JP3941998B2 - コエンザイムq10の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品等として用いられているコエンザイムQ10の製造に関する。さらに詳細には、コエンザイムQ10の生合成に関するキー酵素であるコエンザイムQ10側鎖合成酵素、すなわちデカプレニル2燐酸合成酵素をコードする遺伝子をSaitoella属に属する真菌より単離し、これを微生物に導入することによりコエンザイムQ10を生成させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のコエンザイムQ10の製造法は、タバコなどの植物由来のコエンザイムを単離してその側鎖長を合成法により調整する等によって工業的には生産されている。
また、コエンザイムQ10は細菌や酵母などの微生物から高等動植物に至るきわめて幅広い生物により生産されることが知られているが、微生物を培養してその菌体より本物質を抽出する方法が最も有効な一つの製造法であると考えられ、実際の工業的な生産にも用いられている。しかしながら、これらの方法では、生成量が少なかったり、操作が煩雑であったりして、生産性が良くなかった。
【0003】
コエンザイムQ10の生物による生合成経路については、原核生物と真核生物では一部異なっているが、いずれも多くの酵素が関与した多段階の複雑な反応によって生成されている。しかし、基本的には大きく3つのステップ、すなわち、コエンザイムQ10のプレニル側鎖のもとになるデカプレニル2燐酸を合成するステップ、キノン環のもとになるパラヒドロキシ安息香酸を合成するステップ、そして、これらの2つの化合物を結合させて置換基を順次変換してコエンザイムQ10を完成させるステップよりなっている。これらの反応の中で、生合成反応全体の律速であると言われ、コエンザイムQ10の側鎖の長さを決定している反応、すなわちデカプレニル2燐酸合成酵素の反応は最も重要な反応であると考えられる。そこで、コエンザイムQ10を効率よく生産させる為には、生合成に関与するキー遺伝子、デカプレニル2燐酸合成酵素の遺伝子を単離して生産増強に利用することが有効であると考えられるが、その遺伝子源としてはコエンザイムQ10を比較的多量に生産している真菌類が有力な候補となる。
【0004】
これまでにデカプレニル2燐酸合成酵素の遺伝子としては、Schizosaccaromyces pombe(特開平9−173076)やGluconobacter suboxydans(特開平10−57072)などいくつかの種類の微生物より分離されているが、本来これらの微生物ではコエンザイムQ10の生産性が十分とはいえず、これらの微生物では効率的な培養や分離精製などは出来ていなかった。そこで、さらにコエンザイムQ10を高生産する微生物由来の本酵素遺伝子を単離することが望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の生産に関する問題を解決するべく、Saitoella属に属する真菌由来のコエンザイムQ10の側鎖合成遺伝子を単離してこれを利用することにより、微生物によってコエンザイムQ10を効率よく生産することを目的とする。
上記目的を達成する為に、本発明では、まず、Saitoella属に属する真菌よりコエンザイムQ10の生合成に関与するキー遺伝子、デカプレニル2燐酸合成酵素の遺伝子を単離した。そして、該遺伝子を大腸菌などの微生物に導入して発現させることにより、コエンザイムQ10を効率よく生産させることが可能となった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、コエンザイムQ10を比較的多量に生産しているSaitoella属に属する真菌からデカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子を分離するための検討を重ね、該遺伝子を分離することに成功した。
【0007】
即ち本発明は、配列番号1に記載のDNA配列、又はこの配列において1若しくは複数の塩基が欠失、追加、挿入、置換されたDNA配列を有し、デカプレニル2燐酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを提供する。本発明はまた、配列番号2に記載のアミノ酸配列、又はこの配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、追加、挿入、置換されたアミノ酸配列を有し、デカプレニル2燐酸合成酵素活性を有するタンパク質、さらにこのタンパク質をコードするDNAを提供する。
【0008】
さらに本発明は、上記DNAを含有する発現ベクターを提供する。本発明の発現ベクターは、従来知られているベクター系いずれを用いても良く、例えば発現用ベクターpUCNTへ配列番号1の配列を有するDNAを導入してなる、pNTSa1が提供される。
