JP3931234B2 - 極超音速機用エンジン - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、再使用型宇宙輸送システム等にも適用可能な極超音速機用エンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
再使用型宇宙輸送システム等に用いられる極超音速機の飛行速度は、離着陸時等の低マッハ数から、例えばマッハ6という高マッハ数までの広い速度範囲にわたる。極超音速機に用いられるジェットエンジンは、この広い速度範囲内のどの速度でも十分な推力を発揮しなけらばならない。そのためには、エンジンの作動状態に応じて、空気取り入れ口であるインテークと燃焼ガス噴出用のノズルとのスロート面積を大きく変える必要がある。更に、インテークにおいては、極超音速から亜音速まで流入空気を減速して運動量を圧力に変換する過程での圧力損失を最小限に抑えることが、また、ノズルにおいては、外部気流が膨張して生じるボートテール抗力を最小限に抑えることが求められる。
【0003】
インテークとノズルに求められるこれらの機能を実現するための方式としては、大きく分けて、流路内に置かれたブロックを前後に動かす方式と、流路を構成する壁面の角度を変える方式がある。前者の方式では、駆動部品と固定部品の形状を変えることにより、ある程度スロート面積を変化させることができるが、超音速気流の減速や加速に必要な壁面角度を最適に維持することができないため、非設計点において、エンジン性能が低下することが避けられない。後者の方式は、流量を調整するためのスロート面積を変化させるとともに、超音速気流の減速や加速の過程に必要な壁面角度を設定することができるため、非設計点においてもエンジン性能を高く維持することができるが、可動壁を駆動するために強力な駆動装置が必要になる傾向がある。
【0004】
極低温燃料の冷熱を利用して圧縮機における必要な空気圧縮仕事を小さくして推力を向上させたターボジェットエンジン、及びそうしたターボジェットエンジンを備えた複合エンジンの一例が提案されている(特許文献1参照)。この複合エンジンでは、理論混合比以上の燃料過剰な極低温燃料の冷熱を利用してエンジンに取り込まれる空気を冷却することで、圧縮機における必要な空気圧縮仕事を大きく低下させている。冷却に使用した過剰燃料をすべて燃焼器に供給することで、タービンに流入する燃焼ガス量を増加させ、小さなタービン膨張比で空気圧縮を行うことにより、排気ガスの圧力を高めて推力をロケットエンジン並みに向上させることができる。また、超音速で飛行する飛翔体のインテークにおける提案として、カウルに対向し、超音速ランプ部に連なる流路のランプ及びスロート内部の平板をそれぞれリンク機構によって揺動可能とし、この各リンク機構は、エンジン始動時の検出に応じて行われる通電による形状記憶合金の変位とバイアスばねのばね力によって正逆動作をする構成とされている(特許文献2参照)。
【0005】
離着陸時から亜音速及び超音速を経て飛行マッハ数が5を超える極超音速まで、高いノズル効率を維持することを図った極超音速用エンジン排気ノズルが提案されている(特許文献3参照)。この排気ノズルにおいては、極超音速用エンジンの後方に配置されるコンバージェンス部に主ヒンジで揺動可能に連結されるダイバージェンス部を、少なくとも一つの補助ヒンジで連結される複数の部分フラップから構成し、各ヒンジに設けられている駆動機構によって、各ヒンジで連結される前後の連結角度を変更することを可能にしている。また、ダクトの可撓性膜材の流路への突出形状を3次元カムのような簡単な機構によって変えて、流路断面積を変更する可変ノズル機構及びそれを備えたターボファンエンジンの一例が提案されている(特許文献4参照)。更に、高温ガス流路横断面形状を大きく変える推進ノズルを備えたジェットエンジンの一例として、高温ガス流路の出口側拡大部において、軸方向に移動可能な拡散形状の推進ノズル延長部を備え、推進ノズル延長部は、その軸方向突き出し位置でノズル外壁の拡散出口に接続し、引っ込み位置を占めるときには、遅い飛行状態では、固定ノズルとの間に環状の空気出口通路を形成することが提案されている(特許文献5)。
【0006】
