JP3934433B2 - 筆記具用水性インキ組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、筆記具分野、印刷関連分野、塗料関連分野、化粧品関連分野などで好適に使用することができるセルロース誘導体水溶液、及び筆記具用水性インキ組成物に関するものである。また、さらに筆記具として、長い筆記距離を得ることができる筆記具用水性インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、セルロース誘導体を含む各種筆記具用水性インキ組成物が公知となっている。また、特開平11−29734では、少なくとも金属粉顔料,着色剤、水溶性有機溶剤、及び、水を含み、さらに、増粘樹脂、及びセルロース誘導体を含むことを特徴とする水性メタリックインキ組成物が開示されている。これはセルロース誘導体が金属粉顔料をコーティングする為、着色剤が金属顔料表面に捕捉、又は吸着されやすくなり、さらに、金属イオンの溶出を抑制することができるインキ組成物に関するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、従来公知の筆記具用水性インキ組成物は、マーキングペンやボールペン等の筆記具とした場合、製造ロットによって、インキ組成物の流出量のバラツキが生じ、筆記途中の筆跡のカスレや、筆記距離の短い製品が発生することがある。筆跡がかすれ、筆記距離が短い筆記具は、製品として不良であるために回収または出荷の中止をする必要があるので、発生しないことが望まれている。
【0004】
つまり、上記の様な製造ロットによる流出量のバラツキを発生することなく、良好な筆記適性や筆記距離を長期にわたって維持することができるインキ組成物を提供し、かかるインキ組成物を筆記具に用いることで筆記具の製品としての不良率を低減する必要がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為鋭意検討した結果、本発明者は、上記の問題がセルロース誘導体に含まれる水不溶性の重合不純物等の不純物に起因して発生していることを見出した。一般に、セルロース誘導体は、その製造工程で混入、もしくは生成したフリーファイバーやミクロゲル等の、水不溶性の重合不純物等を含んでいる。この様なセルロース誘導体を含む筆記具用水性インキ組成物を、マーキングペンやボールペン等の筆記具として使用すると、上記の様な重合不純物等の不純物がペン先で詰まり、インキ流出量の減少を引き起こす原因となり、筆記適性又は筆記距離の低下を引き起こす。
【0006】
さらに、本発明者は、上記の様な不純物の含有量を示す不純物指数が10以下であるインキ組成物は、製造ロットによる流出量のバラツキや、筆記適性又は筆記距離の低下を引き起こさないことを見出した。不純物指数とは、少なくともセルロース誘導体を含む水溶液中に含まれる、上記の様な不純物の含有量を表す指数であり、以下の様な方法で求められる。まず、1リットルの蒸留水に、セルロース誘導体を含む水溶液が固形分で0.5重量%となる様、マグネチックスターラーを用いて希釈する。これを3時間攪拌後、重量既知の直径9cmに切り取った200メッシュポリエステル濾布(シャーレにいれたまま計量)を用いて―100mmHgの割合で吸引しながら濾過する。ビーカーを500mlの蒸留水で洗浄しながら濾布を洗浄し、30秒後吸引を止めて濾布をシャーレに取り出して計量し、以下の式により不純物指数を得る。
不純物指数=[(濾過後重量)−(濾過前重量)−0.22]/(セルロース誘導体を含む水溶液の固形分重量)×100
式中、水だけで濾過したときの濾布重量は0.22であり、これをブランクとした。尚、セルロース誘導体を含む水溶液中には、セルロース誘導体以外の原料を含んでいても良く、インキ組成物であっても良い。
【0007】
本発明者は、セルロース誘導体を含むインキ組成物に、不純物指数が10以下であるセルロース誘導体を用いて製造することにより、筆記適性又は筆記距離の低下が生じないインキ組成物を提供することをも見出した。インキ組成物を製造するに際して、セルロース誘導体以外の原料とセルロース誘導体若しくはセルロース誘導体水溶液とを混合する前に、原料としてのセルロース誘導体についての水不溶性の重合不純物等の不純物を測定して不純物指数が10以下であるセルロース誘導体を選んで使用することにより、筆記適性又は筆記距離の低下が生じないインキ組成物を得ることができる。なお、セルロース誘導体を選ぶにさいしては、セルロース誘導体の製造ロットごとに不純物指数の測定が行われることが、不良製品を製造しない又はインキ化する前に行うことでろ過時間が短縮されるので好ましく、不純物排除の確実性のためにドラム等の搬送容器ごとに不純物指数を測定することがより好ましい。前記不純物指数についてのより好適な範囲は5以下である。
