JP3938292B2 - 圧電性物質を用いた弾性波制御素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性波の伝搬経路に挿入又は振動体に装着して、任意の周波数又は任意の周波数帯域の弾性波を減衰、反射させたり、又は透過させたりすることができる圧電性物質を用いた弾性波制御素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、音や振動など弾性体を伝わる弾性波を減衰する手法としては、ガラスウールなどによる吸音やダンパー等を使った振動の減衰などが挙げられる。これらは、弾性波のエネルギーを吸音材やダンパー等の弾性損失によって熱エネルギーに変換し、それを消費することによって弾性波を減衰させる。
【0003】
また、弾性波を遮断する手法としては、コンクリート等による遮音とバネを使った制振等が挙げられる。通常、気体や液体中を伝搬する弾性波に対しては、大きな質量や弾性率によって反射率を増大することができ、固体を伝搬する弾性波に対しては弾性率を小さくすることによって振動伝達率を減少することができる。
【0004】
このように、弾性波を伝搬する媒質中に異種材料を挿入したり、又は異種材料を弾性体に装着することによって、弾性波を減衰、反射させたり、又は伝搬を抑制したりする手法をパッシブ制御という。このパッシブ制御法では、減衰率、反射率及び透過率(振動伝達率)は異種材料の弾性率及び弾性損失に依存する。
【0005】
最近では、弾性波を感知するセンサ、演算部、制御部及びアクチュエータによって構成されるアクティブ制御法も用いられている。このアクティブ制御法は、センサが弾性波を感知すると演算部と制御部を通して、その弾性波を減衰するようにアクチュエータを駆動することを特徴としている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、パッシブ制御法では、減衰率、反射率及び透過率(振動伝達率)、更にこれらの周波数特性は、主に異種材料の大きさ、形状、弾性率及び弾性損失によって決定される。そのため、これらの特性は、温度や圧力などの環境によって変化するものの、人為的にその特性を変化させることはできなかった。
また、アクティブ制御法では、十分な特性を得るために複雑なシステムと演算制御法を必要とする。
【0007】
一方、減衰率、反射率、透過率(振動伝達率)及びこれらの周波数特性を自由に変えることができる素子を簡単なシステムで実現できれば、弾性波を任意の周波数帯域で自由に減衰、反射又は透過させたりすることができ、その応用範囲は多岐にわたるものと考えられる。
【0008】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、減衰率、反射率、透過率(振動伝達率)、更にこれらの周波数特性を簡単に変えられ、特定の周波数又は任意の周波数帯域の弾性波を減衰、反射又は透過することができるだけでなく、これらの温度特性を補償することもできる簡単な構成の圧電性物質を用いた弾性波制御素子を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、弾性波の伝搬経路に挿入し、又は振動体に装着して、任意の周波数の弾性波を減衰、反射又は透過させる弾性波制御素子であって、圧電性物質に一対の電極を設け、この電極間に負性容量回路を接続し、負性容量回路の容量及び損失係数とこれらの周波数特性を任意に変化させ、任意の周波数における前記負性容量回路の損失係数を、前記圧電性物質の誘電的な損失係数に一致させたものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、弾性波の伝搬経路に挿入し、又は振動体に装着して、任意の周波数帯域の弾性波を減衰、反射又は透過させる弾性波制御素子であって、圧電性物質に一対の電極を設け、この電極間に負性容量回路を接続し、負性容量回路の容量及び損失係数とこれらの周波数特性及び温度特性を任意に変化させ、この負性容量回路の容量の絶対値と損失係数の周波数特性及び温度特性を、任意の周波数帯域、温度範囲で前記圧電性物質の容量と損失係数の周波数特性及び温度特性に一致させたものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、弾性波の伝搬経路に挿入し、又は振動体に装着して、任意の周波数帯域の弾性波を減衰、反射又は透過させる弾性波制御素子であって、圧電性物質に一対の電極を設け、この電極間に負性容量回路を接続し、負性容量回路の容量及び損失係数とこれらの周波数特性を任意に変化させ、この負性容量回路の容量の絶対値と損失係数の周波数特性を、任意の周波数帯域で前記圧電性物質の容量と損失係数の周波数特性に一致させたものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、弾性波の伝搬経路に挿入し、又は振動体に装着して、任意の周波数又は周波数帯域の弾性波を減衰、反射又は透過させる弾性波制御素子であって、圧電性物質に一対の電極を設け、この電極間に負性容量回路を接続し、負性容量回路の容量及び損失係数とこれらの温度特性を任意に変化させ、この負性容量回路の容量の絶対値と損失係数の温度特性を、任意の温度範囲で前記圧電性物質の容量と損失係数の温度特性に一致させたものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の圧電性物質を用いた弾性波制御素子において、前記負性容量回路を構成する素子のうち、損失係数を決定する素子については、前記圧電性物質と同じ物質で形成したものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の圧電性物質を用いた弾性波制御素子において、前記負性容量回路を構成する素子のうち、損失係数を決定する素子については、抵抗とコンデンサとコイルのすべて又はこれらのいずれかを用いたネットワークとしたものである。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項6記載の圧電性物質を用いた弾性波制御素子において、前記ネットワークを構成する素子の一部又は全てを前記圧電性物質と同じ物質で形成したものである。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項7記載の圧電性物質を用いた弾性波制御素子において、前記ネットワークを構成する素子のうち抵抗を可変にすることによって前記負性容量回路の容量及び損失係数の周波数特性を可変とするものである。
【0017】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の圧電性物質を用いた弾性波制御素子において、前記圧電性物質に替えて、圧電性物質に3つの素子を接続して構成した混成素子を前記負性容量回路に接続し、前記3つの素子を抵抗、コンデンサ、コイルのいずれか、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせたネットワークとするものである。
【0018】
請求項10に係る発明は、請求項9記載の圧電性物質を用いた弾性波制御素子において、前記3つの素子のうちの一つの素子を開放したり、又はその他2つの素子の一方又は両方を短絡したりするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明の第1の発明の実施の形態の構成図、図2は第1の発明の実施の形態における振動特性の測定方法の説明図、図3乃至図5は第1の発明の実施の形態における測定結果を示す図、図6は第1の発明の実施の形態における音響特性の測定方法の説明図、図7は第1の発明の実施の形態における測定結果を示す図、図8は本発明の第2の発明の実施の形態の構成図、図9及び図10は第2の発明の実施の形態における振動特性の測定結果、図11は第2の発明の実施の形態における透過損失の測定方法の説明図、図12は第2の発明の実施の形態における透過損失の測定結果、図13は圧電性物質と3つの素子からなる混成素子の構成図である。
【0020】
圧電性物質の弾性率と弾性損失は、歪みによって圧電性物質の内部に生じる反電場の大きさに応じて変化するので、インダクタンスや負性容量を呈する付加回路を結合し、この反電場を人為的に変化させることによって、大きく変化することができる(例えば、特開平10−74990号参照)。それによると、付加回路を結合した圧電性物質の弾性コンプライアンスs(α)(弾性率の逆数)は、次に示す式(1)で表される。ここで、sEは電圧一定における弾性コンプライアンス、kは圧電性物質の電気機械結合係数で0.1から0.6の定数である。
【0021】
s(α)=sE{1−k2/(1+α)} (1)
【0022】
αは、付加回路の容量Cを圧電性物質の容量CSで規格化した値で次に示す式(2)で与えられる。
【0023】
α=C/CS (2)
【0024】
式(1)より、弾性コンプライアンスsEは、αの値に応じて以下に示す式(3),(4),(5),(6)のようになる。
【0025】
s(0)=sE(1−k2) (3),
s(∞)=sE (4),
s(−1)=∞ (5),
s(−(1−k2))=0 (6)
【0026】
付加回路の容量Cが正、即ちαが「0<α<∞」の範囲にあるときには、s(α)は高々sEからその(1−k2)倍までしか変化しない。αの変化範囲を負の値になるまで拡張すると、s(α)を0から無限大の値まで変化させることができ、更に「−1<α<−(1−k2)」とするとs(α)は負の値になる。
【0027】
このように、付加回路の電気的特性を変化させることにより、静的な応力を加えた時、見かけの圧電性物質の弾性率を大きく変化させることが可能になる。
本発明は、これを音や振動といった弾性波による動的な応力が圧電性物質に加えられた時、見かけの弾性率が大きく変化させることができるようにし、音や振動などの弾性波を減衰、反射又は透過させることができるようにしたものである。
【0028】
本発明に係る圧電性物質を用いた弾性波制御素子の第1の発明の実施の形態は、図1に示すように、外力によって電圧を発生する圧電性物質1の面に一対の電極を設け、それぞれの電極に負性容量回路A、負性容量回路B又は負性容量回路Cが接続されてなる。
【0029】
