JP3936889B2 - 集積単一磁束量子回路 - Google Patents

集積単一磁束量子回路 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は磁束量子を情報担体とする単一磁束量子回路に係わり、要素回路である論理ゲートを組み合わせた集積回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁束量子(Φ0=h/2e=2.05×10-15Weber)を情報担体とする単一磁束量子(Single Flux Quantum:以下SFQと略す)回路は、数10ギガヘルツ(109Hz)以上の超高速動作と、ゲートあたりマイクロワット(μW)以下の低消費電力特性を特徴とする超電導回路である。SFQ回路の1つであるRapid Single Flux Quantum(以下RSFQと略す)は、直流電源で駆動できるため、実装上とくに有利で高速動作に適している。アイトリプリイー、トランズアクション、アプライド、スーパーコンダクティビティ(IEEE Trans. on Appl. Supercond.)、3巻1号(1993年)2566頁に示されるように、これまで種々の論理ゲートが開発され、これらを組み合わせた実用回路の開発が広く進められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
RSFQ回路のような超高速回路の場合には、ジョセフソン伝送路を介して伝播されるデータ信号とクロック信号のタイミングが合うように要素回路を配置すると同時にデータ信号の伝播距離を、なるべく短くすることが重要である。また、1つのチップでの機能を高めるには、単位面積内に多くの回路を集積することが求められる。
【0004】
セルベースデザイン法による回路設計は、論理式を正確に回路パターンに反映させることと、タイミング調整に重点が置かれているが、単位面積当たりにいかに多くの回路を集積するかという点では不十分である。とくにシリアルーパラレル変換のような信号の並列化、T−FF(Toggled Flip-Flop)列、デマルチプレクサ(DEMUX)など、同じ論理ゲートが繰り返し現れる回路では、特開2001−345488号公報の図1、図2に示されるような、ツリー(tree)状に配置した場合には、データ信号の入力部と出力部の回路規模が大きく違い、チップ内に回路の存在しない空白領域の面が生じやすい。
【0005】
また、論理ゲートを組み合わせて、大規模な回路を設計しようとすると、合わせて考慮すべき2つの問題がある。すなわち、その1つはジョセフソン伝送路を介して伝播されるデータ信号とクロック信号のタイミング調整への配慮が必要であり、もう1つは磁場の影響である。
【0006】
超電導回路は磁場の影響を受け、誤動作し易い。これはジョセフソン接合の臨界電流値が磁場の影響を受けるからである。回路規模が小さな要素回路の動作では、電源線に流す電流は小さく、その電流により発生する磁場の影響は少ないが、要素回路を集積した実用回路では、電源線の入力部近くでは大きな電流が流れ、大きな磁場が発生し、誤動作を誘発しやすくなることへの配慮が必要となる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題に対して本発明では、データ変換と分岐機能を有する論理ゲートの繰り返しとして構成される論理構造の回路においては、第1段目の論理ゲートの出力を第2段目の入力として出力する線を、第1段目の論理ゲートの両側に配置する。第2段目の論理ゲートの出力を第3段目の入力として出力する線を、第2段目の論理ゲートの上下に配置する、と言うように回路配置することで、第1段目の論理ゲートの周辺を後段の論理ゲートで取り巻くように回路配置して同一機能を有する回路の面積を小さくする。
【0008】
ジョセフソン伝送路を介して伝播されるクロック信号とデータ信号のタイミングが設計通りにならない原因は、回路作製プロセスの変動に起因して回路パラメータがばらつき、タイミングが変動するためである。本発明では、これに対して、必要なら、ジョセフソン伝送路の数を制限し、あるいは、ジョセフソン伝送路を介して伝播されるデータ信号に対して、ラッチ回路を挿入してタイミングを調整することを提案する。また、磁場の影響が大きいときは、必要なら、電源線の配置場所と配線の引き回し方法を選択する。すなわち、直流の電源線は磁束量子回路周辺のおおむね中央部に供給後、磁束量子回路の外周に沿って左右に分岐、磁束量子回路の大きさと必要に応じて、分岐を繰り返して、バイアス電流を供給する。
【0009】
電源線ばかりではなく、外部からの入力信号線に大きな電流が流れる場合や、交流信号が入力される場合にも、磁場の影響が生じる。そのため、アナログ回路とデジタル回路が混在するアナログーデジタル変換器ではアナログーデジタル変調器を後段の磁束量子回路の外部に配置するのが良い。この場合、変調器が後段の磁束量子回路から離れた位置に配置されることになるため、ジョセフソン伝送路の段数が増加することになるが、必要なら、この場合にも、ラッチ回路を挿入してタイミングを調整するのが良い。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のポイントとなるデータ変換と分岐機能を有する論理ゲートの繰り返しとして構成される論理構造の回路の説明の前に、本発明の実施のための基本構造となるジョセフソン接合とジョセフソン伝送路の等価回路における表現とレイアウト図の表現との対応を説明しておく。
【0011】
図1(A),(B)は、ジョセフソン伝送路の2つの形態を示す等価回路図である。図1(A)では、ジョセフソン接合11、バイアス電流源12およびインダクタ13からなる単位回路が直列に接続されて構成される。図1(B)では、バイアス電流源12に代えて、バイアス電流源29に接続された接続母線34と抵抗30を介してバイアス電流が供給される点を除けば、両者は同じである。
