JP3938776B2 - 磁気浮上式鉄道用地上コイル装置 - Google Patents
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Description
また、架橋ポリエチレンケーブルは、柔軟性が低いことで許容曲げ半径が大きいため、コイルの窓面積を大きくすることができず、このためコイルの推力特性が低く、推進効率が悪いという問題もある。
請求項3は、請求項2における低融点樹脂が導電性微粒子と複合化されたウレタン樹脂であることを特徴とする。
請求項7は、請求項6の磁気浮上式鉄道用地上コイル装置において、ワイヤーシールドが樹脂からなるシース内に埋め込まれていることを特徴とする。
素線の被覆として、モーターや変圧器に使用する巻線導体の被覆材料として一般に用いられているポリエステル、エステルイミド、ホルマール等を用いると、これらの材料は、耐熱性に優れるものが多く、薬品を使用し、更に加熱しないと容易に除去できないので、接続作業に非常に手間が掛かり現実的でない。
しかし、請求項2のように、素線の半導電被覆材料として低融点樹脂を用いると、はんだ槽へのディッピング等により被覆を容易に除去することが可能となり、推進コイルどうしの接続の作業性が著しく向上する。
低融点樹脂のなかで特にウレタン樹脂は、ポリエステル、エステルイミド、ホルマール等と比べて、はんだ槽へのディッピングにより容易に剥離するので、素線の半導電被覆材料として適切である。
車両側の超電導磁石による変動磁界によって、金属遮蔽層にも渦電流が誘起されるが、請求項6のように、外部半導電層の外周に複数本のシールド素線を間隔をあけて並列にかつ螺旋状に配置したワイヤーシールドにより金属遮蔽層を構成すると、編組構造の金属遮蔽層と比べて、渦電流を抑制でき渦電流損失は少ない。すなわち、ケーブル円周方向の導通路が形成される編組構造では大きな渦電流が誘起され易いので、渦電流損失が増すが、各金属ワイヤが分離状態で巻き付けられるワイヤシールドでは、大きな渦電流は誘起されず、渦電流損失は少ない。
しかし、請求項7のように、ワイヤーシールドをシース樹脂内に埋め込んだ構造にすると、ケーブルを極めて小さい曲げ半径で曲げた場合でも、金属ワイヤの円周方向の移動は生じず、金属ワイヤ間隔が一定に保たれる。したがって、金属ワイヤに分布に偏り(円周方向の粗密)が生じたり、互いに接触したり、外部半導電層を挟んでこれを変形させる恐れはなく、シールド性能の低下や渦電流の増加や電界を均等にする作用の低下などのような、電気特性を損なう問題は生じず、このため推進コイルのケーブルの曲げ半径を十分小さくできる。
また、金属ワイヤを外部半導電層の外周面に直接巻き付ける場合は、押さえ巻きテープを必要とし、その巻き付けが煩雑であるが、金属ワイヤをシース樹脂に埋め込む場合は、押さえ巻きテープが不要となり、製造工程が簡略化される。
なお、金属遮蔽層を金属テープで構成すると、剛性が高くなりケーブルの可撓性が低下するが、金属ワイヤを巻き付けたワイヤシールドによれば、金属テープの場合と比べて、可撓性の低下を避けられる。
また、金属遮蔽層を編組で構成した場合、ケーブル円周方向の導通路が形成される編組構造では大きな渦電流が誘起され易いので、渦電流損失が増すが、各金属ワイヤが分離状態で巻き付けられるワイヤシールドでは、大きな渦電流は誘起されず、渦電流損失は少ない。
図2では推進コイル23のターン数を簡略化して示したが、例えば数ターンなど必要に応じたターン数のコイルを形成する。各推進コイル23はコンクリート側壁22に、例えば取り付け金具29や浮上案内コイルで挟み込んで固定される。
実施例の推進コイル23は図2の通り、重ね巻によるコイルである。重ね巻することにより一相当りの巻数を複数回とすることができるため、高い誘起電圧を得ることができ、リニアモータ(リニア同期モータ)の効率を向上させることができる。なお、一相を1本のケーブルで波巻した場合、一相当りの巻数は1ターンであり、ターン数(導体数)を増やすには、接続数を増やさなければならなくなるが、重ね巻の場合は1本のケーブルで複数ターンを構成できるので、繁雑にならずに、リニアモータの効率向上を図ることができる。
