JP3924215B2 - Egrクーラ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの排気ガスを再循環して窒素酸化物の発生を低減させるEGR装置に付属されて再循環用排気ガスを冷却するEGRクーラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より自動車等のエンジンの排気ガスの一部をエンジンに再循環して窒素酸化物の発生を低減させるEGR装置が知られているが、このようなEGR装置では、エンジンに再循環する排気ガスを冷却すると、該排気ガスの温度が下がり且つその容積が小さくなることによって、エンジンの出力を余り低下させずに燃焼温度を低下して効果的に窒素酸化物の発生を低減させることができるため、エンジンに排気ガスを再循環するラインの途中に、排気ガスを冷却するEGRクーラを装備したものがある。
【0003】
図4は前記EGRクーラの一例を示す断面図であって、図中1は円筒状に形成されたシェルを示し、該シェル1の軸心方向両端には、シェル1の端面を閉塞するようプレート2,2が固着されていて、該各プレート2,2には、多数のチューブ3の両端が貫通状態で固着されており、これら多数のチューブ3はシェル1の内部を軸心方向に延びている。
【0004】
そして、シェル1の一方の端部近傍には冷却水入口管4が取り付けられ、シェル1の他方の端部近傍には冷却水出口管5が取り付けられており、冷却水9が冷却水入口管4からシェル1の内部に供給されてチューブ3の外側を流れ、冷却水出口管5からシェル1の外部に排出されるようになっている。
【0005】
更に、各プレート2,2の反シェル1側には、椀状に形成されたボンネット6,6が前記各プレート2,2の端面を被包するように固着され、一方のボンネット6の中央には排気ガス入口7が、他方のボンネット6の中央には排気ガス出口8が夫々設けられており、エンジンの排気ガス10が排気ガス入口7から一方のボンネット6の内部に入り、多数のチューブ3を通る間に該チューブ3の外側を流れる冷却水9との熱交換により冷却された後に、他方のボンネット6の内部に排出されて排気ガス出口8からエンジンに再循環するようになっている。
【0006】
尚、図中5aは冷却水入口管4に対しシェル1の直径方向に対峙する位置に設けたバイパス出口管を示し、該バイパス出口管5aから冷却水9の一部を抜き出すことにより、冷却水入口管4に対峙する箇所に冷却水9の澱みが生じないようにしてある。
【0007】
そして、このように構成されたEGRクーラにおいては、図5に示す如く、チューブ3を外周面側から螺旋状に窪ませる押圧加工を螺旋凸条を有するローラ等で施してチューブ3の内周面にスパイラル状突起12を形成し、これによりチューブ3内を流れる排気ガス10を旋回流としてチューブ3の内周面に対する接触頻度や接触距離を増加させ、EGRクーラの熱交換効率を大幅に向上することが考えられている。
【0008】
ところが、従来のEGRクーラにおいては、各チューブ3が両端のみをプレート2で支えられた構造となっていたため、チューブ3の内周面にスパイラル状突起12を形成した構造を採用すると、排気ガス10の冷却効果を高めるべくチューブ3を長くした場合に、該チューブ3の固有振動数が低くなってエンジン側の加振の周波数と合い易くなり、エンジン側の加振により共振が起こってチューブ3に大きな振動が生じる虞れがあった。
【0009】
即ち、スパイラル状突起12を付したチューブ3は、通常の内周面をストレート形状のまま残したチューブと比較して固有振動数が低くなるため、その長さを長くした場合に、比較的低い周波数帯にあるエンジン側の加振の周波数と合い易くなり、エンジン側の加振による共振現象が起こり易くなってしまうのである。
【0010】
そして、チューブ3が共振により大きく振動した場合には、各チューブ3の両端の固定部分等に疲労破壊が起こり易くなって、耐久性が著しく損なわれてしまいかねない。
【0011】
このようなチューブ3の振動の問題を解決する手段としては、例えば、図6に示す如く、各チューブ3の上半分と下半分とを二つの支持板11,11により途中で支えるようにした構造を採用し、該各支持板11,11により支えられた箇所を振動支点とすることで各チューブ3の自由に振動できる区間を長手方向に区分けして夫々の固有振動数を高め、エンジン側の加振による共振現象が起こり難くなるようにすることが考えられている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構造を採用した場合には、各支持板11,11の設置により冷却水9の流れが悪くなって、図6中にxで示すような箇所で冷却水9の澱みが生じ易くなり、この冷却水9の澱みが生じた箇所で熱交換効率が悪くなってチューブ3が局部的に高温化し、この局部的な高温化によりチューブ3に熱変形が起こる虞れがあった。
