JP3917015B2 - 動弁機構の油圧制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、動弁機構の油圧制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハイブリッド車両の中には、エンジンフリクションの低減効果により更なる燃費向上を図るために、例えば、油圧制御により動弁機構を操作して気筒休止を行うようにしたものがある。車両が減速状態に移行した際に、例えば、燃料供給停止と共に気筒休止を行うことにより、エンジンフリクションが低減した分だけ回生量を増加させて燃費向上を図るものである。
したがって、全気筒休止可能なエンジンを用いれば、減速時におけるエンジンフリクションによるエネルギーをも最大限に回収でき、燃費性能の良好なハイブリッド車両とすることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように全ての気筒を休止できるようにすれば更なる燃費向上を図ることができるが、気筒休止機構に異常があり、かつ、電動機による走行もできないような事態に対処して自力でエンジン走行を可能とする必要から、一部の気筒を気筒休止しない通常気筒としなければならない。そのため、その通常気筒に関しては、相変わらず減速時などに通常のエンジンフリクションが発生し、その分だけ燃費向上効果が損なわれてしまうという問題がある。
【0004】
そこで、この発明は、気筒休止による燃費向上効果を最大限に発揮することができると共に一部の気筒や油圧系に故障が発生した場合でも走行に支障をきたすことがない動弁機構の油圧制御装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、内燃機関(例えば、実施形態におけるエンジンE)の動弁機構(例えば、実施形態における可変バルブタイミング機構VT)に油圧を供給して動弁機構を制御する油圧制御装置において、動弁機構を通常作動させる第1油圧経路(例えば、実施形態における気筒休止解除側通路35)と特別作動させる第2油圧経路(例えば、実施形態における気筒休止側通路34)とを設け、動弁機構の通常作動時には第1油圧経路を高圧側に接続すると共に第2油圧経路を低圧側に接続し、動弁機構の特別作動時には第2油圧経路を高圧側に接続すると共に第1油圧経路を低圧側に接続する第1油圧切換手段(例えば、実施形態におけるスプールバルブ33)を設け、前記第2油圧経路に分岐して第3油圧経路(例えば、実施形態における油圧制御通路39)を接続し、この第3油圧経路に、第1油圧切換手段により第2油圧経路が高圧側に接続されている場合に第3油圧経路を遮断する第2油圧切換手段(例えば、実施形態におけるスプールバルブ33´)を設け、第3油圧経路に第2油圧切換手段から動弁機構への作動油の流過を阻止する逆止弁(例えば、実施形態における逆止弁40)を設け、前記第1油圧経路にこの経路内の油圧を検出する第1油圧センサ(例えば、実施形態におけるPOILセンサS1)を設け、第3油圧経路の逆止弁と第2油圧切換手段との間にこの経路内の油圧を検出する第2油圧センサ(例えば、実施形態におけるPOILセンサS1´)を設け、前記第1油圧切換手段及び第2油圧切換手段を切り替えるための制御装置(例えば、実施形態におけるFIECU11)を設け、この制御装置から第1油圧切換手段及び第2油圧切換手段に送信される切換制御信号と、前記第1油圧センサと第2油圧センサとの検出信号に基づいて、第1油圧切換手段あるいは第2油圧切換手段の故障状態を把握することを特徴とする。
このように構成することで、第1油圧切換手段により、第1油圧経路を高圧側に接続すると共に第2油圧経路を低圧側に接続して、例えば車両を全気筒運転させる動弁機構の通常作動モードと、第2油圧経路を高圧側に接続すると共に第1油圧経路を低圧側に接続して、例えば車両を全気筒休止運転させる動弁機構の特別作動モードとを切換可能に構成し、動弁機構の特別作動モードでは第2油圧切換手段により第3油圧経路を閉鎖して、第2油圧経路から動弁機構への作動油の供給を確保することができる。
ここで、第2油圧切換手段により第3油圧経路を介して第2油圧経路を開放するだけで、動弁機構の特別作動モードを解除することが可能となる。
