通諸量を算出する際にも行われるようにしても良い。
図18のフローチャートを参照して、渋滞占有率の算出について説明する。ステップS61において、所定の時間Tsが経過したか否かが判断される。所定の時間Tsとは、渋滞占有率を算出する周期時間である。ステップS61において、時間Tsだけ時間が経過したと判断された場合、その時間Tsの間に、カウント値が維持されていた時間の合計時間が算出される。即ち、図10を参照して説明したΣΔtnが、ステップS62において算出される。
ステップS63において、ステップS61における時間Tsと、ステップS62において算出された合計時間ΣΔtnが用いられて、渋滞占有率が算出される。渋滞占有率は、上述したように、式(2)が用いられて算出される。
次に、空間密度の算出について説明する。空間密度とは、上述したように、任意の時刻における、一定区間内に存在する車両4の台数である。本実施の形態においては、N地点で、上述したようなデータ列の授受を行うことにより得らるデータを用いて、空間密度を算出する。まず、図19を参照して、その空間密度の算出の仕方に関する概念を説明する。
図19Aは、時刻t1における所定の車線の状況を示している。ここでは、説明の都合上、3台の車両4−1乃至4−3が、一定の速度で、1車線上を走行しているとして説明する。時刻t1においては、図19Aに示すように、車両4−1乃至4−3は、(N−1)地点より前の位置を走行しており、(N−1)地点を通過していない。
所定の時間が経過し、時刻t2になったとき、図19Bに示すように、車両4−1乃至4−3は、(N−1)地点とN地点の間に位置する。更に時間が経過し、時刻t3になると、図19Cに示すように、車両4−1乃至4−3は、N地点を通過する。
(N−1)地点からN地点の間の空間密度(ここでは、(N−1)地点からN地点の間に存在する車両4の台数を、(N−1)地点からN地点までの距離で除算した値と定義する)は、(N−1)地点からN地点の距離を1とすると、時刻t1のとき0、時刻t2のとき3、時刻t3のとき0となる。ここで、時刻t2のときの空間密度を、N地点において、算出することを考える。時刻t2の時点では、この場合、図19Bに示したように、車両4−1乃至4−3が存在する。これらの車両4−1乃至4−3は、時刻t1乃至時刻t2の間に、(N−1)地点を通過した車両4である。
従って、車両4−1乃至4−3は、(N−1)地点コードと、その(N−1)地点コードが取得した時刻情報を保持し、かつ、その時刻情報が示す時刻は、時刻t1<時刻<t2を満たす。
車両4−1乃至4−3は、時刻t2乃至t3の間に、N地点を通過する。従って、N地点に設置されている路上側制御装置1は、時刻t2乃至t3の間に、車両4−1乃至4−3が通過することにより、それらの車両4から、(N−1)地点コードと、時刻t1<時刻<t2を満たす時刻を示す時刻情報を取得することになる。このようなことを利用し、時刻t2における空間密度を、N地点において計測する。
しかしながら、時刻t3のときに、時刻t2の時点で(N−1)地点からN地点の区間に存在した車両4の全てが、N地点を通過するとは限らない。例えば、図20Aに示すように、時刻t3の時には、車両4−1と車両4−2しか、N地点を通過していないような状況があることが考えられる。このようなことを考慮して、時刻t1乃至時刻t2の間に(N−1)地点を通過した車両4が、N地点を通過するのに充分足りる時間を時間Tkと設定する。その時間Tkの間にN地点を通過した車両4をカウントするようにする。
時間Tkを長く時間に設定すると、図20Bに示したように、時刻t2以降に(N−1)地点を通過した車両4−4が、時間Tkの間に、N地点を通過するために、カウントされてしまうといったことが起こることが考えられる。そこで、独立してカウントを行う2つのカウンタを用い、図20Aや図20Bに示したような状況が発生しても対処できるようにする。
図21を参照して説明するに、時刻tn-1,時刻tn,時刻tn+1,時刻tn+2は、空間密度を計測する時刻、即ち、カウンタでカウントを開始する時刻を示し、それぞれの時刻間は、一定の周期(適宜、計測周期と記述する)とされている。この計測周期は、図20Bを参照して説明したような状態、すなわち、時刻t2以降に(N−1)地点を通過した車両4−4が、時間Tkだけ経過する間に、N地点を通過するといったことがないような周期に設定される。従って、計測周期は、時間Tkより短い値に設定される。
時刻tnにおいて、第1のカウンタでカウントが開始されると、時間Tknが経過するまで、そのカウントは継続される。時刻tn+1になると、第1のカウンタのカウントとは独立して、第2のカウンタでカウントが開始される。第2のカウンタでのカウントも、時間Tknと同じ時間Tkn+1だけ継続されて行われる。時間Tkは、計測周期の2周期分以内の時間として設定される。
