JP3923355B2 - 光変調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光情報通信等で用いられる光変調装置に関するものであり、特に多重通信用の多チャンネル光変調装置に関する。。
【0002】
【従来の技術】
近年、伝送容量拡大のために波長分割多重(WDM)伝送方式を用いた光ファイバ通信について盛んに研究開発が進められている。モノリシック集積型の光半導体デバイスは、異なった機能を有する素子を同一半導体基板上に形成できるため、このようなWDMネットワークにおいて光信号処理機能を実現する光コンポーネントとして非常に有効である。電界吸収型光変調器(以下、EA変調器と略記)は低駆動電圧で高速信号光を得ることができるだけでなく、高速ゲートスイッチや波長変換機能としての機能を有するためWDMネットワークには必須の光半導体素子であると考えられている。
【0003】
一方、波長多重数の増加に対応するために、同一の機能を持った複数の光半導体素子を、同一基板上に配置したアレイ化素子の需要が高まっている。例えばEA変調器をアレイ化すると、ワンチップで多波長光変調器アレイ、または高速光ゲートスイッチアレイを実現できるため、デバイスの小型化と低コスト化に有利である。さらに、光半導体素子と光ファイバとでは、光のスポットサイズが大きく異なるため、光学接続点での結合損失が増大することが問題となっていた。そのため、光半導体素子と受動導波路型のスポットサイズ変換器を同一基板上に集積し、光ファイバとの結合損失の低減を図ることが行われている。また、ハイメサ構造を有する受動導波路は、アレイ導波路回折格子(AWG)や多モード干渉計(MMI)といった合分波機能を有する受動導波路型機能デバイスと同じ構造を有している。このように、能動素子(例えば、レーザダイオードや光半導体増幅器)と受動導波路との集積化は、光半導体集積回路の高機能化を図ることができるため、WDMネットワーク用の光コンポーネントを実現する上で非常に有望である。
【0004】
ところでEA変調器は、電圧を印加すると吸収端波長が長波長側にシフトするという物理現象を利用して、連続光を断続した信号光に変換することが出来る。高速な信号光を生成するためには高周波電気信号をEA変調器に給電する必要がある。よって、EA変調器モジュールヘは同軸ケーブルにより高周波電圧の供給を行い、モジュール内部ではマイクロストリップライン(MSL)により素子の直近まで接続し、MSLからはワイヤボンディングにより素子上面の電極パッドと接続する。このときワイヤ長が長くなると、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスの増加を招き、高周波特性が劣化する。そのため、EA変調器へのワイヤ長は、できるだけ短くする必要がある。
【0005】
そこで、ワイヤボンディングに替わる電気的な接続法として、冨室らが開発したIPF(Impedance−matched Fi1m)キャリアが非常に有効であると考えられている(冨室他、特開平2−34948号公報)。IPFキャリアとはインピーダンス整合型の電気配線膜(フィルムキャリア)のことで、絶縁性フレキシブル基板の両面に、金属導体のコプレーナ(CPW)配線パターンとグランド面が形成されたグランドコプレーナ(GCPW)構造となっており、半導体素子の直上に配置して用いる。IPFキャリアの配線パターン端部には端子接続用の開口部にAuバンプを形成した短いリードを配置しており、熱超音波ボンディングによって、半導体素子の電極パッドと接続する。そのため、半導体素子の直近までインピーダンス整合のとれた電気配線を行うことが可能なため、非常に広い帯域において良好な周波数特性を得ることができる。恒次らは、IPFキャリアの周波数帯域特性としてSパラメータを評価した(恒次他、電子情報通信学会誌、Vol.84,No.6,pp.390−398,June 2001)。その結果、直線状の配線パターンの場合、DC〜50GHzまでの広帯域な領域でS21<−0.8dB、S11<−20dBと優れた高周波特性を達成している。
【0006】
