JP3922014B2 - 液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置には、動作が安定でコントラストも充分なTN(ツイステッドネマティック)型、液晶分子の配向及び素子構造が単純で生産性に優れているホモジニアス配向型等の動作モードのものが知られており、これらの動作モードの液晶表示装置をアクティブ駆動することも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アクティブ駆動される液晶表示装置であって、特に、TFT(薄膜トランジスタ)をアクティブ素子としたものは、アクティブ素子のオンにより画素電極と対向電極との間に印加された電圧が、前記アクティブ素子がオフしたときに低下する。
【0004】
そして、このアクティブ素子がオフしたときの電極間電圧の低下量は、アクティブ素子のオン時にデータラインから画素電極に供給されたデータ信号の電位に応じて変動するため、フレーム毎に正負を交互に反転させて電極間に印加される電圧に、一方の極性にバイアスされたDCアンバランスが生じ、そのDCアンバランスにより電極間に印加される正負の電圧に差が生じて表示にフリッカを発生させる。また、前記DCアンバランスが大きいと、電極間に電荷の偏りが生じ、液晶中に存在する浮遊イオンが一方の基板側に集まって表示の焼き付きを発生させる。
【0005】
このように、アクティブ駆動の液晶表示装置は、表示のフリッカや焼き付きの問題がある。
【0006】
この問題を解決する1つの方法は、各画素の液晶容量(画素電極と対向電極及びこれらの電極の間の液晶層とにより形成される容量)と並列に接続された補償容量の静電容量の値を、前記アクティブ素子の浮遊容量(TFTのゲート電極とソース電極との間の容量)に較べて充分大きくすることである。
【0007】
しかし、前記補償容量を大きくするには、前記補償容量を形成するための補償容量電極の面積を大きくしなければならないため、開口率の低下を招き、明るい表示が得られない。
【0008】
また、アクティブ駆動の液晶表示装置は、高速応答が要求されており、そのために、高い電圧で駆動すること、或いは液晶の誘電異方性Δεの値を大きくすることが提案されている。
【0009】
すなわち、高い電圧で駆動すると、液晶分子に印加される電界強度が大きくなって応答策度が速くなる。また、誘電異方性Δεの大きい液晶は、電界との相互作用が強く、液晶分子の挙動が速いため、応答速度が改善される。
【0010】
しかし、高い電圧で駆動するのでは、消費電力が多くなるだけでなく、耐圧の高い駆動回路が必要になる。
【0011】
したがって、駆動電圧はできるだけ低く抑えるのが望ましいが、低い駆動電圧で高速応答させるためには、さらに誘電異方性Δεの大きい液晶を用いなければならない。
【0012】
しかし、液晶の誘電異方性Δεの値を大きくすると、液晶層の静電容量が大きくなり、また液晶分子の挙動により変化する前記液晶容量の変化量が大きくなるため、フリッカを生じて表示品質が低下する。
【0013】
このフリッカは、前記補償容量の静電容量値を、液晶層の静電容量に比べて充分に大きくすることで防止することができるが、補助容量の静電容量値を大きくするには、補償容量電極の面積をさらに大きくしなければならいため、開口率がさらに低下する。
【0014】
この発明は、表示のフリッカや焼き付きを生じることなく高速で応答する液晶表示装置を提供することを目的としたものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明の液晶表示装置は、互いに対向する一対の基板の一方の内面に、複数の画素電極とこれらの画素電極にそれぞれ接続された複数のアクティブ素子とが形成され、他方の基板の内面に、前記画素電極に対向する対向電極が形成されるとともに、前記一対の基板間に、液晶分子の配向状態が、前記電極間に印加される電圧に応じて、電圧が印加されないときの予め規定された初期配向状態と、印加電圧の変化に対して液晶分子が実質的に挙動しなくなる充分高い電圧を印加したときの前記基板面に対して略垂直或いは略水平に配向する飽和配向状態との間で変化する液晶層が設けられた液晶素子と、前記液晶素子の少なくとも一方の面側に配置された偏光板と、前記液晶素子の電極間に、前記液晶層の液晶分子を実質的に前記初期配向状態に配向させる第1の電圧と前記液晶分子を実質的に前記飽和配向状態に配向させる第2の電圧との間の電圧範囲のうち、前記第1の電圧と第2の電圧の少なくとも一方の電圧を除いた印加電圧範囲内の電圧を印加して前記液晶分子の配向状態を制御する配向制御手段とを備え、前記液晶素子は、前記印加電圧範囲内の最も高い電圧が印加されたときの光路長差と、最も低い電圧が印加されたときの光路長差との差が、透過する光の波長λの実質的に1/2の整数倍となる光学特性を持った液晶層を有することを特徴とする。
【0016】
なお、ここで、飽和配向状態とは、電極間電圧を高くするのにともなう液晶分子の倒伏または立ち上がり挙動が見掛け上限界に達し、それ以上に電極間電圧を高くしても、液晶分子がほとんど挙動しなくなるときの配向状態である。
【0017】
すなわち、この液晶表示装置は、前記配向制御手段により、前記液晶素子の電極間に、液晶分子を初期配向状態に配向させる電圧と前記液晶分子を飽和配向状態に配向させる電圧との差よりも小さい値の変化幅の電圧を印加することにより、前記液晶分子の配向状態を、印加電圧に応じて挙動し得る挙動可能範囲、つまり前記初期配向状態から前記飽和配向状態までの範囲のうち、その範囲の一端または両端の配向状態を除いた範囲内で制御するようにしたものである。
【0018】
この液晶表示装置は、液晶素子の液晶分子の配向状態を、その挙動可能範囲の一端または両端の配向状態を除いた範囲内で制御するものであるため、前記挙動可能範囲の全域で液晶分子の配向状態を制御する場合に比べて、アクティブ素子がオフしたときの電極間電圧の低下量の変動(アクティブ素子のオン時に画素電極に供給されたデータ信号の電位に応じた変動)が小さい。
【0019】
そのため、フレーム毎に正負を交互に反転させて電極間に印加される電圧に生じるDCアンバランスを小さくし、液晶素子の電極間に印加される正負の電圧差が小さくして、DCアンバランスによる表示のフリッカや焼き付きの発生を防ぐことができる。
【0020】
しかも、この液晶表示装置は、上記のように、液晶素子の液晶分子の配向状態を、その挙動可能範囲の一端または両端の配向状態を除いた範囲内で制御するものであるため、液晶の誘電異方性Δεの値が大きく、液晶層の静電容量が大きくても、液晶分子の挙動により変化する液晶容量(画素電極と対向電極及びこれらの電極の間の液晶層とにより形成される容量)の変化量を小さくし、前記液晶容量の変化によるフリッカの発生を防ぐことができる。
【0021】
したがって、この液晶表示装置によれば、表示にフリッカや焼き付きを生じさせること無く液晶の誘電異方性Δεの値を大きくし、応答速度を速くすることができる。
【0022】
上記のように、この発明の液晶表示装置は、液晶素子の電極間に、液晶分子を初期配向状態に配向させる電圧と前記液晶分子を飽和配向状態に配向させる電圧との差よりも小さい値の変化幅の電圧を印加することにより、表示のフリッカや焼き付きを生じることなく高速で応答するようにしたものである。
【0023】
この液晶表示装置において、前記液晶素子の一方の基板に、画素電極と対向電極及びこれらの電極の間の液晶層とにより形成される液晶容量に対して並列に接続された補償容量が形成されている場合、前記配向制御手段は、前記液晶素子の電極間に、液晶分子の挙動により変化する前記液晶容量の変化量が、前記補償容量の静電容量値よりも小さい範囲で前記液晶分子の配向状態を変化させる電圧を印加するように構成するのが好ましい。
【0024】
その場合、前記配向制御手段は、前記液晶素子の電極間に、液晶分子の挙動による液晶容量の変化量が補償容量の静電容量値の1/5〜1/10よりも小さい範囲で前記液晶分子の配向状態を変化させる電圧を印加するように構成するのが望ましい。
【0025】
さらに、前記配向制御手段は、前記液晶素子の電極間に、液晶分子を、基板面に対して実質的に水平に配向する状態と前記基板面に対して実質的に垂直に配向する状態のいずれか一方の配向状態と、前記基板面に対して水平な方向と垂直な方向の間の斜めに傾いた方向に配向する傾斜配向状態との間で挙動させる範囲の電圧を印加するように構成するのが望ましい。
【0026】
また、この液晶表示装置において、前記液晶素子の液晶層は、液晶分子が一対の基板間でツイストして配向したツイスト配向、液晶分子がツイストすることなく一方方向に且つ基板面と実質的に平行に配向したホモジニアス配向、液晶分子が基板面に対して実質的に垂直に配向したホメオトロピック配向、液晶分子が一方の基板側で実質的に垂直に他方の基板側で実質的に水平に配向したハイブリッド配向のうちのいずれか1つの初期配向状態を有する液晶からなっていればよく、特に、初期配向状態が前記ホモジニアス配向である液晶からなっているのが最も好ましい。
【0027】
そして、前記液晶素子の液晶層が、液晶分子が基板面に対して予め定めたプレチルト角をもって実質的に水平に且つ一方方向にホモジニアス配向した初期配向状態を有する液晶からなっている場合、前記配向制御手段は、前記液晶素子の電極間に、液晶分子の配向状態を、基板面に対して実質的に水平に配向する状態と前記基板面に対して実質的に垂直に配向する状態とのいずれか一方の配向状態と、その配向状態からの液晶分子の挙動による液晶容量の変化量が補償容量の静電容量値よりも小さい範囲の配向状態との間で変化させる電圧を印加するように構成するのが望ましい。
【0028】