【0012】
図2(A),(B)は、それぞれ、図1(A),(B)に対応するレイアウト図の表現を示す図であり、それぞれ同じもの、あるいは対応するものに同じ参照符号を付した。17および18で示す白抜きの線は超伝導線の上部配線であり、19、20および34で示す右下がりのハッチングを付した線は超伝導線の下部配線である。超伝導線の上部配線17と下部配線19とが交差した位置で参照符号11が付されているのが、この位置の上部配線17と下部配線19との間に形成されたジョセフソン接合である。ジョセフソン接合11間の上部配線17が持つインダクタンスがインダクタ13として機能する。下部配線19と20とを結ぶ形の上部配線18は、パターン形成の便宜上分離せざるを得なかったそれぞれの下部配線を超電導状態で接続したものである。下部配線19は参照符号15の位置で接地となる磁気遮蔽膜と接続される。図2(A)では、下部配線20にバイアス電流源12に接続された超伝導線が接続されるが、図示は省略した。図2(B)では、下部配線20に抵抗30がそれぞれ接続され、各抵抗30は接続母線34として機能する下部配線34に接続される。下部配線34にはバイアス電流源29に接続された超伝導線が接続されるが、図示は省略した。
【0013】
以下、本発明の実施例いついての等価回路およびレイアウト図を示すときは、この図1、図2に示す形式で表現するとともに、図が煩雑となるのを避けるために、参照符号は一部に限って付した。また、後述の具体例の等価回路とレイアウト図は、図の表現上の便宜から、部分的に不一致のものもあるが、原則的には、図1、図2に示す対応で表現されている。
【0014】
以下本発明を以下に述べる実施例にもとづいて説明する。
【0015】
(実施例1)
図3(A)は、データ変換と分岐機能を有する論理ゲートのブロック図、(B)は、第1段目の論理ゲートの周辺を後段の論理ゲートで取り巻くように回路配置して同一機能を有する回路の面積を小さくする基本的な構造の概念図を示す。
【0016】
図3(A)に示すように、論理ゲート40は、1入力、2出力であるデマルチプレクサ(1:2DEMUX)の例であり、T―フリップフロップ41と1:2スイッチ42から構成される。クロック信号43はT―フリップフロップ41で左右に分配され、1:2スイッチ42に入力される。1:2スイッチ42に入力されたデータ信号44は、T―フリップフロップ41で分配されたクロック信号43に従って左右に分配されてデータ信号441,442として出力される。また、分配されたクロック信号43も左右にクロック信号431,432として出力される。すなわち、この1:2DEMUXの特徴は、クロック信号43とデータ信号44を入出力とし、入力の方向に対して、出力の方向が直角方向になっていることである。
【0017】
図3(B)は、この論理ゲート40を機能的にはツリー状に4段並べる構成によって16出力の1:16DEMUXを構成する際の回路配置の実施例を示す。図3(B)では、図を簡略化するために、図3(A)における入力クロック信号43と入力データ信号44を入力78で示し、論理ゲート40の出力クロック信号43と出力データ信号44を出力77で示した。出力77を入力とする論理ゲート401および402は、また、出力クロック信号43と出力データ信号44である出力79を出力する。出力79を入力とする論理ゲート403、404および409、4010は、また、出力クロック信号43と出力データ信号44を出力する。このように分岐を繰り返して必要な数の論理処理を行った後、各分岐先の最終段の論理ゲート405、406、407、408、4011、4012、4013および4012の出力には電圧出力回路、例えば、SQUID回路80を接続する。このように、前段の出力を入力として受ける各論理ゲート40の出力を、入力の方向に対して90°の方向に出力する構造とすることにより、各論理ゲート40を基板表面に効果的に配列することができる。
【0018】
なお、上述の例では、SFQ回路の最終段の出力回路としてSQUID回路80を接続したが、これはSFQを観測するための回路として機能する任意のものが、必要に応じて、使用される。例えば、増幅機能を有しないSFQ/DCコンバータが使用されるケースもあり、ジョセフソン伝送路の平均電圧を観測することだけで良ければ、終端抵抗のみで充分である。
【0019】
図4および図5は、それぞれ、図3(A)に示す論理ゲート40の一例のレイアウトおよびこのレイアウトの等回路を示す図である。なお、回路設計はNb超電導回路標準プロセスのデザインルール、回路パラメータの中心値に基づいて行った。この回路は、本願の出願人の出願にかかわる特願2001−181556号の図10に開示される中間パルス出力形の1入力、2出力であるデマルチプレクサ(1:2DEMUX)の例である。T―フリップフロップ41に入力されるクロックパルス43はジョセフソン伝送路を介して導入され、端子905および907に振り分けて出力されると、5段のジョセフソン伝送路を介して、それぞれ、1:2スイッチ42に送られ、端子308および416から導入される。一方、データ信号44は複数段のジョセフソン伝送路を介して1:2スイッチ42に入力される。入力されたデータ信号44は端子308および416から導入されたクロック信号43に従って、端子309および417から左右に分配されて、次段の1入力、2出力であるデマルチプレクサ(1:2DEMUX)のデータ信号441,442として出力される。また、T―フリップフロップ41の端子905および907に振り分けて出力されたクロック信号43も左右にクロック信号431,432として出力され、複数段のジョセフソン伝送路を介して次段の1入力、2出力であるデマルチプレクサ(1:2DEMUX)のクロック信号43として出力される。すなわち、この1:2DEMUXの特徴は、クロック信号43とデータ信号44を入出力とし、入力の方向に対して、出力の方向が直角方向になっていることである。
