JP3944551B2 - 光触媒被覆材の製造方法 - Google Patents

光触媒被覆材の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3944551B2
JP3944551B2 JP2004051803A JP2004051803A JP3944551B2 JP 3944551 B2 JP3944551 B2 JP 3944551B2 JP 2004051803 A JP2004051803 A JP 2004051803A JP 2004051803 A JP2004051803 A JP 2004051803A JP 3944551 B2 JP3944551 B2 JP 3944551B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
binder
anatase
titania
spraying
titanium oxide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2004051803A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005238115A (ja
Inventor
孝幸 桑嶋
恵子 小浜
高広 平野
一彦 佐藤
利夫 太田
Original Assignee
地方独立行政法人 岩手県工業技術センター
株式会社 釜石電機製作所
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 地方独立行政法人 岩手県工業技術センター, 株式会社 釜石電機製作所 filed Critical 地方独立行政法人 岩手県工業技術センター
Priority to JP2004051803A priority Critical patent/JP3944551B2/ja
Publication of JP2005238115A publication Critical patent/JP2005238115A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3944551B2 publication Critical patent/JP3944551B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Catalysts (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)

Description

本発明は、基材の表面に酸化チタンの皮膜を溶射により形成した光触媒被覆材を製造する光触媒被覆材の製造方法に関する。
従来、この種の光触媒被覆材としては、例えば、特開平11−43759号公報に掲載されたものが知られている(特許文献1参照)。
この光触媒被覆材は、基材の表面にチタニア(酸化チタン TiO2 )の皮膜を溶射により形成したものであり、その製造方法は、図8に示すように、プラズマノズル本体100のプラズマ炎噴出孔101から、少なくともアルゴンガスと窒素ガスからなる混合ガスのプラズマ炎102を高速で噴出させ、プラズマ炎噴出孔101の出口に近接して設けられたアナターゼ型チタニア粉末103の吹き出し口104からアナターゼ型チタニア粉末103を、混合ガスのプラズマ炎中に噴出させ、基材105の表面に、光触媒機能を有するアナターゼ型チタニア粉末103を直接プラズマ溶射し、アナターゼ型チタニアの溶射皮膜106を基材105に形成するものである。
この光触媒被覆材は、基材105表面に形成させられたアナターゼ型チタニアの溶射皮膜106により、活性酸素の殺菌能力等を発揮し、種々の利用に供される。
特開平11−43759号公報
ところで、上記従来の光触媒被覆材にあっては、アナターゼ型チタニアがルチル型チタニアへ結晶構造変化し易く、そのため、アナターゼ型チタニアの残存率が低く、一般に、ルチル型チタニアに比較してアナターゼ型チタニアの光触媒効果が高いので、アナターゼ型チタニアの残存率が低くなると、必ずしも、光触媒効果を充分に発揮できないという問題があった。
この従来の光触媒被覆材において、アナターゼ型チタニアがルチル型チタニアへ結晶構造変化し易い理由は、以下のとおりである。この光触媒被覆材の製造で利用されているプラズマ溶射法は、電極間に生じさせたアークによりアルゴンや水素などのガスをイオン化させこのエネルギーにより生じた熱プラズマを熱源として、溶射材料を加熱,溶融し溶射を行なうものであり、そのプラズマフレーム温度は、高いところで約15,000℃にも達するといわれている。そのため、上記の従来技術においては、チタニアは高温のプラズマで溶射されることから、アナターゼ型チタニアはルチル型チタニアへ結晶構造変化しやすくなるのである。上記の従来技術である特開平11−43759号公報では、溶射加工後のアナターゼ型チタニアの残存率は、約30%との記載があり、低い値となっている。
