JP3917006B2 - 復調回路およびそれを用いる非接触式icカードの端末装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、BPSK(Binary Phase Shift Keying)方式で位相変調された信号を復調する復調回路およびそれを用いる非接触式ICカードの端末装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
様々な物にICチップを埋込み、非接触で通信を行うことで、埋込まれた物品や、それを携帯する人物の情報を読取ることが従来から行われている。特に、前記ICチップをカードに埋込んで、既に定期券などとして実用化されている。そのようなICカードの分野において、非接触でリーダライタ装置にデータを通信する方式として、ISO/IEC−14443に、BPSK変調を用いた通信方式が規定されている。なお、ICカードをリーダライタ装置に取込んで、端子を接触させて書込み/読出しを行うことができるとともに、無線によって前記非接触で書込み/読出しを行うことができるコンビ型と称されるICカードも、前記非接触での通信にはBPSK変調が用いられる。
【0003】
前記BPSK変調とは、リーダライタ装置から送信されたキャリア波に対して、ICカードがサブキャリア波の負荷を加えるか否かで変調するものであり、リーダライタ装置は、変調されたキャリア波から位相変化の点を検出することでデータを復調する。前記ISO/IEC−14443では、周波数13.56MHzのキャリア波に対して、周波数847kHzのサブキャリア波で負荷変調するようになっている。
【0004】
そして、1つのデータは、たとえば106kbpsで通信する等倍速通信の場合、「0101010101010101」と、180°位相の異なる「1010101010101010」との2通りのデータ列で表現される。すなわち、前記847kHzの1/2の周期で「0」と「1」とを繰返すので、前記106kbpsのデータ伝送速度の場合、16個のデータで表現されることになる。前記847kHzの1/2の周期は、後述するデータフレームとなる。
【0005】
また、212kbpsで通信する2倍速通信では、106kbpsで通信する前記等倍速通信の倍の情報量の通信を行うので、1つのデータは半分のデータ列長によって表現され、「01010101」と、「10101010」とで表現される。同様に424kbpsで通信する4倍速通信では、1つのデータはデータ列「0101」と、「1010」とで表現され、8倍速通信では、データ列「01」と、「10」とで表現される。
【0006】
一方、データの復調は、前記ISO/IEC−14443では、初期状態の位相状態をデータ「1」として、180°の位相変調があればデータ「0」に変化したとみなすことで行う。すなわち、たとえば前記等倍速通信の場合、初期状態のデータ列が「0101010101010101」であれば、そのデータ列がデータ「1」を意味し、180°位相の異なるデータ列「1010101010101010」がデータ「0」を意味し、前記データ列「0101010101010101」を繰返している間は前記データ「1」が続いていると判定し、データ列「1010101010101010」になると「0」に切換わったと判定する。つまり、前記180°の位相変調によって、「00」または「11」と続いた箇所をデータ列が切換わった箇所と判定する。
【0007】
同様に、前記2倍速通信の場合は、たとえば初期状態がデータ列「01010101」であれば、これがデータ「1」であり、データ列「10101010」がデータ「0」となる。また、4倍速通信の場合は、初期状態がデータ列「0101」であるとすると、これがデータ「1」であり、データ列「1010」がデータ「0」となる。さらにまた、8倍速通信の場合は、初期状態がデータ列「01」であるとすると、これがデータ「1」であり、データ列「10」がデータ「0」となる。このようにして、受信した信号からデータ列を抽出し、最終的にデータを復元することを復調回路によって行う。
【0008】
図1は、非接触式のICカード1と、そのリーダライタ装置2との一般的な構成を示すブロック図である。ICカード1の外周部にはアンテナコイル3が埋込まれており、そのアンテナコイル3に前記リーダライタ装置2からの前記13.56MHzのキャリア波が加えられると、起電力を生じ、コンデンサ4を介して、ICチップモジュール5に電源として供給される。ICチップモジュール5は、必要に応じてデータの書込み/読出しを行い、送信すべきデータに対応して、アンテナコイル3から、前記キャリア波を前記847kHzのサブキャリア波で負荷変調する。
