JP3932475B2 - 新規フェリチン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規フェリチンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フェリチンは人間を含む高等動物から植物、細菌等の微生物まで生物界に広く存在する鉄貯蔵タンパク質であり、貯蔵している鉄を他の鉄結合酵素などに供給すること、および生体に障害を及ぼすような過剰な無機鉄を取り込み、解毒して細胞を保護することを主要な生理的役割としている。このタンパク質は非常に巨大であり(分子量540kDa)、外径が約13nmもあり、24個のサブユニットが対称性を持って積み重なり、あたかも袋のような構造をしている。この袋状構造の中に鉄を最大で4500原子も貯蔵すると推定されている。
本発明者らはこのような大量の鉄を貯蔵できるフェリチンの遺伝子を外来遺伝子として植物に導入することにより、植物の鉄含量を増加させ得ることを見出し、先に特許出願を行った(特開平9−201190号公報参照)。
従来の植物フェリチンは1つの遺伝子由来のサブユニット(28kDa)から形成されていると考えられていた。そして、この28kDaのサブユニットは鉄放出時に延長ペプチド(EP:Extension Peptide )が切断されることにより26.5kDaサブユニットに容易に転化するとされていた。28kDaサブユニットが鉄含有形態であることは報告されているが、26.5kDaサブユニットの鉄含有については知られていない。したがって、鉄を放出してのこの転化がなければより効率的に植物体に鉄分を貯蔵させることができるものと考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、より多くの鉄分を植物に貯蔵させることができるフェリチンを求めて種々研究した結果、従来のものとは異なるサブユニットを有するフェリチンを見いだして本発明を完成した。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、容易に切断されない分子量28kDaのサブユニットを含むフェリチン及びフェリチン遺伝子に関する。
より具体的には、植物、特にダイズ由来のフェリチンである。本発明において「容易に切断されない」とは、従来知られている植物由来のフェリチンの28kDaサブユニットが26.5kDaサブユニットに転化する条件下では切断されない意味で用いられる。
本発明のフェリチン遺伝子は、トランジット・ペプチド(TP:Transit Peptide )を除くアミノ末端からの6残基の配列がAla-Ser-Asn-Ala-Pro-Ala である分子量28kDaのサブユニットをコードすることを特徴とするものである。また、従来の大豆フェリチンの28kDaのサブユニットではカルボキシル(C−)末端残基の234番目がアルギニンであるのに対して、本発明のフェリチン遺伝子ではロイシンで置換されていることを特徴とする。この相違により、本発明の28kDaサブユニットは容易に切断されない。これら本発明の特定の配列は、遺伝子組換え手法によって得ることができる。従って本発明は、植物由来の及び遺伝子組換えによるフェリチン及びフェリチン遺伝子を包含する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の「容易に切断されない」フェリチンの28kDaサブユニットの確認のために以下の各実験を行った。
A.実験方法
1.自然の大豆フェリチンの精製
乾燥大豆種子(Kitano−shiki 変種)500gを粉砕機により細粉化した。大豆種子粉は、1mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)と10mM 2−ME(2−メルカプトエタノール)含有の50mM Tris-HCl バッファーに懸濁し、均質化し、10,000×gで10分間遠心分離した。上清を20%飽和の硫酸アンモニュウムで分画した。琥珀色の沈殿物を遠心分離により集め、50mM Tris-HCl (pH 7.5)バッファー中で透析した。透析後の試料は、前もって1mM EDTA含有の50mM Tris-HClバッファーで平衡化したDEAE−トヨパール(Toyopearl )(TOSOH社)コラムに付加した。