これを解消するために、図9に示すように、HVOF(High Velocity Oxy Fuel)溶射法により、チタニアの溶射温度を800℃以下にして基材105に溶射し、溶射加工後のアナターゼ型チタニアの残存率を向上させることも考えられるが、しかしながら、このHVOF溶射によってアナターゼ型チタニアをコーティングする場合、アナターゼ型チタニアの硬さが高く、そのため未溶融粒子により基材105の表面が削り取られ、或いは、溶射粒子のリバウンドにより皮膜を充分に形成することができない等の問題が生じる。
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、溶射加工後のアナターゼ型チタニアの残存率を向上させ、かつアナターゼ型チタニアの密着性を向上させて充分な皮膜を形成できるようにし、もって、光触媒効果の向上を図った光触媒被覆材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の光触媒被覆材の製造方法に係る光触媒被覆材は、基材の表面に熱可塑性樹脂からなるバインダを被覆し、該バインダの表面に酸化チタンの皮膜を溶射により形成した構成としている。
これにより、バインダにアナターゼ型酸化チタンを溶射すれば、バインダが形成されているので、アナターゼ型チタニアの未溶融粒子により基材表面が削り取られたり、溶射粒子のリバウンドにより皮膜を形成することができない等の事態が防止され、アナターゼ型チタニアが確実にバインダに捕捉されて製膜されて行く。また、その皮膜の密着強度が高くなる。このため、溶射加工後の基材におけるアナターゼ型チタニアの残存率を向上させることができる。この光触媒被覆材は、皮膜においては、アナターゼ型チタニアの残存率が向上させられ、しかも、緻密で肉厚な酸化チタンの皮膜となっているので、光触媒効果の向上が図られる。また、樹脂をバインダに用いているので、アナターゼ型チタニアの密着性が向上させられ、そのため、製膜された皮膜自体の強度が高くなり、耐久性が向上させられる。
そして、必要に応じ、上記バインダをアクリル樹脂で構成している。入手が容易であり、基材に対する被覆も溶射などにより容易に行なうことができる。
また、必要に応じ、上記皮膜を構成する酸化チタンにおいて、アナターゼ型酸化チタンの残存比率を65%以上にした構成としている。アナターゼ型チタニアの残存率が、高いので、光触媒効果をより一層向上させることができる。
更に、必要に応じ、上記基材をFRPで構成した。廃プラスチックの再生処理技術に利用すれば、廃棄処理が問題になっているFRPに対して、付加価値の高い製品へ容易に再生でき、有効利用を図ることができる。また、バインダがFRPからなる基材によく付着するので、アナターゼ型チタニアの残存率を向上させた光触媒被覆材を容易に製造できる。
また、上記の目的を達成するための本発明の光触媒被覆材の製造方法は、基材の表面に酸化チタンの皮膜を溶射により形成した光触媒被覆材を製造する方法において、
基材の表面に熱可塑性樹脂からなるバインダを被覆するバインダ被覆工程と、該バインダ被覆工程後に、バインダ表面に酸化チタンの粉末を溶射する酸化チタン溶射工程とを備えた構成としている。
これにより、バインダにアナターゼ型酸化チタンを溶射すれば、バインダが形成されているので、アナターゼ型チタニアの未溶融粒子により基材表面が削り取られたり、溶射粒子のリバウンドにより皮膜を形成することができない等の事態が防止され、アナターゼ型チタニアが確実にバインダに捕捉されて製膜されて行く。また、その皮膜の密着強度が高くなる。このため、溶射加工後の基材におけるアナターゼ型チタニアの残存率を向上させることができる。この光触媒被覆材は、皮膜においては、アナターゼ型チタニアの残存率が向上させられ、しかも、緻密で肉厚な酸化チタンの皮膜となっているので、光触媒効果の向上が図られる。また、樹脂をバインダに用いているので、アナターゼ型チタニアの密着性が向上させられ、そのため、製膜された皮膜自体の強度が高くなり、耐久性が向上させられる。
そして、必要に応じ、上記バインダ被覆工程において、上記バインダを溶射により被覆する構成としている。樹脂製のバインダを塗布した場合に比較してバインダの被覆時間を短縮させることができ、また、樹脂塗布後の養生(乾燥)時間が不要となることから、次の酸化チタン溶射工程に速やかに移ることができ、作業効率が向上させられる。また、塗布の場合に比較してバインダを厚膜形成できる。
この場合、上記バインダをアクリル樹脂で構成したことが有効である。アクリル樹脂は、入手が容易であり、基材に対する被覆も容易に行なうことができる。