負性容量回路A,B,Cの容量Cの絶対値が圧電性物質1の容量CSより小さい場合(|C|<CS)には、図1(a)に示す弾性波制御素子を用い、容量Cの絶対値が圧電性物質1の容量CSよりも大きい場合(|C|>CS)には、図1(b)及び(c)に示す弾性波制御素子を用いる。
【0030】
図1(a)に示す弾性波制御素子では、圧電性物質1は弾性波の伝搬経路に挿入又は振動体に装着され、負性容量回路Aは、抵抗又は抵抗とコンデンサとコイルの全て又はこれらのいずれかを組み合わせからなる素子a及び素子bと、可変抵抗R0を直列に接続したコンデンサC0を正帰還ループを構成するように接続したオペアンプ(演算増幅器)2(オペアンプ2の電源は図示せず)を備えている。オペアンプ2の反転端子は素子aと素子bに接続され、オペアンプ2の非反転端子は抵抗R1に接続されている。
【0031】
図1(b)に示す弾性波制御素子では、圧電性物質1は弾性波の伝搬経路に挿入又は振動体に直接装着され、負性容量回路Bは、抵抗又は抵抗とコンデンサとコイルの全て又はこれらのいずれかを組み合わせからなる素子a及び素子bと、可変抵抗R0を並列に接続したコンデンサC0を負帰還ループを構成するように接続したオペアンプ(演算増幅器)2(オペアンプ2の電源は図示せず)を備えている。オペアンプ2の非反転端子は、素子aと素子bに接続されている。
【0032】
図1(c)に示す弾性波制御素子では、圧電性物質1は弾性波の伝搬経路に挿入又は振動体に直接装着され、負性容量回路Cは、抵抗又は抵抗とコンデンサとコイルの全て又はこれらのいずれかを組み合わせてなる素子a及び素子bと、抵抗R1と抵抗R2からなる可変抵抗器4と、可変抵抗器4に直列接続したコンデンサC1と、可変抵抗器4を介して抵抗R0’を並列に接続したコンデンサC0を負帰還ループを構成するように接続したオペアンプ2(オペアンプ2の電源は図示せず)を備えてなる。オペアンプ2の非反転端子は、素子aと素子bに接続されている。
【0033】
負性容量回路Aの複素容量CA *は、次に示す式(7)で与えられる。ここで、CA'は複素容量CA *の実数部、CA"は虚数部、ωは角周波数、Z1は素子aのインピーダンス、Z2は素子bのインピーダンスである。
【0034】
CA *=CA'-iCA"=(Z2/Z1)・(1/C0 2+ω2R0 2)・(1/C0-iωR0) (7)
【0035】
また、負性容量回路B及び負性容量回路Cの複素容量CB *は、次に示す式(8)で与えられる。ここで、CB'は複素容量CB *の実数部、CB"は虚数部である。
【0036】
CB *=CB'-iCB"=(Z2/Z1)・(C0-i(1/ωR0)) (8)
【0037】
負性容量回路Cでは、式(8)中の抵抗R0は、R1とR2の比に応じ、R0’を最小とし、開放条件まで可変となる。素子aと素子bを抵抗Raと抵抗Rbからなる可変抵抗器とすると、負性容量回路A,B,Cの複素容量の実数部及び虚数部は、この可変抵抗器を調節することによって変化させることができる。
【0038】
更に、抵抗R0を可変とすることによって負性容量回路A,B,Cの損失係数tanδ(複素容量CA *,CB *の虚数部CA",CB"と実数部CA',CB'の比)の周波数特性を変えることができる。また、素子aと素子bを、又はこれらのいずれかを、抵抗、コンデンサ及びコイルの全て又はこれらのいずれかを組み合わせたネットワークとすることによっても負性容量回路A,B,Cの容量と損失係数の周波数特性を変えることができる。
【0039】
本発明に係る弾性波制御素子において、圧電性物質1は音や振動などの弾性波が伝搬することによって周期的な歪みを生じる。そのため圧電性物質1の電極間に結合した負性容量回路A,B,Cの容量Cと、圧電性物質1の容量は複素数で扱われる。負性容量回路A,B,Cの複素容量C*と圧電性物質1の複素容量CS *は次に示す式(9),(10)で表される。
【0040】
C*=C'−iC"=C'(1−itanδ) (9),
CS *=CS'−iCS"=CS'(1−itanδS) (10)
【0041】
ここで、C'は負性容量回路A,B,Cの複素容量C*の実数部、C"は負性容量回路A,B,Cの複素容量C*の虚数部、tanδは負性容量回路A,B,Cの損失係数、CS'は圧電性物質1の複素容量CS *の実数部、CS"は圧電性物質1の複素容量CS *の虚数部、tanδSは圧電性物質1の誘電的な損失係数である。
αは、式(9)及び式(10)より、次に示す式(11)で表すように、複素数となる。
【0042】
α*=α'-iα"=C*/CS *=C'/CS'・(1-itanδ)/(1-itanδS) (11)
【0043】
式(11)を式(1)に代入すると、複素弾性コンプライアンスs*が次に示す式(12)により得られる。但し、電圧一定における弾性コンプライアンスは複素数sE*となる。
【0044】
【0045】
ここで、弾性コンプライアンスの実数部s'は弾性率の逆数に相当し、虚数部s"は弾性損失の逆数に相当する。即ち、負性容量回路A,Bの複素容量C*の実数部C'と虚数部C"を変化させ、α'とα"を変えることによって圧電性物質1の弾性率と弾性損失を大きく変化させることができる。
【0046】