本発明は、宿主微生物を上記DNAにて形質転換してなる形質転換体もまた、提供する。本発明の宿主微生物としては、Escherichia coliが好適に用いられる。
【0009】
本発明はさらに、上記形質転換体を培地中で培養し、培養物中にコエンザイムQ10を生成蓄積し、これを採取する工程からなるコエンザイムQ10の製造方法を提供する。本発明の方法において用いる、宿主微生物としては特に限定されないが、Escherichia coliが好適に用いられる。Escherichia coliの産生するコエンザイムQは、コエンザイムQ8 であるが、本発明の方法によって、コエンザイムQ10を産生させることが可能となった。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、コエンザイムQ10を比較的多量に生産しているSaitoella属に属する真菌から本酵素遺伝子を分離するための検討を重ねたところ、PCR法によって該遺伝子の断片を取得することに成功した。
【0011】
既知のデカプレニル2燐酸合成酵素、及び本酵素と類縁で鎖長の違うコエンザイムQの長鎖プレニル鎖合成酵素であるポリプレニル2燐酸合成酵素の遺伝子の配列を比較し、その相同性の高い領域についてPCRプライマーを各種合成した。そしてこれらのプライマーを種々組み合わせ、PCRの条件をいろいろ検討したところ、プライマーDPS−1(5’−AAGGATCCTNYTNCAYGAYGAYGT−3’)及びDPS−1 1AS(5’−ARYTGNADRAAYTCNCC−3’)を用い(なお、ここで示した配列中の、RはAまたはG、YはCまたはT、そしてNはG、A、TまたはCを示す。)、PCRを94℃、3分間の熱処理の後、94℃、1分→43℃、2分→72℃、2分のサイクルを40回繰り返すことにより、Saitoella属に属する真菌、Saitoella complicata IFO 10748の染色体遺伝子から本酵素遺伝子の約220bpの断片が増幅してくることを、その遺伝子の塩基配列を解析することにより明らかにした。
【0012】
そこで次に本酵素遺伝子の全長を取得するためには、Saitoella complicata IFO 10748の染色体遺伝子を制限酵素EcoRIで切断し、ラムダファージベクターに挿入して組換えファージライブラリーを作製する。そのプラークをナイロン膜に転写した後、標識した該PCR断片を用いてプラークハイブリダイゼーションを行えば、デカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子全長を持つクローンを取得することができる。
【0013】
得られたクローンに含まれるデカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子について塩基配列の決定を行ったところ、配列表の配列番号1に示した配列を持つことが明らかとなり、この配列から予想できるアミノ酸配列にはデカプレニル2燐酸合成酵素の遺伝子として特徴的な配列がみられる。
【0014】
本発明において、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列は、配列番号1に示すDNA配列から予測されるアミノ酸配列である。配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質には、デカプレニル2燐酸合成酵素活性を有するものが含まれる。コドンは縮重しているため、配列番号2に示すアミノ酸配列から予測されるDNA配列としては、配列番号1を含んで複数挙げられ、これらの配列を有するDNAにはデカプレニル2燐酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするものが含まれる。
【0015】
本発明において、デカプレニル2燐酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAには、配列番号1及び配列番号2に示すアミノ酸配列から予測されるDNA配列を有するものに限らず、発現して得られたタンパク質がデカプレニル2燐酸合成酵素活性を有する限り、これらのDNA配列において1若しくは複数の塩基が欠失、追加、挿入、置換されたDNA配列を有するDNAも含まれる。本発明において、デカプレニル2燐酸合成酵素活性を有するタンパク質には、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質に限らず、デカプレニル2燐酸合成酵素活性を有する限り、この配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、追加、挿入、置換されたアミノ酸配列を有し、デカプレニル2燐酸合成酵素活性を有するタンパク質も含まれる。