また、必要に応じ、上記酸化チタンの粉末として、アナターゼ型酸化チタン(アナターゼ型チタニア)で10〜45μmの粒径のものを用い、この酸化チタンの粉末を、ガス燃焼式溶射により溶射する構成としている。
ガス燃焼式溶射においては、燃焼炎の最高温度はせいぜい2800℃程度であり、10〜45μの粒径のアナターゼ型チタニア粒子においては、チタニア粒子自体の温度は、表面では高くなるが中心部では800℃以下になる。アナターゼ型チタニアは、800℃を超えるような熱影響によりルチル型チタニアに転移するという特徴があるが、チタニア粒子の全部が800℃を超えて溶融されることが抑止されるので、全てがルチル型チタニアに転移しないように溶射皮膜が製膜されていく。即ち、できるだけ入熱を抑えるとともに、しかし、入熱量が不十分だと製膜ができないので、本方法では、チタニア粉末の溶射において、これらの相反する条件を克服している。
そのため、酸化チタンの粉末をガス式溶射により溶射すると、チタニア粒子の全部が800℃を超えて溶融されることが抑止されるので、光触媒効果が低いルチル型チタニアへの結晶構造の変化が防止され、基材表面には主にアナターゼ型チタニアが製膜されていく。このため、溶射加工後の基材におけるアナターゼ型チタニアの残存率を向上させることができる。溶射条件によっても異なるが、アナターゼ型チタニアの残存比率を65%以上にすることができる。
更に、必要に応じ、上記酸化チタン溶射工程において、溶射条件をバインダの温度がバインダの融点M℃に対して、0.5M≦T<Mにし、バインダを軟化させて行なう構成としている。バインダが硬くなることなく軟化しているので、酸化チタンを確実に捕捉することができる。即ち、基材表面に軟化したバインダが介在するので、チタニアの未溶融粒子により基材表面が削り取られたり、溶射粒子のリバウンドにより皮膜を形成することができない等の事態が防止され、アナターゼ型チタニアが確実にバインダに捕捉されて製膜されて行き、そのため、その皮膜の密着強度が高くなる。
更にまた、必要に応じ、上記基材をFRPで構成している。廃プラスチックの再生処理技術に利用すれば、廃棄処理が問題になっているFRPに対して、付加価値の高い製品へ容易に再生でき、有効利用を図ることができる。また、バインダがFRPからなる基材によく付着するので、アナターゼ型チタニアの残存率を向上させた光触媒被覆材を容易に製造できる。
本発明の光触媒被覆材の製造方法によれば、樹脂製のバインダにアナターゼ型酸化チタンを溶射すれば、アナターゼ型チタニアの未溶融粒子により基材表面が削り取られたり、溶射粒子のリバウンドにより皮膜を形成することができない等の事態を防止でき、アナターゼ型チタニアを確実にバインダに捕捉させて製膜することができる。また、その皮膜の密着強度を高くすることができる。このため、溶射加工後の基材におけるアナターゼ型チタニアの残存率を向上させることができる。
このような光触媒被覆材は、皮膜においては、アナターゼ型チタニアの残存率が向上させられ、しかも、緻密で肉厚な酸化チタンの皮膜となっているので、光触媒効果を向上させることができる。また、アナターゼ型チタニアの密着性が向上させられ、そのため、製膜された皮膜自体の強度が高くなり、耐久性を向上させることができる。
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る光触媒被覆材及び光触媒被覆材の製造方法について詳細に説明する。
図1には、本発明の実施の形態に係る光触媒被覆材Hを示している。光触媒被覆材Hは、基材1の表面に樹脂製のバインダ(アンダーコート)2を被覆し、このバインダ2の表面に酸化チタンの皮膜3を溶射により形成して構成されている。バインダ2はアクリル樹脂で構成されている。皮膜3を構成する酸化チタンにおいては、アナターゼの残存比率を65%以上としている。
次に、本発明の実施の形態に係る光触媒被覆材Hの製造方法を説明する。光触媒被覆材Hの製造方法は、上記の光触媒被覆材Hを製造する方法である。
この方法では、基材1として、廃材からなり熱硬化性プラスチックの1つであるFRPを、適宜の大きさに加工して用いている。また。バインダ2としては、アクリル樹脂を用いている。
そして、実施の形態に係る光触媒被覆材Hの製造方法は、図2に示すように、基材1の表面に樹脂製のバインダ2を被覆するバインダ被覆工程(1)と、バインダ2表面に酸化チタン(TiO2 )の粉末を基材1表面に溶射して酸化チタンの皮膜3を形成する酸化チタン溶射工程(2)とからなる。以下、各工程について詳細に説明する。
(1)バインダ被覆工程