【0009】
リーダライタ装置2では、制御回路6からの信号に応答して、送信回路7がアンテナコイル8から前記キャリア波を発生し、該アンテナコイル8で受信された信号は、受信回路9で復調され、復調されたデータは前記制御回路8に取込まれ、必要に応じて、通信ポート10を介して、ホスト装置等に転送される。
【0010】
図2は、前記受信回路9の一構成例を示すブロック図である。この受信回路9は、大略的に、ローパスフィルタ11と、増幅器12と、コンパレータ13と、復調回路14と、基準電圧を生成する直列抵抗15,16とを備えて構成される。
【0011】
前記受信信号はローパスフィルタ11に与えられ、前記13.56MHzのキャリア波成分が除去され、情報となる前記847kHzのサブキャリア波成分が抽出される。前記サブキャリア波成分は、増幅器12において増幅され、コンパレータ13の一方の入力に入力される。前記コンパレータ13の他方の入力には、電源電圧を前記直列抵抗15,16で分割して発生された基準電圧が与えられており、該コンパレータ13は、前記サブキャリア波成分が基準電圧よりも電位が高ければ「1」、低ければ「0」と判定することで、デジタルデータを得る。こうして、前記「0」と「1」とを繰り返す前記データ列が得られることになる。このデータ列が、発明対象回路である復調回路14に入力され、上述のように180°の位相変調の有無から、データが復調される。
【0012】
前記復調回路14の典型的な従来技術は、特開2000−196691号公報に示されている。その従来技術では、前述のように、先ず復調回路14への入力信号を、サブキャリア周波数847kHzをfsとすると、2倍の周波数である2・fsの周波数のクロック、すなわち前記データフレーム毎にサンプリングを行い、データ列を抽出する。そして、データ列の区切りとして、データ列「00」「11」を検出することによって、位相の変化を検出し、データを復調する。
【0013】
したがって、たとえば前記212kbpsで通信する場合で、入力されたデータ列が「010101011010」であるとすると、「11」の箇所で初めて位相の変化があったことが分かり、データ列の最初の状態がデータ「1」を示す「0101」であるので、位相変化が発生するまでがデータ「1」であり、位相変化を検出することでデータが「0」に変化したとみなし、データ「110」が復調される。
【0014】
しかしながら、このままであるとビットエラーが発生した場合は正常に位相の変化を検出できないので、この従来技術では、区切り用データ列の前後のデータも合わせて、データ列「0110」「1001」を検出した場合に位相の変化があったと認識することで、エラー訂正を行うことが示されている。具体的には、データ列「101」から1ビットエラーによって「111」となった場合およびデータ列「010」から1ビットエラーによって「000」となった場合は、位相の変化として認識しないことで、データ途中に1ビットのエラーが発生しても、正確に復調を行うことができるように工夫されている。
【0015】
図7は、上述の復調処理をより詳細に示すフローチャートである。ステップS1では、データ列を1ビットシフトして、データが読込まれる。ステップS2では、データ列が期待値「0110」に一致しているか否かが判定され、一致していなければさらにステップS3において、期待値「1001」に一致しているか否かが判定され、一致していなければステップS4に進み、位相の変化がなかったことから、復調データはそのまま前回のデータ値のままとされる。
【0016】
これに対して、前記ステップS2においてデータ列が期待値「0110」に一致している場合、および前記ステップS3において期待値「1001」に一致している場合はステップS5に進み、位相の変化があったことから、前回のデータが「1」か「0」かが判定される。前回のデータが「1」であれば、ステップS6に進み、データ「0」を確定する。前回のデータが「0」であれば、ステップS7に進み、データ「1」を確定する。
【0017】