【0016】
デカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子を発現させるためには、適当なプロモーターの下流に該遺伝子を接続することが必要であるが、例えば遺伝子を含むDNA断片を制限酵素によって切り出したり、PCRによって酵素をコードする遺伝子部分のみを増幅させたりした後、プロモーターを持つベクターに挿入することにより発現ベクターとすることができる。本発明において、デカプレニル2燐酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを組み込む発現用ベクターとしては特に限定されず、例えば、大腸菌由来のプラスミドに、適当なプロモーターを組み込んだものが挙げられる。大腸菌由来のプラスミドとしては、例えば、pBR322、pBR325、pUC19、pUC119等が挙げられ、プロモーターとしては、例えば、T7プロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、lacプロモーター、λPLプロモーター等が挙げられる。また、本発明においては発現用ベクターとして、pGEX−2T、pGEX−3T、pGEX−3X(以上、ファルマシア社製)、pBluescriptII、pUC19(東洋紡社製)、pMALC2、pET−3T、pUCNT(WO94/ 03613に記載)等を用いることもできる。このうち、pUCNTが好適に用いられ、具体的な例としては、発現用ベクターpUCNTに配列番号1に示すDNA配列を有する遺伝子を挿入すれば、デカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子の発現ベクター、pNTSa1を作製することができる。
【0017】
そして、該酵素遺伝子の発現ベクターを適当な微生物に導入することによりコエンザイムQ10の生産に利用することが可能となる。宿主微生物としては特に限定されず、Escherichia coliが好適に用いられる。Escherichia coliとしては特に限定されず、XL1−Blue、BL−21、JM109、NM522、DH5α、HB101、DH5等が挙げられる。このうちEscherichia coli DH5αが好適に用いられ、例えば、デカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子の発現ベクター、pNTSa1を大腸菌に導入した場合には、大腸菌が本来は生産しないコエンザイムQ10を、著量生産するように変換できる。この大腸菌菌株E.coli DH5α(pNT Sa1)は通商産業省、工業技術院、生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)にFERM BP−6844として寄託されている。
【0018】
また、宿主微生物として川向らが作製したオクタプレニル2リン酸合成酵素遺伝子破壊大腸菌菌株Escherichia coli KO229(Journal of Bacteriology、1997年、第179巻、3058−3060頁)はコエンザイムQ8 が生産できないため、これを宿主として用いることによりさらにコエンザイムQ10を高生産する事ができる。
本遺伝子は単独で用いるほか、他の生合成に関与する遺伝子と同時に微生物に導入して発現させることにより、さらに良い効果が期待できる。
【0019】
本発明で得られた形質転換体を、常法に従い、培養し、培養物中からコエンザイムQ10を採取することにより、コエンザイムQ10を製造することができる。宿主微生物がEscherichia coliである場合は、培地として、LB培地や、グルコースやカザミノ酸を含むM9培地を用いることができる。プロモーターを効率よく働かせるために、例えば、イソプロピルチオガラクトシドやインドリル−3−アクリル酸のような薬剤を培地に加えてもよい。培養は例えば、37℃で17〜24時間行い、この際必要により通気や攪拌を行ってもよい。本発明において、得られたコエンザイムQ10は精製を行ってもよく、粗精製物として用いてもよく、用途により適宜選択することができる。得られた培養物からコエンザイムQ10を単離するには公知の分離・精製法を適宜組み合わせることができる。公知の分離・精製法としては、塩析や溶媒沈殿等の溶解度を利用する方法、透析法、限外濾過法、ゲル濾過法、及び、(SDS−)ポリアクリルアミドゲル電気泳動法等の主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー等の荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィー等の疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法等の等電点の差を利用する方法等が挙げられる。本発明において得られたコエンザイムQ10の用途は特に限定されず、医薬品等に好適に用いることができる。