この工程では、ガス燃焼式溶射法であるHVOF(High Velocity Oxy Fuel)溶射法(高速フレーム溶射)により、バインダ2を溶射する。図3に示すように、溶射装置10は、後述の酸化チタン溶射工程で用いる酸化チタンの溶射装置10と同じものを用いており、プロピレン−酸素などの燃焼炎を熱源としてアクリル樹脂の粉末を加熱溶融して、FRP材料からなる基材1の表面に対してコーティングを行なう。このHVOF溶射では、燃焼炎の最高温度はせいぜい2800℃程度である。溶射するアクリル樹脂の粉末は、45〜125μmの粒径に形成されている。
この場合、アクリル樹脂を溶射により被覆しているので、樹脂製のバインダ2を塗布した場合に比較してバインダ2の被覆時間を短縮させることができ、また、樹脂塗布後の養生(乾燥)時間が不要となることから、次の酸化チタン溶射工程に速やかに移ることができ、作業効率が向上させられる。また、塗布の場合に比較してバインダ2を厚膜形成できる。更に、アクリル樹脂は、基材1であるFRPと相が良く、FRPに良く付着するという利点がある。
(2)酸化チタン溶射工程
この工程では、酸化チタンの粉末として、アナターゼ型酸化チタン(アナターゼ型チタニア)を用いる。溶射するアナターゼ型チタニアは、0.2μm程度の粒子を造粒して、10〜45μmの粒径に形成されている。
また、この工程では、ここではアナターゼ型酸化チタン(アナターゼ型チタニア)の粉末をガス燃焼式溶射法であるHVOF(High Velocity Oxy Fuel)溶射法により、アナターゼ型チタニアを溶射する。図3に示すように、溶射装置10は、上述したように、溶射フレームを有した溶射ガンから造粒された粒子を溶射する装置であり、プロピレン−酸素などの燃焼炎を熱源としてアナターゼ型チタニアを加熱溶融して、基材1に対してアナターゼ型チタニアのコーティングを行なう。
酸化チタン溶射工程における溶射条件は、バインダ2が軟化してチタニア粒子を捕捉できる範囲に設定している。即ち、溶射装置10と基材1との溶射距離を適宜に調製して、基板上のバインダ2の温度T℃がバインダ2の融点M℃に対して、0.5M≦T<Mにし、バインダ2を軟化させて行なうようにしている。
また、このHVOF溶射では、燃焼炎の最高温度はせいぜい2800℃程度であり、10〜45μmの粒径のアナターゼ型チタニア粒子においては、チタニア粒子自体の温度は、表面では高くなるが中心部では800℃以下になる。アナターゼ型チタニアは、800℃を超えるような熱影響によりルチル型チタニアに転移するという特徴があるが、チタニア粒子の全部が800℃を超えて溶融されることが抑止されるので、全てがルチル型チタニアに転移しないように溶射皮膜3が製膜されていく。即ち、できるだけ入熱を抑えるとともに、しかし、入熱量が不十分だと製膜ができないので、本方法では、チタニア粉末の溶射において、これらの相反する条件を克服している。
そして、図3に示すように、溶射装置10を用いて酸化チタンの粉末をガス式溶射により溶射すると、チタニア粒子の全部が800℃を超えて溶融されることが抑止されるので、光触媒効果が低いルチル型チタニアへの結晶構造の変化が防止され、基材1表面には主にアナターゼ型チタニアが製膜されていく。このため、溶射加工後の基材1におけるアナターゼ型チタニアの残存率を向上させることができる。溶射条件によっても異なるが、アナターゼ型チタニアの残存比率を65%以上にすることができる。
また、HVOF溶射によってアナターゼ型チタニアをコーティングする場合、基材1表面にはアクリル樹脂のバインダ2が形成されているので、アナターゼ型チタニアの未溶融粒子により基材1表面が削り取られたり、溶射粒子のリバウンドにより皮膜3を形成することができない等の事態が防止され、アナターゼ型チタニアが確実にバインダ2に捕捉されて製膜されて行き、そのため、その皮膜3の密着強度が高くなる。
また、このHVOF溶射においては、LVOF(Low Velocity Oxy Fuel)溶射法に比較して、溶射粒子の飛行速度が非常に速いので、基材1表面に層状に溶着して行き、そのため、基材1表面に緻密で肉厚な酸化チタンの皮膜3が作られていく。
このようにして製造された光触媒被覆材Hは、皮膜3においては、アナターゼ型チタニアの残存率が向上させられ、しかも、緻密で肉厚な酸化チタンの皮膜3となっているので、光触媒効果の向上が図られる。また、アクリル樹脂をバインダ2に用いているので、アナターゼ型チタニアの密着性が向上させられ、そのため、製膜された皮膜3自体の強度が高くなり、耐久性が向上させられる。
実験例
次に、実験例について説明する。
(実験例1)
バインダ(アンダーコート層)の有無によるアナターゼ型チタニアの残存率について実験を行なった。基材は熱可塑性プラスチックのFRP材料とし、バインダには、アクリル樹脂を用いた。実験では、溶射装置として、スルーザーメテコ(株)社製ダイヤモンドジェット溶射装置を用いた。溶射装置と基材との溶射距離は、250mmに設定した。