負性容量回路A,B,Cでは、式(7)及び式(8)より、複素容量C*の実数部C'、虚数部C"及び損失係数tanδは、コンデンサC0、抵抗R0及び
角周波数ωによるが、それに比べ圧電性物質1では、複素容量CS *の実数部CS'、虚数部CS"及び誘電的な損失係数tanδSは、通常周波数に対して緩やかに変化する。
【0047】
式(11)より、tanδ=tanδSを満たす周波数では、α*は次に示す式(13)のようになる。
【0048】
α*=C'/CS'=α' (13)
【0049】
このとき、複素弾性コンプライアンスs*の変化は、α'の値によって、式(3)〜式(6)と同様になる。即ち、tanδ=tanδSを満たす周波数では、C'/CS'の値に応じて圧電性物質1の弾性率及び弾性損失を無限大(∞)から負性弾性領域まで大きく変化させることができる。
【0050】
以上のように、第1の発明の実施の形態では、負性容量回路A,B,Cの容量成分(複素容量C*の実数部C')と抵抗成分(複素容量C*の虚数部C")を変えることによって、任意の周波数で圧電性物質1の弾性率と弾性損失を変化させることができ、特にtanδ=tanδSとなる周波数では、C'/CS'の値に応じて無限大(∞)から負性弾性領域まで大きく変化させることができる。
【0051】
次に、第1の発明の実施の形態における振動特性の測定方法を図2に示す。ここでは、弾性波制御素子を構成する圧電性物質1に圧電セラミック(PZT)を用いた。外力によって電圧を発生する圧電性物質1の面に、対になるように電極11,11を設け、これらの電極11,11の間に電線12により負性容量回路13を接続した。
【0052】
そして、圧電性物質1を加振台14に固定し、更に圧電性物質1の上に質量15を載置した。加振台14は加振器16によって加振され、周波数及び振幅を任意に変えることができる。ここでは振幅を一定とした。更に、加振台14と質量15の上に加速度ピックアップ17を固定し、加振器16及び質量15の上面の変位を測定した。
【0053】
負性容量回路の複素容量の実数部を変化させ、負性容量回路13から圧電性物質1に印加される制御電圧を変化させながら、加速度ピックアップ17によって質量15の上面の変位を測定した。ここでは、3kHzで負性容量回路13の損失係数と圧電性物質1の誘電的損失係数を一致させ、3kHzで加振した。
【0054】
図3に加速度ピックアップ17より測定された変位に比例する電圧の振幅Vdを、負性容量回路13の制御電圧の振幅Vcに対して示す。黒丸●は負性容量回路Aにおける測定結果、白丸○は負性容量回路Bにおける測定結果である。電圧の振幅Vdは、負性容量回路A、負性容量回路B及び負性容量回路Cのいずれも制御電圧の振幅Vcに対して比例する。
【0055】
負性容量回路Aを付加したときは、電圧の振幅Vdは制御電圧の振幅Vcが増加するにつれて増大した。この結果は、圧電性物質1に負性容量回路Aを付加し、制御電圧の振幅Vcが増大するにつれて弾性率が増加することを示している。一方、負性容量回路B又は負性容量回路Cを付加したときは、電圧の振幅Vdは制御電圧の振幅Vcが増加するにつれて減少した。特にVc=3.5Vでは、Vd=0mV、すなわち完全に制振したことを示している。
【0056】
また、Vcが3.5V以上では、Vdは負となった。これらの結果は、圧電性物質1に負性容量回路B又は負性容量回路Cを付加し、Vcが増大するにつれて弾性率が減少することを示し、特にVc=3.5Vでは弾性率が0となり、更にVc>3.5Vでは負性弾性領域となったことを示している。
【0057】
また、振動伝達率の負性容量回路13の容量依存性を測定した。ここでは、3kHzで負性容量回路13の損失係数と圧電性物質1の誘電的損失係数を一致させ、3kHzにおける振動伝達率を測定した。
【0058】
図4に振動伝達率を負性容量回路13の容量C'と圧電性物質1の容量CS'の比C'/CS'に対して示す。黒丸●は圧電性物質1に負性容量回路Aを結合したときの測定結果、白丸○は負性容量回路Bを結合したときの測定結果である。負性容量回路Aを結合すると、振動伝達率は比C'/CS'が減少するにつれて増大し、負性容量回路B又は負性容量回路Cを結合すると比C'/CS'が増大するにれて減少した。いずれも、C'/CS'=−1近傍で大きく変化した。
【0059】
この結果は、本発明の弾性波制御素子が負性容量回路13と圧電性物質1のそれぞれの容量比を変化させることによって、即ち負性容量回路13の電気的特性を変えることによって振動伝達率を増減させることができ、振動を減衰させることは勿論のこと、振動をより大きく伝達させることもできることを示している。
【0060】
次に、2.5kHz又は3kHzで負性容量回路13と圧電性物質1の誘電的損失係数を一致させ、それぞれの振動伝達率の周波数特性を測定した。
【0061】
図5(a)に圧電性物質1に負性容量回路Aを接続したときの測定結果を、図5(b)に負性容量回路B又は負性容量回路Cを接続したときの測定結果を示す。図4に示した測定結果と同様に、負性容量回路Aを接続すると振動伝達率は増加し、負性容量回路B又は負性容量回路Cを接続すると振動伝達率は減少した。いずれも振動伝達率は周波数に依存し、それぞれの損失係数が一致する周波数で同図(a)では下向きのピークを、また同図(b)では上向きのピークを示した。このとき 同図(a)では15dBに、また同図(b)では−30dBに達した。
