JP3918464B2 - 薄膜音響共振器及びその製造方法 - Google Patents

薄膜音響共振器及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜音響共振器に関し、更に詳細に記せば、通信機用フィルタとして使用できる薄膜音響共振器及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器のコストおよび寸法を減らす必要性から、その回路構成要素としてのフィルタの寸法を小さくする試みが、一貫して続けられている。セル式電話およびミニチュア・ラジオのような民生用電子装置は、内蔵される構成要素の大きさおよびコストの双方に関して厳しい要求を受けている。これらの電子装置に含まれる回路は、精密な周波数に同調させなければならないフィルタを利用している。したがって、廉価でコンパクトなフィルタを提供する努力が、絶えず続けられている。
【0003】
低価格及び小型化という要求を満たす可能性のある一つのフィルタは、薄膜音響共振器を用いて構成されたものである。薄膜音響共振器は、圧電体薄膜材料内のバルク弾性音響波を利用している。薄膜音響共振器の一つの簡単な構成では、圧電体薄膜材料の層が二つの金属電極の間に挟み込まれた挟み込み構造を形成している。この挟み込み構造は、周辺部を支持され中央部が空中に吊された橋架け構造により支持される。二つの電極の間に印加される電圧により電界が発生すると、圧電体薄膜材料は、電気エネルギーの幾らかを音波の形の機械エネルギーに変換する。音波は、電界と同じ方向に伝播し、電極/空気境界面で反射する。
【0004】
機械的に共振している時、薄膜音響共振器は電気共振器の役割を果たし、したがって、これを用いてフィルタを構成することができる。薄膜音響共振器の機械的共振は、音波が伝播する材料の厚さが音波の半波長と等しくなる周波数で発生する。音波の周波数は、電極に印加される電気信号の周波数に等しい。音波の速度は光の速度より5〜6桁小さいから、得られる共振器を極めてコンパクトにすることができる。このため、GHz帯の用途のための共振器を、平面寸法200ミクロン未満、厚さ数ミクロン未満の構造で構成することができる。
【0005】
以上のような薄膜音響共振器すなわち薄膜バルク音響共振器(Thin Film Bulk Acoustic Resonators:以下FBARという)、及び上記挟み込み構造を積層した形態の積層型薄膜音響共振器すなわち積層型薄膜バルク音響共振器およびフィルタ(Stacked Thin Film Bulk Wave Acoustic Resonators and Filters:以下SBARという)において、挟み込み構造の中心部はスパッタ法により作製された厚さ約1〜2ミクロン程度の圧電体薄膜である。上方および下方の電極は、電気リードとして働き、圧電体薄膜を挟み込んで圧電体薄膜を貫く電界を与える。圧電体薄膜は、電界エネルギーの一部を力学エネルギーに変換する。時間変化する印加電界エネルギーに応答して、時間変化する「応力/歪み」エネルギーが形成される。
【0006】
FBARまたはSBARを薄膜音響共振器として動作させるには、圧電体薄膜を含む挟み込み構造を橋架け構造により支持して、音波を挟み込み構造内に閉じ込めるための空気/結晶境界面を形成しなければならない。挟み込み構造は、通常、基板表面上に下方電極、圧電体薄膜層、および上方電極をこの順に堆積させることにより作られる。したがって、挟み込み構造の上側には、空気/結晶境界面が既に存在している。挟み込み構造の下側にも空気/結晶境界面を設けなければならない。この挟み込み構造の下側の空気/結晶境界面を得るのに、従来、以下に示すような幾つかの方法が用いられている。
【0007】
第1の方法は、例えば特開昭58−153412号公報に記載のように、基板を形成しているウェーハのエッチング除去を利用している、基板がシリコンからなるものであれば、加熱KOH水溶液を使用してシリコン基板の一部を裏側からエッチングして取り去って孔を形成する。これにより、挟み込み構造の縁をシリコン基板の前面側において孔の周囲の部分で支持した形態を有する共振器が得られる。しかし、このようなウェーハを貫いて開けられた孔は、ウェーハを非常に繊細にし、且つ、非常に破壊しやすくする。更に、基板表面に対して54.7度のエッチング傾斜でKOHを用いた湿式エッチングを行うと、最終製品の取得量、即ち、ウェーハ上のFBAR/SBARの歩留まりの向上が困難である。たとえば、250μm厚さのシリコンウェーハの上に構成される約150μm×150μmの横寸法(平面寸法)を有する挟み込み構造は、約450μm×450μmの裏側エッチング孔開口を必要とする。したがって、ウェーハの約1/9を生産に利用できるだけである。
【0008】
挟み込み構造の下に空気/結晶境界面を設ける従来の第2の方法は、例えば特開平2−13109号公報に記載のように、空気ブリッジ式FBAR素子を作ることである。通常、最初に犠牲層(Sacrificial layer)を設置し、次にこの犠牲層の上に挟み込み構造を作製する。プロセスの終りまたは終り近くに犠牲層を除去する。処理はすべてウェーハの前面側で行われるから、この方法は、ウェーハ両面側の位置合わせも大面積の裏側開口も必要としない。
【0009】
特開2000−69594号公報には、犠牲層として燐酸石英ガラス(PSG)を使用した空気ブリッジ式FBAR/SBARの構成と製造方法とが記載されている。同公報においては、PSG層がシリコンウェーハ上に堆積されている。PSGは、シランおよびホスフィン(PH3 )を使用して約450℃までの温度で堆積され、燐含有量約8%である軟ガラス様物質を形成する。PSGは、比較的低温で堆積させることができ、且つ、希釈H2 O:HF溶液で非常に高い速度でエッチングされる。
【0010】