なお、ここでは、第1のカウンタと第2のカウンタの2つのカウンタを用いた場合を例に挙げて説明するため、上述したように、時間Tkは、計測周期の2周期分以内の時間として設定されるとしたが、複数のカウンタを用いても良く、複数のカウンタを用いる場合、そのカウンタの個数は、時刻Tkと計測周期との関係において決定される。例えば、時間Tkが、計測周期の4周期分以上、5周期分以内の時間として設定された場合、5つのカウンタが必要となる。
このような処理について、図22のフローチャートを参照してさらに説明する。なお、図22に示したフローチャートの処理は、N地点に設置されている路上側制御装置1が行うようにしても良いし、その路上側制御装置1からデータを取得し、そのデータに基づいて、統轄管制装置2が行うようにしても良い。路上側制御装置1が行う場合、図22に示す第1のカウンタと第2のカウンタは、例えば、
制御処理部11に設けられ、各ステップの判断なども、制御処理部11において行われる。
第1のカウンタは、ステップS71において、所定の時刻(個々では、時刻tnとする)に計測を開始する。ステップS72において、車両4からのデータ列を受信したか否かが判断される。ステップS72において、車両4からのデータ列を受信したと判断されるまで、ステップS72の処理は繰り返され(待機状態が維持され)、車両4からのデータ列を受信したと判断された場合、ステップS73に進む。
ステップS73において、受信したデータ列に含まれるスポットダイナミックコード83の(N−1)地点コードのエリアコードが、前の地点の地点コードのエリアコードであるか否かが判断される。この(N−1)地点コードを含むデータ列を受信するのは、前提として、路上側制御装置1から送信されるデータ列のフラグ74がオンにされている必要がある。
ステップS73において、受信されたデータ列に含まれる(N−1)地点コードのエリアコードは、前の地点の地点コードのエリアコードではないと判断された場合、その車両4は、計測対象外の車両と判断され、ステップS72に戻り、それ以降の処理が繰り返される。一方、ステップS73において、受信されたデータ列に含まれる(N−1)地点コードのエリアコードは、前の地点の地点コードのエリアコードであると判断された場合、ステップS74に進む。
ステップS74において、(N−1)地点コードとともに受信した時刻情報を用いて、その時刻情報が示す時刻が時刻tn-2以上であり、かつ、時刻tn-1であるか否かが判断される。これは、図19を参照して説明したことに当てはめると、時刻tn-1が時刻t1であり、時刻tnが時刻t2である。従って、ステップS73とステップS74における処理は、この場合、時刻t1から時刻t2の間に(N−1)地点を通過した車両4であるか否かの判断を行う処理である。
ステップS74において、(N−1)地点コードとともに受信した時刻情報を用いて、その時刻情報が示す時刻が時刻tn-1以上であり、かつ、時刻tnではないと判断された場合、その車両4は、計測対象外の車両4であると判断され、ステップS72に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
一方、ステップS74において、(N−1)地点コードとともに受信した時刻情報を用いて、その時刻情報が示す時刻が時刻tn-1以上であり、かつ、時刻tnではあると判断された場合、その車両4は、計測対象の車両4であると判断され、ステップS75に進み、カウンタの値が1だけカウントアップされる。
ステップS76において、計測周期になったか否かが判断される。ステップS76において、計測周期であると判断された場合、ステップS77に進み、計測周期ではないと判断された場合、ステップS77の処理をスキップし、ステップS78に進む。ステップS77において、第1のカウンタは、第2のカウンタに計測の開始を指示する。第2のカウンタは、その指示に従い、ステップS101において、計測を開始する。
一方、第1のカウンタは、第2のカウンタに対して、計測開始の指示を出す場合も、出さない場合も、ステップS78において、計測開始から時間Tkだけ経過したか否かを判断する。ステップS78において、計測開始から時間Tkだけ経過してはいないと判断された場合、ステップS72に戻り、それ以降の処理が繰り返される。第1のカウンタは、このように、計測を開始してから、時間Tkだけ時間が経過するまで、カウント動作を継続する。
一方、ステップS78において、計測開始から時間Tkだけ経過したと判断された場合、ステップS79に進み、カウンタの値が読み出される。そして、ステップS80において、読み出されたカウンタの値を用いて、空間密度が算出される。空間密度は、カウンタの値を(N−1)地点からN地点までの距離で除算することにより算出される。このような空間密度の算出が行われる一方で、ステップS81において、カウンタの値が0にリセットされる。
