JP3932739B2 - 接触角計測装置、動的表面張力計測装置、接触角計測方法、および動的表面張力計測方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、液体の接触角および動的表面張力を計測する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
平板上に液滴を落としたとき、液滴が平板上を速やかに広がる場合もあれば、液滴が平板にはじかれてしまう場合もある。前者のように、液滴が速やかに広がる場合を「濡れが良い」といい、後者のように液滴がはじかれてしまう場合を「濡れが悪い」という。このような濡れの善し悪しは、液体と平板との組合せによって異なり、濡れ易さの程度を客観的に評価するための指標として「接触角」が使用される。接触角とは、平板上に液滴を静かに落として液膜を形成したときに、液膜端部の表面が平板と接触する角度をいう。例えば、液膜を横から見たときに、お椀のような半球形となっていれば、接触角はほぼ90度である。
【0003】
濡れが良ければ、接触角は小さくなる。すなわち、平板上の液膜は広がり、液膜を横から見た形はお椀を上から平らに潰したような形状となる。このとき液膜端部の表面は平板に浅い角度で接触するので、接触角は小さくなる。逆に、濡れが悪ければ接触角は大きくなる。すなわち、平板上の液膜が凝集して盛り上がり、横から見れば球に近い形状となる。このとき液膜端部の表面は平板に鈍角で接触するので、接触角は大きくなる。濡れのもっとも良い状態が接触角0度であり、全く濡れない場合が接触角180度となる。
【0004】
濡れを客観的に評価するために接触角を計測しなければならない分野は多い。例えば、塗装に関する分野では、塗料の塗り易さあるいは塗りムラの生じ難さを客観的に評価するために、塗料の接触角を計測する必要がある。また樹脂などを射出成形する分野では、成形型の隅々まで樹脂などが行き渡る程度、いわゆる湯まわりの良さを評価するために、加熱した樹脂の接触角を計測する場合がある。更には、例えば自動車の窓ガラスに雨滴が付着したり、あるいは部品表面に結露して着氷したりすることを防ぐために、表面を撥水処理する場合も多い。このような場合の撥水処理の評価にも接触角が計測されることが多い。
【0005】
接触角は、通常、図22に示すような方法によって計測されてきた。図22(a)は液滴法と呼ばれる方法である。液滴法では、平板上に注射針で試料液体の微小な液滴を形成し、側方から液滴を観察して接触角θを実測する。あるいは、液滴に形状を真球と仮定し、液滴の高さHと底面の直径Lとを測って、
θ=2tan -1(2H/L)
の関係を用いて算出する場合もある。
【0006】
図22(b)は垂直板法と呼ばれる方法である。垂直板法では、図示されているように、試料液体中に平板を垂直に浸して接触角を実測する。あるいは、試料液体が平板と接する濡れ線と液面との距離Hを測って、
sin θ=1−(ρgH2)/(2γ)
の関係を用いて算出してもよい。ここに、ρは試料液体の密度、gは重力加速度、γは液体の表面張力である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの計測方法には、少量の試料流体を用いて接触角を正確に測定することは困難であるという問題があった。すなわち、液滴法による計測では、小さな液滴を形成するだけの少量の試料液体があれば、接触角を計測することができるが、液滴が自重の影響で真球から歪んでしまうため、接触角の計測値には誤差が含まれてしまい、正確な接触角を計測することが困難であった。
【0008】
一方、垂直板法による計測では、試料液体中に平板を浸して、平板との境界部分で試料液面が盛り上がった僅かな盛り上がり量Hを計測する。液面の盛り上がり量Hは、液滴法で形成する液滴の大きさに比べて小さいので、自重による影響は液滴法による場合に比べて現れにくい。すなわち、垂直板法によれば液滴法を用いて計測するよりも接触角を正確に計測することができるが、平板を浸せるだけの多量の試料液体を用意できなければ、垂直板法によって接触角を計測することはできない。
【0009】
また、液滴が平板上を移動する場合や液膜が平板上を広がる場合などのように、液膜の端部が移動している状態での接触角、いわゆる動的接触角を計測しようとしても、前述の液滴法や垂直板法による計測では、少量の試料液体を用いて正確に計測することは困難であった。特に、液膜端部の移動速度を大きくすると、端部の形状が不安定になって、接触角を計測することは非常に困難であった。
【0010】
本発明の第1の目的は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、少量の試料液体を用いて接触角を正確に測定することが可能な技術を提供することを目的とする。
【0011】
また、液体の表面の性質を表すための、接触角とよく似た指標に「動的表面張力」と呼ばれる指標がある。激しく流動する液体の表面における現象を調べるためには、動的表面張力を計測することが有効であると考えられている。動的表面張力は、振動ジェット法と呼ばれる方法を用いて計測するのが一般的である。この方法では、ノズルから一定速度で液体を噴出させ、液体表面にできる定在波の波長と振幅とを精密に計測して、動的表面張力を求めている。
【0012】
しかし、振動ジェット法を用いて動的表面張力を計測するためには、ノズルから高速で噴出される液体の速度を一定に保つための装置や、液体噴流の表面に発生する定在波を精密に計測するための装置が必要であり、全体として大がかりな計測装置が必要となる。
【0013】
本発明の第2の目的は、従来技術における上述の問題を解決するためになされたものであり、液体の動的表面張力を簡便な方法を用いて計測する技術を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の第1の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の第1の接触角計測装置は、次の構成を採用した。すなわち、
試料液体の接触角を計測する接触角計測装置であって、
前記試料液体を間隙に挟持する一組の試料液体挟持面を有し、該間隙に挟持された試料液体を、前記試料液体挟持面の周縁に形成された平滑域で、該試料液体の表面張力によって保持する試料液体保持部と、
前記間隙に挟持された試料液体が前記平滑域に形成する界面の形状として、前記接触角を検出する接触角検出手段と
を備えることを要旨とする。
【0015】
また、上記の第1の接触角計測装置に対応する本発明の第1の接触角計測方法は、
試料液体の接触角を計測する接触角計測方法であって、
一組の試料液体挟持面の間隙に前記試料液体を挟持して、該挟持された試料液体を、前記試料液体挟持面の周縁に形成された平滑域で、該試料液体の表面張力によって保持し、
前記間隙に挟持された試料液体が前記平滑域に形成する界面の形状として、前記接触角を計測することを要旨とする。
【0016】
かかる第1の接触角計測装置および第1の接触角計測方法においては、試料液体挟持面の間隙で試料液体を挟持し、かつ周縁に形成された平滑域に界面を形成できる分量の試料液体があれば、該試料液体の接触角を計測することができる。すなわち、少量の試料液体を用いて接触角を計測することができるので好適である。
【0017】
また、かかる計測装置および計測方法によれば、次の理由により接触角を正確に計測することができる。すなわち、試料液体挟持面の間隙に形成される試料液体の界面は両側から表面張力を受けるので、界面の形状は自重による影響よりも表面張力の影響を強く受けている。このため、試料液体の自重による誤差の影響を比較的受けずに、正確な接触角を計測することが可能である。
【0018】
かかる第1の接触角計測装置においては、試料液体の界面が形成される平滑域の少なくとも一方が水平となるようにしても良い。水平な平滑面上に試料液体の界面を形成すれば、傾いた平滑面上に形成する場合よりも重力の影響を受けにくく、従って接触角を正確に計測することができるので好適である。
【0019】
かかる第1の接触角計測装置においては、試料液体保持部を一組の平行平板で構成してもよい。試料液体保持部を一組の平行平板で構成すれば、試料液体保持部の製造が容易となり、延いては接触角計測装置を容易に製造することができるので好適である。
【0020】
かかる第1の接触角計測装置においては、挟持される試料液体の位置決めを行うための液体位置決め域を、試料液体挟持面上に設けても良い。試料液体挟持面上の一部に、例えば僅かな凹み部や溝を設けたり、あるいは面粗度を荒くすると、かかる部分は他の部分に比べて濡れ易くなるので、間隙に挟持される試料液体は液体位置決め域を含んで周囲に広がるようにして界面を形成する。このため、接触角の計測の度に、試料液体の界面がほぼ同じ位置に形成されることになって、計測が容易となるので好適である。
【0021】
かかる第1の接触角計測装置においては、試料液体挟持面の間に形成した試料液体の界面を移動させ、移動中の界面の形状を検出して接触角を計測しても良い。こうすれば、界面位置が移動しているときの接触角、いわゆる動的接触角を計測することができるので好適である。
【0022】
更に、試料液体は試料液体挟持面に挟持されていて、試料液体の界面は狭い間隙を移動するので、試料液体に圧力を加えれば界面位置を高速で移動させることができる。また、界面位置を高速で移動させても、界面の両側には試料液体挟持面があるために、液体の粘性の作用で界面形状は比較的安定に保たれている。このため、高速で移動する界面の接触角を精度良く計測することが可能となるので好適である。
【0023】
前述した第1の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の第2の接触角計測装置は、次の構成を採用した。すなわち、
試料液体の接触角を計測する接触角計測装置であって、
前記試料液体を間隙に挟持する一組の試料液体挟持面を有し、該間隙に挟持された試料液体を、前記試料液体挟持面の周縁に形成された平滑域で、該試料液体の表面張力によって保持する試料液体保持部と、
前記試料液体の表面張力が前記試料液体の内部に発生させる界面圧力を検出する界面圧力検出手段と、
前記検出された界面圧力に基づいて、前記試料液体の接触角を決定する接触角決定手段と
を備えることを要旨とする。
【0024】
また、上記の第2の接触角計測装置に対応する本発明の第2の接触角計測方法は、
試料液体の接触角を計測する計測方法であって、
一組の試料液体挟持面の間隙に前記試料液体を挟持して、該挟持された試料液体を、前記試料液体挟持面の周縁に形成された平滑域で、該試料液体の表面張力によって保持し、
前記試料液体の表面張力が前記試料液体の内部に発生させる界面圧力を検出し、
前記検出された界面圧力に基づいて、前記試料液体の接触角を計測することを要旨とする。
【0025】
かかる第2の接触角計測装置および第2の接触角計測方法においては、試料液体挟持面の間隙で試料液体を挟持し、周縁に形成された平滑域に界面を形成する。試料液体の内部には、界面の表面張力と接触角に応じた界面圧力が発生する。ここで、界面に働く表面張力の値は液体に固有の物性値であって、既知の値である。従って、界面圧力を計測すれば、接触角を求めることができる。
【0026】
かかる方法を用いて接触角を計測すれば、液体挟持面の間隙に試料液体を挟持して、かつ平滑域に界面を形成できる分量の試料液体があれば、該試料液体の接触角を計測することができる。すなわち、少量の試料液体を用いて接触角を計測することができるので好適である。
【0027】
また、かかる方法では、界面圧力を計測して接触角を計測している。界面圧力は接触角と液体表面の表面張力によって決まり、重力の影響はほとんど現れない。このため、界面圧力に基づいて接触角を計測すれば、重力の影響をほとんど受けずに、接触角を正確に計測することができるので好適である。
【0028】
