JP3934261B2 - 半導体集積回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アナログ回路とデジタル回路を同一基板上に集積する集積回路素子に関する。さらに詳細には、特にデジタル回路をCMOSで構成した場合にはデジタル回路は電源電圧と同じ論理振幅を持つことになるが、このようなデジタル回路と微少信号を増幅するアナログ回路とを同一チップ上で集積化するレイアウト配置、クロック周波数配置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、単体トランジスタあるいは個別回路ICで実現されていた移動体通信用高周波アナログ回路の大規模な集積化が推進されている。ページャ(無線呼び出し)用アナログRF/IF集積回路の一例が、電子情報通信学会英文誌A分冊E76−A、1993年2月号、第156頁〜163頁、田中等「高周波ページャ向け高周波、定電圧回路技術」がある。この例では、高周波動作特性の優れたバイポーラトランジスタが使用されている。
【0003】
しかし、近年のCMOSプロセスの周波数特性向上にともない、RF回路をCMOSプロセスで実現することが検討されている。国際電気電子学会主催、1998年度 大規模集積回路研究会予稿集、第80頁〜83頁、エフ.スターベ等「1GHz帯CMOS高周波受信回路」(F. Stubbe, S. V. Kishore, C. Hull, and V. Della Torre, A CMOS RF-Receiver Front-End for 1 GHz Applications, IEEE 1998 SYMPOSIUM ON VLSI CIRCUITS DIGEST OF TECHNICAL PAPER pp. 80-83, 1998)には、ページャ向けよりも仕様の厳しいデジタル移動電話用RF回路をCMOSで実現した例が開示されている。
【0004】
このように、移動体通信用集積回路は、高周波アナログ回路(RF/IF回路)をCMOSプロセスで構成し、搬送周波数帯域でのアナログ信号処理からベースバンドデジタル信号処理を含むシステムを一チップ上に構成するという要求が高まって来ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
CMOSデジタル信号処理回路とアナログ回路とを同一基板上に作成した場合、電源電圧を動作振幅とするCMOS論理信号がアナログ回路に混入することにより受信信号の妨害波となり、受信感度を劣化させることにある。特に、受信信号は場合によっては数μVと微弱であり、論理振幅(約2〜3V)に比べ遥かに小さな信号である。デジタル信号処理回路より発する雑音の影響を抑圧し、良好な受信感度を実現する必要がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題はアナログ部で最も信号の周波数が高く小さな回路の集積回路上のパターン、電源、接地端子部分をデジタル回路の集積回路上のパターン、電源、接地端子から離れた場所に配置するとともに、大きなアナログ信号を持つ回路、または電源回路を間に配置し、デジタル回路から微弱信号を扱うアナログ回路に混入する雑音を小さくすることで解決出来る。
【0007】
【発明の実施の形態】
デジタル信号処理回路とアナログ回路とを一基板上に実現した場合におけるデジタル信号処理回路から発生する雑音(電圧性雑音・電流性雑音)と、各雑音のアナログ回路への伝播経路について説明する。なお、以下に現れる数値は、RF/IF回路及びデジタル信号処理回路とを一基板上にCMOSプロセスで実現したページャ用集積回路の例であり、発明の理解のために使用する。
【0008】
(A)電圧性雑音
デジタル信号処理回路内で発生する電圧信号に起因する雑音について検討する。本来は、電圧信号は動作に応じて複雑な波形パタンをとるが、簡単のため方形波でデジタル回路の電圧信号を代表させる。振幅Vdd(V)の方形波CLK(t)のフーリエ級数を考える。
【0009】
【数1】
Figure 0003934261
【0010】
ここで、fは周波数である。また、係数Vnは以下で与えられる。
【0011】