【0008】
さらに、本発明者は、セルロース誘導体を、水溶液全量に対して1〜50重量%含む水溶液とし、これを400メッシュ以上のメッシュを2回以上通過させることによって濾過すると、前記水溶液を不純物指数10以下にすることができることをも見出した。この様にして製造されたセルロース誘導体水溶液を含むインキ組成物は、ボールペンやマーキングペン等の筆記具として使用された場合、セルロース誘導体に含まれる重合不純物によるペン先での目詰まりを引き起こさない為、インキが滑らかに流出し、優れた筆記適性と筆記距離を維持し続けることができる。なお、メッシュとしては、網目状であって、目開きが400メッシュ以上あれば、特に限定されず公知のメッシュを用いることができ、濾布、金属製ふるいや網目状シートであってもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
(セルロース誘導体)
本発明のセルロース誘導体は、接着樹脂として用いられる。本発明のセルロース誘導体としては、増粘樹脂の溶解性及び粘度や、着色剤の分散及び発色に影響を与えないものであれば用いることができる。しかし、インキ組成物製造工程を考慮すると、あらかじめ、上記の方法で求められる不純物指数が10以下であるセルロース誘導体を用いることが好ましい。また、インキ組成物をメタリックインキとする場合には、発色濃度の高いメタリック調の塗膜を形成できる物が好適である。
【0010】
本発明のセルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)等を挙げることができる。これらのセルロース誘導体は、これらの1種、又は2種以上を混合して使用することができる。
【00011】
本発明のセルロース誘導体は、インキ組成物全量に対して0.01〜40重量%含まれていることが好ましい。セルロース誘導体がインキ組成物全量に対して0.01重量%未満の場合は着色剤の定着性が低下する。特に、着色剤として金属粉顔料と顔料を含む水性メタリックインキ組成物の場合は、金属粉顔料に対する着色剤の定着性が低下し、塗膜の発色濃度が低下する。セルロース誘導体がインキ組成物全量に対して40重量%を超えると、粘度が上がりすぎ、流動性が低下して、筆記適性が低下する。特に、着色剤として金属粉顔料と顔料を含む水性メタリックインキ組成物の場合は、金属粉顔料間で凝集が発生し、好ましくない。セルロース誘導体の最適配合量は、種類によってやや異なるが、0.3〜20重量%である。
【0012】
(増粘樹脂)
本発明の増粘樹脂としては、インキの粘度調整をするとともに、着色剤の分散及び沈降防止を図ることが出来るものであれば用いることができる。例えば、微生物産系多糖類及びその誘導体を挙げることができる。具体的にはプルラン、ザンサンガム、ウェランガム、ラムザンガム、サクシノグルカン、デキストラン等を例示することができる。また、水溶性植物系多糖類およびその誘導体を挙げることができる。具体的には、トラガンシガム、グァ−ガム、タラガム、ロ−カストビ−ンガム、ガティガム、アラビノガラクタンガム、アラビアガム、クイスシ−ドガム、ペクチン、デンプン、サイリュ−ムシ−ドガム、ペクチン、カラギ−ナン、アルギン酸、寒天等を例示することができる。また、水溶性動物系多糖類およびその誘導体を挙げることができる。具体的には、ゼラチン、カゼイン、アルブミンを例示することができる。また、水分散型樹脂なども用いることができる。
【0013】
本発明の増粘樹脂としては、中でも微生物産系多糖類及びその誘導体を好適に用いることができる。増粘樹脂は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
本発明の増粘樹脂は、インキ組成物全量に対して0.01〜4重量%含まれていることが好ましい。増粘樹脂がインキ組成物全量に対して0.01重量%未満の場合は着色剤が沈降し易い。増粘樹脂がインキ組成物全量に対して4重量%を超えると、粘度が上がりすぎ、流動性が低下して、筆記適性が低下する。増粘樹脂の最適配合量は、種類によってやや異なるが、0.3〜2重量%である。
【0015】
(着色剤)
