JP3924607B2 - 熱電変換材料の評価方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高性能な熱電変換材料を得るために、熱電変換材料の組成を最適なものとするための評価手法に関するものであり、特に、熱電変換材料の熱伝導率と熱電能を同時に評価することができる熱電変換材料の評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
温度差のあるところから発電を行うために熱電変換材料が利用される。ここでの発電に利用される材料の熱電変換材料は、従来から、その開発がなされているものの、あまり熱電変換の効率はよくない。
【0003】
熱電変換効率の指標であるエネルギー変換効率は、高温側温度、低温側温度と熱電変換材料の性能によって、次のような式(1)により決定される。
【数式1】
Figure 0003924607
【0004】
式(1)において、式(1)中のZは熱電性能指数と呼ばれ、材料の熱電能S、抵抗率ρ、熱伝導率κ、を用いて、Z=S2/(ρ・κ) により定義される温度の逆数の次元を持つ評価指数である。通常、実用レベルの熱電性能指数Zは10-3-1以上必要であり、材料の組成の調整や、材料組織の制御によりできるだけ大きなZが得られるように、材料開発が進められてきている。
【0005】
熱電性能指数Zを決定して、材料の優劣を評価するためには、この熱電性能指数Zの定義から明らかなように、熱および電気に関わる3種類の物性値である熱電能S、抵抗率ρ、熱伝導率κを定量的に測定する必要がある。通常、1つの均質なバルク状試料について、別々に熱電能S、抵抗率ρ、熱伝導率κを測定するか、もしくは一つの均質な母材から切り出した別々の試料について、その熱電能S、抵抗率ρ、熱伝導率κを測定する。このような実験作業により1つの均質な試料ついての性能指数Zを決定する。
【0006】
熱電変換材料については、材料組成や材料組織が変化すると、その熱電性能指数Zは変化するため、もっとも大きな熱電性能指数Zを有する試料(熱電変換材料)を見い出すためには、組成や組織が系統的に変化した一連の試料群を用意し、それぞれについて、熱電能S、抵抗率ρ、熱伝導率κを測定し、熱電性能指数Zを決定し、その性能の優劣を判断する。
【0007】
例えば、組成成分比が異なるA1-xx(0≦x≦1)という化合物があった場合に、どの組成成分比xで性能指数が最大になるかを判断するため、具体的には組成成分比が異なるように、それぞれの試料を作製して、つまり、A、A0.90.1、A0.20.8、A0.30.7、A0.40.6、A0.50.5、A0.40.6、A0.30.7、A0.20.8、A0.10.9、B、といった一連の均質試料を作製して、それぞれの試料についての熱電能S、抵抗率ρ、熱伝導率κを測定し、性能指数Zを決定し、最適な組成成分比xを決定するようにしている。
【0008】
このため、従来においては、一つの材料(熱電変換材料)の最適化を行うために、大量の試料作製作業と大量の試料評価作業が必要となるので、その試料評価のための実験は長い実験時間を必要とし、人件費を増加させ、試料作製および評価装置のためのエネルギー使用を増加させるとともに、使用する原材料も多くなり、経済性、環境負荷の観点から好ましくないという問題点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、高性能な熱電変換材料を得るため、傾斜組成を有する被測定試料の熱電変換材料から、熱電変換材料の熱伝導率と熱電能を同時に評価して、熱電変換材料の組成を最適なものとすることができる熱電変換材料の評価手法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するため、本発明による熱電変換材料の評価手法は、傾斜組成を有する被測定試料の表面が露出するように被測定試料を薄板状に加工し、前記薄板状に加工した被測定試料の裏面に金属薄膜を形成し、加熱されたプローブで被測定試料の組成傾斜方向に試料表面を走査し、前記プローブで熱起電力および被測定試料の厚み方向の温度差を測定し、前記プローブで測定した位置に対応してマッピングを行い熱伝導率と熱電能の分布を同時に得ることを特徴する。