【数2】
Figure 0003934261
【0012】
(数2)の係数Vnから、(数1)の方形波に含まれる基本波と高調波の比を求める。方形波には偶数高調波は含まれず奇数高調波のみが含まれる。1次から15次までの係数は、
V1=(2*Vdd)/(π), V3=−(2*Vdd)/(3π), V5=(2*Vdd)/(5π), V7=−(2*Vdd)/(7π), V9=(2*Vdd)/(9π), V11=−(2*Vdd)/(11π), V13=(2*Vdd)/(13π), V15=−(2*Vdd)/(15π)
となる。これより、各高調波の振幅と基本波との振幅の比率のデシベル表記を求めると、以下のようになる。
【0013】
V3:V1(dB)= -9.5 dB,V5:V1(dB)= -14.0 dB,V7:V1(dB)= -16.9 dB, V9:V1(dB)= -19.1 dB,V11:V1(dB)= -20.8 dB,V13:V1(dB)= -22.3 dB,V15:V1(dB)= -23.5 dB
高調波は11倍になっても(V11)、基本波に対しておよそ20dBしか減衰しない。このように、デジタル信号処理回路の電圧信号は大きな高調波信号を発生する。
【0014】
次に、この高調波が集積回路上でアナログ回路に回り込む伝搬経路について検討する。CMOSプロセスの集積回路の断面(なお、理解のため寄生抵抗等を図示している)を図2に示す。図2は、CMOSプロセスでインバータ(図3を参照)を構成した例である。
【0015】
CMOSプロセスでは、厚さ約250μm、抵抗率10Ωcmの基板上に、厚さ約1μm、抵抗率0.1Ωcmのp型またはn型のウエル層が形成される。なお、「1Ωcm 」とは、「1cm3の正六面体の向かい合う2面間の抵抗が1Ω」として定義される。このように、基板はウエル層に比べて2桁抵抗率が高い。
【0016】
n型MOSFETはp型のウエル層に、p型MOSFETはn型のウエル層に形成される。図2の例では、n型MOSFETのソース電極202、 p型MOSFETのソース電極207はそれぞれ近傍に設けられたウエル層のコンタクト201、208と接続され、コンタクトはそれぞれ接地電位GNDあるいは電源電位Vddに接続されることにより、ウエル層を接地電位GNDあるいは電源電位Vddに固定する。電圧信号の高周波成分は、ドレイン寄生容量209,210を介してウエル層に伝えられる。ウエル層は、FETの近傍で接地電位GNDあるいは電源電位Vddに固定されているため、基板に放出される信号はウエル層抵抗211、212を介して接地されており、かつ上述の通り、基板の抵抗率はウエル層の抵抗率よりも約2桁高いことから、ウエル層から基板に伝わる信号は大きく減衰する。
【0017】
ページャ用集積回路を例に、デジタル信号処理回路から基板に伝播する信号強度を見積もる。先ず、1つのゲートが発生する雑音について検討する。0.35μCMOSのインバータのドレイン−ウエル間寄生容量はnMOS、pMOSを合わせておよそ30fFとなる。また、ウエル層の抵抗はnMOS、pMOS合わせて500Ωとなる。電圧信号はこのドレイン−ウエル間寄生容量とウエル層抵抗で構成される高域通過フィルタを介して基板に放出される(電圧性雑音)。このときの高域通過フィルタの通過周波数は約11GHz以上となり、デジタル信号処理回路で発生する高調波の周波数に対して十分高いものである。具体的に周波数を50kHz、500kHz、5MHzとする信号の減衰量はそれぞれ約−106dB、−86dB、−66dBとなる。
【0018】
基板に伝達される信号の減衰量は、(数2)より算出される信号の振幅の大きさと高域通過フィルタとによって定まる。デジタル信号処理回路の動作クロックが50kHz(基本波)である場合、各周波数成分が基板に伝達されたときの減衰量は、各高調波は100dB以下のレベルにとどまる(50kHzの場合は約−106dB、100kHzの場合は約−106(≒(-20.8)-86)dB)。
【0019】