かかる第2の接触角計測装置においては、試料液体の表面張力と検出した界面圧力とに基づいて、試料液体の接触角を算出しても良い。すなわち、界面圧力と、試料液体の表面張力と、界面の接触角の値とは、所定の計算式によって関係付けられているので、この計算式に試料液体の表面張力と検出した界面圧力と代入することによって、接触角を算出することができる。こうすれば、より簡便に接触角を計測することができるので好適である。
【0029】
かかる第2の接触角計測装置においては、挟持される試料液体の位置決めを行うための液体位置決め域を、試料液体挟持面上に設けても良い。試料液体挟持面上の一部に、例えば僅かな凹み部や溝を設けたり、あるいは面粗度を荒くすると、かかる部分は他の部分に比べて濡れ易くなるので、間隙に挟持される試料液体は液体位置決め域を含んで周囲に広がるようにして界面を形成する。このため、接触角の計測の度に、試料液体の界面がほぼ同じ位置に形成されることになって、計測が容易となるので好適である。
【0030】
かかる第2の接触角計測装置においては、試料液体挟持面の間隙に挟持した試料液体の界面圧力によって該試料液体挟持面が受ける液体力を検出し、検出した液体力に基づき界面圧力を検出して、接触角を計測しても良い。例え界面圧力が小さくても試料液体挟持面に加わる液体力は大きな値となるので、こうすれば界面圧力を正確に計測することができ、延いては接触角を正確に計測することができるので好適である。
【0031】
かかる第2の接触角計測装置においては、試料液体挟持面の間隙に形成した試料液体の界面を該挟持面に沿って移動させ、界面の移動に伴い試料液体の内部に発生する界面圧力を検出してもよい。試料液体の界面を移動させて、界面の移動に伴う接触角を計測すれば、いわゆる動的接触角を計測することができるので好適である。
【0032】
更に、試料液体は試料液体挟持面に挟持されていて、試料液体の界面は狭い間隙を移動するので、試料液体に圧力を加えれば界面位置を高速で移動させることができる。また、界面位置を高速で移動させても、界面の両側には試料液体挟持面があるために、液体の粘性の作用で界面形状は比較的安定に保たれている。このため、高速で移動する界面の接触角を精度良く計測することが可能となるので好適である。
【0033】
かかる第2の接触角計測装置においては、一組の試料液体挟持面の少なくとも一方を、平滑域より凹に形成しておいても良い。
【0034】
試料液体の界面を試料液体挟持面に沿って移動させることに伴って、間隙に挟持された試料液体内には流動が発生する。試料液体に流動が発生すると、液体の粘性または慣性によって液体内部に圧力が発生し、界面圧力の計測値に誤差を発生させる場合がある。界面圧力の計測値に誤差が生じると、接触角を正確に計測することができなくなる。これに対して、試料液体挟持面の少なくとも一部を周縁の平滑域より凹に形成すれば、平滑域での間隙に比べて凹部の間隙が広くなる。一般に、液体の粘性や慣性の影響は、間隙が広くなるほど現れにくくなるので、こうすることによって、粘性や慣性による圧力の発生を抑制することができる。その結果、界面圧力を正確に測定することができ、延いては正確な接触角を計測することが可能となるので好適である。
【0035】
動的接触角を計測可能なかかる第1または第2の接触角計測装置においては、次のようにして界面の位置を移動させても良い。すなわち、試料液体挟持面の間隔を変更可能としておき、試料液体が挟持された状態で試料液体挟持面の間隔を変更する。例えば、試料液体挟持面の間隔を狭めれば界面位置は前進し、逆に間隔を広げれば界面位置は後退することになる。こうすれば、簡便な方法によって界面位置を移動させることができるので好適である。
【0036】
動的接触角の計測可能なかかる第1または第2の接触角計測装置においては、試料液体挟持面の間隔を所定の振幅で振動させることによって、試料液体の界面位置を前後に振動させるようにしても良い。試料液体の界面位置を前後に振動させれば、いわゆる前進接触角と後退接触角とを一度の計測で測定することができるので好適である。また、界面位置が前後に振動する条件では、界面位置が一方向に移動する条件とは若干異なった接触角となる場合がある。従って、界面位置を前後に振動させることによって、界面位置が一方向に移動する場合とは異なった接触角を計測することが可能となるので好適である。
【0037】
また、動的接触角の計測可能なかかる第1または第2の接触角計測装置においては、試料液体挟持面が振動する振幅と周波数とを変更可能としても良い。試料液体挟持面の振幅と周波数とを変更すれば、界面位置が前後に振動する振幅と周波数とを変更することができる。界面位置の振幅や周波数が異なると、前進接触角や後退接触角は異なった値となる場合がある。このことから、試料液体挟持面の振幅と周波数を適切に設定することにより、想定した振幅および周波数で界面位置が移動するような条件での接触角を計測することができるので好適である。
【0038】
また、動的接触角を計測可能なかかる第1または第2の接触角計測装置においては、次のようにして界面位置を移動させても良い。すなわち、試料液体挟持面の間隙に挟持された試料液体に新たな試料液体を供給したり、あるいは間隙から試料液体を回収することによって、試料液体の界面位置を前進させ、あるいは後退させても良い。かかる方法を用いて、試料液体の界面位置を移動させれば、平滑域での間隔を一定に保ったまま界面位置を移動させることができる。界面圧力の値は平滑域における間隔の変動に伴って変化するので、平滑域の間隔が変動する場合よりも、平滑域の間隔一定の場合の方が、接触角の計測が容易となって好ましい。
【0039】
更に、動的接触角を計測可能なかかる第1または第2の接触角計測装置においては、試料液体挟持面への試料液体の供給と回収とを交互に行うことによって、界面位置の前進と後退とを交互に行うようにしても良い。かかる方法を用いれば、いわゆる前進接触角と後退接触角とを一度の計測で測定することができるので好適である。
【0040】
かかる動的接触角を計測可能な第1あるいは第2の接触角計測装置においては、次のようにして界面位置を移動させても良い。すなわち、試料液体挟持面に試料液体の液体溜まりを設けておき、該液体溜まりの容積を可変とする。こうして液体溜まりの容積を変更すれば、それに伴って界面位置を移動させることができる。かかる方法によっても、界面が形成される平滑域での間隔を変更することなく界面位置を移動させることができるので好適である。
【0041】
前述した第2の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の動的表面張力計測装置は、次の構成を採用した。すなわち、
試料液体の動的表面張力を計測する動的表面張力計測装置であって、
前記試料液体を間隙に挟持する一組の試料液体挟持面を有し、該間隙に挟持された試料液体を、前記試料液体挟持面の周縁に形成された平滑域で、該試料液体の表面張力によって保持する試料液体保持部と、
前記平滑域に形成された試料液体の界面を、該平滑面に沿って移動させる界面位置移動手段と、
前記界面の移動に伴って、前記試料液体の表面張力に起因して該試料液体の内部に発生する界面圧力を検出する界面圧力検出手段と、
前記試料液体の移動に伴う界面の形状として、前記接触角を検出する接触角検出手段と、
前記検出された界面圧力と前記検出された接触角とに基づいて、前記試料液体の動的表面張力を決定する動的表面張力決定手段と
を備えることを要旨とする。
【0042】
上記の動的表面張力計測装置に対応する本発明の動的表面張力の計測方法は、次の構成を採用した。すなわち、
試料液体の動的表面張力の計測方法であって、
一組の試料液体挟持面の間隙に前記試料液体を挟持して、該挟持された試料液体を、前記試料液体挟持面の周縁に形成された平滑域で、該試料液体の表面張力によって保持し、
前記平滑域に形成された試料液体の界面を、該平滑面に沿って移動させ、
前記界面の移動に伴って、前記試料液体の表面張力に起因して会試料液体の内部に発生する界面圧力を検出し、
前記試料液体の移動に伴う界面の形状として、前記接触角を検出し、
前記検出された界面圧力と前記検出された接触角とに基づいて、前記試料液体の動的表面張力を計測することを要旨とする。
【0043】
かかる本発明の動的表面張力計測装置および動的表面張力の計測方法においては、間隙の平滑域に形成した液体界面を移動させ、その時の界面形状と、界面圧力とを検出する。動的表面張力と接触角と界面圧力とは所定の関係が成り立つので、界面形状から求めた接触角とその時の界面圧力とを知れば、所定の関係から動的表面張力を求めることができる。
【0044】
かかる方法によれば、簡便な計測装置を用いて動的表面張力を計測することができる。すなわち、前述した第2の接触角計測装置に対して、第1の接触角計測装置で用いた界面形状から接触角を検出する手段を追加することによって、動的表面張力を計測することが可能となる。
【0045】
かかる動的表面張力計測装置においては、試料液体を挟持する平滑域の少なくとも一方の平滑域を水平に形成しても良い。水平な平滑面上に界面を形成すれば、傾いた平滑面上に界面を形成する場合よりも重力の影響を受けにくく、従って、接触角を正確に求めることができる。接触角を正確に求めることができれば、動的表面張力の計測精度が向上するので好適である。
【0046】
かかる動的表面張力計測装置においては、挟持される試料液体の位置決めを行うための液体位置決め域を、試料液体挟持面上に設けても良い。試料液体挟持面上の一部に、例えば僅かな凹み部や溝を設けたり、あるいは面粗度を荒くすると、かかる部分は他の部分に比べて濡れ易くなるので、間隙に挟持される試料液体は液体位置決め域を含んで周囲に広がるようにして界面を形成する。このため、接触角計測の度に、試料液体の界面がほぼ同じ位置に形成されることになって、計測が容易となるので好適である。
【0047】
かかる動的表面張力計測装置において、接触角の計測精度を向上させることによって、動的表面張力の計測精度を向上させることができる。従って、第2の接触角計測装置で計測精度を向上させるための各種方法を適用すれば、動的表面張力の計測精度を向上させることができるので好適である。
【0048】
【発明の実施の形態】
本発明の作用・効果をより明確に説明するために、本発明の実施の形態を、次のような順序に従って以下に説明する。
A.第1実施例:
A−1.装置構成:
A−2.接触角計測処理:
B.第2実施例:
B−1.装置構成:
B−2.接触角計測処理:
C.第3実施例:
C−1.装置構成:
C−2.接触角計測処理:
C−3.第3実施例の効果:
C−4.第1の変形例:
C−5.第2の変形例:
D.動的表面張力計測装置:
D−1.装置構成:
D−2.動的表面張力計測処理:
【0049】
A.第1実施例:
A−1.装置構成:
図1は、第1実施例の接触角計測装置100の構成を示す説明図である。図示するように、第1実施例の接触角計測装置100は、大きくは装置本体10と撮像機器20とから構成されている。
【0050】
装置本体10は、略コの字型をした筐体30と、筐体内に設けられて試料液体が挟持される一組の液体挟持平板40,42と、それぞれの液体挟持平板40,42を支える支柱32,34と、液体挟持平板間の間隙hを調整するギャップ調整器36とから構成されている。液体挟持平板40,42は、平行平板を水平に向かい合わせて構成されている。また、各液体挟持平板40,42はそれぞれの支柱32,34から着脱可能となっていて、平板の材質や平面の粗度といった条件を変更する必要があるときは、液体挟持平板40,42を付け替えることによって変更する。ギャップ調整器36の内部には精密なネジ構造が設けられていて、調整器の外周を回すことによって液体挟持平板40,42の間隙(ギャップ)hを、約50μ〜約10mmの範囲で調整することが可能となっている。液体挟持平板42の上に注射器等を用いて試料液体の液滴を形成し、液体挟持平板42で上方から該液滴を挟持すると、試料液体の表面張力の作用により、液体挟持平板40,42の間隙に試料液体の界面が形成される。尚、本実施例では、円形の液体挟持平板を使用したが、液体挟持平板の形状は円形に限らず、例えば正方形や長方形などの形状であっても構わない。