また、第1油圧経路の油圧を第1油圧センサで検出し、第3油圧経路の油圧を第2油圧センサで検出し、第1油圧切換手段と第2油圧切換手段との切換制御信号を検出することで、第1油圧切換手段と第2油圧切換手段との切換異常を検出し故障検知を行うことができる。
更に、第1油圧切換手段と第2油圧切換手段の故障を検出でき、とりわけ、第1油圧切換手段が故障して、第2油圧経路に油圧が作用したままの状態になっていることが検出された場合には、第2油圧切換手段により第3油圧経路の遮断を解除し第2油圧経路内の油圧を開放して動弁機構の特別作動を解除することが可能となる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、前記低圧側がドレン通路(例えば、実施形態におけるドレン通路38,38´)に接続されていることを特徴とする。
このように構成することで、低圧側を大気開放として単純化できる。
【0009】
請求項3に記載した発明は、前記動弁機構の通常作動により吸気弁(例えば、実施形態における吸気弁IV)、排気弁(例えば、実施形態における排気弁EV)が駆動して全ての気筒を運転状態にする全気筒運転が行われ、動弁機構の特別作動により排気弁、吸気弁が閉状態で駆動停止して全ての気筒が休止する全気筒休止運転が行われることを特徴とする。
このように構成することで、全気筒運転と全気筒休止運転とを切り替える走行を可能とし、全気筒休止運転から全気筒運転に切り替わらなくなった場合には、第2油圧切換手段による第3油圧経路の遮断を解除して第2油圧経路内の油圧を開放することが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を図面と共に説明する。
先ず、この発明の第1実施形態に係る動弁機構の油圧供給装置を備えたパラレルハイブリッド車両の構成を簡単に説明する。このハイブリッド車両はエンジンE、モータM、トランスミッションTを直列に直結した構造のものである。エンジンEとモータMの少なくとも一方の動力をCVTなどのトランスミッションT(マニュアルトランスミッションでもよい)を介して出力軸に伝達し、駆動輪たる前輪Wfを駆動する。また、ハイブリッド車両の減速時に前輪Wf側からモータM側に駆動力が伝達されると、モータMは発電機として機能していわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0012】
モータMの駆動及び回生作動は、モータECU1のモータCPU1Mからの制御指令を受けてパワードライブユニット(PDU)2により行われる。パワードライブユニット2にはモータMと電気エネルギーの授受を行う高圧系のニッケル−水素バッテリ3が接続され、バッテリ3は、例えば、複数のセルを直列に接続したモジュールを1単位として更に複数個のモジュールを直列に接続したものである。ハイブリッド車両には各種補機類を駆動するための12ボルトの補助バッテリ4が搭載され、この補助バッテリ4はバッテリ3にDC−DCコンバータであるダウンバータ5を介して接続される。FIECU(制御装置)11により制御されるダウンバータ5は、バッテリ3の電圧を降圧して補助バッテリ4を充電する。尚、モータECU1は、バッテリ3を保護すると共にその残容量を算出するバッテリCPU1Bを備えている。また、前記CVTであるトランスミッションTにはこれを制御するCVTECU21が接続されている。
【0013】
FIECU11は、前記モータECU1及び前記ダウンバータ5に加えて、エンジンEへの燃料供給量を調整する図示しない燃料噴射弁、スタータモータの作動の他、点火時期等の制御を行う。そのためFIECU11には、図示しない車速センサ、エンジン回転数センサ、シフトポジションセンサ、ブレーキスイッチ、クラッチスイッチ、スロットル開度センサ、及び吸気管負圧センサからの信号が入力される。また、後述するPOILセンサ(第1、第2油圧センサ)S1,S1’、スプールバルブ(第1、第2油圧切換手段)33,33’のソレノイド、TOILセンサS2からの信号もFIECU11に入力される。
ここで、エンジンEはSOHC型4気筒のエンジンである。各気筒は可変バルブタイミング機構(動弁機構)VTを備え、このバルブタイミング機構VTに油圧を供給して気筒休止・休止解除を行うものである。
【0014】
具体的に可変バルブタイミング機構VT及びこの可変バルブタイミング機構VTに油圧を供給するための油圧制御装置について図2〜図4を用いて説明する。