溶射後、エックス線回折装置によりアナターゼ型チタニアの残存率を測定した。
結果を図4に示す。アンダーコート層無しでは、アナターゼ型チタニアのコーティング加工が不可能であったが、バインダ(アンダーコート層)を設けた基材においては、アナターゼ型チタニアのコーティングを行なうことができた。また、エックス線回折装置によりアナターゼ型チタニアの残存率を測定したところ、約85%と非常に高い値となっていた。
(実験例2)
上記と同じHVOF溶射装置(高速フレーム溶射装置)を使用し、溶射条件(溶射距離)を変化させ、溶射加工を行なった。燃料ガスは、プロピレン−酸素である。
また、LVOF溶射装置(スルーザーメテコ(株)社製フレーム溶射装置等)を使用し、溶射条件(溶射距離)を変化させ、溶射加工を行なった。燃料ガスは、プロパン−酸素である。
溶射距離は、HVOF溶射装置(プロピレン−酸素)では250mm,300mm,350mm,400mm、LVOF溶射装置(プロパン−酸素)では、150mm,200mm,250mm,300mmと変化させた。
基材は熱可塑性プラスチックのFRP材料とし、バインダには、アクリル樹脂を用いた。基材は、ブラスト処理を施し、基材表面を清浄化、粗面化して、バインダを溶射した。
そして、溶射距離を変えてアナターゼ型チタニアを溶射した各試料の皮膜について、エックス線回折装置によりアナターゼ型チタニアの残存率を調べた。
残存率(f)とは、アナターゼ型チタニアが、溶射加工の熱影響によってルチル型チタニアに変態しないで皮膜中に存在している割合のことである。エックス線回折装置で、アナターゼ型チタニアとルチル型チタニアの最強線をそれぞれ、IA、IRとして、次式により算出した。
Figure 0003944551
結果を図5に示す。
溶射距離の増加とともに、残存率は低下している。LVOF溶射、HVOF溶射とも残存率は80〜85%と非常に高い。しかし、後述する抗菌試験結果では、HVOF溶射の方がよい結果となっている。
(実験例3)
実験例2で得られた試料について、皮膜の大腸菌に対する抗菌試験を行なった。比較のために皮膜のない試料についても行なった。
はじめに大腸菌の標準株(Escherichia. coli JCM1649)を、14mlプラチューブに入れたLB broth5mlに1白金耳接種し、37℃で1晩往復振等培養(60rpm)する。そして、回収後、滅菌生理食塩水で108cells/mlになるよう希釈する。シャーレ内の乾燥を防ぐため、6穴シャーレの底面に、滅菌水0.2mlを滴下する。
あらかじめ滅菌したサンプル表面に、滅菌蒸留水を薄く塗って菌液が付きやすくした後、サンプル表面に均一に菌液25μlを滴下し、滅菌済みフィルムをかぶせ、これを6穴シャーレの中央に置き蓋をする。ブラックライトを2時間照射する。
照射後のサンプルとフィルムを50mlプラチューブに入れ、10mlの滅菌生理食塩水で洗浄し、菌を回収する。これを回収菌液(10倍希釈済み)とする。回収菌液をさらに希釈して、100倍および1000倍希釈液を調製する。10倍、100倍、1000倍希釈した菌液100μlを各2枚ずつ標準寒天培地にまく。そして、37℃で24時間培養後、コロニーを計数し、生存率を算出した。
結果を図6に示す。2時間後の大腸菌の生存率は、LVOF皮膜は約10%程度、HVOF皮膜では、0.5%程度であった。LVOF皮膜よりHVOF皮膜の方が、大腸菌の生存率が低くなっており、最低で0.01%と非常に低い値になっている。
HVOF溶射が、LVOF溶射法に比較して成績が良いのは、HVOF溶射においては、溶射粒子の飛行速度が非常に速いので、LVOF溶射に比較して、基材表面に緻密で肉厚な酸化チタンの皮膜が作られていることに起因していると考えられる。
図5に示したアナターゼ残存率は、LVOFとHVOFではあまり差が認められなかったが、抗菌試験結果では、両者に差が認められる。この原因としては、チタニアの付着量がHVOF皮膜の方が大きかったためであると考えられる。
(実験例4)
実験例2で得られた試料であって、HVOF溶射で、溶射距離300mmで作製した試料について、脱臭試験を行なった。
また、この試料について、キセノンウェザーリングメータ(SUGA社製)を使用し、1000時間の負荷をかけた試料についても行なった。
更に、比較のために市販されている光触媒塗料を塗布した試料、ステンレス(SUS)製の基材のみに対しても行なった。
実験方法は、コックを付けたPVFフィルム製のテドラーバックに光触媒皮膜試験片をいれ、内部に100ppmアセトアルデヒドを混入した空気を5リットル入れ、ブラックライトを照射した。コックの先にはガス検知管が接続され、5分毎にアセトアルデヒドの濃度を測定した。