【0051】
撮像機器20は、液体挟持平板40,42の間隙に形成された試料液体の界面形状を側方から拡大して観察する。本実施例では、撮像機器20として、マクロレンズを装着したビデオカメラを使用している。ビデオカメラで取り込んだ画像を図示しないコンピュータのCRT画面上に映し出し、良好な画像のみを画像データとしてコンピュータに記憶する。こうして撮影した画像を後述の方法を用いて解析することによって、試料液体の接触角を計測している。尚、撮像機器20は、液体挟持平板40,42の間隙に形成される界面形状を観察可能な機器であれば使用することができる。例えば、拡大鏡を用いて、目視によって界面形状を観察するものであっても構わない。
【0052】
A−2.接触角計測処理:
図2は、第1実施例の接触角計測装置を用いて試料液体の接触角を計測する手順の流れを示したフローチャートである。以下、図2のフローチャートに従って接触角計測処理について説明する。
【0053】
接触角の計測を開始すると、先ず初めに使用する液体挟持平板を選択して支柱に装着する(ステップS100)。すなわち、接触角は試料液体の種類と、液体挟持平板の材質あるいは平板の粗度等によって異なった値となるので、接触角を計測しようとする条件に合わせて液体挟持平板を選択するのである。選択した液体挟持平板40,42は、支柱32,34に装着する。尚、各種の液体挟持平板は、有機溶媒などで表面の汚れを拭いてからデシケータ中で乾燥させるといった方法を用いて、表面をできるだけ清浄に保っておくことが望ましい。
【0054】
選択した液体挟持平板40,42を支柱に装着すると、次のようにして液体挟持平板40,42の間隙に試料液体を挟持する(ステップS102)。先ず、試験者が注射器を用いて、液体挟持平板42の上に試料液体の液滴を形成する。液体挟持平板42の面上のほぼ中央には、図3(a)に示すような、同心円上の浅い溝が設けられており、試験者は同心円のほぼ中央に試料液体の液滴を形成する。このとき、同心円に対する液滴の大きさを目安とすれば、計測の度に挟持する試料液体の分量をほぼ同じ分量とすることができる。尚、本実施例では、液体挟持平板42に同心円状の浅い溝を設けているが、これに限られず例えば図3(b)に示すような浅い凹部を設けたり、あるいは図3(c)のように面粗度の荒い部分を設けるようにしても良い。
【0055】
液体挟持平板42の面上に試料液体の液滴を形成したら、ギャップ調整器36の外周を回して液体挟持平板40,42間のギャップを狭めて、液体挟持平板40,42間で試料液体を挟持する。液体挟持平板42の浅い溝が設けられた部分は他の部分より濡れ易くなっているので、液体挟持平板40,42で液滴を潰していくと液滴は溝の部分に優先的に広がっていく。このため、液体挟持平板42の面上に形成される液滴の位置が、同心円の中心から若干ずれていても、液滴を潰す過程で液膜の中心と同心円の中心とは一致することになる。この結果、試料液体の界面位置は、常にほぼ同じ位置に形成されることになる。
【0056】
こうして液体挟持平板間に試料液体を挟持したら、平板間のギャップhを設定する(ステップS104)。ギャップの設定は、ギャップ調整器36を用いて行う。一般に、ギャップの設定値が大きくなるほど界面形状の観察は容易となる。しかし、ギャップが大きくなれば、表面張力に対して試料液体の自重の影響が相対的に大きくなるので、界面形状が歪み易くなって計測誤差が大きくなる傾向がある。そこで、試料液体の表面張力に応じた適切なギャップの設定値が、予め実験的、経験的に求められており、この設定値となるようにギャップを設定する。
【0057】
尚、本実施例では、試験者が注射器を用いて、手操作によって試料液体を挟持するものとして説明したが、もちろん、後述する実施例の様に、装置本体10に試験液体の供給機を装着しておき、供給機を用いて試料液体を挟持しても構わない。あるいは、液体挟持平板40,42の間隙に側方から注射器で試料液体を供給して平板間に試料液体を挟持するようにしても構わない。
【0058】
次に、液体挟持平板の間に形成された試料液体の界面形状を、側方から撮像機器20を用いて撮影する(ステップS106)。撮影した界面形状は画像データとして、一旦コンピュータに蓄えられる。こうして界面形状を画像データとして一旦蓄えているのは、次のような接触角を求めるための解析を行っている間に、液体が蒸発して接触角が変化してしまうことのないようにするためである。
【0059】
このように一旦、画像データをコンピュータに蓄えておき、その後、界面形状の画像を解析することによって接触角を決定する(ステップS108)。
【0060】
図4は、界面形状の画像から接触角を決定する様子を示す説明図である。図4(a),(b)はいずれも接触角を直接計測する場合を示し、図4(a)は凹形状の界面が形成されている場合を、図4(b)は凸形状の界面が形成されている場合を示している。このように、図4(a),(b)の方法を用いて計測することにより、液体の界面が平板に接する1点での真の接触角を計測することができれば、後述するように、原理的には試料液体の自重の影響を受けない正確な接触角を計測することができる。しかし、実際には、液体界面が平板に接する1点での真の接触角を計測しようとしても、接触点の近傍の影響をどうしても含んでしまうので、結局、計測した接触角の値には液体の自重の影響が含まれてしまう。また、図4(a),(b)のように、接触角を直接計測する方法は計測に熟練を要するため、図4(c),(d)に示すように、ギャップhと界面の凹凸量δとを計測し、界面の断面形状が円形であると仮定して導いた
θ=2tan -1(2δ/h)
なる計算式を用いて、hとδの値から接触角θを算出しても良い。あるいは、いろいろなδとhとの組合せについて、上式から接触角の値を予め算出して数表にまとめておき、数表を引くことによって接触角を求めても良い。このような方法は接触角の計測に特別な熟練を要さず、安定した計測を行うことができる。
【0061】
図5(a)は、液体の界面が固体平板に接触する点で、それぞれの表面張力が釣り合っている様子を説明するための説明図である。図5(a)中の、σL は液体の表面張力を示し、σs は固体表面の表面張力を示し、σsLは液体と固体との界面に働く表面張力を示している。ここで、液体の表面張力とは、液体の表面に切り目を入れたとして、切り目を広げる方向に働く単位長さ当たりの張力をいう。液体の表面張力と同様に、固体の表面張力σs や、液体と固体との界面に働く表面張力σsLを考えることもできる。これを説明するために、先ず、表面張力と表面エネルギとが同質であることを説明する。
【0062】
表面張力σは単位長さ(ここでは1mmとする)の切線を広げようとする力である。表面張力σによって長さ1mmの切線が1mmだけ横に広がったとすると、面積1ミリメートル平方の切り口ができる。すなわち、1ミリメートル平方の切り口を形成するためにσの仕事が必要となる。このように、単位面積の表面を形成するためのエネルギが表面エネルギと呼ばれるものである。表面エネルギと表面張力とは、互いに同質であって、単位を変更するだけで相互に読み替えることができる。
【0063】
また、表面エネルギを、次のように解釈することもできる。図5(b)に示すように、物体(液体でも固体でも構わない)を2つに切断して、AとBとの間に新たな表面を作る場合を考える。AとBとは、互いに分子間力で引き合っているから、AをBから無限遠に遠ざけるためにはエネルギが必要となる。このエネルギは、AとBとの間の新たな表面を形成するためのエネルギであり、これを表面エネルギと考えることもできる。このような表面エネルギは、液体だけでなく固体の表面についても考えることができる。更には、液体と固体との界面の表面エネルギに拡張することもできる。すなわち、固体を2つに分割し、一方を無限遠に運んで新たな固体表面を形成し、その後、無限遠から液体を固体表面に接触させる場合を考える。固体の一部を無限遠に運ぶために要する仕事と、無限遠から液体を近づけることによって回収する仕事との収支を考えれば、その収支の値が液体と固体との界面の表面エネルギとなる。前述したように、表面エネルギと表面張力とは互いに同質であるから、固体の表面エネルギおよび液体と固体との界面の表面エネルギを想定することができれば、固体の表面張力σs および液体と固体との界面の表面張力σsLを想定することができる。
【0064】
図5(a)は、このような各種の表面張力についての力の釣り合いを示している。水平方向への力の釣り合いから、
σs = σsL + σL ・ cosθ …(1)
が得られる。式(1)から明らかなように、接触角は液体,固体,液体−固体界面それぞれの表面張力、あるいは表面エネルギによって決まり、重力の影響は受けないことが分かる。しかし、式(1)が成り立つのは液体と固体とが接触する接触点においてであり、接触点から遠ざかるに従って徐々に重力の影響が現れてくる。
【0065】
これに対して本実施例のように、平板の間に液体の界面を形成すれば、平板から遠ざかるとしてもギャップの半分より遠くなることはない。従って、第1の実施例の接触角計測装置100を用いて接触角を計測すれば、重量の影響をあまり受けずに、正確な接触角を計測することができる。
【0066】
また、第1実施例の接触角計測装置100を用いて接触角を計測する場合、液体挟持平板40,42の間に形成される界面形状を、側方から直接観察することができる。従って、界面形状を正確に測定することができるので、正確に接触角を計測することが可能である。
【0067】
更に、液体挟持平板40,42の間に挟持するだけの試料液体があれば、接触角を計測することができるので、少量の試料液体によって接触角を計測することができる。
【0068】
B.第2実施例:
上述した第1実施例の接触角計測装置100では、液体挟持平板40,42の間に形成された液体界面の形状を検出することによって接触角を計測したが、界面の形状を検出する代わりに、液体に生じる圧力を検出して接触角を計測することも可能である。かかる第2実施例の接触角計測装置について、以下に説明する。
【0069】
B−1.装置構成:
図6は、第2実施例の接触角計測装置110の構成を示す説明図である。図示するように、第2実施例の接触角計測装置110は、第1実施例の接触角計測装置100とほぼ同様の構成となっているが、撮像機器20の代わりに、荷重検出器44あるいは圧力検出器46が設けられているところが大きく異なっている。尚、図6に示した第2実施例の接触角計測装置では、説明の都合上、荷重検出器44と圧力検出器46とを備えているものとしているが、実際には、いずれか一方の検出器を備えていれば良い。
【0070】
図示するように、荷重検出器44は、液体挟持平板42の支柱34とギャップ調整器36との間に設けられていて、荷重検出器44の出力は表示器45に入力されている。本実施例の荷重検出器44は、圧電効果を利用して荷重を電圧に変換する方式の検出器を使用している。もちろん、周知な他の方式の検出器を使用することも可能である。
【0071】
圧力検出器46は、液体挟持平板40に取り付けられている。圧力検出器46の検出面は、液体挟持平板40,42の間に挟持された試料液体に接しており、試料液体の圧力を直接測定することができる。圧力検出器46の出力は表示器47に入力されている。本実施例では、圧力検出器46も圧電効果を利用して、圧力を電圧に変換して出力する方式の検出器を使用している。もちろん、周知な他の方式の検出器を使用しても構わない。尚、図6では、荷重検出器44あるいは圧力検出器46の出力を表示器45,47に入力して表示値を読み取ることとしているが、例えばコンピュータ等の計測器に入力して計測値を記録しておくようにしても構わない。
【0072】
第2実施例の接触角計測装置110の他の部分の構成については、前述した第1実施例の接触角計測装置100の構成と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0073】
B−2.接触角計測処理:
図7は、第2実施例の接触角計測装置を用いて試料液体の接触角を計測する手順の流れを示したフローチャートである。図2を用いて前述した第1実施例のフローチャートとほぼ同様であるが、図7のフローチャートでは界面形状の代わりに界面圧力を計測している部分が大きく異なっている。以下、図7のフローチャートに従い、第2実施例の接触角計測処理について、第1実施例と異なる部分を中心に説明する。
【0074】
第2実施例の接触角計測装置による計測においても、先ず初めに、計測に使用する液体挟持平板を選択して支柱に装着する(ステップS200)。すなわち、計測しようとする条件に合わせて使用する液体挟持平板を選択し、支柱32,34に装着する。
【0075】
選択した液体挟持平板40,42を支柱に装着すると、液体挟持平板40,42の間隙に試料液体を挟持する(ステップS202)。すなわち、初めに液体挟持平板42の面上に試料液体の液滴を形成しておき、次いで液体挟持平板40,42のギャップを狭めて平板間に試料液体の液膜を挟持する。
【0076】
次に、支柱に装着した液体挟持平板40,42間のギャップhを設定する(ステップS204)。第2実施例でも、第1実施例と同様に、試験者が注射器を用いて、手操作によって試料液体を供給している。もちろん、後述する実施例の様に、装置本体10に試験液体の供給機を装着しておき、供給機から試料液体を供給して挟持しても構わない。あるいは、液体挟持平板40,42の間隙に側方から注射器で試料液体の供給して平板間に試料液体を挟持するようにしても構わない。
【0077】
こうして、液体挟持平板40,42の間に試料液体を挟持すると、平板間の界面に働く液体の表面張力の作用によって、挟持した液体の内部に圧力(本明細書では、この圧力を界面圧力と呼ぶ)が発生する。ここで、界面圧力が発生するメカニズムについて説明する。
【0078】
図8は、液体挟持平板40,42の間に形成された界面の表面張力によって、液体内部に界面圧力が発生する理由を説明する説明図である。液体界面の表面張力をσL 、界面の接触角をθ、液体挟持平板間のギャップをh、挟持された液体の内部と外部との圧力差すなわち界面圧力をdPとして、水平方向への力の釣り合いを考えると、
dP・h + 2σL ・ cosθ = 0
これより、液体挟持平板間に挟持された液体には、液体の表面張力σL に起因して、
dP = (−2σL ・ cosθ)/h …(2)
なる界面圧力dPが発生する。
【0079】
また、挟持した液体によって、液体挟持平板40,42が受ける荷重Fは次の式(3)によって与えられる。
ここで、aは液体挟持平板間に円板状に挟持された液体の半径である(図8参照)。式(3)の第1項は、界面圧力dPによって液体挟持平板が受ける力であり、第2項は界面に働く表面張力の垂直方向成分による力である。また、第2項の符号が負となっているのは、液体挟持平板には、界面に働く表面張力の反作用としての力が作用するからである。
【0080】
図7に示したフローチャートのステップS206においては、上述のメカニズムによって生じる界面圧力dP、あるいは液体力による荷重Fを測定するのである。より具体的には、図6に示すように、荷重検出器44は表示器45に接続されており、圧力検出器46は表示器47に接続されているので、表示器45,47の表示値を読み取ることによって、界面圧力dPあるいは液体力による荷重Fを求めるのである。
【0081】
こうして計測した界面圧力dPあるいは液体力による荷重Fに基づいて、接触角を算出する(ステップS208)。すなわち、圧力検出器46によって界面圧力を検出した場合は、前述の式(2)中のギャップhは既知の値であり、また表面張力σL も試料液体に固有の物性値であって既知の値と考えることができるので、式(2)から接触角θを算出することができる。
【0082】
あるいは、荷重検出器44によって液体力による荷重Fを検出した場合は、前述の式(3)中のギャップh、表面張力σL は既知の値であり、半径aは計測可能であるから、式(3)から接触角θを算出することができる。
【0083】
以上に説明したように、第2実施例の接触角計測装置においては、液体挟持平板の間に試料液体を挟持して、試料液体内に生じる界面圧力を検出することによって接触角を計測する。そのため、次の理由により、接触角を正確に計測することが可能となっている。すなわち、式(2)の導出から明らかなように、式(2)は、界面が平板に接する点での表面張力σL と界面圧力dPとの力の釣り合いに基づいて導かれており、式(2)に現れる接触角θは、式(1)に示されるような、重力とは無関係に決まる真の接触角θである。従って、界面圧力に基づいて接触角θを計測すれば、液体の自重の影響をほとんど受けずに正確な接触角θを計測することができる。
【0084】
また、液体挟持平板が試料液体から受ける液体力を検出して接触角を計測する場合も、前述したように円板上の液体の半径aを実測すれば、液体の自重の影響をほとんど受けない正確な接触角を計測することが可能である。更に、界面圧力dPを与える式(2)と、液体力による荷重Fを与える式(3)とを比較すれば明らかなように、たとえ荷重Fの値が小さくても界面圧力dPの値は大きな値となる。このため、液体力による荷重Fに基づいて接触角を計測すれば、必ずしも精度の高い検出器を使用しなくても、精度良く接触角を計測することが可能となる。
【0085】
更に、第2実施例の接触角計測装置では、液体挟持平板間のギャップhを小さな値に設定すれば、それだけ接触角の計測精度を向上させることができるという利点もある。すなわち、界面圧力dPあるいは液体力による荷重Fを求めるための前述の式(2),式(3)には、ともにギャップhが分母に入っている。このことから明らかなように、液体挟持平板40,42の間のギャップhを狭く設定すれば、検出される界面圧力dPあるいは荷重Fの値が大きくなって、検出精度を向上させることができる。延いては、接触角の計測精度も向上させることができる。
【0086】
もちろん、第2の実施例においても第1の実施例と同様に、液体挟持平板40,42の間に挟持するだけの試料液体があれば、接触角を計測することができるので、少量の試料液体によって接触角を計測することができる。
【0087】
C.第3実施例:
以上に説明した第1実施例および第2実施例の接触角計測装置においては、液体挟持平板の間隙に形成した界面位置が、接触角の計測中に移動することはなかった。しかし、界面位置を移動させながら接触角を計測すれば、いわゆる動的接触角を計測することが可能である。以下に説明する第3実施例の接触角計測装置においては、界面位置を移動させることによって動的接触角を計測することができる。
【0088】
C−1.装置構成:
図9は、第3実施例の接触角計測装置120の全体構成を示す説明図である。図示するように、第3実施例の接触角計測装置120は、前述の第2実施例の接触角計測装置110とほぼ同様な構成となっている。但し、第3実施例の接触角計測装置においては、液体挟持平板40が支柱32を介してサーボ機構50に接続されており、サーボ機構50によってギャップhの値が変更可能となっている点が大きく異なっている。サーボ機構50にはコンピュータ60が接続されている。サーボ機構50はコンピュータ60と互いにデータのやり取りを行いながら、コンピュータ60の制御の下で所定の動作を行う。これにより、液体挟持平板の間隙に形成される界面位置を移動させることができる。
【0089】
コンピュータ60は、各種演算処理を行うCPU、データを一時的に記憶しておくRAM、必要なプログラムやデータを記憶しておくROM、ハードディスク、サーボ機構50を制御するためのI/Oボード、荷重検出器44あるいは圧力検出器46の出力を取り込むためのI/Fボードなどを備えている。ハードディスクには、サーボ機構50を制御しながら、荷重検出器44あるいは圧力検出器46の出力を取り込んで、動的接触角を計測するための各種プログラムなどが記憶されている。
【0090】
尚、図9に示す第3実施例の接触角計測装置は、荷重検出器44と圧力検出器46とを備えているが、これは図6の場合と同様に説明の都合によるものであり、いずれか一方の検出器を備えておけばよい。
【0091】
第3実施例の接触角計測装置120の他の部分の構成については、前述した第2実施例の接触角計測装置110の構成と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0092】
C−2.接触角計測処理:
図10は、第3実施例の接触角計測装置を用いて試料液体の接触角を計測する手順の流れを示したフローチャートである。以下、図10のフローチャートに従い、第3実施例の接触角計測処理について説明する。
【0093】
第3実施例の接触角計測装置による計測においても、先ず初めに、計測に使用する液体挟持平板を選択して支柱に装着し(ステップS300)、次に、液体挟持平板40,42の間隙に試料液体を挟持する(ステップS302)。すなわち、液体挟持平板42の面上に試料液体の液滴を形成して、液体挟持平板40,42のギャップを狭めて平板間に液膜を挟持する。尚、第3実施例でも、第1実施例あるいは第2実施例と同様に、試験者が注射器を用いて手操作で試料液体の液滴を形成しているが、もちろん、後述する実施例のように、装置本体10に試料液体の供給機を装着しておき、供給機から試料液体を供給して液膜を挟持するようにしても構わない。
【0094】
試料液体を液体挟持平板40,42の間隙に挟持したら、次は液体挟持平板の駆動条件を設定する(ステップS304)。すなわち、コンピュータ60を立ち上げて、接触角計測用のプログラムを起動し、コンピュータ60の画面上から所定の駆動条件を設定する。第3実施例においては、液体挟持平板の駆動条件として大きく5つの駆動モードが用意されており、それぞれのモードに応じて駆動条件を設定する。
【0095】
図11は、第3実施例の接触角計測装置で設定可能な各種の駆動モードを示す説明図である。図11(a)は、時間とともに液体挟持平板間のギャップhが狭まっていく駆動モードである。この駆動モードでは、ギャップhが狭まるに従ってギャップ間に形成された界面位置が前進する。図11(b)は時間とともに液体挟持平板間のギャップhが広くなっていく駆動モードである。この駆動モードでは、ギャップhが広くなるに従ってギャップ間の界面位置が後退する。図11(a),(b)に示したいずれかの駆動モードを選択した場合は、駆動開始時のギャップの値hs と、駆動終了時のギャップの値he と、駆動時間td の3つの駆動条件を設定する。
【0096】
図11(c)は、液体挟持平板間のギャップhが振動する駆動モードである。この駆動モードでは、ギャップhが狭まくなっていくときには界面位置が前進し、ギャップhが広くなっていくときには界面位置が後退するので、ギャップhの振動とともに界面位置も前後に振動する。図11(c)の駆動モードを選択した場合は、ギャップhが振動する周波数Aωと、ギャップの振幅Ah と、平均ギャップho と、ギャップhの駆動時間td の4つの駆動条件を設定する。
【0097】
図11(d)は、ギャップhが振動しながら次第に狭くなっていく駆動モードである。この駆動モードでは、界面位置が前後に振動しながら、次第に前進していく。図11(e)は、ギャップhが振動しながら次第に広くなっていく駆動モードである。この駆動モードでは、界面位置が前後に振動しながら、次第に後退していく。図11(d),(e)に示したいずれかの駆動モードを選択した場合は、駆動開始時のギャップの値hs と、駆動終了時のギャップの値he と、駆動時間td と、ギャップhの振動周波数Aωと、ギャップの振幅Ah の5つの駆動条件を設定する。
【0098】
液体挟持平板40,42の間に試料液体を挟持すると、ステップS304で設定しておいた駆動条件に従って液体挟持平板40を駆動することにより、ギャップhの間隔を変動させる。第3実施例の接触角計測装置では、液体挟持平板40を駆動するサーボ機構50はコンピュータ60に制御されており、具体的には、コンピュータの画面上でサーボ機構の制御プログラムを起動させることによって、ギャップhの間隔を変動させる。