図2に示すように、シリンダ(図示せず)には吸気弁IVと排気弁EVが設けられ、これら吸気弁IVと排気弁EVは弁スプリング51,51により図示しない吸気、排気ポートを閉じる方向に付勢されている。一方、52はカムシャフト53に設けられたリフトカムであり、このリフトカム52には、ロッカーシャフト31を介して回動可能に支持された吸気弁側、排気弁側カムリフト用ロッカーアーム54a,54bが連係している。
【0015】
また、ロッカーシャフト31にはカムリフト用ロッカーアーム54a,54bに隣接して弁駆動用ロッカーアーム55a,55bが回動可能に支持されている。そして、弁駆動用ロッカーアーム55a,55bの回動端が前記吸気弁IV、排気弁EVの上端を押圧して吸気弁IV、排気弁EVを開弁作動させるようになっている。また、図3に示すように弁駆動用ロッカーアーム55a,55bの基端側(弁当接部分とは反対側)はカムシャフト53に設けられた真円カム531に摺接可能に構成されている。
【0016】
図3は、排気弁EV側を例にして、前記カムリフト用ロッカーアーム54bと弁駆動用ロッカーアーム55bを示したものである。
図3(a)、図3(b)において、カムリフト用ロッカーアーム54bと弁駆動用ロッカーアーム55bには、ロッカーシャフト31を中心にしてリフトカム52と反対側に、カムリフト用ロッカーアーム54bと弁駆動用ロッカーアーム55bとに渡る油圧室56が形成されている。油圧室56内にはピン57a、解除ピン57bがスライド自在に設けられ、ピン57aは、ピンスプリング58を介してカムリフト用ロッカーアーム54b側に付勢されている。
【0017】
ロッカーシャフト31の内部には仕切部Sを介して油圧通路59(59a、59b)が区画形成されている。油圧通路59bは、油圧通路59bの開口部60、カムリフト用ロッカーアーム54bの連通路61を介して、解除ピン57b側の油圧室56に連通し、油圧通路59aは、油圧通路59aの開口部60、弁駆動用ロッカーアーム55bの連通路61を介して、ピン57a側の油圧室56に連通し後述するドレン通路38に接続可能にされている。
【0018】
ここで、油圧通路59bから油圧が作用しない場合は、図3(a)に示すように、前記ピン57aは、ピンスプリング58により前記カムリフト用ロッカーアーム54bと弁駆動用ロッカーアーム55bとの双方に跨る位置となり、一方、気筒休止の切換制御信号により油圧通路59bから油圧が作用した場合は、図3(b)に示すように、前記ピン57aは解除ピン57bと共にピンスプリング58に抗して弁駆動用ロッカーアーム55b側にスライドして、ピン57aは解除ピン57bとの境界部分が前記カムリフト用ロッカーアーム54bと弁駆動用ロッカーアーム55bとの境界部分に一致して両者の連結を解除する。尚、吸気弁側も同様の構成である。ここで、前記油圧通路59a,59bは可変バルブタイミング機構VTの油圧を確保するスプールバルブ33を介してオイルポンプ32に接続されている。
【0019】
図4に示すように、スプールバルブ33はFIECU11からの切換制御信号によりソレノイドを作動させて作動油を作用させるポートを切り替えるもので、オイルポンプ32の吐出側の供給配管36が接続されると共にドレン通路38が接続されている。また、スプールバルブ33には前記可変バルブタイミング機構VTを通常作動させて全気筒運転を行うための気筒休止解除側通路(第1油圧経路)35と前記可変バルブタイミング機構VTを特別作動させて全気筒休止運転を行うための気筒休止側通路(第2油圧経路)34が接続されている。
ここで、気筒休止解除側通路35はロッカーシャフト31の油圧通路59aに接続され、気筒休止側通路34はロッカーシャフト31の油圧通路59bに接続されている。
【0020】
そして、このスプールバルブ33は全気筒運転を行う場合にFIECU11から切換制御信号(OFF信号)が入力されると、オイルポンプ32からの油圧を気筒休止解除側通路35に作用させるために、高圧側ポートを気筒休止解除側通路35に切り換えると共に低圧側ポートを気筒休止側通路34に切り替えてドレン通路38側に接続し(Low側切換)、全気筒休止運転を行う場合にFIECU11から切換制御信号(ON信号)が入力されると、オイルポンプ32からの油圧を気筒休止側通路34に作用させるために、高圧側ポートを気筒休止側通路34に切り替えると共に低圧側ポートを気筒休止解除側通路35に切り替えドレン通路38側に接続する(Hi側切換)。