本発明の着色剤は、溶解性又は分散性に優れるものであれば用いることができる。特に、水性メタリックインキ組成物とする場合、金属粉顔料と同時に用いられる着色剤は、金属粉顔料と反応せず、発色を阻害しないものが好適である。
【0016】
本発明の着色剤としては、例えば、酸性染料、直接染料、塩基性染料などの水溶性染料(トリフェニルメタン系、キサンテン系、アントラキノン系、金属錯体系、銅フタロシアニン系など)のほか、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料、銅フタロシアニン系顔料、スレン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、インドレノン系顔料、アゾメチン系顔料などの有機顔料のほか、蛍光顔料などが挙げられる。また、これらを顔料分散体として用いることもできる。また、市販の着色エマルジョンを用いることができる。また、ガラスフレーク顔料、金属粉顔料、パール顔料等の光輝性顔料と混合して用いることができる。本発明の顔料は1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0017】
本発明では、着色剤は、インキ組成物全量に対して0.01〜40重量%含まれていることが好ましい。着色剤がインキ組成物全量に対して0.01重量%未満の場合は筆跡を視認し難くなる。特に水性メタリックインキ組成物とする場合は、金属光沢が低下する。着色剤がインキ組成物全量に対して40重量%を超えると、インキとしては粘度が上がりすぎ、流動性が低下する。着色剤の最適配合量は、着色剤の種類によってやや異なるが、0.5〜30重量%である。
【0018】
本発明において、着色剤として金属粉顔料を用いる場合、金属粉顔料のメジアン径は3〜40μmが好適である。金属粉顔料のメジアン径が3μm未満の場合は、粒子が小さすぎるため光沢が劣り、また40μmを超えると、筆記具として使用する場合、ペン先から出にくいため好ましくない。
【0019】
(水溶性有機溶剤)
本発明の水溶性有機溶剤としては、ペン先での乾燥防止とインキの凍結防止を図ることができるものを用いることが好ましい。例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル等のグリコ−ル類、エチレングリコ−ルモノメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルモノメチルエ−テル等のグリコ−ルエ−テル類、及びグリセリンを例示することができる。水溶性有機溶剤は1種又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、炭素数1乃至4の脂肪族1価アルコール類、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、グリセリンが好適に用いられる。
【0020】
本発明では、水溶性有機溶剤は、インキ組成物全量に対して1〜40重量%含まれていることが好ましい。水溶性有機溶剤がインキ組成物全量に対して1重量%未満の場合はペン先が乾燥しやすく、またインキが凍結しやすくなる。水溶性有機溶剤がインキ組成物全量に対して40重量%を超えると、水溶性増粘樹脂の溶解性に影響を与えると共に、筆跡乃至塗膜が乾燥し難くなる。水溶性有機溶剤の最適配合量は、水溶性有機溶剤の種類によってやや異なるが、5〜20重量%である。
【0021】
(その他)
なお、本発明のインキ組成物では、イオン交換水等の慣用の水を配合することができる。また、その他必要に応じて、pH調整剤、潤滑剤、防錆剤、防腐防黴剤、染料可溶化剤、各種界面活性剤などを添加することができる。
【0022】
(筆記具用水性インキ組成物製造方法)
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、例えば、次の方法によって製造される。まず、水溶性有機溶剤、水、必要に応じてその他の添加剤を混合する。さらにセルロース誘導体を添加し、完全に溶解させる。400メッシュ以上のメッシュを2回以上通過させて濾過を行い、セルロース誘導体水溶液を得る。この様にして得られたセルロース誘導体水溶液を必要に応じてpHの調整を行ってから着色剤、増粘樹脂等を必要に応じて加えてさらに攪拌し、目的のインキ組成物を得る。尚、あらかじめ不純物指数が10以下であるセルロース誘導体を用いる場合等、濾過工程を必要としない。
【0023】