【0099】
こうして、ステップS304で設定した駆動条件に従ってギャップhの間隔を変動させながら、液体挟持平板に挟持した試料液体の界面圧力dPを計測する(ステップS308)。前述の式(2)に示すように、界面圧力dPは、界面の接触角θおよびギャップhの関数として与えられており、これらの変動に伴って界面圧力も変動する。ステップS302では、この変動する界面圧力を計測するのである。こうして得られた界面圧力の計測例を、図12に示す。図11(a)ないし(e)のそれぞれの駆動モードに対応して、図12(a)ないし(e)に示すような界面圧力の波形が計測される。尚、第3実施例では界面圧力を計測するものとして説明するが、第2実施例の場合と同様に、液体力によって液体挟持平板が受ける荷重Fを計測しても構わないのはもちろんである。
【0100】
以上のようにして計測した界面圧力の計測値を解析することにより、次のようにして接触角を決定することができる(ステップS310)。先ず、液体挟持平板40を図11(a)に示す駆動モードで駆動した場合は、ギャップhが小さくなっていくに従って界面位置は前進していく。この時、界面の接触角は前進接触角θa となっている。従って、式(2)から駆動終了時の界面圧力dPe は、
dPe =(− cosθa )・σL /he
で与えられる。ここで、dPe,σL ,he はそれぞれ既知であるから、前進接触角θa を算出することができる。図11(b)に示す駆動モードの場合は、ギャップhが大きくなっていくに従って界面位置は後退していくので、界面の接触角は後退接触角θr となっている。従って、駆動終了時の界面圧力dPe も
dPe =(− cosθr )・σL /he
で与えられ、これを解いて後退接触角θr を求めることができる。
【0101】
次に、図11(c)に示すように、液体挟持平板40を振動させた場合は、次のようにして前進接触角θa および後退接触角θr を求めることができる。図13は、図11(c)の駆動モードで駆動したときに計測される界面圧力の概要を示した説明図である。図13(a)はギャップhの値を示し、図13(b)は界面圧力の計測値を示している。また図14には、ギャップが変動することに伴って界面位置が移動する様子を示している。界面圧力を解析して接触角を求める方法を説明するための準備として、図13(a)に示すギャップhの変動に伴って図13(b)に示すように界面圧力が変動する理由を以下に説明する。
【0102】
先ず初めにギャップhが初期位置ho から広がり始めると(図13(a)中の時点A)、ギャップ間に形成された界面は、図14(a)に示すように徐々に後退し始める。この時の界面の接触角は後退接触角θr となっている。そして、ギャップhが最大ギャップ値(図13(a)中の時点B)に達すると界面の後退は停止する。
【0103】
ギャップhが広がり初めてから最大ギャップ値に達する(時点B)までの期間は、図13(b)に示すように、界面圧力は徐々に増加していく。これは次の理由による。前述の式(2)に示すように、界面圧力dPは(− cosθ)に比例し、ギャップhに反比例する。ここで、図14(a)に示したように界面は、後退接触角θr を保ったまま後退していくから、ギャップhが徐々に増加するに従って界面圧力の絶対値は小さくなっていく。また、図14(a)に示すように、ここでは後退接触角θr は0度<θr <90度となる場合を想定しているから、界面圧力の値は負となっている。すなわち、ギャップhが広がり初めてから最大ギャップ値に達するまでの期間は、界面圧力は負の値をとり、かつ絶対値は徐々に小さくなっていくので、界面圧力は図13(b)に示したように徐々に増加していくのである。
【0104】
時点Bでは、ギャップhは拡大から縮小に転じ、これに伴って界面形状は次のように変化する。すなわち時点Bでは、図14(b)に示すように、界面の接触角は後退接触角θr となっているが、ギャップhが縮小するに従って徐々に前進接触角θa に変化していく。但し、このように界面形状が変形している間は、界面位置は移動しない。時点Cに達すると、界面の接触角が前進接触角θa となって、界面形状の変形が完了する。
【0105】
時点Bから時点Cの期間では、界面の接触角が後退接触角θr から前進接触角θa に切り替わっていること、およびギャップhが若干小さくなっていることにに対応して、界面圧力がdPb1からdPf2に変化する(図13(b)参照)。ここで、dPb1の値は式(2)から次式で与えられる。
dPb1 = (− cosθr )・σL /(ho −Ah ) …(4)
【0106】
時点Cの状態から、ギャップhが更に縮小すると、ギャップhの縮小に伴って、前進接触角θa を保ったまま界面位置が次第に前進していき、時点Dで最小ギャップ値に達すると前進を停止する。図14(c)は、界面が前進接触角θa を保ったまま前進していく様子を示している。
【0107】
時点Cから時点Dの期間では、図13(b)に示すように、界面圧力は徐々に増加する。この理由は、界面圧力dPは前述の式(2)によって与えられ、更に時点Cから時点Dの期間では、前進接触角θa (ここでは、90度<θa <180度の場合を想定している。)を保ったまま、ギャップhが徐々に小さくなっていくからである。
【0108】
時点Dに達すると、ギャップhは今度は縮小から拡大に転じる。このように、ギャップhが縮小から拡大に転じることに伴って、界面の接触角は前進接触角θa から後退接触角θr に徐々に変化する。時点Eに達すると界面の接触角は後退接触角θr に切り替わる。時点Dから時点Eの期間では、このように接触角が前進接触角θa から後退接触角θr に変化すること、およびギャップhが若干変化することにより、図13(b)に示すように界面圧力はdPf1からdPb2に変化する。dPf1の値は、式(2)から次式で与えられる。
dPf1 = (− cosθa )・σL /(ho −Ah ) …(5)
【0109】
時点Eの状態から、ギャップhが更に拡大すると、ギャップhの拡大に伴って、後退接触角θr を保ったまま界面位置が次第に後退していき、時点Fで最大ギャップ値に達すると後退を停止する。図14(e)は、界面が後退接触角θr を保ったまま後退していく様子を示している。
【0110】
時点Eから時点Fの期間では、界面の接触角は後退接触角θr に保たれる一方で、ギャップhは徐々に拡大していく。これに対応して、界面圧力は図13(b)に示すように徐々に増加していく。時点Fに達すると、界面は後退を停止する。図14(f)は時点Fでの界面の様子を示している。図14(f)と図14(b)とを比較すると明らかなように、時点Fと時点Bとでは、界面の状態はまったく同じとなっている。このことから、以降、ギャップhが変動するに伴って、界面圧力は時点Bから時点Fまでを一周期とする変化を繰り返す。
【0111】
このように、ギャップhが振動するとギャップ間に形成された界面位置が前後に振動し、それに伴って接触角も前進接触角θa と後退接触角θr との間で時間とともに変化する。その結果、界面圧力も変動することになるのである。
【0112】
以上の説明から明らかなように、界面圧力の計測値は前述の式(2)によって与えられるから、例えば界面が前進しているタイミングでのギャップhと界面圧力とから、式(2)により前進接触角θa を算出することができる。同様に、界面が後退しているタイミングでのギャップhと界面圧力とから、式(2)により後退接触角θr を算出することができる。
【0113】
尚、図11(c)ないし(e)の駆動モードでは、振幅の設定値が余りに小さいと、界面の接触角が前進接触角θa と後退接触角θr との間で完全には切り替わらないので、それぞれの接触角を正確に計測することができない。従って、これらの駆動モードでは、所定値以上の振幅を設定する必要がある。振幅の設定値を適切に設定するための方法について、以下に説明する。
【0114】
今、界面が液体挟持平板に後退接触角θr で接しているとして、この界面が平板と接する位置を変えずに、接触角が前進接触角θa に切り替わったとする。このとき、界面形状は凹形状から凸形状に変化する。凹形状の界面と、凸形状の界面とに挟まれる部分の体積を仮にVm とすると、液体挟持平板の間隔を狭めることによって、ギャップからVm 以上の液体が流出するような振幅に設定しておけば、接触角は後退接触角θr から前進接触角θa に完全に切り替わると考えることができる。Vm の値を正確に算出するのは必ずしも容易ではないが、次のようにして見積もることができる。先ず、ギャップh、ギャップ間に円板状に挟持されている液体部分の半径をaとし、また、界面形状が半円形状であると仮定する。このとき、Vm の値は、直径hの円板をギャップ間の液体界面に沿ってぐるりと回してできたドーナツ状の体積として求めることができる。すなわち、
Vm =(π(h/2)2)・2πa
となる。
【0115】
液体挟持平板を振動させることによって界面から排出される液体の体積Ve は、振幅をAh とすれば、
Ve =2Ah ・πa2
と見積もることができる。ここで、上式のVm とVe とを等値して整理すれば、振幅Ah を設定する目安として、
Ah =π・h2/(4a)
を得ることができる。上述の導出過程から明らかなように、上式によって見積もった設定値は、若干大きめの設定値となっている。従って、上式で求めた設定値より大きな値の振幅を設定しておけば、正確な接触角を計測することができる。
【0116】
第3実施例における接触角決定処理(図10のステップS310)では、図11(c)の駆動モードを選択した場合は、図13の時点Bでの界面圧力dPb1を計測し、式(4)から後退接触角θr を求め、また、時点Dでの界面圧力dPf1を計測し、式(5)から前進接触角θa を求めている。時点Bあるいは時点Dでのギャップhの値は、液体挟持平板の駆動条件の設定値から求めることができるので、界面圧力のみを計測するだけで接触角を算出することができる。もちろん、サーボ機構50にギャップセンサを組み込んでギャップhを実測するか、あるいはサーボ機構50の制御信号からギャップhの値を算出して、これらのギャップhと界面圧力の計測値とに基づいて接触角を算出しても構わない。
【0117】
図11(d),(e)の駆動モードを選択した場合も、図11(c)の駆動モードを選択した場合と同様にして、接触角を決定することができる。すなわち、界面が前進しているタイミングでのギャップhと界面圧力とから、式(2)によって前進接触角θa を算出し、界面が後退しているタイミングでのギャップhと界面圧力とから後退接触角θr を算出することができる。
【0118】
尚、第3実施例では、界面圧力を計測して接触角を計測するものとして説明したが、挟持した試験液体から液体挟持平板が受ける荷重Fを計測し、この計測値に基づいて接触角を計測するものとしても構わないのはもちろんである。すなわち、前述の式(3)に示されているように、液体力による荷重Fは、接触角θと、ギャップhと、液体挟持平板間に挟持された液体の半径aによって求められるから、荷重Fと半径aを計測すれば、界面圧力の場合と同様な方法によって接触角を算出することができる。もっとも、界面圧力によって接触角を計測する方法は、挟持した液体の半径aを求める必要がないので、荷重Fから計測する方法よりも、より簡便に接触角を計測することができる。
【0119】
また、上述の説明では、前進接触角θa は90度<θa <180度、後退接触角θr は0度<θr <90度の値をとるものとして説明したが、前進接触角θa 、後退接触角θr の値はこれに限らず、実現可能な種々の値をとり得るのは言うまでもない。接触角θが実現可能な如何なる値をとる場合でも、式(2)によって界面圧力を求めることができる。
【0120】
C−3.第3実施例の効果:
以上説明したように、第3実施例の接触角計測装置においても前述の第2実施例の場合と同様に、液体挟持平板の間に試料液体を挟持して、試料液体内に生じる界面圧力を検出することによって接触角を計測する。このため、第3実施例の接触角計測装置を用いて接触角を計測すると、第2実施例の場合と同様の各種の利点を得ることができる。すなわち、第3実施例の接触角計測装置も、界面圧力と接触角との関係を示す式(2)に基づいて接触角を計測しており、式(2)に現れる接触角は、式(1)に示すように原理的には重力の影響がほとんど現れない接触角である。従って、第3実施例の接触角計測装置を用いれば、重力の影響をほとんど受けずに正確な接触角を計測することができる。
【0121】
また、第3実施例の接触角計測装置でも第2実施例の場合と同様に、液体挟持平板間のギャップhを小さな値に設定すれば、接触角の計測精度を向上させることができる。すなわち、界面圧力dPはギャップhに反比例するので、ギャップhを小さな値に設定することによって接触角の計測精度も向上させることができる。
【0122】
もちろん、第2の実施例においても第1の実施例と同様に、液体挟持挟持平板40,42の間に挟持するだけの試料液体があれば、接触角を計測することができるので、少量の試料液体によって接触角を計測することができる。
【0123】
更には、第3実施例の接触角計測装置は、第2実施例の接触角とは異なり、ギャップhを変動させ、界面位置を移動させながら接触角を計測することができる。このことにより、第3実施例の接触角計測装置を用いれば、第2実施例では得られない次のような利点を得ることができる。
【0124】
先ず、第3実施例の接触角計測装置では、界面位置を移動させながら接触角を計測することができるので、界面の前進あるいは後退に対応して、前進接触角θa あるいは後退接触角θr を計測することができる。
【0125】
また、図11(c)ないし図11(e)に示したように、ギャップhを振動させる駆動モードを選択した場合は、一度の計測で前進接触角θa と後退接触角θr とを同時に計測することができる。
【0126】
第3実施例の接触角計測装置では、液体挟持平板間の狭い隙間に試料液体を挟み込む様にすれば、試料液体の界面に強い駆動力を加えることができるので、界面の移動速度を充分に速くすることも可能である。例えば、液体挟持平板間に円板状に挟持した液体の半径aを5mm、ギャップhの平均値ho を100μとすると、液体挟持平板を周波数を100Hz,振幅10μで振動させるだけで、ギャップ間の界面は最大157mm/sの速度で移動させることができる。第3実施例の接触角計測装置を用いれば、このように界面が高速で移動するような条件下における接触角を、容易にかつ正確に計測することが可能となる。もちろん、周波数を変更したり、振幅を変更することによって、界面の移動速度を自由に設定することも可能である。
【0127】
また、界面をこのように高速で移動させると、界面が波打つ等、界面形状が不安定となるので、この点からも計測が困難になるが、第3実施例の接触角計測装置においては、界面の両側に平板が存在するために粘性の影響で界面の不安定な挙動が減衰しやすくなっている。このため、界面が高速度で移動しても界面形状が安定しており、接触角を正確に計測することが可能である。
【0128】
第3実施例の接触角計測装置においては、図11(c)ないし(e)に示したように、界面を一定位置で前後に振動させながら、あるいは界面を前後に振動させながら界面位置を徐々に移動させることも可能である。また、ギャップ間隔の振動周波数や振幅を変更することによって、界面の移動速度も自由に設定することが可能である。後述する理由により、界面が前後に移動する周波数や、界面の移動速度によって、前進接触角θa や後退接触角θr の値は異なった値となることが多い。第3実施例の接触角計測装置は計測条件の設定自由度がたいへん高いので、接触角の計測条件を適切に設定することにより、正確な接触角を得ることが可能となる。
【0129】
界面が前後に振動する周波数や界面の移動速度の違いによって、前進接触角θa あるいは後退接触角θr の値が異なることが多い理由を簡単に説明する。図5を用いて前述したように、接触角θは、液体表面の表面エネルギσL と、固体表面の表面エネルギσs と、液体と固体との間の界面のエネルギσsLとによって決定される(式(1)参照)。ここで、固体表面が清浄な表面であるとして、清浄な固体表面の表面エネルギをσscとすると、界面が前進していく場合は、接触角は、清浄な固体表面の表面エネルギσscと、液体の表面エネルギσL と、液体と固体間の界面エネルギσsLとによって決定される値となる。式で表せば、
cosθa = (σsc − σsL)/σL
なるθa をとる。
【0130】
次に界面が後退していく場合を考えると、界面が後退した後に現れる固体の表面は、もはや清浄な固体表面とは言えない。なぜなら、固体の表面には液体の分子が多数、吸着しているからである。このように液体の分子が多数吸着した表面の表面エネルギをσsDとすると、σsDは清浄表面の表面エネルギσscとは異なった値となる。従って、前述の式(1)に示すように、後退接触角θr は前進接触角θa とは異なった値となるのである。このように、界面が後退して現れたばかりの固体表面には、液体の分子が多数吸着していて、このことに対応して接触角も清浄面での接触角とは異なった値となるが、時間が経つと固体表面の液体分子が蒸発(あるいは脱離)していき、次第に清浄表面の状態に近づいていく。このように固体表面に吸着した液体分子が蒸発あるいは脱離するにはある程度の時間が必要なので、界面を高い周波数で前後に振動させると、固体表面に吸着した液体分子が蒸発あるいは脱離する時間がなく、固体表面は常にある程度の液体分子が吸着した状態となる。このような状態では、固体の表面エネルギも、σscとσsDとの中間的な表面エネルギσs'をとる。界面を前後させる周波数や界面の移動速度が異なると接触角が異なる場合が多い理由は、以上説明したように、周波数あるいは移動速度によって、固体表面の表面エネルギ状態が異なることが大きな原因となっているものと考えられる。
【0131】
このようなことから、第3実施例の接触角計測装置を使用することにより、固体表面上に液体分子が吸脱着する速度に関する情報を得ることも可能である。すなわち、所定の周波数で界面を前後に振動させた場合に、接触角がどのような値をとるか、より根元的には固体表面の表面エネルギがどのような値をとるかは、固体表面に液体分子が吸着する速度や固体表面から脱離する速度といった固体表面上での液体分子の挙動によって異なってくる。このことから、第3実施例の接触角計測装置を用いて、各種周波数に対する接触角の変動を計測すれば、固体表面で液体分子が吸脱着する速度についての情報を含んだ計測結果を得ることができる。
【0132】
また、図11(c)ないし(e)に示すように、第3実施例の接触角計測装置には、界面位置は前後に振動するが振動の中心位置は移動しない駆動モードと、振動の中心位置が少しずつ移動する駆動モードとが用意されている。これらの駆動モードを使い分ければ、次のようにして接触角の計測誤差をより少なくすることも可能となる。例えば、図11(c)に示す駆動モードでは、界面は同じ範囲内で前後に移動する。つまり、図11(c)の駆動モードで計測した接触角は、液体に濡れた状態(ウェット状態)と気体中で乾燥している状態(ドライ状態)とを一定周波数で繰り返したときに、固体表面が最終的に安定した状態での接触角を計測していることになる。このことから、ウェット状態とドライ状態を頻繁に繰り返すような箇所あるいは条件を想定して接触角を計測する場合は、図11(c)の駆動モードを用いて接触角を計測することによって、想定した条件に合致した接触角を計測することができる。
【0133】
これに対して、図11(d)の駆動モードでは、界面は前後に振動しながら少しずつ前進していく。つまり、ウェット状態とドライ状態とを繰り返しながら、完全に乾いた(ほぼ清浄に近い)固体表面を少しずつ浸食していく。このことから、図11(d)の駆動モードで計測する接触角は、完全に乾いた固体表面が、ウェット状態とドライ状態とを繰り返しながら、未だ安定な状態には達していないという過渡状態での接触角を計測することができる。逆に、図11(e)の駆動モードでは、界面は前後しながら少しずつ後退していくので、ウェット状態とドライ状態とを繰り返しながら、少しずつ表面が乾いていくような状態での接触角を計測することができる。
【0134】
もちろん、図11(a)の駆動モードを使用すれば、完全に乾いた固体表面を液体が初めて濡らすときの前進接触角を計測することができるし、図11(b)の駆動モードを使用すれば、固体表面を液体で完全に濡らした状態から、初めて気体にさらしたときの後退接触角を計測することができる。このように、図11に示す各種の駆動モードを使い分けることによって、想定した条件に合致した接触角を計測することが可能となる。
【0135】
C−4.第1の変形例:
以上説明した第3実施例の接触角計測装置においては、液体挟持平板40,42は平行平板を使用しているが、液体挟持平板は必ずしも平行平板には限られず、例えば図15に示すような形状とすることもできる。すなわち、図15(a)に示すように、液体挟持板41,43の中央部を凹形状としたり、あるいは図15(b)に示すように、液体挟持板41,43のいずれか一方を凹形状としても良い。上述した第3実施例の接触角計測装置は、液体挟持平板40,42の間隔を変動させることによって、挟持された試料液体に流れが生じる。この時、後述するように試料液体の粘性や慣性によって液体内に圧力が発生するので、この圧力により界面圧力の計測精度が低下し、延いては接触角の計測精度が低下するおそれがある。図15に示すように、中央部の間隔が大きくなっているような液体挟持板41,43を使用すれば、試料液体の粘性や慣性の影響で接触角の計測精度が低下することを回避することが可能となる。以下では、液体挟持平板40,42間の間隔を変動させたときに、粘性や慣性の影響で試料液体に圧力が発生する理由を説明し、次いで、図15に示すような液体挟持板41,43を使用することによって、粘性や慣性の影響で接触角の計測精度が低下することを回避できる理由について説明する。
【0136】
図16(a)は、試料液体を間に満たした液体挟持平板40を、液体挟持平板42に向かって速度uで近づけている様子を示した説明図である。液体挟持平板40を近づけると、平板間に満たされた液体が押し出されるようにして周囲に流出する。図16(b)は、液体挟持平板を近づけたときに、平板間の液体に生じる速度分布の様子を示す説明図である。図16(b)の左側の図は、液体が平板によって単純に押し出されるものとしたときの液体の速度分布を示している。ところが一般に、液体は壁と接する部分では壁に対して相対的に滑り得ないという性質がある。液体のこのような性質を粘性と呼ぶ。液体挟持平板間を流れる液体は粘性によって、平板の近くで流れが引きずられるようにして遅くなり、その結果、実際の速度分布は、図16(b)の右側に示すような放物線状の速度分布となる。また、この時に平板間に発生する剪断速度の分布もあわせて示している。剪断速度分布は、速度の勾配として求めることができる。
【0137】
液体挟持平板間の間隔を狭めて、液体を押し出すためには、平板に外力を加えなければならない。この外力は、平板上で液体が引きずられるようにして減速するのに逆らって、平板間の液体を外向きに押し出すために必要な外力である。従って、平板上の液体に生じる剪断速度が大きくなるほど、大きな外力を加えなければならない。このように、液体の粘性の作用によって平板間から液体を押し出すためには外力を加えなければならず、その結果として、平板間の液体には加えた外力に起因する圧力が発生するのである。
【0138】