このように、撚線導体33の素線32が半導電被覆素線であることで、車両側の超電導磁石による変動磁界によって撚線導体33に誘起される渦電流は小さく、したがって渦電流損失は大きくならない。これにより、推進効率の低下が軽減され、リニアモーターの消費電力を少なくすることができる。
しかし、素線の半導電被覆材料として低融点樹脂、特にウレタン樹脂を用いると、はんだ槽へのディッピングにより被覆を容易に除去することが可能となり、推進コイルどうしの接続の作業性が著しく向上する。ウレタン樹脂は、ポリエステル、エステルイミド、ホルマール等と比べて、はんだ槽へのディッピングにより容易に剥離するので、素線の半導電被覆材料として適切である。
推進コイルは、ケーブルの曲げ半径が極めて小さいことから、使用するケーブルに十分な可撓性を要求されるが、絶縁体が架橋ポリエチレンである単心ケーブルの許容曲げ半径は少なくとも外径の8倍程度であり、推進コイルのケーブルとしては必ずしも十分な可撓性でない。しかし、絶縁体に例えばEPゴムを用いることで、許容曲げ半径を外径の4倍程度まで小さくすることができる。したがって、コイルの窓面積を大きくでき、同一の推進電流で発生する推力を大きくできるため推進効率を向上することができる。
推進コイルは、上記のようにケーブルの曲げ半径が極めて小さいため、ケーブルの金属遮蔽層として、外部半導電層36の外周に単に金属ワイヤを間隔をあけて並列にかつ螺旋状に配置したワイヤシールドを設けたとすると、金属ワイヤが移動し金属ワイヤの分布に偏り(円周方向の粗密)が生じる恐れがあり、この場合シールド性能が低下する恐れがある。また、金属ワイヤどうしが互いに接触する恐れがあり、この場合、金属ワイヤが離間している場合と比べて渦電流が若干増すことになる。また、偏った金属ワイヤが外部半導電層を挟んでこれを変形させる恐れがあり、この場合、外部半導電層の変形で電界を均等にする作用が低下する恐れがある。このように、ケーブルの電気特性を損なう恐れがあることから、推進コイルのケーブルの曲げ半径を十分小さくすることができない。
しかし、実施例のようにワイヤーシールド37をシース樹脂38内に埋め込んだ構造にすると、ケーブルを極めて小さい曲げ半径で曲げた場合でも、金属ワイヤ37aの移動は生じず、金属ワイヤ37a間隔が一定に保たれる。したがって、金属ワイヤ37aの分布に偏り(円周方向の粗密)が生じたり、互いに接触したり、外部半導電層36を挟んでこれを変形させる恐れはなく、シールド性能の低下や渦電流の増加や電界を均等にする作用の低下などのような、電気特性を損なう問題は生じず、このため推進コイルのケーブルの曲げ半径を十分小さくできる。
また、金属ワイヤを外部半導電層36の外周面に直接巻き付ける場合は、従来例の図6のように押さえ巻きテープ16を必要とし、その巻き付けが煩雑であるが、金属ワイヤ37aをシース樹脂38に埋め込む場合は、押さえ巻きテープが不要となり、製造工程が簡略化される。
なお、金属遮蔽層を金属テープで構成すると、剛性が高くなりケーブルの可撓性が低下するが、金属ワイヤを巻き付けたワイヤシールドによれば、可撓性の低下を避けられる。
また、金属遮蔽層を編組で構成した場合、ケーブル円周方向の導通路が形成される編組構造では大きな渦電流が誘起され易いので、渦電流損失が増すが、各金属ワイヤが分離状態で巻き付けられるワイヤシールドでは、大きな渦電流は誘起されず、渦電流損失は少ない。
なお、半導電の定義として、厳格に抵抗率が106〜109Ω・cmの範囲を半導電と呼ぶ場合もあるが、抵抗率が10-2〜1010Ω・cmの範囲を半導電と呼ぶ場合もあるので、ここでは、抵抗率10-1〜106Ω・cmの範囲も半導電の範疇に入るものとしている。裸素線の被覆が絶縁材料でなくても、抵抗率が10-1〜106Ω・cmの範囲の半導電材料であれば、上述したような渦電流抑制の効果を得るために有効であることを、以下に説明する。
半導電被覆層の抵抗値は、素線間を渡る渦電流を十分に防止する抵抗値以上とし、かつ、撚り線導体と内部半導電層の間で放電を起こすような電位差を生じない抵抗値以下にする必要がある。
ここで、素線間を渡る渦電流を防止するのに必要な抵抗値について説明する。