一方、アレイ化した多チャンネルEA変調素子の構造を図5に示す。図5は4チャンネルのEA変調器アレイ素子の例であるが、EA変調器アレイ素子3には受動導波路4が4本形成されており、この光の入射面および出射面には反射防止膜13が形成されている。それぞれの受動導波路4に対しては光ファイバアレイ5が光学的に結合されており、各受動導波路4においては配線用のボンディングワイヤ8を接続するためのEA変調器用の電極パッド6が形成されており、EA変調器アレイ素子3の各チャンネルに信号電圧を印加する構造となっている。この電極パッド6と回路部分を形成しているMSL14あるいは終端抵抗7とは熱超音波ボンディング等によりボンディングワイヤ8で配線されている。このため、素子中央部に配置されたEA変調素子(図5で受動導波路b、c)へのワイヤ長を、素子端部(図5で受動導波路a、d)に配置された場合よりも長くしておく必要がある。素子端部に配置された場合は、従来のEA変調器単体における場合のワイヤ長とほぼ同等に接続できるが、中央部に配置された場合はワイヤ長が長くなるため寄生インダクタンスの増加を招き、高周波特性が劣化してしまうことが重要な問題となっていた。また、ワイヤ同士が接触すると短絡して、各チャンネルを独立な電気信号で変調することができなくなる。よって、ワイヤの引き回し工程には細心の注意を払う必要が生じるため、チャンネル数の増加に伴い実装工程が煩雑化し、歩留まりの低下を招くことが問題となっていた。
【0007】
以上述べた問題を解決するために山田らは、図6に示した反射型の多チャンネル変調装置を開発した(K.Yamada et al.,IEICE Trans. Electron., vol.E81−C,No.8,August1998,pp.1245−1250)。この構造の光変調装置においては、回路との接続点を全て半導体基板の同一端面に寄せ、すなわち、電極パッド6を変調器アレイ素子3の高反射膜15側に配置し、この高反射膜15側に回路部分16を配置している。これにより回路部分16とEA変調器アレイ素子3とは全てのチャンネルが同じ最短距離でボンディング出来ることになる。この場合、光の入力および出力は同じ反射防止膜13が形成されている側から行なわれるため、チャンネル毎に入力光と出力光とを分離するための光サーキュレータ17が必要となる。このため、EA変調素子の位置によらず、どのチャンネルに対しても従来のEA変調器単体における場合のワイヤ長とほぼ等しく接続できるため、アレイ化を行っても良好な高周波特性を得ることができ、また、ワイヤの引き回し工程においてもMSL14から各EA変調素子の電極パッド6までが近いので、他チャンネルのワイヤと接触する可能性が低く、よって、チャンネル数が増加しても、実装工程が煩雑化することがない、と言うメリットがある。しかしながら、この構造による光変調装置は同一の光ファイバにより光の入出力を行うため、チャンネル数分の光サーキュレータ17を用いる必要がある。そのため、低コスト化が困難になるという重大な問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来提案されてきた各種のアレイ型光変調器においては周波数特性上、製造工程上あるいはコスト上の問題が何れも十分に解決されたものとはなっておらず、実用上の問題点となっていた。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、アレイ化されたEA変調器モジュールにおいて、広帯域な領域で良好な高周波特性を示し、かつチャンネル数の増加に伴い実装工程が煩雑化することなく、さらに、コスト増加を招く光サーキュレータ11を必要としない光変調装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明においては絶縁性フレキシブル基板の一方の面にコプレーナ配線パターンが形成されると共に、他方の面にグランド面が形成されたグランドコプレーナ構造のインピーダンス整合型線路で構成された電気配線と、複数の光変調器と該光変調器の両側に受動導波路が集積されている光半導体素子とを電気的に接続してなる光変調装置において、光入力端および光出力端にそれぞれ受動導波路が接続され、該各受動導波路の光入力端および光出力端が相対向する端面に設置されており、かつ、各光変調器となる部分が光の伝搬方向に沿って該光入力端からの距離が、チャンネル毎に互いに異なった位置に配置されており、駆動電気信号を入力するための前記電気配線の入力ポートが該受動導波路の該光入出力端と異なる端面にチャンネル毎に形成され、各チャンネルの前記入力ポートから当該チャンネルの光変調器に接続される配線パターンが、全てのチャンネルで曲げ部のない直線で構成されると共に、前記入力ポートが形成された端面に相対向する端面に形成された出力ポートに接続され、前記全チャンネルについて電気配線の入力ポートから出力ポートまでの長さを等しくし、該出力ポートにはそれぞれ終端抵抗を接続した構成光変調装置について規定している。