また、この発明の他の液晶表示装置は、互いに対向する一対の基板の一方の内面に、複数の画素電極とこれらの画素電極にそれぞれ接続された複数のアクティブ素子とが形成され、他方の基板の内面に、前記画素電極に対向する対向電極が形成されるとともに、前記一対の基板間に、液晶分子の配向状態が、前記電極間に印加される電圧に応じて、電圧が印加されないときの予め規定された初期配向状態と、印加電圧の変化に対して液晶分子が実質的に挙動しなくなる充分高い電圧を印加したときの前記基板面に対して略水平或いは略垂直に配向する飽和配向状態(電極間電圧を高くするのにともなう液晶分子の倒伏または立ち上がり挙動が見掛け上限界に達し、それ以上に電極間電圧を高くしても、液晶分子がほとんど挙動しなくなるときの配向状態)との間で、前記電極間に印加される電圧に応じて変化する液晶層が設けられた液晶素子と、前記液晶素子を挟んで配置された一対の偏光板とを備え、前記液晶素子の液晶層は、前記液晶分子が前記初期配向状態と前記飽和配向状態との間の前記基板面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記一対の偏光板の間を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与え、前記傾斜配向状態以外の他の配向状態において、前記第1の光路長差に対して実質的に前記波長λの1/2異なった第2の光路長差を与える屈折率異方性を有する液晶からなっていることを特徴とする。
【0029】
この液晶表示装置は、液晶素子の液晶層が、液晶分子が前記初期配向状態と前記飽和配向状態との間の基板面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、一対の偏光板の間を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性を有する液晶からなっているため、液晶分子を前記傾斜配向状態に配向させたときに透過率が最も高くなるか或いは最も低くなり、その状態から前記液晶分子の配向状態を変化させるのにともなって透過率が変化する。
【0030】
そのため、この液晶表示装置は、前記液晶素子の液晶分子の配向状態を、印加電圧に応じて挙動し得る挙動可能範囲、つまり前記初期配向状態から前記飽和配向状態までの範囲のうち、その範囲の一端または両端の配向状態を除き、且つ前記傾斜配向状態を含む範囲内で制御することにより明暗を表示することができ、したがって、前記挙動可能範囲の全域で液晶分子の配向状態を制御する場合に比べて、アクティブ素子がオフしたときの電極間電圧の低下量の変動(アクティブ素子のオン時に画素電極に供給されたデータ信号の電位に応じた変動)を小さくし、フレーム毎に正負を交互に反転させて電極間に印加される電圧に生じるDCアンバランスを小さくすることができるため、液晶素子の電極間に印加される正負の電圧差が小さくして、表示のフリッカや焼き付きの発生を防ぐことができる。
【0031】
しかも、この液晶表示装置は、上記のように、液晶素子の液晶分子の配向状態を、その挙動可能範囲の一端または両端を配向状態を除いた範囲内で制御するため、液晶の誘電異方性Δεの値が大きく、液晶層の静電容量が大きくても、液晶分子の挙動により変化する液晶容量の変化量を小さくし、フリッカの発生を防ぐことができる。
【0032】
そのため、この液晶表示装置によれば、表示にフリッカや焼き付きを生じさせること無く液晶の誘電異方性Δεの値を大きくし、応答速度を速くすることができる。
【0033】
上記のように、この発明の他の液晶表示装置は、液晶素子の液晶層を、液晶分子が初期配向状態と飽和配向状態との間の基板面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、一対の偏光板の間を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性を有する液晶により形成することにより、表示のフリッカや焼き付きを生じることなく高速で応答するようにしたものである。
【0034】
この液晶表示装置において、前記一対の偏光板がそれぞれ前記液晶素子に直接対向させて配置されている場合、前記液晶素子の液晶層は、液晶分子が前記予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記液晶層を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性を有する液晶からなっていればよい。
【0035】
また、この液晶表示装置において、前記液晶素子と一対の偏光板の少なくとも一方との間に位相板が配置されている場合、前記液晶素子の液晶層は、液晶分子が前記予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記液晶層と前記位相板の両方を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性を有する液晶からなっていればよい。
【0036】
前記位相板を備えた液晶表示装置は、前記液晶素子の液晶層が、液晶分子が初期配向状態と飽和配向状態との間の配向状態で且つ基板面に対する傾き角が異なる第1と第2の2つの傾斜配向状態を有し、前記第1と第2のいずれか一方の傾斜配向状態において、前記液晶層と位相板の両方を透過する光にその波長λの1/2の奇数倍の光路長差を与え、他方の傾斜配向状態において、前記液晶層と位相板の両方を透過する光に実質的に0または透過光の波長λの1/2の偶数倍の光路長差を与える屈折率異方性と液晶層厚を有する液晶からなっており、前記液晶素子の電極間に、前記液晶層の液晶分子を、前記第1の傾斜配向状態と、前記第2の2つの傾斜配向状態と、これらの傾斜配向状態の間の配向状態とに配向させる電圧を印加して前記液晶分子の配向状態を制御する配向制御手段をさらに備えた構成のものが好ましい。
【0037】
その場合、前記液晶素子の液晶層は、液晶分子が基板面に対して予め定めたプレチルト角をもって実質的に水平で且つ一方方向にホモジニアス配向した初期配向状態を有し、且つ前記液晶分子が、前記基板面に対して予め定めた第1の傾き角で配向する第1の傾斜配向状態と、前記基板面に対して前記第1の傾き角よりも小さい予め定めた第2の傾き角で配向する第2の傾斜配向状態とに配向する液晶からなっているのが好ましい。
【0038】
さらに、前記液晶素子の液晶層は、前記第1の傾斜配向状態で、前記液晶層と位相板の両方を透過する光にその波長λの1/2の奇数倍の光路長差を与え、前記第2の傾斜配向状態で、前記液晶層と位相板の両方を透過する光に実質的に0または透過光の波長λの1/2の奇数倍の光路長差を与える屈折率異方性と液晶層厚を有する液晶からなっているのが好ましい。
【0039】
また、前記液晶素子の一方の基板に、画素電極と対向電極及びこれらの電極の間の液晶層とにより形成される液晶容量に対して並列に接続された補償容量が形成されている場合、前記配向制御手段は、前記第1の傾斜配向状態と第2の傾斜配向状態との間での液晶分子の配向状態の変化による前記液晶容量の変化量が前記補償容量の静電容量値よりも小さい範囲で前記液晶分子の挙動を制御するように構成するのが望ましい。
【0040】
【発明の実施の形態】
図1〜図5はこの発明の第1の実施例を示しており、図1は液晶表示装置の分解斜視図である。
【0041】
この実施例の液晶表示装置は、図1に示したように、液晶素子1と、前記液晶素子1を挟んで配置された一対の偏光板14,15と、前記液晶素子1の液晶分子の配向状態を制御するための配向制御手段20とを備えている。
【0042】
図2は前記液晶素子1の一部分の断面図、図3は前記液晶素子1の1つの画素の等価回路図である。
この液晶素子1は、TFT(薄膜トランジスタ)をアクティブ素子としたアクティブマトリックス型のものであり、図2のように、対向配置された前後一対の透明基板2,3のうち、一方の基板、例えば表示の観察側とは反対側の後側の基板3の内面に、行方向及び列方向にマトリックス状に配列した複数の透明な画素電極4とこれら画素電極4にそれぞれ接続された複数のTFT(アクティブ素子)5とが形成され、他方の基板、つまり表示の観察側である前側の基板2の内面に、前記複数の画素電極4に対向する透明な対向電極10が形成されるとともに、前記一対の基板2,3間に液晶層13が設けられた構成となっている。
【0043】
なお、前記TFT5は、アモルファスシリコン薄膜を用いたものであり、このTFT5は、後側基板3の内面上に形成されたゲート電極Gと、このゲート電極Gを覆って前記後側基板3の略全体に形成された透明なゲート絶縁膜6と、前記ゲート絶縁膜6の上に前記ゲート電極Gと対向させて形成されたi型半導体膜7と、このi型半導体膜7の両側部の上に図示しないn型半導体膜を介して形成されたソース電極S及びドレイン電極Dとからなっている。
【0044】
また、前記後側基板3の内面には、各画素行の一側にそれぞれ沿わせて、各行のTFT5にゲート信号を供給するための複数のゲートラインGL(図3参照)が設けられるとともに、各画素列の一側にそれぞれ沿わせて、各列のTFT5にデータ信号を供給するための複数のデータラインDL(図3参照)が設けられている。
【0045】
なお、前記ゲートラインGLは、後側基板3の内面上に前記TFT5のゲート電極Gと一体に形成されており、前記データラインDLは、前記ゲート絶縁膜6の上に形成され、前記TFT5のドレイン電極Dに接続されている。
【0046】
そして、前記画素電極4は、前記ゲート絶縁膜6の上に形成されており、これらの画素電極4に、前記TFT5のソース電極Sが接続されている。
【0047】
さらに、前記後側基板3の内面には、前記画素電極4と前側基板2の内面に設けられた対向電極10及びこれらの電極4,10の間の液晶層13とにより形成される各画素の液晶容量CLC(図3参照)に対して並列に接続された補償容量Csが形成されている。
【0048】
この補償容量Csは、前記後側基板3の内面上に、前記ゲート絶縁膜6を挟んで前記画素電極4の縁部に対向する補償容量電極8を設けることにより、この補償容量電極8と前記画素電極4の縁部とその間のゲート絶縁膜6とによって形成されている。
【0049】
そして、前記後側基板3の内面には、前記複数のTFT5と前記データラインDLを覆ってオーバーコート絶縁膜9が形成されており、その上に、ポリイミド等からなる配向膜11が、液晶層に対向する領域の全体にわたって形成されている。
【0050】
一方、前側基板2の内面に形成された対向電極10は、前記複数の画素電極4の全てに対向する一枚膜状の電極であり、この対向電極10の上に、ポリイミド等からなる配向膜12が、液晶層に対向する領域の全体にわたって形成されている。
【0051】