しかしながら、同公報においては、PSG犠牲層の表面粗度を示す高さのRMS(2乗平均平方根)変動が0.5μm未満と記載されているものの、具体的には0.1μmより小さいオーダーのRMS変動の具体的記載はない。この0.1μmオーダーのRMS変動は、原子的にみると非常に粗い凹凸である。FBAR/SBAR形式の薄膜音響共振器は、結晶が電極平面に垂直な柱状晶を成して成長する圧電体材料を必要とする。特開2000−69594号公報では、PSG層の表面に平行な導電シートを形成しており、該導電シートの高さのRMS変動は2μm未満と記載されているものの、具体的には0.1μmより小さいオーダーのRMS変動の具体的記載はない。この0.1μmオーダーのRMS変動は、薄膜音響共振器用の圧電体薄膜を形成する表面としては不十分な表面粗さである。圧電体薄膜を成長させる試みが行われたが、粗面上の多数の凹凸の影響で多様な方向に結晶が成長するので、得られた圧電体薄膜の結晶品質は必ずしも十分でなかった。
【0011】
以上のような空気/結晶境界面を設ける代わりに、適切な固体音響ミラーを設ける方法もある。この方法は、例えば特開平6−295181号公報に記載のように、挟み込み構造の下に音響的ブラッグ反射鏡からなる大きな音響インピーダンスが作り出される。ブラッグ反射鏡は、高低の音響インピーダンス材料の層を交互に積層することにより作られる。各層の厚さは共振周波数の波長の1/4に固定される。十分な層数により、圧電体/電極境界面における有効インピーダンスを、素子の音響インピーダンスよりはるかに高くすることができ、したがって、圧電体内の音波を有効に閉じ込めることができる。この方法により得られる音響共振器は、挟み込み構造の下に空隙が存在しないので、固体音響ミラー取付け共振器(SMR)といわれる。
【0012】
この方法は、周辺部が固定され中心部が自由に振動できる膜を作るという前述の第1の方法及び第2の方法の問題を回避しているが、この方法にも多数の問題点がある。即ち、金属層はフィルタの電気性能を劣化させる寄生コンデンサを形成するのでブラッグ反射鏡の層に使用できないから、ブラッグ反射鏡に使用する材料の選択には制限がある。利用可能な材料から作られる層の音響インピーダンスの差は大きくない。したがって、音波を閉じ込めるには、多数の層が必要である。この方法は、各層にかかる応力を精密に制御しなければならないので、製作プロセスが複雑である。また、10ないし14といった多数の層を貫くバイアを作るのは困難であるから、この方法により得られる音響共振器は他の能動要素との集積化には不都合である。更に、これまでに報告された例では、この方法により得られる音響共振器は、空気ブリッジを有する音響共振器より有効結合係数がかなり低い。その結果、SMRに基づくフィルタは、空気ブリッジ式の音響共振器を用いたものに比較して、有効帯域幅が狭い。
【0013】
ところで、上記のように、薄膜音響共振器においては、時間変化する印加電界エネルギーに応答して、挟み込み構造に時間変化する「応力/歪み」エネルギーが形成される。従って、基板と挟み込み構造の下方電極との間の密着力が低い場合には、基板と挟み込み構造とが剥離して耐久性が低下し即ち薄膜音響共振器の寿命が短くなる。
【0014】
上記の特開2000−69594号公報等には、好適な電極材料としてMoが記載されているが、基板となるシリコンウェーハ等との更なる密着性の向上に関する特別の記載はない。
【0015】
また、例えば特開平2−309708号公報等には、下方電極層としてAu/Ti等の2層からなるものを用いることが記載されている。この場合、Ti層はAu層と基板との密着性を高める層として存在している。即ち、このTi密着層は薄膜音響共振器の本来の動作の点からは必須の電極層ではないが、Ti密着層を形成せずにAu電極層を単独で形成した場合には、基板とAu電極層との間の密着力が乏しくなり、剥離等の発生により薄膜音響共振器の動作時の耐久性を著しく損なうこととなる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような薄膜音響共振器では、電極面に対し直角の方向に伝搬する所要の縦方向振動の他に、電極面に平行の方向に伝搬する横方向振動も存在し、この横方向振動のうちには薄膜音響共振器の所要の振動にスプリアスを励振して共振器の特性を劣化させるものがある。
【0017】
本発明の目的は、改良された性能を有するFBAR/SBARを提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、特にスプリアス励振が低減されたFBAR/SBARを提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、下方電極層と基板との密着性(接合強度)を向上させることでFBAR/SBARの耐久性を向上させ長寿命化を図ることにある。
【0020】
本発明の更なる目的は、下方電極層と基板との密着性を向上させると共に、下方電極層上での結晶品質及び配向性の良好な圧電体薄膜の形成を可能とすることで、電気機械結合係数や音響品質係数(Q値)などに優れた高性能なFBAR/SBARを提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
基板と、該基板上に配置され該基板側の下方電極層及びこれと対をなす上方電極層の間に圧電体薄膜層を挟み込むように積層してなる挟み込み構造体とを備える薄膜音響共振器であって、
前記挟み込み構造体は更に前記下方電極層と前記基板との間に位置し且つ前記下方電極層と接合された密着電極層を有しており、該密着電極層は前記基板に前記挟み込み構造体の振動を許容するように形成された窪みの周囲において前記基板と接合されていることを特徴とする薄膜音響共振器、
が提供される。
【0022】
本発明の一態様においては、前記密着電極層は環状に形成されており、前記密着電極層の前記下方電極層と接する部分の平面面積をS1とし、前記下方電極層の平面面積をS2としたとき、0.01×S2≦S1≦0.5×S2の関係が成り立ち、前記上方電極層は前記密着電極層の内側に対応する領域に位置している。
【0023】
本発明の一態様においては、前記密着電極層はTi、Cr、Ni、Taより選ばれる少なくとも一種を含む材料で構成されており、前記下方電極層はAu、Pt、W、Moより選ばれる少なくとも一種を含む材料で構成されており、前記圧電体薄膜層はAlNまたはZnOで構成されている。