【0021】
気筒休止解除側通路35にはPOILセンサS1が設けられている。POILセンサS1は、気筒休止時においては低圧(Low)となり、全気筒運転時には高圧(Hi)となる気筒休止解除側通路35の油圧を監視している。
ここで、気筒休止側通路34には油圧制御通路(第3油圧経路)39が分岐して接続され、この油圧制御通路39にはスプールバルブ33’が接続されている。スプールバルブ33’にはドレン通路38’が接続されこのドレン通路38’は前記スプールバルブ33のドレン通路38に接続されている。
【0022】
スプールバルブ33’は、前記スプールバルブ33がHi側に切り替えられて気筒休止側通路34が高圧側に接続されている場合に油圧制御通路39を遮断する側に切り替わり(Hi側切換)、スプールバルブ33がLow側に切り替えられて気筒休止解除側通路35が高圧側に接続されている場合に油圧制御通路39をドレン通路38’に接続するように切り替わる(Low側切換)ものである。
【0023】
油圧制御通路39にはスプールバルブ33’から可変バルブタイミング機構VTへの作動油の流過、つまり気筒休止側通路34への作動油の流過を阻止する逆止弁40が設けられている。また、油圧制御通路39の逆止弁40とスプールバルブ33’との間にこの経路内の油圧を検出するPOILセンサS1’が設けられている。このPOILセンサS1’は、気筒休止時においては逆止弁40までの経路で高圧(Hi)となり、全気筒運転時には全経路とも低圧(Low)となる油圧制御通路39の油圧を監視している。尚、オイルポンプ32の吐出側にはエンジンEへ作動油を供給する通路37が接続され、この通路37に油温を検出する前記TOILセンサS2が取り付けられ、エンジンEに供給される作動油の温度を監視している。
【0024】
したがって、例えば減速時等に、所定の気筒休止運転の条件が満足されると、FIECU11からのON信号がスプールバルブ33,33’に送られる。これによりスプールバルブ33が全気筒運転のLow側からHi側に切り替わり、スプールバルブ33’もLow側からHi側に切り替わりドレン通路38’を遮断する。すると、オイルポンプ32から供給配管36を経由して供給される作動油はスプールバルブ33から気筒休止側通路34に供給され、スプールバルブ33’を介してドレン通路38’側への作動油の抜けが遮断されているため、吸気弁IV側及び排気弁EV側の双方で前記油圧通路59bを経て油圧室56のカムシャフト用ロッカーアーム54a,54b側に油圧が作用する。一方、これと同時に気筒休止解除側通路35はドレン通路38に接続され低圧となる。
【0025】
したがって、POILセンサS1は低油圧(Low)を検出し。POILセンサS1’は高油圧(Hi)を検出する。よって、それまでカムリフト用ロッカーアーム54a,54bと弁駆動用ロッカーアーム55a,55bとを一体にしていたピン57a,57a、解除ピン57b,57bはピンスプリング58に抗して弁駆動用ロッカーアーム55a,55b側へスライドし、カムリフト用ロッカーアーム54a,54bと弁駆動用ロッカーアーム55a,55bとの連結が解除される。
【0026】
よって、リフトカム52の回転運動によりカムリフト用ロッカーアーム54a,54bは駆動するが、ピン57a、解除ピン57bによるカムリフト用ロッカーアーム54a,54bとの連結が解除された弁駆動用ロッカーアーム55a,55bにはその動きは伝達されない。これにより、吸気弁IV側、排気弁EV側の弁駆動用ロッカーアーム55a,55bは駆動しないため、各弁IV、EVは閉じたままとなりエンジンEは全気筒休止運転となる。
【0027】
次に、例えば運転者がアクセルペダルを踏み込むなどして気筒休止運転の条件が満たされなくなると、OFF信号がFIECU11からスプールバルブ33,33’に送られる。これによりスプールバルブ33が全気筒休止運転のHi側からLow側に切り替わり、スプールバルブ33’はHi側からLow側に切り替わりドレン通路38’が開放される。すると、オイルポンプ32から供給配管36を経由して供給される作動油はスプールバルブ33から気筒休止解除側通路35に供給され気筒休止解除側通路35は高圧となる。一方、気筒休止側通路34はスプールバルブ33’を介してドレン通路38,38’に接続されて低圧となる。このとき、POILセンサS1は高油圧(Hi)を検出し、POILセンサS1’は低油圧(Low)を検出する。