次に、デジタル信号処理回路全体から基板に伝播する信号強度(雑音)の大きさを検討する。デジタル信号処理回路の規模を10kゲートとし、オン率を30%と見積もり、(0→1)/(1→0)の遷移がほぼ同じ確率で起こると仮定する。遷移に関する仮定はCMOS論理回路が基本的に、INV(インバータ)、NAND(負論理積)、NOR(負論理和)より構成されることより妥当なものである。論理回路に動作遅延が無い場合は、二つの遷移から生じる高調波が相互に打ち消しあうので、基板には雑音は放出されない。しかしながら、実際には動作遅延が存在し、打ち消しは不完全となり、次に示す量(デシベル換算)だけ雑音が増加する。
【0020】
【数3】
Figure 0003934261
【0021】
ここで、τは論理回路の遅延時間を示し、T0はクロック周期を示す。Ngは論理回路のゲート数、ponはオン率を示す。クロック周波数を50kHz、動作している各ゲートの入力出力で発生する相補的な逆相信号の遅延を4n秒の場合の雑音の増加量は(数3)により約12dBとなる。以上の検討により、電圧信号は、基板に伝播する時点では約94(≒(-106)-12)dBの減衰を生じることが分かる。論理振幅2Vの場合、基板には200μV伝播し、さらに基板は前述したように高抵抗であるから、基板内を伝播する間に更に大きな減衰が生じることが予測される。このように、電圧性雑音はウエル層のコンタクトをとることにより、大きく減衰するといえる。
【0022】
(B)電流性雑音
次にデジタル信号処理回路を流れる電流変化に起因する雑音について検討する。図3に論理回路の代表的な回路ブロックであるインバータとその動作を示す等価回路を示す。インバータはゲートに印加される電圧に応じて出力を電源電位Vddあるいは接地電位GNDに接続する。このインバータ回路に方形波を入力し、図4(a)に示すような方形波を出力した場合に、電源から流入する電流IVddと接地に流出する電流Igndをそれぞれ図4(b)(c)に示す。インバータは出力の立上り時より電源と出力を接続するため、立上りタイミングに電源より急激にインバータに対して電流が流れる。また出力の立ち下がり時より出力は接地電位に接続されるため、立ち下がりタイミングにインバータより急激に接地端子に対して電流が流れる。例えば、0.35μmCMOSプロセスを適用した場合、論理回路の状態遷移(1→0、または0→1)にかかる時間はおよそ2n秒〜4n秒である。電流はこの短い期間に流れる。ページャを制御する論理回路のクロック速度は機能、動作状態によるが、およそ3kHz、50kHzであり、電流の流れる期間τとクロックの周期T0とは4桁から6桁以上の差がある。このような細いパルス状の電流波形Ilogic(t)のフーリエ級数は以下で与えられる。
【0023】
【数4】
Figure 0003934261
【0024】
ここでfは周波数、I0はDCオフセット電流、Inはn次の各係数を表す。係数I0,Inは、次の式で表される。
【0025】
【数5】
Figure 0003934261
【0026】
ここでT0=20μ秒(50kHzのクロック周期に相当)、τ=4n秒として、0次(DC成分)、1次、5次、10次、100次、1000次までの係数を算出すると次のようになる。
【0027】
I0(DC)= Ipeak/5000,I1(50KHz成分)≒ Ipeak/2500,I5(250KHz成分)≒Ipeak/2500,I10(500KHz成分)≒ Ipeak/2500,I100(5MHz成分)≒ Ipeak/2500,I1000(50MHz成分)≒ Ipeak/1336
高調波成分の振幅は基本波と同等あるいは場合によってはそれ以上になり、デジタル信号処理回路の動作平均電流I0=50μAであれば、Ipeak=250mAとなり、I1 ≒ I5 ≒ I10 ≒ I100 ≒ 400μA0-p、I1000 ≒ 750μA0-pとなる。このようにデジタル信号処理回路の電流により発生する高調波雑音は、先に示した電圧波形の含む高調波成分に比べ減衰が小さく、さらに周波数によっては逆に大きくなる。但し、パルスの幅が狭いほど、つまり論理回路の1から0あるいは0から1への状態遷移が早いほど各成分は小さくなる。
【0028】
集積回路上の電源端子、接地端子は図5に示すようにボンディングワイアとパッケージのリードピンを介して実装基板上の電源端子、接地端子に接続される。隣接するボンディングワイア間または隣接するパッケージのリードピン間には寄生インダクタが存在する。寄生インダクタLの両端に発生する電圧Vindは、次式で表される。