【0010】
また、請求項2においては、請求項1記載の光変調装置において、インピーダンス整合型線路で構成された電気配線に高周波信号を給電する前記入力ポートを、隣接する前記チャンネル毎に反対側の端面に設置した構成の光変調装置について規定している。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明における第1の実施の形態例に係わる光半導体素子の構成を表す上面図を示す。半導体素子は、EA変調器アレイ素子3とその両端に光入出力端を有する受動導波路4を有する素子を4つ集積したモノリシック集積型の多チャンネル変調器アレイ素子3となっている。図示はしないが、この受動導波路4の光入出力端には、水平方向のテーパー構造を用いることでスポットサイズを広げ、光ファイバとの結合損失低減を図った。多チャンネル光変調器アレイ素子3と光ファイバアレイ5を直接光結合するためと、チャンネル間ピッチを500μmにして多チャンネル変調器アレイ素子3サイズの小型化を図るために、多チャンネル変調器アレイ素子3との光結合には先球ファイバを用いた。素子のサイズは、2.5mm×2.5mmであり、非常に小型なデバイスとなっている。
【0012】
入力側の光ファイバアレイ5から入射した連続光は、受動導波路4の入力側を経てEA変調器アレイ素子3に入射する。EA変調器アレイ素子3で変換された信号光は、受動導波路4の出力端より出力側に配置された光ファイバアレイ5ヘ出射する。このように、光の入出力端を別個に構成した導波路を用いるため、光サーキュレータが不要な構成となっている。
【0013】
ところで、高周波電気配線パターンにおける曲げ部は、反射点や共振点の原因となるため、高周波特性を劣化させることが知られている。よって、本実施の形態例においては4つある各EA変調器を、光の入射面からの距離がチャンネル毎に導波路上で異なった位置に配置することにより、IPFキャリア21の上にGCPWによる配線パターン9は全てのチャンネルで曲げ部のない直線で構成し、50Ω抵抗7で終端している。これにより、図5における長さの異なるボンディングワイア8を空間的に配置して結線することがないため、広帯域において良好な高周波特性を得ることができる。
【0014】
また配線パターンのチャンネル間ピッチは500μmと充分離すことで、チャンネル間電気クロストークの低減を図った。IPFキャリア21上のGCPW配線パターン9ヘの駆動信号の入力は、4チャンネル全て同一方向から行うと、図示はしないがモジュールの片側のみに同軸コネクタ等の高周波用コネクタが配置されるため、モジュールが大型化してしまう。そのため、図1に示すように1チャンネルずつ交互に両側から駆動電気信号を入力する。
【0015】
本実施の形態では4チャンネル変調装置について示したが、チャンネル数が4つ以上になっても、熱超音波ボンディングによる接続点数が増加するだけで、1枚のIPFキャリア21により電気的に配線することができる。そのため、チャンネル数の増加による実装工程の煩雑化、あるいは歩留まりの低下が生じることはない。
【0016】
図1に示した、直線状のGCPW配線パターン9の高周波特性を解析するために、シミュレーションを行った。図2にシミュレーションに用いた解析モデルを示す。図2は1チャンネルあたりの上面図を示すもので、図2におけるA−A’間の断面図を図3に示す。図2において1が高周波駆動電圧の入力ポートで、2は50Ω終端抵抗7に接続された出力ポートである。信号線10の線路長は、素子の横幅と同じ2.5mmとし、この信号線10の両側に図3に示すようにグランド線11が配線されており、この配線面と反対側の面、すなわち、図2に示す上面の反対側の裏面はグランド12の面としている。
【0017】