前記ステップS4,S6,S7からはステップS8に進み、データの通信が終了してデータ列が終了しているか否かが判断され、データ列が終了していると復調処理を終了し、終了していなければ前記ステップS1に戻り、同様の処理を繰返す。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような特開2000−196691号の従来技術では、位相変調が起こっていないときにビットエラーが発生した場合に、誤って位相変調があったと判定することがないように構成されている。しかしながら、位相変調が起こったときにビットエラーが発生した場合は、正常に信号を復調することができないという問題がある。たとえば、本来のデータ列が「1001」であった場合に、1ビットのビットエラーが発生してデータ列が「1011」となったら、「0110」又は「1001」と一致しているか否かで位相変調が起こったか否かを判定する本従来例では、位相変調が起こっていないと判定してしまうことになる。このように位相変化時にビットエラーが発生した場合、すなわちデータ列が「0110」でも「1001」でもない場合は、位相変調されていないと判断されてデータは変化していないとみなされ、正常に復調を行うことができない。
【0019】
また、復調回路14への入力信号をサブキャリアの2倍の周波数である2・fsの周波数のクロックにてサンプリングを行い、データ列を抽出するので、サンプリング時にノイズ等の影響によって正常なデータをサンプリングできない場合があり、この場合も後段の復調処理で正常なデータの復調ができないという問題がある。
【0020】
本発明の目的は、BPSK方式で位相変調された信号を正しく復調することができる復調回路およびそれを用いる非接触式ICカードの端末装置を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の復調回路は、BPSK方式で位相変調された信号を復調する復調回路において、前記BPSK変調のデータフレームを規定する同期手段と、前記同期手段によって規定されたデータフレーム毎に、前記BPSK変調された受信信号の立ち上がりエッヂおよび立ち下がりエッヂをカウントし、それらの差分から各データフレームにおけるデータを抽出するデータ抽出手段と、前記データ抽出手段で求められるデータに対して、位相が変化していない場合の期待値のデータを作成する期待値作成手段と、前記データ抽出手段で求められたデータと、前記期待値作成手段で作成された期待値のデータとを相互に比較し、不一致の場合に位相が変化したことを検出する位相変化検出手段と、前記位相変化検出手段で位相の変化が検出されると、現在のデータを反転することによってデータを復調する復調手段とを含むことを特徴とする。
【0022】
上記の構成によれば、非接触式のICカードリーダライタ装置などとして実現されるBPSK信号の復調回路において、従来では、同期手段によって予め規定されたデータフレーム毎に、前記BPSK変調された受信信号の立ち上がりまたは立ち下がりを判定し、その判定結果を各データフレームにおけるデータとして抽出し、求められたデータを前記BPSK変調の復調データ長毎に区分して、位相変化検出手段において、各復調データ長内のデータと期待値作成手段で作成された期待値のデータとを比較することで復調データを得ていたのに対して、本発明では、先ずデータ抽出手段は、規定された各データフレーム毎に、受信信号の立ち上がりエッヂのカウント値と立ち下がりエッヂのカウント値との差分から各データフレームにおけるデータを抽出する。したがって、ノイズによって、たとえば受信信号に立ち上がりのエラーが生じても、立ち下がりによってそのエラーは相殺され、該データ抽出手段からは、前記ノイズの影響を除去したデータが出力される。
【0023】
したがって、位相変調が生じているタイミングでエラーが発生しても、そのエラーは前記立ち上がりエッヂのカウント値と立ち下がりエッヂのカウント値との差分を求めることで相殺されており、BPSK変調を用いた非接触通信において、キャリア波に重畳されるデータ列にエラーが発生しても、非常に高い信頼性で受信すべきデータを復調することができる。
【0024】
また、本発明の復調回路は、予め規定されたデータフレーム毎に、データ抽出手段においてBPSK変調された受信信号の立ち上がりまたは立ち下がりを判定し、その判定結果を各データフレームにおけるデータとして抽出し、求められたデータを前記BPSK変調の復調データ長毎に区分して、位相変化検出手段において各復調データ長内のデータと期待値のデータとを比較し、不一致の場合に位相が変化したことを検出し、復調手段において現在のデータを反転することによって復調データを得るようにした復調回路において、前記復調手段に対して、前記データ抽出手段から最初にデータが出力された時点を起点として、復調データ長の1/2の期間が経過した時点の位相変化検出手段からのデータを最初の復調データとしてサンプリングさせ、以降、前記復調データ長毎にデータをサンプリングさせて前記復調データとするフレーム長訂正手段を含むことを