この場合において、被測定材料を扱いやすくするため、例えば、傾斜組成を有する被測定試料を基体に埋込み、前記被測定試料の表面が露出するように被測定試料を埋め込んだ基体を薄板状に加工する。そして、薄板状に加工した基体裏面の露出した被測定試料に金属薄膜を形成して、加熱されたプローブで被測定試料の組成傾斜方向に試料表面を走査し、前記プローブで熱起電力および被測定試料の厚み方向の温度差を測定し、前記プローブで測定した位置に対応してマッピングを行い熱伝導率と熱電能の分布を同時に得るようにしてもよい。
【0011】
また、ここでの熱電変換材料の評価方法において、被測定試料は、組成成分比が所定方向に変化する熱電変換材料であり、基体材料は樹脂であり、被測定試料を埋め込んだ基体の薄板状の加工は、組成成分比が変化する方向に加工することを特徴とする。
【0012】
また、本発明による熱電変換材料の評価手法は、別の特徴として、傾斜組成を有する被測定試料と既知熱伝導率を有する参照試料とを基体に埋込み、前記被測定試料および参照料の表面が露出するように被測定試料および参照料を埋め込んだ基体を薄板状に加工し、前記薄板状に加工した基体裏面の露出した被測定試料および参照試料に金属薄膜を形成し、加熱されたプローブで被測定試料の組成傾斜方向に試料表面を走査すると共に参照試料を走査し、前記プローブで熱起電力および被測定試料の厚み方向の温度差を測定するとともに参照試料の測定により熱伝導率測定の校正を行い、前記プローブで測定した位置に対応してマッピングを行い被測定試料の熱伝導率と熱電能の分布を同時に得るとともに、被測定試料の熱伝導率と熱電能を定量的に評価することを特徴するものである。
【0013】
この場合において、加熱されたプローブで被測定試料の組成傾斜方向に試料表面を走査し、前記プローブで熱起電力および被測定試料の厚み方向の温度差を測定する場合に、さらに被測定試料の抵抗率の測定を行い、前記プローブで測定した位置に対応してマッピングを行い熱伝導率分布と熱電能分布を同時に得るとともに、測定した抵抗率の分布を用いて、被測定試料の熱電性能指数分布を得ることを特徴する。
【0014】
また、本発明の熱電変換材料の評価手法においては、被測定試料は、均質物質の母材に別の均質物質を加えて加熱し、元素の熱拡散を生じさせて、組成傾斜を有する材料とした熱電変換材料であるとしてもよい。
【0015】
本発明による熱電変換材料の評価方法において、前記熱電能は、加熱されたプローブにより測定された物質の起電力Vemfと厚み方向温度差ΔTから、プローブが接している近傍の局所的な熱電能SをVemf/ΔTの評価値により定量的に推定することを特徴とする。
【0016】
また、本発明による熱電変換材料の評価方法において、前記熱伝導率は、加熱されたプローブにより測定された被測定試料の厚み方向温度差ΔTから、プローブが接している近傍の局所的な熱伝導率κを、κ=Aexp(BΔT)、またはκ=A(ΔT)のいずれかの評価値を用いて定量的に推定することを特徴とするものである。
【0017】
このような特徴を有する本発明による熱電変換材料の評価手法によると、傾斜組成の被測定試料を作製し、いわゆるサーマルプローブ法により、熱電能Sと熱伝導率κを同時測定し、また、被測定材料に対して1探針法による抵抗率ρを測定し、これらの測定した結果を組み合わせて、評価値を算出して評価し、熱電材料の作製作業および評価作業を能率よく短時間で行うことができる。その結果として、熱電性能指数Zが最大になる組成を見い出すための組成最適化作業を能率よく行うことができる。
【0018】