【0020】
【実施例】
(実施例1)
Saitoella complicata IFO 10748の染色体DNAをC.S.Hoffmanらの方法(Gene、57(1987)267−272)で調製した。既知の長鎖プレニル2燐酸合成酵素の遺伝子との相同性からPCRに用いるプライマーDPS−1(5’−AAGGATCCTNYTNCAYGAYGAYGT−3’)及びDPS−1 1AS(5’−ARYTGNADRAAYTCNCC−3’)を設計した。なお、ここで示した配列中の、RはAまたはG、YはCまたはT、そしてNはG、A、TまたはCを示す。これらを用いてPCRを94℃、3分間の熱処理の後、94℃、1分→43℃、2分→72℃、2分のサイクルを40回繰り返すことにより行い、1.2%アガロースゲル電気泳動により分析した。
【0021】
そして得られた約220bpの断片をゲルより切り出してDNA抽出キット(Sephaglas(商標) BrandPrep Kit、アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いて精製した後、PCR産物ダイレクトクローニングキット(pT7BlueT−Vector Kit、NOVAGEN社製)を用いて大腸菌発現用ベクターにクローニングし、pT7−SaDPSを得た。DNA塩基配列をDNAシークエンサー(377型、パーキンエルマー社製)を用い、DNAシークエンスキット(パーキンエルマー社製、ABI PRISM(商標) BigDye(商標) Terminator Cycle Sequence Ready Reaction Kit With AmptiTaq(登録商標) DNA polymerase、FS)を使用して、その取り扱い説明書に従って反応を行い配列を決定した。その結果、配列表の配列番号1の717から924までの塩基配列に示す配列が得られた。この翻訳配列に長鎖プレニル鎖を持つプレニル2燐酸合成酵素に特徴的な領域の配列「GDFLLGRA」が見出せたことにより、得られた配列はデカプレニル2燐酸合成酵素の遺伝子の一部であることが想定された。
【0022】
(実施例2)
Saitoella complicata IFO 10748のデカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子と思われる220bpのDNA断片を持つpT7−SaDPSベクターDNA0. 03μg を用い、PCR用のプライマーSa−1S(5’−GAGACCAGACGAAACGCACCA−3’の配列を持つ)及びSa−2AS(5’−TGGTGCGTTTCGTCTGGTCTC−3’の配列を持つ)を用いてPCR(94℃、3分→(94℃、30秒→55℃、30秒→72℃、1分)×25サイクル繰り返し→72℃、5分→4℃)を行い、1.2%アガロース(宝酒造製)によるゲル電気泳動を行い、約145bpの断片をゲルより切り出してDNA抽出キット(Sephaglas(商標) BrandPrep Kit、アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いて精製した。このDNA断片約100ngを用い、ECLダイレクト核酸ラベリングシステム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いて化学発光標識した。
【0023】
(実施例3)
Saitoella complicata IFO 10748の染色体DNAを制限酵素EcoRIで切断し、0.8%アガロースゲルを用いた電気泳動を行った。このゲルをアルカリ(0. 5M NaOH、1. 5M NaCl)で変成させ、中和(0. 5M Tris・HCl(pH7. 5)、1. 5M NaCl)した後、ハイボンドN+フィルター(アマシャム社製)をゲルに重ね、20×SSCを用いて一晩、サザントランスファーさせた。そのフィルターを乾燥し、80℃で2時間焼付けを行った後、ECLダイレクト核酸ラベリング・検出システム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)でサザンハイブリダイゼーションと検出を行った。すなわち、ゴールドハイブリダイゼーション液(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いて42℃、1時間プレハイブリダイズした。
【0024】