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、非接触式のICカードリーダライタ装置などとして実現されるBPSK信号の復調回路において、予め規定されたデータフレーム毎に、前記BPSK変調された受信信号の立ち上がりまたは立ち下がりを判定し、その判定結果を各データフレームにおけるデータとして抽出し、求められたデータを前記BPSK変調の復調データ長毎に区分して、位相変化検出手段において、各復調データ長内のデータと期待値作成手段で作成された期待値のデータとを比較することで復調データを得るにあたって、従来では、位相変化検出手段で位相の変化が検出された時点で、復調手段が復調データを反転し、フレーム長が変動していたのを、本発明では、復調手段による復調データの反転を、フレーム長訂正手段で許可されたタイミングで許容する。具体的には、前記データ抽出手段から最初にデータが出力された時点を起点として、復調データ長の1/2の期間が経過した時点の位相変化検出手段からのデータを最初の復調データとしてサンプリングさせ、以降、前記復調データ長毎にデータをサンプリングさせる。
【0026】
したがって、データ抽出手段のサンプリングタイミングにエラーが発生しても、復調データ長が変動することなく、正しくデータを復調することができる。
【0027】
さらにまた、本発明の非接触式ICカードの端末装置は、前記の復調回路を用いることを特徴とする。
【0028】
上記の構成によれば、ICカードと非接触でデータをやり取りする端末装置との間の通信方式として前記BPSK変調を用いた通信方式が規定されているので、前記の復調回路を使用することで、ICカードからのデータを正しく復調することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について、図1〜図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0030】
本発明に係る復調回路は、前述の図2で示す受信回路9の復調回路14として使用することができ、またICカードおよびそのリーダライタ装置は、前述の図1で示すような構成を用いることができ、それらの説明は省略する。
【0031】
図3は、本発明の実施の一形態の復調回路の動作を説明するための波形図であり、前述の図2を合わせて参照して、データ伝送速度が424kbpsの4倍速通信の場合を例として、該復調回路の動作を説明する。図3(a)はローパスフィルタ11への入力信号であり、図3(b)は増幅器12への入力信号であり、図3(c)はコンパレータ13への入力信号であり、図3(d)は該復調回路14への入力信号であり、図3(f)該復調回路14から出力される復調データである。また、図3(e)は、復調回路14内でのデータフレーム毎のビットデータの判定結果を示す。
【0032】
したがって、図3(a)では、正弦波状の波形が周波数13.56MHzのキャリア波に相当し、その包絡線である矩形状の波形が847kHzのサブキャリア波に相当する。この受信信号から、ローパスフィルタ11によって周波数13.56MHzのキャリア波成分が取除かれると、情報となる周波数847kHzのサブキャリア波成分が図3(b)で示すように抽出される。この信号を増幅器12で増幅すると図3(c)で示すようになり、コンパレータ13において矩形波に整形すると、復調回路14への入力は図3(d)で示すようになる。
【0033】
復調回路14では、先ず前記1/2fsの期間をデータフレームT1として、このデータフレームT1毎に、順次ビットデータを判定し、前記データ列を作成してゆくのであるけれども、本発明では、入力信号のパルスのセンターを求めて、そこから前記データフレームT1毎に同期を取る。それぞれのデータフレームT1を受信データフレームとし、最初の受信データフレームから順に、ステップ0、ステップ1、ステップ2、…とする。そして、サブキャリアの周波数fsに対して、16倍の周波数であるキャリア信号φfcをサンプリング用のクロックとして使用する。したがって、前記データフレームT1内で8回サンプリングされることになる。
【0034】
そして次に、このデータフレームT1内で、立ち上がりエッヂのカウント値と、立ち下がりエッヂのカウント値との差分からビットデータを判定する。詳しくは、先ず立ち上がりエッヂの数UP_COUNTから立ち下がりエッヂの数DOWN_COUNTを引いた数である差分UD_COUNTを求める。次に、前記差分UD_COUNTと期待値EXPとを比較して受信データの判定を行う。
【0035】