より具体的には、例えば、均質試料を複数作製する代わりに、1軸方向に傾斜組成を有するバルク試料を準備し、この傾斜組成のバルク試料の表面を加熱した電極(サーマルプローブ)で接触し、試料の裏面とサーマルプローブ間の熱起電力、およびサーマルプローブ接触部の表面温度を計測する。これにより、サーマルプローブ接触点の熱電能S、熱伝導率κを推定して評価値とする。また、サーマルプローブにより傾斜組成を有する試料の表面上を走査することで、各位置、各組成部分の熱電能S、熱伝導率κを推定して評価値とする。さらに、試料の組成傾斜方向に電流を流し、その側面を1本の電極を接触させ、組成傾斜方向に走査しながら電位差分布を測定する。これにより、試料の各部位、すなわち各組成の抵抗率ρの分布を決定することができる。これらの2つの測定した結果(各評価値)を組み合わせることによって、位置情報とその点における熱電能S、抵抗率ρ、熱伝導率κを決定し、測定点における性能指数Zを定量的に決定する。また、これらの測定値をマッピングして評価することにより、容易に評価値の判定を行うことができる。このため、従来よりも、少ない原材料で高速に、しかも、少ない労力で、熱電変換材料の熱電性能指数Zが最大となる組成を見い出すことができるようになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施する場合の一形態について、具体的に図面を参照して説明する。併せて実験を行った結果についても説明する。図1は、本発明において用いる傾斜組成試料の準備方法を説明する図である。図1に示すように、測定する熱電変換材料の試料はバルクであればよく、それぞれに組成構成比の異なる第1の試料11と、第2の試料12と、第3の試料13と、第4の試料14とを、ある成分について組成構成比が大きい順に各試料を積み重ねて、1軸加圧のホットプレス法で、被測定試料10を作製する。そして、各試料11〜14の断面が露出するように切り出して、薄板状に加工して、傾斜組成を有する薄板状の被測定試料15,16とする。図1に示す例では、4種類の異なる組成を持つ粉体を1つのダイスに充填して、プレス軸方向に組成が4段階に傾斜した試料となっている。なお、後述するように、ここでの試料の1つとして、熱伝導率が既知である標準物質の試料を加えて、5層で各試料を積み重ねて、1軸加圧のホットプレス法で被測定試料15,16を作製する。そして、その中の標準物質の試料を測定することで、測定結果の校正作業を能率よく行うことができる。
【0020】
なお、図1に示したように、この被測定試料10は、あらかじめ組成の異なる原料粉体を4種類用意しておき、ダイス内部で積層させ、加圧・焼結することにより得られるものであるが、他の方法、例えば、後述するように、熔融させた合金が自然に生じる組成傾斜を利用して、傾斜組成を有するようにしても良い。
【0021】
このようにして、作製した熱電変換材料の被測定試料15,16は、図1に示すように、薄板状になるようにして切り出して、その裏面に金属薄膜を形成する。例えば、金のスパッタリングにより切り出した裏面の全面をコーティングする。ここでのコーティングを行う意味は、被測定試料の裏面に対して金属薄膜を形成して、ヒートシンクと電気的熱的接触を良好なものとするためである。金のスパッタリングでなくとも、被測定試料の裏面全体が導電性、熱伝導性の高い材料で覆われて、導通状態になれば良いので、他の金属で薄膜を形成しても良い。
【0022】
この状態において、薄板状の傾斜組成を有する被測定試料15を、図2に示すように、環境温度より高温に保たれているサーマルプローブ21と、大きな熱容量を持つ導電性物質22の間に試料を挟む。例えば、大きな熱容量を持つ導電性物質22としては、銅製の板をヒートシンクとして利用する。
【0023】
サーマルプローブ21には、ここでは一般的なシース型熱電対を使用するが、サーマルプローブ21としては、シース型熱電対でなくとも温度が測定できる導電性の針状のものであり、試料表面への接触に対して機械的強度があれば、利用可能である。
【0024】
そして、サーマルプローブ21を一定の荷重で被測定試料15の表面に接触させ、接触部分の温度と接触部、およびその周辺が加熱されることによって発生する熱起電力を測定する。このとき、試料15の表面に温度分布ができて安定するまでは、数秒から数十秒の時間を要するので、この時間を待って定常状態になってから、熱起電力を測定する。
【0025】
なお、サーマルプローブ21に接触直後に起電力と温度差測定を行い、熱が試料内部に浸透する前に、測定を終了する方法でもよい。温度が時間とともに変化する状態でデータを取り込むと再現性や定量性が保証されないため、測定は、接触直後に行うか、定常状態になるまで十分待ってからかのどちらかにする。