【0013】
本発明は、上述の実情に鑑みて成されたもので、チューブの内周面にスパイラル状突起を形成した構造を採用しても、支持板の設置に頼ることなくエンジン側の加振による共振現象を良好に回避し得るようにして、各チューブの従来以上の延長化を支障なく実現することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数本のチューブと、該各チューブを包囲するシェルとを備え、該シェルの内部に冷却水を給排し且つ前記各チューブ内に排気ガスを通して該排気ガスと前記冷却水とを熱交換するようにしたEGRクーラであって、前記各チューブのうちの最外周部に配置された少なくとも一部のチューブの内周面をストレート形状のまま残し、これらを除いた残りのチューブの内周面にスパイラル状突起を形成したことを特徴とするものである。
【0015】
このようにすれば、最外周部の少なくとも一部のチューブの内周面をストレート形状のまま残したことにより、これらのチューブの固有振動数が高く維持されてEGRクーラ全体の固有振動数が高められる結果、エンジン側の加振による共振現象が起こらなくなり、しかも、残りの大半のチューブはスパイラル状突起を内周面に形成したものにできてEGRクーラの冷却効率の低下も最小限に抑えることが可能となる。
【0016】
尚、一般的にEGRクーラのシェルの径よりも排気ガスを排気系から導くEGRパイプの径の方が小さく、該EGRパイプからEGRクーラの入側に導入された排気ガスが外周側へ拡散し難いため、排気ガスの流通量が元々少ない最外周部のチューブをスパイラル状突起を形成しないものとして選定すれば、スパイラル状突起の無いチューブを混在させることによる熱交換効率の低下を最小限に抑える上で有利である。
【0017】
更に、エンジン側の加振による共振現象が起こらなくなれば、各チューブの両端の固定部分等における疲労破壊が著しく抑制されることになると共に、従来の如き支持板を設置しなくて済んだり、支持板の数を低減したりできることで、冷却水の澱みが生じ難くなって熱交換効率の低下やチューブの熱変形が著しく抑制されることになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図4〜図6と同一部分については同一符号を付してある。
【0020】
図1及び図2に示す如く、本形態例のEGRクーラにおいては、各チューブ3がシェル1の軸心を中心とした同心の多重円筒状に配列され、その多重円筒状に配列されたチューブ3のうちの最外周部に配置された一部のチューブ3’(最外周部の全てのチューブでも可)の内周面がストレート形状のまま残されており、これらの各チューブ3’を除いた残りのチューブ3の内周面にスパイラル状突起12が形成されている。
【0021】
このようにすれば、最外周部の少なくとも一部のチューブ3’の内周面をストレート形状のまま残したことにより、これらのチューブ3’の固有振動数が高く維持されてEGRクーラ全体の固有振動数が高められる結果、エンジン側の加振による共振現象が起こらなくなる。
【0022】
即ち、図3にグラフで示す如く、同じチューブ長さで比較した場合に、内周面をストレート形状のまま残したチューブ3’の固有振動数Aは、内周面にスパイラル状突起12を形成したチューブ3の固有振動数Bよりも高く維持されることになり、例えば、代表的な中型エンジンの加振の周波数が直線Cである場合に、チューブ3の固有振動数Bがチューブ長さ260mm付近で共振し易くなるのに対し、同じチューブ長さにおけるチューブ3’の固有振動数Aは前記直線Cより十分に高く維持されて共振を起こさない。
【0023】
尚、一般的なEGRクーラでは、チューブ長さが約300mmを超えないものとなるので、内周面をストレート形状のまま残したチューブ3’を混在させれば、概ねエンジン側の加振による共振現象を回避できることになり、また、チューブ長さが約300mmを超えるような特殊な長尺型のEGRクーラであったとしても、従来の如き支持板11(図6参照)の数を著しく減らせることになる。
【0024】
また、残りの大半のチューブ3はスパイラル状突起12を内周面に形成したものにできるので、これらの大半のチューブ3にて排気ガス10を旋回流として熱交換効率を大幅に向上し得てEGRクーラの冷却効率の低下を最小限に抑えることが可能となる。