結果を図7に示す。この結果から、光触媒塗料は、濃度低下の割合が溶射皮膜よりかなり低くなっている。チタニア溶射皮膜を形成していない基材では、アセトアルデヒド濃度がほとんど変化していないが、チタニア溶射皮膜は試験開始直後から急激に濃度が減少し、約30分後にはほぼ全量が分解されていることが分かる。
また、1000時間の負荷をかけた試料についても、チタニア溶射皮膜は試験開始直後から急激に濃度が減少し、約30分後にはほぼ全量が分解されていることが分かる。
このことは、屋外で使用した場合でも長期間にわたって光触媒性能が低下していないことを示している。
このような脱臭効果は、溶射法により作製した皮膜は、図1に示すように、チタニアのみからなる固体膜でありバインダ成分を含まないこと、溶射皮膜特有の組織として皮膜中に数%の気孔を含み表面積が大きいことなどによりアセトアルデヒドの分解に働くチタニアの接触面積が大きいことが影響していると判断される。
これに対して、抗菌塗料ではコ−ティング剤のバインダ成分が非常に多く、有効に働くチタニアが表面にあまり露出していないため有効に働くチタニアが少ないためであると考えられる。
本発明による技術を廃プラスチックの再生処理技術に利用すれば、廃棄処理が問題になっているFRPやPET等に対して、高機能皮膜をコーティングして、付加価値の高い製品へと容易に再生できる。
21世紀は環境の世紀ともいわれ、循環型社会の構築が求められている。環境に対する負荷軽減のために、廃棄物のReduce(廃棄物の発生の抑制)、Reuse(製品、部品の再利用)、Recycle(再生利用)の3Rの実行が求められている。これに伴い、PETボトル回収等による廃棄物の再利用などリサイクル推進のための法制度が整備されつつある。
日本国内で排出されるゴミの総量は、2000年で総排出量約7200万トンにも達している。その中でも紙類とプラスチックの占める割合が増加している。プラスチックは軽い、透明性が良い、水,ガス,電気を通さない、着色,成形が容易などの長所から急速に使用されるようになってきた。
このプラスチックは、熱可塑性プラスチックと、熱硬化性プラスチックに分けられる。熱可塑性プラスチックは熱を加えると柔らかくなり、冷却すると固まる。これに対して、熱硬化性プラスチックは熱を加えても柔らかくならない。前者のプラスチックの代表的なものに、発泡スチロール,塩化ビニル,PETボトルなどがあり、再利用化が比較的容易である。熱可塑性プラスチックには、フェノール樹脂,ウレタンフォームなどがあり、家庭用品,農水産業品,電気製品,自動車部品など産業に数多く使用されているが、再利用化は熱可塑性プラスチックと比較して難しい。
熱硬化性プラスチックの一つであるFRPは、画期的な素材として、例えば、小型船舶やプレジャーボートに利用されてから30年が経過し、船体の老朽化,船型の陳腐化などにより廃船となるものが出始めている。FRP船の廃棄量は年間、数千から1万隻以上になるという試算(FRP廃棄量は2000年で40万トン)もあり、現在すでに放置できない状況になっている。
中でもFRP素材で製造された廃船の処理においては、(1)破砕のために大型の処理機械を必要とし、粉塵の飛散を招く、(2)減容のために焼却すれば、大気汚染、悪臭物質を放出したうえ、半溶融ガラス繊維を残して焼却炉を傷める、(3)廃材のリサイクルには高額な費用を要する、などの問題があり、粉砕、埋め立て以外の処理方法はほとんど採用されていない。最終処分場の枯渇から、ますます大きな社会問題となっていくと考えられる。
本発明による技術をこのような廃プラスチックに利用することにより、付加価値の高い製品へと容易に再生でき、再生処理技術への貢献が期待できる。即ち、廃プラスチック材料へ酸化チタンをコーティングすることにより、廃プラスチック材料を利用して環境対策材料を製造することができ、廃棄物排出量の削減に大きく寄与するとともに、工場、ビルなどの排水処理関係の脱臭対策装置、老人保健施設やHACCAP対策が急務となっている食品工場など抗菌製建材などに応用ができ、環境浄化などにも大きな効果が期待できる。
本発明の実施の形態に係る光触媒被覆材を示す断面図である。 本発明の実施の形態に係る光触媒被覆材の製造方法を示す工程図である。 本発明の実施の形態に係る光触媒被覆材の製造方法の酸化チタン溶射工程において、溶射装置を用いて溶射する状態を示す図である。 本発明の実験例に係り、光触媒被覆材のバインダの有無による溶射結果を示す表図である。 本発明の実験例に係り、溶射距離とアナターゼ残存率の関係を示すグラフ図である。 本発明の実験例に係り、光触媒被覆材の溶射皮膜の抗菌試験結果を示すグラフ図である。 本発明の実験例に係り、光触媒被覆材の脱臭試験結果を示すグラフ図である。 従来の光触媒被覆材の一例を示す断面図である。 基材に直接溶射する場合の不具合を示す図である。
符号の説明
H 光触媒被覆材
1 基材
2 バインダ(アンダーコート)
3 皮膜
10 溶射装置