【0026】
この時、ヒートシンク(22)とサーマルプローブ21の先端の熱電対接触点の温度差をΔTとし、サーマルプローブとヒートシンク側電極間の起電力をVemf とすると、試料の接触部の見かけの熱電能S’は
S’=Vemf/ΔT (2)
で決定される。この見かけの熱電能S’は相対熱電能であるため、絶対熱電能にするには、プローブ部分の材料の熱電能を相対熱電能から引けば良い。
【0027】
接触部分の見かけの熱伝導率κ’は、温度差ΔTの情報から推定できる。これは、本発明者等が、ΔTとκ’の間に、次の式
κ’∝A exp(B ΔT) (3)
または
κ’∝AΔT (4)
を用いることにより、よく近似できる関係が存在することを実験的に発見したためである。この式(3)および式(4)における係数Aおよび係数Bは事前に校正作業を行うことによって予め決定しておき、熱伝導率の定量性を確保する。
【0028】
望ましくは、傾斜組成を有する被測定試料の中に、前述したように、熱伝導率が既知である標準物質の試料を複数埋込んでおき、その部分を測定して校正作業を行い、そのまま被測定試料の測定に移行すれば、試料の再セットなどを伴わずに、校正作業をより高速化することが可能となる。
【0029】
上述したような一連の作業によって、サーマルプローブ21が試料表面上に接触している部位の測定を行い。その位置の見かけ上の熱電能S’および熱伝導率κ’を同時に推定することができる。
【0030】
そして、この作業を、試料の測定位置(サーマルプローブの接触位置)を被測定試料の傾斜組成方向に動かしながら繰り返す返すことによって、複数の組成の異なる部分の見かけ上の熱電能S’、熱伝導率κ’を速やかに決定することができる。
【0031】
決定された見かけ上の熱電能S’、熱伝導率κ’は、真の熱電能S、熱伝導率κとよく一致するため両者を同じように取り扱っても、組成最適化作業には全く影響をおよぼさない。
【0032】
一方、抵抗率ρの決定のためには、図3に示すように、同じく、傾斜組成の被測定試料16をセットし、プローブを組成傾斜方向に走査して、プローブ間の抵抗値変化を読み取ることで、抵抗プロファイルを得る。
【0033】
試料の断面積をA0とすると、各位置における抵抗率ρ(x)は、次の式(5)で示されるように、抵抗値変化を位置情報で微分した値、
【数式2】
Figure 0003924607
で決定されるため、各位置、各組成部分における抵抗率ρを決定できる。
【0034】
このようにして、2つの手法の組み合わせて、傾斜組成の被測定試料の各部分の熱電能S、抵抗率ρ、熱伝導率κを決定し、各組成に対応する熱電能の性能指数Zを定量的に決定できる。そして、測定位置に応じてマッピングすることにより、傾斜した組成(測定位置)に応じて評価できる。この評価の方法によると、例えば、図4に示されるように、被測定材料の測定位置に応じて、熱電能S、熱伝導率κ、抵抗率ρにより、その性能指数Zを評価できる。
【0035】
上述したように、傾斜組成を有する被測定試料は、その内部での組成傾斜を4段階のサンプルとして作製したが、これは4段階でなくても良く、例えば、10段階、100段階でも全く同様の方法で、各位置(各組成)に対する熱電性能指数の決定を行うことができる。このことは、従来による手法、すなわち、均質な試料を100組成合成して、それぞれについて熱電性能指数Zを決定したことと同じであり、かつ、格段に早くその作業を終えることができる。
【0036】
(実験例1)
図5は、サーマルプローブ法で熱伝導率と熱電能を同時に計測する測定装置のシステム構成を示している。図5に示したように、シース熱電対をサーマルプローブとして利用することで、簡便なシステムを構成できる。
【0037】
このシステム構成の計測装置の例では、試料を載せたステージ側が移動する仕組みになっているが、相対的に被測定試料の表面上をサーマルプローブが移動すれば良いので、サーマルプローブ側が移動するような仕組みでもよい。サーマルプローブは、試料表面に接しながら次の測定点に移動するが、その他に、移動する際に、サーマルプローブが一旦試料表面から離れる仕組みにしても、測定上は全く問題がない。また、この測定装置では、被測定試料の片面は、完全にヒートシンク(ステージ)と同温度となるように、被測定材料の裏面が熱伝導性、電気伝導性のすぐれた液体金属(In−Gaペースト)によって接着されている。