コラムは0.15M塩化ナトリウム含有のバッファーで洗浄され、琥珀色のフェリチンが溶離された。大豆フェリチンを含有する該溶液は、再度20%飽和の硫酸アンモニュウムで分画した。遠心分離により集められた上清は、ブチルトヨパール(TOSOH社)コラムに付加し、20−0%飽和密度勾配の硫酸アンモニウムにより溶離された。大豆フェリチンを含有する画分はプールされ、1 mM EDTA含有の50mM Tris-HCl バッファー(pH 7.5)中で透析され、Q−セファロースコラム(Amersham-Pharmacia社)に付加された。蛋白は0から0.7M密度勾配の塩化ナトリウムにより溶離された。大豆フェリチン含有の画分はプールされ、濃縮され、最終的には20mM Tris-HCl (pH 7.5)バッファーで平衡化したスーパーデックス75pgゲル濾過コラム(Amersham-Pharmacia社)に付加された。
【0006】
アポ・フェリチンは従来知られている方法により得た。精製されたフェリチンは、1%チオグリコール酸含有の50mM ヒープス(Hepes )/NaOH・バッファー(pH 7.0)中で透析され、続いて連続的に0.1%と0%チオグリコレート含有ヒープス・バッファーにて透析した。その後蛋白は13g/リッターのChilex-100(Bio-Rad 社)及び0.2M塩化ナトリウム含有のヒープス・バッファー中で透析し、最後に脱イオン水中で透析した。精製された蛋白濃度は蛋白アッセイキット(Bio-Rad 社)とデンシトメーター(Pharmacia 社)により決定した。
【0007】
2.アミノ酸配列分析
大豆フェリチン・サブユニットは、12.5%ポリアクリルアミドゲルを使ったSDS−PAGEにより分離され、PVDF膜に転移された。膜は2%(V/V)酢酸に溶解した0.1%のポンソー−S(Sigma 社)により染色された。膜上の2個所の特徴的なバンドが各々膜から切り取られた。両蛋白のアミノ末端アミノ酸配列は、アプライド・バイオシステムのモデル477Aパルス−液体アミノ酸配列分析器(シークエンサー)による自動化エドマン分解した。
26.5kDaサブユニットのカルボキシル(C−)末端アミノ酸配列は、このサブユニットをリジルエンドペプチダーゼにより消化し、C−末端を含有するペプチド断片はDITC−ガラス(SIGMA)により単離した。その後、C−末端断片の配列を自動化エドマン分解により決定した。
【0008】
3.大豆からの新規フェリチン遺伝子cDNA(相補的DNA)のクローニングジーンバンク(遺伝子銀行)に登録済みの大豆EST(発現配列タグ:Expressed Sequence Tag )配列(AW185525, AI966037, AW397605, AI443722, AI900240)をプライマーの設計に使用した。5’race (rapid amplification of cDNA ends) と3’raceは、発芽後1週間の種苗から抽出した総RNAを鋳型(テンプレート)とする製造方法にて実施した。Lサブユニットをコードする標的配列に関する10個の候補配列を決定した。
【0009】
4.組換え体大豆フェリチンの準備
大豆フェリチンの成熟部分をコードするDNA配列は、
(a) プライマー−TP(5'-GCGCATATGTCAACGGTGCCTCTCAC-3')と
(b) C(5'-GCGGGATCCTAATCASAGAAGTCTTTG-3' )
を使用するPCR(ポリメレースチェーン反応)で増幅した。−TP及びCは各々NdeIサイト(位置)及びBamHIサイトを含んでいた。そこで得られたTP配列を含有しない断片をNdeIとBamHIにより消化し、発現ベクターpET3a(Novagen )上のNdeIとBamHI間に挿入して、プラスミドpESFを得た。発現プラスミドpESFは Escherichia coli (大腸菌)BL21(DE3)pLys株に形質転換された。発現プラスミドを含むE.coli株は、37℃でアンピシリン(50 μg/ml) 補助LB(Luria-Bertani )培地で培養した。A600 (吸光度)=0.6まで増殖した時に、最終濃度が1mMになるようにイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加した。細菌は遠心により収穫し、蛋白はバッグバスター(BugBuster )蛋白抽出試薬(Novagen) により抽出した。