ケーブル型推進コイルが受ける変動磁界条件下において、導体の渦電流損失は渦電流回路に鎖交する磁束×周波数の2乗に比例し、渦電流回路の全抵抗に反比例する。隣り合う2本の導体素線間の抵抗値が0の場合、鎖交磁束が2倍になるのと同義であるので、渦電流損失は素線1本に発生する渦電流損失の4倍となる。一方、隣り合う2本の導体素線間に半導電層を設け、渦電流回路の全抵抗を4倍にすると、渦電流損失は1/4になり、素線1本に発生する渦電流損失と同等にすることができる。以上のことから、素線間を渡る渦電流を防止するのに必要な抵抗値を簡易的に以下の計算で求めることができる。
Ra=ρ1・L1/S1 ・・・(1)
Rb=ρ1・L1/S1+ρ2・2d/S2 ・・・(2)
Ra:隣り合う2本の導体素線間に発生する渦電流回路の全抵抗(半導電層がない場合)
Rb:隣り合う2本の導体素線間に発生する渦電流回路の全抵抗(半導電層がある場合)
ρ1:素線導体の抵抗率
ρ2:半導電層の抵抗率
L1:渦電流回路の素線導体部分の長さ
d :素線被覆半導電層厚さ
S1:素線導体の断面積
S2:隣り合う2本の導体素線の接触面積÷2
(1)式と(2)式からRb=4Raとなるρ2は、
ρ2=3ρ1・L1/S1・S2/2d ・・・(3)
(3)式から、実施例で示したケーブルサイズにおいて、素線間を渡る渦電流を防止するのに必要な半導電層の抵抗率を計算すると、おおよそ10-1Ω・cmとなる。
一方、抵抗率の上限については、撚り線導体と内部半導電層の間で放電を起こすような電位差を生じさせないため、内部半導電層の抵抗率以下にすることが望ましい。内部半導電層の抵抗率は、導体との接触部分でコロナ放電を起こさないために106Ω・cm以下が望ましいことが報告されている。(G.S.Eager,G.Barder and D.A.Silver,”Corona detection experience in
commercial production of power cables with extruded insulation,“IEEE trans. Power
Apparatus and Systems,vol.PAS-88,pp.342-364,April 1969)
22 ガイドウエイの側壁
23 推進コイル
23a 接続ケーブル部
24 案内・浮上コイル
25 車体
26 超電導コイル
28 接続部
29 取り付け金具
31 地上コイル装置を構成するケーブル
32 (撚線導体の)素線
32a 裸素線
32b 半導電材料の被覆
33 素線
34 内部半導電層
35 絶縁体
36 外部半導電層
37 ワイヤシールド(金属遮蔽層)
37a 金属ワイヤ
38 シース
Claims (7)
- 磁気浮上式鉄道用軌道に車輌を前後に推進させるために設置される地上コイル装置であって、裸素線に抵抗率が10-1〜106Ω・cmの半導電材料を被覆した素線の複数本を撚り合わせてなる撚線導体の周囲に、内側から順に内部半導電層、絶縁層、外部半導電層を形成し、さらにその周囲に金属遮蔽層及びシースを形成したケーブルを重ね巻にて単一の環状に巻回した推進コイルを、これと一体の又は別体の接続ケーブルを介して軌道側壁に間隔をあけて配置したことを特徴とする磁気浮上式鉄道用地上コイル装置。
- 前記素線の半導電材料が低融点樹脂であることを特徴とする請求項1記載の磁気浮上式鉄道用地上コイル装置。
- 前記低融点樹脂が導電性微粒子と複合化されたウレタン樹脂であることを特徴とする請求項2記載の磁気浮上式鉄道用地上コイル装置。
- 前記撚線導体における最外層の素線の一部を、被覆のない裸素線に代えたことを特徴とする請求項1〜3記載の磁気浮上式鉄道用地上コイル装置。
- 前記絶縁層が、ゴム系絶縁材料からなる絶縁層であることを特徴とする請求項1〜4記載の磁気浮上式鉄道用地上コイル装置。
- 前記金属遮蔽層が、外部半導電層の外周に複数本の金属ワイヤを間隔をあけて並列にかつ螺旋状に配置したワイヤーシールドであることを特徴とする請求項1〜5記載の磁気浮上式鉄道用地上コイル装置。
- 前記ワイヤーシールドが樹脂からなるシース内に埋め込まれていることを特徴とする請求項6記載の磁気浮上式鉄道用地上コイル装置。
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