【0062】
このように、本発明の弾性波制御素子は、特定の周波数の弾性波を減衰することは勿論のこと、より大きく伝達させることができ、その周波数及び伝達率を電気的に変えることができる。
【0063】
図6に音響特性の測定方法を示す。ここでは、圧電性物質1としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムを用いた。先に述べた振動特性の測定と同様に、電圧が発生する圧電性物質1の面に一対の電極11,11を設け、これらの電極11,11の間に電線12により負性容量回路13を接続した。
【0064】
直径5cmの円柱状の音響管21に圧電性物質1を湾曲するように挿入し、その背面に吸音材22を設け、更に音響管21の口に音源23を設けた。また、音響管21中にマイクロホン24を2つ設けて吸音率の周波数特性を測定した。ここでは、負性容量回路13を設けていないときの吸音率も併せて測定した。
【0065】
図7(a)に圧電性物質1に負性容量回路Aを接続したときの吸音率の周波数特性を、図7(b)に負性容量回路B又は負性容量回路Cを接続したときの吸音率をそれぞれ実線で示す。また、同図(a)及び同図(b)に負性容量回路13を設けていないときの吸音率を点線で併せて示す。ここでは、1.6kHz近傍で負性容量回路13と圧電性物質1の誘電的損失係数を一致させた。
【0066】
同図(a)より、負性容量回路Aを接続すると、吸音率は1.6kHz近傍で下向きのピークを示し、最大6.5dB減少した。この結果は、圧電性物質1に負性容量回路Aを接続し、任意の周波数で、それぞれの誘電的損失係数を一致させると、その周波数で選択的に遮音することを示している。
【0067】
また、同図(b)より負性容量回路B又は負性容量回路Cを接続すると、吸音率は1.6kHz近傍で上向きのピークを示し、最大5.4dB増加した。この結果は、圧電性物質1に負性容量回路Bを接続し、任意の周波数で、それぞれの誘電的損失係数を一致させると、その周波数で選択的に吸音することを示している。
【0068】
次に、本発明に係る圧電性物質を用いた弾性波制御素子の第2の発明の実施の形態は、図8に示すように、外力によって電圧を発生する圧電性物質1の面に一対の電極を設け、それぞれの電極に負性容量回路D又は負性容量回路Eが接続されてなる。圧電性物質1は、弾性波の伝搬経路に挿入され、又は振動体に装着されている。
【0069】
図8(a)に示す弾性波制御素子は、負性容量回路Dの容量Cの絶対値|C|が圧電性物質1の容量CSより小さな場合(|C|<CS)に用い、一方、図8(b)に示す弾性波制御素子は、負性容量回路Eの容量Cの絶対値|C|が圧電性物質1の容量CSよりも大きな場合(|C|>CS)に用いる。
【0070】
図8(a)に示す弾性波制御素子では、負性容量回路Dは、抵抗又は抵抗とコンデンサとコイルの全て又はこれらのいずれかを組み合わせてなる素子a及び素子bと、素子cを正帰還ループを構成するように接続したオペアンプ2(オペアンプ2の電源は図示せず)を備えている。オペアンプ2の反転端子には、素子aと素子bが接続されている。オペアンプ2の非反転端子には、接地された抵抗が接続されている。
【0071】
また、図8(b)に示す弾性波制御素子では、負性容量回路Eは、抵抗又は抵抗とコンデンサとコイルの全て又はこれらのいずれかを組み合わせてなる素子a及び素子bと、素子cを負帰還ループを構成するように接続したオペアンプ2(オペアンプ2の電源は図示せず)を備えてなる。オペアンプ2の非反転端子には、素子aと素子bが接続されている。
【0072】
負性容量回路D,Eを構成する素子cは、任意の周波数帯域で負性容量回路D,Eの複素容量の実数部の絶対値及び損失係数の周波数特性を、圧電性物質1の複素容量の実数部と誘電損失係数の周波数特性と一致させるように構成された抵抗とコンデンサとコイルの全て又はこれらのいずれかを組み合わせてなるネットワークである。
【0073】
素子cを構成する素子の一部を圧電性物質1と同じ物質とすれば、容易に任意の周波数帯域で負性容量回路D,Eの複素容量の実数部の絶対値及び損失係数の周波数特性を、圧電性物質1の複素容量の実数部と誘電損失係数の周波数特性と一致させる周波数帯域を任意に変化させることができる。
また、素子cを圧電性物質1と同じ物質とすれば、複素容量の実数部と損失係数の温度特性を圧電性物質1のそれらと一致させることができる。
【0074】
従って、第2の実施の形態では、本発明の弾性波制御素子は任意の周波数帯域で弾性率及び弾性損失を大きく変化させ、その周波数帯域の弾性波を選択的に減衰、反射又は透過させることができ、更に温度特性を補償することもできる。
【0075】
負性容量回路D及び負性容量回路Eの複素容量C*は、いずれも次に示す式(14)で与えられる。
【0076】
C*=C'-iC"=(Z2/Z1)・(C1'-iC1")=(Z2/Z1)・C1'(1-itanδ1) (14)
【0077】