完全な成熟領域を含む組換え体フェリチンの精製過程も自然フェリチンと同様である。
【0010】
5.大豆フェリチンのデグラデーション(減成)実験
大豆の葉200mgを抽出バッファー[50mM K2PO4 、10mM 2−ME、0.1 %TritonX-100、0.1 %サルコシン)1mLと海砂で均質化し、12000 rpmで遠心分離して可溶性蛋白質を抽出した。上清を大豆フェリチンの減成実験に使用した。組換えフェリチンと自然のフェリチンの各150ngを葉抽出液20μlに加え、室温でインキュベートした。SDS−PAGE及びPVDF膜に電気ブロットした後、蛋白質の免疫検出を行った。大豆フェリチン(%)サブユニットに対して抗血清が上昇した。大豆フェリチン抗体でのブロットの検出をビオニチル化ホースラディシュ・パーオキシダーゼと結合したアンチ−ラビットIgGシープ・イムノグロブリンを用いて行った。シグナルの視認化にはイムノステイン(Immunostain )HRP−1000(コニカ社)を用いた。
【0011】
6.鉄の取り込み及び放出の測定
自然の大豆フェリチン及び組換え体フェリチンによる鉄取り込み反応は、室温でFe2+/ フェリチン・モル比 1,000(1mM硫酸第一鉄と0.1μMフェリチン) により100mM Hepes /NaOH・バッファー(pH 7.0)で実施した。フェリチンへの鉄取り込みは吸光度310nmで測定した。
鉄遊離実験では、自然大豆及び組換え体のアポ・フェリチン( 各々2μM)は、0.2M塩化ナトリウムを含有する0.1M MOPSに溶解された新鮮な硫酸第一鉄(1 mM)を添加することにより鉱化し、続いて室温で2時間培養し、その後に一晩4℃で放置した。鉄遊離はナトリウムアスコルビン酸塩とフェロジン(ferrozine )を各々最終濃度1mMと4mMになるように添加することにより反応を開始した。アスコルビン酸塩はフェリチン殻からの鉄の還元型遊離を促進すると報告されている。外来性Fe2+は、日立紫外線分光光度計(Hitachi, Tokyo, Japan) を用いて、波長560nmでのFe2+/ferrozine 複合体の吸光度により測定した。
【0012】
上記各実験により下記の結果が得られた。
B.結果
1.乾燥種子からの大豆フェリチンの単離
大豆フェリチンは、乾燥種子から二段階の陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー,及びゲル濾過により精製した。大豆フェリチンは、各々のクロマトグラフ段階で単一ピークとして溶離した。しかしながら精製されたフェリチンには、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)分析によると、分子量が28kDaと26.5kDaだと推定される二つのバンドを認めた(図1A)。これ等のバンドの密度分析によると、精製されたフェリチンは28kDaと26.5kDaのサブユニットを殆ど等量(28kDa/26.5kDa比が1/1.09と推定された)含んでいることを示した。精製された大豆フェリチンからは、分子量が約550−560kDa(図1B)だと推定される単一バンドのみが検出された。
【0013】
図1Aにおいて、精製された大豆フェリチンは、SDS−PAGEにより分析され、CBB( クーマシー・ブリリアント・ブルー : Coomassie Brilliant Blue)により染色された(レーン1)。
図1Bは大豆フェリチンの非変性PAGE分析結果を示す図で、
レーン1は、大豆種子から精製された自然の大豆フェリチン、
レーン2は、大腸菌にて発現された組換え体大豆フェリチンを示し、
蛋白マーカー(M)は分子質量を表す。
【0014】
2.両サブユニットのアミノ酸配列分析