次に、図15に示しような液体挟持板41,43を用いると、粘性や慣性に起因して発生する圧力の影響を回避できる理由について説明する。液体挟持平板40を液体挟持平板42に近づける場合、近づける速度が同じなら、平板間から押し出される液体の速度は、平板間の間隔が広いほど小さくなる。従って、平板の近くで流れが引きずられるようにして減速する度合い、すなわち平板上の液体に生じる剪断速度も平板間の間隔が広くなるほど小さくなる。このことから、図15に示した液体挟持板41,43では、平行平板で構成された液体挟持平板40,42よりも、挟持板の中央部分での間隔が広くなっているので、この部分で液体に発生する剪断速度は小さくなる。このため、平板間の液体を押し出すために加えなければならない外力も小さくなり、延いては、液体内に発生する圧力も小さくなる。また、平板間の間隔が広くなって間隙から押し出される液体の流速が小さくなれば、それに伴って慣性の影響もちいさくなる。このように、図15に示すように、中央部分で間隔が広くなっているような液体挟持板41,43を使用すると、液体の粘性や慣性によって発生する圧力が小さくなるので、界面圧力を正確に計測することができ、延いては接触角を正確に計測することができるのである。尚、図15に示す液体挟持板41,43においても、界面が形成される周縁部の間隔は、平行平板で構成されている液体挟持平板40,42の間隔と同じ間隔になっているので、平行平板の場合と全く同様に接触角を計測することができる。
【0139】
C−5.第2の変形例:
以上説明した第3実施例の接触角計測装置では、ギャップ間に形成した界面の位置を変動させるために、液体挟持平板40,42の間隔を変動させた。かかる方法によれば、比較的簡単な構成を用いて、界面位置を移動させることができる。もちろん、界面位置を移動させる方法は、液体挟持平板40,42の間隔を変動させることに限られず、種々の方法が存在する。以下では、このような第3実施例の種々の変形例について簡単に説明する。
【0140】
図17(a)は、液体を供給する専用の液体供給機70を備えた変形例である。図示するように、液体供給機70は、シリンダ72と、シリンダ72内を摺動するピストン74と、ピストン74を駆動するアクチュエータ76から構成されている。コンピュータ60等の制御の下で、アクチュエータ76を駆動してピストン74を下降させると、供給通路78を通って液体挟持平板40,42の間に試料液体が供給され、界面位置が前進する。また、アクチュエータ76を逆方向に駆動してピストン74を上昇させると、供給通路78を通って液体挟持平板40,42の間から試料液体が回収されて、界面位置が後退する。
【0141】
図17(b)は、液体挟持平板間に容積可変の液体溜まり80を設け、液体溜まり80の容積を変更させることによって、界面位置を変動させる変形例である。図示するように、液体溜まり80は、液体挟持平板42の一部に組み込まれたピストン84と、ピストン84を駆動するアクチュエータ86とから構成されている。コンピュータ60等の制御の下で、アクチュエータ86を駆動してピストン84を上昇させると、液体溜まり80の容積が減少し、これに伴って界面位置が前進する。逆に、ピストン84を下降させると、液体溜まり80の容積が拡大し、これに伴って界面位置が後退する。
【0142】
液体挟持平板間に形成される界面位置を移動するために、かかる方法を用いれば、平板間のギャップhを変動させずに界面位置を移動させることができる。図18は、図17(a),(b)に示した変形例の接触角計測装置を用いて計測した界面圧力の計測例を示す説明図である。液体挟持平板の駆動モードは、図11(c)の駆動モードである。前述した図13に示したように、界面位置を移動させるためにギャップhを変動させた場合に比べて、ギャップhを変動させずに界面位置を移動させた場合は、界面圧力の波形は図18に示すような単純な波形となることが分かる。すなわち図13に示した場合は、界面が一定の接触角を保ったまま移動する間も、ギャップhが変化するために界面圧力が変動した。これに対して図18の場合には、ギャップhは絶えず一定値をとるので、界面が一体の接触角を保っている間は界面圧力も一定値を保っている。このことから、第2の変形例の接触角計測装置を用いることによって、接触角の計測精度を更に向上させることが可能となる。
【0143】
尚、図17に示した変形例においても、液体挟持平板の間の液体には平板に沿った方向の流動が発生する。液体に流動が発生すれば、粘性や慣性の影響によって圧力が発生し、界面圧力の計測値に誤差が発生するおそれがある。この対策として、図17に示した変形例に、図15に示した凹部分を有する液体挟持板を適用しても構わない。図15に示した液体挟持板は中央部での間隔が広くなっているので、粘性や慣性によって発生する圧力の影響を抑制して、正確な界面圧力を計測することができ、延いては接触角を正確に計測することが可能となる。
【0144】
D.動的表面張力計測装置:
第3実施例の接触角計測装置に、第1実施例で用いたような撮像機器20を組み合わせることによって、いわゆる動的表面張力を計測することも可能である。動的表面張力とは、液体が激しく流動し、次々と絶えず新しい表面が形成されるような状況下における表面張力である。このような状況下での表面張力は、静止した液体表面の表面張力や、静かに移動する液体表面の表面張力とは異なった値を示すことが多い。動的表面張力と、通常の表面張力とが異なった値となる理由は、次のように、液体表面でのエネルギの緩和過程を考えることで容易に理解することができる。
【0145】
前述したように、液体の表面には表面エネルギが存在すると考えることができ、液体の表面は液体内部より表面エネルギの分だけ不安定な状態にあると考えることができる。このように表面は内部よりも不安定な状態にあるので、表面をできるだけ小さくして、より安定な状態になろうとする。表面張力は、この結果として生じると考えることもできる。ここで、表面のエネルギ状態をより安定化する方法は、表面積を小さくすることだけではない。例えば、界面活性剤には、分子が表面に集まることで表面のエネルギ状態を安定化させる作用がある。従って、液体中に界面活性剤が含まれていれば、時間とともに液体表面に界面活性剤が集まってきて表面エネルギをより安定化させる。このように界面活性剤が表面に集まった結果として表面エネルギが小さくなれば、これに伴って液体の表面張力も小さくなる。また、液体中に界面活性剤が含まれていなかったとしても、液体中に混入している物質の分子の中で、表面のエネルギ状態を比較的安定化させる作用のある分子が液体表面に集まってきて、表面を安定化させる。更には、大気中の気体分子を液体表面が取り込んで、表面を安定化する場合もあり得る。静かな液体の表面で計測される通常の表面張力は、このような表面エネルギの安定化が起こった後の表面張力となっている。
【0146】
これに対して、液体が激しく流動し、新しい表面が次々と作られていくような状況では、液体内の分子が表面に集まって、表面エネルギを安定化させる時間がない。すなわち、このような状況で計測される動的表面張力は、表面エネルギが安定化される前の表面張力である。このため、動的表面張力と通常の表面張力とは異なった値をとるのである。以下、このような動的表面張力の計測装置について説明する。
【0147】
D−1.装置構成:
図19は、動的表面張力の計測装置の概要を示した説明図である。図示するように、本実施例の動的表面張力計測装置は、前述して第3実施例の接触角計測装置に、前述の第1実施例で用いた撮像機器20を組み合わせた構成となっている。尚、接触角計測装置は、第3実施例の変形例として説明した接触角計測装置を使用することも可能である。また、図19に示した接触角計測装置には、荷重検出器44と圧力検出器46の2つの検出器が備えられているが、いずれか一方の検出器があれば十分である。
【0148】
撮像機器20は、前述の第1実施例の場合と同様に、液体挟持平板40,42の間隙に形成された試料液体の界面形状を側方から拡大して観察する。但し、本実施例では、高速度カメラのように、高速で移動する界面の形状を撮影可能な撮像機器を使用する必要がある。あるいは、動的表面張力計測装置全体を暗室に入れて、デジタルスチルカメラのシャッタを開放にしたまま、所定タイミングでフラッシュ90をたいて、瞬間的な形面形状を撮影するようにしても良い。以下に説明する実施例では、後者の方法、すなわち、デジタルスチルカメラとフラッシュ90を組み合わせて使用する方法を採用している。
【0149】
コンピュータ60は、第3実施例の場合と同様に、サーボ機構50の制御を行うとともに、荷重検出器44あるいは圧力検出器46からデータを取り込み、また、フラッシュ90にトリガ信号を出力する。
【0150】
他の構成については、前述した第3実施例の接触角計測装置と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0151】
D−2.動的表面張力計測処理:
図20は、動的表面張力の計測処理の流れを示すフローチャートである。以下、図20のフローチャートに従い、動的表面張力の計測処理について説明する。
【0152】
動的表面張力の計測処理においても、前述してきた第3実施例の接触角計測装置における計測と同様に、先ず初めに、計測に使用する液体挟持平板を選択して支柱に装着し(ステップS400)、平板間に試料液体を挟持する(ステップS402)。次に、液体挟持平板の駆動条件を設定する(ステップS404)。すなわち、コンピュータ60を立ち上げて、接触角計測用のプログラムを起動し、コンピュータ60の画面上から所定の駆動条件を設定する。動的表面張力計測装置においても、第3実施例の場合と同様に、液体挟持平板の駆動条件として図11に示す5つの駆動モードが用意されており、それぞれのモードに応じて駆動条件を設定する。尚、本実施例では動的表面張力を計測するから、液体挟持平板間に形成される界面の表面張力が動的表面張力となるように、ギャップhの振動周波数および振幅は、いずれも第3実施例の場合の設定よりも大きめの設定とする必要がある。逆に言えば、界面の表面張力が動的表面張力となるほど、前述の第3実施例の接触角計測装置が界面を高速で移動させることができるのである。第3実施例の接触角計測装置が、このように界面を高速で移動させることができる理由は、液体挟持平板間に試料液体を挟み込んでいるので、液体の界面に強い外力を作用させることができるからである。
【0153】
駆動条件を設定したら、次は計測タイミングを設定する(ステップS406)。すなわち、本実施例では撮像機器20としてデジタルスチルカメラを使用し、カメラのシャッタを開放にして、界面形状を撮影する瞬間にフラッシュをたいて界面形状を撮影する。また、界面形状を撮影したタイミングでの界面圧力のデータも取り込んでおく。ステップS406では、フラッシュをたいて界面形状を撮影し、界面圧力のデータを取り込むタイミングを予め設定しておくのである。図21は、タイミングを設定している様子を説明するための説明図である。サーボ機構50の駆動開始後、tDfのタイミング、すなわち、界面が前進している途中でフラッシュをたいて界面形状を撮影し、界面圧力dPDfの値を計測する。このときのギャップhDfの値は、液体挟持平板の駆動条件から求めることができる。また、界面が後退している途中での動的表面張力を計測する場合は、図21のtDbのタイミングに設定すればよい。
【0154】
以上のようにして計測タイミングを設定したら、デジタルスチルカメラのシャッタを開放にしてから、サーボ機構の駆動を開始する(ステップS408)。すると、ステップS406で設定したタイミングでコンピュータ60からフラッシュ90にトリガが出力されて、フラッシュがたかれ、デジタルスチルカメラに設定したタイミングでの界面形状が記憶される。また、これと同時に圧力検出器46の出力データがコンピュータ60に取り込まれる(ステップS410)。
【0155】
こうして、設定したタイミングでの、界面形状の画像、界面圧力を計測したら、次式により動的表面張力σD を算出する(ステップS412)。
σD = −dPD ・hD /(2・ cosθ) …(6)
ここに、dPD は設定したタイミングでの界面圧力であり、θは界面形状の画像を解析して求めた接触角である。画像から接触角を求める方法については前述した第1実施例の場合と同様の方法を適用することができる。また、hD は設定したタイミングでのギャップhの値である。hD は、駆動条件と設定タイミングから求めることができる。
【0156】