そして、前記一対の基板2,3は、図示しない枠状のシール材を介して接合されており、こられの基板2,3間の前記シール材で囲まれた領域に、液晶分子の配向状態が、前記画素電極4と対向電極10との間に印加される電圧に応じて、電圧が印加されないときの予め規定された初期配向状態と、前記液晶分子が前記基板2,3面に対して略水平或いは略垂直に配向する電圧を印加したときの飽和配向状態(電極間電圧を高くするのにともなう液晶分子の倒伏または立ち上がり挙動が見掛け上限界に達し、それ以上に電極間電圧を高くしても、液晶分子がほとんど挙動しなくなるときの配向状態)との間で変化する液晶層13が設けられている。
【0052】
この実施例の液晶素子1は、前記一対の基板2,3間に、誘電異方性Δεが正(Δε>0)のネマティック液晶からなる液晶層13を設け、その液晶層13の液晶分子の初期配向状態を、液晶分子がツイストすることなく一方方向に且つ基板2,3面と実質的に平行に配向したホモジニアス配向としたものであり、前記一対の基板2,3の内面にそれぞれ設けられた配向膜11,12は、互いに略平行で且つ互いに逆方向に配向処理され、前記液晶層13の液晶分子は、前記配向膜11,12の配向処理方向と略平行に、且つ、前記基板2,3面に対して予め定めたプレチルト角をもって、前記基板2,3面と実質的に平行に配向している。
【0053】
なお、この実施例では、前記液晶素子1の液晶層13の液晶分子を、図1に示したように、画面の横軸xと実質的に平行な方向に沿わせてホモジニアス配向させている。
【0054】
また、前記一対の偏光板14,15は、図1のように、その透過軸14a,15aを前記液晶素子1の液晶分子のホモジニアス配向方向(画面の横軸xと実質的に平行な方向)1aに対して実質的に45°の角度で交差させるとともに、それぞれの透過軸14a,15aを実質的に互いに直交させて配置されている。
【0055】
さらに、前記液晶素子1の液晶層13は、液晶分子が前記ホモジニアス配向状態(初期配向状態)と前記飽和配向状態との間の基板2,3面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記一対の偏光板14,15の間を透過する光、つまり後側の偏光板15により直線偏光とされて入射し、液晶素子1の液晶層13を透過して前側の偏光板14に入射する光に、その波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性Δnを有する液晶からなっている。
【0056】
なお、この実施例の液晶表示装置は、前記一対の偏光板14,15をそれぞれ前記液晶素子1に直接対向させて配置したものであり、前記一対の偏光板14,15の間を透過する光に光路長差を与えるのは前記液晶素子1の液晶層13だけである。
【0057】
そのため、この実施例では、前記液晶素子1の液晶層13を、液晶分子が前記ホモジニアス配向状態と飽和配向状態との間の基板2,3面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記液晶層13を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性Δnを有する液晶により形成している。
【0058】
さらに、この実施例では、前記液晶素子1の液晶層13を、前記ホモジニアス配向状態において、液晶層13を透過する光にその波長λの1/2の奇数倍、例えばλ/2の光路長差を与え、前記基板2,3面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記液晶層13を透過する光にその波長λの1/2の偶数倍、例えばλの光路長差を与える屈折率異方性Δnと液晶層厚dを有する液晶により形成している。
【0059】
次に、前記液晶素子1の液晶分子の配向状態を制御するための配向制御手段20について説明する。
【0060】
この配向制御手段20は、その構成は図示しないが、前記液晶素子1の複数のゲートラインGLにゲート信号を供給するゲート側ドライバと、前記液晶素子1の複数のデータラインGLにデータ信号を供給するデータ側ドライバと、これらのドライバの制御部とからなっており、前記液晶素子1の各行のTFT5を前記ゲートラインGLからのゲート信号の供給により順次オンさせ、前記複数のデータラインGLから前記TFT4を介して前記画素電極4にデータ信号を供給することにより、前記液晶素子1の画素電極4と対向電極10との間に電圧を印加して液晶分子の配向状態を制御する。
【0061】
そして、この配向制御手段20は、前記液晶素子1の電極4,10間に、液晶分子を実質的に前記ホモジニアス配向状態に配向させる電圧と前記液晶分子を実質的に前記飽和配向状態に配向させる電圧との差よりも小さい値の変化幅の電圧を印加して液晶分子の配向状態を制御するように構成されている。
【0062】
さらに、この配向制御手段20は、前記液晶素子1の電極4,10間に、液晶分子の挙動により変化する前記液晶容量CLCの変化量が、前記補償容量Csの静電容量値よりも小さい範囲、好ましくは、液晶分子の挙動による液晶容量CLCの変化量が前記補償容量Csの静電容量値の1/5〜1/10よりも小さい範囲で液晶分子の配向状態を変化させる電圧を印加するように構成されている。
【0063】
この実施例では、前記配向制御手段20を、前記液晶素子1の電極4,10間に、液晶分子の配向状態を、基板2,3面に対して実質的に水平に配向する状態と、その配向状態からの液晶分子の挙動による前記液晶容量CLCの変化量が前記補償容量Csの静電容量値よりも小さい範囲の配向状態との間で変化させる電圧を印加するように構成している。
【0064】
なお、上述したように、前記液晶素子1の液晶分子の初期配向状態は、液晶分子が基板2,3面に対して予め定めたプレチルト角をもって実質的に水平で且つ一方方向に配向したホモジニアス配向状態であり、また、前記液晶素子1の液晶層13は、前記ホモジニアス配向状態において、液晶層13を透過する光にλ(透過光の波長λの1/2の偶数倍)の光路長差を与え、液晶分子が前記ホモジニアス配向状態と飽和配向状態との間の基板2,3面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記液晶層13を透過する光にλ/2(透過光の波長λの1/2の奇数倍)の光路長差を与える屈折率異方性Δnと液晶層厚dを有する液晶からなっている。
【0065】
そのため、前記配向制御手段20は、前記液晶分子の配向状態を実質的に、液晶層13を透過する光にλの光路長差を与えるホモジニアス配向状態と、液晶層13を透過する光にλ/2の光路長差を与える傾斜配向状態との間で変化させる電圧を前記液晶素子1の電極4,10間に印加するように構成されている。
【0066】
図4は前記液晶素子1の液晶分子の配向状態の変化を示す模式図であり、(a)は、前記液晶素子1の電極4,10間に、前記配向制御手段20による印加電圧範囲のうちの最も低い電圧V1を印加し、液晶分子13aを実質的に、液晶層13を透過する光にλの光路長差を与えるホモジニアス配向状態に配向させた状態、(b)は、前記液晶素子1の電極4,10間に、前記印加電圧範囲のうちの最も高い電圧V2を印加し、液晶分子13aを、液晶層13を透過する光にλ/2の光路長差を与える傾斜配向状態に配向させた状態を示している。
【0067】
そして、この実施例では、前記一対の偏光板14,15を、それぞれの透過軸14a,15aを実質的に互いに直交させて配置しているため、前記液晶分子13aを前記予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態(液晶層13を透過する光にλ/2の光路長差を与える配向状態)に配向させたときに透過率が最も高くなり、その状態から前記液晶分子13aの配向状態を基板2,3面に対して倒伏する方向に変化させるのにともなって透過率が変化し、液晶分子13aを前記ホモジニアス配向状態(液晶層13を透過する光にλの光路長差を与える配向状態)に配向させたときに透過率が最も低くなる。
【0068】
すなわち、図4の(a)のように、前記印加電圧範囲のうちの最も低い電圧V1の印加により、液晶分子13aを実質的に、液晶層13を透過する光にλの光路長差を与えるホモジニアス配向状態に配向させると、後側偏光板15により直線偏光とされて入射し、液晶素子1の液晶層13を透過した光が、前側偏光板14の透過軸14aに対して略直交する直線偏光となって前記前側偏光板14に入射し、その光のほとんどが前記前側偏光板14により吸収されて、その画素の表示が黒になる。
【0069】
また、図4の(b)のように、前記印加電圧範囲のうちの最も高い電圧V2の印加により、液晶分子13aを、液晶層13を透過する光にλ/2の光路長差を与える傾斜配向状態に配向させると、後側偏光板15により直線偏光とされて入射し、液晶素子1の液晶層13を透過した光が、前側偏光板14の透過軸14aに沿った直線偏光となって前記前側偏光板14に入射し、その光のほとんどが前記前側偏光板14を透過して前側に出射して、その画素の表示が白になる。
【0070】
すなわち、この液晶表示装置は、前記配向制御手段20により、前記液晶素子1の電極4,10間に、液晶分子を実質的に、初期配向状態であるホモジニアス配向状態に配向させる電圧と前記液晶分子を飽和配向状態に配向させる電圧との差よりも小さい値の変化幅の電圧を印加することにより、前記液晶分子の配向状態を、印加電圧に応じて挙動し得る挙動可能範囲(ホモジニアス配向状態から飽和配向状態までの範囲)のうち、その範囲の一端の配向状態、つまり前記飽和配向状態になる側の配向状態を除いた範囲内で制御するようにしたものである。
【0071】
この液晶表示装置は、液晶素子1の液晶分子の配向状態を、その挙動可能範囲の一端の配向状態(飽和配向状態になる側の配向状態)を除いた範囲内で制御するものであるため、TFT5がオフしたときの電極間電圧の低下量の変動(TFT5のオン時に画素電極4に供給されたデータ信号の電位に応じた変動)が小さい。
【0072】
すなわち、図5は、TFT5のオン時に画素電極4に供給されたデータ信号の電位と、前記TFT5がオフしたときの画素電極4の電位(以下、画素電位と言う)の低下量ΔVを示している。
【0073】