離陸時から極超音速の飛行速度まで作動する極超音速機用エンジンにおいて、性能を最適化して最大の推力を発揮するためには、飛行速度に応じてインテークとノズルの壁面角度とスロート面積を大きく変化させる必要がある。しかしながら、壁面角度とスロート面積との変更を実現するためには、可動壁を駆動するための強力な駆動装置が必要である。上記の各公知文献においては、そうした形状や断面積の変更を行うための駆動力を得る具体的な手段について言及がないか、或いは、言及があっても駆動装置の重量が過大であるとエンジン性能の向上効果が相殺されるという問題がある。また、可撓性材料を用いる上記のターボファンエンジンでは、高温の燃焼ガスに耐える可撓性材料の入手が事実上困難である。更に、軸方向に移動可能な推進ノズル延長部を備える上記のジェットエンジンでは、環状の空気出口通路で定められる最大スロート面積が大きく取れず、エンジン性能が低下する速度領域が発生するおそれがある。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−8955号公報([0014]〜[0018]、図1及び図2)
【特許文献2】
特開平2000−283698号公報([0009]〜[0010]、図5及び図6)
【特許文献3】
特開平8−74660号公報([0009]〜[0012]、図1)
【特許文献4】
特開平2000−87803号公報([0016]〜[0026]、図1)
【特許文献5】
特開平6−159136号公報([0016]〜[0020]、図2〜図4)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、極超音速機用エンジンが離陸滑走からマッハ6程度の極超音速という広い作動範囲で最大の推力を発揮するためには、飛行速度に応じて大きく変化する最適の空気流量を供給および排出するために、インテークおよびノズルのスロート面積を大きく変化させる点で解決すべき課題がある。
【0009】
この発明の目的は、インテークとノズルの空力特性を確保しつつ、エンジンの最大性能を発揮するために空気流量を調整可能である、軽量な可変機構を備えた極超音速機用エンジンを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、この発明による極超音速機用エンジンは、対向するインテーク外壁を有し空気を取り入れるインテーク部と、対向するノズル外壁を有し且つ取り入れられた前記空気を用いて燃料を燃焼させたときに生じる燃焼ガスを排出するノズル部とを備え、前記両インテーク外壁間で定められ前記空気を取り入れるためのインテーク流路内に、傾斜角度を変更可能に配置されて前記両インテーク外壁との間に形成されるインテークスロートの断面積を変更可能なインテーク壁体を備え、前記両ノズル外壁間で定められた前記燃焼ガスを排出する排気流路内には、傾斜角度を変更可能に配置されて前記ノズル外壁との間に形成されるノズルスロートの断面積を変更可能なノズル壁体を備えていることから成っている。
【0011】
この極超音速機用エンジンによれば、インテーク流路と排気流路とにおいて、各流路の中央にそれぞれインテーク壁体とノズル壁体とが配置されているので、インテーク壁体とノズル壁体との各可動壁の角度を変化させることで、各可動壁において超音速気流の減速や加速に必要な壁面角度が維持されるとともに、流量を調整するためのインテークスロートやノズルスロートの面積を大きく変化させることができる。即ち、超音速気流では、壁面で転向させられた角度に応じて転向・減速され、運動量と圧力との間で変換(インテーク部では圧力への変換、ノズル部では運動量への変換)が行われるが、この際、マッハ数と転向角に応じてインテーク部では衝撃波が、またノズル部では膨張波が発生する。衝撃波が強くなりすぎると圧力損失が大きくなり、逆に衝撃波が弱すぎると十分に減速・圧縮することができない。圧力損失を少なくしつつ十分に減速・圧縮するには、マッハ数に応じて壁面のランプ角を変更する必要があり、本発明によれば、インテーク壁体の各可動壁の角度を変化させることでランプ角の変更を変更することができる。また、流れが膨張しすぎると流れが壁面から剥離してノズル推力効率が低下し、逆に流れ膨張が十分でなければノズル出口速度を向上して有効な推進力を得ることができない。ノズル推力効率の低下を防ぎつつ、十分なノズル出口速度を確保するには、マッハ数に応じて壁面のランプ角を変更する必要があり、本発明によれば、ノズル壁体の各可動壁の角度を変化させることでランプ角を変更することができる。