【0024】
また、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
窪みが形成されている基板の表面において前記窪みの周囲に密着電極層を形成し、該密着電極層より内側の前記窪みに対応する領域にて前記基板の表面上に犠牲層を形成し、該犠牲層の表面を研磨して高さのRMS変動が20nm以下となるように平滑化し、前記犠牲層及び前記密着電極層の上に下方電極層、圧電体薄膜層及び上方電極層を順次形成し、しかる後に前記犠牲層を除去することを特徴とする、薄膜音響共振器の製造方法、が提供される。
【0025】
本発明において、高さのRMS変動は、日本工業規格JIS B0601:2001「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語、定義及び表面性状パラメータ」に記載の二乗平均平方根粗さ:Rqである。
【0026】
本発明の一態様においては、前記犠牲層の形成は、先ず前記基板及び前記密着電極層を覆うように犠牲層材料の層を形成し、次いで該犠牲層材料の層を前記密着電極層の表面が露出するように研磨することで行われ、前記犠牲層の除去はエッチングにより行われ、前記犠牲層としてガラス又はプラスチックを用いる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1および図2は、それぞれ、本発明による薄膜音響共振器であるFBARおよびSBARの断面図である。
【0029】
図1において、FBAR20は、上方電極層21、下方電極層23及び密着電極層24を備え、これらは圧電体薄膜層22の一部を挟み込んで挟み込み構造体を形成している。圧電体薄膜層22の好適な材料は窒化アルミニウム(AlN)または酸化亜鉛(ZnO)である。FBAR20に使用される密着電極層24は、好適にはTi、Cr、Ni、Taから作られるが、他の材料を使用することも可能である。上方及び下方の電極層21,23は、好適にはAu、Pt、W、Moから作られるが、他の材料を使用することも可能である。挟み込み構造体は、基板11の上面に形成された窪み12の周囲において該基板11上に密着電極層24が位置するようにして、配置されている。
【0030】
この素子は、圧電体薄膜層内のバルク弾性音響波の作用を利用している。印加電圧により二つの電極21,23の間に電界が生ずると、圧電体薄膜は電気エネルギーの一部を音波の形の機械的エネルギーに変換する。音波は電界と同じ方向に伝播し、電極/空気境界面で反射される。
【0031】
機械的に共振している時、素子は電気共振器として機能し、したがって、素子は、ノッチフィルタとして動作することができる。素子の機械的共振は、音波が伝播する材料の厚さが当該音波の半波長と等しくなる周波数において発生する。音波の周波数は電極21,23間に印加される電気信号の周波数である。音波の速度は光の速度より5〜6桁小さいから、得られる共振器を極めてコンパクトにすることができる。GHz帯の用途に対する共振器を、平面寸法が約100μm、厚さが数μmのオーダーの寸法で構成することができる。
【0032】
次に、図2を参照してSBARについて説明する。SBAR40は、帯域フィルタと類似の電気的機能を与える。SBAR40は、基本的には機械的に結合されている二つのFBARフィルタである。圧電体薄膜層42の共振周波数で密着電極層24及び下方電極層45と電極層44とを横断する信号は、音響エネルギーを圧電体薄膜層41に伝える。圧電体薄膜層41内の機械的振動は、電極層44と電極層43とを横断する電気信号に変換される。
【0033】
図3〜図9は、本発明による薄膜音響共振器であるFBARの製造方法及びそれにより得られたFBARの実施形態を説明するための模式的断面図(図3〜図8)及び模式的平面図(図9)である。
【0034】
先ず、図3に示されているように、集積回路製作に利用されている通常のシリコンウェーハ51に、エッチングにより窪みを形成する。窪みの深さは好適には3〜30μmである。FBARの挟み込み構造体の下の空洞の深さは圧電体薄膜層により生ずる変位を許容すればよい。したがって、空洞の深さは数μmあれば十分である。
【0035】
ウェーハ51の表面に熱酸化により酸化シリコンの薄層53を形成し、これにより、その上に以後の工程で形成される犠牲層のPSGからウェーハ51内に燐が拡散しないようにする。このようにウェーハ51内への燐の拡散を抑制することにより、シリコンウェーハが導体に変換されることが阻止され、作製された素子の電気的動作に対する悪影響をなくすことができる。以上のようにしてウェーハ51の表面に酸化シリコン薄層53を形成したものを、基板として用いる。即ち、図3は、基板の表面に深さが好適には3〜30μmの窪み52を形成した状態を示す。
【0036】
次に、図4に示されているように、基板上に窪み52を取り囲むようにして密着電極層61を接合形成する。密着電極層61の上面の面積(平面面積)をS1とし、その上に形成する下方電極の平面面積をS2としたとき、S1が0.01×S2≦S1≦0.5×S2の範囲内にあることが好ましい。S1<0.01×S2の場合には、基板と下方電極との密着力が弱くなり、本発明の効果が十分に発現しなくなる傾向にある。また、S1>0.5×S2の場合には、密着電極層61が薄膜音響共振器の動作に影響を与え、良好な共振特性が得られなくなる傾向にある。密着電極層61の厚さは、その上に形成する下方電極層を保持するに十分なものであれば良く、例えば20nmから1μmまでの範囲内であれば良い。また、密着電極層61の材料は、好適には、Ti、Cr、Ni、Taより選ばれる少なくとも一種を含みさえすれば良い。
【0037】