【0020】
図4と図5とを対照して容易に分かるように、本発明では、論理ゲート40の入力線を1つの方向から入力し、入力線に対して出力線が90°の方向となるようにレイアウトを行うのである。その結果、図3(B)に示すような効果的な配置のレイアウトが実現できる。このことをもう少し具体的に説明すると次のようである。
【0021】
図6は要素回路間の配置の関係を示す図であり、(A)は論理ゲート40の1:2DEMUXの大きさをdとし、各要素回路間の距離を0.5dとしたことを示す。(B)は、本発明の実施例にしたがって要素回路が配置されたことを示す図、(C)は要素回路がツリー型に4段配置された状態を示す図である。いずれの場合も、論理ゲートを左下がりのハッチングを付した参照符号40のブロックで示し、出力段の出力回路を白抜きの参照符号80のブロックで示す。回路全体の大きさは、本発明の実施例である(B)では、10d×8.5dのスペース内に配列することができ、ツリー型の5段配置の(C)では23.5d×7dのスペースが必要になる。すなわち、入力方向に対して左右直角方向に出力を配置する論理ゲートの組合せとすれば、要素回路を狭いスペースに効率よく配置することができる。さらに、要素回路を短い距離で繋げるから、信号の伝達時間の短縮の効果も得られる。本実施例では1入力2出力のデマルチプレクサ(1:2DEMUX)を要素回路としたが、他の論理回路に対しても、この配置方法は適用できる。
【0022】
ここで、出力回路80をSQUID回路とするときは、例えば、特開2001−345488号公報の図1にブロック図で示され、図2に等価回路図で示されるように、信号の論理処理をするSFQ回路に比し、信号増幅のためのSQUID回路の占める面積の割合が極めて大きくなるが、トータルとして効率よく回路配置をすることができるという点では問題ない。
【0023】
(実施例2)
RSFQ回路では、磁束量子信号は数ピコ秒の時間幅をもつ電圧パルスとしてジョセフソン伝送路を伝播する。図4、図5に示したように、クロック信号およびデータ信号としての磁束量子信号は多段のジョセフソン伝送路を介して論理ゲート間を伝送される。RSFQ論理回路では、図7に示したように、クロック信号用伝送路21とデータ信号用伝送路22の2本のジョセフソン伝送路上を伝播する一定間隔(クロック周期23)で伝播するクロック信号24と、データ信号用伝送路22上を伝播するデータ信号25との間で、クロック信号パルスの間にデータ信号パルスが有る場合を、例えば、“1”、無い場合を“0”という形で真理値を定義する。このため、論理ゲートが正常に動作するためには、クロック信号パルス列とデータ信号パルスとの間が適切なタイミングを保った状態で伝送される必要がある。
【0024】
RSFQ回路の設計においては、このため、数値シミュレーションを駆使し、ジョセフソン接合の臨界電流密度、配線幅、配線の単位面積当たりのインダクタンスなどの特性値をもとに、動作マージンが最大になる回路パラメータ、すなわち回路パターンを決定する。接合数が数個から10数個で構成される論理ゲート規模の回路設計では、回路規模が小さいために回路パターンは比較的自由に設定できる。
【0025】
一方、数100から1000接合を超える大規模なRSFQ回路の設計を目的として、セルベースデザイン法が開発されている。(例えばアイトリプリイー、トランズアクション、アプライド、スーパーコンダクティビティ(IEEE Trans. on Appl. Supercond.)、11巻1号(2001年)263頁、および同322頁)。これは論理ゲートおよび配線の単位を1つのセルとし、セルごとの遅延時間を数値シミュレーションで予め決定しておき、セルの数と種類を調整することで、セルを組み合わせた回路におけるデータ信号とクロック信号の到達のタイミングを一致させるものである。この手法はCADによる大規模な回路設計の自動化に適している。
【0026】
しかしながら、実用規模の回路を設計する際には、例えば、図8に示したように2本のジョセフソン伝送路31A,31Bで論理ゲート32,33間を接続することになる。ここでは、図1(B)で示したように、ジョセフソン伝送路のバイアス電流源は共通の電源29から電源抵抗30を介して供給される。これは、なるべく電源数を少なくする場合の例である。また、ジョセフソン伝送路31A,31Bの段数は、データ信号とクロック信号が前段の論理ゲート33を出てから、後段の論理ゲート32にタイミングよく到達するように決める。後段の論理ゲート32に信号が到達するまでの時間は、前段の論理ゲート33内での遅れ、論理ゲート間の距離に依存する。数値シミュレーションおよびセルベースデザイン法では、これらの遅れを計算し、ジョセフソン伝送路の段数を決定するが、回路規模が大きくなるに伴い、データ信号が伝送されるジョセフソン伝送路31Aとクロック信号が伝送されるジョセフソン伝送路31Bとのタイミングが、設計通りにはならなくなる問題があった。ジョセフソン伝送路における電圧パルスの伝播速度が回路パラメータ(ジョセフソン接合の臨界電流値と常伝導状態での抵抗値、配線のインダクタンス、回路に供給するバイアス電流値など)に依存するからである。
【0027】
実施例1では、このタイミングは要素回路である1:2DEMUX40間を接続するジョセフソン伝送路の段数で決定した。ジョセフソン伝送路の1段当たりの伝播遅延時間は回路パラメータで決まる。そのため、設計段階では適切なタイミングが設計できても、作製プロセスに起因して回路パラメータがばらつくと、回路が正常に動作しない場合が生じた。クロック信号パルス間隔を大きくして、タイミングに余裕をもたせれば、回路パラメータのばらつきの影響を低減できる。しかし、今度はクロック周期を短く、つまり高速動作させることができない。