【0038】
図5に示した測定した測定装置によって、CoSb3−xTe(0<x<1)という組成傾斜構造を有する被測定試料について、その熱電能分布、熱伝導率分布の測定結果を図6に示した。傾斜構造試料の組成分布に関しては、あらかじめエネルギー分散型X線分析などで設計通りの組成分布になっていることを確認している。図6では、熱電能Sと熱伝導率κは、組成比xの増加量0.05毎に測定した結果が示されている。
【0039】
図7は、同じ傾斜構造試料を別の形に切り出し、図3に示した計測装置によって、抵抗率ρの分布を測定した結果である。これらの2つの独立した測定から、測定位置をマッピングすることにより、熱電能S、熱伝導率κ、抵抗率ρの分布を決定できるため、図8に示すように、熱電性能指数Zの分布、すなわち熱電性能指数Zの組成依存性が推定できるので、これらの測定値から熱電変換材料が評価できる。
【0040】
熱電変換材料CoSb3−xTe(0<x<1)については、図8に示されるように、Teの置換量がx=0.05程度のとき最も性能指数Zが高く、その次にはx=0.25からx=0.3程度のときに性能指数Zが高いことを示している。この合金系ではx=0.05の組成で最も性能が高くなることが、1度の試料作製実験と2個の独立した評価で結論付けられる。
【0041】
(実験例2)
試料が小さい場合、サーマルプローブのセットやハンドリングが難しくなるので、樹脂に埋込み測定用の試料を作製する。図9には、測定試料の準備方法を示している。ここでの樹脂は、2液混合型のエポキシ系樹脂で、試料を埋込み一昼夜かけて十分に硬化させる。なお、エポキシ樹脂でなくても、後加工に耐える機械強度があり、非導電性の充填物ならばよい。これを1mm程度の薄板状に切り、裏面には金で100Åの金のスパッタをした。この金のスパッタをした面をIn−Ga液体金属合金でヒートシンクである銅版に取り付け、まわりから押さえ付けることによって、熱接触と電気接触を保つ仕組みになっている。この金等の金属膜はIn−Ga液体金属の濡れ性を良くし、また被測定試料に液体金属が拡散して変質するのを防ぐ効果がある。
【0042】
(実験例3)
前述した実験例2のように、樹脂に傾斜組成試料を埋込む場合、隣に石英ガラムを埋込んだ。この場合、石英ガラスの熱伝導率は室温で1.36W/mKと既知であるので、熱伝導率を定量的に測定する際の校正用試料として参照できる。また、この場合において、同じ樹脂の中に埋込み、同じ厚みに切り出すことで、定量性の確保がより容易になる。
【0043】
(実験例4)
実験例3のように、石英ガラスを埋込む以外に、既知の熱伝導率を有する様々な物質を樹脂に埋込み、測定を行った。この測定結果を図10に示している。この結果、熱伝導率と試料厚み方向の温度差ΔTの間には相関があり、数学的に近似式で記述できることが明らかとなった。近似として適当な数式は、前述したように、κ=A exp(B ΔT)またはκ=A(ΔT)となっており、2試料以上の参照物質を測定することにより係数を決定することが可能である。このため、未知の傾斜組成試料の熱伝導率を測定する前にあらかじめこのような物質を測定して校正しておくか、もしくは同じ樹脂の中に、参照物質を入れておけば、熱伝導率の測定の定量性を確保することができる。
【0044】
(実験例5)
これまで組成傾斜方向を1軸方向に限定して記述したが、熱伝導率と熱電能の測定においては1軸方向には限定されない。すなわち、プローブの走査はx方向だけでなく、x−y軸の2次元方向でも、同様に各物理量の分布測定が可能である。この様子を図11に示している。ここでの例は、CoSbとBiTeを接合した2段階組成試料であるが、x−y軸の2次元で組成分布に対応する熱伝導率と熱電能の分布が測定できる。
【0045】
(実験例6)