前記期待値EXPは、それぞれ現在の復調データの値および受信データフレームのステップ数によって変化する。現在の復調データが「1」の場合、受信データフレームのステップが偶数ステップでは期待値EXPは「1」とし、奇数ステップでは「−1」とする。一方、現在の復調データが「0」の場合、受信データフレームのステップが偶数ステップでは期待値EXPは「−1」とし、奇数ステップでは「1」とする。
【0036】
そして、前記差分UD_COUNTと期待値EXPとを比較して、一致の場合は、位相変調が発生していないと判断して、受信データは、現在の受信データが「1」であれば「1」とし、「0」であれば「0」とする。前記差分UD_COUNTと期待値EXPとを比較して、不一致の場合は、位相変調が発生していると判断して、受信データは、現在の受信データが「1」であれば「0」とし、「0」であれば「1」とする。
【0037】
したがって、図3(d)において、波線が正常な信号であり、実線がエラーの発生しているケースである。参照符α,βは受信データフレーム内での短いパルス波形エラーであるが、この波形のケースでは、上記の立ち上がりエッヂ数UD_COUNTと立ち下がりエッヂ数DOWN_COUNTとの差分UD_COUNTを取って判定することで、該エラーの影響を受けないで正常に受信データを復調していることが理解される。
【0038】
一方、参照符γは、3つの受信データフレームに亘るエラーである。本来、位相変調したと判定されるより1つ前のフレームで位相変調したと判定されていることが理解される。しかしながら、本発明では、後述するようにして、その位相変調の判定フレームのずれが解消される。こうして、図3(d)で示すコンパレータ13からの入力は、最終的に図3(f)で示す復調データとなる。
【0039】
前記判定フレームのずれの訂正は、最初のビットデータが出力された時点を起点として、復調データ長T2の1/2の期間が経過した時点のデータを最初の復調データとし、以降、前記復調データ長T2毎のデータを復調データとすることで行う。
【0040】
たとえば、前記4倍速通信の場合では、図3(e)で示すように、1復調データ長T2当りの受信データフレームT1の数は4となるが、エラーの出方によって、図3(e)で示すように、復調されるデータの長さが受信データフレームT1の数で、3になったり5になったりするケースが発生する。そのため、期待値EXPとの比較で、最初にデータが「0」であると判定した時点から、3フレーム目の値を最終的な復調データとして取得する。その後は、常に4フレーム毎のデータを復調データとして取得する。この処理によって、図3(f)で示すような正常なデータの長さを持った復調データが取得される。
【0041】
同様に、等倍速通信の場合は、最初の復調データとして9フレーム目のデータを取得し、次から16フレーム毎に取得してゆく。また、2倍速の場合は、最初の復調データとして5フレーム目のデータを取得し、次から8フレーム毎に取得してゆく。さらにまた、8倍速通信の場合は、最初の復調データとして2フレーム目のデータを取得し、次から2フレーム毎に取得してゆく。
【0042】
こうして、前記参照符γで示すエラーのように復調データのサンプリングタイミングにエラーが発生しても、フレーム長が変動することなく、正しくデータを復調することができる。
【0043】
図4および図5は、上述のような復調処理をより詳細に示すフローチャートである。ステップS11では、受信データシフトレジスタおよび復調データレジスタを「1」にセットして初期化が行われる。ステップS12では受信信号との同期を取り、タイミングを合わせるためにステップS13で、受信データ周期カウンタ、受信データフレームカウンタ、復調データ周期カウンタ、立ち上がりエッヂカウンタ、立ち下がりエッヂカウンタ、受信データ開始フラグをリセットする。
【0044】
ステップS14では、受信信号のレベルが立ち上がりエッヂであるか否かが判断され、立ち上がりエッヂであれば、ステップS15で立ち上がりエッヂカウンタがカウントアップされた後、ステップS16に進み、立ち上がりエッヂでなければ、直接前記ステップS16に進む。ステップS16では、受信信号のレベルが立ち下がりエッヂであるか否かが判断され、立ち下がりエッヂであれば、ステップS17で立ち下がりエッヂカウンタがカウントアップされた後、ステップS18に進み、立ち下がりエッヂでなければ、直接前記ステップS18に進む。
【0045】
ステップS18では、受信データ周期カウンタがカウントアップされる。ステップS19では、受信データ周期カウンタが7であるか否かが判断され、7であれば、すなわち8回目のサンプリングを終了すると、1データフレーム期間が終了したのでステップS21へ進み、受信データ周期カウンタが7でなければ1データフレーム期間が終了していないので、前記ステップS14に戻る。