以上のように密着電極層61を基板の窪み52の周囲に設けることで、薄膜音響共振器における横方向の振動発生を抑制し、薄膜音響共振器の振動に余分なスプリアス振動が重なることを防止することができる。その結果、薄膜音響共振器およびフィルタの共振特性、品質係数が改善される。また、Au、Pt、W、Moなどからなる下方電極層の中央部の下側には、Ti、Cr、Ni、Taなどからなる密着電極層61が存在しないため、この部分では下方電極層の配向性及び結晶性を高めることができ、その結果、ロッキングカーブにおける回折ピーク半値幅(FWHM)が小さく、配向性及び結晶品質に優れた圧電体薄膜層を形成できることが見出された。圧電体薄膜層の高配向性及び良質結晶化により、本発明の薄膜音響共振器およびフィルタの共振特性及び品質係数が改善される。
【0038】
さて、次に、図5に示されているように、密着電極層61の形成された基板の酸化シリコン薄層53上にPSGからなる犠牲層55を堆積させる。PSGは、シランおよびホスフィン(PH3 )を使用して約450℃までの温度で堆積され、燐含有量約8%の軟ガラス様物質を形成する。この低温形成プロセスは、当業者に周知である。PSGは、比較的低温で堆積させることができ、且つ、希釈H2 O:HF溶液で高速度でエッチングされる非常にクリーンな不活性材料であるから、犠牲層の材料として好適である。以後の工程で実行されるエッチングにおいて10:1の希釈割合で毎分約3μmのエッチング速度が得られる。
【0039】
堆積したままのPSG犠牲層55の表面は、原子レベルでみると非常に粗い。従って、堆積したままのPSG犠牲層55は、薄膜音響共振器を形成する基体としては不十分である。FBAR/SBAR形式の薄膜音響共振器は、結晶が電極面に垂直な柱状晶を成して成長する圧電体材料を必要とする。微細な研磨粒子を含む研磨スラリーを用いてPSG犠牲層55の表面を磨いて滑らかにすることにより、優れた配向性及び結晶品質を持つ下方電極層の形成が可能となり、ひいては優れた配向性及び結晶品質を持つ圧電体薄膜層の形成が可能となる。
【0040】
即ち、図6に示されているように、PSG犠牲層55の表面を粗仕上げスラリーで磨くことにより平面化して、密着電極層61の上に堆積したPSG層の部分を除去する。次に、残っているPSG層55を更に微細な研磨粒子を含む精密仕上げスラリーを使用して磨くことができる。代替方法として、磨き時間が長くかかっても良ければ、一つの微細な精密仕上げスラリーを二つの磨きステップにて使用することもできる。目標は、「ミラー」状仕上げ(鏡面仕上げ)を実現することである。
【0041】
以上のようにして実行された研磨の後の基板のクリーニングも重要である。スラリーは基板上に少量のシリカ粗粉を残すので、この粗粉を除去せねばならない。本発明の好適な実施形態では、このシリカ粗粉の除去をポリテックス(Polytex(商標):ロデール・ニッタ社)のような堅いパッドの付いた第2の研磨具を使用して行う。その際の潤滑剤として、脱イオン水を使用し、磨いてから最終クリーニングステップの準備が完了するまで基板を脱イオン水中に入れておく。基板を、最後の磨きステップと最後のクリーニングステップとの間で乾燥させないように注意する。最後のクリーニングステップは、基板を色々な化学薬品の入っている一連のタンクに漬けることから成る。各タンクでは超音波撹拌が加えられる。このようなクリーニング手段は当業者には周知である。
【0042】
研磨剤は、シリカ微粒子から構成されている。本発明の好適な実施形態では、シリカ微粒子のアンモニア主体スラリー(Rodel Klebosol#30N:ローデル・ニッタ社)を利用する。
【0043】
以上の説明では特定の研磨およびクリーニングの様式を示したが、必要な滑らかさの表面を与えるどんな研磨およびクリーニングの様式をも利用することができる。本発明の好適な実施形態では、最終表面は、原子間力顕微鏡プローブで測った高さのRMS変動が20nm未満、好ましくは10nm未満の表面粗度である。
【0044】
以上のようにして表面を平滑にし、さらに密着電極層61の表面をプラズマエッチングにより清浄化処理した後、図7に示されているように、挟み込み構造体60の下方電極層62を堆積させる。下方電極層62の好適な材料は、Au、Pt、W、Moである。この下方電極層62の配向性及び結晶性が、その上に形成される圧電体薄膜層63の配向性及び結晶品質に反映される。
【0045】
下方電極層62の厚さも重要である。厚い層は、薄い層より表面が粗くなる。上記のように、圧電体薄膜層63の堆積のための滑らかな表面を維持することは、得られる共振器の性能にとって非常に重要である。したがって、下方電極層62の厚さは、好適には200nm未満である。Au、Pt、W、Moは好適にはスパッタリングにより堆積される。この方法により、表面の高さのRMS変動が20nm未満、好ましくは10nm未満の表面粗度の下方電極層62が得られる。
【0046】
下方電極層62を堆積し終わってから、下方電極層62の周囲に残ったPSG犠牲層を除去し、圧電体薄膜層63を堆積する。圧電体薄膜層63の好適な材料は、AlNまたはZnOであり、これもスパッタリングにより堆積される。本発明の好適な実施形態では、圧電体薄膜層63の厚さは、0.1μmから10μmの間、好ましくは0.5μmから2μmの間にある。
【0047】
最後に、上方電極層64を堆積させる。上方電極層64は、下方電極層62と同様な材料から構成され、好適にはAu、Pt、W、Moから構成される。
【0048】
以上のようにして、密着電極層61、下方電極層62、圧電体薄膜層63及び上方電極層64の接合されたものからなり所要の形状にパターニングされた挟み込み構造体60を形成してから、RIE(反応性イオンエッチング)などの乾式エッチング法により、上方電極層64の周辺部から下方へ向かって、該上方電極層64、圧電体薄膜層63及び下方電極層62を通って犠牲層55にまで到達するような貫通小孔を開け、希釈H2 O:HF溶液でエッチングすることにより、挟み込み構造体60の下方のPSGを除去する。これにより、図8及び図9に示されているように、窪み52の上に橋架けされた挟み込み構造体60が残る。即ち、挟み込み構造体60は、基板の表面に形成された窪み52の周囲に密着電極層61が位置し、窪み52をまたぐようにして、縁部が基板により支持されている。
【0049】