熱伝導率の分布測定は、非導電性試料にも適用可能である。図12は絶縁物であるジルコニアとステンレスの傾斜組成試料の熱伝導率分布を測定したものである。本発明による評価方法を適用して、被測定試料を作製して測定することで、11段階の組成傾斜に対応して、熱伝導率が変化している様子が測定できる。
【0046】
(実験例7)
ここでの傾斜組成を有する被測定試料(組成傾斜試料)は、異なる組成を有する粉末を一体焼結する手法だけに限らない。図13は、基材となる均質な物質Mに、それぞれ異なる均質な物質AからIまでを埋込んだ試料の模式図を示している。この場合には、あらかじめ物質Mには穴をあけておき、そこに円筒状の均質な物質AからIを埋込み、その後、熱処理により、物質AからIが物質Mとの界面で拡散し、それぞれ物質Mとの間に合金を形成する。このような合金を分析すると、その結果、この拡散長は100ミクロン程度であった。この部分を切り出し、本発明を適用する上述の組成傾斜試料として、熱電性能指数の組成最適化の評価を行うことが可能であった。
【0047】
また、図14に示すように、同じ傾斜組成試料を同一のxステージ上に固定して、サーマルプローブ法による熱電能分布と熱伝導率分布の同時定量評価と1探針法による抵抗率分布評価を一度で行うことも可能である。ステージは絶縁性で熱伝導率と熱容量が大きな物質でできていれば良い。サーマルプローブ法による測定のために熱電能分布/熱伝導率分布評価用の傾斜組成試料の裏側は全面的に導電性電極に接触している。2つの試料は固定されている左右の各プローブに対して同じ量だけ平行移動するため、ステージのx軸方向変位量に対して熱電能、熱伝導率、抵抗率を同時に決定することができる。このような測定方法によると、サーマルプローブ法と1探針法を別々の装置で測定する必要がなくなるため、装置と測定時間を節約できる。
【0048】
【発明の効果】
以上、説明したように、従来技術では、性能指数が最大となる材料組成を見い出すために多くの試料作製と評価をくり返さなければならなかったが、本発明によれば、1つの傾斜組成試料を用意し、その試料に対して、サーマルプローブ法による熱電能、熱伝導率同時測定と抵抗率分布測定を組み合わせて適用することにより、非常に高速に、性能指数の組成依存性を明らかにすることができる。これにより、材料開発時間の節約と材料資源の節約を同時に達成する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】傾斜組成試料の準備方法を説明する図、
【図2】サーマルプローブ法によるΔTおよびVemfの測定の構成を説明する図、
【図3】1探針法による抵抗率分布の測定の構成を説明する図、
【図4】性能指数Zが最大となる組成の決定方法を説明する図、
【図5】測定に使用した装置を説明する図、
【図6】熱電能Sと熱伝導率κの分布の測定結果を示す図、
【図7】抵抗率分布の測定結果を示す図、
【図8】熱電能、熱伝導率、抵抗率から決定された性能指数と組成の対応を説明する図、
【図9】被測定試料の樹脂埋込みと電極取り付けの作業過程を説明する図、
【図10】測定される温度差ΔTとプローブが接する物質の熱伝導率κに負の相関があることを示す図、
【図11】サーマルプローブ法による2次元分布測定の例を示す図であり、(a)は熱伝導率分布を示す図、(b)は熱電能分布を示す図である。
【図12】ジルコニアセラミクスとステンレスの組成傾斜試料の熱伝導率分布測定結果を示す図である。(a)はx−y走査による分布画像を示す図であり、(b)はx走査による線分布を示す図である。
【図13】被測定試料を作製する他の例を説明する図である。
【図14】被測定試料の熱電能と抵抗率を同時に測定する測定システムを説明する図である。

Claims (7)

  1. 傾斜組成を有する被測定試料の表面が露出するように被測定試料を薄板状に加工し、
    前記薄板状に加工した被測定試料の裏面に金属薄膜を形成し、
    加熱されたプローブで被測定試料の組成傾斜方向に試料表面を走査し、
    前記プローブで熱起電力および被測定試料の厚み方向の温度差を測定し、
    前記プローブで測定した位置に対応してマッピングを行い熱伝導率と熱電能の分布を同時に得る、
    熱電変換材料の評価方法であって、