【0046】
ステップS21では、立ち上がりエッヂカウンタ値UP_COUNTから立ち下がりエッヂカウンタ値DOWN_COUNTを引いた差分UD_COUNTを計算する。
【0047】
ステップS22〜ステップS28では、受信データフレームステップカウンタが偶数か否か、および現在の受信データが「1」か否かによって、位相変調が発生していないと仮定したときの期待値EXPを、「1」または「−1」に設定する。
【0048】
ステップS29では、受信データフレームの過去3ステップで受信データの変化がないか否かを判定する。過去3ステップで変化がなければステップS30へ進み、変化があれば位相変調が過去3ステップ以内に発生しているので、位相変調はないと判定してステップS31へ進む。ステップS30では、前記差分UD_COUNTと位相変調が発生していない場合の期待値EXPとを比較し、一致すると位相変調はないと判定して前記ステップS31へ進み、一致しないと位相変調があったと判定してステップS32へ進む。ステップS31では、受信データはそのままとされ、一方ステップS32では、現在の受信データが「1」であれば受信データを「0」に、現在の受信データが「0」であれば受信データを「1」とする。
【0049】
前記ステップS31,S32からはステップS33に移り、受信データが初めて「0」になったか否かを判定する。すなわち、受信データ開始フラグR_FLAGが「0」で、かつ、受信データが「0」か否かを判定し、そうであればステップS34へ進む。ステップS34では、初めての受信データ「0」を受け取ったということで受信データ開始フラグR_FLAGを「1」とする。続いてステップS35で復調データ周期カウンタを1カウントアップし、ステップS36で受信データフレームカウンタを1カウントアップした後、前記ステップS14に戻る。
【0050】
これに対して、前記ステップS33で、受信データが初めて「0」になったのでなければステップS37に進み、受信データ開始フラグR_FLAGが「1」あればステップS38へ進み、そうでなければステップS41へ進む。ステップS38では、復調データの周期を揃えるために復調データ周期カウンタが「2」であればステップS39へ進み、そうでなければステップS40へ進む。ステップS39では、受信データを復調データとしてステップS40へ進む。ステップS40では、復調データ周期カウンタをカウントアップし、ステップS41へ進む。ステップS41では、復調したデータがISO14443の規定によるデータの終了を示す「EOF」かどうか判断する。「EOF」であれば処理を終了すし、そうけなければ前記ステップS36に進む。
【0051】
図6は、上述した本発明による復調処理を実現する復調回路のブロック図である。この復調回路は、大略的に、同期回路21と、立ち上がりエッヂカウンタ22と、立ち下がりエッヂカウンタ23と、差分器24と、比較器25と、比較器26と、ORゲート回路27と、EXOR(排他的論理和)ゲート回路28と、セレクタ29と、EXOR(排他的論理和)ゲート回路30と、受信データシフトレジスタ31と、「0」検出回路32と、復調データ周期カウンタ33と、受信データ周期カウンタ(3ビット)34と、16分周回路35と、受信データフレームステップカウンタ(1ビット)36と、セレクタ37と、復調データレジスタ38とを備えて構成される。
【0052】
前記コンパレータ13からの入力信号、初期化用リセット信号およびサンプリングクロックとなるキャリア信号を同期回路21に入力して、受信データ周期カウンタ34、受信データフレームステップカウンタ36、復調データ周期カウンタ33、立ち上がりエッヂカウンタ22、立ち下がりエッヂカウンタ23および「0」検出回路32のタイミングを合わせるためのリセット信号を作成する。そして、受信データ周期カウンタ34で1データフレーム期間T1をカウントする間に、立ち上がりエッヂカウンタ22および立ち下がりエッヂカウンタ23で入力信号のエッヂをカウントして、差分器24でその差分UD_COUNTを計算する。
【0053】