以上のようにして得られた薄膜音響共振器においては、挟み込み構造体60のの周辺部では密着電極層61の分だけ質量が大きくなるので、横方向の振動発生が抑制され、薄膜音響共振器の振動に余分なスプリアス振動の重なりが生ずるのを防止することができる。また、窪み52の周囲に密着電極層61を形成することにより、従来空洞上に単独では堆積できなかったAu、Ptなどからなる下方電極層を堆積することが可能となり、W、Moなどからなる下方電極層についても下地基板との密着性が改善される。
【0050】
また、以上のような薄膜音響共振器の製造方法によれば、Au、Pt、W、Moなどからなる下方電極層62の中央部をシリカガラス、燐酸石英ガラスなどのガラス質の犠牲層上に形成するので、従来のTi等からなる密着層上にAu、Pt、W、Moなどの電極層を全体的に形成する場合よりも、下方電極層の配向性及び結晶性が優れたものとなり、ロッキングカーブにおける回折ピーク半値幅(FWHM)の小さな良質な結晶膜が得られる。このようにして下方電極層62の配向性及び結晶品質を改良することにより、その上に形成される圧電体薄膜層の配向性及び結晶品質の向上が実現される。
【0051】
以上の実施形態は、FBARに関するものである。しかし、当業者には、以上の説明から、同様なプロセスを用いてSBARを作製することが可能であることが明らかであろう。SBARの場合には、もう一つの圧電体層(第2の圧電体層)およびその上の電極層を堆積しなければならない。第2の圧電体層は上記実施形態で示されているような「FBAR」の上方電極層の上に形成されているから、この上方電極層の厚さをも例えば100nmに維持して第2の圧電体層を堆積するための適切な表面状態を与えるようにする。例えば、高さのRMS変動が20nm未満、好ましくは10nm未満の表面粗度である平滑な表面とするのが好ましい。
【0052】
本発明の上述の実施形態では、PSGから構成された犠牲層を利用しているが、犠牲層には他の材料をも使用することができる。例えば、BPSG(Boron−Phosphor−silicate−Glass:ボロン−燐−シリコン−ガラス)または、スピン・ガラスのような他の形態のガラスを利用することもできる。これ以外にも、スピニングにより基板上に堆積できるポリビニール、ポリプロピレン、およびポリスチレンのようなプラスチックがある。これらの材料から犠牲層を構成する場合にも、PSG犠牲層の場合のように、研磨による表面平滑化が重要である。これらの犠牲層は、有機除去材あるいはO2 プラズマエッチングによって取り去ることもできる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0054】
(実施例1)
図3〜図9に記載されているようにして、薄膜音響共振器を作製した。
【0055】
まず、Siウェーハ51の表面をSiO2 保護膜により被覆し、エッチングにより該保護膜を窪み形成のための所定のパターン状に形成し、Siウェーハ51のエッチングのためのマスクを形成した。その後、該マスクを用いて湿式エッチングを行い、図3に示されているように、深さ20μmの窪みを形成した。エッチングは、エッチング液として5wt%のKOH水溶液を用い、液温70℃で行った。その後、熱酸化により、ウェーハ51の表面に再度SiO2 層53を形成した。これにより、Siウェーハ51及びSiO2 層53からなる基板上に窪み52の形成されている構造を得た。
【0056】
その後、基板の表面(上面)にCr膜を形成し、該Cr膜のうちの窪み52の周囲を取り囲む部分のみを環状に残すようにようパターンエッチングした。これにより、図4に示されているように、窪み52の周囲を取り囲むようにCr膜からなる密着電極層61が形成された。Cr膜の形成は、DCマグネトロンスパッタ法を用い、スパッタガスとしてArを用い、基板温度を室温として行った。Cr密着電極層61は、上面の下方電極層との接触面となる平面の面積(S1)が4500μm2 で、膜厚が100nmとなるように形成された。
【0057】
その後、図5に示されているように、窪み52の形成されているSiO2 層53及びCr密着電極層61の上に、シランおよびおよびホスフィン(PH3 )を使用して450℃でPSGを堆積させた。
【0058】
次いで、図6に示されているように、堆積したPSGの表面を研磨して密着電極層61の上のPSG層の部分を除去し、続いてPSG層55の表面を微細な研磨粒子を含むスラリーを用いて研磨し、逆スパッタリング処理によりCr密着電極層61の表面を清浄化した。これにより、PSG犠牲層55の表面は、高さのRMS変動が8nmとなる表面粗さであった。
【0059】
その後、図7に示されているように、Cr密着電極層61及びPSG犠牲層55の上に、Auからなる下方電極層62を形成した。該下方電極層62のパターニングにはリフトオフ法を採用し、Cr密着電極層61の外周縁に対応する外周縁を有する所定形状の下方電極層62を得た。Au膜の形成は、DCマグネトロンスパッタ法を用い、スパッタガスとしてArを用い、基板温度を室温として行った。下方電極層62は、平面面積が27225μm2 で、膜厚が100nmととなるように形成された。得られたAu膜の表面粗さを調べた結果、高さのRMS変動は7nmであった。
【0060】
次に、下方電極層62の周囲に残ったPSG犠牲層を除去し、下方電極層62上にZnOからなる圧電体薄膜層63を形成した。ZnO膜の形成は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、スパッタリングターゲットとしてZnOを用い、スパッタガスとしてAr:O2 が9:1のAr−O2 混合ガスを用い、スパッタガス圧を5mTorrとし、基板温度を400℃として行った。ZnO膜の膜厚は1.0μmであった。得られたZnO膜の表面粗さを調べた結果、高さのRMS変動は4nmであった。
【0061】
続いて、ZnO圧電体薄膜層63を湿式エッチングして、結合電極引き出しに必要な開口部以外はCr密着電極層61の外周縁及び下方電極層62の外周縁に対応する外周縁を有する所定形状にパターニングした。そして、ZnO圧電体薄膜63上にAuからなる上部電極層64を形成した。該上部電極層64は、リフトオフ法によるパターニングで、外周縁がCr密着電極層61の内周縁より内側となるような所定形状とされた(図9参照)。Au膜の形成は、DCマグネトロンスパッタ法を用い、スパッタガスとしてArを用い、基板温度を室温として行った。Au膜の膜厚は100nmとした。