Claims (3)

  1. 基材の表面に酸化チタンの皮膜を溶射により形成した光触媒被覆材を製造する方法において、
    基材の表面に熱可塑性樹脂からなるバインダを被覆するバインダ被覆工程と、該バインダ被覆工程後に、バインダ表面に酸化チタンの粉末を溶射する酸化チタン溶射工程とを備え、
    上記バインダ被覆工程において、上記バインダを溶射により被覆し、
    上記酸化チタンの粉末として、アナターゼ型酸化チタンで10〜45μmの粒径のものを用い、この酸化チタンの粉末を、ガス燃焼式溶射により溶射し、
    上記酸化チタン溶射工程において、溶射条件をバインダの温度T℃がバインダの融点M℃に対して、0.5M≦T<Mにし、バインダを軟化させて行なうことを特徴とする光触媒被覆材の製造方法。
  2. 上記バインダをアクリル樹脂で構成したことを特徴とする請求項1記載の光触媒被覆材の製造方法。
  3. 上記基材をFRPで構成したことを特徴とする請求項1または2記載の光触媒被覆材の製造方法。
JP2004051803A 2004-02-26 2004-02-26 光触媒被覆材の製造方法 Expired - Lifetime JP3944551B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004051803A JP3944551B2 (ja) 2004-02-26 2004-02-26 光触媒被覆材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004051803A JP3944551B2 (ja) 2004-02-26 2004-02-26 光触媒被覆材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005238115A JP2005238115A (ja) 2005-09-08
JP3944551B2 true JP3944551B2 (ja) 2007-07-11