【0012】
この極超音速機用エンジンにおいて、前記インテーク壁体は、左右対称に配置されると共に互いに連結され且つインテーク駆動装置によって前記傾斜角度を変更可能に駆動されるインテーク可動壁を備え、前記ノズル壁体は、左右対称に配置されると共に互いに連結され且つノズル駆動装置によって前記傾斜角度を変更可能に駆動される可動ノズル壁を備えることが好ましい。インテーク壁体のインテーク可動壁とノズル壁体の可動ノズル壁とを左右対称に配置し且つ互いに連結することで、インテーク可動壁又は可動ノズル壁に作用する非対称な力を相殺することができ、インテーク壁体とノズル壁体の構造を簡単化及び小型軽量化を図ることができる。
【0013】
インテーク可動壁と可動ノズル壁とを備える極超音速機用エンジンにおいて、前記インテーク壁体の内部には、前記インテーク駆動装置を冷却するための気体が流入量調節可能に流入されるインテーク壁体内部空間を形成し、前記ノズル壁体の内部には、前記ノズル駆動装置を冷却するための気体が流入量調節可能に流入されるノズル壁体内部空間を形成することができる。インテーク駆動装置を冷却するためインテーク壁体内部空間に流入される気体、及びノズル駆動装置を冷却するためノズル壁体内部空間に流入される気体の流入量を調節することにより、インテーク部及びノズル部において、各可動壁の内部と外部の圧力差によって各可動壁に作用する力を互いに相殺させるように作用させることが可能となる。したがって、各可動壁に外部から作用する力に対して駆動装置の駆動力でのみ対抗する場合と比較して、駆動装置を小型化し、軽量化を図ることができる。
【0014】
可動ノズル壁とを備える極超音速機用エンジンにおいて、前記両ノズル外壁を外部気流の流れと平行に配置し、前記ノズル壁体の前記可動ノズル壁は、前記燃焼ガスの流れの上流側において内部膨張ノズルを形成すると共に、前記内部膨張ノズルの下流に外部膨張ノズルを形成することが好ましい。通常のプラグノズルのようなカウル後端部を窄ませる形状を持つ外部膨張ノズルにおいては、カウル外面に沿って流れる外部気流が膨張することでカウル内外の圧力差に起因して抗力(ポートテール抗力)が生じる。それに対して、この極超音速機用エンジンでは、両ノズル外壁を外部気流と平行に配置し、それに対応して可動ノズル壁の下流側を内部膨張ノズルに構成することにより、カウル外面が外部気流と平行に延びてカウル外面の圧力が低下することなく、可動ノズル壁が推力を受けることができる。また、カウル内面と外面との間に圧力差が生じても、ポートテール抗力を最小限にすることができる。可動ノズル壁によって上流側の内部膨張ノズルとその下流に外部膨張ノズルとを形成することにより、例えばノズルを内部膨張ノズルのみから構成する場合と比較して、エンジンの設計高度を含み高度変化によって外部圧力に大きな変化がある相当の高度範囲において、外部膨張ノズル内の流れは外部圧力まで有効に膨張・加速され、その圧力が推力に変換され、ノズルの推力効率を高く維持することができる。
【0015】
【発明の実施の態様】
本発明による流路可変機構を備えた極超音速機用エンジンの実施例を、図面を参照して説明する。図1は、この発明による流路可変機構を備えた極超音速機用エンジンの一実施例を示す平面図、図2は図1に示す極超音速機用エンジンの斜視図である。図1及び図2に示す流路可変機構を備えた極超音速機用エンジンは、最も単純な形態であるラムジェットエンジンの実施形態を示す。図1に示す極超音速機用エンジンにおいて、左端がインテーク部I、右端が燃焼ガスを排出するノズル部Nである。飛行中の気流は、図の左方向から右方向に流れる。
【0016】
インテーク部Iにおいて、先端側が尖っているインテーク先端部1は、インテーク収縮部可動壁2の先端部に取り付けられており、インテーク部Iに流入する空気流を左右に分流する。インテーク外壁3は、並行に延びる燃焼器外壁9の先端側において、インテーク収縮部可動壁2の両側で且つ互いに平行に前方に延びている。インテーク収縮部可動壁2の後端部と燃焼器外壁9との間には、流路が最も絞られて狭くなったインテークスロート17が形成されている。インテーク収縮部可動壁2には、その後方において、インテーク可動壁接続部6を介してインテーク拡大部可動壁4が連結されている。