【0062】
次いで、RIE(反応性イオンエッチング)により、上方電極層64の周辺部から下方へ向かって、該上方電極層64、圧電体薄膜層63及び下方電極層62を通って犠牲層55まで貫通する小さな穴を開け、希釈H2 O:HF溶液でエッチングすることによりPSG犠牲層55を除去した。これにより、図8に示されているように、窪み52の上にCr/Au/ZnO/Auの挟み込み構造体60が橋架けされた形態を形成した。得られた挟み込み構造体60について、スコッチテープによるピーリングテストを行ったところ、基板との間での剥離は観察されなかった。
【0063】
得られたZnO圧電体薄膜層63について、薄膜XRD分析を行った結果、膜のc軸は膜面内に対して88.6度の方向であり、ロッキングカーブにより配向度を調べた結果、(0002)ピークの半値幅(FWHM)は2.3度であり、良好な配向性を示していた。
【0064】
また、このようにして得られた図8及び図9に示される薄膜音響共振器について、マイクロ波プローバを使用して、上方電極層64と下方電極層62及び密着電極層61との間のインピーダンス特性を測定するとともに、共振周波数frおよび反共振周波数faを測定し、これらの測定値に基づき電気機械結合係数kt 2を算出した。このとき、スプリアスは励振せず、電気機械結合係数係数kt 2は5.5%で音響的品質係数は1145であった。実施例1において得られたFBARの構成、密着強度および音響共振器としての特性を表1に示す。
【0065】
(実施例2)
密着電極層61としてCrに代えてTiからなるものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして薄膜音響共振器を作製した。Ti膜の形成は、DCマグネトロンスパッタ法を用い、スパッタリングターゲットとしてTiを用い、スパッタガスとしてArを用い、基板温度を室温として行った。Ti膜の膜厚は、20nmとした。得られたZnO圧電体薄膜層63の表面粗さを調べた結果、高さのRMS変動は9nmであった。スコッチテープによるピーリングテストを行ったところ、基板と挟み込み構造体60との間での剥離は観察されなかった。また、薄膜XRD分析を行った結果、ZnO圧電体薄膜層63のc軸は膜面内に対して89.2度の方向であり、ロッキングカーブにより配向度を調べた結果、ピークの半値幅は2.1度と良好な配向性を示していた。
【0066】
このようにして得られた薄膜音響共振器は、スプリアスの励振はなく、電気機械結合係数kt 2は5.9%で、音響的品質係数は772であった。実施例2において得られたFBARの構成、密着強度および音響共振器としての特性を表1に示す。
【0067】
(実施例3)
下方電極層62及び上方電極層64としてAuに代えてPtからなるものを用い且つCr密着電極層61の厚みを60nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして薄膜音響共振器を作製した。Pt膜の形成は、DCマグネトロンスパッタ法を用い、スパッタリングターゲットとしてPtを用い、スパッタガスとしてArを用い、基板温度を室温として行った。Pt膜の膜厚は100nmとした。得られたZnO圧電体薄膜層63の表面粗さを調べた結果、高さのRMS変動は6nmであった。スコッチテープによるピーリングテストを行ったところ、基板と挟み込み構造体60との間での剥離は観察されなかった。また、薄膜XRD分析を行った結果、ZnO圧電体薄膜層63のc軸は膜面内に対して88.8度の方向であり、ロッキングカーブにより配向度を調べた結果、ピークの半値幅は2.5度と良好な配向性を示していた。
【0068】
このようにして得られた薄膜音響共振器は、スプリアスの励振はなく、電気機械結合係数kt 2は5.2%で、音響的品質係数は898であった。実施例3において得られたFBARの構成、密着強度および音響共振器としての特性を表1に示す。
【0069】
(実施例4)
密着電極層61としてCrに代えてNiからなるものを用い、その平面面積S1を15000μm2 に広げて下方電極層62の平面面積S2との比率S1/S2を0.55にしたこと以外は、実施例1と同様にして薄膜音響共振器を作製した。Ni膜の形成は、DCマグネトロンスパッタ法を用い、スパッタリングターゲットとしてNiを用い、スパッタガスとしてArを用い、基板温度を室温として行った。Ni膜の膜厚は50nmとした。得られたZnO圧電体薄膜層63の表面粗さを調べた結果、高さのRMS変動は11nmであった。スコッチテープによるピーリングテストを行ったところ、基板と挟み込み構造体60との間での剥離は観察されなかった。また、薄膜XRD分析を行った結果、ZnO圧電体薄膜層63のc軸は膜面内に対して89.0度の方向であり、ロッキングカーブにより配向度を調べた結果、ピークの半値幅は2.9度と良好な配向性を示していた。
【0070】
このようにして得られた薄膜音響共振器は、スプリアスの励振はなく、電気機械結合係数kt 2は4.8%で、音響的品質係数は707であった。実施例4において得られたFBARの構成、密着強度および音響共振器としての特性を表1に示す。
【0071】
(実施例5)
上方及び下方の電極層62,64としてAuに代えてPtからなるものを用い、圧電薄膜層63としてZnOに代えてAlNからなるものを用い、且つTi密着電極層61の平面面積S1を4000μm2 とし厚みを30nmとしたこと以外は、実施例2と同様にして薄膜音響共振器を作製した。Pt膜の形成は、実施例3と同様に行った。また、AlN膜の形成は、RFマグネトロンスパッタ法を用い、スパッタリングターゲットとしてAlを用い、スパッタガスとしてAr:N2 が1:1のAr−N2 混合ガスを用い、基板温度を400℃として行った。AlN膜の膜厚は1.4μmとした。得られたAlN膜の表面粗さを調べた結果、高さのRMS変動は7nmであった。スコッチテープによるピーリングテストを行ったところ、基板と挟み込み構造体60との間での剥離は観察されなかった。また、薄膜XRD分析を行った結果、AlN圧電体薄膜層63のc軸は膜面内に対して90.0度の方向であり、ロッキングカーブにより配向度を調べた結果、ピークの半値幅は2.7度と良好な配向性を示していた。