【0028】
そこで、まず、モンテカルロ法に基づき、予めタイミング変動の範囲を把握した。モンテカルロ試行により、回路パラメータとしてジョセフソン接合の臨界電流値(Ic)を選び、それらのばらつきを発生させ、回路シミュレーションを行った。試行毎に変動するクロックやデータ信号のタイミングを集計し、分布を求めた。その結果、設計値を中心にある程度の広がりを持った、データ信号のタイミングに関するヒストグラムが得られた。
【0029】
図9はクロック信号を基準としてデータ信号の相対的な到達時間の変動をヒストグラムで示したものである。50段のジョセフソン伝送路をデータ信号パルスが通過した時の到達時間とその頻度を、回路パラメータの1つであるジョセフソン接合の臨界電流値(Ic)のばらつき(標準偏差(σ))をパラメータとして示したものである。最も早く到達した場合と、遅れて到達した場合の時間差は、パーセントで表示した標準偏差σ[%]のおよそ1.4倍(時間単位;ピコ(10-12)秒)となる。
【0030】
ヒストグラムで表されるデータ信号の到達時間の分布と、クロック信号の到達時間の関係を詳しく調べると、論理ゲートが正常に動作するためには、クロック信号が入力される前後に、ある時間だけデータ信号の入力を禁止する必要があることが分かった。それぞれ、セットアップ時間とホールド時間と呼ばれるこの時間は、一般的な論理ゲートの場合、3ピコ秒の長さであることが分かった。
【0031】
また、クロック信号およびデータ信号の電圧パルスにも有限な時間幅Δが存在する。電圧パルスの時間幅は使われる超電導材料のジョセフソン接合特性、臨界電流値Icと常伝導時の抵抗値Rnおよび磁束量子Φ0により、Φ0/(Ic×Rn)で表される。例えば、Ic×Rn積が0.38mVであるNb系超電導回路の場合、電圧パルスの幅は5.5ピコ秒である。さらに、ジョセフソン伝送路1段当たりおよそ2ピコ秒の遅延が生じるので、ジョセフソン伝送路の段数を増減して調整できる遅延時間は2ピコ秒が単位となる。
【0032】
図10に、明らかになったクロック信号とデータ信号のタイミングに影響を及ぼす各要素と、クロック信号を基準とするデータ信号の相対的なタイミングの変動を示すヒストグラム61、およびクロック周期23の関係を示す。
【0033】
クロック信号の間隔、すなわちクロック周期23から判明した各時間、ホールドタイム62、セットアップタイム63、パルス幅64、ジョセフソン伝送路1段あたりの遅延時間65を差し引いた残りが、データ信号を挿入できる正常動作のためのタイミング範囲、つまり許容範囲66となる。この許容範囲66に、データ信号の到達時間の変動範囲を収めることで、回路パラメータがばらついても回路の正常動作が保証される。そこで、図9のタイミングの変動を示すヒストグラム61の範囲が正常動作するタイミングの許容範囲66に納まりかつ、クロック周期を最小にできるように設計値を変更してジョセフソン伝送路の段数を決定すれば良い。
【0034】
実際に、1:4DEMUXを作製して、ジョセフソン接合の臨界電流値の標準偏差σが3%、クロック信号のジョセフソン伝送路の段数が17段、データ信号のジョセフソン伝送路の段数が12段の設定で、上記方法で最適化設計を行った結果、回路パラメータの変動の影響を回避しつつ、最大周波数56ギガヘルツでの動作実証を確認することができた。
【0035】
上述の1:4DEMUXを作製する際に、回路パラメータのばらつきが大きくなった時にも、確実に動作させる必要が生じた。これについて検討した結果、ジョセフソン接合の臨界電流値のばらつき(標準偏差σ)が5%で、1:2DEMUXの配置からクロック信号用ジョセフソン伝送路の段数が20段の場合、最大動作速度は40ギガヘルツとなった。
【0036】
このように、設計上の動作周波数が40−50ギガヘルツ程度で、クロック信号のジョセフソン伝送路が短くできる場合は、タイミングの変動幅に対して許容範囲が大きくなるため、クロックとデータの伝送路の長さ、つまり接合の数を調節して、変動範囲を許容範囲内に収めることで、回路パラメータのばらつきを考慮したタイミング設計を実現できた。
【0037】
(実施例3)
一方、動作周波数を高くしたい場合や、回路の配置上、ジョセフソン伝送路が非常に長くなる場合は許容範囲と変動範囲が同程度になるため、回路設計の自由度が制限される。このような場合には、回路パラメータのばらつきを考慮したタイミング設計だけでは対応できない。本実施例では、データ信号の伝送路にデータ信号をラッチするラッチ回路を設けることにより、この問題に対処する例を説明する。
【0038】
50段のジョセフソン伝送路の時、動作周波数f、回路パラメータのばらつきを示す標準偏差σ[%]およびジョセフソン伝送路を伝播する磁束量子信号の時間幅Δ(ピコ秒)の間には、検討の結果(3)式の関係があることが明らかとなった。単位はピコ秒である。
【0039】
【数3】
Figure 0003936889
これを、一般的にNMAX段で構成するジョセフソン伝送路とした場合には(4)式の関係で表現できることが分かった。単位はピコ秒である。
【0040】
【数4】
Figure 0003936889
よって、動作周波数fと標準偏差σから、回路間を接続可能な伝送路の最大段数NMAXを求めることができる。NMAXは、動作周波数fに対応するクロック周期がt(10-12秒(ピコ秒))、ジョセフソン伝送路を伝播する磁束量子信号の時間幅Δ(ピコ秒)とし、且つ、磁束量子信号の時間幅Δが、ジョセフソン接合の臨界電流値Ic、常伝導時の抵抗値Rn、ならびに磁束量子Φ0としたとき、Φ0/(Ic・Rn)で表され、IcおよびRnのばらつきの標準偏差がσ(%)とした時に、NMAXは(5)式の関係で表現できることが分かった。