インテーク拡大部可動壁4は、インテーク収縮部可動壁2と対照的に、後方に向かうに従って外面がテーパ状に窄む構造を有しており、インテーク外壁3との間において外側を流れる流路18を次第に拡大させている。インテーク収縮部可動壁2とインテーク拡大部可動壁4とはインテーク可動壁を構成しており、内部に可動壁内部空間5が形成されている。インテーク拡大部可動壁4にはインテーク駆動装置7が備わっており、後で詳細に説明するが、インテーク駆動装置7の作動によって、インテーク可動壁接続部6を介してインテーク収縮部可動壁2とインテーク駆動装置7とは横方向に拡縮して、インテークスロート17の断面積を調節をすることができる。インテーク先端部1、インテーク可動壁、インテーク可動壁接続部6及びインテーク駆動装置7は、インテーク壁体を構成している。
【0017】
インテーク駆動装置7の下流側において、燃焼器外壁9の内部には、燃料噴射装置8が配設されている。燃料噴射装置8はインテーク部Iから流入した空気流れ内に燃料を噴射して、燃焼室にて燃料が燃焼する。生じた高温の燃焼ガスが後述するノズル部Nから排気される。
【0018】
燃焼器外壁9の後端側において、ノズル外壁11が互いに略平行に後方に延びている。燃焼器外壁9の後端側のノズル部Nにおいて、ノズル外壁11の内側には先端側が尖っているノズル先端部16が配置され、ノズル外壁11の更に後方には後端が尖ったノズル後端部12が配置されており、ノズル先端部16とノズル後端部12との間にはノズル可動壁接続部13が配置されている。ノズル後端部12の前側位置においてノズル可動壁10が枢着されており、ノズル可動壁10はノズル先端部16とノズル後端部12との間に配置されている。ノズル可動壁10は、ノズル駆動装置15の作動によって、ノズル可動壁接続部13を介してノズル外壁11に対して接近又は離間し、ノズル可動壁10とノズル外壁11との間に形成されるノズルスロート19の断面積を調節可能にしている。燃焼器内の燃焼ガスは、ノズル部Nにおいて左右に分流される。ノズル先端部16、ノズル可動壁、ノズル可動壁接続部13及びノズル駆動装置15は、ノズル壁体を構成しており、その内部にはノズル可動壁内部空間14が形成されている。
【0019】
可変構造を持つインテーク部Iにおいては、飛行マッハ数の変化に応じてインテーク駆動装置7を動作させることで、超音速気流を減速するのに最適なインテーク収縮部可動壁2の角度が設定される。また、可変構造を持つノズル部Nにおいては、飛行マッハ数の変化に応じてノズル駆動装置15を動作させることで、超音速飛行において燃焼ガスを排気するのに最適なノズルスロート19の面積が設定される。この際、インテーク部Iに流入する空気の流量は、インテーク収縮部可動壁2の後端部外面とインテーク外壁3の内面との間に形成されるインテークスロート17の面積により決定される。
【0020】
超音速機の飛行マッハ数(横軸)に対するインテーク部Iとノズル部Nとの主要な部分における面積の変化の様子が図3のグラフに示されている。図3において、Acefは有効捕獲面積であり、飛行速度に応じて、インテーク入口に流入することができる無限前方の気流の断面積である。Aitはインテークスロート17で定められるインテークスロート面積であり、Antはノズルスロート19で定められるノズルスロート面積であり、そして、Aneはノズル出口面積であり、ノズル出口においてエンジンから排出された気流が形成する断面積である。図3の縦軸のスケールは、最大正面面積Acmaxに対する各面積の比である。
【0021】
図3から判るように、インテーク部Iにおいては、有効捕獲面積Acefはマッハ数の上昇とともに大きくなり、マッハ3.5付近でインテークの最大断面積に達するが、インテークスロート面積Antはマッハ2.5付近から減少する。インテーク収縮部可動壁2の角度はマッハ数の上昇とともに増大し、設計点であるマッハ6で最大値に達する。この時、インテークスロート部17の面積は、インテーク収縮部可動壁2の作動に連動して、マッハ数の上昇とともに減少する。ノズル部Nにおいては、ノズル出口面積Aneはマッハ数の上昇とともに大きくなり、マッハ2付近でノズルの最大断面積に達するが、ノズルスロート面積Antはマッハ2.5までは広くなるがそれ以上のマッハ数に対しては減少するように制御される。
【0022】