また図3においてCu配線パターン19の厚みを無視し、無損失線路として解析を行った。実際には、表面の配線パターンの信号線10およびグランド線11と裏面のグランド12はヴィアにより導通してグランド強化を図ったが、簡単のため本シミュレーションではヴィアを考慮に入れていない。また、EA変調素子とIPFキャリア21の絶縁を図るために、IPFキャリア21の両面は絶縁性のポリイミド20でコーティングされているが、簡単のため本シミュレーションでは考慮に入れていない。図4には、その解析結果(S11)を示す。図4より、1〜40GHzまでの広い周波数領域において、S11<−20dBの良好な特性を達成していることが分かる。
【0018】
なお、上述した実施の形態例では、4つの素子を集積したEA変調器アレイを例に挙げて説明したが、4つ未満、あるいは5つ以上の素子を集積した光半導体アレイに適用できるのは無論のことである。
【0019】
また、上述した実施の形態例では、電圧駆動型のEA変調器を例に挙げて説明したが、電流駆動により直接変調を行うレーザダイオードなど、他の光半導体素子にも適用できる。また、上述した実施の形態例では、絶縁性のフレキシブル配線を例に挙げて説明したが、セラミック基板上に形成されたCPW配線板と光半導体素子をはんだバンプにより接続してなるフリップチップ実装型の光半導体モジュールに組み込まれる光半導体素子にも適用できる。
【0020】
【発明の効果】
本発明によるアレイ型光変調装置は、インピーダンス整合型線路で構成された並列高周波電気配線膜による電気配線と、複数の電界吸収型光変調器とこの光変調器の両端に受動導波路が集積されている光半導体素子とを電気的に接続してなる光変調装置において、この変調器を光の伝搬方向に沿って互いに異なった位置に配置することにより、本発明による変調器に駆動電気信号を供給する電気配線膜において、曲げ部のない直線状の配線パターンを得ることができるようにしたため、広い帯域に渉って良好な高周波特性を得ることができ、かつチャンネル数の増加に伴い実装工程が煩雑化することもなく、WDMネットワークに必須の高速アレイ化デバイスが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光変調装置の構成図。
【図2】GCPW配線パターンの高周波特性シミュレーション用モデルの上面図。
【図3】上記モデルにおける配線パターンの断面図。
【図4】上記シミュレーション結果の特性図。
【図5】従来の多チャンネルEA変調素子の構成図。
【図6】従来の反射型多チャンネルEA変調素子の構成図。
【符号の説明】
1:入力ポート 2:出力ポート
3:EA変調器アレイ素子 4:受動導波路
5:光ファイバアレイ 6:EA変調器電極パッド
7:終端抵抗 8:ボンディングワイア
9:GCPW配線パターン 10:信号線
11:グランド線 12:グランド
13:反射防止膜 14:マクロストリップライン
15:高反射膜 16:回路部分
17:光サーキュレータ 19:Cu配線パターン
20:ポリイミド 21:IPFキャリア
Claims (2)
- 絶縁性フレキシブル基板の一方の面にコプレーナ配線パターンが形成されると共に他方の面にグランド面が形成されたグランドコプレーナ構造のインピーダンス整合型線路で構成された電気配線と、複数の光変調器と該光変調器の両側に受動導波路が集積されている光半導体素子とを電気的に接続してなる光変調装置において、
光入力端および光出力端にそれぞれ受動導波路が接続され、該各受動導波路の光入力端および光出力端が相対向する端面に設置されており、かつ、該各光変調器となる部分が光の伝搬方向に沿って該光入力端からの距離が、チャンネル毎に互いに異なった位置に配置されており、
駆動電気信号を入力するための前記電気配線の入力ポートが該受動導波路の該光入出力端と異なる端面に前記チャンネル毎に形成され、該各チャンネルの前記入力ポートから当該チャンネルの光変調器に接続される配線パターンが、全てのチャンネルで曲げ部のない直線で構成されると共に、前記入力ポートが形成された端面に相対向する端面に形成された出力ポートに接続され、前記全チャンネルについて電気配線の入力ポートから出力ポートまでの長さを等しくし、該出力ポートにはそれぞれ終端抵抗が接続されていることを特徴とする光変調装置。 - 請求項1記載の光変調装置において、インピーダンス整合型線路で構成された電気配線に高周波信号を給電する前記入力ポートを、隣接する前記チャンネル毎に反対側の端面に設置したことを特徴とする光変調装置。
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