【0041】
【数5】
Figure 0003936889
例えば、パラメータのばらつきが標準偏差で5%、Δ=5.5ピコ秒の時、回路を50ギガヘルツで動作させるには、ジョセフソン伝送路の段数を、42以下にしなければならないことになる。しかし、回路の構成上、論理ゲートの間隔がジョセフソン伝送路の長さにして42段以上必要な配置としたい場合がありうる。
【0042】
図11は、そのための実施例を示すブロック図である。図11と図8とを対照してみると容易に分かるように、図11では、前後段の論理ゲート32、33間にデータ信号用ジョセフソン伝送路31Aの中間部に、クロック信号伝送路31Bからのクロック信号によりデータ信号がラッチされるラッチ回路35を挿入した。すなわち、段数がNMAX以下となる範囲では、データ信号もクロック信号も所定の時間関係を保持した状態で伝送されるので、ラッチ回路35には、正しくデータ信号がラッチされる。ラッチ回路35にラッチされたデータ信号を基礎にデータ信号用ジョセフソン伝送路31Aの後半部を介して伝送されるデータ信号と、クロック信号伝送路31Bを伝送されるクロック信号とで、後段の論理ゲート32は処理をすることになり、ラッチ回路35の入力部以前のタイミング変動を回避することができる。
【0043】
図12(A),(B)はラッチ回路35の回路レイアウトおよびこれに対応した等価回路を示す。ここでも、クロック信号およびデータ信号は図3で示したように、参照符号43および44で示した。図12(A)で参照符号37を付与した、下部配線37は、大きなインダクタを実現するために、配線パターンを折り曲げたものである。図12(B)でも同じ参照符号37を付与した。
【0044】
(実施例4)
磁束量子回路の量子化現象を利用し、アナログ信号をデジタル信号に変換する変調器を作製した。図13は変調器71とこれに続く1:2DEMUX74の回路のブロック構成を示す。変調器71にはサンプリングの対象となるアナログ入力信号51が入力されるとともに、クロック信号でもあるサンプリング信号52がリング発振器73からジョセフソン伝送路31B1を介して入力される。リング発振器の例は、例えば、先に引用した特開2001−345488の図5に具体例が提案されている。クロック信号52は、また、ジョセフソン伝送路31B2を介して1:2DEMUX74に伝送される。そして、変調器71からはアナログ入力信号51に対応したデジタル信号が磁束量子信号53で出力され、ジョセフソン伝送路31Aを介して後段の1:2DEMUX74に入力される。
【0045】
図14および図15に、変調器71の回路パターンおよびこれに対応する等価回路を示す。アナログ入力51は抵抗50とインダクタ56からなる積分器55を経由してコンパレータ54に入力される。一方、サンプリング信号52はジョセフソン伝送路31B1を介して、コンパレータ54に入力される。量子化されたデジタル信号53はジョセフソン伝送路31Aを介して1:2DEMUX74に出力される。
【0046】
アナログ信号を処理する論理ゲートであるアナログーデジタル変調器71では、インダクタ、抵抗のばらつきに起因するタイミングの変動が他の論理ゲート、ジョセフソン伝送路での変動と比較して大きくなった。RSFQ回路においては、各部のバイアス電源を共有化する方向にあり、1つの電源で動作させることが理想である。しかし、回路の一部でのタイミング変動幅が、回路の他の大部分と比較して大きい場合には、この部分に接続するジョセフソン伝送路31Aのバイアス電流源29を、他のジョセフソン伝送路31Bのバイアス電流源29とは独立に制御できるようにした。
【0047】
これにより、他のタイミング設計に影響を与えることがなくなり、回路全体の動作周波数を高く保ってタイミングを制御することができた。
【0048】
タイミング制御はRSFQ回路内だけではなく、RSFQ回路が載っているチップから外に信号を出力する場合にも必要となる。この場合は、実施例1から4に示した論理ゲート間の接続の課題とその解決方法を、チップ間の接続の課題とその解決方法に置き換えればよい。すなわち、2種類以上の信号間のタイミングを一致させるように、少なくとも1つの信号線路にタイミング調整用伝送路を設けた。
【0049】
(実施例5)
図16は本実施例のアナログーデジタル変換器のフロントエンド回路の各要素回路の配置を示す図である。この回路は、図13で説明したリング発振器73、アナログーデジタル変調器71、1入力、2出力の1:2DEMUX74を図3(B)に示す論理ゲート40として15個の論理ゲート40で構成した1入力、16出力の1:16DEMUXおよびこれに接続された出力SQUID回路80からなる構成に発展させた回路である。なお、図3(B)では、第1段の要素回路40(1:2DEMUX74)の入力線は1本で代表させていたが、ここでは、信号入力とクロック入力とを別に表示した。また、本実施例におけるSQUID回路80は特開2001−345488号に開示されているような回路が採用される。
【0050】