図5において、VLは液晶分子を初期配向と実質的に等しいホモジニアス配向状態に配向させるためのデータ信号電位、VHは液晶分子を基板2,3面に対して略垂直に立ち上がった飽和配向状態に配向させるためのデータ信号電位、VSは液晶分子を前記ホモジニアス配向状態と飽和配向状態の間の任意の立ち上がり角の傾斜配向状態に配向させるためのデータ信号電位、Vcomは対向電極電位であり、前記対向電極電位Vcomは、予め定めた電位のデータ信号を、フレーム毎に正負を交互に反転させて前記画素電極4に供給したときの、正のデータ信号の印加に対するTFT5のオフ後の画素電位と、負のデータ信号の印加に対するTFT5のオフ後の画素電位との中間の値に設定されている。VL,VH,VS
図5に示したように、前記画素電位は、TFT5のオン時に画素電極4に供給されたVL,VH,VSのいずれかのデータ信号電位に上昇し、前記TFT5がオフしたときに、図3に示したTFT5のゲート,ソース電極間の浮遊容量Cgsへの分圧により、前記画素電極に保持される保持電位に低下する。
【0074】
そして、前記TFT5がオフしたときの画素電位の低下量ΔVは、TFT5のオン時に画素電極4に供給されたデータ信号VL,VH,VSの電位によって異なるため、前記液晶素子1の液晶分子の配向状態を前記挙動可能範囲(ホモジニアス配向状態から飽和配向状態までの範囲)の全域で制御すると、TFT5がオフしたときの画素電位の低下量ΔVが、TFT5のオン時に画素電極4に供給されたデータ信号の電位に応じて大きく変動し、フレーム毎に正負を交互に反転させて電極間に印加される電圧にDCアンバランスが生じ、電極4,10間に印加される正負の電圧に差が生じて表示にフリッカを発生させる。また、前記DCアンバランスが大きいと、電極4,10間に電荷の偏りが生じ、液晶中に存在する浮遊イオンが一方の基板側に集まって表示の焼き付きを発生させる。
【0075】
しかし、この実施例の液晶表示装置は、前記液晶素子1の液晶分子の配向状態を、その挙動可能範囲の一端の配向状態、つまり飽和配向状態になる側の配向状態を除いた範囲内で制御するものであるため、TFT5がオフしたときの、前記TFT5のオン時に画素電極4に供給されたデータ信号の電位に応じた画素電位の低下量ΔVの変動が、液晶分子の配向状態を前記挙動可能範囲の全域で制御する場合に比べて充分に小さい。
【0076】
すなわち、
前記液晶素子1の各画素の補償容量をCs、
TFT5のゲート,ソース電極間の浮遊容量をCgs、
液晶分子が基板2,3面に対して実質的に平行なホモジニアス配向状態に配向したときの各画素の液晶容量をCLC水平、
液晶分子が基板2,3面に対して実質的に垂直な飽和配向状態に配向したときの液晶容量をCLC垂直、
液晶分子が前記初期配向状態と飽和配向状態との間の傾斜配向状態に配向したときの液晶容量をCLC傾斜、
TFT5のオン時に画素電極4に供給されたデータ信号の電位をV、
液晶分子の配向状態を前記ホモジニアス配向状態から飽和配向状態までの挙動可能範囲で制御した場合のTFT5がオフしたときの前記データ信号の電位に応じた画素電位の低下量ΔVの変動量をΔΔV通常、
液晶分子の配向状態を前記ホモジニアス配向状態と傾斜配向状態との間の範囲で制御した場合のTFT5がオフしたときの前記データ信号の電位に応じた画素電位の低下量ΔVの変動量をΔΔV傾斜、
液晶分子の配向状態を前記ホモジニアス配向状態と傾斜配向状態との間の範囲で制御した場合のTFT5のオン−オフによる液晶容量CLCの誘電率変化量をΔC傾斜とすると、
前記液晶容量CLCの誘電率変化量ΔC傾斜は、
ΔC傾斜=CLC傾斜−CLC水平
である。
【0077】
したがって、前記ΔΔV傾斜は、
となる。
【0078】
そして、前記ΔC傾斜は、ΔC傾斜=CLC傾斜−CLC水平であり、したがって、CLC垂直>>CLC傾斜>>CLC水平であるため、
ΔΔV通常>>ΔΔV傾斜
となる。
【0079】
このように、この実施例の液晶表示装置は、TFT5がオフしたときのデータ信号の電位に応じた画素電位の低下量ΔVの変動量(ΔΔV傾斜)が、液晶分子の配向状態を前記挙動可能範囲の全域で制御する場合の変動量(ΔΔV通常)に比べて充分に小さいため、フレーム毎に正負を交互に反転させて電極4,10間に印加される電圧に生じるDCアンバランスを小さくし、液晶素子1の電極4,10間に印加される正負の電圧差が小さくして、DCアンバランスによる表示のフリッカや焼き付きの発生を防ぐことができる。
【0080】
しかも、この液晶表示装置は、上記のように、液晶素子1の液晶分子の配向状態を、その挙動可能範囲の一端の配向状態を除いた範囲内で制御するものであるため、液晶の誘電異方性Δεの値が大きく、液晶層13の静電容量が大きくても、液晶分子の挙動により変化する液晶容量CLCの変化量を小さくし、前記液晶容量CLCの変化によるフリッカの発生を防ぐことができる。
【0081】
そのため、前記液晶素子1の後側基板3の内面に各画素の液晶容量CLCと並列に接続して形成された補償容量Csの静電容量の値を、前記TFT5の浮遊容量(ゲート,ソース電極間の容量)に較べて充分大きくする必要がなく、したがって、前記補償容量Csを形成するための補償容量電極8の面積が小さくてよいため、液晶素子1の開口率を高くすることができる。
【0082】
したがって、この液晶表示装置によれば、表示にフリッカや焼き付きを生じさせること無く液晶の誘電異方性Δεの値を大きくし、応答速度を速くすることができる。
【0083】
また、この液晶表示装置は、前記配向制御手段20を、前記液晶素子1の電極4,10間に、液晶分子の挙動により変化する前記液晶容量CLCの変化量が、前記補償容量Csの静電容量値よりも小さい範囲で液晶分子の配向状態を変化させる電圧を印加するように構成しているため、前記液晶容量CLCの変化によるフリッカの発生を、より効果的に防ぐことができ、したがって、前記補償容量電極8の面積をより小さくし、前記液晶素子1の開口率をさらに高くすることができる。
【0084】
前記配向制御手段20は、前記液晶素子1の電極4,10間に、液晶分子の挙動により変化する前記液晶容量CLCの変化量が前記補償容量Csの静電容量値の1/5〜1/10よりも小さい範囲で液晶分子の配向状態を変化させる電圧を印加するように構成するのが好ましく、このようにすることにより、前記液晶容量CLCの変化によるフリッカの発生をさらに効果的に防ぎ、液晶素子1の開口率をさらに高くすることができる。
【0085】
さらに、この実施例では、前記液晶素子1の液晶層13を、初期配向状態であるホモジニアス配向状態において、液晶層13を透過する光にその波長λの1/2の偶数倍(この実施例ではλ)の光路長差を与え、前記ホモジニアス配向状態と飽和配向状態の間の傾斜配向状態において、前記液晶層13を透過する光にその波長λの1/2の奇数倍(この実施例ではλ/2)の光路長差を与える屈折率異方性Δnと液晶層厚dを有する液晶により形成しているため、前記液晶層13の液晶分子13aを図4の(a)のように、ホモジニアス配向状態に配向させたときに、その画素の表示が黒になり、前記液晶層13の液晶分子13aを図4の(b)のように基板面2,3に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態に配向させたときに、その画素の表示が白になる。
【0086】
また、この実施例の液晶表示装置は、前記液晶素子1の液晶層13の初期配向状態を、液晶分子がツイストすることなく一方方向に且つ基板2,3面と実質的に平行に配向したホモジニアス配向としているため、液晶分子の配向及び液晶素子1の構造が単純であり、生産性に優れている。
【0087】
なお、上記実施例では、液晶素子1の液晶分子の配向状態を、初期配向状態であるホモジニアス配向状態と、前記ホモジニアス配向状態と飽和配向状態(液晶分子が基板2,3面に対して略垂直に配向する電圧を印加したときの配向状態)との間の基板2,3面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態との間の範囲で変化させるようにしているが、前記液晶素子1の液晶分子の配向状態は、前記傾斜配向状態と前記飽和配向状態との間の範囲で変化させてもよい。
【0088】
その場合は、前記一対の偏光板14,15の透過軸14a,15aの向きを上記実施例と同じ(図1参照)にし、前記液晶素子1の液晶層13を、基板2,3面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記液晶層13を透過する光にその波長λの1/2の奇数倍、例えばλ/2の光路長差を与え、前記飽和配向状態に配向したときに、液晶層13を透過する光に与える光路長差が実質的に0になる液晶により形成するとともに、配向制御手段20を、液晶層13を透過する光にλ/2の光路長差を与える傾斜配向状態と前記飽和配向状態との間で前記液晶分子の配向状態を、変化させる電圧を前記液晶素子1の電極4,10間に印加するように構成すればよい。
【0089】
図6は、この発明の第2の実施例を示す、液晶素子1の液晶分子の配向状態を前記傾斜配向状態と飽和配向状態との間の範囲で変化させる場合の液晶分子の配向状態の変化を示す模式図であり、(a)は、前記液晶素子1の電極4,10間に、前記配向制御手段20による印加電圧範囲のうちの最も低い電圧V3を印加し、液晶分子13aを液晶層13を透過する光にλ/2の光路長差を与える傾斜配向状態に配向させた状態、(b)は、前記液晶素子1の電極4,10間に、前記印加電圧範囲のうちの最も高い電圧V4を印加し、液晶分子13aを、液晶層13を透過する光に与える光路長差が実質的に0になる飽和配向状態に配向させた状態を示している。
【0090】
この実施例の液晶表示装置では、前記一対の偏光板14,15が、それぞれの透過軸14a,15aを実質的に互いに直交させて配置されているため、図6の(a)のように、前記印加電圧範囲のうちの最も低い電圧V3の印加により、液晶分子13aを液晶層13を透過する光にλ/2の光路長差を与える傾斜配向状態に配向させると、後側偏光板15により直線偏光とされて入射し、液晶素子1の液晶層13を透過した光が、前側偏光板14の透過軸14aに沿った直線偏光となって前記前側偏光板14に入射し、その光のほとんどが前記前側偏光板14を透過して前側に出射して、その画素の表示が白になる。
【0091】
また、図6の(b)のように、前記印加電圧範囲のうちの最も高い電圧V4の印加により、液晶分子13aを、液晶層13を透過する光に与える光路長差が実質的に0になる飽和配向状態に配向させると、後側偏光板15により直線偏光とされて入射し、液晶素子1の液晶層13を透過した光が、偏光状態をほとんど変えずに前側偏光板14に入射し、その光のほとんどが前記前側偏光板14により吸収されて、その画素の表示が黒になる。