【0025】
ここで、特に最外周部の一部のチューブ3’をスパイラル状突起12を形成しないものとして選定している理由は、一般的にEGRクーラのシェル1の径よりも排気ガス10を排気系から導くEGRパイプの径の方が小さく、該EGRパイプからEGRクーラの入側に導入された排気ガス10が外周側へ拡散し難いため、排気ガス10の流通量が元々少ない最外周部の一部のチューブ3’をスパイラル状突起12を形成しないものとして選定すれば、スパイラル状突起12の無いチューブ3’を混在させることによる熱交換効率の低下を最小限に抑える上で有利だからである。
【0026】
そして、エンジン側の加振による共振現象が起こらなくなれば、各チューブ3,3’の両端の固定部分等における疲労破壊が著しく抑制されることになると共に、従来の如き支持板11を設置しなくて済んだり、支持板11の数を低減したりできることで、冷却水9の澱みが生じ難くなって熱交換効率の低下やチューブ3,3’の熱変形が著しく抑制されることになる。
【0027】
従って、上記形態例によれば、チューブ3の内周面にスパイラル状突起12を形成した構造を採用しても、支持板11(図6参照)の設置に頼ることなくエンジン側の加振による共振現象を良好に回避することができるので、各チューブ3,3’の従来以上の延長化を支障なく実現することができ、しかも、各チューブ3,3’の固定部分等における疲労破壊や熱変形を抑制し得て耐久性の大幅な向上を図ることができ、更には、スパイラル状突起12の無いチューブ3’を混在させることによる熱交換効率の低下を最小限に抑えることもできる。
【0028】
尚、本発明のEGRクーラは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、図示では各チューブのうちの最外周部の少なくとも一部のチューブに一条のスパイラル状突起を形成した場合を例示しているが、チューブの長手方向に位相をずらして複数条のスパイラル状突起を形成するようにしても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0029】
【発明の効果】
上記した本発明のEGRクーラによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0030】
(I)チューブの内周面にスパイラル状突起を形成した構造を採用しても、支持板の設置に頼ることなくエンジン側の加振による共振現象を良好に回避することができるので、各チューブの従来以上の延長化を支障なく実現することができ、しかも、各チューブの固定部分等における疲労破壊や熱変形を抑制し得て耐久性の大幅な向上を図ることができる。
【0031】
(II)排気ガスの流通量が元々少ない最外周部の一部のチューブをスパイラル状突起を形成しないものとして選定し、これらを除いた残りのチューブをスパイラル状突起を内周面に形成したものとしているので、排気ガスの流通量が多い大半のチューブにて排気ガスを旋回流として熱交換効率を大幅に向上することができ、スパイラル状突起の無いチューブを混在させることによる熱交換効率の低下を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1の要部についての斜視図である。
【図3】チューブの固有振動数とチューブ長さとの関係を示すグラフである。
【図4】従来のEGRクーラの一例を示す断面図である。
【図5】図4のチューブ内に形成したスパイラル状突起を説明する断面図である。
【図6】従来のEGRクーラの別の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 シェル
3 内周面にスパイラル状突起を形成したチューブ
3’ 内周面をストレート形状のまま残したチューブ
9 冷却水
10 排気ガス
12 スパイラル状突起

Claims (1)

  1. 複数本のチューブと、該各チューブを包囲するシェルとを備え、該シェルの内部に冷却水を給排し且つ前記各チューブ内に排気ガスを通して該排気ガスと前記冷却水とを熱交換するようにしたEGRクーラであって、前記各チューブのうちの最外周部に配置された少なくとも一部のチューブの内周面をストレート形状のまま残し、これらを除いた残りのチューブの内周面にスパイラル状突起を形成したことを特徴とするEGRクーラ。
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