化学発光標識したプローブを95℃で5分間加熱後、氷中で急冷し、プレハイブリダイズ処理したフィルターのプレハイブリダイズ液に添加し、42℃で22時間ハイブリダイズさせた。このフィルターを6M尿素、0.4%SDSを含む0.5×SSC溶液を用いて42℃で20分2回洗浄後、2×SSC溶液を用い室温で5分2回洗浄した。このフィルターをエンハンスドケミルネセンス試薬(アマシャムファルマシアバイオテク社製)に浸した後、X線フィルムに密着させて感光させ、黒く感光したバンドを検出した。
その結果、制限酵素EcoRIで切断した約10kbpの断片に強くハイブリダイズしていた。
【0025】
(実施例4)
Saitoella complicata IFO 10748の染色体DNAを制限酵素EcoRIで切断し、0. 8%アガロースによるゲル電気泳動を行い、約10kbp付近のDNA断片をゲルより切り出して精製することにより、クローン化に用いるDNA断片を調製した。このDNA断片をλ−DASHIIファージキット(ストラテジーン社製)を用いてそのファージのEcoRIサイトに組み込み、インビトロパッケージングキット(アマシャム社製)でパッケージングを行った。そして、大腸菌XL1−Blue MRA(P2)に感染させてNZY平板培地(5g/L NaCl、2g/L MgSO4 ・7H2 O、5g/L酵母エキス、10g/L NZアミン、18g/L 寒天(pH7. 5))上にNZY軟寒天培地(NZY平板培地の寒天のみ8g/L)とともに重層してプラークとした。これをハイボンドN+フィルター(アマシャム社製)にトランスファーしアルカリ(0. 5M NaOH、1. 5M NaCl)で変成した後、中和(0. 5M Tris・HCl(pH7. 5)、1. 5M NaCl)、乾燥し、80℃で2時間焼付けを行った。
【0026】
焼き付け後のフィルター9枚を用い、実施例3と同様にプレハイブリダイゼーション、化学発光標識したプローブを用いたハイブリダイゼーションを行い、このフィルターを洗浄した。このフィルターを乾燥後、X線フィルムに密着させて感光させ、黒く感光したスポットに対応するファージのプラークを分離した。この分離したプラークのファージを上記と同様の方法で大腸菌に感染させてプラークとし、フィルターに写して再びハイブリダイゼーションを行い、確認を行ったところ、6株のファージが選択できた。
【0027】
このファージの懸濁液を用い、上記のSa−1S及びSa−2ASを用いPCRを行ったところ、6株に145bpのDNA断片が検出できた。そこで組み換えλ−DASHIIファージ粒子からラボマニュアル遺伝子工学(村松正實編、丸善株式会社、1990年)に従って、ファージDNAを調製した。調製したファージDNAを、サブクローニングするため、制限酵素SalI、SacIで切断し、0.8%アガロースゲルを用いた電気泳動を行った。このゲルをアルカリ(0. 5M NaOH、1. 5M NaCl)で変成させ、中和(0. 5M Tris・HCl(pH7. 5)、1. 5M NaCl)した後、ハイボンドN+フィルター(アマシャム社製)をゲルに重ね、20×SSCを用いて一晩、サザントランスファーさせた。そのフィルターを乾燥し、80℃で2時間焼付けを行った後、ECLダイレクト核酸ラベリング・検出システム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)でサザンハイブリダイゼーションと検出を行った。すなわち、ゴールドハイブリダイゼーション液(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いて42℃、1時間プレハイブリダイズした。
【0028】
化学発光標識したプローブを95℃で5分間加熱後、氷中で急冷し、プレハイブリダイズ処理したフィルターのプレハイブリダイズ液に添加し、42℃で22時間ハイブリダイズさせた。このフィルターを6M尿素、0.4%SDSを含む0.5×SSC溶液を用いで42℃で20分2回洗浄後、2×SSC溶液を用い室温で5分2回洗浄した。このフィルターをエンハンスドケミルネセンス試薬(アマシャムファルマシアバイオテク社製)に浸した後、X線フィルムに密着させて感光させ、黒く感光したバンドを検出した。
【0029】
その結果、制限酵素SalIで切断した約4.5kbとSacIで切断した約3.5kbの断片に強くハイブリダイズしていた。ファージDNAを、制限酵素SalI、SacIで切断し、0.8%アガロースゲルを用いた電気泳動を行った。そして黒く感光したバンドに相当する位置の大きさの制限酵素消化断片をゲルより切り出してDNA抽出キット(Sephaglas(商標) BrandPrep Kit、アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いて精製した後、DNA塩基配列をDNAシークエンサー(377型、パーキンエルマー社製)を用い、DNAシークエンスキット(パーキンエルマー社製、ABI PRISM(商標) BigDye(商標) Terminator Cycle Sequence Ready Reaction Kit With AmptiTaq(登録商標) DNA polymerase、FS)を使用して、その取り扱い説明書に従って反応を行い配列を決定した。