【0092】
この実施例の液晶表示装置も、液晶素子1の液晶分子の配向状態を、その挙動可能範囲の一端の配向状態(この実施例では、初期配向状態であるホモジニアス配向状態になる側の配向状態)を除いた範囲内で制御するものであるため、前記挙動可能範囲の全域で液晶分子の配向状態を制御する場合に比べて、TFT5がオフしたときの画素電位の低下量の変動ΔΔV(TFT5のオフ時に画素電極4に供給されたデータ信号の電位から降下する電圧降下量の前記データ信号の電位の違いによる変動)が小さく、したがって、表示にフリッカや焼き付きを生じさせること無く液晶の誘電異方性Δεの値を大きくし、応答速度を速くすることができる。
【0093】
なお、上記第1及び第2の実施例では、一対の偏光板14,15をそれぞれ液晶素子1に直接対向させて配置しているが、前記液晶素子1と一対の偏光板14,15の少なくとも一方との間に、表示の視野角やコントラストを向上させるための位相板を配置してもよい。
【0094】
図7はこの発明の第3の実施例を示す液晶表示装置の分解斜視図であり、この実施例の液晶表示装置は、液晶素子1と、前記液晶素子1を挟んで配置された一対の偏光板14,15と、前記液晶素子1と前側偏光板14との間に配置された視野角やコントラストを向上させるための位相板16と、前記液晶素子1の液晶分子の配向状態を制御するための配向制御手段20とを備えている。
【0095】
前記液晶素子1は、図2に示したような、TFT5をアクティブ素子とするアクティブマトリックス型素子であり、その液晶層13の液晶分子の初期配向状態は、基板2,3面に対して予め定めたプレチルト角をもって実質的に水平に且つ一方方向に配向したホモジニアス配向状態である。
【0096】
そして、前記位相板16は、図7のように、その遅相軸16aを前記液晶素子1の液晶分子のホモジニアス配向方向(画面の横軸xと実質的に平行な方向)1aに対して実質的に45°の角度で交差させて配置され、前側偏光板14は、その透過軸14aを前記位相板16の遅相軸16aに対して実質的に45°の角度で交差させて配置されており、後側偏光板15は、その透過軸15aを前記前側偏光板14の透過軸14aと実質的に直交させて配置されている。
【0097】
また、前記配向制御手段20は、前記液晶素子1の電極4,10間に、前記液晶分子の配向状態を、実質的にホモジニアス配向状態と飽和配向状態(液晶分子が基板2,3面に対して略垂直に配向する電圧を印加したときの配向状態)とのいずれか一方の配向状態と、前記液晶分子が前記初期配向状態と飽和配向状態との間の基板2,3面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態との間で変化させる電圧を前記液晶素子1の電極4,10間に印加するように構成されている。
【0098】
そして、この実施例では、前記液晶素子1の液晶の屈折率異方性Δnと液晶層厚dとの積Δndの値と、前記位相板16のリタデーションとを、前記液晶分子が前記予め定めた傾き角の傾斜配向状態に配向したときに、一対の偏光板14,15の間を透過する光、つまり前記液晶層13と位相板16の両方を透過する光に、その波長λの1/2の整数倍の光路長差を与えるように設定している。
【0099】
なお、前記配向制御手段20により前記液晶素子1の電極4,10間に印加する電圧を、前記液晶分子の配向状態を実質的にホモジニアス配向状態と前記予め定めた傾き角の傾斜配向状態との間で変化させる場合は、前記液晶素子1の液晶層13を、液晶分子が実質的に前記ホモジニアス配向状態に配向したときに、前記液晶層13と位相板16の両方を透過する光にその波長λの1/2の奇数倍、例えばλ/2の光路長差を与え、液晶分子が前記予め定めた傾き角の傾斜配向状態に配向したときに、前記液晶層13と位相板16の両方を透過する光に、実質的に0、または透過光の波長λの1/2の偶数倍、例えばλの光路長差を与える屈折率異方性Δnと液晶層厚dを有する液晶により形成する。
【0100】
この構成の液晶表示装置は、前記液晶素子1の液晶分子を実質的にホモジニアス配向状態に配向させたときに、その画素の表示が白になり、前記液晶分子を前記予め定めた傾き角の傾斜配向状態に配向させたときに、その画素の表示が黒になる。
【0101】
また、前記配向制御手段20により前記液晶素子1の電極4,10間に印加する電圧を、前記液晶分子の配向状態を前記予め定めた傾き角の傾斜配向状態と前記飽和配向状態との間で変化させる場合は、前記液晶素子1の液晶層13を、液晶分子が前記予め定めた傾き角の傾斜配向状態に配向したときに、前記液晶層13と位相板16の両方を透過する光にその波長λの1/2の奇数倍、例えばλ/2の光路長差を与え、液晶分子が実質的に前記飽和配向状態に配向したときに、前記液晶層13と位相板16の両方を透過する光に実質的に0の光路長差を与える屈折率異方性Δと液晶層厚dを有する液晶により形成する。
【0102】
この構成の液晶表示装置は、上記第2の実施例と同様に、前記液晶素子1の液晶分子を前記予め定めた傾き角の傾斜配向状態に配向させたときに、その画素の表示が白になり、前記液晶分子を実質的に飽和配向状態に配向させたときに、その画素の表示が黒になる。
【0103】
図8は、前記液晶素子1の液晶層13を、屈折率異方性Δnと液晶層厚dと誘電異方性Δεが、Δn=0.113、d=5.2μm、Δε=7.7の液晶により形成したときの、電極間電圧VLCと液晶層13を透過する光に与えられる光路長差との関係を示している。
【0104】
図8のように、この液晶表示装置は、電極間電圧VLCを実質的に0Vにしたときに、液晶分子13aが実質的に、液晶層13と位相板16の両方を透過する光に0.588μmの光路長差を与えるホモジニアス配向状態に配向して表示が白になり、前記電極間電圧VLCを約2Vにしたときに、液晶分子13aが、液晶層13と位相板16の両方を透過する光に0.313μmの光路長差を与える傾斜配向状態に配向して表示が黒になる。
【0105】
つまり、この液晶表示装置は、液晶素子1の電極間電圧が0Vのときと、2Vとのときとで、透過光の光路長差をその波長λ(λ=550nm)のλ/2(0.588μm−0.313μm=0.275μm=λ/2)の範囲で変化させ、白黒表示を行なうものである。
【0106】
したがって、この液晶表示装置は、前記液晶素子1の液晶層13を、Δn=0.113、d=5.2μm、Δε=7.7の液晶により形成することにより、前記液晶素子1を約2Vの比較的低い電圧で駆動し、しかもコントラストが充分な表示を得ることができる。 このように、この実施例の液晶表示装置は、液晶素子1の液晶分子の配向状態を、その挙動可能範囲のいずれか一端、つまり、初期配向状態であるホモジニアス配向状態になる側と、飽和配向状態になる側とのいずれか一方の配向状態を除いた範囲内で制御するものであるため、前記挙動可能範囲の全域で液晶分子の配向状態を制御する場合に比べて、TFT5がオフしたときの電極間電圧の低下量の変動(TFT5のオフ時に画素電極4に供給されたデータ信号の電位から降下する電圧降下量の前記データ信号の電位の違いによる変動)が小さく、したがって、表示にフリッカや焼き付きを生じさせること無く液晶の誘電異方性Δεの値を大きくし、応答速度を速くすることができる。
【0107】
この実施例においても、前記配向制御手段20は、前記液晶素子1の電極4,10間に、液晶分子の挙動により変化する前記液晶容量CLCの変化量が、前記補償容量Csの静電容量値よりも小さい範囲、好ましくは前記補償容量Csの静電容量値の1/5〜1/10よりも小さい範囲で液晶分子の配向状態を変化させる電圧を印加するように構成するのが望ましく、このようにすることにより、前記液晶容量CLCの変化によるフリッカの発生をより効果的に防ぐことができるため、補償容量電極8の面積をより小さくし、前記液晶素子1の開口率を高くすることができる。
【0108】
なお、この実施例では、前記液晶素子1の液晶分子が実質的にホモジニアス配向状態に配向したときに液晶層13と位相板16の両方を透過する光に与える光路長差をλ/2としたが、液晶分子が実質的にホモジニアス配向状態に配向したときに液晶層13と位相板16の両方を透過する光に与える光路長差は、透過光の波長λの1/2の奇数倍であれば、例えば3λ/2でもよい。
【0109】
さらに、この実施例では、液晶素子1と前側偏光板14との間に位相板16を配置しているが、前記位相板16は、前記液晶素子1と後側偏光板15との間に配置してもよい。
【0110】
また、位相板は1枚に限らず、複数の位相板を、前記液晶素子1と一方の偏光板14または15との間に積層して配置するか、或いは前記複数の位相板を、前記液晶素子1を挟んで前後の偏光板14,15との間に配置してもよく、その場合は、前記液晶素子1の液晶層13を、液晶分子が前記予め定めた傾き角の傾斜配向状態に配向したときに、前記液晶層13と複数の位相板の両方を透過する光に、その波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性Δnと液晶層厚dを有する液晶により形成すればよい。
【0111】
また、上記第1〜第3の実施例の液晶表示装置は、液晶素子1の液晶分子の初期配向状態を、液晶分子がツイストすることなく一方方向に且つ基板2,3面と実質的に平行に配向したホモジニアス配向としたものであるが、前記液晶素子1の液晶層13は、前記ホモジニアス配向に限らず、液晶分子が一対の基板間でツイストして配向したツイスト配向、液晶分子が基板面に対して実質的に垂直に配向したホメオトロピック配向、液晶分子が一方の基板側で実質的に垂直に他方の基板側で実質的に水平に配向したハイブリッド配向のうちのいずれか1つの初期配向状態を有する液晶により形成してもよい。
【0112】
その場合も、前記配向制御手段20は、前記液晶素子1の電極4,10間に、液晶層13の液晶分子を実質的に前記初期配向状態に配向させる電圧と前記液晶分子を実質的に飽和配向状態(液晶分子が基板2,3面に対して略水平或いは略垂直に配向する電圧を印加したときの配向状態)に配向させる電圧との差よりも小さい値の変化幅の電圧を印加するように構成すればよい。
【0113】