本実施例は、等価回路と配置のレイアウト図の詳細を省略したが、回路全体のジョセフソン接合数は2000以上になり、回路に供給するバイアス電流は、300mAにも達した。そのため、直流電流で発生する静磁場によりジョセフソン接合の臨界電流値が下がり、回路の誤動作が生じるケースがあった。そこで、直流の電源線81を図16に示すように、アナログーデジタル変換器のフロントエンド回路の論理回路部200周辺のおおむね中央部、すなわち、第1段の要素回路1:2DEMUX74の信号入力線に対応する位置で反対側、に供給後、フロントエンド回路の論理回路部200の外周に沿って左右対称に81Rおよび81Lに分岐し、この分岐線から、磁束量子回路の大きさと必要に応じて、82R,82L、83R,83L、84R,84Lと分岐を繰り返して電源線を配置して、各ジョセフソン接合に対してバイアス電流を供給した。分岐を繰り返すことで磁束量子回路200の最近傍の電源線84Rおよび84Lに流れる電流を低減することができる。例えば、これを、バイアス電流を回路の左端から供給し、フロントエンド回路の論理回路部200を横断するように配線して右側の回路にバイアス電流を供給した場合と比較すると、磁束量子回路200の最近傍の電源線84Rおよび84Lに流れる電流は電源線81に流れるトータルのバイアス電流の1/2に下げることができた。
【0051】
また、これは単に大きさの問題だけではなく、電源線81の大きな電流が左右対称に81Rおよび81Lに分岐して流れることにより、相互の磁気作用が打消す方向となるので、磁気の影響を低減できる。さらに、各分岐線も磁束量子回路200の外周に沿って左右対称に配置したことにより、相互の磁気作用が打消す方向となるので、磁気の影響を低減できる。これにより、磁束量子回路の磁場の影響に起因した誤動作を防ぐことができた。
【0052】
図17は電源線の分岐構造の一部を、図16の左側に着目した形で模式的に示した。長いジョセフソン伝送路31にバイアス電流を供給する際、電源線82L−84Lの構造は分岐を繰り返した構造とし、さらに参照符号を省略したが、電源線84Lも分岐構造により形成されている。なお、Nb膜からなるグランドは電源線の下部全面に配置されているが、図には示さなかった。
【0053】
本実施例における変調器71の入力は外部アナログ信号51であって、磁束量子回路の信号レベルに比較して電流の振幅が大きく、回路の誤動作に影響を及ぼす可能性がある。すなわち、電源線81による磁場の他にも、外部からの入力線に大きな電流が流れる場合や、交流信号が入力される場合にも、磁場の影響が生じることが分かった。そのため、本実施例のように、アナログ回路とデジタル回路が混在する本回路では、変調器71を構成する回路部分と、この出力を論理処理する論理回路部200を構成する回路部分とを分離する構成とした。
【0054】
そのため、変調器71による、磁束量子回路である1:16DEMUXとSQUID回路80よりなるフロントエンド回路の論理回路部200への磁場の影響は低減できた。一方、図16から容易に分かるように、変調器71と1:16DEMUXの初段の1:2DEMUX74間の信号53の伝送距離が長くなり、ジョセフソン伝送路の段数が多くなった。そこで、このジョセフソン伝送路の設計には、実施例4で示したように、バイアス電流を独立して制御する方法を適用することで、タイミングの一致を図った。
【0055】
(実施例6)
図18は単一磁束量子回路をベースに構成したアナログ/デジタル変換器(A/D変換器)の構成を示すブロック図である。
【0056】
本実施例のA/D変換器は、図16で説明した、超電導フロントエンド回路86と、超電導フロントエンド回路86からのデジタルデータを受け、信号処理を行う半導体回路87で構成される。超電導フロントエンド回路86は、変調器71、1:16DEMUXを構成する論理回路401、分配された信号を増幅するSQUID回路80および変調器71と論理回路401を駆動する40ギガヘルツリング発振器73で構成される。図18の太線の矢印はデータ信号の流れを、細線の矢印はクロック信号の流れを示す。
【0057】
変調器71は、シグマデルタ型のアナログーデジタル変調器で、リング発振器73からの40ギガヘルツのクロックと同じサンプリング信号に従い、アナログ信号をデジタル化し、クロック信号に同期して、デジタル化されたデータを出力する。変調器71からの出力データは1:16DEMUXを構成する論理回路401を用い、[1]から[16]までの16個の出力チャネルに分配することにより、変調器71の出力データの周波数を1チャネル当り2.5ギガヘルツまで下げた。半導体回路87へ変調器71の出力データを渡す際、この16チャネルのデータの同期を取るためには、変調器71の入力クロックの16分周されたクロック信号が必要である。そこで、クロック信号は1:16DEMUX82の16個あるクロック出力のうちの一つから得た。このクロック信号出力チャネル[0]から出力される。
【0058】
1:16DEMUX401により分配された磁束量子信号は200μVと半導体回路へ直接入力するには低いため、SQUID(超電導磁束干渉素子)に基づくSQUID回路80で10倍に増幅し、約2mVに昇圧した。
【0059】
超電導フロントエンド回路86から半導体回路87へのデータの伝送は17本の50Ωセミリジッドケーブルにて行った。半導体アンプ90にて1つの入力クロックと16の入力データは、各々、100倍に電圧増幅した。入力データは反転信号・デジタル信号変換回路91でデジタル信号に変換した後、さらに各々1:2DEMUX92で2つに分配し、周波数を1.15ギガヘルツに落してから、デシメーションフィルタとデジタルローパスフィルタを含む信号処理回路93へ入力した。半導体回路87への入力クロックは信号処理回路93のほかに、16個の1:2DEMUX92、反転信号デジタル信号変換回路91へ加えられる。信号処理回路93に入力された信号はデシメーションフィルタ、デジタルローパスフィルタを経て、高精度ビットの変換データを出力する。
【0060】
図19は、本実施例による信号処理の考え方を説明する図である。SQUID回路80のクロック信号およびデータ信号の入力は、パルス状の磁束量子信号である。図19(A)に示すように、出力は磁束量子信号の到来毎に、ゼロ電圧と約2mVの間を遷移・反転する。これをそれぞれ、クロック反転信号、データ反転信号と名づける。超電導回路から半導体回路への信号の伝達には反転信号を用いた。
【0061】
