JP3927611B2 - 明色カチオン乳剤組成物およびそれを用いたスラリーシール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、明色カチオン乳剤組成物およびそれを用いたスラリーシールに関する。
【0002】
【従来技術】
我が国では、生活にゆとりができるに従って道路の舗装にもカラー舗装がみられるようになった。しかし、現在のカラー舗装用バインダーは、透明度が低く鮮明度の優れた舗装が得られないだけでなく、舗装用バインダー組成物を運搬する間の加熱貯蔵期間中にも劣化が著しく進み黒く変色することが多く、施工後の舗装表面に色むらが発生することがしばしばである。
【0003】
そこで、本発明者らは、カラー舗装用バインダー組成物として
Figure 0003927611
よりなる組成物が優れていることを見出している。
【0004】
ところが、このようなカラー舗装用バインダーを用いた舗装工事においてもスラリーシール工法は欠かすことができないものである。
【0005】
しかしながら、市場に出まわっている舗装用あるいは道路補修用スラリーシールはすべてアスファルトを主成分とした黒色のアスファルト乳剤(例えば特開平1−103663,1−170652,1−170653,特開昭53−117014号などがある。)であって、いろいろの色に着色可能なスラリーシールは存在していないのが実情である。
【0006】
一方、本出願人は、アスファルトを主成分とするスラリーシールの乳化剤として
【化2】
Figure 0003927611
(式中Rは、炭素数11〜20の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、R′およびR″は、同種または異種の炭素数1〜4の低級アルキル基である)
で示されるジアミンを乳化剤として使用することを提案した(特開平1−170652号)が、これが前記カラー舗装用バインダー組成物の乳化剤として有効であるかどうかは知られていない。
【0007】
アスファルト乳剤にしろ、アスファルト乳剤に代わるアスファルト乳剤代替物(着色可能な点に特色がある。)にしろ、いずれも骨材への付着性がよく、乳剤の分解時間が速く、作業能率が良いことが必要であるから、前記乳化剤がすべてのバインダー組成物に対して前記必要条件を満たすものであるかどうかは予測することができない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、貯蔵安定性、骨材への付着性、耐摩耗性および耐変形抵抗性を有する着色可能なアスファルト乳剤代替物としての明色カチオン乳剤組成物およびそれを用いたスラリーシールを提供する点にある。
【0009】
本発明の第1は、
〔A〕(1)石油系溶剤抽出油 20〜90重量%
(2)C留分を原料とする石油樹脂 80〜10重量%
(3)CおよびC留分を原料とするC、C共重合石油樹脂
0.1〜50重量%
(4)熱可塑性ゴム 3〜5重量%
(5)マレイン化樹脂 0.5〜2重量%
よりなるバインダー組成物を
〔B〕下記一般式(I)
【化3】
Figure 0003927611
(式中Rは炭素数11ないし20の飽和または不飽和の脂肪族または芳香族炭化水素基、R′およびR″は同種または異種の炭素数1ないし4の低級アルキル基である)
で示されるジアミン系乳化剤
を用いて乳化したことを特徴とする明色カチオン乳剤組成物に関する。
【0010】
本発明の第2は、さらに中和剤としてリン酸を添加した請求項1記載の明色カチオン乳剤組成物に関する。
【0011】
本発明の第3は、請求項1または2記載の明色カチオン乳剤組成物および骨材とを含有することを特徴とするスラリーシールに関する。
【0012】
本発明の第4は、請求項1または2記載の明色カチオン乳剤組成物、骨材およびセメントを含有することを特徴とするスラリーシールに関する。
【0013】
前記石油系溶剤抽出油は、昭和46年11月30日石油連盟発行「石油製品のできるまで」第101頁、図6−1「一般的な潤滑油製造工程」に記載されているとおり、原油から潤滑油を製造する過程において、溶剤抽出によって得られる芳香族およびナフテン分に富んだ油状物質であり、一般に沸点(大気圧下)350℃以上、粘度5〜100cSt/100℃、好ましくは30cSt〜100cSt/100℃、針入度(JIS K2207)1000以上、軟化点(JISK2207)20℃以下のものであり、とくに芳香族とナフテン分の合計が45wt%以上(環分析による)を占め、引火点が220℃以上のものが好ましい。