また、前記液晶素子1の液晶分子の初期配向状態を、前記ツイスト配向、ホメオトロピック配向、ハイブリッド配向のいずれにする場合も、一対の偏光板14,15は、上記実施例と同様に、それぞれの透過軸14a,15aを実質的に互いに直交させて配置すればよい。
【0114】
さらに、前記液晶素子1の液晶層13は、液晶分子が初期配向状態と飽和配向状態(液晶分子が基板2,3面に対して略水平或いは略垂直に配向する電圧を印加したときの配向状態)との間の基板2,3面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、液晶層13を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性Δnを有する液晶、好ましくは、前記傾斜配向状態と、前記初期配向状態と飽和配向状態のいずれかの配向状態とのうち、一方の配向状態において、透過光にその波長λの1/2の奇数倍の光路長差を与え、他方の配向状態において、実質的に0または透過光の波長λの1/2の偶数倍の光路長差を与える屈折率異方性Δnを有する液晶により形成するとともに、配向制御手段20を、前記液晶分子の配向状態を前記一方の配向状態と他方の配向状態との間で変化させる電圧を前記液晶素子1の電極4,10間に印加するように構成すればよい。
【0115】
図9は、この発明の第4の実施例を示す、液晶素子1の液晶分子の初期配向状態をホメオトロピック配向としたときの液晶分子の配向状態の変化を示す模式図である。
【0116】
この実施例は、前記液晶素子1の液晶層13を、誘電異方性Δεが負(Δε<0)で、液晶分子13aが初期配向状態であるホメオトロピック配向状態に配向したときに、液晶層13を透過する光にあたえる光路長差が実質的に0になり、前記液晶分子13aが前記ホメオトロピック配向状態と飽和配向状態(液晶分子13aが基板2,3面に対して略水平に配向する電圧を印加したときの配向状態)との間の予め定めた傾き角の傾斜配向状態に配向したときに、液晶素子1を挟んで図1及び図7のように透過軸14a,15aを実質的に直交させて配置された一対の偏光板14,15の間を透過する光(位相板16を備えない場合は、液晶素子1の液晶層13を透過する光、位相板16を備える場合は、前記液晶層13と位相板16の両方を透過する光)に、その波長の1/2の奇数倍、例えばλ/2の光路長差を与える屈折率異方性Δnと液晶層厚dを有するネマティック液晶により形成したものである。
【0117】
そして、この実施例では、前記液晶素子1の電極4,10間に電圧を印加で前記液晶分子の配向状態を制御する配向制御手段20(図1及び図7参照)を、前記液晶分子13aを実質的に、前記ホメオトロピック配向状態と前記予め定めた傾き角の傾斜配向状態との間で変化させる電圧を前記液晶素子1の電極4,10間に印加するように構成している。
【0118】
図9において、(a)は、前記液晶素子1の電極4,10間に、前記配向制御手段20による印加電圧範囲のうちの最も低い電圧V5を印加し、液晶分子13aを実質的に前記ホメオトロピック配向状態に配向させた状態、(b)は、前記液晶素子1の電極4,10間に、前記印加電圧範囲のうちの最も高い電圧V6を印加し、液晶分子13aを前記予め定めた傾き角の傾斜配向状態(液晶層13を透過する光にλの光路長差を与える配向状態)に配向させた状態を示している。
【0119】
この実施例の液晶表示装置では、図9の(a)のように、前記印加電圧範囲のうちの最も低い電圧V5の印加により、液晶分子13aを実質的に、液晶層13を透過する光に実質的に0の光路長差を与えるホメオトロピック配向状態に配向させたときに、その画素の表示が黒になり、図9の(b)のように、前記印加電圧範囲のうちの最も高い電圧V6の印加により、液晶分子13aを液晶層13を透過する光にλ/2の光路長差を与える傾斜配向状態に配向させたときに、その画素の表示が白になる。
【0120】
この実施例の液晶表示装置も、液晶素子1の液晶分子の配向状態を、その挙動可能範囲、つまり初期配向状態であるホメオトロピック配向状態から飽和配向状態までの範囲の一端の配向状態(この実施例では、飽和配向状態になる側の配向状態)を除いた範囲内で制御するものであるため、前記挙動可能範囲の全域で液晶分子の配向状態を制御する場合に比べて、TFT5がオフしたときの電極間電圧の低下量の変動ΔΔVが小さく、したがって、表示にフリッカや焼き付きを生じさせること無く液晶の誘電異方性Δεの値を大きくし、応答速度を速くすることができる。
【0121】
この実施例においても、前記配向制御手段20は、前記液晶素子1の電極4,10間に、液晶分子の挙動により変化する前記液晶容量CLCの変化量が、前記補償容量Csの静電容量値よりも小さい範囲、好ましくは前記補償容量Csの静電容量値の1/5〜1/10よりも小さい範囲で液晶分子の配向状態を変化させる電圧を印加するように構成するのが望ましく、このようにすることにより、前記液晶容量CLCの変化によるフリッカの発生をより効果的に防ぐことができるため、補償容量電極8の面積をより小さくし、前記液晶素子1の開口率を高くすることができる。
【0122】
図10は、この発明の第5の実施例を示す、液晶素子1の液晶分子の初期配向状態をハイブリッド配向としたときの液晶分子の配向状態の変化を示す模式図である。
【0123】
この実施例は、前記液晶素子1の液晶層13を、誘電異方性Δεが負(Δε<0)または正(Δε>0)で、液晶分子13aが初期配向状態であるハイブリッド配向状態と飽和配向状態(液晶の誘電異方性Δεが負の場合は、液晶分子が基板2,3面に対して略水平に配向する電圧を印加したときの配向状態、液晶の誘電異方性Δεが正の場合は、液晶分子が基板2,3面に対して略垂直に配向する電圧を印加したときの配向状態)との間の予め定めた傾き角の傾斜配向状態に配向したときに、前記液晶層13を透過する光(位相板16を備えない場合は、液晶素子1の液晶層13を透過する光、位相板16を備える場合は、前記液晶層13と位相板16の両方を透過する光)に、その波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性Δと液晶層厚dを有するネマティック液晶により形成したものである。
【0124】
図10において、(a)は初期配向状態であるハイブリッド配向状態、(b),(c)は液晶の誘電異方性Δεが負(Δε<0)であるときと、正(Δε>0)であるときの傾斜配向状態を示しており、液晶の誘電異方性Δεが負(Δε<0)であるときの傾斜配向状態は、(b)のように、ハイブリッド配向した液晶分子13aのうちの中間の傾き角、つまり基板2,3面に対して略45°の傾き角で配向する液晶分子(図においてハッチングを施して液晶分子)の位置が垂直配向された基板(図では前側基板2)側に片寄った配向状態、液晶の誘電異方性Δεが正(Δε>0)であるときの傾斜配向状態は、(c)のように、前記中間の傾き角の液晶分子13aの位置が水平配向された基板(図では後側基板3)側に片寄った配向状態として模式的に表される。
【0125】
そして、この実施例では、前記液晶素子1の液晶層13を、前記ハイブリッド配向状態と、前記予め定めた傾き角の傾斜配向状態のいずれかの配向状態とのうち、一方の配向状態に液晶分子13aが配向したときに、前記一対の偏光板14,15の間を透過する光に、その波長λの1/2の奇数倍、例えばλ/2の光路長差を与え、一方の配向状態に液晶分子13aが配向したときに、前記一対の偏光板14,15の間を透過する光に、その波長λの1/2の偶数倍、例えばλの光路長差を与える液晶により形成している。
【0126】
また、この実施例では、前記液晶素子1の電極4,10間に電圧を印加する配向制御手段20(図1及び図7参照)を、前記液晶分子13aを実質的に、初期配向状態であるハイブリッド配向状態と前記2つの傾斜配向状態のいずれかとの間で変化させる電圧を前記液晶素子1の電極4,10間に印加するように構成している。
【0127】
なお、液晶分子13aを図10の(a)に示したハイブリッド配向状態に配向させる電圧V7は、実質的に略0Vでよい。また、液晶の誘電異方性Δεが負(Δε<0)であるときに液晶分子13aを図10の(b)に示した予め定めた傾き角の傾斜配向状態に配向させる電圧V8と、液晶の誘電異方性Δεが正(Δε>0)であるときに液晶分子13aを図10の(c)に示した予め定めた傾き角の傾斜配向状態に配向させる電圧V9は、同じ値の電圧でも、異なる値の電圧でもよい。
【0128】
この液晶表示装置は、前記配向制御手段20からの印加電圧範囲のうちの最も低い電圧V7の印加により、液晶分子13aを実質的に、図10の(a)のようなハイブリッド配向状態に配向させたときに、その画素の表示が黒と白の一方の表示になり、前記印加電圧範囲のうちの最も高い電圧V8またはV9の印加により、液晶分子13aを図10の(b)または(C)のような傾斜配向状態に配向させたときに、その画素の表示が黒と白の他方の表示になる。
【0129】
この実施例の液晶表示装置も、液晶素子1の液晶分子の配向状態を、その挙動可能範囲、つまり初期配向状態であるハイブリッド配向状態から飽和配向状態までの範囲の一端の配向状態を除いた範囲内で制御するものであるため、前記挙動可能範囲の全域で液晶分子の配向状態を制御する場合に比べて、TFT5がオフしたときの電極間電圧の低下量の変動ΔΔVが小さく、したがって、表示にフリッカや焼き付きを生じさせること無く液晶の誘電異方性Δεの値を大きくし、応答速度を速くすることができる。
【0130】
この実施例においても、前記配向制御手段20は、前記液晶素子1の電極4,10間に、液晶分子の挙動により変化する前記液晶容量CLCの変化量が、前記補償容量Csの静電容量値よりも小さい範囲、好ましくは前記補償容量Csの静電容量値の1/5〜1/10よりも小さい範囲で液晶分子の配向状態を変化させる電圧を印加するように構成するのが望ましく、このようにすることにより、前記液晶容量CLCの変化によるフリッカの発生をより効果的に防ぐことができるため、補償容量電極8の面積をより小さくし、前記液晶素子1の開口率を高くすることができる。
【0131】
なお、上記第1〜第5の各実施例では、液晶素子1の液晶分子の配向状態を、その挙動可能範囲(初期配向状態から飽和配向状態までの範囲)の一端の配向状態を除いた範囲内で制御するようにしているが、前記液晶素子1の液晶分子の配向状態は、その挙動可能範囲の両端の配向状態を除いた範囲内で制御するようにしてもよい。