図4(A)に拡大して示すように、気流方向で見て左右に位置するインテーク収縮部可動壁2とインテーク拡大部可動壁4は、インテーク可動壁接続部6を介して接続されている。インテーク可動壁接続部6は、インテーク駆動装置7から延びる中央出力ロッド6aに対して左右対称に枢着されたリンク6b,6b及び6c,6cがそれぞれインテーク収縮部可動壁2の後端部、及びインテーク拡大部可動壁4の前端部に枢着されることで、リンク結合されている。
【0023】
インテーク駆動装置7を冷却するため、冷却用の気体がインテーク可動壁内部空間5に供給される。気体の供給量を調節することによりインテーク可動壁内部空間5の圧力が調節される。この圧力調節によって、インテーク収縮部可動壁2が外側に押される力とインテーク拡大部可動壁4が内側に押される力を均衡させて、インテーク駆動装置7の駆動力を最小限にして軽量化することができる。即ち、インテーク先端部1とインテーク駆動装置7の後端部7aとが機体に固定されており、インテーク可動壁内部空間5の圧力(可動壁内部圧力)は、インテーク収縮部可動壁2の外部圧力よりも高く、インテーク拡大部可動壁4の外部圧力よりも低い。この状態では、図4(A)中にハッチングで示す大きさと分布で内外の圧力差が生じており、インテーク収縮部可動壁2は圧力で開く方向に力を受け、インテーク拡大部可動壁4は閉じる方向に力を受ける。インテーク収縮部可動壁2とインテーク拡大部可動壁4とに作用するこうした力は、インテーク可動壁接続部6において、中央出力ロッド6aに対して、リンク6b,6bを介して作用する前方方向への力と、リンク6c,6cを介して作用する後方方向への力となり、互いに相殺される。したがって、インテーク駆動装置7は、外部気流から作用する力に直接対抗する必要はなく、正味の駆動をおこなうだけの最小限の駆動力で済む。
【0024】
図4(B)に拡大して示すように、可変ノズル部Nにおいては、インテーク部Iから供給された空気と燃料噴射装置8から供給された燃料の反応により生成された燃焼ガスの流量に対応したノズルスロート19のスロート面積が実現するようにノズル可動壁10の角度が設定される。ノズル可動壁接続部13は、ノズル駆動装置15から前方へ延びる中央出力ロッド15aと、中央出力ロッド15aに対して左右対称に枢着され且つノズル可動壁10,10に枢着されているリンク15b,15bとから成っている。ノズルスロート19は、ノズル可動壁10の外面とノズル外壁11の内面との間に形成される。ノズルスロート19を通過した燃焼ガスはノズル可動壁10とノズル外壁11で形成される内部膨張ノズル19aを通過して膨張される。
【0025】
気流方向から見て左右に位置するノズル可動壁10はノズル可動壁接続部13を介して接続されており、ノズル駆動装置15を冷却する気体の供給量を調節することによりノズル可動壁内部空間14の圧力を調整し、ノズル可動壁10の内面と外面の圧力を均衡させて、ノズル駆動装置15の駆動力を最小限にして軽量化することができる。ノズル部Nにおいても、インテーク部Iの場合と同様に、ノズル可動壁内部空間14の圧力を調整することにより、内外圧力差に起因してノズル駆動装置15の中央出力ロッド15aに作用する力が互いに相殺される。即ち、ノズル先端部16とノズル後端部12とが機体に固定されており、ノズル可動壁内部空間14の圧力(可動壁内部圧力)は、ノズル可動壁10の略半分前方部分では外部圧力よりも低く、略半分後方部分では外部圧力よりも高い。この状態では、図4(B)中にハッチングで示す大きさと分布で内外の圧力差が生じており、ノズル可動壁10は、略半分前方部分では閉じる方向に力を受け、略半分後方部分では開く方向に力を受ける。こうした力は、ノズル可動壁10において相殺されてノズル可動壁接続部13を介してノズル駆動装置15に及ばない。したがって、ノズル駆動装置15は、外部気流から作用する力に直接対抗する必要はなく、正味の駆動をおこなうだけの最小限の駆動力で済む。
【0026】
図5は、エンジンがラムジェットエンジンの場合であって、極超音速機がマッハ6以上で飛行するときのエンジンの状態(A)と、マッハ3以下で飛行するときのエンジンの状態(B)を示す図である。極超音速機がマッハ6以上で飛行するときには、図5(A)に示すようにインテーク部Iとノズル部Nとは各スロートが閉状態であり、極超音速機がマッハ3以下で飛行するときには、図5(B)に示すようにインテーク部Iとノズル部Nとは各スロートが開状態であることを示している。
【0027】