【0014】
前記C5留分を原料とする石油樹脂は、ナフサを熱分解してエチレンやプロピレン等を製造する際の分解生成物であるC5留分の重合物であり、シクロペンタジエン(CPD)やジシクロペンタジエン(DCPD)の含有量が多いものはその軟化点が高い。分子量約200〜2000、一般には1000〜1500、軟化点100〜150℃で、無色〜淡黄色の樹脂である。
【0015】
前記C5、C9留分を原料とするC5、C9共重合石油樹脂は、一般に分子量約300〜3000、軟化点100〜180℃のものである。このうち、ガードナー指数6以下の透明度の高いもので、軟化点120℃以上のものが好ましい。
【0016】
熱可塑性ゴムは、スチレンやアクリロニトリルのようなビニル系モノマーの重合体鎖とブタジエンやイソプレンのようなジエン系モノマーの重合体鎖よりなるブロックポリマーのように加硫しなくても使用できる重合物であり、代表的なものとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などがあるがとくに、末端セグメントとしてポリスチレンセグメントを有し、ゴム成分セグメントとしては、例えばポリブタジエンセグメント、ポリイソプレンセグメント、ポリエチレン、ブチレンセグメント等を有する鎖状または枝状ブロック共重合体が好ましい。代表的なものとしてはSBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体)等を挙げることができる。分子量は5×104以上、ポリスチレン含量10〜50wt%、比重0.9以上のものが好ましい。
【0017】
マレイン化樹脂は、無水マレイン酸0.1〜7.0%で変性した下記の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
▲1▼ マレイン化エチレン・エチルアクリレート共重合体
(マレイン化EEA樹脂)
▲2▼ マレイン化エチレン・酢酸ビニル共重合体
(マレイン化EVA樹脂)
▲3▼ マレイン化ポリプロピレン樹脂
▲4▼ マレイン化ポリエチレン樹脂
代表的商品としては、フランスのChimie社「LOTADER」、住友化学のボンダインなどがある。
これらの中で好ましいものとしては、無水マレイン酸0.5〜5.0%で変性した前記の熱可塑性樹脂である。
本発明のバインダー組成物は、透明度が高いのでカラー舗装用バインダーとして好ましいが、一般舗装用バインダーとしても使用できる。
【0018】
本発明で使用されるジアミンは、一般式(I)
【化4】
Figure 0003927611
(式中Rは炭素数11ないし20の飽和または不飽和の脂肪族または芳香族炭化水素基、R′およびR″は同種または異種の炭素数1ないし4の低級アルキル基である)
で表わされるものを単独または混合したものであり、とくに混合したものの方が乳剤の安定性および付着性に優れている。このような式(I)のジアミンは、ジアルキルアミノアルキルアミンとカルボン酸の混合物、たとえばトール油などとを反応させて得ることができる。
【0019】
乳剤中のジアミンの配合量が、0.5重量%以下では、乳剤組成物の貯蔵安定性がやや悪く、スラリーシール特性では耐摩耗性がやや悪い。また5.0重量%以上では、乳剤組成物の貯蔵安定性がやや悪くなる。
【0020】
本発明のカチオン系乳剤組成物の製法において、ジアミンの溶解性(混和性)を促進させるため、中和剤として、強酸では塩酸、硫酸;弱酸ではリン酸、酢酸、ギ酸などが使用されるが、リン酸が特に好ましい。
中和剤の配合量は0.3〜5.5(重量)、好ましくは1.0〜3.0重量%が適当である。
【0021】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが本発明はこれにより限定されるものではない。
【0022】
(A) カチオン系明色乳剤組成物の製法