また、式(6)は前述の式(1)を変形したものである。すなわち、前述の接触角計測装置においては、比較的静かな界面を扱っており、このような静かな界面での表面張力は予め調べておくことができるから、式(1)から接触角を算出した。これに対して、本実施例の動的表面張力計測装置においては、界面形状から接触角を計測し、式(1)を利用して、動的表面張力を算出するのである。
【0157】
以上説明したように、本実施例の動的表面張力計測装置を用いれば、従来のように大がかりな装置を必要とせず、簡便に動的表面張力を計測することが可能となる。
【0158】
以上、各種の実施例について説明してきたが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。例えば、試験中に試験液体が界面から蒸発することを避けたり、あるいは液体挟持平板の表面状態を一定に保って、安定した計測結果を得るために、装置全体を大きな箱のようなもので覆ってもよい。
【0159】
また、前述の各種実施例では上側の液体挟持平板を駆動しているが、下側の液体挟持平板を駆動しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の接触角計測装置の概略構成図である。
【図2】第1実施例の接触角計測装置を用いて接触角を計測する手順の概要を示すフローチャートである。
【図3】試料液体を位置決めするために液体挟持平板上に形成された液体位置決め域を例示する説明図である。
【図4】第1実施例の接触角計測装置を用いて計測した界面形状に基づいて、接触角を求める方法を示す説明図である。
【図5】各種の表面張力と、接触角との関係を示す説明図である。
【図6】第2実施例の接触角計測装置の概略構成図である。
【図7】第2実施例の接触角計測装置を用いて接触角を計測する手順の概要を示すフローチャートである。
【図8】界面の表面張力によって、液体内部に界面圧力が発生する理由を説明するための説明図である。
【図9】第3実施例の接触角計測装置の概略構成図である。
【図10】第3実施例の接触角計測装置を用いて接触角を計測する手順の概要を示すフローチャートである。
【図11】第3実施例の接触角計測装置に設定されている液体挟持平板の各種駆動モードを示す説明図である。
【図12】液体挟持平板を各種駆動モードで駆動したときの界面圧力の波形を示す説明図である。
【図13】液体挟持平板を各種駆動モードで駆動したときに、界面圧力が変動する理由を示す説明図である。
【図14】液体挟持平板を各種駆動モードで駆動したときに、界面形状が変化する様子を示す説明図である。
【図15】第3実施例の接触角計測装置の変形例で使用される液体挟持板の断面形状を示す断面図である。
【図16】第3実施例の接触角計測装置の変形例で使用される液体挟持板を用いることにより、接触角をより正確に計測することができる理由を説明するための説明図である。
【図17】第3実施例の接触角計測装置の他の変形例を示す説明図である。
【図18】第3実施例の接触角計測装置の他の変形例を用いて計測される界面圧力の波形を示す説明図である。
【図19】本実施例の動的表面張力計測装置の概略構成図である。
【図20】本実施例の動的表面張力計測装置を用いて動的表面張力を計測する手順の概要を示すフローチャートである。
【図21】動的表面張力を計測するタイミングを設定する方法を説明する説明図である。
【図22】接触角を計測する従来の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
10…装置本体
20…撮像機器
30…筐体
32,34…支柱
36…ギャップ調整器
40,42…液体挟持平板
41,43…液体挟持板
44…荷重検出器
45…表示器
46…圧力検出器
47…表示器
50…サーボ機構
60…コンピュータ
70…液体供給機
72…シリンダ
74…ピストン
76…アクチュエータ
78…供給通路
84…ピストン
86…アクチュエータ
90…フラッシュ
100…接触角計測装置
110…接触角計測装置
120…接触角計測装置
Claims (25)
- 試料液体の接触角を計測する接触角計測装置であって、
前記試料液体を間隙に挟持する一組の試料液体挟持面を有し、該間隙に挟持された試料液体を、前記試料液体挟持面の周縁に形成された平滑域で、該試料液体の表面張力によって保持する試料液体保持部と、
前記間隙に挟持された試料液体が前記平滑域に形成する界面の形状として、前記接触角を検出する接触角検出手段と
を備える接触角計測装置。 - 請求項1記載の接触角計測装置であって、
前記試料液体保持部は、前記試料液体を保持する前記平滑域の少なくとも一方が水平に形成された試料液体保持部である接触角計測装置。 - 請求項1記載の接触角計測装置であって、
前記試料液体保持部は、一組の平行平板で構成された試料液体保持部である接触角計測装置。 - 請求項1記載の接触角計測装置であって、
前記試料液体保持部は、前記試料液体が位置決めされる液体位置決め域を、前記試料液体挟持面上に有する接触角計測装置。 - 請求項1記載の接触角計測装置であって、
前記平滑域に形成された試料液体の界面を、該平滑面に沿って移動させる界面位置移動手段を備えるとともに、
前記接触角検出手段は、前記移動に伴う界面の形状として前記接触角を検出する手段である接触角計測装置。 - 試料液体の接触角を計測する接触角計測装置であって、
前記試料液体を間隙に挟持する一組の試料液体挟持面を有し、該間隙に挟持された試料液体を、前記試料液体挟持面の周縁に形成された平滑域で、該試料液体の表面張力によって保持する試料液体保持部と、
前記試料液体の表面張力が前記試料液体の内部に発生させる界面圧力を検出する界面圧力検出手段と、
前記検出された界面圧力に基づいて、前記試料液体の接触角を決定する接触角決定手段と
を備える接触角計測装置。 - 請求項6記載の接触角計測装置であって、
前記試料液体保持部は、前記試料液体が位置決めされる液体位置決め域を、前記試料液体挟持面上に有する接触角計測装置。 - 請求項6記載の接触角計測装置であって、
前記接触角決定手段は、前記試料液体の表面張力と、前記検出された界面圧力とに基づいて、前記試料液体の接触角を算出する手段である接触角計測装置。 - 請求項6記載の接触角計測装置であって、
前記界面圧力検出手段は、前記試料液体挟持面の間隙に挟持された試料液体から、該試料液体挟持面が受ける液体力を検出し、該検出した液体力に基づいて、前記界面圧力を検出する手段である接触角計測装置。 - 請求項6記載の接触角計測装置であって、
前記平滑域に形成された試料液体の界面を、該平滑面に沿って移動させる界面位置移動手段を備えるとともに、
前記界面圧力検出手段は、前記界面の移動に伴い試料液体の内部に発生する界面圧力を検出する手段であり、
前記接触角決定手段は、前記界面の移動に伴う試料液体の接触角を決定する手段である接触角計測装置。 - 請求項10記載の接触角計測装置であって、
前記試料液体保持部は、一組の前記試料液体挟持面の少なくとも一方が、前記平滑域より凹に形成されている接触角計測装置。 - 請求項4または請求項10記載の接触角計測装置であって、
前記試料液体保持部は、前記試料液体挟持面の間隔を変更可能であり、
前記界面移動手段は、前記試料液体挟持面の間隔を変更することによって、前記試料液体の界面位置を移動させる手段である接触角計測装置。 - 請求項12記載の接触角計測装置であって、
前記界面移動手段は、前記試料液体挟持面の間隔を所定の振幅で変動させることによって、前記試料液体の界面位置を前後に振動させる手段である接触角計測装置。 - 請求項13接触角計測装置であって、
前記界面移動手段は、前記試料液体挟持面が振動する振幅と周波数とを変更可能な手段である接触角計測装置。 - 請求項4または請求項10記載の接触角計測装置であって、
前記界面位置移動手段は、前記試料液体保持部に前記試料液体を供給または回収することによって、前記界面を前進または後退させる手段である接触角計測装置。 - 請求項15記載の接触角計測装置であって、
前記界面位置移動手段は、前記試料液体保持部への前記試料液体の供給と回収とを繰り返し行うことによって、前記界面位置の前進と後退とを交互に行う手段である接触角計測装置。 - 請求項4または請求項10記載の接触角計測装置であって、
前記試料液体保持部は、前記試料液体挟持面に、前記試料液体の容積可変な液体溜まりを備えるとともに、
前記界面位置移動手段は、前記液体溜まりの容積を変更することによって、前記界面の位置を移動させる手段である接触角計測装置。 - 試料液体の接触角を計測する接触角計測方法であって、
一組の試料液体挟持面の間隙に前記試料液体を挟持して、該挟持された試料液体を、前記試料液体挟持面の周縁に形成された平滑域で、該試料液体の表面張力によって保持し、
前記間隙に挟持された試料液体が前記平滑域に形成する界面の形状として、前記接触角を計測する接触角の計測方法。 - 試料液体の接触角を計測する計測方法であって、
一組の試料液体挟持面の間隙に前記試料液体を挟持して、該挟持された試料液体を、前記試料液体挟持面の周縁に形成された平滑域で、該試料液体の表面張力によって保持し、
前記試料液体の表面張力が前記試料液体の内部に発生させる界面圧力を検出し、
前記検出された界面圧力に基づいて、前記試料液体の接触角を計測する接触角計測方法。 - 請求項19記載の接触角計測方法であって、
前記平滑域に形成された試料液体の界面を、該平滑面に沿って移動させるとともに、
前記界面の移動に伴い試料液体の内部に発生する界面圧力を検出し、
該検出された界面圧力に基づいて、前記界面の移動に伴う試料液体の接触角を計測する接触角計測方法。 - 試料液体の動的表面張力を計測する動的表面張力計測装置であって、
前記試料液体を間隙に挟持する一組の試料液体挟持面を有し、該間隙に挟持された試料液体を、前記試料液体挟持面の周縁に形成された平滑域で、該試料液体の表面張力によって保持する試料液体保持部と、
前記平滑域に形成された試料液体の界面を、該平滑面に沿って移動させる界面位置移動手段と、
前記界面の移動に伴って、前記試料液体の表面張力に起因して該試料液体の内部に発生する界面圧力を検出する界面圧力検出手段と、
前記試料液体の移動に伴う界面の形状として、前記接触角を検出する接触角検出手段と、
前記検出された界面圧力と前記検出された接触角とに基づいて、前記試料液体の動的表面張力を決定する動的表面張力決定手段と
を備える動的表面張力計測装置。 - 請求項21の動的表面張力計測装置であって、
前記試料液体保持部は、前記試料液体を保持する前記平滑域の少なくとも一方が水平に形成された試料液体保持部である動的表面張力計測装置。 - 請求項21記載の動的表面張力計測装置であって、
前記試料液体保持部は、前記使用液体が位置決めされる液体位置決め域を、前記試料液体挟持面上に有する動的表面張力計測装置。 - 試料液体の動的表面張力を計測する動的表面張力計測装置であって、
請求項10ないし請求項17に記載の接触角計測装置と、
前記試料液体の移動に伴う界面の形状として、前記接触角を検出する接触角検出手段と、
前記検出された界面圧力と前記検出された接触角とに基づいて、前記試料液体の動的表面張力を決定する動的表面張力決定手段と
を備える動的表面張力計測装置。 - 試料液体の動的表面張力の計測方法であって、
一組の試料液体挟持面の間隙に前記試料液体を挟持して、該挟持された試料液体を、前記試料液体挟持面の周縁に形成された平滑域で、該試料液体の表面張力によって保持し、
前記平滑域に形成された試料液体の界面を、該平滑面に沿って移動させ、
前記界面の移動に伴って、前記試料液体の表面張力に起因して該試料液体の内部に発生する界面圧力を検出し、
前記試料液体の移動に伴う界面の形状として、前記接触角を検出し、
前記検出された界面圧力と前記検出された接触角とに基づいて、前記試料液体の動的表面張力を計測する動的表面張力の計測方法。
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