このような処理が、第1のカウンタにおいて繰り返される。第2のカウンタにおいて繰り返される処理(ステップS101乃至ステップS111)も、第1のカウンタにおいて繰り返される処理(ステップS71乃至ステップS81)と同様であるので、その説明は省略する。
次に、旅行時間の算出について説明する。旅行時間の算出は、統轄管制装置2において行われる。図23は、統轄管制装置2により管理されるメモリ33(図3)において記憶されるデータを模式的に表した図である。メモリ33には(N−1)地点データ91とN地点データ92が記憶される。ここでは、説明の都合上、2つの地点のデータを例に挙げて説明するが、複数の地点のデータが統轄管制装置2のメモリ33には記憶される。
(N−1)地点データ91には、(N−1)地点に設置された路上側制御装置1から、その路上側制御装置1がカウンタ値を維持したスポットダイナミックコード75と、そのスポットダイナミックコード75を送付した時刻が関連付けられて記憶される。
N地点データ92には、N地点に設置された路上側制御装置1から、その路上側制御装置1が車両4と交信を行った結果得られた、スポットダイナミックコード83、そのスポットダイナミックコード83が取得された時刻、および、(N−1)地点データ91に記憶されているデータとN地点データ92に記憶されているデータを用いて算出された旅行時間が、それぞれ関連付けられて記憶される。
旅行時間は、(N−1)地点データ91とN地点データ92に、それぞれ記憶されているスポットダイナミックコードが同一のものを検索し、その検索された同一のスポットダイナミックコードに対応する時刻の差分を算出することにより求められる。
図23に示した例では、同一のスポットダイナミックコードとして、‘N−1 05’が記憶されている。(N−1)地点データ91から、‘N−1 05’に対応する時刻として‘12:01:12’が読み出され、N地点データ92から、‘N−1 05’に対応する時刻として‘12:14:10’が読み出される。これらの読み出された時刻の差分を算出すると、旅行時間として‘00:12:58’と求められる。
このようなデータが、統轄管制装置2のメモリ33に記憶されるための路上側制御装置1の処理について説明する。路上側制御装置1の処理については、図15のフローチャートを参照して既に説明したが、その図15のフローチャートのステップS26の処理として、車両4の進入時の処理が実行される際、その処理のうちの1処理として、送信したスポットダイナミックコード75、または、受信したデータ列に含まれるスポットダイナミックコード83の少なくとも一方を統轄管制装置2に送信する。
連続的な区間に対して、旅行時間を算出する場合、メモリ33には、N地点データ92として、(N−1)地点データ91に記憶されるデータと同種類のデータ、すなわち、N地点に設置された路上側制御装置1から送信されたデータ列に含まれるスポットダイナミックコード75と、そのスポットダイナミックコード75を送信した時刻を記憶する必要がある。そのような場合、路上側制御装置1は、送信したスポットダイナミックコード75と受信したデータ列に含まれるスポットダイナミックコード83の両方に関するデータを、統轄管制装置2に対して送信する。
図24のフローチャートを参照して統轄管制装置2が行う旅行時間の算出に関する処理について説明する。ステップS131において、統轄管制装置2は、通信部31により、路上側制御装置1からのデータを受信する。受信されたデータは、ステップS132において、メモリ33に、図23を参照して説明したように、(N−1)地点データ91またはN地点データ92に記憶される。
ステップS133において、一致するスポットダイナミックコードの検索が行われる。この検索結果が用いられて、ステップS134において、一致するスポットダイナミックコードがあったか否かが判断される。そして、ステップS134において、一致するスポットダイナミックコードがあったと判断された場合、ステップS135に進み、一致するスポットダイナミックコードはないと判断された場合、旅行時間の算出は行われずに終了される。ステップS135において、旅行時間の算出が行われる。そして、算出された旅行時間は、ステップS136において、N地点データ92に追加記憶される。
このように、旅行時間を算出するには、車両4を特定する必要があるが、その特定するための情報としては、スポットダイナミックコードだけで良く、プライベートに関わるデータを用いずに行われる。そのため、プライベートを保護しつつ、正確に、旅行時間を算出することが可能となる。