ここで、C'は負性容量回路D及び負性容量回路Eの複素容量C*の実数部、C"は負性容量回路D及び負性容量回路Eの複素容量C*の虚数部、C1'は素子cの複素容量の実数部、C1"は素子cの複素容量の虚数部、Z1は素子aのインピーダンス、Z2は素子bのインピーダンスである。tanδ1は素子cの損失係数で、tanδ1=C1"/C1'である。
【0078】
素子a及び素子bを抵抗R1,R2の可変抵抗器とすれば、負性容量回路D及び負性容量回路Eの複素容量C*は、素子cの複素容量の実数倍となる。
また、式(14)よりtanδ1は、負性容量回路D及び負性容量回路Eの損失係数となる。但し、素子a及び素子b又はこれらのいずれかを、抵抗、コンデンサ、コイルの全て又はこれらのいずれかによって構成されたネットワークとすれば、負性容量回路D及び負性容量回路Eの容量と損失係数の周波数特性を変化させることができる。
【0079】
式(11)と同様に、負性容量回路の複素容量C*と圧電性物質1の複素容量CS *の比をα*とすると、α*は次に示す式(15)で表される。
【0080】
【0081】
任意の周波数帯域又は温度範囲で負性容量回路の複素容量の実数部C'と損失係数tanδの周波数特性や温度特性が、それぞれ圧電性物質1の容量CS'と誘電的な損失係数tanδSの周波数特性、温度特性と一致させると、その領域では、C'=XCS'、tanδ=YtanδSとすることができる。ここで、X及びYは実数であり、これらを式(15)に代入すると、αは次に示す式(16)で表されるように、X及びYの関数で与えられる。
【0082】
α*=α'-iα"=X{(1+Ytan2δS)/(1+tanδS)}-iX(Y-1)tanδS (16)
【0083】
式(16)を式(12)に代入すると、実数X及び実数Yを変えることによって圧電性物質1の弾性率と弾性損失が変化することが分かる。
【0084】
更に、Y=1(tanδ1=tanδS)のとき、α*=α'=C'/CS'となる。このとき、式(3)〜式(6)と同様に圧電性物質1の複素弾性コンプライアンスs*は、C'/CS'の値に応じて無限大(∞)から負性弾性領域まで大きく変化させることができる。負性容量回路D及び負性容量回路Eの複素容量の実数部C'が任意の周波数帯域又は温度範囲で圧電性物質1のそれらと一致すれば、その間ではC'/CS'の値は一定となり、その領域に亘り圧電性物質1の弾性率及び弾性損失を大きく変化させることができる。
【0085】
以上のように、第2の発明の実施の形態では、圧電性物質1に付加した負性容量回路D,Eの損失係数を、任意の周波数帯域又は温度範囲で圧電性物質1の誘電的損失係数と一致させることによって、任意の周波数帯域又は温度範囲にわたり圧電性物質1の弾性率と弾性損失を変化させることができ、弾性波の減衰率、反射率又は透過率(振動伝達率)の周波数特性や温度特性を補償することが可能になる。
【0086】
次に、第2の発明の実施の形態における振動制動特性の測定結果を示す。測定は、第1の発明の実施の形態と同様に図2に示す方法で行った。
加振台14に設けた加速度ピックアップ17と質量15の上面に設けた加速度ピックアップ17より、それぞれの加速度を測定し、これらの比から振動伝達率を求めた。
【0087】
図9に振動伝達率の周波数特性を示す。ここでは、圧電性物質1に負性容量回路Eを付加した。負性容量回路Eの素子cには、抵抗、コンデンサからなるネットワークを用い、そのうちの1つのコンデンサは圧電性物質1と同様なものとし、抵抗を可変とした。圧電性物質1に負性容量回路Eを付加すると、700Hz付近の共振周波数以上で振動伝達率は5dB以上減少した。
【0088】
また、共振周波数が低周波側により、ピークの形状が鋭くなっていることから圧電性物質1の弾性率及び弾性損失が、負性容量回路Eを付加することによって減少していることがわかる。即ち、圧電性物質1は負性容量回路Eを付加することによって共振周波数を含む広い周波数帯域に亘り弾性率及び弾性損失を変化させ、振動の伝達を抑制したことを示す。
【0089】
また、負性容量回路Eを構成する素子cの特性を変更することによって、図10に示すように、700Hz近傍の共振を減少させることもできる。これは、負性容量回路Eを構成する素子cの電気的特性を変化させることによって、共振近傍の周波数帯域で圧電性物質1の弾性損失を増大し、共振を減少させたことを意味する。
【0090】
次に、第2の発明の実施の形態における音響特性の測定結果を示す。測定は、図11に示す音響管を使った透過損失測定装置で行った。圧電性物質1としてフッ化ビニリデンと三フッ化エチレンの共重合体フィルムを用いた。第1の発明の実施の形態の実施例と同様に、電圧が発生する圧電性物質1の面に一対の電極11,11を設け、これらの電極11,11の間に電線12により負性容量回路13を接続した。
【0091】
直径5cmの円柱状の音響管21に圧電性物質1を湾曲するように挿入し、その背面に成形体22を設け、更に音響管21の口に音源23を設けた。また、音響管21中のフィルムの前面及び背面にそれぞれマイクロホン24を2つずつ設けて透過損失の周波数特性を測定した。ここでは、負性容量回路13を設けていない時の透過損失も併せて測定した。
【0092】