【0072】
このようにして得られた薄膜音響共振器は、スプリアスの励振はなく、電気機械結合係数kt 2は6.4%で、音響的品質係数は984であった。実施例5において得られたFBARの構成、密着強度および音響共振器としての特性を表1に示す。
【0073】
(実施例6)
密着電極層61としてCrからなるものを用い、上方及び下方の電極層62,64としてMoからなるものを用い、且つCr密着電極層61の平面面積S1を5000μm2 とし厚みを40nmとしたこと以外は、実施例5と同様にして薄膜音響共振器を作製した。得られたAlN膜の表面粗さを調べた結果、高さのRMS変動は5nmであった。スコッチテープによるピーリングテストを行ったところ、基板と挟み込み構造体60との間での剥離は観察されなかった。また、薄膜XRD分析を行った結果、AlN圧電体薄膜層63のc軸は膜面内に対して89.8度の方向であり、ロッキングカーブにより配向度を調べた結果、ピークの半値幅は2.9度と良好な配向性を示していた。
【0074】
このようにして得られた薄膜音響共振器は、スプリアスの励振はなく、電気機械結合係数kt 2は6.1%で、音響的品質係数は1140であった。実施例6において得られたFBARの構成、密着強度および音響共振器としての特性を表1に示す。
【0075】
(比較例1)
Siウェーハ51及びSiO2 層53からなる基板上に窪み53の形成されている構造の上にPSGを堆積させ、その表面を研磨して窪み53以外の領域のPSG層の部分を除去し、窪み53の領域のPSG層の表面を高さのRMS変動が8nmとなるような表面粗さにし、その上にCr膜及びAu膜を形成し、これらの膜を同一形状にパターニングして、密着電極層61を下方電極層62の全面に接合した形態を得たこと以外は、実施例1と同様にして薄膜音響共振器を作製した。得られたZnO膜の表面粗さを調べた結果、高さのRMS変動は30nmであった。スコッチテープによるピーリングテストを行ったところ、基板と挟み込み構造体60との間での剥離は観察されなかった。また、薄膜XRD分析を行った結果、ZnO圧電体薄膜層63のc軸は膜面内に対して87.5度の方向であり、ロッキングカーブにより配向度を調べた結果、ピークの半値幅は4.8度と実施例1に比べて2.5度ほどの劣化を示した。
【0076】
また、このようにして得られた薄膜音響共振器は、スプリアスが励振し、電気機械結合係数kt 2は2.5%で、音響的品質係数は404であった。比較例1において得られたFBARの構成、密着強度および音響共振器としての特性を表1に示す。
【0077】
(比較例2)
密着電極層61を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして薄膜音響共振器を作製した。得られたZnO膜の表面粗さを調べた結果、高さのRMS変動は23nmであった。薄膜XRD分析を行った結果、ZnO圧電体薄膜層63のc軸は膜面内に対して88.4度の方向であり、ロッキングカーブにより配向度を調べた結果、ピークの半値幅は2.9度と実施例4と同等値を示したが、スコッチテープによるピーリングテストにおいて、基板と挟み込み構造体60との間での剥離が観察された。
【0078】
また、このようにして得られた薄膜音響共振器は、スプリアスが励振し、電気機械結合係数kt 2は3.2で、音響的品質係数は446であった。比較例2において得られたFBARの構成、密着強度および音響共振器としての特性を表1に示す。
【0079】
【表1】
Figure 0003918464
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、下方電極層と基板との間に密着電極層を設けており、該密着電極層は基板に形成された窪みの周囲において基板と接合されているので、薄膜音響共振器における横方向の振動発生が抑制され、薄膜音響共振器の振動に余分なスプリアス振動が重なることが防止され、薄膜音響共振器およびフィルタの共振特性、品質係数が改善される。また、下方電極層の中央部の下側(すなわち密着電極層により囲まれた内側部分)には密着電極層が存在しないため、下方電極層の中央部を極めて平滑度の高い犠牲層表面上にて形成して配向性及び結晶性を高めることができ、これに基づき配向性及び結晶品質に優れた圧電体薄膜層を形成でき、電気機械結合係数や音響品質係数(Q値)などに優れた高性能な薄膜音響共振器が提供される。更に、密着電極層を用いることで、下方電極層と基板との密着性(接合強度)を向上させることができ、下方電極層の材料選択の幅が広くなり、薄膜音響共振器の耐久性を向上させ長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるFBARの模式的断面図である。
【図2】本発明によるSBARの模式的断面図である。
【図3】本発明によるFBAR及びその製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図4】本発明によるFBAR及びその製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図5】本発明によるFBAR及びその製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図6】本発明によるFBAR及びその製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図7】本発明によるFBAR及びその製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図8】本発明によるFBAR及びその製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図9】本発明によるFBAR及びその製造方法を説明するための模式的平面図である。