次に、図1に示した情報処理システムの他の接続(構成)の仕方について、図25を参照して説明する。図25における情報処理システムの構成は、1車線上には、1つのアンテナ16が設置される。図25においては、片側2車線存在するので、アンテナ16−1とアンテナ16−2が設置されている。アンテナ16−1とアンテナ16−2には、それぞれ、路上側制御装置1−1と路上側制御装置1−2が接続されている。
路上側制御装置1−1と路上側制御装置1−2は、それぞれ、コントローラ101と接続されている。このコントローラ101は、路上側制御装置1からのデータを統轄管制装置2に対して送信するなどの、路上側制御装置1の制御を行う。各地点毎に、コントローラ101は設けられる。従って、図26に示すように、統轄管制装置2には、各地点に設置された複数のコントローラ101−1乃至101−Mが接続される。
このように、コントローラ101を設けるような構成にした場合においても、上述したような処理が的確に行われることは言うまでもない。
上述した交通諸量としての、交通量、速度、渋滞占有率、空間密度、および旅行時間は、それぞれ別々に算出されるようにしても良いし、同時に算出されるようにしても良い。また、本実施の形態において、無線という表現には、DSRC(Dedicated Short Range Communication:専用狭域通信)と称される路車間通信全般として、電磁波や光通信手段などを含むものとする。電磁波の手段には、電子ナンバープレートも含むものとする。
本実施の形態を適用することにより算出された交通諸量は、道路交通管制システムにおいて、各諸量の特性に応じて、信号機の制御、渋滞情報などの提供、交通関係統計データの算出などに用いることが可能である。
カーナビゲーションシステムなどと称されるシステムにおいては、ユーザにより設定された地点間の経路を探索し、その探索に基づいて、旅行時間を算出するといった機能を有するものがあるが、その旅行時間の算出に、本実施の形態を適用して算出された旅行時間を用いることが可能である。
本実施の形態を適用することにより空間密度を精度良く算出することが可能なので、広い範囲にわたる渋滞状況を定量的に把握でき、その把握に基づいて、渋滞を解消するのに適した信号機の制御を行うことも可能である。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
図27は、汎用のパーソナルコンピュータの内部構成例を示す図である。パーソナルコンピュータのCPU(Central Processing Unit)151は、ROM(Read Only Memory)152に記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM(Random Access Memory)153には、CPU151が各種の処理を実行する上において必要なデータやプログラムなどが適宜記憶される。入出力インタフェース155は、キーボードやマウスから構成される入力部156が接続され、入力部156に入力された信号をCPU151に出力する。また、入出力インタフェース155には、ディスプレイやスピーカなどから構成される出力部157も接続されている。
さらに、入出力インタフェース155には、ハードディスクなどから構成される記憶部158、および、インターネットなどのネットワークを介して他の装置とデータの授受を行う通信部159も接続されている。ドライブ160は、磁気ディスク171、光ディスク172、光磁気ディスク173、半導体メモリ174などの記録媒体からデータを読み出したり、データを書き込んだりするときに用いられる。
記録媒体は、図27に示すように、パーソナルコンピュータとは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク171(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク172(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク173(MD(Mini-Disc)(登録商標)を含む)、若しくは半導体メモリ174などよりなるパッケージメディアにより構成されるだけでなく、コンピュータに予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記憶されているROM152や記憶部158が含まれるハードディスクなどで構成される。
なお、本明細書において、媒体により提供されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に従って、時系列的に行われる処理は勿論、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。