次に、受信データフレームステップカウンタ36の値から求められる受信データフレームステップが偶数であるかまたは奇数であるかと、受信データシフトレジスタ31の現在の受信データの値Q0とによって、EXORゲート回路28とセレクタ29とを使用して、差分UD_COUNTと比較するための期待値EXPを作成する。比較器25で、その差分UD_COUNTと期待値EXPとを比較して、一致していれば出力Yは「1」となる。また、受信データシフトレジスタ31の出力Q0、Q1、Q2を比較器26で比較し、Q0、Q1、Q2が全て「1」または全て「0」であれば過去3回で受信データの変化がなかったと判断して比較器26の出力Yが「1」となり、ORゲート回路27、EXORゲート回路28を通して受信データシフトレジスタ31の入力Dに入力して、受信データの値を更新する。この受信データシフトレジスタ31のクロックには、サンプリングクロックであるキャリア信号φfcを16分周回路35で分周した信号を使用する。
【0054】
一方、前記「0」検出回路32で初めての受信データ「0」が検出されると、復調データ周期カウンタ33がスタートされる。この復調データ周期カウンタ33の出力Yの値によってセレクタ37を制御することによって、最終的な復調データを出力する復調データレジスタ38の値を変更しないようにするか、または、受信データシフトレジスタ31の出力Q0の値とするかが選択され、前記フレーム長が一定とされる。
【0055】
このようにして、エッヂの数で状態判定を行い、所定の期待値との比較を行い、データを復調するという前述の復調処理およびフレーム長の訂正処理を実現することができ、位相変調が起こったときにビットエラーが発生した場合においても、またサンプリング時に復調回路への信号エラーが発生した場合においても、正常にデータを復調することができる。
【0056】
また、本発明の復調回路は、簡潔なアルゴリズムで、図6で示すように、1つの同期回路21、2つのエッヂカウンタ22,23、1つの差分器24、2つの比較器25,26、3つの基本ゲート回路27,28,30、2つのセレクタ29,37、1つのシフトレジスタ31、1つの「0」検出回路32、3つのカウンタ33,34,36、1つの分周回路35および1つのレジスタ38から成る小規模な回路で実現可能であり、大幅なコスト増を伴わずに実現することができる。
【0057】
本発明による復調回路および復調方式は、前述のように非接触式のICカードあるいは接触/非接兼用のコンビネーション型のICカードに適用することによって、通信環境の悪い状況下でも信頼性の高い通信を行うことができ、幅広い応用分野へ適用することができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明の復調回路は、以上のように、非接触式のICカードリーダライタ装置などとして実現されるBPSK信号の復調回路において、従来では、同期手段によって予め規定されたデータフレーム毎に、前記BPSK変調された受信信号の立ち上がりまたは立ち下がりを判定し、その判定結果を各データフレームにおけるデータとして抽出し、求められたデータを前記BPSK変調の復調データ長毎に区分して、位相変化検出手段において、各復調データ長内のデータと期待値作成手段で作成された期待値のデータとを比較することで復調データを得ていたのに対して、本発明では、先ずデータ抽出手段は、規定された各データフレーム毎に、受信信号の立ち上がりエッヂのカウント値と立ち下がりエッヂのカウント値との差分から各データフレームにおけるデータを抽出する。
【0059】
それゆえ、位相変調が生じているタイミングでエラーが発生しても、そのエラーは前記立ち上がりエッヂのカウント値と立ち下がりエッヂのカウント値との差分を求めることで相殺されており、BPSK変調を用いた非接触通信において、サブキャリア波に重畳されるデータ列にエラーが発生しても、非常に高い信頼性で受信すべきデータを復調することができる。
【0060】
また、本発明の復調回路は、以上のように、非接触式のICカードリーダライタ装置などとして実現されるBPSK信号の復調回路において、予め規定されたデータフレーム毎に、前記BPSK変調された受信信号の立ち上がりまたは立ち下がりを判定し、その判定結果を各データフレームにおけるデータとして抽出し、求められたデータを前記BPSK変調の復調データ長毎に区分して、位相変化検出手段において、各復調データ長内のデータと期待値作成手段で作成された期待値のデータとを比較することで復調データを得るにあたって、従来では、位相変化検出手段で位相の変化が検出された時点で、復調手段が復調データを反転し、フレーム長が変動していたのを、本発明では、復調手段による復調データの反転を、フレーム長訂正手段で許可されたタイミングで許容する。具体的には、前記データ抽出手段から最初にデータが出力された時点を起点として、復調データ長の1/2の期間が経過した時点の位相変化検出手段からのデータを最初の復調データとしてサンプリングさせ、以降、前記復調データ長毎にデータをサンプリングさせる。