半導体回路87では、まずクロック反転信号とデータ反転信号を、デジタルなクロック信号とデータ信号に変換する必要がある。クロック信号の周期は元々2.5ギガヘルツであるが、図19(B)に示すようにクロック反転信号は、周期が倍である1.25ギガヘルツのデジタル信号に相当する。この1.25ギガヘルツのデジタル信号から2.5ギガヘルツのデジタルクロック信号を復元するのは高速PLL等を必要とするため実現が困難である。そこで、反転信号を直接、信号処理回路93に入力することで、クロック反転信号を1.25ギガヘルツのデジタルなクロック信号と解釈して信号処理回路93を駆動する。つまり、信号処理回路93はクロック信号の半分の周波数で動作することになる。
【0062】
クロック信号に対応して、信号処理回路93に入力されるデータ信号も、1.25ギガヘルツの周波数でなければならない。そのため、入力データは反転信号・デジタル信号変換回路91でデジタル信号に変換した後、さらに各々1:2DEMUX92で2つに分配し、周波数を1.25ギガヘルツに落してから、信号処理回路93へ入力した。
【0063】
図19(B)は、超電導回路86から2.5ギガヘルツでデータ列(真理値“1011”)を示す反転信号が出力された場合を示す。反転データ信号は変換回路91でデジタルなデータ信号に変換、1:2DEMUX92で2チャネルに分配されて、NAからはデータ列の奇数部分(真理値“11”)を出力し、NBからは偶数部分(真理値“01”)を出力する。NA、NBともに出力周波数は1.25ギガヘルツである。
【0064】
(実施例7)
図20は実施例6で説明した超電導アナログーデジタル変換器を作製して無線基地局のフロントエンドに実装した装置の概略を示す図である。既に開発されている高温超電導フィルタおよび低ノイズアンプと組み合わせた。6Kと77Kの2段階の温度ステージを有する冷凍機94を用いた。77Kの温度ステージ95には、高温超電導体で作製したフィルタ97と半導体の低ノイズアンプ98を装着した。一方、6Kのステージ96には、本発明で作製した超電導アナログーデジタル変換器99を装着した。アンテナからの信号は入出力端子100を通じて真空に保たれた容器内に装着されたフィルタ97に入力され、必要な帯域を選択、低ノイズアンプ98で増幅した後、超電導アナログーデジタル変換器99でダイレクト変換を行った。RSFQ回路の超高速動作特性がアナログーデジタル変換に活用できることで、超高速サンプリングが可能となった。その結果、無線通信において、搬送波の直接変換ができ、アナログ素子の点数を減らすことができた。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、磁束量子を情報担体とする超電導回路を小さな面積内に納めることができ、回路規模が大きくなった場合でも、入力信号がアナログ信号である場合も含めてクロック信号とデータ信号の間のタイミングが安定してとれるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A),(B)は、ジョセフソン伝送路の2つの形態を示す等価回路図。
【図2】図2(A),(B)は、それぞれ、図1(A),(B)に対応するレイアウト図の表現を示す図。
【図3】図3(A)は、データ変換と分岐機能を有する論理ゲートのブロック図、(B)は、第1段目の論理ゲートの周辺を後段の論理ゲートで取り巻くように回路配置して同一機能を有する回路の面積を小さくする基本的な構造の概念図。
【図4】図3(A)に示す論理ゲート40の一例のレイアウト示す図。
【図5】図3(A)に示す論理ゲート40の一例のレイアウトの等回路を示す図。
【図6】(A),(B)および(C)は論理ゲート40の要素回路間の配置の関係を示す図。
【図7】RSFQ論理回路のクロック信号とデータ信号との間の真理値の定義を説明する図。
【図8】ジョセフソン伝送路による論理ゲート間の接続方法を示す図。
【図9】図9は50段のジョセフソン伝送路をデータ信号パルスが通過した時の到達時間とその頻度を、回路パラメータの1つであるジョセフソン接合の臨界電流値(Ic)のばらつき(標準偏差(σ))をパラメータとして示した図。
【図10】クロック信号とデータ信号のタイミングに影響を及ぼす各要素と、クロック信号を基準とするデータ信号の相対的なタイミングの変動を示すヒストグラムおよびクロック周期の関係を示す図。
【図11】論理ゲートの間隔がジョセフソン伝送路の長さにして42段以上必要な配置としたい場合の実施例を示すブロック図。
【図12】(A),(B)は図11のラッチ回路の回路レイアウトおよびこれに対応した等価回路を示す図。
【図13】変調器71とこれに続く1:2DEMUX74の回路のブロック構成よりなるアナログ信号をデジタル信号に変換する変調器の構成を示すブロック図。
【図14】図13に示す変調器71の回路パターンを示す図。
【図15】図14に示す変調器71の回路パターンに対応する等価回路を示す図。
【図16】実施例5のアナログーデジタル変換器のフロントエンド回路の各要素回路の配置を示す図
【図17】図16の左側に着目した形で電源線の分岐構造の一部を模式的に示す図。
【図18】単一磁束量子回路をベースに構成したアナログ/デジタル変換器(A/D変換器)の構成を示すブロック図。
【図19】図18の実施例6による信号処理の考え方を説明する図。
【図20】実施例6で説明した超電導アナログーデジタル変換器を作製して無線基地局のフロントエンドに実装した装置の概略を示す図。
【符号の説明】