図6は極超音速機用エンジンにおいて、内部膨張ノズルのみから成るノズル20と、この発明による極超音速機用エンジンで採用される内部膨張ノズルと外部膨張ノズルとを組み合わせたノズル(以下、「組合せノズル」という)との流れの場を説明する説明図である。図6(C)及び(D)は、設計高度での内部膨張ノズルと組合せノズルとにおける流れの場を示す。両ノズルは、設計高度において、ノズル内の流れは、出口21及び外壁11の先端25において、それぞれ外部気流と平行な流れになるように膨張・加速される。図6(A)及び(B)は、それぞれ設計高度よりも低高度で飛行する場合の内部膨張ノズルと組合せノズルとにおける流れの場を示す。低高度では外部圧力が比較的に大きいので、(A)の内部膨張ノズルでは、ノズル内で気流が剥離して(剥離流れとの境界を22で示す)気流が十分に膨張・加速されないために、推力効率が低下する傾向がある。それに対して、(B)の組合せノズルでは、ノズル可動壁の角度を小さくして外部膨張ノズル入口における圧力の下がり過ぎを防ぐと共に、高い外部圧力によって外部気流との自由境界面26が内側に曲がるのを許容することで、ノズル気流が剥離することなく外部圧力まで膨張・加速することができ、推進効率を高く維持することができる。図6(E)及び(F)は高高度での内部膨張ノズルと組合せノズルとにおける流れの場を示す。高高度では外部圧力は設計高度と比較して低いので、(E)の内部膨張ノズルでは、ノズル出口21においてもノズル流れの圧力はなお外部圧力よりも高いので、その後も膨張を続けてノズル下流の自由境界面23は外側に曲げられ、ノズル下流で膨張・加速された分の圧力を推力として回収することができない。これに対して、(F)の組合せノズルでは、自由境界面28は外側に曲げられても、ノズル気流は外部膨張ノズル出口27まで膨張・加速され、推力を得ることができる。したがって、組合せノズルにおいては、燃焼ガスはノズル後端部12の表面に沿って流れる際に外部気流と自由境界を形成し、広い外部圧力範囲に適応して、過大な損失を生じることなく、加速膨張される。図6(G)は、カウル29aが絞られ、且つプラグ29bを有する従来のプラグノズル29を示す模式図である。外部気流が、膨張波を伴って絞られたカウル29aの外面に沿って膨張するため、ポートテール抗力を生じる様子を示してある。
【0028】
この発明による極超音速機用エンジンが適用可能なエンジンは、例えば、ターボ系エンジンとしては、予冷ターボエンジンやターボ・ラムジェットエンジンが、またロケット系複合エンジンとしては、エジェクター・ラムジェットエンジンや空気液化式エンジンが挙げられる。図7は、予冷ターボエンジンの一例を示す縦断面図である。図7に示す予冷ターボエンジン30は、燃料として液体水素を用い、可変構造に構成されたインテーク部Iを出た空気流れは、ターボポンプ31から冷却された燃料が送られる予冷器32で冷却されて圧縮効率を高められる。インテーク部Iから取り入れられた空気と燃料としての水素とはコアエンジン33で反応されて、燃焼ガスを可変構造に構成されたノズル部Nから排気する。図8は、図7に示す予冷ターボエンジンを複数基、極超音速機に適用した状態を示す斜視図である。図8に示すスペースプレーン等の極超音速機40においては、6基の予冷ターボエンジン30が機体下面に3列に並べて配置されている。
【0029】
【発明の効果】
本発明による極超音速機用エンジンによれば、離陸から極超音速までの広い飛行速度範囲において、インテーク部とノズル部の空力性能を維持しつつ、最適な空気流量の供給と排出が可能になり、当該エンジンの推力性能を最大化させることができる。また、可動壁の左右対称配置と冷却気体を用いた圧力均衡の活用とにより、駆動装置の駆動力を最小化して軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の可変機構を備えた極超音速機用エンジンのうち、最も単純な形態であるラムジェットエンジンの実施形態を示す。
【図2】図2は上記ラムジェットエンジンの鳥瞰図である。
【図3】図1に示す極超音速機用エンジンにおいて、インテーク部Iとノズル部Nとの主要な部分における面積の飛行マッハ数に対するの変化の様子を示すグラフである。
【図4】図1に示す極超音速機用エンジンにおいて、インテーク部(図4(A))とノズル部(図4(B))とを拡大して示す図である。