前記ジアミン系のカチオン乳化剤(商品名:5206−SRA 日本乳化剤社製)200gをリン酸水溶液(リン酸80g,水1700g)に加え乳化液を作成した。150〜160℃に加熱した。
(1)石油系溶剤抽出油 53重量%
(2)C5留分を原料とする石油樹脂 20重量%
(3)C5およびC9留分を原料とする 22重量%
5,C9共重合石油樹脂
(4)熱可塑性ゴム 4重量%
(5)マレイン化樹脂 1重量%
からなるバインダー組成物3700gに、前記乳化液を全量添加し、(ハレル型ホモジナイザーを用い)溶融混練して、本発明で使用するカチオン系アスファルト乳剤組成物を作製した。
前記ジアミン系のカチオン乳化剤商品名5206−SRAは、ジメチルアミノプロピルアミンとトール油(トール油中の酸成分)とを反応させることにより得られた式(I)中のRがいろいろのものが混合した形のものである。
【0023】
ここで、前記バインダー組成物における(1)〜(5)の詳細はつぎのとおりである。
(1) 昭和四日市石油(株)製で、その性状は粘度100℃で68センチストークス、芳香族分33重量%、ナフテン分26重量%、パラフィン分41重量%、引火点254℃のものである。
(2) 東邦石油樹脂(株)製の商品名NX−120で、その性状は、色相6(ガードナーNo.)、軟化点120℃のものである。
(3) 日本ゼオン(株)製商品名Q”TN=1325で、その症状は、色相(ガードナーNo.),軟化点125℃、臭素価55g/100g、分子量460、引火点245℃のものである。
(4) ジェイ・エス・アールエラストマー(株)製TR−1101でスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の熱可塑性ゴムであり、その性状は、比重0.94、硬度(ショアA)72、300%モジュラス29kg/cm2、引張り強度330kg/cm2、伸び880%、溶液粘度(ポリマー濃度、25wt%トルエン溶液)4000cps.25℃である。
(5) 住友化学工業(株)製ボンダインAX−8390で、その性状はメルトフローレート7(g/10分)、密度0.96g/cm3、ピカット軟化点38℃、融点DSC法67℃である。
【0024】
(B) スラリーシールの製法
舗装要綱(社団法人 日本道路協会 昭和53年、6月発行)に規定されるマーシャル試験用なべ(直径30cm)に骨材(スクリーングス)80重量部、7号砕石20重量部、およびポルトランドセメント2重量部を混合した。
次に水道水10重量部を加え撹拌した。さらに、(A)で製造した前記カチオン系アスファルト乳剤組成物11重量部を加え撹拌、混合することにより、スラリーシールを得た。
【0025】
(C) 前記カチオン系乳剤組成物についての評価方法
(1)蒸発残留物(JIS K 2208)
金属性蒸発缶にカチオン系乳剤組成物200gを採取する。これを電熱器上でかきまぜながら加熱し、160℃で10分間保ち、乳剤中の水分を蒸発させた。加熱後蒸発残留物の重量(g)をはかり、試料(g)に対する%で測定した。
(2)フルイ残留物(JIS K 2208)
丸形の網フルイ(フルイ目1190μm)に、カチオン系乳剤組成物500gを注入し、フルイに残ったバインダー量をふるい残留物とし、
試料に対する百分率を求めた。
(3)貯蔵安定度(JIS K 2208)
試料250gを5日間放置した後、シリンダー下部の蒸発残留物(%)とシリンダー上部の蒸発残留物(%)との差で表わす。
【0026】
(D)上記スラリーシールについての評価方法
(1)可使用時間
スラリーシールをヘラで撹拌可能な時間をいう。この時間はカチオン系乳剤組成物を注入してからの時間である。これにより作業可能な時間を評価する。
(2)耐摩耗性(ASTM D3910)
車輌走行によるスラリーシールの耐摩耗性を評価するものでASTMD3910に規定するウエットトラック摩耗試験(WTAT)による方法と、舗装要綱付録4−13ラベリング試験による方法との両者で評価した。
(3)耐流動抵抗性
車輌走行によるわだち掘れ抵抗性を評価するもので、舗装要綱付録4−12ホイールトラッキング試験による方法で評価した。ただし、
本来5cm厚の供試体を作製すべきところを4cm厚の下地(DS値900)に1cm厚のスラリーシールをのせ、供試体とした。