両方のサブユニットのアミノ(N−)末端からの6残基を決定した。28kDaサブユニットの配列はAla-Ser-Asn-Ala-Pro-Ala であり、26.5kDaサブユニットはAla-Ser-Thr-Val-Pro-Leu であった。両方のサブユニットの決定済みN−末端配列は互いに異なっており、また28kDaサブユニットは今迄報告されていない新規な配列であった。更に6残基目以降のN−末端配列もまた、28kDaサブユニットは新規なサブユニットであることを示唆していた(図2)。28kDaと26.5kDaのバンドは完全に分離可能で、両方のサブユニットの配列プロフィールには汚染ピークは検出されなかった。他方、26.5kDaサブユニットのN−末端配列は、既知配列のEP領域の配列と同一であった。26.5kDaサブユニットのN−末端配列分析から、移送ペプチドは既知報告によるカルボキシル側49番目残基のアラニンでは無くて、カルボキシル側の48番目残基のシステインで開裂されていた(図2参照)。ここでは、28kDaと26.5kDaとを各々L(大)サブユニットとS(小)サブユニットと定義する。
【0015】
図2の大豆フェリチンのサブユニットの演繹されたアミノ酸配列を示す図において、
上の配列は、既に知られている配列と同じであるSサブユニットのアミノ酸配列を示し、。
下の配列は、本発明によるLサブユニットのアミノ酸配列を示す。
矢印はSサブユニットの開裂サイト(Proteolytic cleavage)を示す。また、実線で囲まれた部分はN−末端配列解析により決定されたLサブユニットのN−末端32残基を示し、破線で囲まれた部分はリジルエンドペプチダーゼによる消化により形成された第17番断片を示す。この断片はSサブユニットのカルボキシル末端に位置している。
【0016】
次いで、開裂サイトを検知するために、Sサブユニットのカルボキシル(C−)末端アミノ酸配列を分析した。C−末端残基を含むペプチド断片の配列は、Ser-Glu-Tyr-Val-Ala-Gln-Leu-Arg-Arg であった(図2)。この配列は既に知られている大豆フェリチン配列にも認められるが、C−末端残基は234番目のアルギニンだと決定したが、これは大豆フェリチン配列のC−末端に関する既存の報告からは18残基上流に位置していた。これ等のデータは、大豆種子フェリチン中のSサブユニットは、C−末端17残基の蛋白質分解性の開裂を伴うことを示した。
【0017】
3.新規フェリチン・サブユニットのアミノ酸配列
新しく同定された大豆フェリチンのLサブユニットに対するcDNAは、PCRを基本とする戦略によりクローン化した。cDNA配列から演繹されたアミノ酸配列を、既存の報告例と一緒に図2に示す。前駆体からTPが解離したLサブユニットの成熟領域は、209残基から構成されており、これはSサブユニット(202残基から成る)に比較して7残基長かった。Lサブユニットの成熟領域のアミノ酸配列は、Sサブユニットと82%の相同性を示した。成熟領域の高い相同性に反して、TP配列はL及びS間で配列の低い相同性(41%)しか示さなかった。成熟領域の配列では、演繹されたヘリカル領域(AからEヘリックス(Helix ))では、BとCへリックスを結合するループ領域では比較的に変異していたが、L及びSサブユニット間では高い相同性が保たれていた;即ちヘリカル、ループ及びEP領域のアミノ酸配列の相同性は、各々90%、81%及び63%であった。結果を表1に示す。
【0018】
Figure 0003932475
【0019】
Lサブユニットは、C−末端に5残基(その内の4残基は塩基性又は酸性アミノ酸である電荷残基)からなる延長部を持っていた。フェロオキシダーゼ・サイトだと考えられる全ての残基は、両方のサブユニットに保存されていた。鉄(III)-チロシン(tyrosinate)複合体を形成すると考えられているチロシン残基もまた、保存されていた。しかしながら、Sサブユニットの配列では、カルボキシル側が開裂される234番目のアミノ酸残基はアルギニンであるのに対して、Lタイプのサブユニットではこれに相応する位置のアミノ酸残基(235番目)はロイシンにより置換されていた。この置換により、Lサブユニットはカルボキシル末端開裂を受けなくなっていると考えられる。
上記したように、大豆Sサブユニットの場合にカルボキシル側が開裂されるアルギニン残基が、CP3配列にも認められた。
【0020】
4.大豆フェリチンSサブユニットのデグラデーション