セルロース誘導体は、濾過を行う前であれば、どの工程で投入されても良く、濾過を行う前に投入する原料の投入順序は問わない。また、セルロース誘導体は、1回で全量を投入されても2回以上に分けて投入されても良い。例えば、あらかじめ、セルロース誘導体を、水を含む溶剤に投入又は溶解しておいても、セルロース誘導体以外の、400メッシュ以上のメッシュを通過することができる原料を分散又は溶解した水溶液に、セルロース誘導体を投入及び溶解しても良い。また、製造効率を考慮すると、セルロース誘導体を含む400メッシュ以上のメッシュを通過することのできる原料を、水を含む溶剤に投入し、分散又は溶解することにより、セルロース誘導体水溶液を得ることが好ましい。
【0024】
上記セルロース誘導体水溶液に含まれるセルロース誘導体の含有量は、水溶液全量に対して1〜50重量%であることが好ましい。セルロース誘導体の含有量が、水溶液全量に対して1重量%未満である場合は、充分な筆跡の定着性を得るために、多量のセルロース誘導体水溶液を要することとなり、好ましくない。一方、セルロース誘導体の含有量が水溶液全量に対して50重量%を超える場合は、粘度が高すぎる為、濾過工程に時間がかかり、製造効率が悪くなる。濾過する時点の水溶液に含まれるセルロース誘導体の含有量は、種類によってやや異なるが5〜30重量%であることが好適である。
【0025】
濾過工程は、セルロース誘導体を投入及び溶解した後であればどの工程で行われても良い。ただし、金属粉顔料の様な400メッシュ以上のメッシュを通過しない水不溶性成分を添加する必要がない場合は、前記セルロース誘導体水溶液をインキ組成物として用いることもできる。しかし、上記の様な400メッシュ以上のメッシュを通過しない水不溶性成分をインキ組成物中に含む場合は、これらが投入される前に濾過が行われる。しかし、製造効率を考慮すると、顔料等の固形分が投入される前に行われることが好ましい。
【0026】
メッシュは400メッシュ以上のものであれば用いることができる。例えば、400メッシュのメッシュを2回以上通過させても良く、400メッシュのメッシュで1回目の濾過を行い、次に500メッシュのメッシュで2回目の濾過を行う等の方法が考えられる。また、メッシュは、400メッシュ以上のものであれば、同一の物を2回以上用いても良く、2種以上のメッシュを垂直に並べてセルロース誘導体水溶液を通過させ、濾過を行うこともできる。また、濾過に使用されるメッシュは400メッシュ以上であることが好ましい。使用されるメッシュが400メッシュ未満である場合は、セルロース誘導体に含まれるフリーファイバーやミクロゲル等の水不溶性の重合不純物等を除去することができない。前記重合不純物等は、セルロース誘導体中に含まれるセルロース以外の固形分をいうものである。濾過に使用されるメッシュは、セルロース誘導体水溶液の濃度によってやや異なるが、400〜600メッシュであることが好適である。尚、かかる調製に際しては、従来公知の分散方法、脱泡方法、濾過方法などを採用することができる。特に、濾過工程に関して、セルロース誘導体水溶液の粘度が高い、もしくは目の細かいメッシュを使用する等の場合に際しては、濾過工程に要する時間を短縮する為、加圧、吸引等の濾過方法を用いることができる。
【0027】
(筆記具用水性インキ組成物)
上記の様な方法により製造された、本発明のインキ組成物は、フリーファイバーやミクロゲル等の水不溶性の重合不純物等の、不純物の含有量を表す不純物指数が10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。不純物指数が10を超える場合は、上記の様な不純物によってペン先の目詰まり等を引き起こす為、インキの流出性が低下し、筆記適性と筆記距離が低下する。
【0028】
なお、本発明の筆記具用水性インキ組成物の好適な粘度範囲は、ボールペンに用いる場合には、ELD型粘度計(3゜R14コーン、回転数:0.5rpm、20℃)による測定値で1,000〜10,000mPa・sであることが好ましい。1,000mPa・s未満である場合は、粘度が低すぎる為、着色剤が沈降し易い。一方、粘度が10,000mPa・sを超える場合は、ボールペン用インキとして粘度が高すぎる為、流動性が低下して、筆記適性が低下する。本発明の筆記具用水性インキ組成物を中芯式マーカーに用いる場合には、ELD型粘度計(ローター:1°34´、R24、回転数:50rpm、20℃)による測定値で、粘度範囲が3〜12mPa・sであることが好ましい。前記粘度が3mPa・s未満である場合には、中芯式マーカー用インキとして筆記時のインキ流出が多くなりすぎる。前記粘度が12mPa・sを超える場合には、中芯式マーカー用インキとして筆記時の流出量が少なくなる。