    前記熱伝導率は、加熱されたプローブにより測定された被測定試料の厚み方向温度差ΔTから、プローブが接している近傍の局所的な熱伝導率κを、
    κ = exp( BΔ T) 、またはκ = ( Δ T)
    のいずれかの評価値を用いて定量的に推定する
    ことを特徴とする熱電変換材料の評価方法。
  2. 傾斜組成を有する被測定試料を基体に埋込み、
    前記被測定試料の表面が露出するように被測定試料を埋め込んだ基体を薄板状に加工し、
    前記薄板状に加工した基体裏面の露出した被測定試料に金属薄膜を形成し、
    加熱されたプローブで被測定試料の組成傾斜方向に試料表面を走査し、
    前記プローブで熱起電力および被測定試料の厚み方向の温度差を測定し、
    前記プローブで測定した位置に対応してマッピングを行い熱伝導率と熱電能の分布を同時に得る、
    熱電変換材料の評価方法であって、
    前記熱伝導率は、加熱されたプローブにより測定された被測定試料の厚み方向温度差ΔTから、プローブが接している近傍の局所的な熱伝導率κを、
    κ = exp( BΔ T) 、またはκ = ( Δ T)
    のいずれかの評価値を用いて定量的に推定する
    ことを特徴とする熱電変換材料の評価方法。
  3. 請求項2に記載の熱電変換材料の評価方法において、
    被測定試料は、組成成分比が所定方向に変化する熱電変換材料であり、基体材料は樹脂であり、被測定試料を埋め込んだ基体の薄板状の加工は、組成成分比が変化する方向に加工する
    ことを特徴とする熱電変換材料の評価方法。
  4. 傾斜組成を有する被測定試料と既知熱伝導率を有する参照試料とを基体に埋込み、
    前記被測定試料および参照試料の表面が露出するように被測定試料および参照試料を埋め込んだ基体を薄板状に加工し、
    前記薄板状に加工した基体裏面の露出した被測定試料および参照試料に金属薄膜を形成し、
    加熱されたプローブで被測定試料の組成傾斜方向に試料表面を走査すると共に参照試料を走査し、
    前記プローブで熱起電力および被測定試料の厚み方向の温度差を測定するとともに参照試料の測定により熱伝導率測定の校正を行い、
    前記プローブで測定した位置に対応してマッピングを行い被測定試料の熱伝導率と熱電能の分布を同時に得るとともに、被測定試料の熱伝導率と熱電能を定量的に評価する、
    熱電変換材料の評価方法であって、
    前記熱伝導率は、加熱されたプローブにより測定された被測定試料の厚み方向温度差ΔTから、プローブが接している近傍の局所的な熱伝導率κを、
    κ = exp( BΔ T) 、またはκ = ( Δ T)
    のいずれかの評価値を用いて定量的に推定する
    ことを特徴とする熱電変換材料の評価方法。
  5. 請求項1または請求項2に記載の熱電変換材料の評価方法において、
    加熱されたプローブで被測定試料の組成傾斜方向に試料表面を走査し、
    前記プローブで熱起電力および被測定試料の厚み方向の温度差を測定する場合に、さらに被測定試料の抵抗率の測定を行い、
    前記プローブで測定した位置に対応してマッピングを行い熱伝導率分布と熱電能分布を同時に得るとともに、測定した抵抗率の分布を用いて、被測定試料の熱電性能指数分布を得る
    ことを特徴する熱電変換材料の評価方法。
  6. 請求項1または請求項2に記載の熱電変換材料の評価方法において、
    被測定試料は、均質物質の母材に別の均質物質を加えて加熱し、元素の熱拡散を生じさせて、組成傾斜を有する材料とした熱電変換材料である
    ことを特徴とする熱電変換材料の評価方法。
  7. 請求項1乃至請求項6に記載の熱電変換材料の評価方法において、
    前記熱電能は、加熱されたプローブにより測定された物質の起電力Vemfと厚み方向温度差ΔTから、プローブが接している近傍の局所的な熱電能SをVemf/ΔTの評価値により定量的に推定する
    ことを特徴とする熱電変換材料の評価方法。
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