大豆フェリチンSサブユニットの成熟全領域を E. coli で発現した。非変性PAGE( ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)(図1B参照)及びゲル濾過分析によると、組換え体大豆フェリチンも自然蛋白と同様に24量体に集合できることを示していた。組換え体Sサブユニットのホモポリマーを大豆の葉抽出物と培養したものの結果を図3に示す。Sサブユニットの約半分は10分以内に26.5kDa型へと開裂された。しかしながら1時間の培養の後には、28kDa型は消失し、少量の26.5kDa型のみ検出できた。2時間後には、26.5kDa型は完全に分解していて検出できなかった。他方、S及びLサブユニットを殆ど等量含有する自然の大豆フェリチンでは、28kDa型は存在しなかったが、培養2時間後にも26.5kDa型を検出することができた。この実験では抗Sサブユニット抗体を使用しているので、自然のフェリチンのLサブユニットは完全には検出できなかった。
【0021】
図3の組換え体及び自然の大豆フェリチンのデグラデーションを示す図において、上記のとおり組換え体及び自然の大豆フェリチンは、大豆の葉抽出物中で培養されたもので、フェリチン・サブユニットは抗Sサブユニット抗体により検出された。
図中、レーン1は大豆の葉抽出物、レーン2は150ngの組換え体Sサブユニット、レーン2からレーン8は150ngの組換え体Sサブユニットを葉抽出物とそれぞれ0、1、10、30、60及び120分間培養した後のSサブユニット、レーン9は150ngの自然の大豆フェリチン、レーン10及び11は、150ngの自然のフェリチンを葉抽出物と各々60及び120分間培養したもの結果を示す。
【0022】
5.鉄取り込み及び遊離
C−末端欠失の鉄取り込み及び遊離に及ぼす影響を研究するために、自然の大豆フェリチン(50%L)と、組換え体フェリチンの鉄取り込み及び遊離を試験した。自然の大豆フェリチンは、28kDaと26.5kDaとの両方のサブユニットを等量持っていたが、組換え体は、C−末端の配列を含むサブユニットの成熟領域全域から成っていた。C−末端が欠失しているSサブユニットの26.5kDa型は、24量体には集合しなかった。組換え体及び自然の大豆フェリチンの両方とも鉄取り込み活性を示した(図4A)。連続曲線(プログレッション・プロット)によると、自然の大豆フェリチンの取り込み率は、全ての構成サブユニットはフェロオキシダーゼ・サイトを保有しているにも係らず、組換え体より取り込み率が低かった。両方の取り込み率はFe(II)自動酸化率(コントロール)よりも高かった。
【0023】
フェリチンからの還元的遊離率も評価した(図4B)。自然及び組換え体フェリチンの鉄核形成反応は、一晩4℃でフェリチン/鉄モル比1/500で、硫酸第一鉄をFe(II)源として培養して実施した。フェリチン外殻の外側の第一鉄(Fe(II))原子はフェロジンに結合されるので、この複合体の吸光度を測定した。Fe(II)/ferrozine複合体の量は、どの時間コースを見ても組換え体よりも、自然の大豆フェリチンの方が多かった。両方のサブユニット間の鉄遊離率の差は、計算上はt検定でp=0.05により統計的に有意であり、C−末端16残基の開裂が蛋白外殻からの鉄遊離を促進していることが示された。
【0024】
図4Aは、大豆フェリチンの鉄取り込み反応の連続曲線プロットを示すグラフで、0.1Mフェリチン・サブユニット及び0.1mM硫酸第一鉄含有の0.1Mヒープス−Na、pH7.0中で実施した各フェリチンの結果を示す。コントロールは自動酸化率を示す。
図4Bは、集合されたフェリチンでのサブユニットの共存の影響を示すグラフである。
自然(Native)及び組換え体(Recombinant )フェリチン(2μM)は、0.1M MOPS(pH7.0)と0.2M塩化ナトリウム中に溶解した1mM硫酸第一鉄と混合することにより試験管中で鉱化した。鉱化されたフェリチンからの鉄遊離は、内部の鉄からの還元的遊離を促進するために、1mMフェロジンと4mMナトリウム・アスコルビン酸塩の添加により開始された。遊離された鉄は、Fe2+/ferrozine 複合体の吸光度を560nmにてモニターすることにより検出した。結果は3回の実験から得た。
【0025】
本発明において、本発明者らは、大豆フェリチンの2つの異なったポリペプチド鎖を検出し、新規なサブユニットをコードするcDNAを単離した。本発明によって大豆種子では二種類の違ったフェリチンが殆ど等量共存することが証明された。片方のサブユニットは分子量28kDaの既知のアミノ酸配列だったが、C−末端17残基の開裂により26.5kDa(Sサブユニット)に簡単に転化された。他のサブユニットは新規なアミノ酸配列を持ち、28kDa型(Lサブユニット)として残存していた。アミノ酸配列プロフィールによると、Sサブユニットは完全に26.5kDa型に転化された。これ等のデータは、26.5kDaサブユニットは、28kDaサブユニットのアミノ末端延長ペプチド(EP)の蛋白質分解性の開裂により生成し、28kDaと26.5kDaサブユニットは原則的には同一であると考えられている既存の仮説には反することであった。