【0030】
その結果、配列表の配列番号1の1124にSalIサイトが、1241にSacIサイトが存在することが判り、C末端までを両断片とも含まなかったので、2つの制限酵素のうち、デカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子の中の前の方に存在しているSalIについて残りの制限断片を調べたところ3kbpの断片に、SacI断片の終わりの部分を含む終止コドンまでを含んでいた。これら3つの制限酵素断片を解析することによりデカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子の全配列を明らかにすることができた。3つのDNA断片のうちの、約1. 6kbpのDNAについてその塩基配列を決定したが、その結果を配列表の配列番号1に示す。また、このDNA配列から予測されるアミノ酸配列を配列番号2に示した。
【0031】
得られた配列を、Journal of Biological Chemistry、1990年、第265巻、13157−13164頁に記載のSaccharomyces cerevisiaeのデカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子と比較したところ、アミノ酸配列では約48%の相同性を有していた。また、特開平9−173076に記載のSchizosaccharomyces pombe由来のデカプレニル2燐酸合成酵素と比較したところ、アミノ酸では49%の相同性を有していた。
【0032】
(実施例5)
調製したファージDNAよりデカプレニル2燐酸合成酵素をコードする遺伝子部分のみを切り出す為、合成DNAプライマーSa−N1(5’−AACATATGGCCTCACCAGCACTGCGG−3’の配列を持つ)及びSa−C(5’−AAGAATTCCTATCTTGACCTAGTCAACAC−3’の配列を持つ)を用いて実施例3と同様にPCRを行い、制限酵素NdeI及びEcoRIで切断した後、発現用ベクターpUCNT(WO94/ 03613に記載)に挿入してデカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子の発現ベクター、pNTSa1を作製した。得られた発現ベクター、pNTSa1の制限酵素地図を図1に示す。なお、DPSとは、デカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子のコード領域を意味する。
【0033】
(実施例6)
作製したデカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子の発現ベクターpNTSa1を大腸菌DH5αに導入し、10mLのLB培地で37℃、一晩振とう培養し、菌を遠心分離(3000回転、20分間)で集めた。
【0034】
この菌体を1mLの3%硫酸水溶液に懸濁し、120℃、30分間熱処理後、2mLの14%水酸化ナトリウム水溶液を添加して更に120℃、15分間熱処理した。この処理液に3mLのヘキサン・イソプロパノール(10:2)を添加して抽出し、遠心分離の後、その有機溶媒層1. 5mLを分離し、減圧条件で溶媒を蒸発させて乾固した。これを200μLのエタノールに溶解し、その20μLを高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、LC−10A)により分析した。分離には逆相カラム(YMC−pack ODS−A、250×4. 6mm、S−5μm、120A)を用い、エタノール・メタノール(2:1)を移動相の溶媒として使用して分離させ、275nmの波長の吸光度で生成したコエンザイムQ10を検出した。結果を図2に示した。図2に示すように、デカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子を導入して発現させることによって、組換え大腸菌では、大腸菌が本来生産しないコエンザイムQ10を、生産するようになったことが分かった。
【0035】
得られた組換え大腸菌株E.coli DH5α(pNT Sa1)は通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に平成11年8月17日に寄託した(受託番号FERM BP−6844)。
【0036】
(実施例7)