【0061】
それゆえ、データ抽出手段のサンプリングタイミングにエラーが発生しても、復調データ長が変動することなく、正しくデータを復調することができる。
【0062】
さらにまた、本発明の非接触式ICカードの端末装置は、以上のように、前記の復調回路を用いる。
【0063】
それゆえ、ICカードと端末装置との間の通信方式として前記BPSK変調を用いた通信方式が規定されているので、前記の復調回路を使用することで、ICカードからのデータを正しく復調することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】非接触式のICカードと、そのリーダライタ装置との一般的な構成を示すブロック図である。
【図2】図1で示すリーダライタ装置における受信回路の一構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の一形態の復調回路の動作を説明するための波形図である。
【図4】本発明の復調処理をより詳細に示すフローチャートである。
【図5】本発明の復調処理をより詳細に示すフローチャートである。
【図6】前記図4および図5で示す復調処理を実現する復調回路のブロック図である。
【図7】典型的な従来技術の復調処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 ICカード
2 リーダライタ装置
3,8 アンテナコイル
5 ICチップモジュール
6 制御回路
7 送信回路
9 受信回路
10 通信ポート
11 ローパスフィルタ
12 増幅器
13 コンパレータ
14 復調回路
15,16 直列抵抗
21 同期回路(同期手段)
22 立ち上がりエッヂカウンタ(データ抽出手段)
23 立ち下がりエッヂカウンタ(データ抽出手段)
24 差分器(データ抽出手段)
25,26 比較器(位相変化検出手段)
27 ORゲート回路(位相変化検出手段)
28 EXOR(排他的論理和)ゲート回路(位相変化検出手段)
29 セレクタ(期待値作成手段)
30 EXOR(排他的論理和)ゲート回路(期待値作成手段)
31 受信データシフトレジスタ(期待値作成手段)
32 「0」検出回路(フレーム長訂正手段)
33 復調データ周期カウンタ(フレーム長訂正手段)
34 受信データ周期カウンタ(同期手段)
35 16分周回路(同期手段)
36 受信データフレームステップカウンタ(同期手段)
37 セレクタ(復調手段)
38 復調データレジスタ(復調手段)
Claims (3)
- BPSK方式で位相変調された信号を復調する復調回路において、
前記BPSK変調のデータフレームを規定する同期手段と、
前記同期手段によって規定されたデータフレーム毎に、前記BPSK変調された受信信号の立ち上がりエッヂおよび立ち下がりエッヂをカウントし、それらの差分から各データフレームにおけるデータを抽出するデータ抽出手段と、
前記データ抽出手段で求められるデータに対して、位相が変化していない場合の期待値のデータを作成する期待値作成手段と、
前記データ抽出手段で求められたデータと、前記期待値作成手段で作成された期待値のデータとを相互に比較し、不一致の場合に位相が変化したことを検出する位相変化検出手段と、
前記位相変化検出手段で位相の変化が検出されると、現在のデータを反転することによってデータを復調する復調手段とを含むことを特徴とする復調回路。 - 予め規定されたデータフレーム毎に、データ抽出手段においてBPSK変調された受信信号の立ち上がりまたは立ち下がりを判定し、その判定結果を各データフレームにおけるデータとして抽出し、求められたデータを前記BPSK変調の復調データ長毎に区分して、位相変化検出手段において各復調データ長内のデータと期待値のデータとを比較し、不一致の場合に位相が変化したことを検出し、復調手段において現在のデータを反転することによって復調データを得るようにした復調回路において、
前記復調手段に対して、前記データ抽出手段から最初にデータが出力された時点を起点として、復調データ長の1/2の期間が経過した時点の位相変化検出手段からのデータを最初の復調データとしてサンプリングさせ、以降、前記復調データ長毎にデータをサンプリングさせて前記復調データとするフレーム長訂正手段を含むことを特徴とする復調回路。 - 前記請求項1または2記載の復調回路を用いることを特徴とする非接触式ICカードの端末装置。
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