(4)総合評価(表2中)
日本国内の使用において、
〇印:スラリーシールとして充分実用に供しうる。
△印:スラリーシールとして多少実用性に欠ける。
×印:スラリーシールとして実用性がない。
【0027】
【比較例】
実施例に示した着色可能なカチオン系乳剤(本発明)と比較するため、従来よりある黒色乳剤組成物(比較例1)および表1に示す組成のバインダー組成(マレイン化樹脂が少々多すぎるもの)から製造した乳剤組成物(比較例2,3)ならびに、乳化剤を加えず加熱混合したアスファルト合材(比較例4)を例として挙げる。
【0028】
【表1】
Figure 0003927611
【0029】
実施例および比較例1〜4で得られたカチオン系アスファルト乳剤、およびスラリーシールの性能試験結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
Figure 0003927611
【0031】
表2に示すごとく、本発明のスラリーシールは、従来の黒色乳剤、比較例2,3ならびに加熱混合したスラリーシール(アスファルト合材)に比較し、スラリーシール特性(合材特性)に優れている。その中でも特に耐摩耗性、耐変形抵抗性に優れ、変形抵抗性は、下地のそれを上まわる値を示している。
このように本発明の着色可能なカチオン系乳剤は、他の乳剤に比べ総合的に優れた性質を示した。
【0032】
【発明の効果】
(1) 本発明のカチオン系乳剤組成物は、着色可能な乳剤であるため、これにより乳化したスラリーシールは、景観、美観ならびに安全性の向上をもたらす着色舗装を迅速に実現できる。
(2) 本発明のカチオン系乳剤組成物は、貯蔵安定性、耐摩耗性および耐変形抵抗性に優れており、ふるい残留分も少ない。
(3) 本発明のカチオン系乳剤組成物の製造に当たり、中和剤としてリン酸を使用する場合は、強酸、揮発性酸を使用する場合に比較して腐触の問題が生じない。
(4) 本発明のカチオン乳剤組成物及びそれを用いたスラリーシールは、アスファルト舗装のわだち掘れ、摩耗、クラック部分の補修、施工継目(ジョイント)クラック部分の補修、コンクリート舗装のオーバーレイ、コンクリート舗装のクラック、継目部分の補修、またそれぞれを明色化(着色化)するのに適する。さらに、空港、滑走路の補修、鉄道構内舗装の補修ならびにそれらを明色化するのに適する。
(5) 本発明のカチオン系乳剤組成物及びスラリーシールは、建物の床材、建物の屋上の防水材、また建物屋上防水材料上に舗設し、防水材料の保護及び車両走行、歩行用の舗装材料として使用するに適する。
(6) 本乳剤組成物は、大粒径骨材の飛散防止のための充填材、また微粉末の飛散防止のためのコーティング材として使用できる。
(7) 本乳剤組成物は、パテ材、コーキング材およびシール材、更に種々の粘度の異なる骨材を組合わせて常温施工用舗装混合物としても使用できる。
(8) 本乳剤組成物は、接着剤としても使用できる。

Claims (4)

  1. 〔A〕(1)石油系溶剤抽出油 20〜90重量%
    (2)C留分を原料とする石油樹脂 80〜10重量%
    (3)CおよびC留分を原料とするC、C共重合石油樹脂
    0.1〜50重量%
    (4)熱可塑性ゴム 3〜5重量%
    (5)マレイン化樹脂 0.5〜2重量%
    よりなるバインダー組成物を
    〔B〕下記一般式(I)
    Figure 0003927611
    (式中Rは炭素数11ないし20の飽和または不飽和の脂肪族または芳香族炭化水素基、R′およびR″は同種または異種の炭素数1ないし4の低級アルキル基である)
    で示されるジアミン系乳化剤
    を用いて乳化したことを特徴とする明色カチオン乳剤組成物。
  2. さらに中和剤としてリン酸を添加した請求項1記載の明色カチオン乳剤組成物。
  3. 請求項1または2記載の明色カチオン乳剤組成物および骨材とを含有することを特徴とするスラリーシール。
  4. 請求項1または2記載の明色カチオン乳剤組成物、骨材およびセメントを含有することを特徴とするスラリーシール。
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