【0029】
【数6】
Figure 0003934261
【0030】
ここでdi/dtは電流の時間微分を表す。論理回路の電源に流れる電流はパルス状の急峻な波形であり、インダクタ両端にて発生する電圧も図中に示すような急峻な波形となる。パッケージに関連する寄生インダクタはおよそ2nH〜8nHである。平均的なパッケージのインダクタンス値6nHを適用し、各周波数成分の電圧値Vindf(F)を(数6)より求めると次のようになる。
【0031】
Vindf(50kHz) = 0.8μV,Vindf(250kHz) = 4.0μV,Vindf(500kHz) = 8.0μV, Vindf(5MHz) = 80μV,Vindf(50MHz) = 1.5mV
このように周波数が高い成分ほど寄生インダクタンスの両端に発生する電圧が大きくなる。このような寄生インダクタンスは、パッケージのリード、ボンディングワイアに限られず、集積回路を実装する実装基板上のパターンの引き回しによっても発生する。
【0032】
このような電流変化に起因する電圧(雑音)は、集積回路上の論理回路の接地端子あるいは電源端子を介して、集積回路のウエル層を介して、電圧性雑音と同様のメカニズムで基板、アナログ回路に伝播する。または、実装基板上の寄生容量カップリングを通じて実装基板を伝播することにより、集積回路の電源電位、接地電位を変動させることで、アナログ回路に影響を与える。
【0033】
(C)雑音の伝播に関するまとめ
(1)デジタル信号処理回路の電圧性・電流性雑音は集積回路内の基板を伝播する。そのため、ウエル層のコンタクトを強化するとともに、基板の抵抗率が大きいことを利用して、デジタル信号処理回路とアナログ回路間の距離を離すことで、雑音は効果的に低減される。
【0034】
(2)集積回路の基板、実装基板あるいはパッケージを介して、論理回路の電流性雑音が寄生インダクタにより電圧に変換されて伝播する。特に高い周波数成分ほど減衰率が小さく、容易に伝播する。そのため、寄生インダクタを低減するとともに、周波数が高く且つ微少なアナログ信号の入出力端子を、デジタル信号処理回路の電源端子、あるいは入出力端子から離して配置することで、雑音は効果的に低減される。
【0035】
(D)雑音の伝播特性を考慮したデジタル/アナログ集積回路の実施形態
第1の実施形態として、ページャシステムに適用される受信回路のアナログ信号処理回路とデジタル信号処理回路とを同一基板上に構成した例を示す。図6に、ページャの一般的なブロックダイアグラムを示す。低雑音増幅器、帯域通過フィルタ、ミキサ、リミッタ増幅器、検波回路、低域通過フィルタ回路等からなる。
【0036】
最低入力信号レベル時での、各回路の入出力信号の信号電圧振幅と周波数とを説明する。低雑音増幅器602はアンテナ601より入力した最低約0.35μVpp(50Ω整合時)の280MHz帯の4値FSK(frequency shift keying)信号を増幅する。初段ミキサ604はフィルタ603を介して増幅された信号を受け、20MHz、180μVpp(2kΩ整合時)の第1IF信号に変換する。第1中間周波フィルタ605により不要妨害波を減衰させた後、第2ミキサ606により、130μVpp(2kΩ整合時)の第1IF信号を445kHz、480μVpp(1.5kΩ整合時)の第2中間周波信号に変換する。外付けの第2中間周波フィルタ607により不要妨害波を更に減衰させた後、リミッタ増幅器608により、445kHz、350μVpp(1.5kΩ整合時)の第2中間周波信号を0.6Vpp以上の信号に増幅する。リミッタ増幅器608の出力は入力信号レベルに依存せず常に一定になるように、最低入力信号受信時においても飽和するように設計されている。検波回路609は外付け部品の共振器610と乗算器611により構成され、455kHzを中心に、±1.6kHz、±4.8kHzの4値FSK信号の周波数に応じて異なる電圧レベルを発生する。乗算器611より発生する高調波は後段の低域通過フィルタ回路612により除去される。高調波を除去されたベースバンド信号は、AD変換器613によりデジタル信号に変換され、デジタル信号処理回路614にて所定の処理が行われる。