川向らが作製したオクタプレニル2リン酸合成酵素遺伝子破壊大腸菌菌株Escherichia coli KO229は、該遺伝子がスペクチノマイシン耐性プラスミド上(pKA3)に保持された状態で維持され、該プラスミドが脱落すると致死になることが判っている(Journal of Bacteriology 1997年、第179巻、3058−3060頁)。この破壊株にpNTSa1を導入するため、KO229にpNTSa1を導入後、アンピシリンを含む10mLのLB培地で37℃、一晩振とう培養し、その1%を新たなアンピシリンを含む10mLのLB培地に継植後、さらに37℃、一晩振とう培養する事を9回繰り返した後、アンピシリンを含むLBプレート培地で生育し、スペクチノマイシンを含むLBプレート培地で生育し無い株を選択した。
【0037】
(実施例8)
実施例7で作製したpNTSa1を導入したKO229株を10mLのLB培地で37℃、一晩振とう培養し、菌を遠心分離(3000回転、20分間)で集めた。
【0038】
この菌体を1mLの3%硫酸水溶液に懸濁し、120℃、30分間熱処理後、2mLの14%水酸化ナトリウム水溶液を添加して更に120℃、15分間熱処理した。この処理液に3mLのヘキサン・イソプロパノール(10:2)を添加して抽出し、遠心分離の後、その有機溶媒層1. 5mLを分離し、減圧条件で溶媒を蒸発させて乾固した。これを200μLのエタノールに溶解し、その20μLを高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、LC−10A)により分析した。分離には逆相カラム(YMC−pack ODS−A、250×4. 6mm、S−5μm、120A)を用い、エタノール・メタノール(2:1)を移動相の溶媒として使用して分離させ、275nmの波長の吸光度で生成したコエンザイムQ10を検出した。結果を図3に示した。図3に示すように、デカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子を導入して発現させることによって、大腸菌が本来生産しないコエンザイムQ10を、生産するようになり、また、コエンザイムQ8 を生産できる大腸菌に比べてコエンザイムQ10を、著量生産するように変換できた。
【0039】
【発明の効果】
コエンザイムQ10の生合成に関するキー酵素、デカプレニル2燐酸合成酵素をコードする遺伝子をSaitoella属の真菌より単離し、配列決定を行った。また、これを大腸菌に導入して発現させることに成功した。本発明の方法を用いることにより医薬品等として用いられているコエンザイムQ10を効率的に製造することができる。
【0040】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】デカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子を持つプラスミド、pNTSa1の制限酵素地図を示す。
【図2】デカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子を導入した組換え大腸菌DH5αにおいて、生産されたコエンザイムQ10を高速液体クロマトグラフィーによって検出したチャートを示す。
【図3】デカプレニル2燐酸合成酵素遺伝子を導入した組換え大腸菌KO229において、生産されたコエンザイムQ10を高速液体クロマトグラフィーによって検出したチャートを示す。

Claims (10)

  1. 配列番号1に記載のDNA配列、又はこの配列において1若しくは複数の塩基が欠失、追加、挿入、置換されたDNA配列からなり、デカプレニル2燐酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  2. 配列番号2に記載のアミノ酸配列、又はこの配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、追加、挿入、置換されたアミノ酸配列からなり、デカプレニル2燐酸合成酵素活性を有するタンパク質。
  3. 請求項2記載のタンパク質をコードするDNA。
  4. 発現用ベクターに請求項1又は3記載のDNAを組み込んでなる発現ベクター。
  5. 宿主微生物を請求項1又は3記載のDNAにて形質転換してなる形質転換体。
  6. 宿主微生物を請求項4記載の発現ベクターにて形質転換してなる形質転換体。
  7. 宿主微生物は、Escherichia coliである請求項5又は6記載の形質転換体。
  8. Escherichia coliは、Escherichia coli DH5αである請求項7記載の形質転換体。
  9. 形質転換体は、E.coli DH5α(pNT Sa1)(FERM BP−6844)である請求項8記載の形質転換体。
  10. 請求項5、6、7、8又は9記載の形質転換体を培地中で培養し、培養物中にコエンザイムQ10を生成蓄積し、これを採取する工程からなるコエンザイムQ10の製造方法。
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