【0029】
(筆記具)
本発明は、筆記具についてでもある。本発明の筆記具は、インキ組成物中においてセルロース誘導体を用いることに起因する水不溶性の重合不純物等についての不純物指数が10以下であるインキ組成物を収納したものであれば、特に限定されるものではなく、ボールペンやマーカー等の筆記具として用いられるものであれば、ペン先にボールを有していても、ペン先として繊維束を有していてもよい。本発明の筆記具がマーカーである場合には、中芯式のマーカーであってもよいが、前記中芯がポリエステル繊維を含むものが適度な多孔状態であるために塗布量の調整が容易であるために好ましい。なお、前記筆記具は、前記不純物指数が5以下である水性インキ組成物を収納したものであることが、筆記適正が優れているために好ましい。
【0030】
【実施例】
表1に示す組成及び配合量(重量部)で、以下の製造方法により実施例1〜6、及び比較例1〜9に係る水性メタリックインキ組成物を得た。まず水を攪拌しながらセルロース誘導体、水溶性有機溶剤を添加した。これを表1に示すメッシュを通過させて濾過を行い、セルロース誘導体を水溶液全量に対して3.3重量%含む水溶液を得た。このようにして得られたセルロース誘導体水溶液を、カセイソーダによりpH8.5に調整した後、これに着色剤、増粘樹脂、防腐防黴剤を加えて攪拌し、目的の水性メタリックインキ組成物を得た。なお、かかる調製に際しては、従来公知の分散方法、脱泡方法、濾過方法などを採用した。
【0031】
【表1】
【0032】
表中、各原料組成は下記の通りである。
(セルロース誘導体)
カルボキシメチルセルロース:商品名「セロゲン5A」、第一工業製薬株式会社製、数平均分子量27,000〜33,000
ただし、表1中のA、B、C及びDは、無作為に抽出されたカルボキシメチルセルロース(商品名「セロゲン5A」)についての異なる製造ロットを示すものである。
(増粘樹脂)
ウェランガム:商品名「K1A96」、三晶株式会社製
(水溶性有機溶剤)
Iグリセリン:試薬
IIプロピレングリコール:試薬
(防腐防黴剤)
1,2−ベンゾチアゾリン―3―オン:「プロクセルXL−2」、ヘキスト合成株式会社製
(着色剤)
I アルミニウム粉顔料:商品名「アルペーストWXM0630」、東洋アルミニウム株式会社製
II 青色顔料ベース:以下の方法によって調整された青色顔料ベース
(青色顔料ベース調整方法)
フタロシアニンブルー(商品名「Fastogen Blue TGR」,大日本インキ化学工業株式会社製)5、スチレンアクリル共重合体(商品名「ジョンクリル62」、ジョンソンポリマー株式会社製)1の割合でNaOHを加えて水に溶解した後、ボールミルにて分散を行い、平均粒径0.08μm、固形分濃度10重量%の顔料分散体を得た。
【0033】
(試験サンプルの作製)
実施例及び比較例の水性メタリックインキをステンレス製ボールペンチップ(ボール材質:炭化珪素)を一端に連設したポリプロピレン製中空軸筒よりなるボールペンのインキ収容部に充填し、試験サンプルを作成した。
【0034】
(評価試験)
次に、これらのインキ組成物又はボールペンを用いて、下記の試験を行った。これらの評価結果は表1に示した。
(不純物指数)
実施例及び比較例に係るインキ組成物の不純物指数を、下記の様な方法で求めた。まず、カセイソーダでpH調整を行う前の、セルロース誘導体を水溶液全量に対して3.3重量%含むセルロース誘導体水溶液を採取する。次に、1リットルの蒸留水に、このセルロース誘導体水溶液が固形分で0.5重量%となる様、マグネチックスターラーを用いて希釈する。これを3時間攪拌後、重量既知の直径9cmに切り取った200メッシュポリエステル濾布(シャーレにいれたまま計量)を用いて―100mmHgの割合で吸引しながら濾過する。ビーカーを500mlの蒸留水で洗浄しながら濾布を洗浄し、30秒後吸引を止めて濾布をシャーレに取り出して計量し、以下の式により不純物指数を得る。
不純物指数=[(濾過後重量)−(濾過前重量)−0.22]/(セルロース誘導体を含む水溶液の固形分重量)×100
式中、水だけで濾過したときの濾布重量は0.22であり、これをブランクとした。
(不純物除去性)
上記の様な方法で求められた、実施例及び比較例に係るインキ組成物の不純物指数が10以下である場合は○、10を超える場合は×として不純物除去性を評価した。
(筆記適性)
実施例及び比較例に係る試験サンプルのボールペンを用いて市販のルーズリーフ用紙に100m連続筆記した際のインキ流出量を測定し、以下の評価基準によって筆記適性を評価した。