【0037】
0.4μCMOSプロセスの性能及び集積回路の特性変動等を考慮すると上記ブロックの内、第2ミキサ606、リミッタ増幅器608、検波回路609、低域通過フィルタ612、AD変換器613及びデジタル信号処理回路614を集積化するのが妥当である。上記の信号振幅の大きさを考慮すると、第2ミキサの入力電圧は約130μVpp であり、リミッタ増幅器の入力信号レベルは約350μVppであるから、デジタル信号処理回路から発生する数百μVppの雑音を無視出来ない。
【0038】
図1に第1の実施形態である雑音を対策するためのレイアウト構成を示す。第一に、信号が最も小さくかつ信号周波数の高い第2ミキサ回路606をデジタル信号処理回路から最も遠ざけ、雑音の影響を低減する(まとめ(1)に基づく)。第二に、アナログ回路(606,608)用の入出力のパッド、電源端子、接地端子と、デジタル信号処理回路用の電源端子、接地端子とを最も遠ざける、例えば対角に配置することにより雑音の影響を低減する(まとめ(2)に基づく)。第一の点に関してさらにリミッタ増幅器608とデジタル信号処理回路(613,614)の間にバイアス発生回路を配置し、雑音を減衰させるガードバンドとして機能させる。バイアス回路の電源は他と独立した電源としても、アナログ回路と共通の電源としてもよい。これは、集積回路の面積やそのうちデジタル回路のしめる面積、パッケージの性能等によって最適なものを定める。また、バイアス回路を介する雑音の伝播をさらに低減するためには、バイアスの供給を受ける各アナログ回路にはバイパス容量を設ける。以上が、デジタル雑音の影響を低減し、アナログ回路とデジタル信号処理回路とを同一基板上に構成する第1の実施形態である。
【0039】
第2の実施形態を図7を用いて説明する。第2の実施形態は専用のガードバンドを設けることで更に雑音を抑圧するものである。ガードバンドは図8に示すようなp型ウエル層に濃度の高いp型拡散層を設けアルミ配線層とコンタクトをとることで構成される。ガードバンド直下の基板は、低いインピーダンスを介して接地電位に固定され、基板直下の雑音は大きく減衰する。図7に示すように、ガードバンドには他の回路と独立した専用の接地パッドを設けることで基板を伝播する雑音をさらに低減できる。
【0040】
ガードバンドの変形例を図9、10に示す。図9のガードバンドはn型ウエル層に濃度の高いn型拡散層を設け、アルミ配線層とコンタクトをとることで構成している。図9のガードバンドは、基板と異なる極性のウエル層を用いることで、pウェル層を伝播する雑音経路のインピーダンスを上げることで雑音を低減する。nウェル層は、他の回路と独立した電源電位あるいは接地電位に固定し、nウェル層に侵入した雑音を更に低減する。図10のガードバンドは、p型ウェル層とn型ウェル層とを併用したものであり更に大きな効果が期待出来る。
【0041】
図11に本発明の実施形態を一般化したものを示す。アナログ回路1、2、3は番号の小さな順に処理する信号の周波数が高い。または、処理する信号の振幅が小さい。デジタル信号処理回路からの雑音は(数3)等に示したように多くの高調波成分を持っており、高い周波数を処理する回路ほどデジタル回路から遠ざける必要がある。また、入出力、電源、接地端子を相互に遠ざける(例えば、相対する辺、相対する角部にそれぞれまとめる)。本発明は、ページャ用受信機に限らず広くアナログデジタル集積回路に適用することが出来る。
【0042】
本発明の第3の実施形態を図12に示す。これはデジタル信号処理回路として周波数シンセサイザを構成した例である。このような集積回路はCMOSプロセスのみならず、BiCMOS(バイポーラトランジスタとCMOSFETの混在)プロセスで実現される。周波数シンセサイザは電圧制御発振器、分周器、カウンタ、位相比較器、チャージポンプ回路、低域通過フィルタからなり、位相同期ループを構成してミキサ回路に加える局部発振信号を安定させる。発振器の周波数が高いため、特に分周器の論理回路は高速で動作する。これらの機能ブロックの内、発振器はアナログ回路であり、分周器はCMOSあるいはエミッタ接合論理回路(ECL)で構成される。カウンター回路、位相比較器はCMOS論理回路で構成される。チャージポンプは低い周波数で動作するアナログ回路で、CMOS回路あるいはバイポーラ回路にて構成される。