図12にフィルムの透過損失の周波数特性を示す。ここでは、負性容量回路Dを用い、素子cには抵抗、コンデンサからなるネットワークを用い、抵抗を可変とした。負性容量回路Dを付加すると、300Hzから1kHzにかけて透過損失が増加し、その周波数帯域で遮音することを示している。
【0093】
また、図1及び図8に示す圧電性物質1に替えて、図13に示すように、圧電性物質1に3つの素子d,e,fを直列又は並列に接続して構成した混成素子30を負性容量回路A,B,C,D,Eに接続することもできる。
3つの素子d,e,fは、それぞれ抵抗、コンデンサ、コイルのいずれか、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせたネットワークで構成される。
【0094】
更に、3つの素子d,e,fのうち、素子dのみ開放したり、素子e,fのいずれか、又は両方とも短絡する場合もある。
例えば、素子dとしてコンデンサを用いれば、圧電性物質1の容量の周波数特性をより平坦にすることができる。なお、圧電性物質1に同軸ケーブルを接続した場合も同様な効果が得られる。
【0095】
また、素子eとして抵抗を用いれば、圧電共鳴による大きな電気的応答を減少させることができる。
そして、負性容量回路A,B,C,D,Eに接続した圧電性物質1と3つの素子d,e,fからなる混成素子30の電気的特性は、圧電性物質1本来の特性に3つの素子d,e,fのインピーダンスを組み合わせたものとして扱うことができる。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に係る発明によれば、圧電性物質に一対の電極を設け、それぞれの電極間に負性容量回路を接続し、任意の周波数又は周波数帯域で負性容量回路の損失係数を圧電性物質の誘電的な損失係数を一致させることにより、その周波数又は周波数帯域の弾性波を減衰、反射又は透過させることができ、それらの特性を電気的に変えることが可能となる。
【0097】
請求項2に係る発明によれば、圧電性物質に一対の電極を設け、それぞれの電極間に負性容量回路を接続し、負性容量回路の容量の絶対値及び損失係数の周波数特性及び温度特性を、それぞれ任意の周波数帯域、温度範囲で圧電性物質の容量及び損失係数の周波数特性及び温度特性と一致させることにより、任意の周波数帯域、温度範囲で弾性波を一様に減衰、反射又は透過させることができ、それらの特性を電気的に変えることが可能となる。
【0098】
請求項3に係る発明によれば、圧電性物質に一対の電極を設け、それぞれの電極間に負性容量回路を接続し、負性容量回路の容量の絶対値及び損失係数の周波数特性を、任意の周波数帯域で圧電性物質の容量及び損失係数の周波数特性と一致させることにより、任意の周波数帯域で弾性波を一様に減衰、反射又は透過させることができ、それらの特性を電気的に変えることが可能となる。
【0099】
請求項4に係る発明によれば、圧電性物質に一対の電極を設け、それぞれの電極間に負性容量回路を接続し、負性容量回路の容量の絶対値及び損失係数の温度特性を、任意の温度範囲で圧電性物質の容量及び損失係数の温度特性と一致させることにより、任意の温度範囲で弾性波を一様に減衰、反射又は透過させることができ、それらの特性を電気的に変えることが可能となる。
【0100】
請求項5に係る発明によれば、負性容量回路を構成する素子のうち、損失係数を決める素子については外部に接続する圧電性物質と同じ物質で形成したので、負性容量回路の容量の絶対値及び損失係数の周波数特性及び温度特性を、それぞれ圧電性物質の容量及び損失係数の周波数特性及び温度特性と一致させることが可能となる。
【0101】
請求項6に係る発明によれば、負性容量回路を構成する素子のうち、損失係数を決定する素子については、抵抗とコンデンサとコイルの全て又はこれらのいずれかを用いたネットワークとしたので、負性容量回路の容量の絶対値及び損失係数の周波数特性を、それぞれ圧電性物質の容量及び損失係数の周波数特性と一致させることが可能となる。
【0102】
請求項7に係る発明によれば、ネットワークを構成する素子の一部又は全てを圧電性物質と同じ物質で形成したので、容易に負性容量回路の容量の絶対値及び損失係数の周波数特性及び温度特性を、それぞれ圧電性物質の容量及び損失係数の周波数特性及び温度特性と一致させることが可能となる。
【0103】
請求項8に係る発明によれば、ネットワークを構成する素子のうち抵抗を可変にすることによって、圧電性物質の容量及び損失係数の周波数特性と一致させるように、負性容量回路の容量及び損失係数の周波数特性を可変とすることができる。
【0104】
請求項9に係る発明によれば、圧電性物質と3つの素子からなる混成素子の電気的特性は、圧電性物質本来の特性に3つの素子のインピーダンスを組み合わせたものとして扱うことができる。
【0105】
請求項10に係る発明によれば、圧電性物質の容量の周波数特性をより平坦にしたり、圧電共鳴による大きな電気的応答を減少させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の発明の実施の形態の構成図を示し、(a)は負性容量回路Aを用いた弾性波制御素子の構成図、(b)は負性容量回路Bを用いた弾性波制御素子の構成図、(c)は負性容量回路Cを用いた弾性波制御素子の構成図