【0026】
大豆の葉抽出物を使用したデグラデーション実験では、Sサブユニットのホモ24量体は、自然の大豆フェリチンに比較して不安定であった(図3)。Sサブユニットの不安定さは、SサブユニットのC−末端17残基を欠失している変異株ではオリゴマーに集合できないことから、C−末端17残基の開裂に起因すると思われる。他方、Lサブユニットは、C−末端領域の開裂には影響を受けず、また葉抽出物では安定であった。これ等のデータは、Lサブユニットは大豆種子ではフェリチンの24量体を安定化することを示した。
【0027】
本発明は、28kDaから26.5kDa型への転化は、C−末端17アミノ酸残基の開裂に起因することを示した。アミノ酸配列の整合データ、及び演繹された植物フェリチンの三次元構造から、開裂された17残基は“E−へリックス”に相当すると考えられる。この“E−へリックス”は動物などのフェリチン24量体において4回対称軸付近でのサブユニット間相互作用に関与し、狭いチャンネルを形成している。E−ヘリックスの開裂により作られた大きな孔は、鉄が自由に動き回れるだけの十分な孔径を持っていると期待される。自然の大豆フェリチンからの鉄遊離率は、組換え体の遊離率よりも高い(図4B)。これ等のデータは、鉄遊離率はE−へリックスの開裂により促進されたことを示唆した。E−へリックスの開裂の結果として形成される大きな孔は、フェリチンからの鉄遊離の新しい機作を提供する。
【0028】
植物フェリチンでは、幾つかの機能的な遺伝子が発見されている。本発明者らは、成熟過程が既存のフェリチンとは異なる新規な大豆フェリチンのサブユニットを見出し、この新規なサブユニットは、大豆種子フェリチンの主要なサブユニットの一つであることを示した。新規なフェリチンのサブユニットの一次構造は、既に報告されているサブユニットに近似していた(82%の相同性)。しかしながら、成熟過程における違いが“鉄遊離”の新しい機能の根拠になると認められる。大豆種子フェリチンは、鉄分子を積極的に取り込んだり遊離したりすることにより、細胞内での鉄の緩衝装置として機能していると思われるている。28kDa及び部分的に開裂された26.5kDaサブユニットは、エンドウや他のマメ科植物のフェリチンでも検出可能である。本発明の知見に基づくアミノ酸置換により、大豆のLサブユニットがC−末端残基の蛋白質分解性開裂に影響されなくなるが、この現象は他のマメ科植物のフェリチンにも適用できる。
【0029】
本発明を要約すると、フェリチンは大豆では少なくともSとLの二つのタイプのサブユニットから構成されている。28kDaの分子として存在するLサブユニットは、蛋白外殻の安定性に関与しており、他方、Sサブユニットは、E−へリックスの開裂により26.5kDa型に転化される。開裂はフェリチンからの鉄遊離の作用機作に関係する可能性がある。異なった機能を持つ多種のサブユニットの存在は、大豆以外のマメ科植物でも発現すると推測される。
【0030】
【発明の効果】
本発明の遺伝子由来のサブユニットから形成されるフェリチンは鉄の放出が少なくなり、フェリチン分子中により多くの鉄を蓄積できると容易に推測できる。従って、本発明のフェリチン遺伝子を植物に導入すれば、本発明者らが先に提案した高鉄含量植物の作成に多大な効果をもたらすことが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】大豆フェリチンのSDS−PAGE及び非変性PAG分析の結果を示す図である。
(A)精製された大豆フェリチンは、SDS−PAGEにより分析され、CBB( クーマシー・ブリリアント・ブルー : Coomassie Brilliant Blue)により染色された。(レーン1)
(B)大豆フェリチンの非変性PAGE分析。
レーン1:大豆種子から精製された自然の大豆フェリチン、
レーン2:E.coliにて発現された組換え体大豆フェリチン。