【0028】
したがって、油圧室56の弁駆動用ロッカーアーム55a,55b側には気筒休止解除側通路35側から油圧が作用し、それまで弁駆動用ロッカーアーム55a,55b側へスライドしていたピン57a,57a、解除ピン57b,57bはピンスプリング58の弾性力も加わって復帰して、解除ピン57b,57bはカムリフト用ロッカーアーム54a,54bと弁駆動用ロッカーアーム55a,55bとを連結する。
よって、リフトカム52の回転運動によりカムリフト用ロッカーアーム54a,54bが駆動すると、吸気弁IV側、排気弁EV側の弁駆動用ロッカーアーム55a,55bが駆動し、各弁IV、EVは開閉作動しエンジンEは全気筒運転となる。
【0029】
このようにして、全ての気筒で今までロスとなっていたエンジンフリクションによるロスを全気筒休止運転により最小限にして、その分多くの回生量を確保し燃費向上を図ることがでできる。
【0030】
以下に示す表1にスプールバルブ33,33’の切換状況(Hi側、Low側)とPOILセンサS1,S1’の検出圧(Hi、Low)を全気筒運転と全気筒休止運転とで比較して示す。
【表1】
Figure 0003917015
【0031】
ここで、例えば、スプールバルブ33あるいはスプールバルブ33’に対してFIECU11からOFF信号が入力され各々Low側に切り替えるような状況の際に、スプールバルブ33,33’の何れかが故障のためHi側に切り替わったままのON故障が生じた場合には次のように対処できる。
スプールバルブ33がON故障した場合には、気筒休止側通路34の油圧を開放するために、FIECU11からスプールバルブ33’にOFF信号を出力しスプールバルブ33’をOFF作動させれば逆止弁40により作動油のドレン通路38側への移動が許容されるためドレン通路38’から気筒休止側通路34内の作動油を開放できる。これにより、ピン57aはピンスプリング58により復帰して、気筒休止は解除される。したがって、全気筒運転で車両を走行させることができる。
【0032】
また、スプールバルブ33’がON故障した場合には、気筒休止側通路34と油圧制御通路39との分岐部と逆止弁40の間の経路は高圧になったままであるが、逆止弁40によりその圧力は気筒休止側通路34には何ら悪影響を与えることはなく、よって、スプールバルブ33をOFF作動させ、気筒休止解除側通路35に油圧を供給すれば、気筒休止側通路34からドレン通路38を経由して作動油を戻すことができるので、車両を全気筒運転で走行させることができる。
【0033】
一方、逆にスプールバルブ33あるいはスプールバルブ33’に対してFIECU11から各々ON信号が入力されHi側に切り替えるような状況の際に、スプールバルブ33,33’の何れかが故障のためLow側に切り替わったままのOFF故障が生じた場合には、次のように対処できる。
スプールバルブ33がOFF故障した場合には、気筒休止側通路34は、スプールバルブ33’の状態に関わらず、ドレン通路38に連通しているため、車両を全気筒運転で走行させることができる。
また、スプールバルブ33’がOFF故障した場合には、気筒休止側通路34により油圧が供給されても、スプールバルブ33’のドレン通路38’からドレン通路38へ作動油が戻るため、全気筒休止に切り替えることができないに過ぎず、車両を全気筒運転で走行させることができる。
【0034】
ここで、上述したように、スプールバルブ33,33’の何れかがON故障、OFF故障しても車両を全気筒運転で走行させることができるが、故障に対して迅速に対処するためには、故障個所の特定を含めて故障を検知する必要がある。表2はFIECU11からの切換制御信号(Hi(ON指令)、Low(OFF指令))と、POILセンサS1,S1’の検出信号(Hi、Low)に基づいて故障及び故障個所を特定できることを示したものである。
【0035】
【表2】
Figure 0003917015
【0036】
表2によれば、全気筒運転に切り替えるため、スプールバルブ33,33’の各々に対してLow側に切り替わるようにOFF指令が出力されているにも関わらずPOILセンサS1が「Low」,POILセンサS1’が「Low」を検出している場合には、POILセンサS1が「Low」ということから、気筒休止解除側通路35はドレン通路38に接続され、POILセンサS1’が「Low」ということから、スプールバルブ33がONのままとなっているON故障ということが確定できる。