【0132】
さらに、上記各実施例では、液晶素子1を挟んで配置された前後一対の偏光板14,15の透過軸14a,15aを実質的に直交させているが、前記偏光板14,15の透過軸14a,15aの向きは、直交に限らず、例えば実質的に平行してもよい。
【0133】
また、上記各実施例の液晶表示装置は、いずれも、液晶素子1の後側に配置される図示しない光源からの光を利用して表示する透過型表示装置であるが、この発明は、外部環境の光である外光または液晶素子の前側に配置される光源からの光を利用し、前側からの入射光を液晶素子の後側に設けられた反射膜により反射して表示する反射型液晶表示装置にも適用することができる。
【0134】
その場合、前記反射型液晶表示装置は、液晶素子を挟んで前後一対の偏光板を配置し、後側の偏光板の外面に反射膜を設けた構成としても、液晶素子の前側だけに1枚の偏光板を配置し、前記液晶素子の後側基板の内面に反射膜を設けた構成としてもよい。
【0135】
なお、液晶素子の後側基板の内面に反射膜を設けた内面反射型の液晶表示装置の場合は、液晶素子の前側に配置された偏光板を透過して入射した光が前記液晶素子の液晶層を往復して透過し、その光のうち、前記偏光板の透過軸に沿った偏光成分の光が前側に出射するため、前記液晶素子の液晶層は、上記各実施例のように液晶素子1を挟んで配置された一対の偏光板14,15の透過軸14a,15aを実質的に直交させた場合と同じ、透過光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性を有する液晶により形成すればよい。
【0136】
【発明の効果】
この発明の液晶表示装置は、互いに対向する一対の基板の一方の内面に、複数の画素電極とこれらの画素電極にそれぞれ接続された複数のアクティブ素子とが形成され、他方の基板の内面に、前記画素電極に対向する対向電極が形成されるとともに、前記一対の基板間に、液晶分子の配向状態が、前記電極間に印加される電圧に応じて、電圧が印加されないときの予め規定された初期配向状態と、印加電圧の変化に対して液晶分子が実質的に挙動しなくなる充分高い電圧を印加したときの前記基板面に対して略垂直或いは略水平に配向する飽和配向状態との間で変化する液晶層が設けられた液晶素子と、前記液晶素子の少なくとも一方の面側に配置された偏光板と、前記液晶素子の電極間に、前記液晶層の液晶分子を実質的に前記初期配向状態に配向させる電圧と前記液晶分子を実質的に前記飽和配向状態に配向させる電圧との差よりも小さい値の変化幅の電圧を印加して前記液晶分子の配向状態を制御する配向制御手段とを備えたものであるため、表示にフリッカや焼き付きを生じさせること無く液晶の誘電異方性Δεの値を大きくし、応答速度を速くすることができる。
【0137】
この液晶表示装置において、前記液晶素子の一方の基板に、画素電極と対向電極及びこれらの電極の間の液晶層とにより形成される液晶容量に対して並列に接続された補償容量が形成されている場合、前記配向制御手段は、前記液晶素子の電極間に、液晶分子の挙動により変化する前記液晶容量の変化量が、前記補償容量の静電容量値よりも小さい範囲で前記液晶分子の配向状態を変化させる電圧を印加するように構成するのが好ましく、このようにすることにより、前記液晶容量の変化によるフリッカの発生を効果的に防ぎ、液晶素子の開口率を高くすることができる。
【0138】
その場合、前記配向制御手段は、前記液晶素子の電極間に、液晶分子の挙動による液晶容量の変化量が補償容量の静電容量値の1/5〜1/10よりも小さい範囲で前記液晶分子の配向状態を変化させる電圧を印加するように構成するのが望ましく、このようにすることにより、前記液晶容量の変化によるフリッカの発生をさらに効果的に防ぎ、液晶素子の開口率をさらに高くすることができる。
【0139】
さらに、前記配向制御手段は、前記液晶素子の電極間に、液晶分子を、基板面に対して実質的に水平に配向する状態と前記基板面に対して実質的に垂直に配向する状態のいずれか一方の配向状態と、前記基板面に対して水平な方向と垂直な方向の間の斜めに傾いた方向に配向する傾斜配向状態との間で挙動させる範囲の電圧を印加するように構成するのが望ましく、このようにすることにより、前記アクティブ素子がオフしたときのデータ信号の電位に応じた電極間電圧の低下量の変動量を充分に小さくし、DCアンバランスによる表示のフリッカや焼き付きの発生を防ぐことができる。
【0140】
また、この液晶表示装置において、前記液晶素子の液晶層は、特に、初期配向状態が前記ホモジニアス配向である液晶からなっているのが好ましく、このようにすることにより、液晶分子の配向及び液晶素子の構造を単純にし、生産性を良くすることができる。
【0141】
そして、前記液晶素子の液晶層が、液晶分子が基板面に対して予め定めたプレチルト角をもって実質的に水平に且つ一方方向にホモジニアス配向した初期配向状態を有する液晶からなっている場合、前記配向制御手段は、前記液晶素子の電極間に、液晶分子の配向状態を、基板面に対して実質的に水平に配向する状態と前記基板面に対して実質的に垂直に配向する状態とのいずれか一方の配向状態と、その配向状態からの液晶分子の挙動による液晶容量の変化量が補償容量の静電容量値よりも小さい範囲の配向状態との間で変化させる電圧を印加するように構成するのが望ましく、このようにすることにより、前記補償容量を大きくすることなく、前記液晶容量の変化によるフリッカの発生を効果的に防ぎ、前記補償容量を形成するための補償容量電極の面積を小さくして、液晶素子の開口率を高くすることができる。
【0142】
また、この発明の他の液晶表示装置は、互いに対向する一対の基板の一方の内面に、複数の画素電極とこれらの画素電極にそれぞれ接続された複数のアクティブ素子とが形成され、他方の基板の内面に、前記画素電極に対向する対向電極が形成されるとともに、前記一対の基板間に、液晶分子の配向状態が、前記電極間に印加される電圧に応じて、電圧が印加されないときの予め規定された初期配向状態と、印加電圧の変化に対して液晶分子が実質的に挙動しなくなる充分高い電圧を印加したときの前記基板面に対して略垂直或いは略水平に配向する飽和配向状態との間で変化する液晶層が設けられた液晶素子と、前記液晶素子を挟んで配置された一対の偏光板とを備え、前記液晶素子の液晶層は、前記液晶分子が前記初期配向状態と前記飽和配向状態との間の前記基板面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記一対の偏光板の間を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性を有する液晶からなっているため、表示にフリッカや焼き付きを生じさせること無く液晶の誘電異方性Δεの値を大きくし、応答速度を速くすることができる。
【0143】
この液晶表示装置において、前記一対の偏光板がそれぞれ前記液晶素子に直接対向させて配置されている場合、前記液晶素子の液晶層は、液晶分子が前記予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記液晶層を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性を有する液晶により形成すればよく、このようにすることにより、前記効果を得ることができる。
【0144】
また、この液晶表示装置において、前記液晶素子と一対の偏光板の少なくとも一方との間に位相板が配置されている場合、前記液晶素子の液晶層は、液晶分子が前記予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記液晶層と前記位相板の両方を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性を有する液晶により形成すればよく、このようにすることにより、前記効果を得ることができる。
【0145】
前記位相板を備えた液晶表示装置は、前記液晶素子の液晶層が、液晶分子が初期配向状態と飽和配向状態との間の配向状態で且つ基板面に対する傾き角が異なる第1と第2の2つの傾斜配向状態を有し、前記第1と第2のいずれか一方の傾斜配向状態において、前記液晶層と位相板の両方を透過する光にその波長λの1/2の奇数倍の光路長差を与え、他方の傾斜配向状態において、前記液晶層と位相板の両方を透過する光に実質的に0または透過光の波長λの1/2の偶数倍の光路長差を与える屈折率異方性と液晶層厚を有する液晶からなっており、前記液晶素子の電極間に、前記液晶層の液晶分子を、前記第1の傾斜配向状態と、前記第2の2つの傾斜配向状態と、これらの傾斜配向状態の間の配向状態とに配向させる電圧を印加して前記液晶分子の配向状態を制御する配向制御手段をさらに備えた構成のものが好ましく、このようにすることにより、良好なコントラストを得ることができる。
【0146】
その場合、前記液晶素子の液晶層は、液晶分子が基板面に対して予め定めたプレチルト角をもって実質的に水平で且つ一方方向にホモジニアス配向した初期配向状態を有し、且つ前記液晶分子が、前記基板面に対して予め定めた第1の傾き角で配向する第1の傾斜配向状態と、前記基板面に対して前記第1の傾き角よりも小さい予め定めた第2の傾き角で配向する第2の傾斜配向状態とに配向する液晶からなっているのが好ましく、このようにすることにより、液晶分子の配向及び液晶素子の構造を単純にし、生産性を良くすることができる。
【0147】
さらに、前記液晶素子の液晶層は、前記第1の傾斜配向状態で、前記液晶層と位相板の両方を透過する光にその波長λの1/2の奇数倍の光路長差を与え、前記第2の傾斜配向状態で、前記液晶層と位相板の両方を透過する光に実質的に0または透過光の波長λの1/2の奇数倍の光路長差を与える屈折率異方性と液晶層厚を有する液晶からなっているのが好ましく、このようにすることにより、良好なコントラストを得ることができる。
【0148】