【符号の説明】
11 基板
12,52 窪み
20,40 薄膜音響共振器
21,43,44,64 上方電極層
22,41,42,63 圧電体薄膜層
23,45,62 下方電極層
24,61 密着電極層
51 シリコンウェーハ
53 酸化シリコン層
55 犠牲層(犠牲材料の層)
60 挟み込み構造体

Claims (21)

  1. 基板と、該基板上に配置され該基板側の下方電極層及びこれと対をなす上方電極層の間に圧電体薄膜層を挟み込むように積層してなる挟み込み構造体とを備える薄膜音響共振器であって、
    前記挟み込み構造体は更に前記下方電極層と前記基板との間に位置し且つ前記下方電極層と接合された密着電極層を有しており、
    該密着電極層は、前記基板と前記下方電極層との間に前記挟み込み構造体の振動を許容するように形成された空洞を、前記基板上にて取り囲むように形成されており、且つ、前記密着電極層は、前記空洞の周囲において前記基板と接合されていることを特徴とする薄膜音響共振器。
  2. 前記空洞は前記基板の表面の窪みにより形成されることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜音響共振器。
  3. 前記密着電極層は環状に形成されていることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載の薄膜音響共振器。
  4. 前記密着電極層の前記下方電極層と接する部分の平面面積をS1とし、前記下方電極層の平面面積をS2としたとき、0.01×S2≦S1≦0.5×S2の関係が成り立つことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜音響共振器。
  5. 前記上方電極層は前記密着電極層の内側に対応する領域に位置することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜音響共振器。
  6. 前記密着電極層はTi、Cr、Ni、Taより選ばれる少なくとも一種を含む材料で構成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜音響共振器。
  7. 前記下方電極層はAu、Pt、W、Moより選ばれる少なくとも一種を含む材料で構成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜音響共振器。
  8. 前記圧電体薄膜層はAlNまたはZnOで構成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の薄膜音響共振器。
  9. 前記下方電極層の表面は高さのRMS変動が20nm未満であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の薄膜音響共振器。
  10. 前記圧電体薄膜層の表面は高さのRMS変動が4〜11nmであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の薄膜音響共振器。
  11. 請求項1〜10のいずれかの薄膜音響共振器を製造する方法であって、
    前記基板の表面上に部分的に犠牲層を形成し且つ該犠牲層の周囲に前記密着電極層を形成する工程と、
    前記犠牲層及び前記密着電極層の上に前記下方電極層を形成する工程と、
    該下方電極層の上に前記圧電体薄膜層及び前記上方電極層を形成する工程と、
    前記犠牲層を除去することで前記空洞を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする、薄膜音響共振器の製造方法。
  12. 前記基板に形成された窪み内に前記犠牲層が形成されることを特徴とする、請求項11に記載の薄膜音響共振器の製造方法。
  13. 前記犠牲層の形成は、先ず前記基板及び前記密着電極層を覆うように犠牲層材料の層を形成し、次いで該犠牲層材料の層を前記密着電極層の表面が露出するように研磨することで行われることを特徴とする、請求項11〜12のいずれかに記載の薄膜音響共振器の製造方法。
  14. 前記犠牲層をその表面の高さのRMS変動が20nm未満となるように形成することを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の薄膜音響共振器の製造方法。
  15. 前記犠牲層としてガラス又はプラスチックを用いることを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載の薄膜音響共振器の製造方法。
  16. 前記犠牲層の除去はエッチングにより行われることを特徴とする、請求項11〜15のいずれかに記載の薄膜音響共振器の製造方法。
  17. 前記エッチングは、前記挟み込み構造体に小孔を開け、該小孔からエッチング液を導入することで行われることを特徴とする、請求項16に記載の薄膜音響共振器の製造方法。
  18. 前記挟み込み構造体を構成する上方電極層、圧電体薄膜層および下方電極層の総ての層を貫通するように、前記挟み込み構造体に前記小孔を開けることを特徴とする、請求項17に記載の薄膜音響共振器の製造方法。
  19. 前記小孔を乾式エッチング法により開けることを特徴とする、請求項17〜18のいずれかに記載の薄膜音響共振器の製造方法。
  20. 前記下方電極層をその表面の高さのRMS変動が20nm未満になるように形成することを特徴とする、請求項11〜19のいずれかに記載の薄膜音響共振器の製造方法。
  21. 前記圧電体薄膜層をその表面の高さのRMS変動が4〜11nmとなるように形成することを特徴とする、請求項11〜20のいずれかに記載の薄膜音響共振器の製造方法。
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