【0043】
カウンター回路からは先の実施形態で述べた様にCMOS論理回路の動作により雑音が発生する。発振器、分周器は高速で動作するため局部発振周波数の整数倍の高調波を発生する。更にこの信号をアナログ回路部に局発信号として伝送する必要がある。本実施形態では特に高調波成分雑音を軽減するため、以下の対策を行っている。発振器の出力をアンプで増幅する際、出力を差動信号で取り出し、ミキサ用バッファ回路1201に入力する。差動信号を伝送する為、偶数次の高調波がキャンセルされることにより、高調波成分は低減される。また分周器は高い周波数で動作するアナログ回路1から遠ざけて配置し、雑音の影響を低減している。本発明を適用することにより、雑音に影響されることなくアナログ回路とシンセサイザ回路を一体化することが出来る。このように本発明のデジタル信号処理回路には、CMOSプロセスに限られず、バイポーラプロセスにおいても同様の効果を生じる。
【0044】
本発明の第4の実施形態を図13に示す。本実施例は第3の実施形態で同一基板上に集積した発振器を外部の別部品により構成したものである。セルラ電話などの用途においては発振器の位相雑音に対する要求が高く、集積回路上での発振器の実現が困難なため個別部品で対応することが多い。このような場合シンセサイザー集積回路とアナログ集積回路が個別に存在すると、2つの集積回路に信号を伝達する必要がある。ここで、発振器から集積回路に信号を伝送する場合は基板に対して雑音を出さないためと、同時に不適当なインピーダンスカップリングによるスプリアスの発生を防止するため集積回路の入力端子にて、例えば50Ωの終端抵抗1301を設け、信号を低インピータンスにて基板上を伝送させる。このため信号供給先の数が増えると低雑音特性の観点から、発振器に要求される出力電力の増大が要求される。本実施例では2つの機能が1つの集積回路上に実現されており、ただ1つの端子を駆動することで発振信号の伝達ができるため小さな出力電力で、位相雑音レベルの低い局部発振信号を実現することができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によりデジタル回路からアナログ回路に影響を与える高調波雑音の影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例である集積回路レイアウト配置図である。
【図2】CMOSプロセストランジスタ部断面図である。
【図3】CMOSインバータ回路とその等価回路である。
【図4】 (a)インバータ出力波形、(b)電源側電流波形、(c)接地側電流波形である。
【図5】実装に伴う寄生インダクタ説明図である。
【図6】ページャブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施例である集積回路レイアウト配置図である。
【図8】本発明の第2の実施例に適用するガードバンドの断面図である。
【図9】ガードバンドの別の実施例の断面図である。
【図10】ガードバンドの別の実施例の断面図である。
【図11】本発明の集積回路レイアウト配置図である。
【図12】本発明の第3の実施例である集積回路レイアウト配置図である。
【図13】本発明の第4の実施例である集積回路レイアウト配置図と基板上の発振器の接続方法を示す図である。
【符号の説明】
601…アンテナ、602…低雑音増幅器、603,605,607,612…フィルタ、604,606…ミキサ、608…リミッタ増幅器、609…検波回路、613…AD変換器、614…デジタル信号処理回路、L…ガードバンド断面。

Claims (8)

  1. 第一のアナログ回路と上記第一のアナログ回路で処理する周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号を処理する第二のアナログ回路とデジタル信号処理回路とを有し、