【図5】本発明による極超音速機用エンジンとしてのラムジェットエンジンである場合、極超音速機がマッハ6以上で飛行するときのエンジンの状態(A)と、マッハ3以下で飛行するときのエンジンの状態(B)を示す図である。
【図6】極超音速機用エンジンにおいて、内部膨張ノズルのみから成るノズルと、内部膨張ノズルと外部膨張ノズルとを組み合わせたノズルとにおける流れの場を説明する説明図である。
【図7】本発明による極超音速機用エンジンとしての予冷ターボエンジンの一例を示す縦断面図である。
【図8】図7に示した予冷ターボジェットエンジンを、再使用型宇宙輸送システムに搭載した例を示す斜視図である。
1 インテーク先端部
2 インテーク収縮部可動壁
3 インテーク外壁
4 インテーク拡大部可動壁
5 インテーク可動壁内部空間
6 インテーク可動壁接続部
7 インテーク駆動装置
8 燃料噴射装置
9 燃焼器外壁
10 ノズル可動壁
11 ノズル外壁
12 ノズル後端部
13 ノズル可動壁接続部
14 ノズル可動壁内部空間
15 ノズル駆動装置
16 ノズル先端部
17 インテークスロート
18 流路
19 ノズルスロート
19a 内部膨張ノズル
I インテーク部
N ノズル部

Claims (4)

  1. 流路の中心面に対して左右対称に配設された複数のインテーク可動壁を有し且つ該インテーク可動壁の前記中心面に対する傾斜角度を変えることにより空気が通過するインテークスロートの断面積を可変にするインテーク壁体と、同様に配設された複数のノズル可動壁を有し且つ該ノズル可動壁の傾斜角度を変えることにより前記空気と燃料を燃焼させたときに生じる燃焼ガスが通過するノズルスロートの断面積を可変にするノズル壁体とを具備した極超音速機用エンジンであって、前記インテーク壁体および前記ノズル壁体は、前記インテーク可動壁および前記ノズル可動壁を左右対称に各々配置し且つ互いに各々連結することで各々の壁体に作用する左右方向の力を相殺すると共に、内部に形成された各空間に調整された圧力の空気を各々供給し該外部気流が前記壁体に作用する力を各々相殺することで、前記インテーク可動壁および前記ノズル可動壁の駆動を各々補助するように構成され、最小限の駆動力で前記インテークスロートの断面積および前記ノズルスロートの断面積を各々可変にすることを特徴とする極超音速機用エンジン。
  2. 前記インテーク可動壁は、上流側に行くに従いテーパー状に窄むインテーク収縮部可動壁の対と、下流側に行くに従いテーパー状に窄むインテーク拡大部可動壁の対とを備え、且つ該インテーク収縮部可動壁の対と該インテーク拡大部可動壁の対は、該インテーク可動壁の対の狭角の間に配設された1個のインテーク駆動部から延びる出力ロッドの先端部に左右対称に取り付けられた複数のリンクによってリンク結合されて、前記インテーク壁体の内部に駆動力低減のための調整された圧力の空気を供給する可変空間を形成することから成る請求項1に記載の極超音速機用エンジン。
  3. 前記ノズル可動壁は、上流側に行くに従い突起したノズル先端部と下流側に行くに従い突起したノズル後端部との間に該ノズル後端部を支点として回動可能に左右対称に配設され、且つ該ノズル先端部あるいはノズル後端部に配設された1個のノズル駆動部から延びる出力ロッドの先端部に左右対称に取り付けられた複数のリンクによってリンク結合されて、前記ノズル壁体の内部に駆動力低減のための調整された圧力の空気を供給する可変空間を形成することから成る請求項1に記載の極超音速機用エンジン。
  4. 前記燃焼ガスの流路を形成する両ノズル外壁を外部気流の流れと平行に配置することでノズル外壁の外側面に低圧領域が生じることに起因する空気抵抗力を低減すると共に、前記ノズル壁体の前記ノズル可動壁は、ノズルスロートの下流においてノズル外壁との間の流路面積を下流方向に拡大することで超音速の燃焼ガスを加速膨脹する内部膨張ノズルを形成すると共に、前記内部膨張ノズルの下流にノズル後端部と外部流に挟まれた空間の流路面積を下流方向に拡大することで超音速の燃焼ガスを加速膨脹する外部膨張ノズルを形成することにより、燃焼ガスと外部流の圧力比が変化した時に燃焼ガスと外部流の間に形成される境界面の角度が変化することで、ノズル後端部の壁面における剥離現象を回避して適切な加速膨脹を実現できる請求項3に記載の極超音速機用エンジン。
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