また、前記液晶素子の一方の基板に、画素電極と対向電極及びこれらの電極の間の液晶層とにより形成される液晶容量に対して並列に接続された補償容量が形成されている場合、前記配向制御手段は、前記第1の傾斜配向状態と第2の傾斜配向状態との間での液晶分子の配向状態の変化による前記液晶容量の変化量が前記補償容量の静電容量値よりも小さい範囲で前記液晶分子の挙動を制御するように構成するのが望ましく、このようにすることにより、前記補償容量を大きくするなく、前記液晶容量の変化によるフリッカの発生を効果的に防ぎ、前記補償容量を形成するための補償容量電極の面積を小さくして、液晶素子の開口率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施例を示す液晶表示装置の分解斜視図。
【図2】前記液晶表示装置の液晶素子の一部分の断面図。
【図3】前記液晶素子の1つの画素の等価回路図。
【図4】前記液晶素子の液晶分子の配向状態の変化を示す模式図。
【図5】TFTのオン時に画素電極に供給されたデータ信号の電位と、前記TFTがオフしたときの電極間電圧の低下量を示す図。
【図6】この発明の第2の実施例を示す、液晶素子の液晶分子の配向状態を傾斜配向状態と飽和配向状態との間の範囲で変化させる場合の液晶分子の配向状態の変化を示す模式図。
【図7】この発明の第3の実施例を示す液晶表示装置の分解斜視図。
【図8】第3の実施例の液晶表示装置における液晶素子の電極間電圧と液晶層を透過する光に与えられる光路長差との関係を示す図。
【図9】この発明の第4の実施例を示す、液晶素子の液晶分子の初期配向状態をホメオトロピック配向としたときの液晶分子の配向状態の変化を示す模式図。
【図10】この発明の第5の実施例を示す、液晶素子の液晶分子の初期配向状態をハイブリッド配向としたときの液晶分子の配向状態の変化を示す模式図。
【符号の説明】
1…液晶素子
1a…ホモジニアス配向方向
2,3…基板
4…画素電極
5…TFT(アクティブ素子)
10…対向電極
13…液晶層
13a…液晶分子
14,15…偏光板
14a,15b…透過軸
16…位相板
16a…遅相軸
20…配向制御手段
Claims (13)
- 対向配置された一対の基板の一方の内面に、複数の画素電極とこれらの画素電極にそれぞれ接続された複数のアクティブ素子とが形成され、他方の基板の内面に、前記画素電極に対向する対向電極が形成されるとともに、前記一対の基板間に、液晶分子の配向状態が、前記電極間に印加される電圧に応じて、電圧が印加されないときの予め規定された初期配向状態と、印加電圧の変化に対して液晶分子が実質的に挙動しなくなる充分高い電圧を印加したときの前記基板面に対して略垂直或いは略水平に配向する飽和配向状態との間で変化する液晶層が設けられた液晶素子と、
前記液晶素子の少なくとも一方の面側に配置された偏光板と、
前記液晶素子の電極間に、前記液晶層の液晶分子を実質的に前記初期配向状態に配向させる第1の電圧と前記液晶分子を実質的に前記飽和配向状態に配向させる第2の電圧との間の電圧範囲のうち、前記第1の電圧と第2の電圧の少なくとも一方の電圧を除いた印加電圧範囲内の電圧を印加して前記液晶分子の配向状態を制御する配向制御手段とを備え、
前記液晶素子は、前記印加電圧範囲内の最も高い電圧が印加されたときの光路長差と、最も低い電圧が印加されたときの光路長差との差が、透過する光の波長λの実質的に1/2の整数倍となる光学特性を持った液晶層を有することを特徴とする液晶表示装置。 - 液晶素子の一方の基板に、画素電極と対向電極及びこれらの電極の間の液晶層とにより形成される液晶容量に対して並列に接続された補償容量が形成されており、
配向制御手段は、前記液晶素子の電極間に、液晶分子の挙動により変化する前記液晶容量の変化量が前記補償容量の静電容量値よりも小さい範囲で前記液晶分子の配向状態を変化させる電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。 - 配向制御手段は、液晶素子の電極間に、液晶分子の挙動による液晶容量の変化量が補償容量の静電容量値の1/5〜1/10よりも小さい範囲で前記液晶分子の配向状態を変化させる電圧を印加することを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
- 配向制御手段は、液晶素子の電極間に、液晶分子を、基板面に対して実質的に水平に配向する状態と前記基板面に対して実質的に垂直に配向する状態のいずれか一方の配向状態と、前記基板面に対して水平な方向と垂直な方向の間の斜めに傾いた方向に配向する傾斜配向状態との間で挙動させる範囲の電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
- 液晶素子の液晶層は、液晶分子が一対の基板間でツイストして配向したツイスト配向、液晶分子がツイストすることなく一方方向に且つ基板面と実質的に平行に配向したホモジニアス配向、液晶分子が基板面に対して実質的に垂直に配向したホメオトロピック配向、液晶分子が一方の基板側で実質的に垂直に他方の基板側で実質的に水平に配向したハイブリッド配向のうちのいずれか1つの初期配向状態を有する液晶からなっていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
- 液晶素子の液晶層は、液晶分子が基板面に対して予め定めたプレチルト角をもって実質的に水平に且つ一方方向にホモジニアス配向した初期配向状態を有する液晶からなり、
配向制御手段は、前記液晶素子の電極間に、液晶分子の配向状態を、基板面に対して実質的に水平に配向する状態と前記基板面に対して実質的に垂直に配向する状態とのいずれか一方の配向状態と、その配向状態からの液晶分子の挙動による液晶容量の変化量が補償容量の静電容量値よりも小さい範囲の配向状態との間で変化させる電圧を印加することを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。 - 対向配置された一対の基板の一方の内面に、複数の画素電極とこれらの画素電極にそれぞれ接続された複数のアクティブ素子とが形成され、他方の基板の内面に、前記画素電極に対向する対向電極が形成されるとともに、前記一対の基板間に、液晶分子の配向状態が、前記電極間に印加される電圧に応じて、電圧が印加されないときの予め規定された初期配向状態と、印加電圧の変化に対して液晶分子が実質的に挙動しなくなる充分高い電圧を印加したときの前記基板面に対して略垂直或いは略水平に配向する飽和配向状態との間で、前記電極間に印加される電圧に応じて変化する液晶層が設けられた液晶素子と、
前記液晶素子を挟んで配置された一対の偏光板とを備え、
前記液晶素子の液晶層は、前記液晶分子が前記初期配向状態と前記飽和配向状態との間の前記基板面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記一対の偏光板の間を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与え、前記傾斜配向状態以外の他の配向状態において、前記第1の光路長差に対して実質的に前記波長λの1/2異なった第2の光路長差を与える屈折率異方性を有する液晶からなっていることを特徴とする液晶表示装置。 - 液晶素子の液晶層は、液晶分子が予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記液晶層を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性を有する液晶からなっていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
- 液晶素子と一対の偏光板の少なくとも一方との間に位相板が配置されており、前記液晶素子の液晶層は、液晶分子が基板面に対して予め定めた傾き角で配向した傾斜配向状態において、前記液晶層と前記位相板の両方を透過する光にその波長λの1/2の整数倍の光路長差を与える屈折率異方性を有する液晶からなっていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
- 液晶素子の液晶層は、液晶分子が初期配向状態と飽和配向状態との間の配向状態で且つ基板面に対する傾き角が異なる第1と第2の2つの傾斜配向状態を有し、前記第1と第2のいずれか一方の傾斜配向状態において、前記液晶層と前記位相板の両方を透過する光にその波長λの1/2の奇数倍の光路長差を与え、他方の傾斜配向状態において、前記液晶層と位相板の両方を透過する光に実質的に0または透過光の波長λの1/2の偶数倍の光路長差を与える屈折率異方性と液晶層厚を有する液晶からなっており、
前記液晶素子の電極間に、前記液晶層の液晶分子を、前記第1の傾斜配向状態と、前記第2の2つの傾斜配向状態と、これらの傾斜配向状態の間の配向状態とに配向させる電圧を印加して前記液晶分子の配向状態を制御する配向制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。 - 液晶素子の液晶層は、液晶分子が基板面に対して予め定めたプレチルト角をもって実質的に水平で且つ一方方向にホモジニアス配向した初期配向状態を有し、且つ前記液晶分子が、基板面に対して予め定めた第1の傾き角で配向する第1の傾斜配向状態と、前記基板面に対して前記第1の傾き角よりも小さい予め定めた第2の傾き角で配向する第2の傾斜配向状態とに配向する液晶からなっていることを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。
- 液晶素子の液晶層は、第1の傾斜配向状態で、前記液晶層と位相板の両方を透過する光にその波長λの1/2の奇数倍の光路長差を与え、第2の傾斜配向状態で、前記液晶層と位相板の両方を透過する光に実質的に0または透過光の波長λの1/2の偶数倍の光路長差を与える屈折率異方性と液晶層厚を有する液晶からなっていることを特徴とする請求項11に記載の液晶表示装置。
- 液晶素子の一方の基板に、画素電極と対向電極及びこれらの電極の間の液晶層とにより形成される液晶容量に対して並列に接続された補償容量が形成されており、
配向制御手段は、第1の傾斜配向状態と第2の傾斜配向状態との間での液晶分子の配向状態の変化による前記液晶容量の変化量が前記補償容量の静電容量値よりも小さい範囲で前記液晶分子の挙動を制御することを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
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