    上記第一のアナログ回路と上記第二のアナログ回路と上記デジタル信号処理回路とは同一基板上に集積され、かつ上記第二のアナログ回路と上記デジタル信号処理回路との間に上記第一のアナログ回路が位置するように配置され、
    上記第一のアナログ回路と上記デジタル信号処理回路の間に上記第一及び第二のアナログ回路にバイアス電圧を供給するバイアス回路を配置し、
    上記バイアス回路から上記第一または上記第二のアナログ回路に給電する端子と接地端子間に容量を接続したことを特徴とする半導体集積回路。
  2. 第一のアナログ回路と上記第一のアナログ回路で処理する信号レベルよりもレベルの低い信号を処理する第二のアナログ回路とデジタル信号処理回路とを有し、
    上記第一のアナログ回路と上記第二のアナログ回路と上記デジタル信号処理回路とは同一基板上に集積され、かつ上記第二のアナログ回路と上記デジタル信号処理回路との間に上記第一のアナログ回路が位置するように配置され、
    上記第一のアナログ回路と上記デジタル信号処理回路の間に上記第一及び第二のアナログ回路にバイアス電圧を供給するバイアス回路を配置し、
    上記バイアス回路から上記第一または上記第二のアナログ回路に給電する端子と接地端子間に容量を接続したことを特徴とする半導体集積回路。
  3. 請求項1または2記載のいずれかの半導体集積回路において、
    上記第二のアナログ回路の電源端子または接地端子と上記デジタル信号処理回路の電源端子または接地端子とが隣接しないように配置されたことを特徴とする半導体集積回路。
  4. 請求項1乃至3記載のいずれかの半導体集積回路において、
    上記デジタル信号処理回路は周波数シンセサイザであることを特徴とする半導体集積回路。
  5. 請求項4記載の半導体集積回路において、
    上記周波数シンセサイザは、電圧制御発振器、分周器、位相比較器、チャージポンプ回路、および低域通過フィルタからなる位相同期ループを具備することを特徴とする半導体集積回路。
  6. 第一のアナログ回路と上記第一のアナログ回路で処理する周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号を処理する第二のアナログ回路とデジタル信号処理回路とを有し、
    上記第一のアナログ回路と上記第二のアナログ回路と上記デジタル信号処理回路とは同一基板上に集積され、かつ上記第二のアナログ回路と上記デジタル信号処理回路との間に上記第一のアナログ回路が位置するように配置され、
    上記第二のアナログ回路としての第一中間周波信号を第二中間周波信号に変換するミキサ回路と、上記第一のアナログ回路としての上記第二中間周波信号を一定レベルまで増幅するリミッタ増幅器と、さらに、上記基板上に形成され上記増幅された第二中間周波信号を検波する検波回路を含むことを特徴とする半導体集積回路。
  7. 第一のアナログ回路と上記第一のアナログ回路で処理する信号レベルよりもレベルの低い信号を処理する第二のアナログ回路とデジタル信号処理回路とを有し、
    上記第一のアナログ回路と上記第二のアナログ回路と上記デジタル信号処理回路とは同一基板上に集積され、かつ上記第二のアナログ回路と上記デジタル信号処理回路との間に上記第一のアナログ回路が位置するように配置され、
    上記第二のアナログ回路としての第一中間周波信号を第二中間周波信号に変換するミキサ回路と、上記第一のアナログ回路としての上記第二中間周波信号を一定レベルまで増幅するリミッタ増幅器と、さらに、上記基板上に形成され上記増幅された第二中間周波信号を検波する検波回路を含むことを特徴とする半導体集積回路。
  8. 請求項1乃至5記載のいずれかの半導体集積回路において、
    上記第二のアナログ回路としての第一中間周波信号を第二中間周波信号に変換するミキサ回路と、上記第一のアナログ回路としての上記第二中間周波信号を一定レベルまで増幅するリミッタ増幅器と、さらに、上記基板上に形成され上記増幅された第二中間周波信号を検波する検波回路を含むことを特徴とする半導体集積回路。
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