蛋白マーカー(M)は分子質量を表す。
【図2】大豆フェリチンのサブユニットの演繹されたアミノ酸配列を示す図である。
上:既に知られている配列と同じであるSサブユニットのアミノ酸配列。
下:本発明によるLサブユニットのアミノ酸配列。
Sサブユニットの開裂サイトは矢印で表示。
実線で囲まれた部分:N−末端配列解析により決定されたLサブユニットのN−末端32残基。
破線で囲まれた部分:リジルエンドペプチダーゼによる消化により形成された第17番断片。
この断片はSサブユニットのカルボキシル末端に位置する。
【図3】組換え体及び自然の大豆フェリチンのデグラデーションを示す図である。
組換え体及び自然の大豆フェリチンは、大豆の葉抽出物中で培養された。フェリチン・サブユニットは抗Sサブユニット抗体により検出された。
レーン1:大豆の葉抽出物、レーン2:150ngの組換え体Sサブユニット、レーン2から8:150ngの組換え体Sサブユニットを葉抽出物とそれぞれ0、1、10、30、60及び120分間培養した後のSサブユニット。
レーン9:150ngの自然の大豆フェリチン、
レーン10及び11:150ngの自然のフェリチンを葉抽出物と各々60及び120分間培養したもの。
【図4】(A)大豆フェリチンの鉄取り込み反応の連続曲線プロットを示すグラフである。
(B)集合されたフェリチンでのサブユニットの共存の影響を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 下記のアミノ酸配列からなるフェリチンサブユニット。
    Met Ala Leu Ser Cys Ser Lys Val Leu Thr Phe Tyr Leu Ser Pro Val
    Val Gly Gly Gly Asp Val Pro Lys Lys Leu Thr Phe Ser Phe Leu Gly
    Leu Ser Lys Gly Val Gly Gly Ala Arg Ser Ser Arg Val Cys Ala Ala
    Ser Asn Ala Pro Ala Pro Leu Ala Gly Val Ile Phe Glu Pro Phe Gln
    Glu Leu Lys Lys Asp Tyr Leu Ala Val Pro Ile Ala His Asn Val Ser
    Leu Ala Arg Gln Asn Tyr Ala Asp Asp Ser Glu Ser Ala Ile Asn Glu
    Gln Ile Asn Val Glu Tyr Asn Val Ser Tyr Val Tyr His Ala Leu Phe
    Ala Tyr Phe Asp Arg Asp Asn Ile Ala Leu Lys Gly Leu Ala Lys Phe
    Phe Lys Glu Ser Ser Glu Glu Glu Arg Glu His Ala Glu Gln Leu Ile
    Lys Tyr Gln Asn Ile Arg Gly Gly Arg Val Val Leu His Pro Ile Thr
    Ser Pro Pro Ser Glu Phe Glu His Ser Glu Lys Gly Asp Ala Leu Tyr
    Ala Met Glu Leu Ala Leu Ser Leu Glu Lys Leu Thr Asn Glu Lys Leu
    Leu His Val His Ser Val Ala Asp Arg Asn Asn Asp Pro Gln Leu Ala
    Asp Phe Ile Glu Ser Glu Phe Leu Tyr Glu Gln Lys Glu Ser Ile Lys
    Lys Ile Ala Glu Tyr Val Ala Gln Leu Arg Leu Val Gly Lys Gly His
    Gly Val Trp His Phe Asp Gln Lys Leu Leu His Asp Glu Asp Val His
  2. 請求項1に記載のアミノ酸配列からなるサブユニットをコードするフェリチン遺伝子。
  3. 遺伝子組換えによる請求項2記載のフェリチン遺伝子。
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