【図2】第1の発明の実施の形態における振動特性の測定方法の説明図
【図3】第1の発明の実施の形態における測定結果(制御電圧の振幅Vcと変位に相当する電圧の振幅Vdの関係)を示す図
【図4】第1の発明の実施の形態における測定結果(C'/CS'と振動伝達率の関係)を示す図
【図5】第1の発明の実施の形態における測定結果を示し、(a)は負性容量回路Aによる振動伝達率の周波数特性、(b)は負性容量回路B,Cによる振動伝達率の周波数特性
【図6】第1の発明の実施の形態における音響特性の測定方法の説明図
【図7】第1の発明の実施の形態における測定結果を示し、(a)は負性容量回路Aによる吸音率の周波数特性、(b)は負性容量回路B,Cによる吸音率の周波数特性
【図8】本発明の第2の発明の実施の形態の構成図を示し、(a)は負性容量回路Dを用いた弾性波制御素子の構成図、(b)は負性容量回路Eを用いた弾性波制御素子の構成図
【図9】第2の発明の実施の形態における振動特性の測定結果
【図10】第2の発明の実施の形態における振動特性の測定結果
【図11】第2の発明の実施の形態における透過損失の測定方法の説明図
【図12】第2の発明の実施の形態における透過損失の測定結果
【図13】圧電性物質と3つの素子からなる混成素子の構成図
【符号の説明】
1…圧電性物質、2…オペアンプ、4…可変抵抗器、30…混成素子、a,b,c,d,e,f…素子、A,B,C,D,E…負性容量回路。
Claims (10)
- 弾性波の伝搬経路に挿入し、又は振動体に装着して、任意の周波数の弾性波を減衰、反射又は透過させる弾性波制御素子であって、圧電性物質に一対の電極を設け、この電極間に負性容量回路を接続し、負性容量回路の容量及び損失係数とこれらの周波数特性を任意に変化させ、任意の周波数における前記負性容量回路の損失係数を、前記圧電性物質の誘電的な損失係数に一致させたことを特徴とする圧電性物質を用いた弾性波制御素子。
- 弾性波の伝搬経路に挿入し、又は振動体に装着して、任意の周波数帯域の弾性波を減衰、反射又は透過させる弾性波制御素子であって、圧電性物質に一対の電極を設け、この電極間に負性容量回路を接続し、負性容量回路の容量及び損失係数とこれらの周波数特性及び温度特性を任意に変化させ、この負性容量回路の容量の絶対値と損失係数の周波数特性及び温度特性を、任意の周波数帯域、温度範囲で前記圧電性物質の容量と損失係数の周波数特性及び温度特性に一致させたことを特徴とする圧電性物質を用いた弾性波制御素子。
- 弾性波の伝搬経路に挿入し、又は振動体に装着して、任意の周波数帯域の弾性波を減衰、反射又は透過させる弾性波制御素子であって、圧電性物質に一対の電極を設け、この電極間に負性容量回路を接続し、負性容量回路の容量及び損失係数とこれらの周波数特性を任意に変化させ、この負性容量回路の容量の絶対値と損失係数の周波数特性を、任意の周波数帯域で前記圧電性物質の容量と損失係数の周波数特性に一致させたことを特徴とする圧電性物質を用いた弾性波制御素子。
- 弾性波の伝搬経路に挿入し、又は振動体に装着して、任意の周波数又は周波数帯域の弾性波を減衰、反射又は透過させる弾性波制御素子であって、圧電性物質に一対の電極を設け、この電極間に負性容量回路を接続し、負性容量回路の容量及び損失係数とこれらの温度特性を任意に変化させ、この負性容量回路の容量の絶対値と損失係数の温度特性を、任意の温度範囲で前記圧電性物質の容量と損失係数の温度特性に一致させたことを特徴とする圧電性物質を用いた弾性波制御素子。
- 前記負性容量回路を構成する素子のうち、損失係数を決定する素子については、前記圧電性物質と同じ物質で形成した請求項1、2、3又は4記載の圧電性物質を用いた弾性波制御素子。
- 前記負性容量回路を構成する素子のうち、損失係数を決定する素子については、抵抗とコンデンサとコイルの全て又はこれらのいずれかを用いたネットワークとした請求項1、2、3又は4記載の圧電性物質を用いた弾性波制御素子。
- 前記ネットワークを構成する素子の一部又は全てを前記圧電性物質と同じ物質で形成した請求項6記載の圧電性物質を用いた弾性波制御素子。
- 前記ネットワークを構成する素子のうち抵抗を可変にすることによって前記負性容量回路の容量及び損失係数の周波数特性を可変とする請求項7記載の圧電性物質を用いた弾性波制御素子。
- 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の圧電性物質を用いた弾性波制御素子において、前記圧電性物質に替えて、圧電性物質に3つの素子を接続して構成した混成素子を前記負性容量回路に接続し、前記3つの素子がそれぞれ抵抗、コンデンサ、コイルのいずれか、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせたネットワークであることを特徴とする圧電性物質を用いた弾性波制御素子。
- 前記3つの素子のうちの一つの素子を開放したり、又はその他2つの素子の一方又は両方を短絡したりする請求項9記載の圧電性物質を用いた弾性波制御素子。
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