【0037】
また、全気筒運転に切り替えるため、スプールバルブ33,33’の各々に対してLow側に切り替わるようにOFF指令が出力されているにも関わらずPOILセンサS1が「Hi」,POILセンサS1’が「Hi」を検出している場合には、POILセンサS1が「Hi」ということから、気筒休止解除側通路35は作動油が供給されていて、気筒休止側通路34はドレン通路38に接続されているにも関わらず、前回のON指令の際に油圧制御通路39のスプールバルブ33’と逆止弁40間に閉じ込められ高圧の作動油によりPOILセンサS1’が「Hi」を検出していると考えられるから、スプールバルブ33’がONのままとなっているON故障ということが確定できる。
【0038】
次に、全気筒休止運転に切り替えるため、スプールバルブ33,33’の各々に対してHi側に切り替わるようにON指令が出力されているにも関わらずPOILセンサS1が「Hi」,POILセンサS1’が「Low」を検出している場合には、POILセンサS1が「Hi」ということから、気筒休止解除側通路35に作動油が供給され、POILセンサS1’が「Low」ということから、気筒休止側通路34はドレン通路38’が閉じていても(スプールバルブ33’へのON指令で)低圧のままとなっているため「Low」と考えられるから、スプールバルブ33がOFFのままとなっているOFF故障ということが確定できる。
【0039】
そして、全気筒休止運転に切り替えるため、スプールバルブ33,33’の各々に対してHi側に切り替わるようにON指令が出力されているにも関わらずPOILセンサS1が「Low」,POILセンサS1’が「Low」を検出している場合には、POILセンサS1が「Low」ということにより、気筒休止解除側通路35はドレン通路38に接続され、作動油は気筒休止側通路34に供給されているにも関わらず、気筒休止側通路34の圧力が高くならずPOILセンサS1’が「Low」を検出していると考えられるから、スプールバルブ33’がOFFのままとなっているOFF故障ということが確定できる。
【0040】
上記実施形態によれば、全気筒休止により全ての気筒のエンジンフリクション分の回生量をモータMによる回収でき気筒休止による燃費向上効果を最大限に発揮することができると共にスプールバルブ33,33’の何れかがON故障、OFF故障した場合でも何ら支障なく全気筒運転で走行が可能となるため、信頼性を高めることができる。
また、FIECU11からの切換制御信号とPOILセンサS1,S1’の検出信号により、スプールバルブ33,33’の何れが、ON故障あるいはOFF故障しているか否か(故障の有無と原因)を簡単に確定し、故障に対する迅速で正確な対応を実現できる。
そして、動弁機構の背圧側を大気開放であるドレン通路38,38’に設定しているため、油圧経路の構造を簡素化できる効果がある。
尚、この発明の実施形態では、エンジンと電動機であるモータを動力源として備え、このエンジンと電動機の少なくとも一方の動力を変速機を介して出力軸に伝達して車両の駆動力とし、減速時に電動機により回生エネルギーを蓄電装置に回収するハイブリッド車に適用した場合について説明したが、通常のエンジンにも適用できる。
【0042】
【発明の効果】
以上説明してきたように、請求項1に記載した発明によれば、第1油圧切換手段により、第1油圧経路を高圧側に接続すると共に第2油圧経路を低圧側に接続して、例えば車両を全気筒運転させる動弁機構の通常作動モードと、第2油圧経路を高圧側に接続すると共に第1油圧経路を低圧側に接続して、例えば車両を全気筒休止運転させる動弁機構の特別作動モードとを切換可能に構成し、動弁機構の特別作動モードでは第2油圧切換手段により第3油圧経路を閉鎖して、第2油圧経路から動弁機構への作動油の供給を確保することができるため、第2油圧切換手段により第3油圧経路の遮断を解除し第2油圧経路を開放すれば動弁機構の特別作動モードを容易に解除することができる効果がある。
【0043】