11:ジョセフソン接合、12:バイアス電流源、13:インダクタ、14,15:接地、17,18:上部電極、19、20:下部電極、21:クロック信号用伝送路、22:データ信号用伝送路。23:クロック周期、24、43:クロック信号、25,44:データ信号、29:バイアス電流源、30:電源抵抗、31、36、31A、31B:ジョセフソン伝送路、32:後段の論理ゲート、33:前段の論理ゲート、34:接続母線、35:ラッチ回路、40、74、79:論理ゲート(1:2DEMUX)、41:Tフリップフロップ、42:1:2スイッチ、50:抵抗、51:アナログ入力、52:サンプリング信号、53:磁束量子信号、54:コンパレータ、55:積分器、56:インダクタ、61:タイミングの変動を示すヒストグラム、62:ホールドタイム、63:セットアップタイム、64:パルス幅、65:ジョセフソン伝送路1段あたりの遅延時間、66:許容範囲、71:変調器、72:アナログ入力信号、73:リング発振器、80:SQUID回路、81,82,83,84:電源線、86:超電導フロントエンド回路、87:半導体回路、90:半導体アンプ、91:反転信号・デジタル信号変換回路、92:1:2DEMUX、93:信号処理回路、94:冷凍機、95:77Kの温度ステージ、96:6Kのステージ、97:フィルタ、98:低ノイズアンプ、99:超電導アナログーデジタル変換器、100:入出力端子,200:論理回路、401:論理回路(1:16DEMUX)。

Claims (10)

  1. 磁束量子を情報担体として入力される信号に対して所定の論理処理をした結果を磁束量子として出力する第1段論理ゲートと、該第1論理ゲートから出力された磁束量子を情報担体とする信号を入力する第2段論理ゲートと、
    第1のジョセフソン接合の一端を接地し、該ジョセフソン接合の他端と第1のバイアス電流源を第1の接続点で接続しかつ、第1の接続点に第1のインダクタを接続した上で、第2のジョセフソン接合の一端を接地し、該ジョセフソン接合の他端と前記バイアス電流源を第2の接続点で接続し、前記インダクタの他端を第2の接続点に接続することにより構成されるジョセフソン伝送路とを有し、
    前記第1段論理ゲートと前記第2段論理ゲート間を伝播する磁束量子を情報担体としてデータ信号および/またはクロック信号を伝送させる信号伝送路としての前記ジョセフソン伝送路の段数の最大値N MAX は、動作周波数がf[テラヘルツ]であり、前記ジョセフソン伝送路を伝播する磁束量子信号の時間幅Δ(ピコ秒)が、ジョセフソン接合の臨界電流値Ic、常伝導時の抵抗値Rn、ならびに磁束量子Φ を用いてΦ /(Ic×Rn)と表され、前記臨界電流値Icおよび前記常伝導時の抵抗値Rnのばらつきの標準偏差がσ(%)である時に、(1)式で示される値である集積単一磁束量子回路。
    Figure 0003936889
  2. 前記第1段論理ゲートと、該第1段論理ゲートの2つの出力は該第 1 段論理ゲートの入力方向に対して直角方向に分岐して出力されるとともに、前記第2段論理ゲートと該第2段論理ゲートの出力回路よりなることを特徴とする請求項1記載の集積単一磁束量子回路。
  3. 前記第1段論理ゲートと第2段論理ゲートの関係と同じ構造の配列関係を持って第3段以降の論理ゲートが複数段形成され、最終段の論理ゲートの出力のみが出力される請求項記載の集積単一磁束量子回路。
  4. 磁束量子を情報担体として前記第1段論理ゲートと第2段論理ゲートをデータ信号およびクロック信号のそれぞれで多段接続されたジョセフソン伝送路によって接続する場合に、データ信号を伝送するジョセフソン伝送路の一部に、前記クロック信号で制御されるラッチ回路を挿入し、前記第1段論理ゲートと該ラッチ回路間のデータ伝送のためのジョセフソン伝送路の段数が前記最大値N MAX よりも小さくされ、かつ前記ラッチ回路と前記第2段論理ゲート間のデータ伝送のためのジョセフソン伝送路の段数が前記最大値N MAX よりも小さくされた請求項記載の単一磁束量子回路。
  5. 前記第1段論理ゲートと、該第1段論理ゲートの2つの出力は該第1段論理ゲートの入力方向に対して直角方向に分岐して出力されるとともに、前記第2段論理ゲートと該第2段論理ゲートの出力回路よりなることを特徴とする請求項記載の集積単一磁束量子回路。
  6. 前記第1段論理ゲートと第2段論理ゲートの関係と同じ構造の配列関係を持って第3段以降の論理ゲートが複数段形成され、最終段の論理ゲートの出力のみが出力される請求項5記載の集積単一磁束量子回路。
  7. 入力信号がアナログ信号であり、これを磁束量子信号であるクロック信号をサンプリング信号として磁束量子信号に変換してアナログ信号に対応する信号を出力するアナログ− デジタル変換回路と、該変換回路の出力信号と前記クロック信号とを入力とする第1段論理ゲート、該第1段論理ゲートの2つの出力は該ゲートの入力方向に対して直角方向に分岐して出力されるとともに、この分岐して出力された磁束量子を情報担体とするデータ信号およびクロック信号を入力する第2段論理ゲート、該第2段論理ゲートの出力回路よりなる論理ゲートグループとからなり、前記アナログ−デジタル変換回路は前記論理ゲートグループとは異なる領域に形成されたことを特徴とする集積単一磁束量子回路。
  8. 前記アナログ−デジタル変換回路の出力信号を、前記論理ゲートグループに導入するためのジョセフソン伝送路のバイアス電流源と前記クロック信号を伝送するジョセフソン伝送路のバイアス電流源とは独立に制御できる請求項記載の集積単一磁束量子回路。
  9. 前記論理ゲートグループに供給される直流電源が、該論理ゲートグループの構造上の左右対称位置に配置された2つに分岐された電源線から供給される請求項7記載の集積単一磁束量子回路。
  10. 前記論理ゲートグループに供給される直流電源が、該論理ゲートグループの構造上の左右対称位置に配置された2つに分岐された電源線から供給される請求項8記載の集積単一磁束量子回路。
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