◎:筆跡にかすれが無く、流出量が0.2g以上であり、筆記適性が優れている。
○:筆跡にかすれが無く、筆記適性が良好である。
△:流出量が0.1g以上0.2g未満であり、筆跡にかすれが生じるため、実用的でない。
×:流出量が0.1g未満であり、実用的でない。
【0035】
表1より、実施例1及び2の筆記具用水性インキ組成物は、製造ロットAまたは製造ロットBであるセルロース誘導体を用い、セルロース誘導体にメッシュによるろ過を行わなくても不純物指数が10以下であるために筆記適性が良好であり、特に実施例1の筆記具用水性インキ組成物は、筆記特性に優れていた。
【0036】
実施例3〜5に係る筆記具用水性インキ組成物は、製造ロットCであるセルロース誘導体を用い、400メッシュ以上のメッシュを2回以上通過させたので、不純物除去性が良好で、滑らかにインキ組成物が流出し、筆記適性も良好であった。400メッシュのメッシュに比べて目開きの狭いメッシュである500メッシュのメッシュを2回以上通過させた実施例5については、不純物指数も小さく、筆記適性も優れていた。これに対して、400メッシュ以上のメッシュを通過させなかった比較例2は、不純物除去性が十分でなく筆記適性も不良であり、400メッシュのメッシュを1回だけ通過させた比較例1についても、不純物除去性が十分でなく筆記適性も不良であった。また、比較例3〜9に係る筆記具用水性インキ組成物は、2回以上メッシュを通過させたが、400メッシュ以上のメッシュを通過させることを1回若しくは行わなかったので、不純物除去性が十分でなく、筆記適性も不良であった。
【0037】
製造ロットDのセルロース誘導体を用いた筆記具用水性インキ組成物については、400メッシュ以上のメッシュを2回以上通過させることを行わなかった比較例9が不純物指数16であり筆記特性も不良であるのに対し、400メッシュのメッシュを2回以上通過させた実施例6が不純物指数5であり、筆記適性も優れていた。不純物指数が比較的低いセルロース誘導体を原料に用い、400メッシュ以上のメッシュを2回以上通過させることにより優れた筆記適性が得られた。
【0038】
上述のように、重合不純物等の不純物の含有量が少ないことを示す不純物除去性に優れたインキ組成物を採用することにより、優れた筆記適性を得ることが可能である。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、フリーファイバーやミクロゲル等の、重合不純物等の不純物の含有量を表す不純物指数が10以下である筆記具用水性インキ組成物であり、セルロース誘導体を水溶液全量に対して1〜50重量%含む水溶液を、400メッシュ以上のメッシュで2回以上濾過することによって製造されたセルロース誘導体水溶液に、金属粉顔料等の400メッシュ以上のメッシュを通過することができない水不溶性成分を添加することによって、製造された筆記具用水性インキ組成物であるので、筆記適性の低下や、筆記距離の減少を起こさず、滑らかな書き味と、良好なインキの流出量を維持することができる。
Claims (4)
- 必須成分としてセルロース誘導体、水、水溶性有機溶剤、着色剤及び増粘樹脂を含む筆記具用水性インキ組成物の製造方法において、
前記セルロース誘導体がカルボキシメチルセルロースであり、
前記セルロース誘導体を水及び水溶性有機溶剤で溶解させてセルロース誘導体水溶液とし、
次いで、前記セルロース誘導体水溶液を400メッシュ以上のメッシュを2回以上通過させて濾過を行い、
次いで、濾過された前記セルロース誘導体水溶液のpHの調整を行い、
次いで、pHの調製された前記セルロース誘導体水溶液に、着色剤及び増粘樹脂を加えてさらに攪拌する工程を少なくとも具備する筆記具用水性インキ組成物の製造方法。 - 前記カルボキシメチルセルロースが、前記セルロース誘導体水溶液全量に対し、1〜50重量%含まれる請求項1記載の筆記具用水性インキ組成物の製造方法。
- 前記メッシュが400〜600メッシュである請求項1または2記載の筆記具用水性インキ組成物の製造方法。
- 前記水溶性有機油溶剤が、炭素数1乃至4の脂肪族1価アルコール類、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル及びグリセリンの群から選ばれる1種または2種以上の化合物である請求項1〜3いずれかの項記載の筆記具用水性インキ組成物の製造方法。
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