また、第1油圧経路の油圧を第1油圧センサで検出し、第3油圧経路の油圧を第2油圧センサで検出し、第1油圧切換手段と第2油圧切換手段との切換制御信号を検出することで、第1油圧切換手段と第2油圧切換手段との切換異常を検出し故障検知を行うことができるため、故障に対する迅速で正確な対応を実現することができる効果がある。
更に、第1油圧切換手段と第2油圧切換手段の故障を検出でき、とりわけ、第1油圧切換手段が故障して、第2油圧経路に油圧が作用したままの状態になっていることが検出された場合には、第2油圧切換手段により第3油圧経路の遮断を解除し第2油圧経路内の油圧を開放して動弁機構の特別作動を解除することが可能となるため、故障の有無と原因を迅速に把握することができる効果がある。
【0044】
請求項2に記載した発明によれば、低圧側を大気開放として単純化することができるため、油圧経路の構造を簡素化できる効果がある。
【0045】
請求項3に記載した発明によれば、全気筒運転と全気筒休止運転とを切り替える走行を可能とし、全気筒休止運転から全気筒運転に切り替わらなくなった場合には、第2油圧切換手段による第3油圧経路の遮断を解除して第2油圧経路内の油圧を開放することができるため、全気筒休止運転により飛躍的に燃費向上を図りつつ、何らかの異常が発生した場合は全気筒休止運転を迅速かつ確実に解除して全気筒運転で走行できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施形態のハイブリッド車両の全体構成図である。
【図2】 この発明の実施形態の可変バルブタイミング機構を示す正面図である。
【図3】 この発明の実施形態の可変バルブタイミング機構を示し、(a)は全気筒運転状態での可変バルブタイミング機構の要部断面図、(b)は全気筒休止運転状態での可変バルブタイミング機構の要部断面図である。
【図4】 図1の要部拡大図である。
【符号の説明】
11 FIECU(制御装置)
33 スプールバルブ(第1油圧切換手段)
33’ スプールバルブ(第2油圧切換手段)
34 気筒休止側通路(第2油圧経路)
35 気筒休止解除側通路(第1油圧経路)
38、38’ドレン通路
39 油圧制御通路(第3油圧経路)
40 逆止弁
E エンジン
VT 可変バルブタイミング機構(動弁機構)
IV 吸気弁
EV 排気弁
S1 POILセンサ(第1油圧センサ)
S1’ POILセンサ(第2油圧センサ)

Claims (3)

  1. 内燃機関の動弁機構に油圧を供給して動弁機構を制御する油圧制御装置において、動弁機構を通常作動させる第1油圧経路と特別作動させる第2油圧経路とを設け、
    動弁機構の通常作動時には第1油圧経路を高圧側に接続すると共に第2油圧経路を低圧側に接続し、
    動弁機構の特別作動時には第2油圧経路を高圧側に接続すると共に第1油圧経路を低圧側に接続する第1油圧切換手段を設け、
    前記第2油圧経路に分岐して第3油圧経路を接続し、
    この第3油圧経路に、第1油圧切換手段により第2油圧経路が高圧側に接続されている場合に第3油圧経路を遮断する第2油圧切換手段を設け、
    第3油圧経路に第2油圧切換手段から動弁機構への作動油の流過を阻止する逆止弁を設け、
    前記第1油圧経路にこの経路内の油圧を検出する第1油圧センサを設け、第3油圧経路の逆止弁と第2油圧切換手段との間にこの経路内の油圧を検出する第2油圧センサを設け、
    前記第1油圧切換手段及び第2油圧切換手段を切り替えるための制御装置を設け、
    この制御装置から第1油圧切換手段及び第2油圧切換手段に送信される切換制御信号と、前記第1油圧センサと第2油圧センサとの検出信号に基づいて、第1油圧切換手段あるいは第2油圧切換手段の故障状態を把握することを特徴とする動弁機構の油圧制御装置。
  2. 前記低圧側がドレン通路に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の動弁機構の油圧制御装置。
  3. 前記動弁機構の通常作動により吸気弁、排気弁が駆動して全ての気筒を運転状態にする全気筒運転が行われ、動弁機構の特別作動により排気弁、吸気弁が閉状態で駆動停止して全ての気筒が休止する全気筒休止運転が行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動弁機構の油圧制御装置。
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