Family

ID=35020414

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004051803A Expired - Lifetime JP3944551B2 (ja) 2004-02-26 2004-02-26 光触媒被覆材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3944551B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4682374B2 (ja) * 2006-02-21 2011-05-11 株式会社フジコー 光触媒機能皮膜の形成方法
JP4884492B2 (ja) * 2009-03-13 2012-02-29 株式会社フジコー 光触媒機能皮膜の形成方法
JP5532783B2 (ja) * 2009-09-17 2014-06-25 富士通セミコンダクター株式会社 有機ガス処理装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005238115A (ja) 2005-09-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Du et al. Microplastic degradation methods and corresponding degradation mechanism: Research status and future perspectives
Parkin et al. Self-cleaning coatings
Urso et al. Nano/microplastics capture and degradation by autonomous nano/microrobots: a perspective
Lyu et al. Towards environmentally sustainable management: a review on the generation, degradation, and recycling of polypropylene face mask waste
Burlacov et al. Cold gas dynamic spraying (CGDS) of TiO2 (anatase) powders onto poly (sulfone) substrates: Microstructural characterisation and photocatalytic efficiency
Wang et al. Self-propelled micro/nanomotors for removal of insoluble water contaminants: microplastics and oil spills
JP2007190543A (ja) 二酸化チタンコーティング成形材の製造方法及びそれを用いた二酸化チタンコーティング成形材
JP3944551B2 (ja) 光触媒被覆材の製造方法
Zhao et al. Microplastics in soils during the COVID-19 pandemic: Sources, migration and transformations, and remediation technologies
Adham et al. Fabrication of metal-based superhydrophilic and underwater superoleophobic surfaces by laser ablation and magnetron sputtering
Behera et al. Procedures for recycling of nanomaterials: a sustainable approach
Selvan et al. An exclusive hand protection device made of fused deposition modelling process using poly (lactic acid) polymer
Wu et al. Photocatalytic Fibers for Environmental Purification: Challenges and Opportunities in the Post‐Pandemic Era
Tan et al. Turning plastics/microplastics into valuable resources? Current and potential research for future applications
CN107163806A (zh) 一种用于空气净化器的纳米结构涂层及其制备方法
Kumar et al. Role of Nanotechnology and Artificial Intelligence (AI) in Waste Management
CN106268026B (zh) 一种医疗垃圾焚烧厂专用过滤材料及其制备方法
Bandaru et al. A Review on the Fate of Microplastics: Their Degradation and Advanced Analytical Characterization
Xu et al. Review of Soil Microplastic Degradation Pathways and Remediation Techniques
Malhotra et al. Photocatalytic Degradation of Plastic
Ali et al. Advances in LDPE Nanocomposites for Photodegradation: Strategies, Mechanism and Applications.
Chowdhury et al. Consumer Nanoproducts for Environment
Takahashi et al. Plasma-spraying synthesis of high-performance photocatalytic TiO2 coatings
CN206610271U (zh) 一种具有防水抗污功能的触摸屏
JP4368315B2 (ja) 産業用機械

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20060516

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060831

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060912

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20060907

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20061106

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20061219

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070206

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070306

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070306

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 3944551

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R154 Certificate of patent or utility model (reissue)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R154

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130420

Year of fee payment: 6

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130420

Year of fee payment: 6

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313532

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130420

Year of fee payment: 6

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130420

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160420

Year of fee payment: 9

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term